○波多野鼎君
芦田内閣は御
承知のように、
社会党、
民主党、並びに國協党の三党
政策の
協定によ
つて成立いたしたものであります。
從つてこの三党の
政策協定は、いわば
芦田内閣の生命であろうと思うのであります。三党
政策協定がなか
つたならば、
芦田内閣も成立しなか
つたであろうという程の重要な
意味を持つ
政策協定であろうと思う。でありますから、この
政策協定の
内容につきましては、これは
天下の人々が十分に納得しておらなければならない問題であろうと思う。これは
政府の
政治の公明を期する上におきましても、亦民主
政治の本領を発揮する上においても、絶対に必要な点であろうと思
つております。一昨日
芦田首相はその施政
方針演説において
國民の側から言えば、
芦田内閣の生命であり、その存在理由とも言うべき三党
政策協定の
内容が明確になりません以上、協力しようにも力の入れどころがないというような
感じを持たざるを得ないのであります。
ところが、そういう重大な三党
政策協定の
内容につきまして、從來明確な発表がなか
つたのであります。
國民は新聞紙上等を通じましていろいろのことを知らされておるけれども、その新聞の報道は時に区々に分れておりまして、今だ曾て信憑すべき発表に接しておりません。
從つて協定に関する
國民の理解は未だ帰一する
ところを知らないという
状態であります。そればかりではない。
政策協定に
責任を持つ三党の首脳部間においてすら
協定の
内容について解釈が分かれておるとか、或いは
意見の対立があるというようなことさえも、新聞を通じて報道されておる
状態であります。
從つて、こういうわけで、三党
政策協定に関連しまして一種の疑いが世上に流布されておる。即ち
芦田内閣は三党
政策協定を忠実に実行する熱意を持
つておるか、どうかという点についての疑い、或いは一体何の
ために
政策協定をや
つたのか、
協定された
政策を実行する
ために連立
内閣を作
つたのか、それとも連立
内閣を作る
ために三党
政策協定をや
つたのか、どちらであるか、とい
つたような
意見、甚だしきに至りましては、
政策協定というようなことは、結局あれは中区を作る
ための口実に過ぎないじやないか、遮二無二
内閣を成立させる
ための便宜的手段としてあれをや
つたんではないかというような
疑惑さえも次第に深くな
つて來ておる。こういう
疑惑に拍車をかけたものは、先般の
追加予算の中におきまして六・三制の経費が削除されたということがあります。これがそういう
疑惑に更に拍車をかけた。六・三制の完遂ということは、これは三党
政策協定の一項目にもあ
つたかと記憶いたしますが、又首相の施政
方針演説の中におきましても、文教の重視ということは
芦田内閣が特に力を入れる点であるということを
言つておられた。それと前後して出たその
追加予算におきまして六・三制の経費が削除されてしま
つておるということは、一体どういくことであるか。そういうことがいろいろの
疑惑を生む種にな
つておるのであります。勿論、人はこう言うかも知れない。二十二年度の
追加予算において、六・三制の経費を削除せざるを得ない財政上の理由があ
つて削除したのだが、二十三年度の本
予算において必ずこれは計上する。而も二十三年度の本
予算は四月中に恐らく出る予定であるから、二十二年度の
追加予算に計上しなか
つたところで、たかだか一ケ月位の遅れになるに過ぎない、このことを以て
内閣が文教
政策の熱意を持たないという証拠にはならんというような弁解もあるかも知れませんけれども、この三月から四月というこの一ケ月とは全く
意味が違うのであります。つまり二十二年度の
予算において六・三制の経費の不足額の重点はなされなか
つたという事実は、
はつきり出されてしま
つた。これは打消すことが出來ない。このことが文教
政策に対する熱意の
程度を計る
一つのバロメーターとして
考えられるのは当然であろうと思うのであります。このように三党
政策協定についていろいろの
疑惑が深ま
つておるということを私は甚だ遺憾に思う。ただに
芦田内閣の
ために遺憾に思うばかりではなく、発足したばかりの
日本の民主
政治の
ために特に遺憾に思うのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)
御
承知のように、今度の政変は新
憲法下最初の政変でありました。
内閣の更迭が民主的
憲法にふさわしい
國民の納得し得る方法において行われ、新
内閣が從來のように
政党幹部のいわゆる腹藝によ
つてできるのでなくして、公明に合理的に行われるということは、
國民のひとしく期待してお
つたところであります。そうして先ず三党間に
政策協定を行い、その実現の
ために新
内閣を作るとこういう形式を踏みましたことは、
國民の期待に副う形式であ
つたと
言つて差支えないと思います。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)併しながら
協定された
政策が曖昧であり、
協定の当事者間においてすら見解の対立があるというに至りましては、
