○
岡本愛祐君 私が
本庄事件を見て参りましたところを御
報告いたします。
具体的の事実並びに
新聞に書かれてお
つた事柄が
間違つてお
つたかどうか、そういうようなことは今詳しくここで申上げませんで、私がこの
事件について
地方自治行政全般に通じまして感じましたところをお話いたしたいと思いますが、つまり
本庄事件を通じて我が國の現在の
自治行政に教訓となる点を申上げて見たいと思うのであります。今吉川さんから段々お話がございましたが、大体において私はその御
意見に賛成でありますが、我が國は申上げるまでもなく、まだ
民主化に徹底しておりません、
民主主義化の
過程にあるのでありまして、この
民主化する
過程にあ
つて、まだ
社会にはその封建的の事が殘
つておる、これは申すまでもなく
皆さん御認識の
通りであります。ところが
自治体警察というような
制度は甚だ理想的な
民主化に徹した
社会ができ
上つた後の
警察制度でありまして、この理想的な
警察制度と
民主化の
過程にあるところのこの現実の
社会とこれとの食い違いが今度の
事件で濃厚に私は出て來ておると私はこういうように觀察して参りました。まだこの
社会にはこの
何とか組というような
テキ屋とか、博徒とか、そういうふうな職業を持
つておるものがありまして、親分、子分の
関係に立
つておるそういう組織が半ば公々然とあるのであります。これが
暴力團ということに確定されますとそれはどんどん
警察で
取締ることにな
つております。この間も又徹底的に
取締れというようなことが
國家地方警察本部から出ております。
自治体警察についてもそれについて協力しろというようなことが出ておりますが、併しこれが暴力何々組が確かに
暴力團ということに言えないようなところもありますからこういうのがあるのであります。
本庄は上州に近いところの、
群馬縣に近いところでありまして、
從來からそういう博徒的な人が少からずあ
つたところであります。それにこれはおかしな話でありますが、
政府の方でその宝くじとか、それから競馬とか、そういうものを非常に射倖的なことを獎励いたしておる。これは
日本の財政の一端にするつもりで獎励しておるのでありますが、そうしまするとこの博打というようなものは自然にこの勢を得て來るのであります。そうでなくても博徒の多いようなところでありますから、
本庄は博打がなかなか盛んなようであります。あすこの助役に聞いた話でありますが、
町会なんかに列しておる人々にもそういうことをやる人がないではないというようなことも聞いております。そういうふうにな
つて來ますと、この何々組というものがはびこる余地が十分出て來るのであります。而もこの何々組の組員と言いますか、それは
本庄町にたむろしておるだけではありませんので、附近の各
農村に家を持ち、正業を一方には持ちながらその組に入
つておるというような人もあるのであります。一般の
町民、村民は彼らに対してまあ
社会惡だとは
思つておるけれども不感症にな
つておるところもある。そういうものは現在の
社会の現実だとして大目に見ておるといいますが、心あるものは非常に顰蹙し口にこそ出しませんが、それを排斥しておりますけれども、一般の人はこれを見逃しておるというのが
現状であるのであります。
それからこの
統制経済に連れまして、
統制経済の一方には闇が出ております。
統制破りが出て参ります。
本庄町に例を取
つて見ますとあの
地方は
從來から
養蚕の非常に盛んなところで、或いは
埼玉縣、或いは全國でも有数の
養蚕地でありますが、
本庄地方は殊にその
中心地であります。
織物も
伊勢崎銘仙、これは
本庄町から利根川を越しまして
伊勢崎町から一里半、二里くらいのところでありまして、
伊勢崎銘他の織場がこの
本庄町であり、又一方で問題が起りました
群馬縣の
豊受村であるのであります。それでこの
織物につきましては、これは第二
國会の
予算委員会でも
商工省当局に質問をしたのでありますが、闇が非常に行われておるのであります。これはその
原因は
從來の
隠匿物資が殘
つておる分もありますが、その現在の
養蚕、それから製糸、
織物その
過程におきまして
政府が決めておるこの
歩止り、專門語で
出目、目が出ると申しておりますが、
歩止りが非常に甘いのであります。二匹の
織物だけの糸を貰いまして、そうしてその糸で
織物を織りますと、二匹を出しまして、そうして一反ぐらい織屋に
出目が出るのであります。つまりそれが
自分の所得になります。糸で貰いまする分と、
織物として出します、
指定生産でありますから、
政府に返します
指定の
織物の他に、その闇に流れる一反ができる、こういうものが皆概ね闇に流れておりまして、そうしてこれが高價で賣買されておるのが
