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1948-03-22 第2回国会 参議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十二日(月曜日)    午前十時二十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十八号   昭和二十三年三月二十二日    午前十時開議  第一 國務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) これより本日の会議を開きます。この際請暇の件につきお諮りいたします。田口政五郎君より病氣につき十日間請暇の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) 異議ないと認めます。      ——————————
  5. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) 日程第一、國務大臣演説に関する件(第二日)、順次質疑を許します。板谷順助君。    〔板谷順助登壇拍手〕    〔「河内山宗春しつかり」と呼ぶ者あり〕
  6. 板谷順助

    板谷順助君 私は芦田総理施政演説に対しまして、詳しく承わつたのでありまするが、その内容を見ますると、如何にも從來唱えられておつたところのあらゆる問題を羅列されまして、拾も青年文学の評論のごとき感じをいたしておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)現在の國難を打開するということについて何ら具体的の案のお示しがないのであります。從つてこの御演説の中に何らの新鮮なるところ意見を認めることのできなかつたことは、非常に遺憾に存ずる次第であります。御承知通り、現在の險惡なるところ経済危機を突破いたしまするには、何としても主義主張の一貫したるところの、或る場合によりましては、或る程度の荒療治を行わなければ決して打開はできない。我々はこの見地から、芦田君が如何に挙國一致主張されましても、主義主張の異なる政党とは連合ができないということは言うまでもないことであります。又芦田君は、盛んに政治休戰を唱えておられるが、この意味が如何なる意味であるか分りませんが、とにもかくにも我々は現在の難局を打開するということについては、お互の意見を忌憚なく発表し、お互に意見を討わし合うということを、最も必要に感じておる次第であります。ただお言葉の中に、抽象的ではありまするけれども、中道を歩む政治、又平和、自由、正義を基調とする政治を行うということについては、全然同感であります。我々も將來においてはこの方針を以て進む考えを持つておるのであります。そこで私は政治経済労働の三点につきまして、その大綱について所見を質したいと存ずる次第であります。  先ず第一に、芦田総理お尋ねをしたい。今回政変によつて片山内閣に倒れた。國民のあらゆる多数に、政策の行き詰りによつて倒れたということは、國民方面においてはつきりしておる問題である。はつきり分つておる。併しながら共同責任のあるところ芦田内閣が何のために生れたのであろうか、どうしてできたのであるかということにつきましては、國民は多大の疑惑を持つておる。未だ世間はこの問題に対して單々といたしておるのであります。御承知通り片山内閣が倒れて約一ケ月間、その間空白を生じ政務は澁滯を來し、無責任立場に置いて置かれたのでありまするが、その原因はどこにあるか。申すまでもなく、片山内閣與党諸君政権に執着をいたしておりまして、強いて無理押をしたる結果、かかる結果を生じたものであると私は信ずるものであります。(拍手)私は芦田君とは同志として行動を共にしたことがあるのでありますが、同君は非常に常識の発達したるところ政治家であつて信念に燃え、責任感の強い方であつて、私は常に敬意を表しておつたのであります。然るに今回の行動、今回取られたところ行動に対しましては、世論を無視し、責任政治の如何なることかを解せず、片山君を置き去りにいたしまして、水と油の不自然なるところ連合内閣によつて組閣を強引に強行したところのこの勇気に対しては、驚歎いたしまするが、又一面において我が憲政運用の上において一大汚点を與えたということについては、見逃すことのできない事実であります。(「然り」と呼ぶ者あり)勿論憲法條章によつて國会議員の多数によつて首班が指名されるということは当然でありまするけれども、憲法精神を無視し、國民に対するところ責任を忘れたということについては、見逃すことのできない事実であります。一昨日芦田君はこの壇上において、首班に指名されたということについて感謝の意を表されたのでありまするが、我が参議院は御承知通り院議を以て吉田総裁を指名しておる。芦田総裁に対して否認してるということは御承知通りであります。併しながら一面においし衆議院は三十六票の多数を以て芦田総裁を指名しておる。その内訳を見るならば、ご承知通り社会党が百一票、民主党が八十八票である。そこでいよいよ両院協議会となりまして、我々は院議を提げてこの会議に臨んだのでありまするが、その際における参議院主張は、片山君は病氣で倒れたのではない。即ち追加予算を出したけれども、この遂行はできない。いわゆる政策の破綻によつて倒れたのである。從つて共同責任のあるところ民主党天下を取るということは非條理である。若し國会議員の多数によつて首班が決められるということであるならば、任期四年間は盥廻しができるではないか、果して責任政治なるものを解しておるかとの質問に対しまして、意見に対して、その通り……、両院協議会に臨んだところ社会党の或る議員のごときは、芦田君が最も現在の時局を匡救するについて最適任であるということを言つておる社会党諸君は一体何を考えておるか、而も第一党で、多数党であるところ社会党民主党に追随したと言われても、弁解の途はなかろうと私は信ずる。又芦田君はこの壇上において先般、我が民主党天下人心を離れておらんということをここにおいて力説されておる。長崎縣その他の補欠選挙の例を引いてお話になつておる。併しながらその後において民主党の金城湯池言われるところ熊本縣において、或いは長野縣において、自由党が勝利を得ておる。若し芦田君において現在尚國民民主党を去らんと言うだけの確信があるなら、御承知通り輿論調査解散を希望しておるのであるからして、確信を持つておらるるならば、この際議会解散して信を國民に問うたらどうだ。(拍手)それに対するところ総理の御意見を承わりたい。  更に私は政策問題についてお尋ねをしたい。芦田総理の御演説の中に、日本再建せねばならん、國際信用を回復せねばならん、外資を導入せねばならんということを力説されておる。誠に同感である。同感であるが、これについては、先ず第一に國内の受入態勢を整えなければならん。この点について、現在行われんとしつつあるところ経済力集中排除法案、現にアメリカ輿論といたしましては、日本経済を自主独立させねばならんということを主張されておる。私は、ポツダム宣言を忠実に守るという点から行きますと、財閥の解体、或いはこれに伴うところの独占を禁止するということは当然でありまするけれども、若しこの経済力集中排除法案が廣く適用されるということになつたならば、日本再建は不可能である。又貿易その他の関係におきましても、到底日本平和國家を建設するということはできないと私は信ずる者でありまするが、これに対するところ政府は如何なる対策を持つておるか、これを承りたい。  更に又この御演説の中に、インフレを克服し、民生を安定するということについては、生産増大を図らなければならん、勿論これは当然であります。生産増大を図るということについては、経営と資本労働と、いわゆる三位一体となつて協調を保たなければならんということを力説をされておる。この点についても、勿論同感であります。御承知通り敗戰の結果、我が國においては質材はない、金もない、ただあと余るものは労働であります。労働がいわゆる唯一の資源である。この労働力を如何に活用するかということが、恐らくは私は日本再建の鍵でないかと信ずる者であります。然るに、これに対するところの如何なる労働対策を持つておるか。  そこで私は加藤労相に承わりたい。あなたは、先般労働法規改正せない、改惡をしないということを言つておられる。その趣旨は、生産増大を図る上においていわゆる日本生産増強する上においてお考えになつておるのか、或いは又、生産増強支障があつて労働者本位にお考えになつておるのか、この点がはつきりしておらない。これをはつきり一つご説明を願いたい。私は、現在の労働基準法或いは船員法のごときものは、我が國情に適しておらない、行き過ぎがある、多く改正すべきところの問題があると思う。アメリカのごとき物資が豊富であり、或いは又生活が豊かであるという國の法律を、この敗れた日本にそのまま当て嵌めるということは不合理であります。論より証拠、現在生産が上つておるか、労働力そのものが完全に利用されておるか、この点をよくお考えを願いたい。私はどうしてもこれを改正せざる限りは、日本生産増強は断じてできないということをこの壇上から申上げたい。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)、又最近頻発するところのストライキ、御承知通り労働組合においては爭議権はいわゆる特権である。特権であるが、併しながらこの破れた日本経済再建せねばならんというこの日本において、果して現在のストライキなるものは國情に適しておるか、私はこの点に対して非常に心配をいたしておるのであります。ストライキなるものは、いわゆる國民の同情を買う意味において、國民が共鳴したならば初めて効果がある。今日その結果國民に如何なる迷惑を掛けておるか、國民が如何なるところの反感を持つておるかということをお考えを願わなければならん。御承知通り、現在賃銀値上げを要求しておる。賃銀そのもの値上げする。実際生活の苦しい立場において同情する点はある。併しながらこれは労働者ばかりじやない、國民一般が非常に生活に苦しんである現状であります。であるから、この点についていわゆる労働対策なるものを確立する必要がないか、この点如何にお考えになつておるか。私の希望するところは、先年ソヴイエトが五ケ年計画を立てるに当り、あの困難なるところの五ケ年計画を立てるに当つて、土曜労働、日曜労働まで労働者から進んで提供しておる。私はこの観念を労働者諸君一つ考えを願いたい。  これに関連して私は運輸大臣お尋ねしたい。あなたは海運に精通されておる方であります。恐らくは全滅に近いところの我が國の海運再建については、全力を注がれることと我々は大いに期待をいたしておるのであります。ところが御承知通り船員法なるものが法律となつておる。この船員法が、國際労働條件においてすら、高等船員が一カ年を通じて有給休暇が十二日、普通船員が九日である。然るに日本法律が、高等船員が驚くなかれ一ケ年を通じて二十五日、三ケ月を増すごとに九日を加えるという、世界に類例のないところ法律ができておる。