○国務
大臣(森戸辰男君)
岩間君のいろいろ
お話しがございましたが、
一つ直接の御
質問ではありませんが、
盟休が現象として今日あり、而も蔓延の兆にあると、こういうような
お話しでございましたが、そういう傾向もあるけれども、現実には蔓延というような
状態にはないのではないかと思
つております。而もそれは
当局としても調べておるのでありまして、新聞に出た数字は多少違うのでありますが、百二というのと、九十幾つというのと数字があ
つたと思うのであります。それで
文部省ではそれらの学校に問合せをして見ましたが、三十二校でありますか、返事が來たのでありますが、そのうち二十七校だけが参加しておるのです。五校は参加しておりません。東京でも参加しておると言われているうち、例えば女高師であるとか、師範学校の女子部であるとかは、参加を止めたということであります。例えば新聞で京都大学が参加した、文科が参加しておるように書いてありますけれども、それはそうではありません。それでありまするから、新聞に報ぜられておるようなふうではないのであります。実際はそれよりは少いというふうに考えておるのであります。それから尚これらの学校では、
学生の総体が民主的に決定して、かような爭議
行爲に出たかと言いますと、必ずしもそうではないのでありまして、特殊の人々が、大体二割くらいの
学生、総数の二割ぐらいの人が出ておるのではないか、で大部分の人は遺憾ながら出席しなか
つた、全校の決を採
つた明かなものは幾校でありますか、これは明らかに参加を否定しております。ややそれに以たのが京都大学で、学部の
代表者が來て決めておりますが、これも否定いたしておるのであります。でありますから、若し公平に全
学生の意図を問われたならば、こういう結果にはならなか
つたのではないかと私は思
つております。ただ
学生がアルバイトが忙しい、又民主主義に対してもつと積極でない、自分の意思を勇氣を以て表明する、それだけの力が
学生になか
つたということが、こういうことにな
つたのでありまして、私はこのことが日本の
学生が、大勢がその
方向に向
つておるとは存じておりません。併しこれは決して教育上軽視すべき問題であるとは私考えておりません。非常に重大視すべき問題であるが、この傾向が日本の全
学生がその線に沿うて動いておる。又発展的な
運動であるというふうには私は考えておらないのであります。それからこれは全体についての
お話しでございますが、
文部省の
態度が
学生を爭議に追い込んだというような
お話しがあ
つたのであります。これにつきましては、
学生が
文部省に
授業料の値上の問題を
言つて來たけれども、
文部省はこれを相手にしなか
つたというような話、育英会の拡大等を申込んで來たが、これも相手にしなか
つたという話であります。これは
岩間さんなんかよく御事情を御通暁である筈でありますが、そういうことは、私はないと思う。どこでお聞きに
なつたか知りませんが、
学生は
文部省に成る程参りました。私共係官はいつも会
つております。そうして、ただ
学生に対しては、今日の日本の財政
状態から、なかなか
授業料の値上というものは止むを得ないのだということを返えす返えすも懇切に
説明いたしているのであります。
ところが來ている
学生の全部でありませんけれども、一部の人人は遺憾ながら労働爭議でもするような形で問題を提出している、こういうような事情があるのであります。これは或いは御存じないかと思うのでありますが、そういう状況であります。
尚育英会の問題は、そういう人々から聽いたこはありません。むしろ育英会は、私共は金持の
学生もいる、場合によ
つてはインフレ成金の子供もいるかも知れない。それで大学の全体の値上を止めるというよりは、むしろ育英会の問題で困
つてる
学生を何とかすることが妥当ではないかということ、これは
文部省の提案であります。これも誤解のないようにお願いいたしたいのであります。まあそういうようにして、いろいろ話ししまして、私共は
学生の
授業料の問題につきましては、一時に上げるのは氣の毒であるから、分納にしたらいいだろう、又拂えない人については適当な
処置をすればいいだろう、更に困
つている
学生については、育英会の問題もあり、学徒援護会の方がアルバイトの斡旋にも
努力しよう、こういうような
お話しをしているのでありまして、これが一体
学生を
ストに追い込んだというふうに御解釈になるのであるが、私には了解できないのであり。この
ストが行われたのは、そういうことではないのではないか、むしろそういうことよりは、特殊の政府の文教政策等について、問題を構えるというような傾向が相当にあるのではないか、そういう
ところのものが、敏感な
学生に非常な働き掛けがあ
つたということも
一つの原因であ
つたので、むしろ爭議に追い込んだということについては、一面では、日本の今日の経済
状態が
根本の原因でありまするが、むしろ
文部省以外の
ところにあればあるのではないかと、私は感じておるのでありますけれども、これは
見解の相違でありますから、私のお答えというよりは、私の
見解を申上げているのであります。尚
文部省は誠意がない、
親心がないから、こういうふうにな
つたのだという
お話しでございます。
文部省は取締をせよ、処分をせよと
言つておる。これが
学生をこうしたのだという
お話しでありますが、私は