現状であります。これは
ひとり絹織物だけでなく、絹糸におきましても、毛
織物においても同様なんであります。これを何とかそのルートに乗せてやればいいじやないか、こういうのが私の
商工省当局に対する質問であ
つたのですが、その処置は漸く最近になりまして、採られておるのであります。この
出目それから又その他に
農賃と申しまして、これは
養蚕をいたします各農家が
自家用保有の糸を許されておる。これは
自分で織りまして、又織
つて貰いまして
自家用にするという建前にな
つております。聞いて見ますと
本庄地方は元は一軒の
養蚕家につきまして一貫目ということであ
つたらしいのであります。現在は出しました糸の一割ということにな
つております。これはその
自家用に織
つて貰うだけでなく、やはりそこに大いに闇に流れるだけの分が出て來ておると、こういうのが
本庄地方の
織物の
状況であります。そこでこの
織物は
皆さん御
承知のように非常に高價に、今闇で賣れます。
繊維品が非常に欠乏しておるのでありますから、そういうことが
本庄地方じや大いに行われてお
つたのであります。そこでこの
自治体警察、
豊受村の方も
自治体警察というのがあります。村でありますが、
人口一万に近い。多分今は一万超えておるだろうと思います。裕福な町であります。
伊勢崎より一里余のところにある村であります。
織物屋が三百二十軒もある。それで
自分のところで織るのでなくて、その
農村の個々が糸を染めます。糸を織りますところは勿論、
機屋もあります。その他に糸の染め、いろいろの分業にな
つております。それでそういうものが一体に
出目で潤お
つておるわけであります。そこで
本庄附近に
機屋が、これは
農村各所で小さい手機でありますが、五千軒も
機屋があるとい
つたようなわけで、
豊受村の方からも
農賃に出して來た糸、
指定生産で
貰つた糸、そういうものを五千軒の
本庄地方における方へも糸を送る。その
農村で織るのであります。その中には今申した
指定生産の本当の、
政府に
指定されて出す
織物の他に、
自分の闇に流すものも交
つておるのでありまして、
出目ですから交
つておるわけであります。又
農賃の方もそういうふうに
自分の
自家用に着ますものの他に闇に流すものは交
つておる、こういう
状況であります。そこでこれを嚴格に
取締られては非常に困るのであります。そういう
地方の褒微にも関するというので、
自治体警察、並びに
國家地方警察に対して了解を求めようと、必然的の闇もありまして、多くは
指定生産である、こういうような
関係で、よく詳しく説明をして、
出目までは説明をするかどうかはそいつは分りませんが、そういう了解を求めてやりましたのが、この
事件の
発端の、
豊受村の警民の
招待事件であります。そこで少し細かくなりましたが、
自治体警察としてはこの町から任命されておる
警察でありますから、そこの町の
繁榮を害するような
取締りは手控えるのが人情であります。そういう非常な、その極端な闇でなくて、まあいわば
織物に附隨した必然的の闇というようなものは
自治体警察では
取締らない。
取締れないとい
つた方がよいくらいでございます。そういう状態に
自治体警察並びに
國家警察はおかれてあるのであります。そこでこれを非常な若い純眞な方々から見、又
共産党の
立場から見ますと、その
自治体警察は、そういう
織物業者なんかとぐるにな
つておる。
警察はそれに買收されておるというふうな
見方ができるのであります。又そういう
見方をしておるのであります。これはいわば我々が二合五勺の
食糧配給、その中には砂糖も入
つておりますし、「
乾あんず」も入
つております。それではどうしても暮せないので、必要上
闇買いをしなければならないというのを
警察で一々
取締れないことくその
自治体警察は、
自分の
地方の
繁榮に関するような
織物の闇、闇というのはそういう
出目とかいうものの闇は
取締れないというような
状況にあるのが、いわば人情から止むを得ないような
状況だろうと思います。そこで私は
自治体警察の、初めに申しました、どうも
自治体警察というものは非常に理想的な
警察制度である。優秀な
社会に、
民主主義に徹した
社会にな
つた後では、とてもいい
制度であるかも知れませんが、今の
民主化の
過程にある
日本の
現状ではどうもこういう矛盾が起
つて來る。だからこれを何とか改正をしなければならない。こいうふうに思う理由であります。
もう一つ、その
警察の方にも
民衆の方にも、
民主主義に関する、はき違えというものがあることはあると思います。これは靜岡の監獄の
脱獄事件のときにも、私は