いわゆる労資共倒れになるということで、あなたがその当時反対をしたのである。反対をしたのであるが、今においても私はその信念に変わりないと思う。これを改正する意思があるか、改正する意思があるというよりは、むしろ改正案を提出するだけの覚悟があるかということを伺いたい。又労働基準法適用されるということになりましたならば、現在の鉄道從業員を更に三四万人殖やさなければ仕事ができないという状態である。聞くところによれば、鉄道從業員が一ケ月を通じて正味十日より働いておらん。これは事実なのである。それがために、御承知通り鉄道赤字が今日まで百九十億、このまま進んで行つたならば、一ケ年を通じて恐らくは毎月五六十億の赤字が出るだろうと、こういうのである。こんなことで將來独立採算性が採れるか。これに対して運賃の値上げの問題が起つておりまするが、この復興計画について成案を示さざる限りは、おそらくは私は議会においての承認は困難だと思うのであります。あなたは新らしいが、私はこの場合においてあなたにこれを警告して置く。至急にこの案を一つお出しを願いたい。  更にお尋ねしたいことは三派協定の問題であります。御承知通り社会党民主党協同党の間に三派協定なるものが行われた。極めて抽象的であつて、我々今ここに論議するだけのことはできないが、この中三点を私は伺いたい。先ず第一に、國債利子の利拂い問題であります。御承知通り社会党戰時公債千四百億は擬制資本である。擬制資本であるから元利支拂を停止しろということを提案した。けれどもその後になつて利子だけを支拂停止すると変つて選挙に臨むに当つて選挙民にこれを公約しておる問題であります。又民主党においてはこれの反対を声明しておる。殊に栗栖大藏大臣のごときはこの壇上において利払停止を断じて行わんということを言明されておる。然るにかかるはつきりしたところの問題を北村藏相のごときは、委員会を設けてこれを審議するとは一体何事であるか。この点に対して私は栗栖大藏大臣並びに加藤労働大臣から御答弁を願いたい。  更に又肥料國営電力國営の問題について、芦田総理大臣は到る処において社会主義政策は断じて行わんということを言明しておる。いわゆる原則において肥料國営電力國営なるものは社会主義の理念である。このはつきりしたところの問題を、これを又更に調査会を設けて研究するということは一体何事であるか、國民を愚弄するも甚だしきものであると私は信ずる。これに対するところ答弁芦田首相並びにこれも加藤労相より承りたい。  更に又、國富調査院の問題がこの三派協定において論議されたのでありまするが、果してこれは如何なる性質のものであるか、國民はつきりしない。或いは第二の財産税を取られるのじやないかといつて非常に心配しておる。その内容について、その当時御列席になつたところ岡田運輸大臣から一つ答弁を願いたい。  尚私は、この際栗栖前の大藏大臣、現在の安本長官一つお尋ねしたい。御承知通り、現在生果物自由販賣となつておる。それがために市場に溢れて、自由競爭の結果段々下落の傾向を辿つておる。然るに鮮魚或いは野菜については、未だ統制が解かれておらない。殆んど相変らず闇が八割で配給が二割だ、小賣店に対しては或る程度配給量があるだろうけれども、半分ぐらいは品物の惡いやつ、いい加減のやつを、これを出して後は闇で賣つておる。まあ闇の値段なら高くてもよければ上げますというような現在の実情なんです。何故これを外さんか。私は先般北海道へ行つたのであります。ところが「にしん」が恐らくは二三十万石くらいは獲れるだろう、これが全國に配給される。然るにこの生「にしん」に対して生産業者が十貫目三百十五円に申請しておる。恐らくは安本がこれを査定して三百円くらいにするだろう。それでも我慢ができるだろうというにも拘わらず、驚くなかれ三百九十円に査定しておる。何ということだ、政府値段を吊り上げておる。更に又煙草の問題のごとき、原價が一円くらいより掛かりはせん。これを四十円、五十円に賣出して政府が暴利の範を示しておる。若し財源の必要があるならば何故これを税金で取らんか、殊に又「新生」のごとき、賣れないために御承知通り、百万円の富籤で賣出すような計画を立てておる。(「何枚買うた」と呼ぶ者あり)ところが成る程富籤の結果当つた者は喜ぶだろう、大多数の者は失望落胆する。現内閣は御承知通り道義昂揚主張しておる。道義昂揚主張するにも拘わらず、その結果世道人心惡影響を與えるどういうことが甚大であると私は信ずるものである。これは止めたらいいでしよう。これに対する如阿なるところの見解を持つておるか。  更に又安本長官に伺いたいことは、あなたは経済金融の問題についてお話になつたが、健全金融ということを主張されておる。御承知通り、現在通貨は縮小しておる。通貨は縮小しておりまするが、その結果金融が非常に行き詰つて政府支拂いをしない。政府が厖大なるところ予算を立つたる結果、御承知通り、金がないから支拂いはせん。又民間の金融業者は預金が集まらん。集まらんために貸出を非常に澁つておる。その関係におきまして産業が、如何に政府生産増強を図らんとしても、現在の金融状態では思うようにできやせん。それがために御承知通り、高利貸が跋扈しておりて、月二割以上の高利を以て貸付けておるというような現在の状況であります。私はいつかお話申しげたように、現在の我が國の國民所得に対して通貨の発行は千億が適当なんだ。現在は御承知通り、二千億以上出ておる。であるから政府が如何に通貨信用を維持せんとしても、貨幣が下落するということは自然の運命である。これに対するところ政府は如何なる処置を取らんとするか。もう時間が來たようでありますが、大体以上の質問に対して明快なるところの御答弁をお願いいたします。(拍手)    〔國務大臣芦田均登壇
  7. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 板谷順助君の質疑にお答えいたします。  板谷君は、憲政常道論立場から見て、今回の組閣はその精神に悖つておるではないかという御意見であります。政府が辞職をした時に、反対党政権を讓るのが憲政常道であるという議論については、現在世間に賛否こもごもの議論が討わされておることは御承知通りであります。憲政常道論という議論は、御承知通りに、大正時代に最も強く行われた政治論でありまして、当時衆議院においてはすでに有力なる二大政党勢力を占めておるに拘わらず、大権政治立場からしばしば議会勢力と何ら関係なきいわゆる官僚内閣が出現を見たのでありまして、これに対して憲政常道論が強く叫ばれたことは、皆さんの御記憶の通りであります。然るに新憲法においては、天皇は國会の指名によつて内閣総理大臣を任命すると書いてあります。具体的に申せば、議会の多数党が政治に立つという趣意をはつきりと示したものでありまして、新憲法の解釈によればこれが憲政常道であると政府考えております。從つて今回の組閣憲法精神に反するものであるとは考えておりません。(拍手尤も議会の多数勢力と雖も、著しく世論喰違いの生ずる場合において衆議院解散して民意を問うことは、政治責任感から言つても亦実際政治運用から言つても、当然に行わるべきことであります。ただ議会勢力が著しく民意と懸離れておるというその事実を、どうして掴むかという問題が残されておるのでありまして、政府において現在の衆議院勢力が著しく民論と相違しておるという事実がはつきりいたしますならば、議会によつて、或いは又政府によつて衆議院解散が行わるべきものと信じております。今日只今直ちに衆議院解散するという意向は政府において持つておりません。  次に、外資の導入を促進する点から見て、経済力集中排除法案日本経済再建に致命的の打撃を與えるのではないか、これをどう政府は見ておるかという御質問でありました。御承知通りポツダム宣言直後に発表されたる連合國の対日基本政策の中に、日本の過度なる経済力集中を排除する方法を取るという方針が明白に記されておるのでありまして、過度に経済力集中を認めることは、今日の日本として到底許されない問題であります。併しながら先頃議会の賛同を得ましたる経済力集中排除法なるものは、極めて抽象的な法律でありまして、その実際の適用は今後の取扱いに持つべき点が頗る多いのであります。政府としましては、この法律適用に際して、日本経済の再興を妨げるごとき問題の起らないように極力注意を拂うことは勿論でありまして、これがために直ちに日本再建の事業が挫折するがごときことは絶対に避けなければならないと信じておる次第であります。その他の問題につきましては、それぞれ所管の大臣より答弁いたすことを取り計らいます。(拍手)    〔國務大臣加藤勘十君登壇拍手
  8. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 只今板谷君の御質問にお答えをいたします。現在の情勢において労働法規改正改惡を行わないと言つたが、その眞意が不明確である。生産増強という立場からその必要がないというのか、或いは生産増強支障があつても行わないというのか、その点が明白でない。こういう御意見のように承わりました。今日の我が國の置かれたる状態におきまして、経済再建即ち生産増強を希わない者は誰一人ないと存じます。從つて生産増強ためにか、或いは生産増強支障があつてもいいのか、その点については今申上げたように、言わずとて明らかで、生産増強ためにこそ今日労働関係法規改正改惡すべきでないという意見が生れて來るのであります。御承知通り生産増強は、何と申しましても生産基本的力である労働者生産意欲が高まらなければ、如何に豊富なる資本、潤沢なる資材が準備されましても、この豊富なる資本、潤沢なる資材を実際に製品化するためには、労働者生産意欲増強に持たなければならないのであります。(拍手)そういう点から見まして、何故今日の法規をいじる必要がないかということが言われるのでありまするが、それは成る程今日の労働関係法規の中には、労働者側から見ても改めて欲しいと思われる点があること事実であります。これはこれらの法律の立法当初に遡つて考えますれば、そこに如何に労働者側意見が十分に取り容れられていなかつたかということも明らかであります。同時に又その後の運営において、尚労働者側から見てこれこれの点を改正して欲しいという希望が生れて来ておることも御承知通りであります。それにも拘わらず今日私がこれらの点について手を着けるべきでないと申上げましたゆえんのものは前内閣以來いろいろな方面から、現在の労働関係法規が変えられるのではないか、こういうことから労働者諸君には想像以上に不安と疑惑の念が起つて來ておるのであります。  今日御承知通り経済的な点におきまして、労働者勤労者大衆は実際生活の苦しい状態にありまして、その経済的な苦しい状態から様々の爭議形態が生れておりますが、その上更にそういう直接経済的な問題と関係のない労働関係法規が、労働者側から見て改惡と思われるようなことが若し行われるとするならば、一層今日の経済的不安から生れて來る爭議形態、即ち言葉を換えて申しますれば、労働者諸君生産意欲昂揚せしむるという上に、非常に障害になる結果を生ずることが恐れられましたが故に、私は今日の段階においては、そうした不安を労働者諸君に抱かしめないためにも、こういうものには善かれ惡しかれ手を着けるべきでない。