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1948-06-25 第2回国会 参議院 治安及び地方制度委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十五日(金曜日)    午後一時三十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方財政法案内閣送付) ○地方税法を改正する法律案(内閣送  付)  (右二案に関し証人の証言あり)   —————————————
  2. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) それではこれより本日の委員会を開会いたします。本日は地上財政法案並びに地方税制改革につきまして学識経驗ある方々から御意見を伺うことになつているのでございます。地方財政の根本的な改革を断行いたしまして、地方自治の基礎を確立しなければならんということは、新憲法実施以來の懸念でありまして、政府におきましても御承知のごとき地方財政委員会なるものを設置いたしまして、自治体代表者をそれに加えまして、鋭意これが立案に当つて來たのでありますが、不幸にしていわゆる委員会の案といわれておりますものと政府の案とが対立いたしまして、最近の國会に提出いたされました政府案に対しましては、自治体側の支持はこのために得られないというような、ややそうした外観が呈されておるのであります。この問題に関連いたしまして委員会における陳情或いは請願というようなものも、委員会のみならず又各國会委員手許にも山積いたしておる状況でありますので、我々の委員会といたしましては、この際十分に各方面意見を聽取いたしまして、愼重の上にも愼重の態度を以て審議をいたしたいと考えておる次第であります。それが今日証人方々においでを願いました理由であります。本來ならば正式に國会法規定いたしておりまする公聽会を開催いたしまして、それに当てるべき筈であるのでありますが、時日の余裕がございませんがために、証人として御出席を願いました次第であります。  只今國会法規定の宜誓を願うことになつてまりますが、これは法規の上でそういう規定がありますために、その形式を履んで頂くだけのことでありまして、決してこれがために何か非常に躊躇せなさるという気持を拂拭せられまして、自分に御腹藏のないところの御意見の御開陳を特にお願い申上げる次第であります。或るべく抽象的な意見はこれをお避け下さいまして、具体的な建設的な御意見が伺うことができますまらば、我々委員会としては非常に幸いと思う次第であります。尚証人の各位のお手許には法案の要項を予ねてお送り申上げて置いたのでありますが、実際のところは我々にもその本当の法案地方財政法案、並びに地方税改正法案或いは配付税法案等が昨日活版に刷られないで謄寫版で我々の手許に届けられたようなわけでございまして、皆さんが、これらの法案を御檢討下さいます点についてはその準備において多少遺憾な点があつたかと思うのでありますが、どうぞ今のような次第でありますから、悪しからず御了承をお願いしたいと思うのであります。御発言の時間は大体十五分程度、このようにこちらの方で予定いたしておりますので、成るべくその時間内に一つ完了するというお心組を以て御発言が願いだいと思うのであります。発言の順序は私にお委せを願つたことといたしまして議事を進めさせて頂きたいと思うのであります。先ず初めに東京商科大学教授井藤半彌君の御証言をお願いすることにいたしたいと思います。    〔總員起立証人は次のように宣誓うを行なつた〕    宣 誓 書  良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 井藤 半弥         証人 原田 與作         証人 藤田 武夫         証人 大高 義賢         証人 河北眞太郎         証人 小國 修平         証人 伊賀 秀雄         証人 三田 朝丸
  3. 井藤半彌

    証人井藤半彌君) 実は今日の会の内容がよくわからないのでございますが、大体こういうことだろうと思つて一應用意して參りましたので、それを申上げます。それから時間を只今成るべく十五分という御指定がございましたが、多少超過するかも分りませんがその点も御了承願いたいと思います。成るべく数字を用いまして、只今委員長の御注意通り抽象的な意見を止めまして、数字を用います。それから建設的な意見を、勿論私の主観的な考え方でありますが申上げます。  現在の地方財政の窮境についていろいろ調べて來たのでありますが、これは私は申上げることを止めて置きます。とにかく現在地方財政が非常に行詰つている。ところが数字を見ますとそれ程地方財政は膨脹しておりませんので、これは私の計算でありませんから当てにはならんのでありますが、例えば昭和十五年の國家経費とそれから地方費と比較して見ますと、地方費國家経費の五六%、これには勿論臨時軍事費は含んでおりません。それから飛びまして昭和二十年が國家経費の四九%になつております。それから昭和二十一年は減りまし前三〇%、二十二年が四一%、二十三年が五〇%、そこで昭和十五年が五六%、現在昭和二十三年が國家一般会計経費の五〇%であつて地方自治が強化されたと申しましても、数字的に見ますと、それ程強化されているように見えないのであります。それが経戰以來段々と地方経費が、國家経費に比べまして膨脹しつつあるとということは、今の数字が示しておる通りであります。そこで地方経費の膨脹の原因でありますが、これは申すまでもなく教育費の増加であります。昭和二十二年頃までは教育費はむしろ第二位であつたので、土木費は全体の約四分の一を占めておりました。教育費は全体の一五%であつたのでありますが、昭和二十一年から躍進いたしまして、教育費が第一位となり、全体の二三%、昭和二十二年は全体の二六%、今年度におきましては、教育費地方経費の三一%となつておりまして、地方財政膨脹原因教育費となつております。それからもう一つ地方財政の膨脹の原因は、國家事務地方への委任が多い。即ち委任事務費が多いということであります。而もこれに対して適当な財源を與えない。そこで國家委任事務費地方経費の中の何割を占めておるか、この計算はなかなかむずかしいので、私は今日はいたしませんが、とにかく地方事務費が可なり多い。これが原因となり地方財政が膨脹しておる。そこでそのために地方團体におきまして、いろいろ財政難の兆候が現われております。この財政難をいろいろ側面で計かることができるのでありますが、私は地方債の増加という点で、地方財政困難性、或いは不健全性が分るのであります。と申しますのは、去年あたりから地方債発行高が非常に殖えまして、過去における地方債蓄積高よりも、一年間に発行する地方債の金額の方がずつと多いというような変態を呈しております。即ち昭和二十一年度末の地方債の未償還高合計は七十六億であつたが、去年一年で二百四十億は殖えております。今年の三月三十一日現在では、地方債未償還が二百四十億でありますが、今年の発行の予定高が二百六十四億であります。即ち現在まで蓄積した地方債の合計より、一年間に発行する地方債の方が多い。これはどうしても変熊的現象であります。勿論貨幣價値の下落ということがございますので、一概に言うことはできませんが、確かにこの点から見ましても、地方財政というものは、相当苦しい状態になつておると思うのであります。そこで今度中へ參りまして、経費は極く簡單に申上げますが、この間頂戴いたしました地方財政法案要綱を見ますと、大体こういうことがはつきり決まつておるようであります。國家事務の費用は成るべく國家負担するようにする。それから地方固有事務の費用は、地方團体負担させる。こういうふうに経費財源との関係を截然と今度は区別することになつておりますが、これは法制としては甚だ結構なことだと思います。ただ問題は、何が國費であるか、何が地方費であるかということをはつきり決めるのはちよつとむずかしいのであります。それからもう一つ運用でありまして、制度はうまくできても、運用を誤まると意味をなさないと思います。問題はこれよりも收入の問題であります。  次に地方收入の問題になります。そこで地方團体收入を統計によつて見ますと、地方團体税收入税外收入に分けます。ところが昔は税外收入の方が税收入よりも断然多かつたのであります。昭和二十一年までの統計を見ますと税外收入が全体の七割乃至八割を占めました。租税收入は僅かに二割乃至三割の状態でございます。ところが昭和二十二年度から税收入割合が増して参りまして、昭和二十二年は税收入四六%、税外收入五四%、大体半々に近付いておりますが、税外收入が多かつたのであります。ところが昭和二十三年度の政府の原案によると予算を見ますと、税收入税外收入割合が逆轉してしまして、昭和二十三年度は税收入が全体の五四%、税外收入が全体の四六%となつております。こういうふうに、去年あたりから税收入が段々と殖えて參りました。これは最近の地方財政の特長ではないかと思うのであります。そこで税外收入の主なものは何かと申しますと、大部分は國庫支出金でありまして、從來は國庫支出金地方財政において可なり重要な位地を占めておつたのであります。これは取りも直さず地方財政國家財政に依存しておつたということを数字的に明らかにするものであると考えるのであります。そこで地方自治或いは地方財政独立という観点から申しますとこういうふうに地方税收入地方收入において占めておるパーセンテージが増加して來たということは、これは傾向としては歡迎すべき傾向であると思うのであります。いわばそれだけ地方独立財源が増したということになるのでありまして、この傾向自体はいい傾向であると思います。ところがその中味を見ますと、地方税收入は非常に殖えて來たのでありますが、中味を見ますと、必ずしも一概には歡迎できないのです。と申しますのは、地方税と申しましても、皆さん御案内の通り、直接税と地方與税という二種があります。ところが今年の予算を見ましても、依然として地方税の中における分與税割合が多いのであります。そこで地方税の總額における地方分與税割合パーセンテージを申しますと、この制度ができましたのは昭和十五年でありますが、昭和十五年は地方分與税地方税全体の三一%でありました。ところが昭和十七年は三九%に殖え、昭和二十年は五五%に殖え、昭和二十一年は四三%、昭和二十二年は四五%。今年は三六%、即ち昭和十五年にできたときは、分與税地方税の三一%でありましたものが、今度地方独立とか地方自治とか何とかやかましく言いましても、尚依然として地方分與税が三六%になつておるといふことは傾向としては、必ずしも喜ぶべきこととは思えないのであります。それで、これに対する対策といたしましては、どうしても次の二つのことが必要ではないかと思うのであります。それは地方には独立財源を與えるということが一つ。それからもう一つ地方團体課税権について独立税を認める範囲を拡大すること。今度の政府の案を見ますと、この二つの点から申しまして、大体現在の制度よりは相当進んだところがあると思うのであります。それを具体的に申しますと、入場税狩猟免許税國税から地方税に移した。これは地方独立財源を與える立場からいつて結構なことであると思います。それから地方團体に対する中央政府監督廳の許可の権限を全廃したということ。これも地方課税権独立という立場から言うと結構なことであります。問題は、それ以外の新らしい税金、それから古い税金引上の問題であります。そこで一般地方税制度でありますが、地方税制度というものは、結局結論と申しますと、收益税中心とすべきものではないかと思います。と申しますのは、地租家屋税事業税、この三つが地方税の中核をなすべきものではないか。これは理論的に申しましても、現在の日本の実情から申しましても、地租家屋税及び事業税中心とするということは、これは必要なことではないかと思うのであります。そういう意味で、殊に地租家屋税事業税と申しますが、このうち地租家屋税割合彈力性が少い税金であります。というのは、法定賃貸價格を基準として課税せられますので、彈力性が少い、そこで一番彈力性の多いものは事業税でありますが、今度の案で事業税範囲が拡大されるということになります。これも案としてはいい案じやないかと私は考えております。というのは、地租家屋税事業税と申しましても、これから後当分の間、地方財政はどうしても事業税中心とせざるを得ないのでありまして、そういう意味におい、て今度は事業税課税範囲が拡大せられるということは、私は一般方針として、個々の点についてはいろいろ疑問がありますけれども、一般方針としては、私はその案に賛成するのであります。そこでただ個々の問題について申しますと、相当研究を要するものがあるのであります。先ずこれはいろいろ政治問題になつて甚だ面倒な問題があるようですが、私、学校教員という立場から申上げますと、問題は農業事業税であります。今度は農業事業税が掛かることになりました。この農業事業税を掛けるといふことは当然のことでありまして、私は次の二つ立場から農業には事業税を課さなければならん、一つ租税体系という立場一つ農業負担能力という立場、この立場から見て農業は当然事業税を掛けるべきではないかと考えておつたのであります。租税体系立場から申しますれば、いわゆる收益税というものは地租家屋税事業税とからできております。從來農業には收益税は掛かつておらなかつたのであります。何故かと言いますと農業には地租が重く掛かるから酷だということになつてつたのでありますが、併しながら先程も申したように地租というものは彈力性がない。現在の地租昭和十一年四月一日現在の賃貸價格政府が決めてそれを基準として税金を掛けておりましたので、それから後の経済状態の変遷による修正も行われていない。ただ税率の引上は行われており割合税收の殖え方が少ないのであります。これは数字で申しますと、これは地方税のみについて計算したのでありまして、少し正確を欠くのでありますが、昭和十五年度と二十二年度と比較してますと、地方税ほ、これは勿論附加税を含めてですが、地租昭和十五年に比べて二十二年度は六倍になつておる。ところが一般商工業に掛かります営業税は何倍かと言いますと、その十倍の六十四倍になつておるのであります。こういうふうに営業税の殖え方は非常に多い。それに対して地租の殖え方が割合に少ない。租説体系立場から言うと農業が段々と近代企業化しつつあるので、これに事業税を課することは租税体系立場から言つて必要なことではないかと思うのであります。その次には農業力の問題、それは学校教員租税体系という立場からいえば、それは掛ける方がよろしいのではないか、農業経済力負担能力からできないことではないかということになるのでありますが、私は数字的に申しましても農業については経済力が相当高まつておると考えるのであります。そこでその証明といたしまして國民所得の中で農業所得がどのくらいのパーセンテージを占めておるかと、その割合を計算して見ますと、この前の第一次世界大戰の始まつた年、即ち大正三年は二八%でありまして、当時は可なり農業が重要な産業であつたことを示しております。ところが第一次世界大戰が終つた年、大正八年になると商工業が盛んになつたためでありますが、このパーセンテージが一五%に減つておるのであります。昭和五年には十七%に減つております。ところが昨年昭和二十二年になると又二九%に殖えております。かように國民所得の内部における農業所得の地位が三九%に殖えておるという事実があるのであります。これに対して反対論があります。というのは、農業人口が殖えておる。從つて一戸若しくは一人当りの農家の負担はこれ程殖えないのじやないかという反対論があるのでありますが人口についてちよつと調査して頂きました。それは有業人口における農業及び林業の人口の占める割合について計算したものを見ますと、昭和五年は四七%、ところが昭和二十二年は五四%に殖えておる。この点からいえば確かに殖えておるのでありますが、私がさきに申しました経済力が殖えたという結論を覆えす程には殖えておらんということは言えるのであります。もう一つ人口一人当りの所得の倍数について計算したものがあります。これは昭和五年度と二十一年度と比較したものでちよつと年度が古くなりますが、これによつて昭和五年度と二十一年度における人口一人当りの所得の倍数を見ますと、總平均は三十七倍に殖えております。これは物價の騰貴即ち貨幣價値の変遷によつて三十七倍に殖えておるのであります。ところが農林の所得だけについて申しますと、これが五十六倍に殖えておるのであります。かように経済力という点から見ても、農業経済力日本経済における地位が高まつておるということは数字によつて言えるのではないかと考えるのであります。そこで今度の政府の原案を見ますと、農業には事業税を課徴することを原則として認めることになつております。これは非常に結構でありますが、ただ尚研究を要するものは、主要食糧についてはこれは課税範囲に入れない、主として供出なんかの問題があります。勿論供出というものは、或る意味において税金と同じような作用があるものでありますので、供出という事実を全然無視するということはよくないのでありますが、併しこれを全然課税内に置くという点はこれは一考を要するのでありまして、供出という点で考慮して税金を掛ける上において考慮することは必要でありますが、全然免税にするということはどうかと思うのであります。このために五十億余りの地方税減收があるということであります。そうするとその分を誰かが負担しなければならない。即ち割合経済力の高まつた者が負担するか、或いは経済力のない都会の労働者勤労生活者負担するか、そういう全体の問題となるのであります。そうなると一般的に言つてもう少し農業方面負担してもよいのじやないか、但しこれを実施するについて免税点を如何にするかこれが問題になります。單作農と、そうでない者と同じ扱いにしてはできないのであります。もう一つやはり農業の問題でありますが、今年の四月、五月頃の新聞を見ますと農業税金負担が重いというので非常な問題になつております。これは事実だと思います。併しこれは制度がいけないのではなくて、農業所得税などを税務署が掛ける場合に運用の方面でいかない点があるのじやないか、我々は制度についての問題と運用の問題とは、これは区別すべきではないかと思います。その意味において、農業の問題だけにいたしますが、農業以外の職業についても隨分反対論があるのでありますが、事業税課税範囲を拡張したということは、これは原則として私賛成であります。今度は事業税という名前をとらないで、特別業務税という形で医師、弁護士その他の方々にも営業税を掛けるようになつておるのでありますが、これはやはり地方税体系という点から言うならば、当然そうすべきではないかと思います。ただ具体的な内容になりますと問題はありますが、一般的の根本方針として望ましいことではないか。もう一つはこの案とは直接関係ありませんが、酒、煙草消費税の問題であります。この酒、煙草消費税については私は性質から言えば地方税に過していないと思います。というのは酒や煙草地方税で各自治團体で別々に掛けてしまうと、酒の値段、煙草の値段が地域によつて違うことになります。東京と神奈川縣と酒の値段を比べて、神奈川縣が安いということになると六郷川を越えて神奈川縣に酒を飲みに行くということになります。從つてこれは全國を統一する必要かあります。そこで今度の問題になつた案は、そういうこともお考えになりまして、結局全國の價格を均一にして、そうしてその酒、煙草收入の一部を地方財源にやろう、こういう案であつたと思うのであります。そういうような案を若し採るといたしますと、地方自治という立場から見てどうかと思うのであります。地方自治という立場から見ますと、各地方團体税率その他について自由に上げ下げするというところに地方自治意味があるのでありますが税率その他の全國統一して釘付けておいて、その中の何割かを地方團体にやるという形は地方税であるという実質を失うことになる。問題は國税地方税かという問題ではなく、收入が問題である。酒や煙草收入の一部分を地方財源として割愛するという点にあるのじやないかと思うのであります。收入が問題であつたならば、結局國家が取つてそれを還付税という形で還せば同じことになるのじやないかと思うのであります。ただ還付とする案につきまして反論がございます。これは還付税という形になりますと、ただ一遍酒や煙草の小賣者がそれを國庫に金を納めても、地方自治團体に配分する間に数ケ月時間が掛かりますので、金を手にすることが時期的に遅れるという非難があるのでありますが、これは一時のことでありますので、これこそ何かの形で金融上の融通を付ければいいのじやないかと思うのであります。私は酒、煙草消費税の一部を地方團体に何かの形で提供する案自体は結構でありますが、それを形式的に地方税にいたしましても、実質は國税という形と同じことで、國税という形を取つて還付税の形を取る方がいいのではないかと思うのであります。酒、煙草消費税というものが地方自治團体課税でなくなると、それでは外に何かあるかと言えば、残るところはさつき申した三つの收益税、その次が所得税附加税であります。所得税附加税は現在地方團体で掛けることができませんが、これを地方自治團体で掛けることを認めるということであります。申告納税制度その他が始つて間がないため、現在國税徴收が可なり混乱しております。それから所得の出て來る地域が必ずしも一市町村、一府縣に限られておらないで府縣に跨つておるために、技術的に目下のところ地方税附加税を課することを困難であります。それも案として考えたのでありますが、困難である。そういたしますと、残るところは何かというと、結局住民税ではないかと思うのであります。勿論住民税、これは市町村民税とか縣民税でありますが、あの住民税はどうも非常に反対論が強いのです。併し住民税というものは私は反対論は税額よりも租税負担の不均衡という点に反対があるのじやないかと思います。というのは、住民税は一年に千円とか五百円とかいうので、税額自体はそう多いものではない。ただ隣り近所の者と比べると、うちは貧乏なのに沢山掛かつてつて、隣りは收入が多いのに税金が安いというのは怪しからんというので、税額という点でなく不均衡という点に問題が多いのじやないかと思うのであります。地方財源としては所得税附付税を掛けることができないと、どうしても住民税が必要になつて來るのではないか。ただ課税標準につきまして、現在行われておる均等割の部分はできるだけ少くいたしまして、やはり課税標準として財産を重んずるとか、或いは財産から來た財産所得を重課するとかそういう方法で所得税附加税ができ上るまで、住民税の形でそれを掛ける必要があるのじやないかと考えるのであります。これが地方税の問題であります。こういうふうにいたしまして、地方の直接税收入を増さなければ地方自治というものは保つことができないかと思います。  税金の問題はそれだけにいたしまして、それ以外の問題では公営事業の拡張の問題であります。これはやや遠い將來の問題といたしましては、社会化傾向が進みますと、公営事業の拡張が來るようになつて來まして、公営事業から上る收入は、國家の場合も、地方自治團体の場合も、重要な財源になるのでありますが、地方團体公営事業というものは赤字に悩んでおる。勿論現在急に公営事業から多大の收入を挙げることはむずかしいと思うのであります。  次は寄附でありますが、寄附は私は形式上民主的ないい制度だと思いますけれども、事実半強制的なものでありまして、むしろ寄附金は悪税に劣ると思うのであります。むしろ寄附を取るくらいならば、悪税の方がましだと思うのでありまして、寄附は本當に民主的自発的に出すならば結構でありますが、現在行われておる寄附はこれは悪税の方がましだと思うのであります。これは成るべく少くしたいと思います。  最後は公債であります。公債は、現在は地方債は一部を大藏省預金部で引受け、一部は一般金融機関で引受けておりますけれども、これはなかなかうまく行かんので問題になつております。そこで問題の地方團体地方金庫というものがあります。これは問題になつておるようでありまして、今度の案には出ておりませんけれども、結論を申しますと、これはやはり何かの形で地方團体地方金庫を設けて、都道府縣とか市町村の財政上の融通をする必要があるのでないか。これは預金によつて資金を賄えばいいのでありますが、その賄えない場合は証券の発行による。地方團体地方金庫証券を発行してそれを結局は日銀に引受けしめると、結局インフレの危險が生ずるので、これはむつかしい問題で一概に何とも言えないのでありますが、そうかといつてつておる地方團体をこのままにして置いてもいかんので、今申す点は大いに考慮を要するけれども、やはり地方團体地方金庫は何かの形で設ける必要があるのでないかと思うのであります。  これは大体私の考でありますけれども、地方財政独立と申しましても、やはり急には独立できませんので、独立するにはそれの経済的地盤ができなくてはならんのであります。経済的地盤は一年や二年で固まるものではありませんので、やはり地方財政独立という目標を掲げるのは結構でありますがこれに対して向う場合は、やはり漸進主義を採らざるを得ないのでないかと思います。これを以て私の証言を終ります。
  4. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 尚証言供述の方々に申上げておきますが、十五分間の証言が終りましても、尚委員の方でいろいろ御証人方々に質問をして御意見を伺いたいと存じておりますので、終りましてもどうぞできるだけ最後まで一つお残りを願いたいと思うのであります。特に北海道、埼玉縣等、東京以外の地方からわざわざお出でになつておる方々もございますので、できる限り最後まで残つて頂くことをお願い申上げて置きます。  それでは次に北海道の札幌市助役で北海道都市財政協議会の会長である原田與作氏の証言をお願いいたします。
  5. 原田與作