組閣の形式は民主的、合理的ではありましたけれども、実質は依然として
政党首脳部間の腹藝域を脱していない。それを脱すること遠からざるものであると思わしめる節があるのであります。こういう事態を放任して置きますと、再び
國民は
政治に対して無関心にな
つて來る。
政治に対する興味を失うと共に、他方サンデイカリズム的の世相の発展を刺激することになるのであります。こういうふうになりましては、我が國の民主
政治は再び重大な危機に立つことになるのであります。でありますから、私は首相に次の諸点を
お尋ねしたい。
第一は、
芦田内閣の生命であるこの三党
政策協定の全貌を明確にして頂きたいという点であります。
第二は、
政策協定を結ぶに当
つては、これを誠実に実行する用意を備えて結んだのであ
つて、今後研究して見るとか、或いは学識経驗者を集めて
意見を聽き、実行できるかどうかというようなことを決めてみようとか、そういうような
確信のない
協定を結んだのではないという点を明確にして頂きたいと思うのであります。先程
加藤労働大臣が、
協定は
政策の方向を決定したに過ぎないものであるというふうに申されましたが、私はこの点についても
異議がある。
政策の方向とは一体何であるか。よく
考えて見ると、結局言われる
ところは問題を提起したに過ぎないということに帰結するのではないかと思う。問題の提起と
政策の
協定とは、私はおのずから非常な大きな違いがあると思うのです。
第三の点は、
協定事項中、特にいろいろ世上で疑いのある次の諸点について明らかにして頂きたいと思う。
一つは
戰時公債利子の停止的処置ということはどういう
意味のことであるか。
戰時公債利子の全額を打切るという方向の
協定であるのか、或いはその利子の値下げをするという
意味の
協定であるのか、或いは公債利子課税の方法によ
つて打切り又は利下げの効果を狙うというようなことが含蓄されておるのか、そういう点についての所信を明らかにして頂きたいと思うのであります。
第二は、先程からも問題にな
つておりましたが、國富調査税、これは一体何のことであろうか、國富調査税という
一つの目的税を新たに作るという
意味でありましようか、そういう目的税を新たに作るというならば、その課税の対象は一体何であるか、どういうものを予想しておられるかということを明らかにして頂きたいと思うのです。先程岡田運輸相は國富を調べる
ための手数料を取る、手数料を徴收するというような
意味のことを申されましたが、これではちつとも明らかにならない。
次に第三次農地改革という問題であります。御
承知のように、第二次農地改革は未だ終わ
つておりません。改革費の問題につきましても、亦耕地の分合の問題につきましても、特に買上地の賣却の問題につきましても、前途にこの第二次農地改革を徹底する上において幾多の難問題が山積いたしておるのであります。その際に、第三次農地改革ということは、如何なる
意味において
協定されたのであるかということを
はつきりして頂きたい。尚第三次農地改革と言われるものの中に、耕地とか、牧草地、開拓可能地以外に、民有の山林も含まれているかどうかということも明確にして頂きたい。この山林の問題は一昨年頃からいろいろ問題のある点でございまして、
芦田内閣がこの問題について、どういう
考えを持
つておられるかということを明確にせられることは、我が國の治山治水その他の面から見ましても重要な点であろうと思うのであります。
右の三党
政策に関する諸点は、これは
國民が特に知りたいと
考えておる点であろうと思うのであります。これらの点が不明確のまま残されておりますと、いろいろの流言飛語が起る、或いは時には不安さえも起る可能性があるので、時に明確な御
答弁をお願いする次第であります。
第二の
質問の点は、
外資の導入という問題であります。
日本経済の現在の危機を切抜ける上において、外國
資本の援助を受けなければならないというようなことは、すでに一般の
國民の常識とさえな
つておるように見受けられます。併し外國
資本の援助というようなことを、ただ漫然と
考えて、これにのみ期待をかけるということは、非常に警戒しなければならない点であろうと思うのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)外國
資本の導入を
日本経済の起死回生の万能藥であるかのごとく思い込んだり、又
國民にそう思い込ませてしまう。そうして外國
資本の導入に絡まるいろいろの問題、これに絡ま
つて起るいろいろの問題について、予め深い考慮を回らすということがなければ、例えば外國
資本の導入が実現した曉におきまして、
國民の中には、こんな筈ではなか
つた、こんな筈ではなか
つたというふうに思うような事態が起きないとも限らない。それを私は恐れるのであります。私は
外資導入に絡まる諸問題について、
芦田内閣はどのように
考え、
國民にどのような覚悟を促そうとしておるか、このことを次の諸点について聽きたいと思うのであります。
先ず第一にお伺いしなければならんのは、貿易回轉基金の問題、これについてであります。御