こういう信念の上に立つて申上げた次第であります。(拍手)  尚労働基準法などの点もお取上げになりましたようでありますが、御承知通り日本の戰爭までの社会生活は非常に封建的な色彩が強かつたのであります。戰爭後、敗戰の悲しみの中からではありまするが、ともかく日本は新らしき民主主義國家として飛躍的な成長を遂げなければならない状態に置かれましたために、過去の生活習慣とどうしても喰違つた感じの上にそうした民主的に飛躍的な発展を遂げなければならない現実と、今までの我々が習慣付けられて來た生活上の心理形態との間に、若干の喰違いがお互の間に生じておつたことも、これ亦否定することのできない事実であります。何と申しましても、そういう封建的な生活習慣から、飛躍的に民主主義形態へ発展する轉化の過程において、労働者生活、農村における農民生活の上に纏わつて來た封建的な一切のものを拂拭するためには、どうしても法規などの点において飛躍的な改正が行われ、或いは新らしき法律が生れ、古き法律が排除されるということも、これ亦止むを得なかつた状態でありまして、そういう点からこれらの労働関係法規が生れ出たのであります。從つてこれらの労働関係法規は、労働組合法にしましても、労働基準法にしましても、労働関係調整法にしましても、いずれも新時代に処する労働者基本的権利を擁護するために生れたものであり、同時にその義務を規定したものであります。從つて私はこの労働者の権利義務の基本的な規定をした労働関係法規は、是非共新時代に、即ち民主主義時代においては、きつく守られなければならん法律であると信じます。(拍手)こうした意味におきまして、一部からは、それは行き過ぎたものではないかと、こういう御心配もあるかも存じませんが、今申しましたような次第で、この点は時に御了承を願いたいと存じます。  又現在の爭議その他につきましても、今申しまする通り、爭議など恐らくどの一人の労働者と雖も欲するものではないのでありますが、今日の経済生活の苦しさが多くの労働者諸君を駆つて爭議形態に移らしめる。從つて政府としましては、是非共こうした労働者をして労働爭議のような手段に訴えなくても済むような状態に、その生活の安定を得られるような方向に努力して行きたいと、こう考えております。從つて現在の諸法規の問題は、これをどのように手を著けなくても、運用の面におきまして十分に力を注いで参りますれば、こうしたことを防ぐ上に効果を生ずるのではないかと考えます。この点からも亦手を著ける必要を現在のところ感じておりません。  最後に、これは私に特に名指しての御質問でありましたが、軍事公債の利子支拂停止の問題であるとか、或いは肥料國管の問題であるとか、こうした点をどのように考えておるかというお尋ねでありましたが、私は三党政策協定に関する問題は、三党間においてその方向が示され、その方面從つて具体的な方策が協議決定される段取になつておりまするから、從つてその三党間において具体的な方策が協議決定されたならば、それを忠実に政府は実際に移して行くということが我々に與えられたる義務であると、このように考えておるということを御了承を願いたいと存じます。(拍手)(「答弁になつておらん」と呼ぶ者あり)    〔國務大臣岡田勢一君登壇拍手
  9. 岡田勢一

    國務大臣(岡田勢一君) 板谷さんの御質問の中、私に対しまする項目についてお答え申上げます。  第一に、現行の船員法は行き過ぎておる。殊に船員の有給休暇の点については、國際労働條約を上廻つておるという御指摘でありますが、見方によりましては御指摘の通り、國際労働條約を上廻つておると思うのでありますが、國際労働條約の中に定められておりまする高級船員十二日、普通船員九日とあります点は、私といたしましてはその最低規定せられておるものであると考えております。從いまして只今の現状から考えまして、陸上との均衡などから考えまして、現行の一ケ年二十五日といいますことは、これはやらなけれればならん妥当なところではないかと考えておりますわけであります。(「反対しておるのではない」、「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)で、直ちにこの現行船員法改正は、只今ところ考えておりません次第であります。  次に、鉄道從業員の勤務能率が惡いという御指摘でございます。この御指摘につきましては謹んで私もお受けいたします。併し只今実際におきましては、極く一部にはさような者もあるかも分らんのでありますが、先般の國鉄從業員組合の下諏訪における全國大会の結果に見ましても、今日の國内の経済情勢をよく認識いたしまして、政府の説明するところに從いまして、新賃金ベースその他を全面的に承認をいたしました。尚その後に継続せんとしておりました或地方の爭議を、これを中止命令を発しまして、只今円満に解決をいたしており、その関係から見ましても、國鉄從業員の全体がこの経済危機打開に、不自由なところを忍びまして協力をするという、強い意向を示しておりますことは考えられるのでありまして、この点につきましては國民諸君におかれましても十分に納得御了承下さることと私は信じております。運輸当局といたしましても喜んでおります次第であります。  鉄道運賃の値上げを至急にやらないかという御意見でございますが、鉄道運賃につきましては、御指摘のごとく独立採算制の問題もあります。只今鉄道は事実相当な赤字を出しつつあるのでありますが、併しこれはいろいろな関係もありまして、只今ところは運賃を直ぐに上げるという段階には達しておりません。さような時が若し参りました場合には、國会の皆さんに御審議をお願いする時期が來るかも分りません。まだ決定をいたしておりません。  それから三党協定の中における國富調査税について、私がどう思うかという御指摘であります。國富調査院の設定につきましては、その他の新税などとも同時に、この税制の改革について今後期間を設けまして、その上で檢討をするという決定に相成つております。(「私のお尋ねしておるのは國富調査税がどういう性質かということなんだ、答弁になつておらん」、「議長、私語を禁じ給え」と呼ぶ者あり)國富調査税の性質は、大体提案者の意見によりますると、國民の富の程度を調べるために要る手数料程度の極く軽微のものを貰うのであるというような説明でありましたのでありますが、この点については、今後その機関におけるところの檢討によつて決せられるものと存じております。以上であります。    〔國務大臣北村徳太郎君登壇拍手
  10. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 板谷議員のお尋ねにお答え申上げたいと思います。健全金融という意味において、その健全金融ために却つて産業資金を圧迫しておるのじやないかと、こういうような御趣旨のお尋ねであつたと思いますが、健全金融と申しましても、結局これは板谷さんの夙に御承知のように、國民全体が健全でなければなりませず、從つてそのことは国民所得と、國家財政と、産業資金との極めて円滿な調和的な均衡を図るということでなければならんと思うのであります。ところがそのことが現在の表情においては極めて困難な情勢に立たされておりますのでありまして、かような中において、尚健全金融ということを強く主張しなければならんことは、何と申しましても通貨の増発を抑制しなければならん。インフレーシヨンの現段階において、御指摘になりましたように、通貨の増発を抑制するというような一面を持つと共に、産業資金を又供給しなければならん、こういう非常にまあむずかしい問題の中に立つておるのであります。從つて國民蓄積のために、救國貯蓄運動その他御指摘になりました富籤、多少の弊害が伴うということを認めながらも、尚そういうことを敢えてして國民資金の吸收、國民蓄積の増大ということにまあ努力をしておるわけであります。この点におきまして尚未だしのものがございますが、今後十分に努力を傾けまして、一方におきましては産業資金、殊に生産増強ために必要なる産業資金の放出を潤沢にするために、一方においては通貨の増発を抑制するというようなことにおいて努力を続けたいと存じておるのであります。それで、苟くもこの健全金融の故に産業を圧迫するというようなことになつては勿論これは相成らんのでございまして、こういう点においては今後十分氣をつけたい、昨年末以来、特に昨年末おいて通貨の相当増発を見たのでありますけれども、新らしい年に入りまして、この一号以來租税の收入が相当潤沢に参りましたために、御承知通り通貨の増発は一應抑止されておるのでございます。  尚政府の支拂が非常に遅れておるというような御指摘がございましたが、これは事実でございます。遺憾ながら事実でございまして、私共も大いにこれは促進しなければならんということを申しておるのでありまして、最近には終戰処理費、その他の支拂を相当放出いたしまして、この点においてはやや緩和を見ておると、かように思うのでありますが、御指摘の点につきましては今後も尚十分努力いたしまして、苟くも健全金融の各において、一方において生産増強を圧迫するというようなことがありましては相成らんのでございますから、その点には十分努力をいたしたいと、かように考えておる次第であります。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫君登壇
  11. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 板谷議員のお尋ねである三党協定における軍事公債協定における軍事公債利子の停止的処理の問題について、先ず第一にお答えしたいと思うのであります。新内閣は現下の新らしい情勢に應じまして三党が政策協定をいたしたのであります。戰時公債の問題につきましても一應の方向について協定をした次第であります。その影響いたしますところが、或いはその方法その他については、委員を挙げて、そうしてそこにおいて研究する、そうして決定して行くということに相成つておるのでありまして、その委員会につきましては、政府はこの予算その他の関係も影響するところがありますので、成るべく速かに近い機会に委員会を作りまして、そうしてその事行に移ることに相成つておる次第でございます。  それから次には、鮮魚、野菜等の生鮮食糧の統制についてお尋ねがあつたと思うのでありますが、現下の状況におきましては、國民生活の安定のために生鮮食料の統制は、これは止むを得ないことと、こう考えておる次第でありますが、現行統制の方法その他につきましては、改善すべき点も多々あると思われますので、その点は十分改善をいたして行きたいと思う次第であります。必要があるならば價格の補正とか修正とか、或いはその必要のない物について更に統制が行われているというようなことがはつきりいたしますならば、統制から外すとか、そういうような点も十分考えたいと思うのであります。ただこの統制が、昨日も申上げましたように、実効を挙げて行かなければ目的を達しないわけでありますから、集荷とか配給等についても十分研究を加えて、改善すべきところは改善いたしたいと考える次第であります。  尚健全金融については、大藏大臣からすでに答弁がございましたから、重ねて申上げないことにいたしたいと思つております。(拍手