    証人(原田與作君) 私、田舎におりますので十分資料もございませんから細かい点を申上げることは困難でありますが、この案を檢討いたしますについて先ず第一に総括的に見まして、この税收入が財政需要の面から見て、果して満たされておるかどうか。第二番目には、この税制で地方財政としての伸長性があるかどうか。第三点といたしましては、地方税として府縣と市町村との間の税の取り分がこれでよろしいかどうか。第四点といたしましては税制に自主制があるかどうか。これを総括的に見まして、次に税制の内容個々の若干の税目につきまして、この改正案に対する意見を申述べたいと思うのであります。  先ず総体的に見まして、地方財政の需要がどれくらいにあるかということは、個々計算することはなかなか困難であります。けれども、昭和二十二年度の地方財政の全体の予算額、これを基準にいたしまして、更にその後の情勢の変化、つまり六・三制の問題、或は警察、消防、保健所の問題、或いは物價の値上りの問題、或いは三千七百円ベースの問題等を達観して見ますと、約三千億円の資金が必要だと思うのであります。更にこの三千億円が果して妥当かどうかということを別の観点から見るのでありますが、それは國家財政との比較であります。これは昭和十二、三年度、つまり戰爭の始まる前の國家財政の総額と地方財政の総額とを睨み合して見ますと、約一〇%ばかり上廻つております。そこで昭和二十三年度の國家財政の三千九百九十三億の主から、終戰処理費とか、或いは賠償施設処理費とか、或いは價格調整費というような特殊な経費を除いて、そうしてそれに約一割を加算し、更に先程申上げましたその後の情勢の変化変察、消防等のことを考慮いたして見ますれば、三千億というのは必ずしも多い金ではないのであります。更に又國民所得との関係について見ましても大体從來は國民所得の一二%乃至一〇%に当つてつたのであります。それはやはり昭和十二、三年度の頃であります。その後の変化、つまり種々の事務の委讓、そういうことを考えまして三千億といたしまして、國民所得の一兆九千億に比較いたしますと十八%八といふことになりますので、地方財政の需要として妥当なものではない。更に從來の地方財政は非常に傷め付けられております。地方で最も必要とするような衞生、産業、その他土木というようなことが全然なおざりになつておるということを考えまするならば、尚これ以上欲しいと、こう考えるのでありますけれども、徒らに紙の上でその計数を出したところで、資金資材、労力等に制約されますので、これらは、その辺の制約を考えて、先ず三千億程度と推定することが良いのではないかと、こう考えるのであります。その三千億の財源をどういうふうにして調達するかということを考えますと、これは從來の実績や或いは最近の例などを見ますと、約半額は税外收入でこれを補填することができるのであります。つまり使用料、手数料或いは負担金その他の雜收入、勿論この中には公債なども入つておりますが、どういうようなもので調達する。そういたしますればあとの半額千五百億というものは、これは税收入に求めなければならないのであります。そこでこの改正案によつて税收入というものを試算いたして見ますると、直接課税するところの税が七百一億三千六百万円、分與税が國の予算で見ますと四百四十九億円、合計で千百五十億三千六百万円となります。そういたしますと、ここで地方財政の資金といたしましては約三百五十億の不足を生ず。るこういうことになるのであります。この不足をどうするかということにつきましては別に申上げたいと存じます。  次に、税制に伸長性があるかどうかということでありますが、税の伸長性を見る場合には御承知の通り、税源そのものが豊富であるかどうかということと、人爲的に課率を増す余地があるかどうか、この二点であります。この二つの点についてこの改正案を見ますれば、煎じ詰めて見るところ、この改正案は從來國税であつたところの入場税地方に委讓した、それから事業税を創設した、この二つに掛かつておりまして、あとはただ單に課率を増したというに過ぎないないのであります。従つてこれ以上増す、或いは將來増し得るという余地はないのであります。尤も事業税につきましては相当に伸長性があるといいながら、現在のように所得税が非常に高率である場合には課率において増す余地がない、こう思うのであります。  その次は、府縣と市町村間との税の配分が適当であるかどうかという点について申上げますと、昭和十九年度の國庫府縣市町村の歳出予計の形を見ますと、國庫の方は二百一億七千三百万円、府縣が四十九億一千百万円、市町村が二十億一千二百万円、こういうふうになつておりまして、つまり國庫から府縣、市町村とこう下るに從つて段々と財政の幅が狭ばまつております。こういうふうに極端に下の方が狭ばまつておるということは、從來の極端なる中央集権的な制度であつたということが分るのでありますが、御承知のように市町村の仕事というものは直接國民の生活そのものに必要な仕事をいたしまするから、生産力を増したり或いは國民に活力を與えるということのためには、できるだけ市町村の予算を増さなければならないと、こう思うのであります。こういう点から考えて見ますと、どうしても府縣よりも市町村の方の財政が豊かでなければならん。私は達観的ではありまするけれども、府縣を四〇%、市町村を六〇%、これぐらいにすることが適当だと思うのであります。そこでこの改正案を見ますと、税を府縣と市町村とに分けて見ますと、分與税を仮に半々といたして見ますれば、府縣の方が五百二十四億五千七百万円、全体の四九・二%になります。市町村の方は五百六十二億二千七百万円、五一・八%になりますほぼ戰前よりは私の考えに近付いておりますけれども、更に一層これを徹底いたしまして、市町村と府縣との割合を、市町村の方を多く、府縣を四〇%市町村を六〇%として頂きたいと思うのであります。  次に税制に自主性があるかどうかということについては、外の方々から十分述べられておりますので、私の意見を省略いたします。  それから具体的の内容に付て若干の税目について申上げます。第一は家屋税の率の引上でありますが、この率の引上を相当程度いたさなければならんということは私も考えております。併しながら現在の法定賃貸價格をそのままにしておいて課率を数倍上げるというようなことは、その後の土地の事情によりまして非常に賃貸價格の変化があるのであります。事実上の変化があるのを無視して、そうしてこれを單に課率だけ引上げるということになりますれば、その不均衡というものは税額の上にはつきり現われて參りまして、結局納税思想の悪化を來すということを恐れるのであります。万一納税成績が悪くなつたというようなことが一旦市民の中に侵み込みますと、これを回復するのは、実に容易でないのであります。それで私はこの税率の改正前に賃貸價格それ自体を適正に変えて頂きたい。札幌の場合で申上げましても從來殆んど僻陬の地であつた処が繁華の所になつておる、從來繁華な所が疎開によつて或いは繁華でなくなつておるというような所も沢山あるのであります。そういうような点からいたしまして賃貸價格そのものを改訂するということが急務でないかと存ずるのでありますが、賃貸價格の改訂につきましては、市町村毎に民主的な委員を組織する。更に府縣においてもその委員を組織しまして、府縣においては市町村間の均衡を取り、市町村におきましては市町村間の均衡をとるという方法で行けば、さまで困難なことではないと思うのであります。  その次は事業税についてでありますが、先程他の証人から述べられたとほぼ同様な意見でありますが、私といたしましてもこの主要食糧に関する部分は当分の間課税の対象としないということは、これは甚だ均衡を失しておると存ずるのであります。最近農民の税金が高いという声があるのでありまするけれども、これは先程の証人が申されましたように決して制度そのものから來るのではないのでありまして、それを実際に面して考えて見ますれば、それは課税の方法が悪い、例えば所得の掴み方、或いは課税をする時期、これが悪い、農民の所得のあつた時に掛ければいいのを、営農資金が要る時になつてからごそつと掛けと行くというようなことが一つと、農民に掛けるということが普通の月給取を、或いは商人の家計と違いまして、非常に不備なのであります。ラフなのであります。そうして予め税のために金を積立てて置くというようなことなどは殆んど考えておりません。そういうようないわゆる手段の不備によつてこの問題が起きて來たのであります。又税が高いといたしましても、これは決して地方税が高いということではなくして、國税が高いというのであります。それらのことを考えて見ますれば、農地改革の問題、或いは生産を阻害するというような問題は、それは地方財政の改正においてなさるべきではなくして、國家の施策によつてなさるべくだと思うのであります。  その次は住民税引上の問題でありますが、現在の所得税法を改正して國税の率を改正しない限りにおきましては、この住民税引上げるということは甚しく無理だと思います。札幌市の実情で考えて見ますと、所得百万円の場合を想豫しますと、所得税が約八割掛かります。営業税がこれが制限外も含めまして一八%、その外に都市計画税から府縣市町村合わして八%、市民税は所得を重視して割合を出して見ますと、約二%、合計百六%になります。從つて納税者の側から見ますれば、帳簿をごまかさない限りはこういうような税が出せる筈がないのであります。こういうような点から考えましても、所得税というものを下げない限りにおきましては、住民税だけを引上げるいうようなことは甚だしく無理だと存じます。  その次は不動産取得税についてでありますが、これを一挙に百分の二十ということに引上げますことは、これはなかなか無理じやないか。現在の庶民住宅にいたしましても、北海道の場合一軒を建てるのに十四、五万円、今後物價が改訂されますれば二十万円から二十五万円掛かる。それに対して二割というようなこからいいますれば、五万良からの税金が掛かる。こういう点を考えますれば、庶民住宅と大邸宅との間に相当累進的な率で行くというようなことを考えてよいのではないか。但し土地についてはこの場合は現在も非常に廉いのでありますから、むしろこれは三割程度まで上けてもよろしいのではないか。言換えますれば土地と家屋とを分離いたしまして、それに家屋につきましては低率から高率まで累進的に行く。それから土地に対しましては三十%程度の課税でもよろしい、こう考えられるのであります。  以上の事柄を綜合いたしまして、結論的に申上げますれば、財政に伸長性を與えるためには取得税を採入れるべきある。消費税消費税全体として綜合して採入れますれば、始めてそこに伸長性がありますが、個々消費税というものが必ずしも伸長性がなく、それぞれ消長があるのであります。ところで地方の場合においては消費税を綜合して取るというわけには參りません。税の性質からいつで、分配の仕方に不可能なものもありますれば、或いは地方税として不適当なものもある。こういうようなことから考えますれば消費税中の有力なものはこれを補完税とする。そして地方税といたしましては、先程他の方からも申上げましたように、所得税附加税を取る。或いは附加税という形式が悪ければ國税という一本槍で取つても、その中の四〇%程度はこれを地方に還元する。若しそれでもできないというならば所得税を四〇%程減額しましてそうして地方において住民税なり事業税なりをそれだけ増し得る余地を残す、こういうようにして頂きたいと思うのであります。そういたしますれば、仮に四〇%といたしますると、ここで四百億という増收が得られと思うのであります。それから事業税中に主食の部分課税する、こういうことにいたしますれば、これによつて五十億は得られる。それから消費税中の有力なものとして酒、煙草消費税、これを創設することによりまして約二百億を得られると思うのであります。更に馬券税はこれは地方的なものでありまするから、地方に委讓して貰うのが適当ではないかと思います。分與税の方は原則としてこれを廃止する。そうしてただ窮乏團体に対して財政調整をするために、若干は取つて置く。これを百億程度残して置くとしますれば、これは減收となりますのが三百四十九億以上差引きますと先程申上げました地方財政の需要の面から見て不足三百五十一億というものは補填され得るのであります。第二番目には、先程申上げましたように、府縣と市町村との財源の配分をそれぞれ四〇%、六〇%として頂きたい。第三には、これは小さな問題でありまするが、市町村としては大きな問題になつております。それは市町村で法定外税目を設定いたしました場合に、往々にしてこれが府縣が取上げるのであります。これは非常な迷惑な話であります。そこで市町村が法定外税目として先に設定いたしたものは、その地域においては府縣税を課することができないようなことにして貰いたいが、若しするといたしますればそれぞれの市町村と協議の上で、そうして税率の配分なども決めるということにしなければいけないと思うのであります。第四は直接税の問題ではありませんが、この地方財政委員会の組織であります。これを五人となつておりますが、これは私は少きに失すると申しますのは、都市は、大都市、中都市、或いは町村等に分れ、或いは地域によつてそれぞれの事情が違います。東北とか、或いは中部とか、南部、こうことを考えますれば、これは十一人ぐらいが適当であろう。これは十一人ぐらいが適当であろう。そのうち一人は國務大臣、三人が府縣代表、これは東北、北海道、中部、それから西南部、大都市代表一人中小都市代表三人、これは東北、北海道、中部、西南部、町村代表としても同樣三人、こういうことにすることがいろいろ地方の実情を反映させることができると思うのであります。特に今後いろいろな法定外税目が出たり、或いは制限外課税が出たりして、それを地方財政委員会で審議いたします場合に、それぞれ地方の実情というものを十分に反思させる必要があろうと思うのであります。第五番目には、地方財政法第三十二條に当せん金附の証票の発賣権が都道府縣ということになつておりますが、これは從來のこういうものを消化実績から申しましても、少くとも人口十万以上の都市にも発行し得るようにして頂きたい。從つて都道府縣及び人口十万以上の市、こういうふうに改正して頂きたいと思うのであります。要旨は大体以上の通りでございます。
  6. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 尚次に立教大学教授の藤田武夫君にお願いすることにいたしたいと思います。藤田君にちよつと申上げて置きたいと思うのでありますが、成るべく早く済まして帰らして呉れというような御要求があるのでありますが、この合会は人民の代表である政治の最高機関としての國会証人として、特に御出席を、國会法規定に基いて來て頂いておりますので、講演会の講師に來て頂いているのではないのでありますから、その点よく御了承の上、終りましてもまだ議員の方から質問等があると思いますので非常に止むを得んような用事があるならいたし方ありませんが、その点よく御承知の上できる限り最後まで、藤田君のみならず、他の証人もお残り願いたいということを申上げて置きます。それでは藤田君にお願いいたします。
  7. 藤田武夫

