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中平常太郎君 先に第二回
國会におきまして、十二月十一日の
院議を以ちまして、
議員淺岡信夫、
木下源吾、
北條秀一、
山田節男の四氏は
北海道に、
木内キヤウ、
千田正、
穗積眞六郎の三氏は
東北、宮城、岩手、
青森、秋田の四縣に、
海外引揚同胞受入の
状況調査のために派遣いたされましたのでございまするが、
東北班は十二月十九日より二十六日まで、
北海道班は二十日より三十日まで、それぞれ
目的地において
視察いたしました。
院議決定の
日程と多少の相違がございますが、これは
交通事情の悪化と
降雪のためでありまして、何とぞ御承認をお願いいたしたいのでございます。特に申上げたいのは、この嚴寒時における
引揚者の実際
的受入とその
生活状態を
視察するために、各
議員が十二月のあの寒い休会中、而も年末に僅かな期間を各自宅にもいられませずして、わざわざ
東北、
北海道の
寒冷地に向
つて出張を願
つたことは、その御
熱意に対し感激に堪えないものがあるのでございます。(
拍手)
この
出張の
目的は、先に第一回
國会におきまして
政府から改めて、帰りまする
引揚者三万人のその
受入設備に対して、昨年十一月までに新たな
施設を
完了するということを
厚生大臣が言明したのでございまして、その
受入施設の
進捗状況が寒冷と
降雪のため若干遅延しておる等の有様であ
つたので、その
進捗状況を
調査し、又これを檢討し、且つはそれを進捗せしめ、一方
引揚者のこの寒空の
生活状態を
視察せんとするにあ
つたのであります。
引揚者同胞受入施設の
整備ということは我が國の義務でありまして、且つは
引揚促進について最善を盡されておりますところの
連合軍当局の御厚意に対しましても、なさねばならん当然の責務でございます。計画されました
施設は、
北海道が百六の市町村に百二十四ヶ所、
収容人員は一万六千九百九十八名であり、
東北六縣は七十六ヶ所、一万三千人であります。これらの
施設は、
調査当時即ち十二月二十五日現在におきましては、
北海道地区は七五%、
東北地区は八〇%の
完了でございまして、それから考えて見ますというと、当時急いで
施設しておりましたから、一月末におきましては全部
完了しておるものと思われるのでございます。
青森のみは
降雪等の
関係で幾分遅延しておりましたが、これも一月末までには
完了の
予定にな
つておるのであります。これらの
施設は全部
既存建物を利用したものであるために、附属の
施設に対しまして、井戸とか浴場などにおいて若干の不備がございますが、但し採暖、いわゆる火鉢のごとき採
暖器具、或いは燃料、
一般の
家庭配給基準量は先ず先ず確保されておりまして、
引揚者の
特殊事情などもよく講ぜられまして、
緊急措置といたしましては適切であると判断し得たのでございます。畳は全体的に欠乏いたしておりまして、各
府縣共非常に苦心を拂
つております。三万人の
受入施設もほぼできておるのに、昨年十二月六日到着の
引揚船を最終といたしまして冬期の
引揚は打切られまして、
設備はできた、人は帰らない、一
部分の人は
帰つて來ないというふうになりまして、無
縁故者のみを入れる筈であ
つたその
施設に対しまして、
縁故先に定着する
予定であ
つた者まで一應そこに収容しておるような
状態でございます。その結果四月の
解氷期に相成りまして、どしどし帰
つて参りますことに相成りまするというと、
施設の面におきまして不足を生ずるような結果を見るのでありますが、これに対しましては先般
政府におきましても、急速に実行すると言明されておるのであります。
更に、これら
受入態勢の
一つといたしまして、
縣及び北海道の
輿論について述べたいと思うのであります。
東北六縣中、
視察は四縣でありましたが、今次の
受入れにつきましては、異常なる
熱意を示しておられることは、
施設の微細なる点にまでよく注意が拂われておることによ
つても判断し得たのでございます。
北海道は、樺太、
千島方面の
引揚者の中八〇%は
北海道内に定着する者と考えられております。又満州の
開拓民も、大
部分は道内に定着を希望しておると考えられております。元
來北海道はこれまでの
人口は御
承知の通り僅かに三百余万でありまして、
鉄道沿線以外は誠に大
部分が廣漠たる原野でございます。シベリヤその他
北ヨーロツパ地方のことを考えるなれば、
敗戰後の
人口の異常な密度にあるところの
日本國民が、この
北海道に
積極的入植計画を立てないということは、
國家の怠慢であると私は信ずるのでございます。(
拍手)
従つて北海道当局におきましては、無
縁故者の大
部分は
北海道に
受入れるべきであるという積極的なる意図を明らかにしておられます。このため
差当り一万七千五百戸の
應急施設を計画しておられますことは、誠に当を得たことと喜んでおる次第でございます。
以上によりまして認識し得るように、
北海道の
輿論は、
北海道開発の
主体的條件と、又
一つは
引揚げ人口処理の國内の