  12. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) 河井彌八君。    〔河井彌八君登壇拍手
  13. 河井彌八

    ○河井彌八君 私は一昨日この席上におきまして総理大臣の施政方針演説を伺い、引続いて安本長官の御説明をも伺つたのであります。我が國現下の百般の事情が実に行詰りの極に達しておる状態に照らしまして、これは如何にして打開して行くか、國家再建を如何にして速かに完成するかということを考えまするときに、私は総理大臣演説を伺いまして、甚だ心細く感じたのであります。各種の政策は大綱を挙げてお示しになりましたけれども、併しその一つを解決するということすら到底これはできにくいことではないかと思うのであります。今日の困難な事情は互に相関連いたしておりまするから、一つ一つ解決するということは極めて困難であろうと思いますが、結局はその行詰りの結果はどうなるであろうということを考えまするときに、結局は外國の力にでもよるの外はないということに、すべてのものが帰著するのではないかと思います。一昨日我々が可決いたしました予算について見ましても、二千九百二十円ベース、あれの採用のごときでも、今後又同樣に歳出の増加ということが起るのでありまして、その同樣という意味は、やはり人件費が極めて急速に増加するという結果になるのではないかと考えるのであります。そうすれば将來國家の政策をどういうふうにして実行するかと言えば、予算の上から申しますれば、結局人件費の増加に終つてしまつて、事業費というものは殆んどなくなつてしまうということになりはせんかということを私は心配いたすものであります。(拍手)どうかそういう際におきましてどれを以てどの政策考えて見ましても行詰りでありますならば、結局は政府が本当の責任を明らかにして、これならば確かにやつて行ける、こうしたならば必ずやり通すというその責任を明らかにした政治を、一つ一つに亘つて実行して頂きたいと思うのであります。結局は外國の力によらず、又與党と申しましても、この前の片山内閣が倒れたように、誠に心細い支持者の上に立つて政府でありまするから、信念を持つての正しい政治を、責任を以てこれを実行するということに力を盡して頂きたいのであります。それには私共は総理首班の選定におきまして、参議院は少数の差と雖も吉田茂氏を推薦したのであります。併し衆議院において二百十六票の多数を似て御当選になつた芦田氏が総理になられたのでありまするから、我々といたしましては芦田氏に対して、内閣のこの力を結集して信念を持つて責任ある政治を実行して欲しいということを要望するのであります。私なども芦田君には投票いたしませんでした。併しながら芦田君が眞に信念を持つて正しい政治を強く実行せられるならば、私などは満腔の同意を表するに吝かではないのであります。参議院の性格といたしましては、大多数の議員は自分たちの仲間の組織している内閣でないからこれに反対する、自分たちの組織している内閣であるからこれを絶対に何でも支持するというような考え方ではなくして、内閣國民ために、國家のために、眞に正しい政治を強く実行するという決意に立つて政策を立てられるならば、これを賛成するに吝かでないのであります。(拍手)私は緑風会の一員としてこのこと言うのでありますけれども。緑風会の諸君多数がかような感じを持つていると思います。又参議院議員全体の中で相当多数の方がさような感じを持つているのであると、かように考えます。これは参議院の性格から申しましても当然であるのであります。  それにつきまして、もう一つ私は意見を述べまして政府の御所信を伺いたい。といいのは行政機構の改革をどうなさるかいうことであります。これは前内閣においてすでにお約束になつた事柄でありまするから、必ずや急速に実行せられるであろうと思うのであります。責任政治を本当に実行しようというならば、行政機構が確立して、これが一貫した政治力をここに発揮するという、行政力を発揮するということでなければ正しい政治責任政治が行われないのでありまするから、この点そう外國の力によることでもなし、又自分の與党がどうかということを心配するでなし、國民を相手にして善政を行う上において絶体に必要なことでありまするから、これは必ず実行すると思うのでありまするが、これを如何にして行われるか、いつ実行せられるかということをお尋ねしたいのであります。この場合におきまして私は政務と事務、政治行政というものの区別をはつきりして欲しいのであります。これは曾ては官僚という行政組織の一種の固りができまして、実に大きな弊害を流しておりましたけれども、併し今日はその反対に政務官が行政に干渉し、又行政官が政務に耽けるというようなことがあるのでありまして、これであつては本当にこの行政機構の改革というものはできないのであります。願わくば行政機構を改革いたしまする時には、その点に十分なる注意を以て御決行になることを希望いたすのであります。或る國務大臣が就任の時に、その省に参りまして挨拶をした。そうすると直ちにその職員組合の人が要求を述べて、これをどうしてくれるかという膝詰め談判があつた。その時にそれは自分もよく考えておることであるから何とか努力いたしましようということを言つたという新聞記事があつたのでありますが、私はそういうことはやはり責任政治を本当に遂行しようという熱意に燃えた大臣であるならば、その言葉が出ようがない。今日國家のこの実情を述べまして、こうなければならんということを強く主張しなければならんと、かように考えます。こういう点につきましても私は内閣が強い政治を行い、そして行政機構を正しくして、政治が行政を通して強く現われるということでなければ、國民が信頼しないと、かように考えます。どうかそういう点におきまして、私は行政機構が正しく運用せられるように改正せられんことを希望いたします。  もう一つ申したいのは、官吏の綱紀粛正であります。過日片山首相の名前を以て、官吏の服務紀律の励行をすべきことを指示せられておりますが、これはどういうふうに取扱つておるのでありまするか、この実際を見ましても、官吏が多数組合を作つて、そして法規的には差支えないかどうか知りませんが、計画的にサボをやり、計画的にストライキをやつておるというような事実は、実は國民が甚だ迷惑とするところであります。こういうことに対しまして、政府は過日のこの片山首相の訓示をば如何に取扱つておるのでありますか、この点を承わりたいのであります。その他、今日官吏を攻撃することは愼しむべきであると思いますけれども、長々の新聞紙上等に出ておる官吏の犯罪、又綱紀の紊乱しておること枚挙に遑あらずであります。この紀律を正し、そうして本当に國民に信頼をされ、尊敬されるところの官吏がその職に就くのでなければ、どんなことをいたしましても責任政治の実効は挙らないと思います。この点につきまして私は総理大臣に要求をし、そして又総理大臣の御決意を伺いたいと思うのであります。  次に、私は食糧の自給策につきまして政府の御所見を承わりたいと思います。私は年率食糧の自給國内における自給自足の達成が極めて必要であるということを考えておるものでありまして、これが主張をば数年に亘つて続けております。ところが敗戦の結果國土は狭くなり、又國内の人口は急激に増加したという事実から、食糧の自給などはできるものではないという考えが非常に強くなつておるのでありまするが、私はやりようによつて必ずこれはできる、こういうふうに考えております。一昨日の総理大臣、又経済安定本部長官の御説明を承わりますると、その中にはどうやら食糧自給政策をこれから採るがごとく感ぜられたのでありまするから、私はこれに対して非常に喜びを感じたのであります。どういう点において自給ができるかと申しまするならば、私は政府政策を推測いたしまするのに、第一には現在あるところの耕地面積からの収穫量の増加であります。第二は、総理大臣の御言葉と思いまするが、三百万町歩の開墾をするのだということであつたと思うのであります。そうして、それが結局食糧自給政策の根幹をなすように考えるのでありまするけれども、若しできなかつたらどうするかと言えば、これは結局海外に依存する、進駐軍の御好意に縋るのだという意味と、こう推測いたしたのであります。併し私はこれについてその内容を承わりませんけれども、これはなかなか容易にできるものではないと思います。政府が発表せられましたのは、三月一日に地方長官を集めて説明せられましたすべての主食糧の一割増産の意見であります。一割増産が米においても、麦においても、甘藷においても、馬鈴薯においてもできるかと言えば、私はこれは無理なことだと思います。米において一割増産するということは、私は殆んど今の場合できない、かように考えます。即ち一反歩において二石一斗五升なにがしというものを穫れということでありますが、日本の最高レコードは二石二斗六升であります。昭和十七年、或いは昨年のごときでも相当沢山穫れておりますが、二石六升しか穫れていない。それを二石一斗五升まで上せるということは、これは容易なことでできるものではないと思います。麦においては私はそんなにむずかしいことではないと思いますが、甘藷において考えまするときには、これはもつと増産力を倍にする三杯にするということができるような標準を立てて然るべきだと思うのでありますから、あの計画のごときは間違いであるのではないかと思うのであります。それから三百万町歩の開墾なんということは、これは私はどうも、将來はとにかく、今日において着手すべきものではない。百五十五万町歩の計画すらできなかつた。これからどうするかということを考えるに、それをどういうふうに改訂するかということを考えるべきであるのに、三百万町歩の開墾というのは、どうしてお氣がお付きになりましたか、私には了解ができないのであります。結局はやはり外國から、進駐軍に依頼いたしまして、進駐軍の御好意によりまして、百五十万トンくらいの食糧を輸入しなければならんということになるのではないかと思うのであります。百五十万トンの食糧は國民の十分の一を養う力を持つております。それが自給できなかつたならば、國民はそれが輸入できなかつたならば餓死せなければならん、一割の國民が食糧を失うのであります。併し一昨年は八十六万トンも食糧を輸入し、昨年は百八十三万九千トンも輸入したことから考えますと、今後どうしてもそれだけの必要の食糧を得るためには、自給するか或いは外國からこれを持つて来るかということになるでありまするが、どうしてもその代金の支拂の方法はないのであります。否應なしに自給しなければならんということになります。それにはどうするかと言えば、只今申上げましたように、生産力の頂点に達している米なら米の生産をば控えて、そうして生産力をこれから伸ばし得る食糧の増産による外はないと思います。そういうことをやりますれば、例えば三合配給の基準をとりましても凡そ米に換算して一億石あればよろしい。その一億石の分を生産することはできるものだと私は考えるのであります。