    証人(藤田武夫君) 時間が非常に制限されておりますので、地方財政の現状その他につきましては、すでに井藤先生からも詳しい御説明もありましたので、私といたしましては今度の改正案そのものにつきましての批評と尚私の考えておりまする提案とを直ちに申上げたいと存じます。  今度の税制、財政改正案が立案されました当初には御承知のように酒、煙草消費税というものが立案されましてそれに非常に大きな税收入彈力性ということが期待されたわけでございます。二百二十億円だと思つておりますが、そういう彈力性に富んだものが削除されましたので、今度の改正案に期待されました彈力性が非常に乏しくなつたわけでございます。今度の改正案で最初企図されましたのは地方團体の財政の自主性と、それから彈力性ということが一番重点でありました。ところがその彈力性が甚だしく削られたわけでありまして、從つて自主性というものもこれは税收入彈力性があつてそれによつて裏附けられまして初めてそこに強い自主性が生れまするわけであります。從つて自主性も甚だしく経済情勢に即應せない結果にならざるを待たないと存じます。それでこの修正せられました案につきまして私の第一に提案いたいことは、所得税附加税の復活の問題であります。これが私の今日この案に対しまする批評並びに提案といたしまして最も重点を置きたいと思う点でございます。御承知のようにこの所得税附加税昭和十五年までは存在しておつたわけでございます。それで今ここで所得税附加税の復活を申し述べます理由を述べさせて頂きたいと思います。  先ず第一には、負担均衡化という点からでございます。御承知のように今日の地方税制におきましては、高額所得者と小額所得者との間の負担の公平化ということが余り実現されておりません。それは最も税制の中心でありまするところの地租家屋税営業税又改正案にありまする事業税とそういうものもすべて比例課税になつております。更に今日の地方税制中心でありまする住民税について見ましても、或る程度累進的な課税は行われておりまするが、その累進率は極めて緩慢でありまして、非常に均等割的な性質を持つております、こういうところから高額所得者と小額所得者の間の負担の公平化ということが欠けていると見られます。  その次には、利子配当所得とその他の例えば動産所得とか、勤労所得、その他の所得との間の負担の不公平ということが見られます。こういうように利子配当所得につきましては、今日の地方税制によりまするとただ住民税が附加されているだけでございます。ところが他の所得につきましては、住民税は勿論、更に收益税が、地租家屋税営業税又は事業税というふうなものが附加され、その上に都市計画税その他の目的税が掛けられておるわけであります。こういうことを見ましても利子配当所得とその他の所得との間に負担の不公平があることは明らかであります。これは分與税を考慮に入れましても変らないと思います。それで今日の地方税制策が甚だしく銀行その他の金融資本の擁護に傾いておるというふうな議論も生れるわけでございます。この点は今回改正案として提出されておりますものでも大きく改正はされておらないわけであります。それでこの負担の公平を図ります意味から、所得税附加税の復活ということが先ず要求されました。それから第二の理由といたしましては、租税制度の近代化ということを考えまする場合に、所得税が最も近代的な租税であるということは周知の通りでございます。尤も現行の地方税制度昭和十五年に成立しました際の所得税は國に移り、物税で以て所得税を形成するということが標準になつたわけでございます。その場合の理論的な根拠といたしましては、地方團体の施設や事業によりまするところの受益、いわゆる受益主義によつて物税によることが正しいというふうなことが主として論拠になつたわけでございます。併しながらよく考えて見ますると、地方團体の施設や事業によつて恩惠を受けます者は何も家屋や営業や土地に限らないので、その土地で銀行を営業しておる金融資本も又土地の施設によつて間接に非常に大きな、むしろ最も大きな利益を得ておるのではないか、受益の問題を單に目に見えた家屋とか、土地とかいうものに限るということは如何かと存ずる次第であります。それから所得税附加税を復活いたしますれば、先程もお話がございましたように、非常に税收入が大きくなります。試みに昭和二十三年度の所得税予算額を見ますると一千二百八十三億円、そうして昭和十年度の前にありました所得税附加税税率を見ますると、府縣と市と合せますると、約五〇%、府縣と町村を合せますると四五%という状態であります。それで例えばこれを約三〇%と見積りましても約四百億に近い税額收入が得られるわけでございます。この四百億という税收入は今回の改正税法によります全部の租税收入に四敵又はそれ以上に上るものだと思います。それから所得税附加税を設けますればインフレの高進に伴いまして経済状勢が変化する場合にも非常に彈力性があるという点であります。この税收入が大きく且つ彈力性があるという点は、所得税附加税の御承知のように強みであります。それで所得税附加税の復活が私が提案いたします理由を述べた次第でありまするが、これにつきましては所得税附加税を徹收することについての困難があり徴税上の困難があるということがしばしば指摘されております。最も大きな理由は、利子配当所得、謹労所得というものが今日源泉課税をされております。その関係で、その人達の住まつておる住居と、それの支拂われる場所とが異りまする関係上、各地方團体でそれを捕捉することが困難だというのであります。併しそれにつきましては第一のそれに対する方策としましては、各住民がその属しまする地方團体に勤労所得なり配当利子所得を申告する。自分の一年間の所得額を申告するという方法も考えられるのではないかと思われます。それから尚こういつた方法では正確にその所得をその申告によつて捉え得ないという場合には、最後の方法といたしまして、利子配当所得その他に申しまして所得税附加税に相当する増徴分を國で徴收する。そうしてその増徴分を配附税の財源に繰入れてそれを配付税の方へ廻して地方團体へ分與する。そういう方法も考えられるわけであります。日本で最初に財政散整交付金が立案されました当時の案を見てみますと、その財源は以前の第二種所得税、資本利子税、相続税というものになつております。そういう点からもそういうことが肯定されるのではないかと思われます。こういう所得税附加税を提案いたしまする一つの理由は、住民税というものが段々重くなつて参りまして、今度の改正案におきましても住民税課税の標準といたしまして、所得額を重視するということが謳われておます。又今までありました最高附加税額の制限ということを撤去するということが行われております。こういうふうにして住民税自身が段々所得税附加税に近付きつつある状態であります。これは近代的な経済組織に下において、團体がその財政力を強化することにつきましては、所得税といつたような税金がどうしても中心にならざるを得ないような趨勢にあるのではないか、そういうふうに考えられる。住民税の発展に関連せしめて、いつそのこと所得税附加税まで移ることがむしろ負担の公平化を期するのではないかと思われる次第でございます。  所得税附加税の復活の問題はそれだけにいたして置きまして、次に今回提案されておりまする事業税でございます。これにつきましては、後の問題は極く簡單に時間も過ぎておりまするので申上げたいと思いますが、事業税につきましては、一定の免税点が設けられるということは法案にも載つております。それでその免税点の設けられまする趣旨を拡充いたしまして、單に比例課税でなくて累進税率を適用するということが一層負担の公平を期するのではないかというふうに考えられますそれから第三の問題といたしまして同じような立場から電気、ガス税につきましても、免税点を設置する必要があるのではないかと思われます。第四番目には、地租税及び家屋税でございまするが、これは先の証人が申されましたように、賃貸價格の改訂を行わずして税率引上げて、それによつて賃貸價格の動きによるものを捕捉して行く、賃貸価格の改訂はなかなか現在の情勢では行われないので、むしろ税率を百分の七十二から百分の二百五十というふうに引上げて行くという方法を採つて行くのでありまするが、これは賃貸價格がそれぞれ経済の激変によりまして非常に変動をいたしております。これは皆さんも御承知の通りでございます。その上に非常に高率に税金を上げまするということは、ますますその負担の関係を不公平にするものであると思います。この点は十分吟味する必要があると存じます。それから住民税の問題でございますが、これは先程申しましたように、所得税附加税が復活いたしますれば、住民税は撤廃すべきであるというふうに考えております。住民税はもともと十五年の改正の時におきまして、各住民がその團体の負担を分任するといい負担分任の精神を生かす、戸数割でありました負担分任の精神を生かすという点にこの税金の設けられた主眼点があつたわけであります。併しよく考えて見まするとただ一律、全然一律でございませんがそういう一律に近い関係で各人が負担を分任するということは、本当の分任の精神には副わないのではないかと思う次第であります。各人がその担税力の大小に應じて負担を分任して初めて眞の、意味の又民主的な意味負担の分任が実現されるのではないかと思う次第でございます。  それから分與税の問題でありますが  これは今回は分與税の配分標準に警察吏員の数だとか又小学校の学級数というふうなものが取入れられまして、大分改正されたわけでありまするが、分與税財源といたしまして相続税を或る程度増徴しまして、それを分與税財源に繰入れるということが必要でないかと思います。相続財産というふうなものもその地方團体の恩惠を受けていることは、これは申すまでもないことでございます。第七番目には最初の案では地方團体中央金庫というものの設定がされたわけでありまするが、それが各方面からの反対によりまして不可能になつたわけであります。併しながら実際の地方團体の実情を見て見ますると、全く資金の融通に困り切つて、たとい起債の額として百五十億円の枠を與えられても、憲際にその公債が消化されないというのが実情であります。從つて中央金庫の設定を否定すれば、その半面におきまして、單に地方債発行の枠を拡大するだけでなくその発行を容易ならしむるように大藏省その他の政府において元利保証をするとか、その他いろいろの手を盡して極力これを援助し、金融團体の間に斡旋をする必要があるのではないかと思います。  大体私の今回の改正案につきましての批評並びに提案は以上のようでございますが、成るたけ民主的に國家に即した民主化された地方財政というものが実現することを切望する次第でございます。これで私の所見を終らして頂きます。
  8. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 次に元京城帝國大学の教授で現在東京市政調査会の審議員であります鈴木武雄君の御証言を願います。
  9. 鈴木武雄

