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嘱託(
藤田武夫君) 私先日この
委員会の証人に参りまして、そのとき
お話し申上げたので、
委員の
方々もお知合かと思いますが、七月に
地方財政の今度の
改革によりましても、まだ十分に
地方財政の
要求が満されておらない。それで今度の
税制改革の下におけるいろいろな問題を尋ね、又それに対する一応の対策を
考えて見て呉れないか、そういう
お話を
委員長から受けまして、私それ程專門的な知識もないのでありますが、曾て
東京地方税調査会に十二年ばかりおりまして幾らか知
つておりますので、お受けしたわけでございます。
それで七月
以來の
調査いたしましたところを極く
簡單に申上げますと、先ず第一に、今度の
財税制改正案が提出されまして、それを
機会にして各
方面から、
地方団体側、又
民間の
研究機関や
団体、
学識経驗者、いろいろな
立場の人からいろいろな
要求が出たのでございます。ところが、今度の
改革案にその
要求の中で、取入れられたものも
相当あるのですが、取入れられなか
つたものがありまして、その場合に出ましたいろいろな
要求として、どういうものがあるかということ、それから今度の
税制改正の結果、それに基いていろいろな
団体や各
方面からいろいろな
要求があるわけであります。それも調べまして、大体今までに
民間及び
地方団体方面において唱えられました
改革意見というものを一応整理して見たわけでございます。まあその
内容は、大体
調査の
経過だけを申上げよという
お話しなので、詳しく申上げませんが、
税制に
関係した問題、これ又御
質問があればお答え申上げます。それから
地方財政法に
関係して
要求された
事項、
地方債関係、
経費関係、いろんな問題がございます。それを一応分類して、整理して見たのであります。それからそういう
意見をいろいろ斟酌いたしまして、私自身が前々から
地方財税制について
考えております
意見も含みまして、一応の
税制改革案というものを構想して見たわけでございます。その私が
考えました案を一応御参考までにざつとここで申上げて見たいと思うのですが、これはまだ
中間報告でございまして、しつかり固ま
つたところまでは行
つておりません。ただ一応の
考えの
纒まつたところを申上げて見たいと思います。まあいろいろな
団体その他の
要望を斟酌いたしまして、今
自分として理論的に実際的に最も妥当だと
考えられる
改正案は、先ず第一に
所得税附加税というものを
復活する。その
所得税附加税の
復活ということが実現されますると、それを
中心にいたしまして
税制の
内容が非常に、今度
改正されました現行の
税制とは違
つたものにな
つて参ります。それで
所得税附加税の
復活ということが
中心問題になりますので、そういう
意味からかねがね
考えておりました
自分の
考え方、その他各
方面の
意見も取入れまして一応
所得税附加税復活論というふうなものを
纒めて見たわけでございます。これはお
手許にございますので見て頂けば結構かと存じますが、この
内容は極く
簡單に要点だけを申上げます。
今度の
改正されました新
税制の下におきましても、御
承知のように
最初から大体二百六十五億円の
赤字が出ることにな
つております。まあ
税收入が
相当今度の
改正によりまして増加したのでありますが、一面歳出において從來の
制度によりましても
人件費や
物件費の膨脹があり、又新しく
警察消防、六三制、いろいろな問題で非常に膨脹いたしまして、結局
赤字が二百六十五億円出る、こういう財源の欠乏を來たしておるわけであります。それから今度の新
税制の下におきまして、
地方団体の税源に
彈力性があるかどうかという問題も、インフレと
関係したしまして重要な問題でありますが、今度の
改正によりまして、御
承知のように
事業税とか、
入場税、
酒消費税、こうい
つたものが附加されまして
相当彈力性が加わ
つたわけであります。併しこの
三つの税以外には依然として、
彈力性は
余り外の税にはありません。又この
三つの税も現在の
一般の大衆の
購買力というふうなものから
考えまして、今後どれだけ
伸暢力があるか、伸び得るかということについては可成り疑問にされる点がございます。そういう
意味で大体
最初めから
相当に
赤字が当然に出て來る。それ以後の各
地方団体の
報告によりますと、一層この
赤字が拡大するということも聞いております。又
税収入も
彈力性がない。それから負担の均衡問題になりますると、これは今までの
税制が持
つております
欠陷をそのまま受継いでおりますので、
不動産所得、
営業所得というものが他の利子配当所や勤労所得との間において、負担
関係において、詳しく申上げませんが、非常に不公平な現状にあります。又所得の額からいたしますと、高額所得と少額所得との間における
地方税
関係におきましては、大部分が比例税によ
つておりますので、比較的少額所得者が重い負担をいたしております。そういう今日の
税制の下においては重大な
欠陷を持
つております。これは
所得税附加税復活論と直接
関係があるわけであります。それから
所得税附加税の
復活に対する
要求というものは、私が先程申上げました
調査の結果によりましても非常に各
方面から盛んな
要求がございます。これは殆んど
一般的な世論にまでなろうとするくらいの熱心な
