○松村眞一君 私は昨日速記のないときに、政務次官にお伺いしたのでありますが、その際に政務次官は明瞭に御
答弁になりましたけれども、非常に重大なることでありますから、
大臣の御
答弁を求めるわけであります。
それはこの
法律は
農民に義務だけを背負わせる
規定であるのか、これに対立して
政府も亦どういう義務を負うのであるか、その点を
お尋ねしたいのであります。それでできました米を
政府に提供しました場合には、それに対して代金を支拂うということは当然のことでありまして、それは賣買であります。ところがこの
法律によりまして、この
生産の義務と、
供出の義務という方を
努力するように
法律が命じておるのであります。
その
努力、義務に対立しまして、
政府はどんな義務を負われるのでありますか。一番の明瞭なことは、
生産に必要な肥料、
農藥又は農機具の供給を確実にすることであります。それは第三條の第三項に「主務
大臣は、
農業計画に定められた肥料、
農藥及び農機具その他
主要食糧農産物の
生産に必要な物の
生産、
配給又は
輸送の業務を営む者に対し、これらの物の供給を確保するため必要な事項を指示することができる。」とあります。この指示に反した場合はどういう罰則を受けるのでありますか。又この指示
通りにこういう業者が
生産したものを、
政府は確実に
配給するということはどこに書いてあるのでありますか。その点が非常に私は不明確であると思います。少くとも第三條第三項に対しまして、指示に從わなかつた場合の罰則の
規定がないのであります。
然るに
農業者は第七條第二項の
規定によ
つて、「
生産数量の確保に努めなければならない。」ということがあります。この努めなければならんということに應じて、第十條に、「その
生産の確保に支障を及ぼす虞」があるような農産物の作付をしてはいけないということが書いてあります。それに違反した場合には、第二十九條に罰則が書いてあります。それから第三十條には、第十一條の第四項の
規定に反した場合は、やはり罰則の
規定がある。それは第十一條に、
生産者その他に対して、「必要な事項を指示することができる。」と書いてあります、その指示に從うべきことを第四項には命じておる。それに違反すれば三十條で、罰金になる。
こういうような工合に
農業者に対しては罰金を以て臨んでおりながら、
農業生産に非常に必要なる肥料であるとか、
農藥や農機具を作るところの指示をした場合に、それに從わなくても一向に罰則の
規定がない。そうであるならば、肥料なり
農藥なり農機具というものの
生産は確実にできなくてもよいということを保障しているということになるのであります。しかのみならず
生産に必要なるそういう必需物資を
政府の方で
農民に対して供給するということの
責任をどこにも明示していない。ただそういつた業者に対して
政府が「指示することができる。」指示するというだけである。それを履行しなかつた場合の何らの罰則もない、履行しない結果肥料なり
農藥なり農機具ができなかつた、そうして
政府が供給することができなかつた場合に、
政府の
責任関係の
規定がどこにもない。こうした規禎で
農民のみにこういう脅迫をするような、私は脅迫と言
つてよいと思う、このような脅迫を與えるような感じを示すような
法案ばかり羅列されることは、眞に
生産意欲を心持よく発揮するゆえんではないと私は思うのであります。
そこで第八條の一項には「前條第一項の
規定による指示を受けた者は、災害その他眞にやむを得ない事由に因
つてその指示に係る
農業計画によ
つて定せられた
供出数量の
主要食糧農産物を
供出することができなく
なつたときは、市町村長に対して、当該
供出数量の変更を請求することができる。」ということが書いてあります、それで
農藥なり肥料なり農機具なりの供給ができなかつたために、
生産ができなかつた場合はどうなるかということを申しましたら、政務次官はこの第八條の
規定によ
つてやはり変更ができるのであるということを
答弁されたのでありますが、私はそういう解釈はむつかしいと思います。「災害その他眞にやむを得ない事由」というように、
農藥なり農機具なり肥料なりの
配給が、
計画通りに行われなかつたということがここにあるものとするならば、私は明文を置かなければいけないと思います。そういう解釈が直ぐ出て來ない。なぜかというと、この肥料、
農藥或いは農機具というようなことは、明らかに第三條に例示しているのでありますから、そういう例示を受けて親切にやはり第八條の中に書かなければならんと思いますが、
大臣も
農藥等の
配給ができなかつたときには、その
供出数量の変更を請求してよいということに御解釈になりますか。それでなければ、明文を置く必要があるわけであります。それをただそういうことができるというだけで第八條の
規定を見過ぎ去るわけにはいかないと思います。今申しましたことについて、
大臣のお考えをお聞きしたい。