    証人(鈴木武雄君) 私は地方財政法案地方税の改正法案につきまして若干修正意見というようなものを提出いたしまして、委員会の御参考に供したいと思います。  第一には地方財政法案の第五條に地方債発行のことが書いてございますが、その第五條の第五号を「戰災復旧事業費及び学校、河川ガ通路、港湾等の公共施設の建設事業費の財源とする場合」というふうに第五号をそれだけに改めますか、或いはこの第五條全部を削除する。それに関連いたしまして附則の第三十八條第二号、これを削除いたしまして、地方地治法第二百二十六條を存置するというふうに修正してはどうかというふうに考えるのであります。それが第一点であります。その事由を簡單に申述べます。地方財政法案における地方債に関する規定は赤字財政を抑制する趣旨に基くものと考えられますが、これは聊か嚴重に過ぎるように思われるのであります。例えば地方財政法案第五條第五号におきまして、地方公共團体が戰災復旧事業費及び学校、河川、道路、港湾等の公共施設建設事業費の財源地方債に求めることができる場合を、地租家屋税それから事業税及び都道府縣民税又はこれら三收益税附加税及び市町村民税の賦課率又は賦課総額がいずれも標準賦課率又は標準賦課総額の一・二倍以上である場合に限つておるわけでありますが、このような財政状態にある地方公共團体にのみこの種事業費の財源を起債に求めることを認めるということは、本條の根本的精神となつております健全財政主義を貫くゆえんではないと思われます。むしろこのような財政状態にある地方公共團体に対してこそ起債を抑制するということは、本法案の精神に合致するものというべきであろうと思います。このような矛盾が生じておりまするのは、即ち第五條根本精神が再檢討を要するゆえんのものがあるわけでありまして、第五号に掲けられましたような事業費の財源をも原則として当該年度の経営的收入を以て支弁せしめ、起債を許さないというような必要は、私はないと考えるのであります。地方自治法第二百二十六條は、「地方公共團体の永久の利益となるべき支出をするため、又は天災等のため必要がある場合に」地方債を起し得るということを規定しておるのであります。ところが地方財政法案附則第三十八條におきまして、地方自治法の同條第一項を「別に法律で定めるところにより」と改め、地方財政法案におきまして、前に申しました第五條第五号のような制限をわざわざ加えておるわけでありますが、そういう必要はないのではなかろうかというふうに考えるのであります。それで最初にし申ましたように、附則第三十八條第二号を削除いたしまして、地方自治法第二号二十六條を存置する、それに伴つてこの地方財政法案第五條の全部をむしろ削除するということが望ましいのじやないかと考えるわけであります。と申しますのは、このような起債、これは法律によつて殊更に制限いたしませんでも、起債市場の情勢というものは自然にこれを規正するのであろうと思います。嚴重に抑制しなければなりませんのは、公債の起債そのものではなくして、その公債が行政的な赤字公債であり、且つ中央銀行によつて引受け発行せられる場合であります。ところが地方債につきましては、中央銀行の引受発行というようなことはないのでありますから、行政的な赤字公債を許さないということだけで十分ではないかと思うのであります。本條の規定は、眼前当面のインフレーシヨンの時期におきましてこそ多少の意義がないでもありませんが、將來の安定期及びデフレーシヨン期におきましては、地方財政と金融市場、起債市場との有機的な関連を過度に狹めてしもうというところから來るところに大きな不便を必ずや痛感するに相違ないであろうというふうに私は考えるのであります。よつてこの第五條というものは根本的な修正を必要とするのではないかと考えます。  それから第二、に地方財政法第六條と、それから第七條第二項との間には一應理論的な矛盾があるのではないかと考えられます。公営企業の最低剩余金の一般会計又は他の特別会計えの繰入れを認めておりますところの同法案第七條第二項の規定は、第六條に規定してあります公営企業の独立採算制の原則との関連におきまして、矛盾があるのじやないかと思うのであります。独立採算制の原則を貫くといたしますならば公営企業の歳計上に生じた剩余金というものは、これは当該企業の負担する公債の償還財源に追加するか、或いは当該企業の建設資金として別途蓄積するか、或いは当該企業の徴收いたしまます使用料の軽減などに充当すべきであろうと思います。但し当該公営企業が私経営であつた場合、例えば電柱税といつたような地方税或いは道路占用料、報償金或いは納付金といつたような形で一般会計收入なつたであろうような部分につきましては、その全部又は一部を当該公営企業の特別会計から一般会計へ繰入れるということは、これは認めてよいのじやないかと思います。併しその場合の繰入れこれは歳出に計上さるべきものでありまして、剩余金の繰入れではないと思います。これを要しまするに、第六條と第七條第二項とは、理論的に矛盾するところがあり、且つ公営企業の根本的性格に対する地方財政法の態度といふものを曖昧にしておる嫌いがあると思います。よつてこの両條につきましては再考を希望する次第であります。  それから第三番目といたしまして、法案の第十九條に、更に第第三項として、次のような一項を追加しては如何か、と思うのであります。「前項支出金の支拂いが遅延する場合においては当該資金の一時借入れにつき、國はその保証、斡旋及び利子の負担等をなすべき義務がある」というような意味規定をもう一項第三項として追加してはどうかと思います。その理由でありますが、本法第十九條の規定は極めて適切であると思いますが、更にこの趣旨を強化する意味におきまして、このような國庫支出金が間に合わない場合地方公共團体の長が地方自治法第二百二十七條に規定します一時借入金をなすについて、國の保証、斡旋或いは利子負担等の義務規定を置くべきではないかと思うのであります。  それから第四番目といたしまして、全体として地方財政法案というものは第一條に規定いたしますように、地方公共團体の財政の運営、それから國の財政と地方財政との関係などに関する基本原則を定めるものであり、そのため本法は附則第三十八條におきまして地方自治法第二百四十五條の二に、右の原則を追加することとするのでありますが、國の財政と地方の財政との関係に対しまして、本法案に尚規定を要するものが少くないのではないかと考えます。例えば次のような点について更に御考慮を頂きたいと思うのであります。その一つは、法案第二條は、國の財政と地方財政との関係につきまして、一般的原則的な規定をしておりますが、概ね消極的規定であります。百尺竿頭一歩を進めまして、國が地方財政に協力する責任ある旨を積極的に規定してはどうかと思います。このようなことを規定するということは、これは地方財政の自主性、自立性を尊重する原則に反するというふうな意見もないではないと思いますが、経済の全國的有機性という点から考えまして、地方財政地方分権的な自立性を理想化するということは、殊に我が國のような狹少な國土に比較的資本主義経済の発達を見ましたところにおきましては困難があると思われるのであります。地方自治の本旨は必ずしも地方経済。地方財政の分立を意味しないのでありまして、國及び國の財政のため適当な調整と決して矛盾するものではないと思います。否、國の組織及び國の財政の運営が民主化せられ、地方公共團体及び地方住民の意思が十分に反映せられますためには、國及び國の財政が積極的に地方財政に協力することは、決して地方自治の精神に反するものではない。却つてその高揚に役立つものだと言わなければならないものだと思います。地方分権的な地方財政の自主化を固執するということは、徒らに地方財政の困難を増大するのみでありまして、却つて地方自治の伸展を阻害する場合なしとも保し難いと思います。又國はいつまでも過去のような地方公共團体と利害相反する相対立物乃至は地方公共團体が全くそれに依存するところの家父長的存在と考えること程誤つた考えはないと思います。このようにいたしまして、第二條に今少し積極的な國家の協力義務を規定して置きますならば、配付税法或いは今度提案になりませんでしたが、若し提案されるようなことになりますれば、地方災害復旧基金法でありますとか、地方團体中央金庫法でありますとか、そういつたような関連諸法案に対して、原則的な基礎をこの地方財政法において與えて置くということができるのではないかと思うのであります。  その次には、公営企業につきましては、第六條、第七條その他に規定がありまして、これについての意見は先程申述べましたのでありますが、尚願わくは公営企業についての一般的規定が本法案の中に欲しいと思うのであります。地方自治法にもこれに関する特別の規定はありません。本法案におきましては、如何なる種類の企業が私営よりもはだ又國営よりも、地方公共團体の公営を適当とするかということについての規定が欲しいのであります。で若しそういうふうな積極的に規定するということが問題であり、又困難でありまするならば、かくかくの企業は國営又は市営が望ましい、從つて公営は適当でないというような消極的規定としても差支えないと思います。要は一應の基検を本法において與えて置いて頂きたいという考えであります。又地方自治法及び地方財政関係法規の中に公営企業法或いは公企業法ともいうような一つの法律を加える必要があると考えるのでありますが、そのためにもその地方財政法案におきまして、地方公共團体というものが公営企業を営むことができるのだということ、及び公営企業は原則として如何なる企業が適当であるか、或いは適当でないかというようなことを、一般的に規定して置くということが便宜ではないかと考えるのであります。以上が大体地方財政法案に対しまして私の布望いたします修正点でございます。  次は、地方税法案についてでありまするが、この地方税法案につきまして先ず注意すべきことは、國税といい地方税と申しましても、納税者には変りがない、終局的な担税力と申しますか或いは税源と申しますか、それにも変りがないということであります。徴税者の立場に立つて見るのではなくして納税者乃至担税者の立場に立つて見ましたときに、國税地方税も等しく同じ國民のポケットの中から支拂われねばならない負担であります。この意味におきまして税体系というものは、國税地方税も一括した一本のものであるということが望ましいと思います。然る上において如何なる税收を國が取り如何なる税收地方公共團体に與えるかということを決めるのが、これが理想的であると私は思います。この意味におきまして、地方税のみを切離して地方税体系の自立性とか、彈力性とかいうようなことを云々いたしますのは、國税のみについて同様のことを云々するのと同じく一方的であり、徴收者的立場に囚われたものと言わざるを得ないと思います。かくてはいつまで経ちましても、國税地方税とは対立し、競合するのみでありまして、一方の犠牲において他方が満足せられるに適ぎない。いずれにしても狙われる一つのポケットこそ、迷惑と言うの外はないと思います。で、税制問題の民主的な解決を貢ぎ取りの立場に立つということで、はなくして、納税者の立場に立つということでなければならないと思います。地方自治の建前から地方財政の自立を図らなければならないということから、地方公共團体の課税権を拡大せよということは、実は問題を根本的に解決するものではなく、むしろ國税地方税一本の税体系を確立いたしまして、いわばプールされた税收入を適当な基準方法によつて、國及び各地方公共團体に分配するということの方が、地方自治を伸長し、地方財政を健全にするゆえんであると思うのであります。ここでも單純にこの地方分権的な自立化ということを考えますことは、経済の理法に反し、國と地方公共團体との財源獲得のための対立競爭を深め結局地方財政の窮乏を救い得ずして、地方自治を萎縮せしめる結果を招くかと思います。併し今申しましたことはこれは全く理想論でありますから、以下には地方税法案の拠つて立つ根本方針を一應承認いたしました上で、それぞれの税種及び課税方法等につきまして、法案規定するところによりまして所見を申述べたいと思います。  第一は、地方税法案の第十三條第一項の第三号を「國又は地方團体の所有する土地家屋又は物件で、現に公有又は公共の用に供するもの」こういうふうに修正して頂きたいと思うのであります。その理由、法案第十三條は課税禁止の規定をやつておるわけでありますが、その中で第三号の「國又は地方團体の所有する土地、家屋又は物件」というふうに書いてありますが、これにつきましては尚一考を要すると思います。この國有又は公有の土地家屋、物件の一切を課税禁止の対象とする必要はないと思う。その中、現に公有又は公共の用に供しておるもののみを課税禁止の対象と考えまして、遊休の土地家屋及び物件等につきましては、課税を認むべきではないかと思います。それから第二、都道府縣税に所得税附加税を認めるように再考して頂たいと思うことであります。これにつきましては、先程藤田証人も御意見が出ましたが、この点につきましては、法案第二條の規定とも関連するのでありますが、都道府縣税に何故國税附加税を認めなかつたかと私は思うのであります。それは地方税独立性に反すると考えられるからであろうと思いますがそのような形式に拘泥して、課税も容易であり、彈力性も大であり、而も納税者にとつて便利簡明な所得税附加税というような國税附加税を殊更に敬遠いたしまして、煩瑣な独立税を数多く寄せ集めるということは、却つて地方財政の健全な発達、地方自治の伸展を阻害することにならんとも限らんと思います。この見地におきまして、所得税附加税のようなものは、大いに再考して頂く余地があるのではないかと考えられます。尚この國税附加税地方税独立性に反するというのでありますならば、市町村税として都道府縣附加税というものを法案第二條で認めておりますが、そういう態度は一貫性を欠くものではないかと思うのであります。又國税附加税の場合、國家機関たる税務署にその徴收を代行して貰うということは、特別徴集に関する法案第三十六條の趣易を拡張すればよろしい筈と思います。尚これに附加いたしまして申上げたいことは、都道府縣市町村住民税であります。これらの住民税につきましては、所得税附加税を仮に認めるとすれば、負担分任の意味におきまして、所得税を課せられない者をも包含するため、及び外形標準による物税的要素を加味して、地方課税の意義を補完するために、本税を設くべきであると思います。所得税附加税を認めない本法案の建前から申しますならば、実質的に所得税附加税たるの性格を係せ持たしむべきではないかと思います。  又法人に関する本税の課税につきましては、法人税附加税とするか、國税附加税を認めない建前であるならば、その内容において実質的に法人税附加税たるがごとぎ課税方法を取るべきであると思います。現行都道府縣市町村民税及び本法案のそれは、法人の資本的計算を撹乱し、経済原則に反する封建的課税となる場合が非常に多いのであります。  第三点、都道府縣市町村民税について、一定の課税標準とこれに関する標準課税率を明定するように考慮せられたいということであります。その理由住民税につきまして標準賦課総額を定めること、例えば法案第五十條で賦課総額を定めておりますが、これは第一に五百円に納税義務者の数を乘じた額とすると、個定的、非彈力的方法を取つた点におきまして第二に、納税者に取つて自己の負担がほぼどのくらいになるかということが予め見通し得られないという点におきまして、それはアダム・スミスのいわゆる近代的租税の原民にも反する封建的租税となる可能性を藏するものである。やはり課税標準と、これに関する標準課率とを示しまして、地方團体にとつての標準課税限度ではなくして、納税者にとつての標準納税限度を示すということが近代的であると思うのであります。又この納期につきましても、大衆の利便を考慮いたしまして年四期ぐらいに分けることが望ましいと思います。  それから第四点、地租及び家屋税課税標準たる賃貸價格は、一定の評價委員によりまして、毎年度これを評價して定めて公示する、この制度をとられたいということであります。この点につきましても、先程からたびたび証人の方から御意見がありましたが、地租及び家屋税課税標準であります賃貸價格は、一定期間固定的で、これがために時價との埀離が非常に大きいのであります。この弊を調整いたしますために課率が大幅に引上げられているのでありますが、むしろ課率は本法におきまして比較的固定化し、課税標準を便宜動かす方が合理的であると思います。土地及び家屋台帳法に登録せられたいわゆる法定賃貸價格というものは、これは一應そのままにしておきましても、各地方團体に民主的な評價委員というものを設けまして、毎年度初めに当該年度における地租及び家屋税課税標準たる賃貸價格は、台帳登録價格の何倍というような率を決定して公害することにすればよいのではないかと思います。この場合、土地及び家屋を、その種類及び所在地域に應じまして幾つかのグループに分けまして、異る倍率を適用する、それによつて、先程から他の証人からの御意見もありましたように、経済界の激変によつて焼けた土地と焼けない土地とかというふうな違いが出ておるようなことも、多少修正をするというようなことをすれば、一悲合理的ではないかと思うのであります。  第五点は、法案附則第百四十六條の規定は、これを削除せられたいということであります。これは先程からも御意見が出た点でありますが、事業税につきましては、所得税附加税及び法人税は認めないといたしますならば、本法案の思定は概ね妥当であり、第六十九條の外形標準を認める規定地方税としては重視すべきであると思います。併し農業事業税に関しまして主食供出農家を除くという法案附則第百四十六條の規定は、租税というものに対する考え方が少し間違つておるのではないかというように考えるのであります。國家の経済政策上、主食供出農家を保護する必要がありますならば、よろしく別途にその方策を講ずべきでありまして、租税政策に俟つべきではないと思います。若し租税政策上差別を附けるならば、これは一定の負担力以下の者に対する免税、或いは負担能力に應ずる累進課税というようなことでなければならないと思います。主食供出農家と雖も小農もあれば、富農もあることを忘れてはならないと思います。而も本税は地方税であり、若し供出農家を除外いたしますときは、農業縣及び町村の大部分は、結局別途に何らかの形において、これらの主食供出農家の負担に依存する財源を案出するに至るがろうと思います。  尚ここに附加えて置連たいことは、入場税の問題であります。入場税は本法案のように地方税に委讓すべきであると考えます。入場税は大都市及び大都市を含む道府縣にとつてのみ委讓の意義があるということもできると思いますが、それらの地方團体は、又それだけ財政需要が大きいのでありますから、入場税の委讓によりましてそれらの地方公共團体が財政に余裕を持つということは望ましいと思うのであります。電気ガス税の創設でありますが、これにつきましては、不生産的、奢侈的な電気ガスの大口消費に対して、その事実を一種の外形標準として課税をするということが至当であると思いますが、消費税として一律に比例税を課するということについては、再考を要するものがあろうと思います。以上が地方財改正法案についての意見でございます。地方財政法案に対する最初申上げました意見と併せまして、本委員会における私の所見を以上を以て終ります。
  10. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) それでは次に埼玉縣地方課長大高義賢君の証言を願います。
  11. 大高義賢