皆さんに申上げたのでおりますがあの
事件の根本は
囚人側にも亦
刑務官側にも
民主主義の穿き違いがある。それが大きな
原因であると申上げたのですが、今度の
事件についても私はそれを痛切に思うのであります。この大都会の、東京の
自治体警察とか、大阪の
自治体警察、これは幹部の方でもしつかりした
民主主義に対する理解を持
つておられ、又
警察の本部についてもしつかりした確信を持
つておられますから、そういう
間違いは出て來ませんが、ああいう
人口三万以下のような小さい町の
自治体警察の
首腦者というものは、今の
過程においては、非常に程度が低いのであります。殊に
國家地方警察とか、
自治体警察とかに分れまして、そのときに
自治体警察側に
殘つた人というものは何でも余り優秀でない人が
殘つたのであります。そこでどういうふうに
自治体警察側の穿き違えがあるかといいますと、
署長みずからが、
民主主義にな
つて來たのでありますから、
警察も
民主主義化しなければならない。それには
民衆の中に入
つて行かなければならない。だから
民衆に対する接接は努めてやる。それで一緒に酒も飲みますれば、一緒に馬鹿騒ぎもやる。宴会があれば踊りもやる。酒に醉えば二階から小便をするということが
民主主義だ、こういうふうに感じておる。小便の点は極端ですが、そういうふうになるのである。それから又
民衆側におきましても、あれは我々の公僕なんだ、
警察は公僕なんだというようなことで、若い巡査に対しまして、今日は俺の家に酒があるんだ、肴もあるから飲みに來ないか、職務が済んだら飲みに來ないか、よし、行こうと言
つて飲むというようなことが頻々として行われたのであります。そうするとこれは又一方から見ますれば、
自治体警察の
署長初め署員は実にだらしがない。いつも酒良に耽
つておる、こういうふうに見ますから、誹謗されるのであります。それから又署員と
署長の
関係におきましても、なに
民主主義なんだ、
署長の
間違つた命令なんか聞く必要はないというようなことで、
署長の威令が行われない。てんでんばらばらな傾向にある。これが元の
警察でありますれば、上に
警察部長があり、ぐずぐずしておると轉任させられる、又罷めさせられる。
署長初め署員は一方には戰々兢々としておる面もありますが、大いに自粛をしておる面もある。ところが今度はそうでない。おのおのてんでんばらばらで今言
つたような穿き違いをや
つておる、こういう面も多分にあるように私は見て参りました。
本庄町政刷新期成会の方からいろいろ批判をされております
警察署長、これは
國家警察の方も入
つておりますが、それに対する惡声というものは、そういうような行き違いから出ておるような面が多いようであります。そこで先程触れられました
警民協会の問題であります。これは私が第一
國会におきまして
警察法を審議いたしますときに、どうも
自治体警察に関しては
寄附金というものを取らないようにしないと、これがボスと結び付く虞れが十分にある。そのために
警察がスポイルされる危険が十分あるということを皆様に申上げたのでありますが、今度の
事件で見て見ましても、市町村の財政は窮乏しておる。
自治体警察に対する予算はなかなか取り得ない。
寄附金によらなければならない。その
寄附金を集めるのに
警民協会が出てや
つておるのであります。その
寄附金なるものが問題を起した。
大石町会議員、これがまあ前身はやはり博徒的な人であ
つたらしいのであります。それから
織物の機本、
機屋仲買人、そういうような人が多く
警民協会の幹部にな
つております。こういう人が一生懸命に金を集めまして、或る理事の人が豪語しておりましたが、この
警民協会程働いた
警民協会はあるか、
日本で一番よくや
つておる
警民協会だと思う。これは
寄附金をうんと集めて
警察に対して大いにサービスをした、こういうことを誇
つておるのであります。それが又一方から見ればボスと完全に結び付いておるのではないか、財力、ボスと結び付いておる、こういうふうな非難を受けるのであります。これはどうしても私は
警察に対しては
寄附金を直接に取ることは止めさせなければいかんと思います。
警民協会直接じやありませんが、
警察に対する直接の
寄附金を集める、こういうわけでありますから、私はこれは
寄附金が必要ならば町村長が集めることにしなければならない、こういうふうに
思つております。それから
地方のボスが
暴力團を利用して私慾を図るようなことがありはしないか、これは聞いたことに過ぎないのでありまして、代議士の衆議院議員の選挙なんかに際しまして、衆議院候補者の方々で何々組というようなものと因縁が深くて、それを非常に利用されたという方もあるようであります。その方々には聞きませんけれども、これはやはり町の責任ある者もそう言
