○
証人(鈴木武雄君) 私は
地方財政法案と
地方税の改正
法案につきまして若干修正
意見というようなものを提出いたしまして、
委員会の御参考に供したいと思います。
第一には
地方財政法案の第五條に
地方債の
発行のことが書いてございますが、その第五條の第五号を「戰災復旧事業費及び学校、河川ガ通路、港湾等の公共施設の建設事業費の
財源とする場合」というふうに第五号をそれだけに改めますか、或いはこの第五條全部を削除する。それに関連いたしまして附則の第三十八條第二号、これを削除いたしまして、
地方地治法第二百二十六條を存置するというふうに修正してはどうかというふうに考えるのであります。それが第一点であります。その事由を簡單に申述べます。
地方財政法案における
地方債に関する
規定は赤字財政を抑制する趣旨に基くものと考えられますが、これは聊か嚴重に過ぎるように思われるのであります。例えば
地方財政法案第五條第五号におきまして、
地方公共團体が戰災復旧事業費及び学校、河川、道路、港湾等の公共施設建設事業費の
財源を
地方債に求めることができる場合を、
地租、
家屋税それから
事業税及び都道
府縣民税又はこれら三
收益税の
附加税及び
市町村民税の賦課率又は賦課総額がいずれも標準賦課率又は標準賦課総額の一・二倍以上である場合に限
つておるわけでありますが、このような財政
状態にある
地方公共團体にのみこの種事業費の
財源を起債に求めることを認めるということは、本條の根本的精神とな
つております健全財政主義を貫くゆえんではないと思われます。むしろこのような財政
状態にある
地方公共團体に対してこそ起債を抑制するということは、本
法案の精神に合致するものというべきであろうと思います。このような矛盾が生じておりまするのは、即ち第五條根本精神が再檢討を要するゆえんのものがあるわけでありまして、第五号に掲けられましたような事業費の
財源をも
原則として当該年度の経営的
收入を以て支弁せしめ、起債を許さないというような必要は、私はないと考えるのであります。
地方自治法第二百二十六條は、「
地方公共團体の永久の利益となるべき支出をするため、又は天災等のため必要がある場合に」
地方債を起し得るということを
規定しておるのであります。ところが
地方財政法案附則第三十八條におきまして、
地方自治法の同條第一項を「別に法律で定めるところにより」と改め、
地方財政法案におきまして、前に申しました第五條第五号のような制限をわざわざ加えておるわけでありますが、そういう必要はないのではなかろうかというふうに考えるのであります。それで最初にし申ましたように、附則第三十八條第二号を削除いたしまして、
地方自治法第二号二十六條を存置する、それに伴
つてこの
地方財政法案第五條の全部をむしろ削除するということが望ましいのじやないかと考えるわけであります。と申しますのは、このような起債、これは法律によ
つて殊更に制限いたしませんでも、起債市場の情勢というものは自然にこれを規正するのであろうと思います。嚴重に抑制しなければなりませんのは、公債の起債そのものではなくして、その公債が行政的な赤字公債であり、且つ中央銀行によ
つて引受け
発行せられる場合であります。ところが
地方債につきましては、中央銀行の引受
発行というようなことはないのでありますから、行政的な赤字公債を許さないということだけで十分ではないかと思うのであります。本條の
規定は、眼前当面のインフレーシヨンの時期におきましてこそ多少の意義がないでもありませんが、將來の安定期及びデフレーシヨン期におきましては、
地方財政と金融市場、起債市場との有機的な関連を過度に狹めてしもうというところから來るところに大きな不便を必ずや痛感するに相違ないであろうというふうに私は考えるのであります。よ
つてこの第五條というものは根本的な修正を必要とするのではないかと考えます。
それから第二、に
地方財政法第六條と、それから第七條第二項との間には一應理論的な矛盾があるのではないかと考えられます。公営企業の最低剩余金の
一般会計又は他の特別会計えの繰入れを認めておりますところの同
法案第七條第二項の
規定は、第六條に
規定してあります公営企業の
独立採算制の
原則との関連におきまして、矛盾があるのじやないかと思うのであります。
独立採算制の
原則を貫くといたしますならば公営企業の歳計上に生じた剩余金というものは、これは当該企業の
負担する公債の
償還財源に追加するか、或いは当該企業の建設資金として別途蓄積するか、或いは当該企業の
徴收いたしまます使用料の軽減などに充当すべきであろうと思います。但し当該公営企業が私経営であ
つた場合、例えば電柱税とい
つたような
地方税或いは道路占用料、報償金或いは納付金とい
つたような形で
一般会計の
收入と
なつたであろうような
部分につきましては、その全部又は一部を当該公営企業の特別会計から
一般会計へ繰入れるということは、これは認めてよいのじやないかと思います。併しその場合の繰入れこれは歳出に計上さるべきものでありまして、剩余金の繰入れではないと思います。これを要しまするに、第六條と第七條第二項とは、理論的に矛盾するところがあり、且つ公営企業の根本的性格に対する