承知のように、昨年の八月に
連合国の好意によりまして、我が國が保有しておる
ところの、そして、これは結局賠償に引当てらるべき運命にある
ところの貴金属約二億ドル、これを担保にいたしまして使用することが許された。そして我が國はこれに基いて、年間約五億ドルに上る輸出品用原材料を購入する途が開かれたのであります。これによ
つて、我が國の輸出産業の飛躍的活況が期待されてお
つたんであります。併しながらその後の事情はどうであろうか。貿易回轉基金は、当時予想されてお
つたような、そういう機能を果したであろうか。何人も然りとは答えないでありましよう。一体どういう理由によ
つたであろうかと申しますと、貿易品に対する國内の統制機構が商工省の貿易廳であるとか、或いは貿易各品目についての幾多の公團であるとか、安定本部とか、方々に跨がる極めて複雜な機構である
ために、業者が統制機構の間を泳ぎ廻る。この泳ぎ廻るに奔命に疲れてしま
つておるという事情もありますが、こういう事情を一應除外して
考えますと、次の二つの事情が大きな阻害的な理由にな
つておると思うのであります。
一つは爲替相場の問題であります。或いはドルと円との交換比率の問題であります。これが今日非常に複雜多岐にな
つておりまして、その
ために取引契約の締結が多大の障害を受けておるということが
一つ。次に特にこれは注意しなければならない問題であると思うが、我が國輸出品市場の購買力が極度に低下しておるという点であります。言うまでもなく我が國の輸出品の市場といたしましては、又市場たり得る地域は、東亜及び南方以外にはない。然るにこれらの地域が政情不安の
ために、或いはインフレーシヨンの激化の
ために、或いはドル資金が不足している
ために、我が國の輸出品を買うことができない。我が國から言えば東亜南方諸国には多くの輸出をすることができない
状態にな
つておる。でありますから、
アメリカの好意によりまして原材料を輸入することができましても、それが輸出品の原材料である限り、輸出が今言
つたような
意味において少額である以上は、この原材料輸入ということにもおのずから限度が出て來てしまう。貿易回轉基金が十分な機能を果し得ない根本の理由はここにあると思うのであります。
政府は
從つて、今後の
外資導入の問題を取扱うに当
つて、このような事態を如何に考慮に入れておるのであろうか、これがか
質問の第一点であります。
質問の第二点は、今問題とな
つている
外資導入ということは これはどういう
意味のものであろうかという点であります。
一つ考えますことは、恐らくこれは貸付
資本の導入、即ちクレジツトの設定であり、これによ
つて原材料の輸入をするという
意味のものであろうと思うのであります。首相並びに
安本長官の
演説によりますと、
外資導入ということをこのような
意味に理解していいような発言が沢山あ
つたと思います。果して然りといたしますれば、前述のごとく貿易回轉基金すら十分使いこなせない今日、これによ
つて輸入する原材料を、輸出品の原材料ではなくて、建設用の原材料と理解すべきものと思うが、こう理解して間違いないかどうか、つまりこの
外資導入によ
つて入れるものは、それを製品にした
ところで輸出できないようなものを作る
ための原材料ではなくて、國内の固定
資本を建設する
ための原材料を輸入しようとしておるものと理解して差支ないかという点であります。又仮に今申したように、これがクレジツトの設定であるとするならば、クレジツトの設定にはどうしても担保のことが問題になると思う。
政府はこのクレジットの設定において如何なる担保を提供しようと用意しておるか、
國民の切に聽かんとする
ところであろうと思うのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)又貸付
資本、即ちクレジツトの導入は、
日本政府対外國
政府の間の契約によるものと
考えておるのか、或いは外國
政府対
日本民間企業家の契約によるものと
考えておるのか、そのいずれであるか、いずれにいたしましても恐らく講和條約締結後でなければ問題とならんと思うがどうであろうか。
ところで
芦田首相は一昨日の
演説におきまして、今の
ところ講和
会議が何時開かれるかは明白に見通しが付かないと
言つておられますが、そうであるとすれば、クレジツトの設定による建設用原材料の輸入ということも、それが何時のことであるかは明白に見通しが付かないことになりはしないか。にも拘わらず、首相は他方におきましては、幸いに周囲の事情は好轉して、近々多量の物資を輸入し得る曙光が輝き始めたということを
言つておられます。クレジツトの設定という
経済の
常道によらずして、どのような方法で多量の物資を輸入し得るというのでありましようか。(
拍手)この点も亦
はつきりさせて頂きたい一点であります。或いは又こういうことがあるかも知れない。正常なクレジツト設定の方法によらないで多量の物資を輸入する曙光が輝き始めているという
意味かも知れないが、それならば、それは一体どういう方法であるかも説明して頂きたいと思うのであります。