つております。何とか代議士はこれは
何とか組を利用された、又落選されたけれども何とか候補者は
何とか組とやはり
関係があ
つて、選挙
運動に関して
関係があ
つた、こういうふうに言
つておるのであります。そういう選挙なんかのときに
何とか組が利用されて選挙
運動をや
つてお
つたということは確かにあ
つたようであります。併し
本庄町の町長が言
つておりますのは、その
大石という
町会議員が出ており、又そういう組の活動はありますけれども、
本庄町の
町政がそれによ
つて引続られたということは全然ありません、こう申しております。この助役というのは一方の旧体制の方から言えば
共産党系だと、こう言われておる人物でありまして、なかなかの民主的な方で新思想の持主であります。その人が言
つておるのですから
間違いないと思います。こういう
暴力團的な組の力で、又それから出ておるボス的な人々によ
つて町政が左右されておるということはない、こういうふうに断言をしておりました。
本庄町の
町民は先程申上げましたように、組に対して無関心であるか、又非常にこういうことは困ると
思つてお
つても口には出さないのでありまして、今度
新聞で大々的に書きましてから段々口に出して來るようになりましたが、それでも一度話して、反対側の
新聞からああいうことを話したかと聞かれると、いやそうじやなか
つた、あの
記事は朝日の方で
自分の話したこと以外に附加えたんだというようなことで否定するというようなことで非常に遠慮しております。これは
暴力團が
地方の
民衆を威嚇しておると、こう反対側が言うところであります。そういう
状況は確かにあるように見て参りました。
大体そういうことでありまして、この前この
委員会で齋藤本部長が御答弁せられました
本庄町附近の
警察がこれらのボス、
暴力團と提携し、又は少くとも見逃していたかどうかというと、そういうのは酷である。
町政までボス
勢力に乱されていたとは思われない、こういう御答弁があ
つたのであります。
町政までボス
勢力に乱されていたとは思わないということは、それは向うの助役も裏書きしておりますが、
警察がこれらのボス、
暴力團と提携又は見逃していたかどうかという点になりますと、私は大いに疑問に思います。これは今申述べました
自治体警察の性質、又
統制経済の反面に出て來る
社会惡の闇の問題、これは
自治体警察が必然的惡として
取締つていなか
つた、こう思われる節があります。これは私はそれを提携と言い、見逃していたとこう言うならば十分言えると、こういうふうに
思つております。私は
自治体警察の世話をする
中心がない、これは吉川さんからも今御
報告がありましたが、この点は早く何とかしなければならないのでありまして、
自治体警察というものを手放しにする、ばらばらにしてまちまちでやらして行くというのは理想的な
社会ができ
上つた上であります。現在の
過程におきましてはこれを中央で纏め役をし、そうして世話をするという組織がどうしても必要だと私は感じます。これに対しましては私といたしましては今思い付きで考えておりますのは、今
地方財政
委員会というものがありますが、これを改組しまして
地方自治
委員会というものに拡大をしまして、この
自治体警察のこともその
委員会で世話をするというふうにしたらどうかというのが一つの案。もう一つは、國家公安員というものの職責を拡大しまして
自治体警察の世話をもする、連絡もするというふうにして行
つたらどうか。こういうふうに考えております。國家
公安委員というものが
自治体警察のことをやるというのはおかしいという御
意見がありますが、これは第二
國会におきまして、
警察事務の中には
自治体警察の事務と雖も
國家警察事務が沢山あるのであります。例えば被疑者の捜索、逮捕、國家公安の維持というのは國家事務でありまして、これを
自治体警察に委任してあるのだということは、私の質問によりまして法務総裁がここで確言いたしました。そうなりますと
自治体の
警察は
國家警察の委任を受けて……そうすれば國家
公安委員の方でその範囲において世話をし、統合をしてもいいじやないか、こういうふうに思うのであります。これは何も内務省を再び置くとか、それから元の
國家警察に還すという意味じやありません。
自治体警察は
自治体警察においてそういう世話役を作る、纏め役を作る。どうしてもそういうことが必要だということで兼任をする必要が起りましたし、又それが要るのじやないかという注意をしました。そういうことをする上においても必要だ。他にまだいろいろ感想がありますが、大体これだけにいたして置きして御質問に應じまして終ります。