地方財政法の態度といふものを曖昧にしておる嫌いがあると思います。よ
つてこの両條につきましては再考を希望する次第であります。
それから第三番目といたしまして、
法案の第十九條に、更に第第三項として、次のような一項を追加しては如何か、と思うのであります。「前項支出金の支拂いが遅延する場合においては当該資金の一時借入れにつき、國はその保証、斡旋及び利子の
負担等をなすべき義務がある」というような
意味の
規定をもう一項第三項として追加してはどうかと思います。その理由でありますが、本法第十九條の
規定は極めて適切であると思いますが、更にこの趣旨を強化する
意味におきまして、このような
國庫支出金が間に合わない場合
地方公共團体の長が
地方自治法第二百二十七條に
規定します一時借入金をなすについて、國の保証、斡旋或いは利子
負担等の義務
規定を置くべきではないかと思うのであります。
それから第四番目といたしまして、全体として
地方財政法案というものは第一條に
規定いたしますように、
地方公共團体の財政の運営、それから國の財政と
地方財政との関係などに関する基本
原則を定めるものであり、そのため本法は附則第三十八條におきまして
地方自治法第二百四十五條の二に、右の
原則を追加することとするのでありますが、國の財政と
地方の財政との関係に対しまして、本
法案に尚
規定を要するものが少くないのではないかと考えます。例えば次のような点について更に御考慮を頂きたいと思うのであります。その
一つは、
法案第二條は、國の財政と
地方財政との関係につきまして、一般的
原則的な
規定をしておりますが、概ね消極的
規定であります。百尺竿頭一歩を進めまして、國が
地方財政に協力する責任ある旨を積極的に
規定してはどうかと思います。このようなことを
規定するということは、これは
地方財政の自主性、自立性を尊重する
原則に反するというふうな
意見もないではないと思いますが、経済の全國的有機性という点から考えまして、
地方財政の
地方分権的な自立性を理想化するということは、殊に我が國のような狹少な國土に比較的資本主義経済の発達を見ましたところにおきましては困難があると思われるのであります。
地方自治の本旨は必ずしも
地方経済。
地方財政の分立を
意味しないのでありまして、國及び國の財政のため適当な調整と決して矛盾するものではないと思います。否、國の組織及び國の財政の運営が民主化せられ、
地方公共團体及び
地方住民の意思が十分に反映せられますためには、國及び國の財政が積極的に
地方財政に協力することは、決して
地方自治の精神に反するものではない。却
つてその高揚に役立つものだと言わなければならないものだと思います。
地方分権的な
地方財政の自主化を固執するということは、徒らに
地方財政の困難を増大するのみでありまして、却
つて地方自治の伸展を阻害する場合なしとも保し難いと思います。又國はいつまでも過去のような
地方公共團体と利害相反する相対立物乃至は
地方公共團体が全くそれに依存するところの家父長的存在と考えること程誤
つた考えはないと思います。このようにいたしまして、第二條に今少し積極的な
國家の協力義務を
規定して置きますならば、
配付税法或いは今度提案になりませんでしたが、若し提案されるようなことになりますれば、
地方災害復旧基金法でありますとか、
地方團体中央金庫法でありますとか、そうい
つたような関連諸
法案に対して、
原則的な基礎をこの
地方財政法において與えて置くということができるのではないかと思うのであります。
その次には、公営企業につきましては、第六條、第七條その他に
規定がありまして、これについての
意見は先程申述べましたのでありますが、尚願わくは公営企業についての一般的
規定が本
法案の中に欲しいと思うのであります。
地方自治法にもこれに関する特別の
規定はありません。本
法案におきましては、如何なる種類の企業が私営よりもはだ又國営よりも、
地方公共團体の公営を適当とするかということについての
規定が欲しいのであります。で若しそういうふうな積極的に
規定するということが問題であり、又困難でありまするならば、かくかくの企業は國営又は市営が望ましい、
從つて公営は適当でないというような消極的
規定としても差支えないと思います。要は一應の基検を本法において與えて置いて頂きたいという考えであります。又
地方自治法及び
地方財政関係法規の中に公営企業法或いは公企業法ともいうような
一つの法律を加える必要があると考えるのでありますが、そのためにもその
地方財政法案におきまして、
地方公共團体というものが公営企業を営むことができるのだということ、及び公営企業は
原則として如何なる企業が適当であるか、或いは適当でないかというようなことを、一般的に
規定して置くということが便宜ではないかと考えるのであります。以上が大体
地方財政法案に対しまして私の布望いたします修正点でございます。