客観的情勢とから考えまして、これらの無
縁故者の
北海道受入れについて堅実なる
熱意が高揚されておるということは、
引揚げ問題の将來に大きな暗示を與えておるものと言うべきであると存ずるのであります。従
來北海道は土質、氣候等によりまして、南方よりの入植は相当困難でありましたが、
引揚者も樺太、千島、満州、北鮮などで、氣候には十分馴れております。寒冷に処するの途を知
つておる。又生産
方面におきましても、適地における適種の栽培に対する経験もありますし、十分なる土地を與え、保護をするなれば、極めて好適なものと私は信ずるのでございます。これが総括的の御
報告でございますが、各縣に亘りまして
調査報告はこんなに沢山参
つておりますけれども、これを圧縮いたしまして極めて簡単に各縣の様子を申上げます。
宮城は、割当二千人でございまして、現在四百四十人帰
つております。
施設は三ヶ所で、白菊寮、愛子寮、椿寮でございまして、
建築はバラツクと旧兵舎でございます。縣、市、学生連盟、
引揚者連盟などの斡旋でお出迎えなさ
つて、寮へ輸送し、親切に炊出しなどをや
つておられます。帰着後一週間の間は医療班の巡回診療などをいたしております。就職の
方面におきましては、現在九十四名程鉱山
方面に就職いたしておりまして、あとは日稼ぎの
状態でございます。共同作業場の計画も宮城にありますが、予算、資金の
関係でまだ実現はいたしておりません。大体今度の三万に対する御
報告でございますが、どの縣にも十万に近いところの、或いは五万、八万の
引揚者を皆包容いたしておりますことは、これは申上げるまでもございません。但し今度私が申上げますのは、新らしい三万の分に対して申上げますから御了承を願います。川渡の元軍馬補充所、舟岡の海軍火藥所跡あたりは國庫から拂い下げて、十分なる
施設をして今後に備えなければならないものであると存じます。
次に岩手縣としては、二千五百、四百世帯でございまして、収容は旧兵舎で四千七百坪の所を
施設いたしております。只今その兵舎は五〇%収容し得るような
設備が
完了いたしておりまして、あとはどしどしできて行きつつもあるのでありますが、百五十万円程その
施設には不足を來し、國庫の補助を要望いたしております。畳一枚二円で賃貸しして家賃を取
つておりますが、これが一ヶ年約十万円になるそうでありまして、これは私は当分無料にすべきではないかと思
つております。岩手縣は
引揚者に対して非常に親切で、
青森からの連絡次第にわざわざ
青森まで出迎えに行かれ、主食、調味料なども即日配給されて、援護物資などは、國庫補助以外に岩手縣保有の物資を倍以上
引揚者に給與せられており、
引揚者は
一般に非常に感謝しております。但し入浴
設備が未だに不備な点があることは残念でございます。
青森縣は、連絡所は所員が十四名で、非常に熱心に事務を処理しておりますが、ここは御
承知の通り函館よりの輸送の任に当
つておるが、列車輸送の円滑を欠く等の事態に処するために、蓮華寺に待機所、市内に旅館二ヶ所、病院一ヶ所を指定せられております。併し昨年の体験より見まするに、
青森の上陸者は帰國を急ぎまして、遠方のお寺などには行かない、これを利用しない、
従つて駅の構内で一日千人から千三百人がすし詰めにな
つて、構内から溢れて、誠にその混雑は実に名状すべからざるものが昨年はあ
つたのでございます。ここではどうしても構内に今一層緊急待機
施設をなすべきだという要望が非常に強くございました。
視察者におきましても、これを痛感されて帰られたのであります。
青森縣は七百十九世帯、二千二百人でありますが、実際は今回帰
つた分はまだ一名も
受入れておりません。これは
青森が内地の北門に当
つておりまして、
北海道から帰る
引揚者、又南方から
北海道に渡る者などで随分混雑いたしておりますので、後から帰る者を入れるつもりで、この三万人の中の者はまだ一名も収容いたしておりません。
青森の当局におきまして調べたところによりますと、通過する者が一日千人から六百人、それがと
かく夜中が多うございまして、これがために上陸第一歩の印象を悪くしてはいけないというので、万全の処置を取
つております。昨年のごときは医療及び湯茶、味噌汁、握り飯など非常な努力を拂われて、その待機の人々に給與しておられましたが、現在では資金
関係でお湯とお茶のみにな
つております。市内の旅館二ヶ所は二百人くらいしか収容できないので、これは優先的に婦女子を入れております。如何にしても駅の構内に早く一時的待機所を造る必要があるのでございます。
秋田縣は、百四世帯でありまして八百名、
施設は水害のために遅延いたしております。秋田市から一里程の所に造船工場がありまして、それを專ら使
つておりますが、三百七十万円の
施設を以てや
つておりますが、大
部分できて行きつつありますが、入浴
施設などがまだ急がれております。配給品は大体行渡
つておりまして、
生活に直接の難儀はないようでございます。農業者の勤労意欲は佳良であります。現在では大
部分日稼ぎの
状態であります。一時秋田縣民との間に摩擦がありましたが、現在では大体落着いて参りまして、