外資導入の問題に関する
質問の第三点でありますが、以上は
外資導入ということを、貸付
資本の導入、即ちクレジツトの設定を理解して
質問したのでありますが、首相並びに定本長官の
演説の中には、
外資導入という
言葉によ
つて外國の産業
資本の導入ということを
意味しておられると理解される節もあ
つたのであります。(「そうだ、そうだ問題は」と呼ぶ者あり)果してそうであるとしますれば、次の点を明らかにして頂きたいと思う。私的の、プライヴエートの
資本は、言うまでもなく自由奔放な活動を要求いたします。統制とか或いは國家管理とかいうたようなことは
資本の最も好まざる
ところであります。然るに現在の我が國におきましては、價格、資金、
資材その他あらゆる
経済活動の領域におきまして統制が加えられ、そうしてこの統制の方式によ
つて日本再建を図ろうという方向が決定しておると思うのでありますが、そこへ外國の
資本が産業
資本の形で入
つて來たとしますれば、こういう國は決してそういう
資本に取
つて居心地の良い國でなかろうと思う。即ち統制方式の変更を要求されることがないとは言えないと思う。理論的に
言つてそうであります。この点を
政府は果して予想しておるであろうかどうかであろうか予想しておるとすれば、それに如何に対処しようと
考えておるであろうか、このことも
はつきりさせて頂きたいと思う。(「
受入態勢がない」と呼ぶ者あり)
第三の
質問点は、賃金と物價及び
予算の
関係に関する問題であります。傳えられる
ところによりますと、
政府は二十三年度
予算につきまして、四月一ケ月の暫定
予算を
國会に提出する予定であるということであります。一ケ月の
政府予算というようなものが一体
予算の名に價するかどうかということがすでに問題でありますが、こういうことは、まあここで問わないことといたしまして、どうしても明らかにしなければならない点は、
政府が賃金及び物價について確たる見解を持
つていないが
ために、一ケ月
予算というような、そういう異例の措置を採らざるを得なくな
つておるのではないかという点であります。時間がございませんので極く端折りますが、賃金問題につきまして二千九百二十円ベースというものが大部分の官公労組の未だ受諾せざる
ところであるという、その事態の下におきまして、四月或いは五月に物價の改訂がなされるという場合には、当然それは二千九百二十円ベースというものも改訂の俎上に上ると思いますが、そういう点についてどのような用意をしておられるかという点であります。
第二に、物價改訂を仮に行なわれるとしますれば、その物價改訂の方式について、一般原則については是非とも
國会の承認を経て頂きたいという点であります。(
拍手)(「
異議なし」と呼ぶ者あり)昨年の七月の改訂の場合に、工業製品については
生産費主義を探り、農産品についてはパリテイ計算方式を探るというふうなことで行われた。その結果を我々は報告を受けただけであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)私は賃金とか物價の問題が今日の
経済の組織の下においては重大な問題であると
考えるが故に、是非とも物價改訂の基本方式については
國会の承認を経て頂きたい。(「
異議なし」と呼ぶ者あり)個々の物價の高さを決めるというような問題について一々諮
つて頂きたいと申上げるのではないのでありまして、そういう
生産費方式とか或いはパリテイ計算方式、こういうものを採るとするならば、これについて諮
つて頂く。或いはそれ以外の方式を探るべきことを
國会は要求するかも知れない。そういう機会を
國会に與えて頂きたいというのであります。(
拍手)これに関連しまして、財政法第三條の特例を設けるというふうなことが新聞に出ておりましたが、これは一体どういう
意味であるか、これも明らかにして貰いたい。
それから最後に、物價改訂に当りまして、工業品と農産物の物價改訂方式が異な
つておる
ために、農業経営上非常に大きなハンデイキヤツプが附けられてしま
つておるということは、
はつきりした事実であろうと思うのであります。そこで今後も昨年と同じように、一方では
生産費方式、他方では、パリテイ計算方式というような、二元的な方式を採られる
方針であるかどうかということも、ここで
はつきりして頂きたい。同時に、工業製品の物價改訂の時期と米の價格の改訂の時期とが五ケ月もずれておる
ために、農業経営上非常に大きな障害を來しておる。このようなずれを起さないように、工業製品の價格の改訂をやるならば、同時に米の價格の改訂も行な
つて頂きたい。そういう点について
政府はどう
考えておるか、明確な御
答弁をお願いしたいと思うのであります。
時間がございませんのでこの辺で打切
つて置きますが、
國民が
芦田内閣の施政
方針というものにないて、余り抽象的過ぎた
ために、未だ納得行かない点が沢山ある。この点を私は取上げて
質問したのでありますから、どうか
責任ある
答弁をして頂きたいと思うのであります。(
拍手)
〔
國務大臣芦田均君
登壇〕