次は、
地方税法案についてでありまするが、この
地方税法案につきまして先ず注意すべきことは、
國税といい
地方税と申しましても、納税者には変りがない、終局的な担税力と申しますか或いは税源と申しますか、それにも変りがないということであります。徴税者の
立場に立
つて見るのではなくして納税者乃至担税者の
立場に立
つて見ましたときに、
國税も
地方税も等しく同じ國民のポケットの中から支拂われねばならない
負担であります。この
意味におきまして税体系というものは、
國税も
地方税も一括した一本のものであるということが望ましいと思います。然る上において如何なる
税收を國が取り如何なる
税收を
地方公共團体に與えるかということを決めるのが、これが理想的であると私は思います。この
意味におきまして、
地方税のみを切離して
地方税体系の自立性とか、
彈力性とかいうようなことを云々いたしますのは、
國税のみについて同様のことを云々するのと同じく一方的であり、
徴收者的
立場に囚われたものと言わざるを得ないと思います。かくてはいつまで経ちましても、
國税と
地方税とは対立し、競合するのみでありまして、一方の犠牲において他方が満足せられるに適ぎない。いずれにしても狙われる
一つのポケットこそ、迷惑と言うの外はないと思います。で、税制問題の民主的な解決を貢ぎ取りの
立場に立つということで、はなくして、納税者の
立場に立つということでなければならないと思います。
地方自治の建前から
地方財政の自立を図らなければならないということから、
地方公共團体の
課税権を拡大せよということは、実は問題を根本的に解決するものではなく、むしろ
國税地方税一本の税体系を確立いたしまして、いわばプールされた
税收入を適当な
基準方法によ
つて、國及び各
地方公共團体に分配するということの方が、
地方自治を伸長し、
地方財政を健全にするゆえんであると思うのであります。ここでも單純にこの
地方分権的な自立化ということを考えますことは、経済の理法に反し、國と
地方公共團体との
財源獲得のための対立競爭を深め結局
地方財政の窮乏を救い得ずして、
地方自治を萎縮せしめる結果を招くかと思います。併し今申しましたことはこれは全く理想論でありますから、以下には
地方税法案の拠
つて立つ
根本方針を一應承認いたしました上で、それぞれの税種及び
課税方法等につきまして、
法案の
規定するところによりまして所見を申述べたいと思います。
第一は、
地方税法案の第十三條第一項の第三号を「國又は
地方團体の所有する土地家屋又は物件で、現に公有又は公共の用に供するもの」こういうふうに修正して頂きたいと思うのであります。その理由、
法案第十三條は
課税禁止の
規定をや
つておるわけでありますが、その中で第三号の「國又は
地方團体の所有する土地、家屋又は物件」というふうに書いてありますが、これにつきましては尚一考を要すると思います。この國有又は公有の土地家屋、物件の一切を
課税禁止の対象とする必要はないと思う。その中、現に公有又は公共の用に供しておるもののみを
課税禁止の対象と考えまして、遊休の土地家屋及び物件等につきましては、
課税を認むべきではないかと思います。それから第二、都道
府縣税に
所得税附加税を認めるように再考して頂たいと思うことであります。これにつきましては、先程藤田
証人も御
意見が出ましたが、この点につきましては、
法案第二條の
規定とも関連するのでありますが、都道
府縣税に何故
國税附加税を認めなか
つたかと私は思うのであります。それは
地方税の
独立性に反すると考えられるからであろうと思いますがそのような
形式に拘泥して、
課税も容易であり、
彈力性も大であり、而も納税者にと
つて便利簡明な
所得税附加税というような
國税附加税を殊更に敬遠いたしまして、煩瑣な
独立税を数多く寄せ集めるということは、却
つて地方財政の健全な発達、
地方自治の伸展を阻害することにならんとも限らんと思います。この見地におきまして、
所得税附加税のようなものは、大いに再考して頂く余地があるのではないかと考えられます。尚この
國税附加税が
地方税の
独立性に反するというのでありますならば、市町村税として都道
府縣税
附加税というものを
法案第二條で認めておりますが、そういう態度は一貫性を欠くものではないかと思うのであります。又
國税附加税の場合、
國家機関たる税務署にその
徴收を代行して貰うということは、特別徴集に関する
法案第三十六條の趣易を
拡張すればよろしい筈と思います。尚これに附加いたしまして申上げたいことは、都道
府縣市町村
住民税であります。これらの
住民税につきましては、
所得税附加税を仮に認めるとすれば、
負担分任の
意味におきまして、
所得税を課せられない者をも包含するため、及び外形標準による物税的要素を加味して、
地方的
課税の意義を補完するために、本税を設くべきであると思います。
所得税附加税を認めない本
法案の建前から申しますならば、
実質的に
所得税附加税たるの性格を係せ持たしむべきではないかと思います。