引揚者の中から町村長にな
つた者もある程でございます。生業の救援につきましては、漁業と海運
関係などに重点を置かれておられます。未だこれから後三百万円ぐらいの
援助を以て
引揚者のために働かねばならんという縣の方針でございます。
次は函館、函館援護局は埠頭の上陸所に四つの寮で六千二百人の収容力を備えております。ここにちよつと申上げておきますが、舞鶴の方は主として九五%までが未復員者でございまして、青年でございましたが、函館におきましては反対に九五%までは
一般引揚者でございます。上陸所は檢疫、檢診、消毒、又援護給與から遺骨その他荷物の託送、又
一般引揚者、復員者、或いは道内へ入る者、本州へ帰る者、人も荷物も一々区別しなければならないので、非常に複離多岐な事務を函館は処理いたしております。一日一千人の消化能力が標準でありますが、
解氷期になりましたら約二倍、三倍の人員が
帰つて來ることになると存じますが、非常に熱心にその覚悟を以てや
つておられます。四つの収容所はいずれも遠方でありまして、四キロから八キロございます。それで連絡輸送は全部トラツクでありますが、進駐軍の
援助で十五台のトラツクが入手できましたが、全部後輪ダブルにな
つていないために、輸送力が十分でないため、四台を上架をして、そのタイヤを取
つて轉用しておる
状態でございまして、今後輸送用充実のためには十分努力を拂わねばならんことを覚悟しておられます。とも
かく函館は受入のために多大の経費を負担せられ、各階級の方々が物心両面の総動員を以て援護に当
つておられることは誠に感謝すべきことと存ずるのであります。
青函輸送つまり、
青森、函館間の輸送でありますが、現在千人から千三百人でありますが、特別連絡船の増発を極力要望されておる
状態でございます。
小樽市、小樽市は千三百九十人の収容の
予定でありまして、収容
施設は
完了いたしております。十一ヶ所の寮で、この費用も道費が二百六十八万円、小樽市民の寄附が五百十万円、尚あと小樽市民が五百万円の寄附を募集しておられるようでありますが、
受入施設に対しまして誠に熱心で、現在収容せられておるところの人々は大変にその親切に対して感謝しておりますことによ
つても、この小樽市の親切が判明することと存じます。
札幌市は旧兵舎に二千人でありまして、更に改造して三千人を増加する見込であります。何かの
設備もよろしいが、何さま兵舎でありますために天井が高いので、保温
設備ができませんために、中二階を造
つてはという議が持ち上
つておりました。
豊平町は
人口二万六千位の所でありますが、千二百人を引受けておられます。尚且つあと無
縁故者を二千人引受けておられるようでありまして、非常に熱心にや
つておられまして、豊平町といたしましては、費用は大
部分地元が負担しておられますが、これは特に國庫の補助の要があろうと痛感いたしたのであります。
旭川は四十四世帯、それから七十九世帯と二つでありまして、これは二十二年度中に七寮、二百六十五世帯まで入れる
予定でございます。臨時収容所には
生活不能者のみを収容しておられますが、折柄お正月にもなるので、餅などを配付せられて行届いた援護振りでありました。
室蘭は千四百四世帯で四千三百八十一人、これに対し三千坪の遊休建物を買収して集團アパートの計画中であります。同市も受入に対しましては極めて積極的でありまして、授産補導についても
熱意を以て働きつつおられるようであります。
これを総括して申上げますと、現在
受入態勢は臨時的、應急的で、決して根本的ではないのであります。即ち今後は個別に、適材適所に配置移動が行われるものと思われます。又恒久対策といたしましては、厖大なる
人口を消化するため、
北海道入植の外に、
政府は國内到る処にある干拓事業によりて土地を増加し、生産を増強せしむる具体的なる方策を樹立いたしまして、多数の
引揚者に前途に希望のある力強きスタートを切らしむべきであると思うのであります。而して
従來のように受入地区に莫大なる負担を掛けさすようなことではいけない。合理的に
國家において十分考慮を拂うべきであると思うのであります。又配給物資につきましても、
調査したところによりますと、蒲團一枚が三千円であ
つたのでありますが、
かくのごとき高價な蒲團では
引揚者は到底甚えられない。一應こういう必需品は、裸で帰
つたところの同胞に対しましては無償で配給することが原則であると私は思うのであります。これらを骨子といたしまして計画を立て、営農資金、住宅資金、或いは住宅提供、入植後は臨時
生活資金又は生業資金の増額等によりまして、
引揚者六百万人の勤労意欲を復活せしめ、その腕と勇氣と技術とを活用せしめ、以て再建
日本の更生促進のために惜しみなくその心身を用いしめるように、積極的なる考慮を拂うべきであると痛感する次第であります。(
拍手)
尚この
視察におきましては、
北海道その他各縣から痛切なる各種の要望がありましたが、これらの要望につきましては、特別
委員会におきまして十分
研究して、将來成案を得たいと考えておる次第であります。右極めて簡單でありますが、御
報告申上げまして、失礼いたします。(
拍手)