即ち米の生産を減らしましても、その減つた分を生産力の極めて旺盛な、三倍乃至四倍に達し得るところの甘藷、馬鈴薯を以てこれを増加して、補つて行けばよろしいのだ、こういうふうに考えます。そういたしますれば、将来人口が増加いたしましても、その方法さえ採つてますれば自給自足はできるものである、こういうふうに考えておるのであります。こういう方法を採りまするならば、反対論者は、それはそんなことをしたところで、外國に安い食糧があるのであるから、現に過日もアメリカのシカゴの市場において小麦が安くなつたから、そういうものはどんどん内地に入つて来て農業経営が困難になる、いわゆる農業恐慌が起るということを言う人もありまするけれども、私はそれは絶対にない。遠い将来は知らず、今日直ちには起らない。なぜかと言えば、それは支拂うべき対價がないからであります。どんなに安いものがあつても、これを支拂う対價がなければ輸入はできないのであります。そういう安いものが入つて来るまでに、國内の経済を整備し、國内の農業施設を改善して行きますれば、農業恐慌は免れることができるのではないかと思うのであります。  それではどうするかと言えば、結局はそれは甘藷の増産にあるということであります。甘藷の増産と申しますと、如何にも品惡く聞えるものでありまするけれども、併し國民を救う力は甘藷が持つているのであります。米において行き詰つたこの食糧事情を打開するには、甘藷によつて行く外はないものと考えるのであります。甘藷が救荒食物として重んぜられたことは皆さん御承知通りであります。戰時に、ラバウルにおいて十万の兵隊がどうして生きて行つたかと言えば、あそこで「さつまいも」を作つたからであります。沖繩の人口が、甘藷が沖繩に栽培せられてから急に七倍に殖えたということは、やはり甘藷のお蔭であります。今日我が日本は正にその飢餓と同じ状況、まかり間違えば一千万人に近い人口が餓死せんとするような危險な時におきまして、この甘藷に頼らずして國を救うということはどうしてできるかといわなければならぬのであります。増産力の多いことは、大体我々の実際におきましては、千貫穫ることはむずかしくない。千貫でありますれば、良い種類を用いますれば米八石に当る。今日全國の平均、米が一反二石、二石に対して八石穫れるものをなぜ栽培しないか。二石の方を止めて三石のものを獲るということは当然であります。又生産費から申しましても、労力から申せば、米は二石穫るのに二十一人の手間を要するのでありまする。甘藷で千貫約八石を穫りまするのに十人の手間で足りるのであるということを考えて見まするならば、甘藷の増産力が如何に優秀であるかということが分る。米におきましても大阪の毎日新聞富民協会が曾て年々やつたことでありますが、作柄の共進会をやりました。最高は八石四斗であつたと思うのです。私が今関係しておりまする甘藷の二千貫会の人々は二千貫を穫つておる。二千貫と申しますれば米に換算いたしまして十四石乃至十六石であります。八石四斗穫るということは殆んど不可能である。二千貫の藷を穫るということは決して不可能ではない。その例が各地に出ておるのであります。でありまするから、この方法を是非探つて欲しいと思うのであります。そういたしまするにつきましては、どうか増産方法を‥‥栽培方法のこれは改善によるのでありまするから、その栽培方法の普及徹底ということを政府において心がけて頂きたい。それには今度地方長官に指示せられたようなこの作付面積の固定的なものでなしに、綜合作付制を採つて頂きたい。又供出においても綜合供出制を採つて頂きたいと思うのであります。こういうことによつて私は甘藷の増産がぐんと伸びて来ると思います。我々は今民間運動といたしまして、國会議員、両院議員有志によつて藷類増産中央会というものを結成しております。これによつて政府は勿論、地方廳、農業会、各種團体等に呼びかけまして増産に努めております。馬鈴薯におきましても同樣である。甘藷の二千貫会、馬鈴薯の千貫会などを結成して、各地にこの運動を実行しております。而してその経費のごときも凡そ一年に一億円あつたらできることだと思います。一億円によつて大体三年間にこの食糧自給政策が完成いたしまするならば、年々五百億円、若しくは六百億円に相当する外國の食糧を仰がなければならんということがなくなるのであります。こういう計算が私は立つと思います。それにつきましては、どうか政府において予算上の措置をも探つて、そうしてこの仕事ができまするように希望いたすのであります。とかく農林省の内部におきましても、こういう点にはまだ了解が十分でない。米偏重主義一点張りであります。これではどうしても國の食糧事情の解決はできない、食糧困難の解決はできない、かように考えます。それには更に進んで農村工業、加工工業という大切なことが出て参ります。又甘藷を作りますれば、それによつて畜産を導入することができる。これが将來日本の農村の行くべき型であり、日本農業の進むべき途であるというように考えるのであります。願わくばこれらのことにつきまして、政府は虚心坦懷に、直ちに熱誠を以てこれが実現せられるように切に希望するのであります。  私はむずかしいことは考えたくない。厄介なイデオロギーの議論などをいたしまして、内閣が一月も組閣ができなかつたというようなことは実に遺憾に思います。(拍手)速急に、正しい、実現のできることを実行することが政治であると思います。(拍手)どうか私は、國民をして甘藷でも何でもよい。速かに腹一ぱい食わせる時が来るようにしたい。(拍手)ということを念願するのであります。これが即ち本当の政治であると、私はかように主張いたすものであります。(拍手)    〔國務大臣芦田均登壇
  14. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 河合君の質疑にお答えいたします。  河合君が先ずその質問の冒頭において、この政府議会の與党の基礎においても十分強固なものとも思われないが、思い切つた政策を断行するのがよい。勇氣を似て危機突破の政策を断行せよという御所見をお述べになりました。多年同僚としての交際をいたしております私としては、河合君のお人柄も十分承知いたしております。あの熱心なる御激励に対しては、深き感激を以て拜聽いたしたのであります。  次に行政機構の改革をどうするかというお尋ねでありました、現在の行政機構に相当の改革を加えなければならん必要は朝野共に痛感いたしておるのでありまして、出先官憲の整理の問題、或いは重複したる行政機関の統合の問題、行政機関能率発揮の問題、幾多の問題が存在しているのでありまして、片山内閣以来、行政機構の改革につきましては、行政調査部においてほぼその案を作つております。これらの案を勘案いたしまして、速急に行政機構の改革に着手いたす考えでおります。  官吏の綱紀弛緩の問題は、嚴しい世間の批判を受けておるのでありまして、この際この点について、政府はどういう政策を探るかという御質疑でありました。先般片山内閣より発表いたしました官吏の綱紀の粛正に関する方針は、現内閣においてもそのままこれを継承いたしまして、この際官吏の服務紀律等に違反する者に対しては、嚴重にこれを処分する決心をいたしております。出來得る限りの力を似て官吏の紀綱を正して行きたい、かように考えておるのであります。  食糧問題についての御意見は深く関心を似て拜聽いたしました。その中で施政の方針に関する演説について多少の誤解を與えたかと思いますから、その点を一言補足して申上げて置きたいと思いますのは、あの演説の中で、平野地帶と山岳地帶の中間にあるいわゆる波丘地帶、大まかに掴んで約三百万町歩を食糧増産に利用すべきであるということを申述べたのでありますが、それが必ずしもこの波丘地帶に開墾をするという考え方ではなかつたのであります。むしろこの中に、或いは甘藷とか栗とかいつたような栽培に適する土地もありましよう。けれども、日本の食糧問題を解決すると同時に、食生活の改良をしなければならん。食生活の改良という意味でありますが、とかく澱粉にのみ過重に依存しておつた我々は、傳統的の食生活を次第に蛋白及び脂肪分を多量に摂取するがごとき食生活に改めるということであります。日本の今日の國土の現状から見て、又日本の人種改良の上から見ても、この点はどうしても考えてかからなければならん問題であります。然らば有畜農業を奨励するにしても、或いは養鶏業を興すにしても、最も利用し得る土地はこの波丘地帶であります。簡單な例を取つて申すならば、日本の養鶏業が戰爭以來著るしく衰えたその原因は何にあるかと言えば、結局餌がないということであります。若しこの際海外から戰前同樣の養鶏の飼料を輸入することができるならば、國内における養鶏業が今日の二倍に発達して、鶏卵が安くなり、鶏肉が容易に手に入ることは、極めて簡單にできる。この飼料の輸入をどうして懇請するかということが残されておる。そういう意味において日本の農業の將來は、この波丘地帶三百万町歩の利用にかかるところ頗る多いという意味において述べたのでありまして、必ずしもこれを主要食糧のために開墾するという意味ではなかつたのであります。尚甘藷については、河井君は、私の知つておる限り過去十数年に亘つて渾身的の努力をされたのであります。我が國の甘藷の栽培が今日のごとき事態になつたのは、河井君の御盡力に負うところ頗る多い。現に私の郷里に近い大江山の一僻村においては、河井君の指導によつて、その部落では甘藷の栽培を始めて漸く更生することができたという実例もあります。そういつた過去の御経驗によつて只今詳細の政策をお示しになりましたが、私は多大の関心を以て伺つたのであり、河合君の末弟の一人として、甘藷の栽培には多少の経驗も持つております。必ず御指示に副うごとく、今後甘藷の増産について盡力いたしたいと考えておる次第であります。(拍手)    〔國務大臣永江一夫君登壇拍手
  15. 永江一夫

    國務大臣(永江一夫君) 私に対する質問の点につきまして、只今総理大臣からお答えになりました点に重複しない範囲でお答えを申上げます。  河井さんが非常に甘藷の増産につきまして、その薀蓄を傾けて所信を明らかにせられましたことについては、私もこれに十分敬意を表したいと考えます。甘藷が米に比しまして、非常に反当生産の面におきましても、或いは栄養價値の多い点につきましても、非常に有力な主食の役割をいたしおりますることは、お示しの通りでございますが、これを今お説のごとくに甘藷の作付面積を増大いたしまして、場合によつては水田等、米の生産件付の面積を圧縮して、自給自足の体制を整えるという点につきましては、今遽かにこれを國の政策として採用するということは、今少し研究をいたしたい、かように考えておる次第であります。御承知のように、甘藷はその保存の立場から申しましても亦國民の食糧に対する嗜好の点から申しましても、一つの特徴がございます。從つてこの甘藷を主食の重要な部分に入れますためには、長や間傳統的に我が國の食生活の重要な部分を占めておりましたところの、いわゆる食糧の粒食の面を粉食の面に切替えるということについて、政府も今一段の努力をいたして参りたいと思いまするが、特に米につきましては、今いろいろお示しがございましたけれども尚一割増産等についても農家にお願いをいたしまして、政府はその達成を期しておる際でありまして、米の面においても尚多くの増産を希望しております立場もありまするし、又米の増産の面から見ましても、水田は土地の特質から申しまして、これを甘藷の作付に変えるというようなことについては、実際上いろいろな困難な点があると思いますから、そういう点も併せて研究をいたしまして、今お示しのように、食糧を我が國の領土内において自給自足をいたしまするためには、その他各般の施策を行いますると同時に、今お示しのありました甘藷を更に増産するという点について、一層の具体的な研鑚を行なつて見たいと、かように考えておるわけであります。尚その他、綜合供出等についても御発言がございましたが、この点も今遽かに採用することは非常に困難であろう、かように思つておるわけであります。その他農村の工業化、畜産の奨励等、有力なる御指示がありましたが、これらの点は、政府としては全面的にこれを具体化するために一層の努力を行いたい、かように考えております。以上お答えいたします。(拍手