    証人(大高義賢君) 私は証言申上げます初めに、私の資格につきましてちよつと御了解を願つて置きたいと思います。私は埼玉縣地方課長として証言を求められるように招請されておるのでありますが、現在は庶務課長をいたしております。前地方課長でございますので、その点お含みの上お聽き取りを願いたいと思います。極めて簡單に要点につきまして申上げて見たいと思います。  先ず第一に、地方團体の財政の貧困性について申上げて見たいと思うのでありますが、これは前証人方々から非常に強く御指摘になつておりますので、改めて申上げることはないと思うのでありますが、極く見近な例を挙げまして、如何に地方財政が困窮しておるか、特に町村財政が如何に困窮しておるかという点に申上げたいと思うのであります。私は縣は町村数が三百十四ございますが、その内、地方自治法が施行されまして今日までの間において、町村長の退職をいたした者が四十六名に達しております。その退職の理由について見まするに、これは表面はいろいろな理由がありまして、病気の者もあります。併しながらその根本に遡つて檢討し、見ますというと、大体において町村財政の遺繰が自分の手に負えない、かような点から退職をした者が非常に多いのであります。從つで最近の地方團体が財政上如何に圧迫を被つておるかという点を一例として私は考えざるを得ないのであります。特に最近におきましていわゆる六・三制の完全実施の問題、或いは農地改革の問題、又最近行われましたところの警察制度の改正の問題更に昨年の九月における大災害の後を受けて、この復興に非常な経費を要することであります。又法律或いは政令によるところの義務負担に伴う地方負担が非常に激増しつつある。かような点から考えまして、今日の地方團体としては全く爲すに術なく、財政上窮地に陷つているのが現状であると思います。以上のような観点に立ちまして、今回の地方財政法案並びに地方税法案について私共が考えておりますことを申上げて見たいと思います。  先ず地方財政法の内容について申上げます。今回の地方財政並びに税制の改正におきまして、中央政府として取られました新らしい地方財政に対する財政措置の点でありますが、いろいろ負担区分を是正いたしまして、又地方税を創設し、或いは増徴を許しましていろいろと遺憾をしておるのでありますが、結論において足りないところを地方債による、而もその地方債が二百六十億である。かようなことに相成りますというと、この地方債償還に要する経費は又非常に巨額に上りますと同時に私共の経驗からいたしまして、果してこの地方債が資金の面において完全に裏付けられておるかどうか、これを非常に憂慮するものであります。昨年度の地方債におきましても、預金部資金を以てしては到底これを充足することができませんで、地方金融機關に依存するところが極めて多かつたのでありますが、併しながら多くの町村、地方團体はこの融資に非常な困難せ來しております。從いまして、折角許可を受けましても起債の枠を貰いましても、現実に借入をすることが不可能である、こういう團体は枚挙が遑がないと思います。余り議論に亘りますのでその点は省略したしまして、地方財政法案の要綱、第三に示されました地方債の対象となる費目の中に、傳染病予防費を認めない。この点については聊か御考慮を煩わしたいと思うのであります。御承知のように傳染病はちよつとしたところから蔓延して参ります。これは市町村の不注意とか、或いは縣民の不注意というような関係よりも、海外からの引揚者或いは他からの轉入者、こういうものが媒介をうる場合が非常に多いのであります。從つてこれがまかり間違いますと、非常な経費をこの傳染病の予防に要する。かようなことに相成ると思いますので、これは傳染病予防費も起債の対象として考えられてよろしいのではないか。それから要綱第五にありますところの歳入歳出決算剩余金、いわゆる純剩余金の中の半分を翌々年度の地方債償還財源に当てる、こういう規定がございますが、これは原則は誠に結構なことと思います。併しながら非常災害その他のために多額の経費負担しなければならないという状態にある場合においても、尚且つこの規定を活かすということになりますというと、そこに非常な矛盾が残ると思います。これはやはり原則ば結構でありますが、例外といたしまして、非常災害その他のために経費を要する場合には繰上償還ということは、一應ストツプできるような規定があつて然るべきではなかろうか、かように考えるわけであります。それから次の要綱第七の問題でありますが、國と地方團体とが持ち余つて経費負担をするという場合の経費負担率につきましては、挙げて他の法令或いは地方財政法の施行令等に讓られておるのであります。この負担率の決定につきましては、地方財政の実情を具さに御檢討願いまして、地方團体に圧力の掛からないように、又その圧力が最小限度に止まりますように御方針を以てこの基準負担率の決定に当つて頂きたいと思うのであります。大体地方財政等につきもして私共が考えておりますところを掻摘んで申し上げますと、そのような点ではなかろうかと思います。ただ地方財政法の制定につきましては、結局地方團体の自主性強化を主眼としておりますので、從つて彈力性ある地方税法の確立がなければ、地方財政法ができましても地方團体としては財政上の救済は得られない、こういうことは相成ると思うのであります。  次に地方税法を改正する法案につきまして簡單に申上げて見たいと思います。財政委員会が必死の努力を傾倒いたしまして法案の作成に当られた御労苦に対しまして、私共は衷心より感謝の意を表する者でありますが、併しながら提案されました地方税法案を拜見いたしまして、聊か期待を裏切られたような感じがする点がございます。要綱によりまして順を追うて申上げて見たいと思います。  先ず第一に事業税の問題でありますが、原始産業、特に農業に対する事業税課税、この点につきましては前証人方々からも述べられておりますが主食の收益を事業税課税の対象から除外する、この点につきましてはもう少し考慮の余地があるのではなかかろうか、これは理由につきましては前証人方々から証言されておりますので、深く申上げる必要はないと思いますが結局蔬菜を作る者でも、或いは養蠶をやつておりましても、或いは花卉園を経営しておるにしましても、或いは生花等を作つております農家でありましても、やはり担税力におきましては主食を耕作する農家とそんなに開きがあるものではないと思います。從つて当分の間主食を除外するというような規定があるようでありますがこれはやはり初めから主食を課税標準の中に算入するというのが適当ではなかろうか、特にこの点は米作地帶、或いは主食を生産いたします府縣におきましては非常に大きな影響がございます。この主食を課税標準から除外することによつて大きな穴があいて参ります。大体私共の計算によりましても、三対一くらいの割合であると思います。即ち主食を課税標準に入れますと、大体今の計算では三倍程度の増收が期待される、こういうように考えられております。要は府縣税或いは市町村税につきましても、若干高率の課税を受けましても負担の公平が期し得られるならば、必ずや納税者は気持よく納税をする、こういうことになるのではなかろうか、又主食の收益を課税標準から除外するということになりますと、課税技術上から考えましても、いろいろとむつかしい問題が残つて参ります。  それから独立税につきまして一つお考え願いたいと思うのでございますがこれはラジオ税の創設であります。この点につきましてはいろいろ議論がありまして、なかなか創設に至らなかつたようであります。又今以てこの創設を見ないのでありますが、最近のようにこの國税の民主化の基礎を成すところの地方團体が立つか立たんか、こういう財政が窮迫した時代におきましては、やはり納税者自体が眞劍にこの行政の改革地方團体財源に理解を持つて協力する。協力を惜しまないというところに持つて行かなければならないと思います。從いまして今、今回の改正等に挙げられました各種の独立税についても、恐らくは大衆課税であるという反対を受けておる税金が相当ございますが、併しながらラジオ税を大衆課税として反対するのもどうかと思います。從つてラジオ税の創設を一つお考えになつたらどんなものであるかと私は強く主張を申上げたいところであります。この財源も相当に上つております。次に余裕住宅税の中に戰災地及びその附近の市町村という言葉がございますが、これは法律上の言葉がそのまま残つておるようでありますが、実際の課税に当つては附近の市町村というようなことが、非常にこれは決めにくいのではないか、何か具体的に明記するようなことができれば政令等において考える必要があるのではないか、かように考えております。次に地租及び家屋税に関する部分でありますが、この賦課率が非常に増加されておりまして、他の証人方々からも縷々お話がございましたように、現在の賃貸價格を標準として、かような高率な課税をすることは全く当を失したものと考えます。でき得れば早く賃貸價格の改訂をしまして現実に即した課税の標準を掴んで、然る後課税をするのが妥当であると思うのであります。なかなかそう簡單にもできませんので、これは相当賦課率を引下げて決定して頂くべきではなかろうかと考える次第であります。次に住民税についてでありますが、これも他の証人方々から述べられておりますように、一挙にして平均額を千円に上げると、かような無暴な企画は、これは今少し冷靜に御判断を願う必要があるのではないか。全國知事会議におきましても、そのことが強く主張されまして、八百円程度ということを言うておるようでありますが、なかなか平均に八百円の課税をするということは相当思い切つた課税でございます。從いましてこの千円に引上げるということは相当に問題を惹起いたします。從つて地方税の滯納を誘発する原因等になりまするので、これはずつと引き下げまして当初財政委員会で考えておりましたような五割増し程度というところに留めて置くのが妥当ではなかろうか、かように考えております。この住民税の賦課方法は挙げて地方團体の條例を以て規定するように委任してありまするので、この賦課方法については各府縣市町村とも非常に悩んでおりまして、全く公平な課税を期するということはむずかしい状態にございます。從つてその賦課額も低いところに留めて置くのが誠に適当な税ではなかろうかと考えております。もともとこの住民税はお互が会費を出し合う負担分任の精神を多分に織込んだ税金でありまするので、そういう意味からいたしましても、高額の課税は不適当であると考えておる次第であります。  次に、罰則について聊か御考慮願いたいのでありますが、最近納税を阻害するような行動、或いは行爲を敢えてする者が巷間にございます。他の実例といたしましても、そういう例があるのでありますが、納税阻害或いは納税を妨害する。又は不納同盟を誘発するような行動をとる者に対しましては、やはり嚴罰を以て臨んで貰いたい。供出の阻害と同樣な考えから、相当強く罰則を規定して、地方團体課税権徴收権を確保できるような措置を明文を以て規定して頂きたい。かような点が私共の考えておるところであります。その他いろいろと申上げる点もございますが、重複する点がございますので、要点だけを申上げた次第であります。以上を以ちまして私の証言といたします。
  12. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 次に日本医師会より会長の高橋明君の御出席を願うことになつてつたのでありますが高橋君が事故がありまして、副会長の河北眞太郎君が証人として出頭せられておりまするので、委員の方々の御承認を得ると同時に、河北眞太郎君の証言を願います。
  13. 河北眞太郎