又法人に関する本税の
課税につきましては、法人税
附加税とするか、
國税附加税を認めない建前であるならば、その
内容において
実質的に法人税
附加税たるがごとぎ
課税方法を取るべきであると思います。現行都道
府縣市町村民税及び本
法案のそれは、法人の資本的
計算を撹乱し、経済
原則に反する封建的
課税となる場合が非常に多いのであります。
第三点、都道
府縣市町村民税について、一定の
課税標準とこれに関する標準
課税率を明定するように考慮せられたいということであります。その理由
住民税につきまして標準賦課総額を定めること、例えば
法案第五十條で賦課総額を定めておりますが、これは第一に五百円に納税義務者の数を乘じた額とすると、個定的、非彈力的方法を取
つた点におきまして第二に、納税者に取
つて自己の
負担がほぼどのくらいになるかということが予め見通し得られないという点におきまして、それはアダム・スミスのいわゆる近代的租税の原民にも反する封建的租税となる可能性を藏するものである。やはり
課税標準と、これに関する標準課率とを示しまして、
地方團体にと
つての標準
課税限度ではなくして、納税者にと
つての標準納税限度を示すということが近代的であると思うのであります。又この納期につきましても、大衆の利便を考慮いたしまして年四期ぐらいに分けることが望ましいと思います。
それから第四点、
地租及び
家屋税の
課税標準たる
賃貸價格は、一定の評價委員によりまして、毎年度これを評價して定めて公示する、この
制度をとられたいということであります。この点につきましても、先程からたびたび
証人の方から御
意見がありましたが、
地租及び
家屋税の
課税標準であります
賃貸價格は、一定期間固定的で、これがために時價との埀離が非常に大きいのであります。この弊を調整いたしますために課率が大幅に
引上げられているのでありますが、むしろ課率は本法におきまして比較的固定化し、
課税標準を便宜動かす方が合理的であると思います。土地及び家屋台帳法に登録せられたいわゆる
法定賃貸價格というものは、これは一應そのままにしておきましても、各
地方團体に民主的な評價委員というものを設けまして、毎年度初めに当該年度における
地租及び
家屋税の
課税標準たる
賃貸價格は、台帳登録
價格の何倍というような率を決定して公害することにすればよいのではないかと思います。この場合、土地及び家屋を、その種類及び所在
地域に應じまして幾つかのグループに分けまして、異る倍率を適用する、それによ
つて、先程から他の
証人からの御
意見もありましたように、経済界の激変によ
つて焼けた土地と焼けない土地とかというふうな違いが出ておるようなことも、多少修正をするというようなことをすれば、一悲合理的ではないかと思うのであります。
第五点は、
法案附則第百四十六條の
規定は、これを削除せられたいということであります。これは先程からも御
意見が出た点でありますが、
事業税につきましては、
所得税附加税及び法人税は認めないといたしますならば、本
法案の思定は概ね妥当であり、第六十九條の外形標準を認める
規定は
地方税としては重視すべきであると思います。併し
農業事業税に関しまして主食
供出農家を除くという
法案附則第百四十六條の
規定は、租税というものに対する考え方が少し間違
つておるのではないかというように考えるのであります。
國家の経済政策上、主食
供出農家を保護する必要がありますならば、よろしく別途にその方策を講ずべきでありまして、租税政策に俟つべきではないと思います。若し租税政策上差別を附けるならば、これは一定の
負担力以下の者に対する
免税、或いは
負担能力に應ずる累進
課税というようなことでなければならないと思います。主食
供出農家と雖も小農もあれば、富農もあることを忘れてはならないと思います。而も本税は
地方税であり、若し
供出農家を除外いたしますときは、
農業縣及び町村の大
部分は、結局別途に何らかの形において、これらの主食
供出農家の
負担に依存する
財源を案出するに至るがろうと思います。
尚ここに附加えて置連たいことは、
入場税の問題であります。
入場税は本
法案のように
地方税に委讓すべきであると考えます。
入場税は大都市及び大都市を含む道
府縣にと
つてのみ委讓の意義があるということもできると思いますが、それらの
地方團体は、又それだけ財政需要が大きいのでありますから、
入場税の委讓によりましてそれらの
地方公共團体が財政に余裕を持つということは望ましいと思うのであります。電気ガス税の創設でありますが、これにつきましては、不生産的、奢侈的な電気ガスの大口消費に対して、その事実を一種の外形標準として
課税をするということが至当であると思いますが、
消費税として一律に比例税を課するということについては、再考を要するものがあろうと思います。以上が
地方財改正
法案についての
意見でございます。
地方財政法案に対する最初申上げました
意見と併せまして、本
委員会における私の所見を以上を以て終ります。