  16. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) 波多野鼎君。    〔波多野鼎君登壇
  17. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 芦田内閣は御承知のように、社会党民主党、並びに國協党の三党政策協定によつて成立いたしたものであります。從つてこの三党の政策協定は、いわば芦田内閣の生命であろうと思うのであります。三党政策協定がなかつたならば、芦田内閣も成立しなかつたであろうという程の重要な意味を持つ政策協定であろうと思う。でありますから、この政策協定内容につきましては、これは天下の人々が十分に納得しておらなければならない問題であろうと思う。これは政府政治の公明を期する上におきましても、亦民主政治の本領を発揮する上においても、絶対に必要な点であろうと思つております。一昨日芦田首相はその施政方針演説において國民の側から言えば、芦田内閣の生命であり、その存在理由とも言うべき三党政策協定内容が明確になりません以上、協力しようにも力の入れどころがないというような感じを持たざるを得ないのであります。ところが、そういう重大な三党政策協定内容につきまして、從來明確な発表がなかつたのであります。國民は新聞紙上等を通じましていろいろのことを知らされておるけれども、その新聞の報道は時に区々に分れておりまして、今だ曾て信憑すべき発表に接しておりません。從つて協定に関する國民の理解は未だ帰一するところを知らないという状態であります。そればかりではない。政策協定責任を持つ三党の首脳部間においてすら協定内容について解釈が分かれておるとか、或いは意見の対立があるというようなことさえも、新聞を通じて報道されておる状態であります。從つて、こういうわけで、三党政策協定に関連しまして一種の疑いが世上に流布されておる。即ち芦田内閣は三党政策協定を忠実に実行する熱意を持つておるか、どうかという点についての疑い、或いは一体何のため政策協定をやつたのか、協定された政策を実行するために連立内閣を作つたのか、それとも連立内閣を作るために三党政策協定をやつたのか、どちらであるか、といつたような意見、甚だしきに至りましては、政策協定というようなことは、結局あれは中区を作るための口実に過ぎないじやないか、遮二無二内閣を成立させるための便宜的手段としてあれをやつたんではないかというような疑惑さえも次第に深くなつて來ておる。こういう疑惑に拍車をかけたものは、先般の追加予算の中におきまして六・三制の経費が削除されたということがあります。これがそういう疑惑に更に拍車をかけた。六・三制の完遂ということは、これは三党政策協定の一項目にもあつたかと記憶いたしますが、又首相の施政方針演説の中におきましても、文教の重視ということは芦田内閣が特に力を入れる点であるということを言つておられた。それと前後して出たその追加予算におきまして六・三制の経費が削除されてしまつておるということは、一体どういくことであるか。そういうことがいろいろの疑惑を生む種になつておるのであります。勿論、人はこう言うかも知れない。二十二年度の追加予算において、六・三制の経費を削除せざるを得ない財政上の理由があつて削除したのだが、二十三年度の本予算において必ずこれは計上する。而も二十三年度の本予算は四月中に恐らく出る予定であるから、二十二年度の追加予算に計上しなかつたところで、たかだか一ケ月位の遅れになるに過ぎない、このことを以て内閣が文教政策の熱意を持たないという証拠にはならんというような弁解もあるかも知れませんけれども、この三月から四月というこの一ケ月とは全く意味が違うのであります。つまり二十二年度の予算において六・三制の経費の不足額の重点はなされなかつたという事実は、はつきり出されてしまつた。これは打消すことが出來ない。このことが文教政策に対する熱意の程度を計る一つのバロメーターとして考えられるのは当然であろうと思うのであります。このように三党政策協定についていろいろの疑惑が深まつておるということを私は甚だ遺憾に思う。ただに芦田内閣ために遺憾に思うばかりではなく、発足したばかりの日本の民主政治ために特に遺憾に思うのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)  御承知のように、今度の政変は新憲法下最初の政変でありました。内閣の更迭が民主的憲法にふさわしい國民の納得し得る方法において行われ、新内閣が從來のように政党幹部のいわゆる腹藝によつてできるのでなくして、公明に合理的に行われるということは、國民のひとしく期待しておつたところであります。そうして先ず三党間に政策協定を行い、その実現のために新内閣を作るとこういう形式を踏みましたことは、國民の期待に副う形式であつた言つて差支えないと思います。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)併しながら協定された政策が曖昧であり、協定の当事者間においてすら見解の対立があるというに至りましては、組閣の形式は民主的、合理的ではありましたけれども、実質は依然として政党首脳部間の腹藝域を脱していない。それを脱すること遠からざるものであると思わしめる節があるのであります。こういう事態を放任して置きますと、再び國民政治に対して無関心になつて來る。政治に対する興味を失うと共に、他方サンデイカリズム的の世相の発展を刺激することになるのであります。こういうふうになりましては、我が國の民主政治は再び重大な危機に立つことになるのであります。でありますから、私は首相に次の諸点をお尋ねしたい。  第一は、芦田内閣の生命であるこの三党政策協定の全貌を明確にして頂きたいという点であります。  第二は、政策協定を結ぶに当つては、これを誠実に実行する用意を備えて結んだのであつて、今後研究して見るとか、或いは学識経驗者を集めて意見を聽き、実行できるかどうかというようなことを決めてみようとか、そういうような確信のない協定を結んだのではないという点を明確にして頂きたいと思うのであります。先程加藤労働大臣が、協定政策の方向を決定したに過ぎないものであるというふうに申されましたが、私はこの点についても異議がある。政策の方向とは一体何であるか。よく考えて見ると、結局言われるところは問題を提起したに過ぎないということに帰結するのではないかと思う。問題の提起と政策協定とは、私はおのずから非常な大きな違いがあると思うのです。  第三の点は、協定事項中、特にいろいろ世上で疑いのある次の諸点について明らかにして頂きたいと思う。  一つ戰時公債利子の停止的処置ということはどういう意味のことであるか。戰時公債利子の全額を打切るという方向の協定であるのか、或いはその利子の値下げをするという意味協定であるのか、或いは公債利子課税の方法によつて打切り又は利下げの効果を狙うというようなことが含蓄されておるのか、そういう点についての所信を明らかにして頂きたいと思うのであります。  第二は、先程からも問題になつておりましたが、國富調査税、これは一体何のことであろうか、國富調査税という一つの目的税を新たに作るという意味でありましようか、そういう目的税を新たに作るというならば、その課税の対象は一体何であるか、どういうものを予想しておられるかということを明らかにして頂きたいと思うのです。先程岡田運輸相は國富を調べるための手数料を取る、手数料を徴收するというような意味のことを申されましたが、これではちつとも明らかにならない。  次に第三次農地改革という問題であります。御承知のように、第二次農地改革は未だ終わつておりません。改革費の問題につきましても、亦耕地の分合の問題につきましても、特に買上地の賣却の問題につきましても、前途にこの第二次農地改革を徹底する上において幾多の難問題が山積いたしておるのであります。その際に、第三次農地改革ということは、如何なる意味において協定されたのであるかということをはつきりして頂きたい。尚第三次農地改革と言われるものの中に、耕地とか、牧草地、開拓可能地以外に、民有の山林も含まれているかどうかということも明確にして頂きたい。この山林の問題は一昨年頃からいろいろ問題のある点でございまして、芦田内閣がこの問題について、どういう考えを持つておられるかということを明確にせられることは、我が國の治山治水その他の面から見ましても重要な点であろうと思うのであります。  右の三党政策に関する諸点は、これは國民が特に知りたいと考えておる点であろうと思うのであります。これらの点が不明確のまま残されておりますと、いろいろの流言飛語が起る、或いは時には不安さえも起る可能性があるので、時に明確な御答弁をお願いする次第であります。  第二の質問の点は、外資の導入という問題であります。日本経済の現在の危機を切抜ける上において、外國資本の援助を受けなければならないというようなことは、すでに一般の國民の常識とさえなつておるように見受けられます。併し外國資本の援助というようなことを、ただ漫然と考えて、これにのみ期待をかけるということは、非常に警戒しなければならない点であろうと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)外國資本の導入を日本経済の起死回生の万能藥であるかのごとく思い込んだり、又國民にそう思い込ませてしまう。そうして外國資本の導入に絡まるいろいろの問題、これに絡まつて起るいろいろの問題について、予め深い考慮を回らすということがなければ、例えば外國資本の導入が実現した曉におきまして、國民の中には、こんな筈ではなかつた、こんな筈ではなかつたというふうに思うような事態が起きないとも限らない。それを私は恐れるのであります。私は外資導入に絡まる諸問題について、芦田内閣はどのように考え國民にどのような覚悟を促そうとしておるか、このことを次の諸点について聽きたいと思うのであります。  先ず第一にお伺いしなければならんのは、貿易回轉基金の問題、これについてであります。