    証人河北眞太郎君) 私はただ一点だけ医師に関係がありまする事業税という税につきまして証言いたしたいと思います。  事業税の中に医師の事業税が盛られておつたのでありますが、現在のところでは特別事得税というふうの名前もありまして、課税の対象になつておると、私はそういうふうに理解しております。尚税率の点におきまして、百分の十を百分の八と、そういうふうな税率に改められておると、こういうふうに私は理解しております。そういう意味におきまして、私の証言を進めたいと思うのであります。つまりこの前提の下におきまして申しますならば、事業税から取り除かれまして特別所得税というふうに税名の変つておりますことは、医人といたしましてこれは非常に満足いたしておる次第でありますがつまり事業税営業税というふうのことでありますれば、これは我々医人にとりまして非常に重大なる意味となるのでありまするが、特別所得税というふうに、営業税を思わすそういうふうの部門から除外されておるということは満足をいたしておる次第であります。ただ第二の点におきまして、百分の十が百分の八というふうの税率になつておる。この点につきまして申上げたいことがあるのであります。それはそもそも医者に税金、殊にこういう種類の税金負担さすということにつきまして、現在の医者の状態から考えますると大衆に轉嫁する。つまり医者に掛けましても、その税金は大衆の負担に轉嫁されて行くという虞れが多分にあるのであります。つまり民衆の中でもことに病気という不幸な状態にある民衆に課税するという状態になりますことは、これは衞生上由々しい問題だと思うのであります。私はその点に関しまして民衆に轉嫁されて行く虞れが十分あるということの点につきまして多少数字を挙げて御説明いたして置きたいと思うのであります。  御承知のように医者はその対象を病人といたしております性質上、診療費などの点におきましては常に民衆の立場に立ちまして考え來りつつあります。中には取除けはありますが、多くの医人はそういうふうな考えで進んで來ておるのが日本の現在の状態であります。ところがそれを証明いたします一つの証左といたしまして、日本医師会におきまして本年の一月の末から二月に掛けまして、日本全國におきまして診療がどういう状態費用において行われておるか調べまして、最近それが完成いたしましたものの数字によりますと、二月においては戰前を一といたしますと、日本全國で大体二五・一という数字が出ております。その中最高は茨城縣の四〇、最低は岩手縣の一八・三、東京はその中間にありまして三一・八倍こういう数字になつております。これは二月でありますが、私が五月半ばに東京地区におきまして調べました数字も、三ケ月経過いたしておるのでありますが、二〇乃至五〇倍という数字になつております。つまり世間の物價の趨勢値上りの趨勢を考え合せますと非常に小さい数字でありまして、如何に大衆のことを考えつつやつておるかということが説明できると思います。然るに一方いろいろの資材の高騰は容赦なく医人の周囲に集まつております。例えて申しますと、一例を引きますと藥品でありますが、昨年の十一月渉外局において調べましたその数字によりますと、十四種類、普通よく使う藥でありますが、値上りの比が二八八倍、私が三月に調べました現在東京におきます医人が公定價或いは闇、そういうふうなものを組入れまして手に入れております数字は五三八倍、こういうふうな数字になつております。つまりこういう数字を挙げますのは如何に医人が自制しながら苦しい立場を堅持しながら診療に從事しておるかということを申上げたいと思うからであります。こういう意味からいたしまして医人に対する課税というものは、すでに非常に重税によりまして苦んでおるという立場からいたしましても、どうも患者に轉嫁されるということの虞れが多分にあるのであります。こういう意味におきまして現在十分の八というふうの課税の率になつておりまするが、この点ができるだけ低い率になるということがつまり民衆に対しまする民衆の幸福という点を考えますと、皆樣にお考え頂きたい一点であると考えるのであります。この点を私証人といたしまして申述べる次第であります。
  14. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 次に日本弁護士会連合会長の代理の小國修平君に御証言を願います。只今河北君より御証言のありました特別業務税中、代理業である弁護士、司法書士に対する課税問題を中心といたしまして、成るべく簡單に御証言を願いたいと思います。
  15. 小國修平

    証人(小國修平君) それでは、私は弁護士に対しまして特別業務税課税する理由はない。こういう意見を持つております。その理由をこれから申述べたいのでありますが、弁護士のかような税法が今回創設されたというのはどういうわけであるかということをいろいろ考えて見ましても、成程こういうわけだろうといつて納得の行く理由はないのであります。それはむしろ弁護士の職務ということの認識が足らなかつた結果じやないかというようなことも考えられますので、先ず第一に弁護士の職務はどういうものであるか、大体のことは皆さんお分りと思いますけれどもその点を一つ申上げたいと思うのであります。  弁護士の職務は全く法的の職務であります。弁護士はどういうことをやつておるかといいますと、弁護士法の第一條にありまして、「当事者其ノ他ノ関係人ノ委嘱又ハ官廳ノ選任ニ因リ訴訟ニ関スル行爲其ノ他一般ノ法律事務ヲ行フ」、こういうふうに規定されておるのであります。只今のは抽象的の規定でありますが、これを大別して具体的に申しますと、刑事事件、民事事件、非訟事件、そういうように大体三種に大別されるのであります。その刑事事件におきましては弁護士の職務というのは、檢事の攻撃に対しまして被告人を防衞するという立場にあるのであります。檢事が犯罪を捜査いたしまして、只今は檢察官という言葉でありますが、檢事が犯罪を捜査いたしまして、その証拠を蒐集する、そうして起訴する、こういう仕事は公務の執行たること、これは疑いない。ところが弁護士がなすべき仕事は何かというと、その起訴事実に対して間違つておることを正す、或いはそれの反証を挙げるこういうことであつて一つの事件を同じことを他の立場を変えて見たり、或いは向うの足らないところをいろいろな方面から檢討するというのが弁護士の仕事であります。或いは法律の適用についても誤謬があれば誤謬があるということの法律の正確なる適用を期そうということが弁護士の責務であるそれでは民事事件はどうであるか、民事事件は、本來私人間の紛爭であります。当事者において、或いは隣の人とか親戚知己という人がいろいろ斡旋をしたけれども解決ができなかつた。こういうような紛爭が難件になつて、始めて弁護士に委嘱して來るのであります。そういうような私権の爭いを納得の行くように解決して、そうして國民が円満和樂の中に國民生活ができるようにしてやる、これは國家の役目であります。その國家の役目を果すために、國家は裁判所とか或いは檢察廳というようなものを設けておるのでありますが、この公の仕事の手始めをするのが弁護士であります。どうしても訴訟が私権の爭いが解決されないからということになると、訴状を拵えて裁判所え提出する、そうして裁判所はそれを審理するというのでありますから公務の一端を國民側から行う者が弁護士であります。その他の非訴事件でありましても、戸籍に関する届出、或いは会社の設立とか、その他不動産の登記、登録というような仕事をその役所の公務員が、役人がすることがこれ又公務たるに違いない以上、これを或いは鑑定をしてやる、或いは又その仕事を引受けて書類を作成する、登記、登録をする、かような仕事も又公務の……、
  16. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 小國君、ちよつと御発言中ですが御注意申上げますがあなたの方の御反対の御証言の御趣旨の御意見書等を只今受取つておりますが、先程申上げましたように、時間が非常に遅れておりますので、十五分以内に要をつまんで結論をお聞かせ頂きたいと思います。
  17. 小國修平

    証人(小國修平君) そういうことになりますが、特に近代は官選弁護人の仕事、或いは調停委員の仕事、家財管理人、それから檢査役、家事審判所の参與員というように、職務は非常に激増しております。これらはいずれも司法に携わる職員として公務に從事しておるのであります。その他弁護士は、そういうような公務を行うのが弁護士の職務でありまして、刑事事件を買受けちやいけないとか、その外商業をやつてはいかん、営利事業をやつてはいけない、又会社の取締役とか、役員とか、使用人になつてはいけない、こういうものはすべて許可を要するというのであつて、他の仕事をやることが嚴禁されておるのであります。ただ公務員と異つておるところは、月給を公務員は官廳から貰つておる、弁護士は当事者から手数料を貰つておる、これだけのことに過ぎないのであります。ですから弁護士の職務はイーコール公務執行ということになるのであります。  その次に、弁護士の職務というものには少しも企業性がないのであります。営利事業のように一定の資本を用いてこれを運轉してやるというものではないのであります。又弁護士は知能的の職業であつて、而もその弁護士に頼むというのは、その人の人格、信念を信頼して頼むのであります。それは信任関係が基礎になるのであります。そういうわけでありますから、他人にこの仕事を代理さす、さようなことができないのであります。そういうわけでありますから、自分の一個の勤労ということが職務の限界であります。沢山の人を使つてやるという、機械的のことをやるということは全然できないのであります。そうでありますから、営業権などということを考えることができない。尚さように弁護士の職務が限定されておりまして、弁護士法に反した仕事をやるならば罰則を以て懲戒される、懲戒の最も重いものは除名される。こういうのでありますから、公務の執行以外に何ものもできない、而もそのやるところは自分の勤労によつてのみ達せられる、こういうことでありますから、その得るところの收入というものは全く勤労所得に外ならん、弁護士は手数料というものと謝金というものを受取ります。併しながらその手数料、謝金も勝手に取るというのでなくして、弁護士会に適当なる標準規定がありまして、それによらなければならんということになつておりますので、先程申したように、それ以外に弁護士は事件を買取るとかいうようなことは禁止されておりまして、山気を出して儲ける、資本の力で儲けるというようなことは全然ないのであります。そういう状態でありますから、弁護士の收入というものは即ち勤労所得のみということになつておるのであります。而もその所得というものが、物價が六十五倍に公定價格が上つておる、更に大幅に引上げられる、七割上つた百倍以上になつたといつても、弁護士の收入はさように伴つておらんというわけでありますから、國家の公務を執行しておる官公吏に特別の税金を課すという理由がないというのと同樣に、弁護士に対して特別業務税を課する、かような理由は全然公吏に業務税を課すると同じようにできない、それはやることは極めて失当である、こういうわけであります。その仕事の範囲が全く同じである、勿論勤労所得税は今回の改正において大幅に軽減される、こういうふうな時代に弁護士に対しては新税を創設して税金を取る、これはどうしても甚だ不権衝極まることである所得税の改正案によりますというと、給與の所得者が年額が九万六千円くらい、この者に対してどのくらいの所得年額が課税になるかというと、九万六千円に対して一万二、三千円、弁護士に対しまして、弁護士の所得年額が十万円、九万六千円に近接した十万円ということに抑えまして、そうしてその税額を勘定しますと二万四、五千円、すでに二倍近くなつておるのでありますが、更に特別業務税を一割課税するということにいたしますというと、三万四、五千円というので、同じくどちらも勤労を資源とするところの弁護士に対して、その約三倍の負担になるというようなことは、極めてこれは不公平なものである、又弁護士は一定の嚴格なる資格要件があつて、一定の試驗を受けて、事務を習修してやらなければならん、而も外の人にはやらされないというような独占的の職務であるというような観点から、業務税を課税するんだというようなことであれば、代議士でも、或いは高官の人でも、会社の社長でも、或いは一流の画家とか文人、藝能家というようなものも、他人が俄かに眞似することのできない仕事であります。そういうものをこの業務税から除外したのが悪いのじやない、こういうものには課税をしないのが当然であります。然るにひとり弁護士とか医師に特別の業務税を課するということは、これは甚だ失当であり、又不公平なものの大なるものと、かように考えるのであります。尚そようでありますから、弁護士はやはり公務を執行しておる、而も人権の擁護という最も大切な仕事を分担をしておる者でありますから、これに対して只今申しましたように経済的には弁護士は今惠まれておる者じやありません。むしろ非常に苦境におるのであります。これに対して特別の税を課すということは、延いては人権の擁護において欠くるところが生ずるという虞れも多分にあるのであります。而も全國に弁護士という者は、登録をしておるものは六千人であります。これに課しまして実際業務を行なつておる者は、はつきりした事は分りませんが、大体その半数かと存ずるのであります。そうしますというと、これに無暗に業務税を課して見たところが、税收入としては極めて微々たるものであると思います。さように税收入の微々たるものに対しまして非常に不当であり、不平の起ることは当然である特別業務税を対するということは、甚だよろしくないと考えるのであります。何分税金というものはすべてつらいものには違いありませんが、そうかと言つて税金一つも納めないでもよろしい、かような階級に轉落することもつらいですが、何よりも一番課税であります。高率不当なる課税であります。かような昨今世間においても余り税金が高いので、税金をまともに納めておれば飯は食つて行けんというようなことを口にし、耳にすることが度々ある。かようなことは、納税思想を蝕ばむということについて由々しき大事であると我々はかように考えるのであります。かような意味におきまして、弁護士は公務の執行であり、勤労のみの所得であるという意味において、ここに新たに特別業務税を創設するということが失当であるというゆえんを申上げます。尚その他の潔金についても申述べることもありますが、時間もございませんから簡單に申上げますというと、この余裕住宅税というのでありますが、この余裕住宅税というのは、どの程度が余裕かというと、やはり頭数にでもして、一人に何疊というようなことで、それを超過する住宅は余裕住宅とするでありましようが、果してこういう余裕住宅が、戰災地及び戰災地附近にあるかということも甚だ疑問であるが、あつても極めて少いであろう。而もこの余裕住宅と申しましても、その土地には地租が掛かつておる、又その家には家屋税が掛かつておる。或いはそれを取得した時には不動産取得税が掛かつておる。こういうようなものに幾らか余裕があるから課税する。余裕というのは人々によつて必ずしも頭数と疊数の席で、あとは余裕だということは、これは余り極端なことであつて、触るべからざる所に強いて触ろうというような嫌なことでありますから、こういう税金は余りよろしくない、かように考えるのであります。
  18. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 小國さんに申上げますが、まだ時間が掛かりますか。大分時間も過ぎておるので成るべく……
  19. 小國修平

