○
委員長(
吉川末次郎君) それでは短かく……。本月の八日に
愛知縣の丹羽郡
犬山町の地内、木曽川の畔におきまして、櫻の名所でありますが、
犬山城の
附近の木曾川堤の櫻を見物中の一
日本人と
朝鮮人が些細なことから口論を始めまして、これに端を發して
附近に櫻見物中の
日本人、
朝鮮人が
双方にそれぞれ加擔いたしまして、約三百名が入亂れる大規模の亂闘
事件に
なつたわけでありまして、
犬山町の
自治體警察員は二十八名だと
思つておりますが、間違
つておるか分りませんが、大體それくらいの數があるのでありますが、當然それでは鎭壓することができないというので、早速
愛知縣の
國家地方警察本部に
連絡をと
つてその
應援を求めましたのであります。ところが
愛知縣國家地方警察が
犬山町に參ります以前にその
騒擾事件が起りましたのはいわゆる各務ヶ原飛行場の近くでありまして、その各務ヶ原におりまするM・Pの一隊がジープで音を立て
應援に參りましたので、
愛知縣廳からの
國家地方警察の
應援が參ります前に
事件は鎭壓されてしま
つた。發生いたしましたのは四月八日の午後一時でありまして、それが鎭まりましたのが、夕方六時頃ということにな
つております。それから新井健太という
朝鮮人が重傷を負
つております。尚亂闘中の被害者は多數あるようでありますが、たとえば
朝鮮人がビール瓶のようなものを振廻わしたり、或いはステツキや棍棒のようなものを振廻わして、そこで櫻を見物していた
日本人のところへ暴力でも
つてなだれ込んが行
つて、
喧嘩を吹つかけるようなことをしたので相當多數の輕傷を負
つた者もあるようでありますが、ここに
愛知縣の檢察廳から名を擧げて
報告いたしておりまする被害者は、何れも全治一週間乃至三週間ぐらいの打撲傷を負うた者三人しか擧げておりません。瀕死の重傷を負わされたのは新井健太という二十四の
朝鮮人、尚詳しいことは
一つ報告書を御覧を願いまして、大變簡單でありますがそれくらいで、尚御
質問等がありましたらお願いいたします。
大體の
事件は先程申上げましたように、私の推察するところでは東京などでよく見まする花見のときの醉つぱらいの
喧嘩が、たまたま
朝鮮人と
日本人との間に起
つて、そうして
朝鮮人と
日本人との間でありまするから、
朝鮮人に對するところの平素の欝憤もあ
つたでありましようし、或いは民族的ないろいろな感情というものが入り混
つたというだけのものではないかと、こういうふうに私は観察いたしまして歸
つて參りました。ただ當日視察をいたしました鈴木委員、
鬼丸委員その他の共通的に一番憂いました點は、同樣の
事件が傳染性をも
つて全國
各地に瀕發しやしないかということを非常に憂いてお
つたわけでありますが、
犬山町の
事件だけでは、別に横の
連絡とか何とかいうものが全然ないものであるというように観察して歸
つて參りました。尚私たちが
犬山町の
自治體警察署を訪れまして、署長、公安委員を招致して、いろいろ事情等を
調査いたしておるときに、やはりスキヤップの方からも人が三名ばかり特にこの
犬山町の
騒擾事件のために來ておられた。その人達といろいろ話し
合つたのであります。
それで
一つ御相談申上げたいと思うのですが先程申しましたように、これは、我々の
委員會としては、非常に共通の場面を持
つた、或いは共通の
原因を持
つた、相當重視すべき
事件であると思いますので、これを個別的な
事件として考えないで、これをきつかけとして、
朝鮮人問題に對する
治安の
見地からも、芦田總理大臣の決意を聞き、及
政府の
對策を、本會を通じて明かにしてもらうというようなことが、
委員會の
立場からも、私、必要なんじやないかというように思うのでありますが、若しできれば、委員の方でどなたか、例えば岡本さんは、特にいろいろ御
研究もあるようであるし、又御
意見もあるようでありますから、岡本さんとか或いはどなたでも結構でありますが、大體ここで
一つ、各委員の
意見等も織り混ぜて、形式の上においては、個人の發言になるかも知れませんが、
實質的には、治案及び
地方制度
委員會を
代表して
質問してもらうというような形で、
一つ質問をして頂いたらどうかと思うのでありますが、如何でしようか。
どうも
朝鮮人を、刑事
裁判權の行使について、
日本人と同一に取扱うべきものであるということについてのことが、日鮮兩方側に徹底してないと思われますがね。それで終戰直後、そういう點が明確でなか
つたために、鮮朝人が非常に、なんと言いますか、のし上
つたような事情を持
つております。
日本人の
一般市民も、
警察當局も、相當に通牒等も行
つておるのでしようけれども、どうもはつきりまだ意識が徹底してないというような點もある。岡本さんがお擧げに
なつたような、
警察法の制度上の不備であるとか、或いは
警察関の士氣が多少頽廢しておるようなこと等と相俟
つて、こういう
事件が起
つておるように思われますが、そういう點は、
政府當局を鞭撻して、そうして
政府の意のあるところを
一つ、
國民及び
朝鮮人の前に明確にして頂くというようなことが必要でないかと思われますが、如何でしようか。