御承知のように、昨年の八月に連合国の好意によりまして、我が國が保有しておるところの、そして、これは結局賠償に引当てらるべき運命にあるところの貴金属約二億ドル、これを担保にいたしまして使用することが許された。そして我が國はこれに基いて、年間約五億ドルに上る輸出品用原材料を購入する途が開かれたのであります。これによつて、我が國の輸出産業の飛躍的活況が期待されておつたんであります。併しながらその後の事情はどうであろうか。貿易回轉基金は、当時予想されておつたような、そういう機能を果したであろうか。何人も然りとは答えないでありましよう。一体どういう理由によつたであろうかと申しますと、貿易品に対する國内の統制機構が商工省の貿易廳であるとか、或いは貿易各品目についての幾多の公團であるとか、安定本部とか、方々に跨がる極めて複雜な機構であるために、業者が統制機構の間を泳ぎ廻る。この泳ぎ廻るに奔命に疲れてしまつておるという事情もありますが、こういう事情を一應除外して考えますと、次の二つの事情が大きな阻害的な理由になつておると思うのであります。一つは爲替相場の問題であります。或いはドルと円との交換比率の問題であります。これが今日非常に複雜多岐になつておりまして、そのために取引契約の締結が多大の障害を受けておるということが一つ。次に特にこれは注意しなければならない問題であると思うが、我が國輸出品市場の購買力が極度に低下しておるという点であります。言うまでもなく我が國の輸出品の市場といたしましては、又市場たり得る地域は、東亜及び南方以外にはない。然るにこれらの地域が政情不安のために、或いはインフレーシヨンの激化のために、或いはドル資金が不足しているために、我が國の輸出品を買うことができない。我が國から言えば東亜南方諸国には多くの輸出をすることができない状態になつておる。でありますから、アメリカの好意によりまして原材料を輸入することができましても、それが輸出品の原材料である限り、輸出が今言つたような意味において少額である以上は、この原材料輸入ということにもおのずから限度が出て來てしまう。貿易回轉基金が十分な機能を果し得ない根本の理由はここにあると思うのであります。政府從つて、今後の外資導入の問題を取扱うに当つて、このような事態を如何に考慮に入れておるのであろうか、これがか質問の第一点であります。  質問の第二点は、今問題となつている外資導入ということは これはどういう意味のものであろうかという点であります。一つ考えますことは、恐らくこれは貸付資本の導入、即ちクレジツトの設定であり、これによつて原材料の輸入をするという意味のものであろうと思うのであります。首相並びに安本長官演説によりますと、外資導入ということをこのような意味に理解していいような発言が沢山あつたと思います。果して然りといたしますれば、前述のごとく貿易回轉基金すら十分使いこなせない今日、これによつて輸入する原材料を、輸出品の原材料ではなくて、建設用の原材料と理解すべきものと思うが、こう理解して間違いないかどうか、つまりこの外資導入によつて入れるものは、それを製品にしたところで輸出できないようなものを作るための原材料ではなくて、國内の固定資本を建設するための原材料を輸入しようとしておるものと理解して差支ないかという点であります。又仮に今申したように、これがクレジツトの設定であるとするならば、クレジツトの設定にはどうしても担保のことが問題になると思う。政府はこのクレジットの設定において如何なる担保を提供しようと用意しておるか、國民の切に聽かんとするところであろうと思うのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)又貸付資本、即ちクレジツトの導入は、日本政府対外國政府の間の契約によるものと考えておるのか、或いは外國政府日本民間企業家の契約によるものと考えておるのか、そのいずれであるか、いずれにいたしましても恐らく講和條約締結後でなければ問題とならんと思うがどうであろうか。ところ芦田首相は一昨日の演説におきまして、今のところ講和会議が何時開かれるかは明白に見通しが付かないと言つておられますが、そうであるとすれば、クレジツトの設定による建設用原材料の輸入ということも、それが何時のことであるかは明白に見通しが付かないことになりはしないか。にも拘わらず、首相は他方におきましては、幸いに周囲の事情は好轉して、近々多量の物資を輸入し得る曙光が輝き始めたということを言つておられます。クレジツトの設定という経済常道によらずして、どのような方法で多量の物資を輸入し得るというのでありましようか。(拍手)この点も亦はつきりさせて頂きたい一点であります。或いは又こういうことがあるかも知れない。正常なクレジツト設定の方法によらないで多量の物資を輸入する曙光が輝き始めているという意味かも知れないが、それならば、それは一体どういう方法であるかも説明して頂きたいと思うのであります。  外資導入の問題に関する質問の第三点でありますが、以上は外資導入ということを、貸付資本の導入、即ちクレジツトの設定を理解して質問したのでありますが、首相並びに定本長官の演説の中には、外資導入という言葉によつて外國の産業資本の導入ということを意味しておられると理解される節もあつたのであります。(「そうだ、そうだ問題は」と呼ぶ者あり)果してそうであるとしますれば、次の点を明らかにして頂きたいと思う。私的の、プライヴエートの資本は、言うまでもなく自由奔放な活動を要求いたします。統制とか或いは國家管理とかいうたようなことは資本の最も好まざるところであります。然るに現在の我が國におきましては、價格、資金、資材その他あらゆる経済活動の領域におきまして統制が加えられ、そうしてこの統制の方式によつて日本再建を図ろうという方向が決定しておると思うのでありますが、そこへ外國の資本が産業資本の形で入つて來たとしますれば、こういう國は決してそういう資本に取つて居心地の良い國でなかろうと思う。即ち統制方式の変更を要求されることがないとは言えないと思う。理論的に言つてそうであります。この点を政府は果して予想しておるであろうかどうかであろうか予想しておるとすれば、それに如何に対処しようと考えておるであろうか、このこともはつきりさせて頂きたいと思う。(「受入態勢がない」と呼ぶ者あり)  第三の質問点は、賃金と物價及び予算関係に関する問題であります。傳えられるところによりますと、政府は二十三年度予算につきまして、四月一ケ月の暫定予算國会に提出する予定であるということであります。一ケ月の政府予算というようなものが一体予算の名に價するかどうかということがすでに問題でありますが、こういうことは、まあここで問わないことといたしまして、どうしても明らかにしなければならない点は、政府が賃金及び物價について確たる見解を持つていないがために、一ケ月予算というような、そういう異例の措置を採らざるを得なくなつておるのではないかという点であります。時間がございませんので極く端折りますが、賃金問題につきまして二千九百二十円ベースというものが大部分の官公労組の未だ受諾せざるところであるという、その事態の下におきまして、四月或いは五月に物價の改訂がなされるという場合には、当然それは二千九百二十円ベースというものも改訂の俎上に上ると思いますが、そういう点についてどのような用意をしておられるかという点であります。  第二に、物價改訂を仮に行なわれるとしますれば、その物價改訂の方式について、一般原則については是非とも國会の承認を経て頂きたいという点であります。(拍手)(「異議なし」と呼ぶ者あり)昨年の七月の改訂の場合に、工業製品については生産費主義を探り、農産品についてはパリテイ計算方式を探るというふうなことで行われた。その結果を我々は報告を受けただけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は賃金とか物價の問題が今日の経済の組織の下においては重大な問題であると考えるが故に、是非とも物價改訂の基本方式については國会の承認を経て頂きたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)個々の物價の高さを決めるというような問題について一々諮つて頂きたいと申上げるのではないのでありまして、そういう生産費方式とか或いはパリテイ計算方式、こういうものを採るとするならば、これについて諮つて頂く。或いはそれ以外の方式を探るべきことを國会は要求するかも知れない。そういう機会を國会に與えて頂きたいというのであります。(拍手)これに関連しまして、財政法第三條の特例を設けるというふうなことが新聞に出ておりましたが、これは一体どういう意味であるか、これも明らかにして貰いたい。  それから最後に、物價改訂に当りまして、工業品と農産物の物價改訂方式が異なつておるために、農業経営上非常に大きなハンデイキヤツプが附けられてしまつておるということは、はつきりした事実であろうと思うのであります。そこで今後も昨年と同じように、一方では生産費方式、他方では、パリテイ計算方式というような、二元的な方式を採られる方針であるかどうかということも、ここではつきりして頂きたい。同時に、工業製品の物價改訂の時期と米の價格の改訂の時期とが五ケ月もずれておるために、農業経営上非常に大きな障害を來しておる。このようなずれを起さないように、工業製品の價格の改訂をやるならば、同時に米の價格の改訂も行なつて頂きたい。そういう点について政府はどう考えておるか、明確な御答弁をお願いしたいと思うのであります。  時間がございませんのでこの辺で打切つて置きますが、國民芦田内閣の施政方針というものにないて、余り抽象的過ぎたために、未だ納得行かない点が沢山ある。この点を私は取上げて質問したのでありますから、どうか責任ある答弁をして頂きたいと思うのであります。(拍手)    〔國務大臣芦田均登壇