    証人(小國修平君) そうですか。それではその他の税金については省略いたします。
  20. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) それでは関東配電株式会社の社長の高井亮太郎君の証言を願う筈でありましたが、代つて取締役の伊賀秀雄君が見えておりますので、議員諸君に御了解を得て置きます。伊賀君には專ら電気ガス税の問題を中心としてできるだけ簡單に一つ御証言を願いたいと存じます。
  21. 伊賀秀雄

    証人(伊賀秀雄君) 関東配電の取締役業務部長をいたしております伊賀でございます。電気ガス税、特に電気の消費税につきまして申上げたいと思います。結論から申ますと、私達は電気の消費税はもう一度御檢討を願いまして、できますことならば止めて頂きたいというふうに考えておるのでございます。その理由を三つ四つ申上げて見たいと思います。  第一には、電気は今日の私達の生活におきましては、殆んど米麦と同じ生活資源でございまして、現在関東配電の区域におきましても、電気を使わない者というのは全住民の五%にも足りい人達であります。山の奥であるとか或いは海岸から遠く離れた孤島であるとか、という所以外にはないのであります。こういうすべての人達と言つていいくらいの大衆に課せられるということ、而もこの税が担税力の多い人々に多くて、担税力のない人には薄いというようなものではないことに御注意願いたいのであります。と申しますのは今日は電気が使用割当てになつております。どんな大きな住宅に住いたします者も、又人が二間のパラツクに住いします者にもメートルで供給いたしておりますところには二十キロワツト以上の電灯の使用しか許されておらないのであります。それでありますから、このことを考えて見ますと、山の中の非常に貧しい生活をする人にも、町で闇景気に浮かれているような人の使用します電気も同量でありまして、これに同率の消費税を課せられることは、非常に不公平を來すものではないかと考えております。第一にこういう点におきまして私達この度創設せられようとしまする電気消費税に対しては、甚だ領けない点があるのであります。  第二に、今も申しますように、電気が我々の生活及び産業復興のための必要欠くべからざる資源でありますために、從來電気の料金と申しますものは経営の最底を支えるだけにも及ばないぐらいに抑えられて來ておるのであります。現に今日まで私達は長い間赤字経営をいたして參りました。的近去る二十三日に漸く從來の電気料金の三倍に値上せられたのでありますが、それにいたしましても、戰前の電気料金の約三十七、八倍になつたばかりであります。経営はこれを以て配当を行うとか、或いは余裕を生ずるとか、十分なる補習維持を行うとかいうようなことはできない状態にあるのであります。このような非常に大切な資源であるという理由の下に、最低の料金を徴收するように制限せられておりまするに拘わらず、ここに消費税が創設せられるといたしまするならば、実質的の電気料金の値上でありまして、私達の家庭生活の最低限を保持し、日本の産業を再建しようとします今日、それらのことに及ぼす影響は甚だ大きいと思うのであります。これが私が電気税に反対しなければならないと考えます第二の点であります。  第三の点は、徴税の事務が非常に複雜であるということであります。今日値上になりました電気料金を以て考えて見ましても、電燈のみを使つておりまして支拂いします電気の料金は、恐らく一軒当り百円内外と考えられるのでございます。これに一〇%の徴税をいたしますれば十円、五%の徴税というのは五円であります。かくのごとく零細なる税金を八千万國民から集めるのでございまして、その事務は甚だ複雜であります。殊に御存じのように電気料金は基本料金があり、電気使用量料金があり、その上に器具、配線の損料があり、起過しました電気料に対しては超過電気料金が賦課せられますので、その料金の構成は甚だ複雜であります。而も契約が変らず、設備の変らない範囲におきましては、月々の基本料金の変更はございませんが、使用量に対する電気料金は月々変化して参りますから、これに課税するということになりますと、その事務は甚だ複雜であります。このような複雜な手数を掛けてまで、この零細な消費税徴收しなければならないかということに私は疑いを持つのであります。  第四番目といたしまして、このような複雜な徴税を行わなければならないことに原因いたしまして、その徴税費は非常に嵩んで來ると思うのであります。現に一例を申上げますと、最近罰金と言われております一キロワツト・アワー超過使用に対する超過料金百五十円が課せられておりますが、これは現在関東配電におきまして、約三百万の電燈の需要者の中で超過して使います者は、僅かに三・六%しかございません件数であります。動力の需要家におきまして一五%、平均しまして件数にしまして四・三%しか超過する者がないのでありますが、この超過料金の計算及び集金をしますために、私共の会社におきまして損員しなければならない人員は、約その担当事務に携わつております者の一割であります。各配電会社の実情を申上げますと、一割乃至一割五分の人員を増加しなければ、この事務が取扱い得なかつたのであります。それが若しこの度関東配電におきます、三百万需要家の消費税計算徴收するということになりますと、最も簡單な方法でその事務が行われるように規定を作つて頂いたといたしましても、約三百名の増員をしない限りはこの事務は遂行できないという計算に現在なつておるのであります。それが若しも或る地方で考えられておりますように、或る業種に対しては免税し、或る程度の電燈の需要者に対しては免税するというような複雜なことが起きて來ますならば、その事務は甚だ複雜になり、徴税費は増して來るのであります。私達の方の計算によりましてもとても四割の増員ではこの事務を行うことができない事情にあるのであります。こういうようなわけでございますので、非常に多くの人達が僅かの料金を拂つております電気の消費に対しまして、税を課せられるということに反対いたしたいのです。どうかもう一度かような点を御檢討願いまして大衆課税であり、又実質的な電気料金の値上であり、而も非常な複雜な徴税事務を行なつて、徴税費を掛けなければ徴税することのできない電気税の創設に対して、御考慮願いたいと思うのであります。
  22. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 最後に日本の自治体労働組合総連合会委員長の菱信吉君が証人として出頭せられる筈でありましたが、代理として同組合の副執行委員長の役にあります三田朝丸君が見えておりますので、委員の方々の御了解を得たいと思います。と同時に三田君の証言をお願いいたします。成るべく先刻から言いますように、十五分以内に要約して……
  23. 三田朝丸

    証人(三田朝丸君) 証言いたします前に、私共の労働組合は全國の自治團体の從業員で組織されている労働組合でありまして、日本における一切の都道府縣市町村、町村の方は全部でありませんが、大体これも四〇%程度入つております。そういうふうな自治團体労働者の組合の役員であります。只今まで各証人の方から地方財政の窮乏等についていろいろと御意見がありました。全く現在の地方財政というものは窮乏その極に達しているのであります。私共は実際の実務に携わつてつて、こういうことを申上げるものも少しおかしいと思いますが。尚御參考のために申上げて置きたいと思うのであります。  現に我々の團体で一番問題になつているのは、毎月の我々從業員の給料、勿論これには教員、警察職員等が全部入るのですが、こういつた給料を毎月予定日の日に貰つていないということも第一番であります。尚この他に或いは小学校の建設について、或いは修繕といたつような当面極めて緊急な問題についても、只今修繕も拂えない、建築費も一應見積つたが拂えないといつたような具合で、或いは立腐れになるのではないかという危惧さえ生じて、私はこの問題で中へ入つたことも事実であるのであります。こういうような状態に事実ち至つておるのであります。かような状態が長く続くということになりますと、自治体は全くその発展を阻害されて、折角民主日本の建設のために地方自治法が制定せられ、そうして自治体の民主化がその緒に着かんとするときに、かような状態では全く日本の民主化が成立つて行かないというふうに考えられるのであります。そういう前置きは一應それといたしまして当面の二十三年度の予算についてであります。二十三年度の予算につきましては、先般地方財政委員会結論によりまして、一應二千億程度ということに決定いたしたたそうでありますが、これは先般私共と神戸元地財委員との間で会見いたしまして、二十三年度の予算内容について私はこういう質問をいたしました。今度の二十三年度予算は総額概ね二千億と言われるが、これについて先ず第一番が我々の給料の人件費、それから自治体の業務を執行するところの物件費、事業費、こういつたようなものはどういうふうに決つておるのですか、と私は質問いたしました。この時に神戸元地財委員は、人件費については二千九百二十円を完全に組んでおらない。物件費については物價改訂は見越していない。單價についてもやはり完全なものはできておらない。これは地方の実際の統計が完全にできていない関係があるということが大きな原因ではあるが、そういうふうな状況にあるので、先程もどなたか言われました通り、実際は今年の予算を的確にやつて行くと、約三千億程度になるということが、これで私は首肯できるといふことを、さつき私はつくづく感じたのであります。このことは今年度の予算が、もつと根本的に考え直さなければならないということは、私共痛感しておるのであります。先般地方財政委員会の自治体の代表者の諸君が、憤然として総辞職をしてしまつたというようなことは、我々としては誠に遺憾であつて、少くともこの予算が本当に完全に通るまでは、この地方財政委員会の機能を完全にして置くべきである。政府も亦その責任があるのじやないかというふうに考えられるのであります。この点については二十三年度の地方予算には、この財政委員会において相当愼重な態度を以て進んで頂きたいということを申上げるのであります。  次に地方財政委員会の問題でありますが、私共は地方財政の確立については、現在非常に力を入れて運動を起しておるのでありますが、私共の言いますところの地方財政の確立というものは、飽くまでも單に自主化、或いは自立性を強化するというばかりでなく、本当に地方財政を民主化する。このことが我々の最も重要な点ではないかと考えられるのであります。從來は自主化、或いは自立性の強調のみが盛んに行われましたが、本当に民主化といふ上に立つての自主化及び自立性が、考えられなければならないというふうに私は考えておるのであります。そういう意味において、地方財政を本当に民主的にするためには、先ず第一番に我々は地方財政委員会の民主的な整備拡充こそが、用も重要な当面の問題ではないかというふうに考えておるのであります。地方財政委員会は御承知の通り、僅か五人の委員を以て構成されております。而も内閣総理大臣の任命によるところの委員であります。かような委員であつては、これは地方財政の本当の民主的確立はできない。少くとも私共の考えておる範囲においては、地方財政委員会というもうのをもつと政治的な、そうして出先機関ではあるが、或る程度地方財政についての関連を持つた、力を持つた民主的な機関であるというふうにありたい。これによつてこの機関によつて決定され、立案され、或いは計画されたことが強力に國会に反映し、國民の輿論によつてそれが力強く実行されるような組織にしたい、こういうような考えているのであります。皆樣方のお手許に配付されておると思いますが、この要綱によりまして、先ず地方團体の健全なる発達を図るために、地方財政民主化の確立を図るということが目的であります。この性格につきましては只今申上げた通りであります。この構成でありますが、只今までのような、五人の少数の構成であつては、到底民主的な運営はできない、又その決定した事項、或いはその事業についても強力にやつて行くことができない。こういうふうな意堤合におきまして、一應ここに私共の案として、構成を改めまして、國会の推薦によつて民主的な委員を内閣総理大臣が委嘱するというような形態にしたいというふうに考えております。この委員の構成につきましては他の行政事務を分担管理しない國務大臣一名、衆議院議員及び參議院議員の中から代表者各一名、道府縣知事の代表者二名これは先程どなたからかも申しました大きいところと小さいところの二名というふうに考えるのであります。市町村の代表者二名、これもやはり大きいところと小さいところとあります。町村の代表者二名、これもやはり大きい町村と小さい町村の代表者を入れる。それから我々のような自治團体の労働組合、長年この地方財政問題について相当今日まで一生懸命に從事して來た人がありますので、こういうような人々を入れることによつて、その実際の実情がはつきりする、そういう意味にきましてこの代表者二名を入れる。その他農業、漁業、工業、商業の代表者一名、学識経驗者一名、こういうふうな組織を以て、大体二十名程度でありますが財政委員会を確立したい、こういうことを考えておるのであります。このことは、地方財政を民主的に確立するためには、このことを実行して、この地方財政委員会を民主的に確立するならば、すべての問題も早晩これは解決するのではないかというふうに、基本的な問題として我々は考えて取上げているのであります。地方税、或いは地方税法に対する意見であります。この問題は、余り根本的な方針は時間がありませんから申上げませんが、具体的に申しますと、我々としてはここに書いてあります通り、廃すべき税金として船、自轉車、荷車こういうようなものは廃止したいと思います。現在法定外独立税としいうもの府縣が十六種、市町村が確か六十何種類がありますが、これは先程來申しております通り地方財政が非常に逼迫してどうにもならなかつたので、目茶苦茶に何でも彼でも取ればいいのだというような考えで、最近では新聞の報道によりますと、或いはキヤンデーに税金を掛ける、或いは独身者税を課するというようなことさえ言われておるのでありますが、こういうような税金を設けることは全く大衆課税である。こういうような税金を各府縣、市町村がやらなくても濟むような措置をすべきであるというようなことを考えております関係上、やはりこれと類するような船、自轉車、荷車、こういうような税金は廃止したいと考えております。この財源につきましても、今年の詳しいことは知りませんが、昨年のを見ましても大した金額ではありません。船、自轉車荷車、二億六千八百万円程度というように考えております。本年は多少殖えていると考えます。こういうような、一般市町村民から悪税といわれているような税金は端止したい。そうして先程から言われておりまするところの、彈力性のある税金、これを取つて行くことが本当に自治体を発展させるゆえんではないかと考えます。そこで新設する地方税として先程來言われた所得税附加税、これは当然我々としては地方に附加すべきだ、こういうふうに考えております。その理由は先程藤田さんからも詳しくお話しがありましたので申上げません。大体同じような意見の下に所得税附加税地方に新設されることを考えております。次は不動産の増價税、これは土地及び家屋の増價税としてそう毎年取るというわけには行きません。非常に経濟の変動のあつた年に取る。これは不動産増價税であります。次は遊休土地税、先程余裕住宅の問題が出ましたが、今度余裕住宅税を取ることになりまたしので、我々としては遊休土地税を考えております。次は、財産税、又はその附加税を我々として考えております。財産税につきましては、これは本当いえば町村で取るのが一番よいのですが、現在は國で若干取るというように聞いておりますので、当面の問題に間に合いませんので、できるならばここで財産税の附加税、若し政府が國富調査税を取るというならば、この附加税を課したい。これは相当高率に課したいということをあえております。次に現在の地方税を修正したらどうかというような意見でありますが、この問題につきましては先ず只今の電気ガス税の問題であります。これは根本的にはやはり取るべきものではないと考えておるのでありますが、併し今日或る程度止むを得んということも考えられますので、所得税附加税がどうしても創設されないならばこれも止むを得ないのではないかというように考えておりますが、これも技術的にはむつかしいと思いますが、必ず免税点を設ける、そうして累進課税というふうに考えております。なぜこういうふうに考えましたかと申しますと、今日電気は最も社会化されねばならない問題だと思います。電力の社会化ということが最も強く叫ばれておりますのに拘わらず、実際問題として非常に沢山使つておるところがあります。こういう点を我々は電気の社会化の建前からこういうものに対して租税を課する、そうして累進的に高率に取つて欲しいと思います。住民税につきましては、これは一應我々としては現在の五割増六百円として、これに高率累進課税をするということを考えております。次は不動産取得税でありますが、これは免税点を設けて累進課税する。事業税については、この際零細業者に対して免税の措置を講じなければならない。余裕住宅税はやはり累進課税する。酒、煙草消費税の問題であります。これは我々として本質的には税金として取りたくないのでありますが、この際所得税附加税が許されないならば、少くとも消費者價格を増額しないで、專賣益金の中から專賣益金として取るのではなくて、專賣益金の中から特に町村の自主性を尊重して消費税として取る。値段を上げるについては我々労働組合として絶対に反対しております。次に賃貸價格の改訂の問題であります。これは先程どなたからかお話しがありましたが、我々としても至急にやつて貰いたい。こういうことを考えております。如何に我々が課税の率を公正にしようといたしましても、この賃貸價格そのものが現在非常に不同になつておりますのでこれは特に急いでやつて頂きたいと思います。價格については時價によるということを考えております。そのためには先程來の民主的な評價委員会というものも当然考えられるし、又府縣にこの賃貸價格の評價の認定を移讓するということが当面極めて必要な問題ではないかと考えております。  次は税金委員会の問題でありますがこれはどうしても設ける必要がある。今日課税が高い安いということよりもむしろ負担の公平化の問題が重点的な問題と問えられるので、この点は民主的な税金委員会を設置して置きたい。尚地方税につきましての地方税審議会というものがありますが、これは我々が主張する地方税委員会と重複するところもありますし、又地方税審議会というものは、極めて官僚的な色彩の濃厚なものであると考えますので、この点は民主的な地方税委員会にすべての権限を委讓し、地方税審議会のような紛らわしいものは作らない。從つてあの法律案には我々は反対であるということを申上げます。それからその他は、経理の問題でありますが、これはここに書いてありますから申上げませんが、特に物件の購入、或いは事業についても、從來は極めて杜撰な点が実際に多かつたのであります。こういう意味から必ず評價額を決める評價委員会或いは公入札の励行、こういうものを積極的にやつて頂くと同時に、この予算、決算の公開につきましては、單に形式的に公開するのではなしに、詳細にこれを都民に公開して、実際にその費用が要るならば要るということを示すならば、都民が最も納得して事に当り、又或る程度税金の滯納もなくなるのではないかというふうに考えております。  次に地方財政法の問題ですが、極く簡單に申上げたいと思います。
  24. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) もう時間が來ましたから、一つ書類でそこらの点は……。
  25. 三田朝丸