親心というものは、正しい
親心というものは、子供の言うことを何でも聞くことが正しい
親心ではないと考えておるのであります。正しいものについては正しく聞き、又誤
つておると思うものについては拒否することが、正しい
親心であると存じております。そういう意味で、
学生の言うことをその通りに聞かなか
つたから、
文部省が
親心がないとは判断できないと思うのであります。私は
文部省を何でも弁護するのではないのであります。
親心についてはそう考えております。尚
学生を取締れ、
学生を処分せよと私は一言も申したことはないのであります。これは
岩間議員はここで私の言葉をお聽きに
なつたと思いますが、一度として私はそういうことを申したことはないのであります。教育機関で、教育機関は教育機関としての取扱をしなければならんのではないのではないか。ただ警察署、裁判所とは違
つた心で
学生を取扱わなければならない。
逸脱があれば
指導し、矯正して行くという
ところに力を注ぐべきである、私はこういうように考えております。常にそういうことを
言つておりまするし、
文部省もその精神に副うておりまするので、ただ取締処分で
学生を脅威していることはないと確信しております。尚現実の問題について
お話しがありましたが、私は
学生諸君の
代表に会うことにな
つておりまするので、そのときに承わるつもりであります。慢然と私は
学生諸君にお会いするのではない、会いまする
学生には、どこの
学生で、どういう資格で、
ストに対しての、どういう
責任を持
つている方々であるかということを明らかにして頂いた後に、お会いいたすつもりでいるのでありまするが、併しこれは予めそう申してあるのでありますが、爭議の今日行われた原因について、私は各学校に尋ねているのであります。この爭議の
目標は、この間も委員会でも申上げましたように、
授業料値上げというようなものは、どつかに隠れてしま
つている、もつと廣い政治的な
目標、六・三制完遂を初めとして、
教育委員会法絶対反対というようなものも加わ
つた大きな、廣範な
教育復興の
目標を掲げているのであります。これが爭議の
目標なのであります。爭議はそれで行われているのであります。これに対して私共は客観的に見て、この爭議は
学生の眞情、或いは
本分の上から
逸脱したものであると考えられる、政治的なものと考えられる可能性が非常に多いのであります。そういう性格を持
つておるのだと、この前に申上げたのでありまして、私は尚そう信じているのであります。そうしてそういう形で
学生の
ストが行われるということは、
学生に
本分から
逸脱したものと考えられやせんかというふうに申上げたのでありまして、今日も私はそう考えているのであります。具体的な問題が提供されますれば、これは又それらの問題として考うべきでありましようが、今日の
ところは、今日の爭議は
教育復興という大きな廣い文政一般、或いは日本の戰後の文教政策一般に対する批判の形で現われておることは御承知の通りでありまして、これは
岩間君も御
関係の非常に深い日教組の全面的支拂の下において、こういうことを
決議するということにな
つておりまするので、
岩間氏もよく御存じのことと私は考えておるのであります。こういう形でありまして、私共といたしましても、
教育復興ということについては、私初め
文部省も、本
文教委員会も全面的にこれを支持しておると思うのであります。ただこれが具体的な実現においては、その國の経済財政、その他の
状態に制約されまして、思うように行かない点があるのは、私
自身も痛感し、遺憾に存じております。ただこの
教育復興という
目標を、政治的な
学生の全國的な
ストによ
つて実現して行こうという考え方については、
文部省といたしましては、これは甚だ不穏当なことである、こういうふうに考えておるのであります。
学生の
本分に背く
ところがあるのではないかと思
つておるのであります。而も
社会、その他にもそういう
見解が、輿論にも現われておると思うのであります。或いは
学生はそういう
ところで段々と
反省をいたして参
つて、
岩間委員の言われたような考えにも
なつたこととは存じますが、併し若しそうであ
つたといたしますならば、それは私共
はつきりと、これは
学生の
本分を
逸脱したものであるという明瞭な
態度が
反省を促したのではないかと存じております。こういう
態度を曖昧にすることは、決して
学生に対する、
学生運動に対する同情では私はないと思うのであります。そういうような形で、私共この
態度につきましては、
学生は十分
反省されて然るべきものであると存じておるのであります。
從つてこういう
学生の
教育復興に対する
熱意を持ちながら、誤
つた方向を取
つた多くの
学生に対しては、私共は殊に良識を持
つた学生の精神に愬えて
反省を促し、そうして私は彼らが正しき道に帰るということを信じておるのであります。ただこの中にあ
つて、一部特殊の
目標を持
つて運動をするような人が万が一あ
つたならば、そういう者については、これはいつまでも
反省を知らないというときには、場合によ
つてはいろいろ考慮する点もあるかと思いまするが、併し今日の
ところ私共は
学生と学校
当局に信頼いたしまして、教育機関にふさわしく、又教育を受ける者、なす者にふさわしき
処置によ
つて、本問題が
解決されることを期待しておるのであります。