  18. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 波多野君の質疑にお答えいたします。  三党政策協定の性質についてお尋ねの点は、現在の我が國の政情に鑑みて、一つ政党が單独の力を以て政府を組織することによつては、必ずしも議会の多数を制することができない事情にあります故、如何なる形の内閣であろうとも、連立内閣を組織する以外に途はなかつたと思います。連立内閣である限り、その基礎になる各党各派の間に一定の政策協定が行わるべきことは当然のことでありまして、現在の政局においては、如何なる政党首班を取つても、必ずやその間に政策協定が行われたと思います。その点においては波多野君のお説の通り、その内閣の性格を形附けるものは政策協定であります。片山内閣においてさようであつたごとく、現内閣においてもこれに相違はないと思います。ただ政策協定を読んで、如何にも曖昧な点が多いというお説に対しては、私もさような点があることは率直に認めますが、御存じの通りに三党の政策協定は、政治部門、産業部門、社会部門等、各般の問題に亘り非常に廣汎な問題を取扱つておるのでありまして、若しこの問題をすべて具体的に協定をするとするならば、恐らく二三ケ月の日子を要したことと思われるのでありまして、事態の急に鑑みて止むを得ず取急いでこれらの協定を作つたととは、恐らく波多野君も御存じのことと思うのであります。從つて政策が具体的に決定されない問題については、内閣組織の後に引続いて三党の間に具体的の文字を似てこれを取り決めるということにしたのでありまして、すべての問題が全部未決定に残されておるという次第ではないのであります。特に六・三制の問題について波多野君から強い発言がありました。その点については施政演説において申上げた通り片山内閣以来の六・三制実施の方針を堅持すると言つたのであります。然るに先般來國会に提出されたる追加予算に六・三制を実施する予算が出ていないということはどういうことかという御質問でありましたが、私としては、片山内閣の閣僚として波多野君は恐らくその辺の事情は御承知になつておるかと只今まで考えておつたところが、御承知になつておらんのを実は意外に感じたのであります。この予算を、(「個人的な問題じやない」と呼ぶ者あり)この予算を組むことについては、片山内閣は極力努力いたしたのであります。併し只今この席において申上げられない事情によつてこの予算を組むことができなかつたということは、当時の閣僚として波多野君は恐らく御承知であつたろうと思う。で目下この点について内閣は極力努力をいたしております。從つて明年度以後の予算において六・三制実施に関する必要な予算が組み得られるごとく情勢の変化を期待しておるわけであります。  尚農地改革の問題、山林問題等種々お尋ねがありましたが、詳細のことは農林大臣よりお答えいたしますが、三党政策協定においては、「農地改革の徹底的推進」という文字を使つておるのであります。今後と雖も農地改革についてはこれを徹底的に推進するということは、三党の間に何ら意見の相違はありません。又山林の再分配等については、三党の間に何ら協定は結んでおりません。これらの問題については時期によつて、時期に應じて必要な考慮を加える考えであります。  その他外貨の導入につきましては、関係閣僚よりお答えをいたしますが、特に私の演説に言及されました関係上、一言だけ説明をいたして置きたいと思うのは、今日多量の物資の輸入がなければ我が國のインフレ克服、経済再建の上に非常に困難がある。この見通しについては、恐らく波多野君も御同樣であろうと思う。ところアメリカ議会に目下提出されておる政府予算を見ると、我が國に対する食糧の補給についての予算もあり、又特に日本再建援助のため予算の中に一千七百万ドルの数字が上つておる。それだけはすでに確定的の数字でありますが、尚それ以外にも、今後状況に應じてこれと類似の予算アメリカ議会に提出されるやの報道にも接しておるのでありますから、民間の資本の導入は暫く別として、アメリカ政府自体の予算に相当多額の費用が計上されておるという事実を見ても、今年は昨年に比べて遥かに多数の物資が輸入される期待を置くこと必ずしも誤りでない、かように考えた次第であります。尚これらの点につきましての詳細は、関係閣僚より答弁をいたすことに取計らいます。(拍手)    〔國務大臣栗栖赳夫君登壇
  19. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 波多野議員の私に対する御質問の第一は、外資の導入に関する点であつたと思うのであります。この外資の導入でありますが、これは申すまでもなしに、極く愼重に十分考究の上でいたさなければならんのでありまして、急の現在の危機突破をするために要する外資導入と、將來における日本経済再建ために必要な外資導入というような、おのおのその目的を待つておるのでございますので、そこでこの危機突破のため外資導入、その外長期の日本経済復興計画と睨み合わせて外資の導入をする、こういう点もございますので、そういう点では政府といたしまして十分考究し、そうして実行をいたして生きたいと思うのであります。好意ある連合國の援助にもそういう趣意で待つ次第であります。從つてこの性質については窮極するところ双方を含んでおると、こう申さなければならんのであります。それからこの外資導入については為替相場、或いは外貨と日本の円との換算率の問題その他についてのお尋ねもあつたのでありますが、勿論外資導入にはそういう点をはつきりして、導入し易い態勢を作るということが必要であることは申すまでもないのであります。政府といたしましてもこの為替相場換算率の問題については、好意ある連合國の援助と相俟ちまして、解決を急ぎたいと考えておる次第であります。尚外資を入れますについては受入態勢を整備する、これが最も大事であります。民間の外資につきましても、企業再建整備の促進、法人税法その他の改正、或いは労資の協力の問題、こういうようなものも、すべて一群の受入態勢を十分整えて、そうして懇請するということでなければいかんと思うのでありまして、受入態勢の整備については政府も十分急いでおる次第であり、又廣く関係國民の協力を持つておる次第であります。  それから外資の導入については、御示しのように原料等の資材の輸入を目的とするもの、或いは工業製品、輸出製品を造ります機械、或いはその他の材料の輸入を目的とするもの、こういうような各般のものもあるわけであります。又これが政府政府との間の関係によつてクレジツトが成立する、或いは民間と民間との間によつてクレジツトが成立する、そういう両方面もあるのでありまして、政府といたしましてはクレジツトの外資導入につきましては、その両方面を活用し、そうして実を挙げたいと思つておる次第であります。それからクレジツト設定の担保というようなお話もありましたが、これはすでに電力債その他につきましては設備が担保にも相成つておるのでありますが、新たにクレジツト、外資を導入する際の担保でありますが、これは資本の借入の場合には担保の形等も根本的に考えられると思うのでありまして、十分その点を考えたいと思うのであります。或いは株式その他出資の形式において民間産業へと資本が導入される場合においては、これはおのずから形が違つて参るのでありまして、その点についても十分考慮研究をいたし、万全を期したいと考えておる次第であります。  尚講和條約の締結前において(「万全の内容を言え」と呼ぶ者あり)この外資導入ができるかというお尋ねでありまするが、これは政府関係その他の外資導入につきまして、連合國も占領軍において指導し、或いは仲介して、この話が進められておると考えておるのでありまして、そういう場合においては、必ずしも講和條約の締結後でなければ外資導入ができない、こう申すべきものではないと考えるのであります。我々としましては、日本再建経済復興のためには一日も速かに外資導入の実を挙げて、そうしてその目的を達したいと考えておる者であります。連合國もそういう趣意において援助と懇請するように努めたいと、こう考える次第であります。  次に、物價の点についてのお尋ねがあつたと思うのでありますが、簡單にお答えをして置きたいと思うのであります。昨年七月新物價体系の実施後におきましては、その後の事情の推移によりまして價格の補正的の改訂をする必要のあるものも生じて來たのでありまして、そういうものは考慮中であります。尚物價行政につきましては、政府において十分責任感じ、その責任においてこれを実行するのであります。財政法第三條その他につきまして、基本的な点において必要のあるものにつきましては國会に御相談申上げたい、こう考える次第であります。尚工業生産品につきましては、この原價計算の方法において、農産品との間に相違があるのであります。即ち工業生産品については、只今原價計算主義を採り、農産品についてはパリテイ計算の方法を採つておりますが、これは今後と雖もこの方針を変えないで進めて行きたいと思うのであります。尚この農業生産品につきましては、生産時の関係があつて、工業生産品との間にずれがあることもあると思うのであります。これは止むを得ない次第でありまして、若し必要がありますならば、時間的ずれから生ずる調整その他は、必要に應じて考慮いたしたいと考える次第であります。(拍手)    〔國務大臣北村徳太郎君登壇
  20. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 波多野議員の私への御質問は、予算と物價との関係であつたかと思うのでございますが、これは人件費につきましては、二千九百二十円ベースを取入れます。それからその他の物價につきましては、現在の物價を基礎にいたしまして編成をいたすと、かような方針にいたしておる次第であります。    〔國務大臣永江一夫君登壇拍手
  21. 永江一夫

    國務大臣(永江一夫君) 私にお尋ねの点は二点あつたと思いますが、第一点の農地改革について、その農地改革の徹底の内容如何という点であります。農地改革の徹底的な方向といたしましては、現在行われておりますす第二次の農地改革を推進いたしまして、先ずこれを完成いたすことは当然でございます。ただこの第二次農地改革が進行いたしておりまする途上におきまして、いろいろまだ不徹底な点その他の点につきまして、各方面から検討を加えまして、そうして更にこの農地改革の徹底をいたしたいと考えておるのでありますが、いずれにいたしましても、それがいわゆる第三次農地改革と言われるものとなつて現れて参りまするかどうかということについては、その内容は、今暫く具体的な檢討を行いました上におきまして、適当な時期に政府としてこれを明らかにいたしたいと思います。  更にお尋ねの中に山林について御質問がございましたが、総理からもお答えのありました通りでございまして、この点も開墾に必要な山林については、これが政府の問題でありましようと、民間の問題でありましようと、その点については、これを開墾するという方針で参りたいと思いますが、山林につきましても、開墾に必要でない山林をこれが対象として、農地改革の具体的なものとして考えるといふことは、今のところ考えておりません。  それから第二の点は、米價に関することでありまして、お尋ねの点は、鉱工業品は生産費主義に基いておるが、農産物はパリテイ計算に基いておる。理論的に言つて農産物も生産費主義を採るべきであると思うが如何という点であります。只今この点については、栗栖國務大臣からもお触れになりましたが、只今ところ私はやはり米價及び農産物の計算は、パリテイ計算に基いて行くことが妥当ではないか、こう考えておるわけであります。これはすでに波多野さんも御承知のように、農産物につきましては、自家労力が中心でございますし、全國五百万の農家の多種多樣な生産方式というようなものの條件の下におきましては、生産費の計算は非常に困難でございます。従つてやはりパリテイ計算に基きたい。ただこのパリテイ計算に基きました際におきましては、鉱工業品に生産費を設定いたしまする場合との間における時間のずれがございますが、これにつきましては、合理的に改めて参りたい、かように考えておる次第であります。(拍手
  22. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松本治一郎

    ○副議長松本治一郎君) 異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十八分散会