    証人(三田朝丸君) ついもう一分ですから……。地方財政法の中で我々として重大な点は、地方財政委員会意見を聽くということが、地方財政法の中に一ケ條あるだけで、その他については政令で決めるとか、或いは法令で決めるとかいうようなことでありまして、我々として少くとも地方財政の建前からいたしまして、その條項を各條に挿入すべきであると考えております。  次に、國費地方費負担区分でありますが、これはここに印刷物があります通り、我々、義務教育に從事する職員としては、こういうようなものはすべて地方費でなく國費で全部やつて貰いたい。義務教育の費用というようなものは、地方費國費の相互負担としてでなしに、全額國庫負担として頂きたいということを主張しております。次に國の機関の設置の問題でありますが、これは我々の地方團体としては、國の機関を設置する、出先機関を設置するということは全面的に反対してあるのであります。尚外に申したいことが沢山ありますが、委員長からの再三の催促でありますから、この辺でやめさせて頂きます。その他我々の要求はすべて現実に即してやつておるのでありますから、十分この点を留意して頂いて財政委員の方々の御協力を願いたいということを特にお願いいたします。
  26. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) それではこれより質問に入りたいと思います。尚証人として京大学経濟学部教授汐見三郎君の御出席を願う筈でしたが、病気のため欠席するという電報が入りましたので御承知願いたいと思います。只今までの証人の証言に対しまして、御質問のある方は御質問願いたいと思います。
  27. 黒川武雄

    ○黒川武雄君 河北さんにお尋ねします。医師に対する事業税が名称を変えまして、特別業務税になりました点について、その税率だけについて、余りに高率だという反対の御意見のようでございましたが、それでよろしいですか。
  28. 河北眞太郎

    証人河北眞太郎君) そうであります。税率が、私が前に申しました理解しておる税率であるということは、民衆に対する悪税というか、轉嫁され得るから、この点は日本医師会として不賛成、不満である、こういう意味であります。
  29. 羽生三七

    ○羽生三七君 井藤さんにお尋ねいたします。還付税というお話しがございましたが、これは結局分與税と同じ性格になるのではなかろうか。どうでしようか。
  30. 井藤半彌

    証人井藤半彌君) 分與税は御承知の通り去年までは還付税配付税とございました。で還付税は御案内の通り去年から地方税になりましたので、ないことになつております。そうでありますから、私の申しましたのは、酒、煙草消費税ですね、問題は收入が問題である。そういたしますと、地方團体が別々に掛けましても、値段を各地方團体で勝手に決めることができない。全國均一に掛けるから、現在と同じことです。そうであるならば、現在國家が取つてしまつて、そうして適当な割合で取つた地方に還せば、同じことになるのじやないか、こういう考え方であります。ただそれに対する反対が、地方團体側からの反対は、どうも還付税は一遍取つた金が地方へ行つて、それから又帰つて來るので、何ケ月か掛かるので間に合わん、そのくらいの程度では何かで金融的な措置でも國家が講ずべきではないか、こう考えるのであります。
  31. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 井藤さんにお尋ねします。酒、煙草消費税に関しては、地方財政委員会においても、力を注いで最も自信を持つて主張しておつたように我々は聞いておるのであります。先程からお話しを聞きますというと、それは國が取るべきであつて、そうしてそれを還付税としてやるのが至当であつて、それを地方税として取る性質のものではない、こういう御主張のようであります。それで神戸市長のこの意見を見ますというと、その構想は酒、煙草の書終消費者價格の二割方のものを、小賣の賣上税の形で地方をして取らとめるべきである。かかる賣上税は地方において事実上容易に取り得るのである。そうして各地方々々の消費額に應じて地方收入があることになるから、各地方に公平に分配されることにもなり、地方税はこの地方のために或る程度まで進んで負担する気持ともなる、こういう考えを持つておられるようです。尚我が地方税たるに適するか否かの見解は、地方分立性の有無にある。即ち生産税とか或いは庫出税、生産者、卸賣、仲買などにおける賣上税には、地方分立性というものがない。だからこれらの消費税地方税として適しない。國税として適するものである、併しながな今考えておるところの賣上税は、地方分立性があつて、明らかに地方税となり得るのであり。そういうふうなことであつて、今までは酒煙草はいわゆる庫出税とか生産税といい方面で取つておるからして、これは國税として取つて、そうしてその二割程度のものを地方還付するという方法はあるかも知れないが、併しながら二割程度のものを小賣の賣上税として地方々々に取るということは、却つて税の性質として非常に民主化されていいのではないか、むしろ還付税というようなものよりも、消費税として取つた方が、税の性格として非常によろしいし、又地方においても直ぐそれが税になるから、而もこれは非常に莫大なところの財源を持つことになるのだからして、入場税の委讓と共にこの酒、煙草消費税の創設というものは、地方財源の根幹を成すところの七、八〇%の重要なものだ。だからこれは是非実現しなければならないという非常なる確信を持つて何回も我々は聞いておるわけであります。それでこれに対する審議上の判断として只今これは地方税としてよりも國税たる性質のものである、そうして還付税として行くべき性質のものであるという御意見がありましたので、根本的にそこの点の磯いがあるので、我々はそれを審議する場合にはつきりした判断を頂きたいと思うのですが。
  32. 井藤半彌

    証人井藤半彌君) 何かの税金國税に適するか地方税に適するかという総体的なことだと思います。例えば所得税國税に適するか地方税に適するか、或いは生産税が國税に適するか、地方税に適するか。両方共國税に適する側面もあり、地方税に適する側面もあると思います。そこで私が酒や煙草消費税國税に適するというのを、それを地方税として取る場合は、地方の自主的な課税権に基いて取らなければ、地方税としての本來の意味がないじやないか、ところが酒や煙草消費税というものは、各地方々々府縣單位にいたしましても、町村單位にいたしましても同樣でありますけれども、その場合に各地方で自主的にばらばらに掛けることになりますと、どうしても税率に相違が出來ます。從つて賣上げ税負担にも相違が出て來るだろうと思います。そういたしますと、これはこの消費税の性質上これはまずいのであります。それよりは國家が今回の地方財政委員会にお掛けになりました案につきましても、そういうことにならないような、全國價格が均等になるようにしよう、そういうわけでございますね。
  33. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうです。均等にしてその二割程度のものを庫出税のような割税は別だけれども、別に小賣税としてやるとか、價格物價廳の適当と認められる價格に基いて、その二割だけを小賣税としてやる。特に……。
  34. 井藤半彌

    証人井藤半彌君) そういたしますと、均等にしてその中の二割を掛けるのだから、消費者の價格は均等でございますね。
  35. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 均等でございます。例えば今度四倍なら四倍の中の二割だけを小賣税として……。
  36. 井藤半彌

    証人井藤半彌君) そういたしますと消費者の立場で考察すれば、結局、金額は一緒になる、そうすると國家から統制を受けることになります。その税率の決定につきましては、そういたしますと國家がその物價政策や、何かを考慮いたしまして、全國同一に掛ける方が全國経濟政策、それから財政政策の統一という点からいつていいのではないか。それで私は飽くまで地方財政で掛ける場合には、各地方團体の自主的な課税権に基いて、課税を自由に上げ下げするということに地方税地方税たる特徴があるのではないか。然るに消費税というものはそういう性質がないので、だから國税として掛けるがいいのだ、それから私は酒や煙草消費税地方財政委員会で重要な財源にされておるということは、私御尤もと思つております。それから現在の地方税は大分部彈力性がない。それでインフレーシヨンによつて物價が騰貴したり、或いは名目の所得が上つて割合に自動的に上らない。ところが酒や煙草消費税という自動的に上つて來るから、その点もいいというようなこともおつしやつておりましたが、私は尤もだと思いますが、それは國家財源という点からいいますと、この意味で非常に私は結構なことだと思いまするのですが、私の申しましたような、還付税のような場合には、どこが違うかということを私は聞いておるのです。還付税でありましても、或いは地方財政委員会の委員の案のように、個別的に消費税を取りましても、全國的均等の負担を課するということになるならば、結局同じじやないか、還付税は入つて來るのが少し遅れる。それから消費税を各地方で取扱うと、その都度入つて來て、その結果早く金が入るということは、その点は確かにあると思うのでありますが、先つき申しました意味で、その間の繋ぎぐらいは何らかの金融機関で調節されればいいのではないか。これは單に五年も十年も待つというのではなくて、一定の期間経てば入つて來るということは確実なんです。私はそういう意味で申したのです。
  37. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 よく御趣意は分りましたが、そうしますと、その所得税附加税というのは、これは大方の証人が全部これを是認しておられますし、世論もそれを支持しておるという現在において、我々もこれは非常に最も妥当な税だと考えておるのでありますが、この附加税も実は大衆に賦課して徴收をするものであり、税率も恐らく各地方々々が勝手に取るというよりも、一定の標準が決まつてそれに附随して取られるということになれば、その所得税附加税の方がまあそういう点は画一的であるのだから、やはりできれば國が取つて方がよろしいということになつて、やはり還付税的なお考えになるとかいうふうになるのではないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  38. 井藤半彌

    証人井藤半彌君) 私この所得税附加税の問題は、他の証人の方と多少議論の色合が違つたかと思います。それで私は所得税附加税を現在掛けることはどうかと思うのであります。と申しますのは御案内の通り、税の所得税は去年から予定申告納税制度になりまして、非常にうまくいつておらないのです。そこで他の所得税がうまく取れなければこの附加税というものはうまく取ることができない。國はその故に所得税附加税を各地方で掛ける重大なる欠陷がある。だからといつて所得附加税は要らないということではありませんが、これは所得税というような、個人なら個人、会社なら会社を中心に、一年間の所得を綜合いたしました所得の配分、例えばその村なら村單位にその所得税の配分ということは非常に問題になります。今度のように所得税の取り方が混乱しておりますときに、この所得税附加税を掛けるということは財産行政テクニツク上非常に困難があるのではないかと私は考えます。それで私はこの所得税附加税を掛けるについては、この所得税附加税の趣旨を住民税市町村民税、縣民税の中に入れる。それで縣民税というものを拡大する。そうしてその課税標準財産及び財産所得中心にするようにしたらどうか、これが私の考えであります。只今御質問の趣旨にちよつと離れたことを申しますが、御質問の中心所得税附加税地方税として掛けるということは望ましい。ところがその場合でも所得税附加税は全國均一になるから、だから地方税として適しないということになるのではないかという御質問の趣旨かと思いますが、そうでないのではないか。と言いますのは、所得税附加税なるものは最高率とか、標準率を國家が決めるということは、或いは必要かも分りませんけれども、その範囲内で自由に上げ下げするということは昔から認められておつたのであります。酒や煙草消費税の場合と大分違うのです。酒や煙草の場合は消費價格が違いますと、或る村で買わない、隣の村では要る、こういうことがあります。所得税の場合はそういうことがありません。所得税附加税の場合は標準率、最高率を決めましても、その法令の許す範囲内において地方團体の自主性を認められておると思います。
  39. 吉川末次郎

    ○委員長(吉川末次郎君) 他に御質問ございませんか……。御質問がなければ本日の委員会はこれを以て散会いたします。    午後四時四十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     吉川末次郎君    理事            中井 光次君            鈴木 直人君    委員            羽生 三七君            岡田喜久治君            草葉 隆圓君            黒川 武雄君            奧 主一郎君            岡本 愛祐君            阿竹齋次郎君   証人    東京商科大学教    授       井藤 半彌君    立教大学教授  藤田 武夫君    札幌市助役    (北海道都市財    政協議会長)  原田 與作君    東京市政調査会    審議員     鈴木 武雄君    埼玉縣事務吏員    (埼玉縣前地方    課長)     大高 義賢君    日本医師副会長 河北眞太郎君    日本弁護師会連    合会長代理   小國 修平君    関東配電株式会    社取締役    伊賀 秀雄君    日本自治体労働    組合総連合会副    委員長     三田 朝丸君