要求がございます。それで一歩進みまして、それでは
所得税附加税がなぜ廃止されたか、その廃止されたときの理論的なと言いますか、そのときに理由にされた根拠というものを一応尋ねて見る必要があると思いますのですが、御
承知のように、
昭和十五年に
中央地方を通ずる大規模の
税制改革がございまして、國が厖大な軍事費を支弁するために人税は悉く國へ集中する、そういう建前で
税制改革が行われました。その結果
所得税附加税も廃止されたわけでございます。ところがその後におきまして
地方団体の
税制の建前を見て見ますると、
政府から与えられる分与税、それから國税に対する附加税というふうなものが、まあ自治的な性格は割合弱いものが八五パーセントを占めるというような非常に自主性の弱い
税制を取
つて参りました。そうして負担の不均衡が先程申しましたように
相当著しい、そういう状態で今日まで來たわけであります。そうして人税を國へ集めて、
地方税は物税本位に帰るという場合に、よく理論的根拠といたされましたのは、つまり
地方においては、
地方団体の事業施設によります直接いろいろな土地の値上りだとか、家屋、家賃の値上りとか、利益を受けるものが多い、いわゆる応益主義に基きまして物税の外、
地方団体の
実情としてできた、こういう根拠に基いてお
つたわけであります。併し物税が國税よりも
地方に適当だ、それはその
通りでありますが、そうかと言
つて人税が
地方税において非常な軽視をされる、又は無視されるということはこれは許さるべきことではないので、
地方団体の事業の中にも
警察とか、教育とか、社会事業、文化事業、いろいろな
方面で別に土地や家屋、即ち物に
関係がなく、
一般の住民が勤労所得者、それから利子配当所得者も利益を受けるという事業等が非常に多い。そういう点から見ましても、新税を甚だしく軽視するという建前は、
地方税体形としても、理論的にもこれは非常に間違
つた建前であるというふうに
考えられます。そういう点からいたしまして、
昭和十五年には、戰爭中でもあり、國家の方に税金が非常に余計に要
つた。それにそういうことによりまして、所得税が國税の
中心であるので、そういう所得税体形を國に徴収するという建前で、
所得税附加税を廃止されたわけであります。併し理論的に
考えますと、先程申しましたように、いろいろな問題がある。更に積極的に
所得税附加税を主張いたします根拠といたしまして、御
承知のように、現在の租税体形におきましては、所得税というものが一番合理性を持
つた租税だとされております。それは個人の所得を綜合的に捉える。又それによ
つて家族の事情を斟酌するとか、最低生活費を免税する、累進課税を行い、所得の種類によ
つて税率を異にするとか、そうい
つた非常に合理的な負担能力を捉える。最も合理性に富んだものが所得税である。又段々経済が発展して参りますと、企業の経営と需要とが分離いたしまして、所得が事業によ
つて捉えられないで、非常に多数の人に分散する。そういうものを所得税によ
つて残りなく捉えることができる。又経済生活の激変による各人の所得収入の変化というものを鋭敏に捉えることができる。こういう近代的な性格を持
つておる。又御
承知のように租
税収入が非常に豊富である。又担税力に富んでおる。こういう点から見て、所得税が一番推奬されるわけでありますが、それは
所得税附加税の合理性、又近代性というものを証明するわけでございます。こういうふうに
考えて参りますと、先程申しましたように、現行の
税制の下においては、
地方団体の税金が初めから欠乏しておる。又担税力が少く、負担が非常に不均衡にな
つておる。こういう
欠陷を是正するには、
所得税附加税によることが最も適当であるというふうに
考えられます。又住民税の発展を
考えて見ましても、
昭和十五年には負担分任の
精神を生かすという
意味で設けられました住民税が、今日では所得税を重視し、又いろいろな課
税制限を撤廃して、非常に所得税に近くな
つております。而も最近に所得額のみによ
つて公平に課税しないで、家屋賃貸價格とか、均等割とかい
つたような問題がありまして、十分に負担能力に応じ得ないという欠点を持
つております。住民税がこういうふうに所得税に近くな
つて來ておる。而もそこに負担能力に応ずることができない。こういう点から
考えましても、これを
所得税附加税に発展せしめた方が一層はつきりしたものになる。こういうふうに
考えられます。
これで私の
所得税附加税復活の理論的な根拠は一応終
つたわけでございますが、それでは
所得税附加税を
復活すると、どういう実際的な効果があるかということを
考えて見ますと、二十三年度の個人の所得
税収入が千四百六十四億円、法人税が百三十億円、この二つを合計しまして、その中からこれは後で申上げますが、利子配当所得に対する所得税、これは
所得税附加税を取ることが技術上困難であります。それでそれを僅か十一億円でありますが、それを除きますと千五百八十三億円、これが所得税の税額であります。それでそれに対して附加税の税率をどの位掛けるかということが問題になりますが、試みに事変前の
昭和十一年度を取
つて見ますと、大体
地方団体において取
つております附加税の税率は四五%乃至五〇%、町村の方は四五%ぐらいにな
つておりますが、附加税を含めてであります。大体五割に近い。併し今日所得税というものがたびたび増税されまして、負担の能力から
考えまして、五割は少し無理だと
考えられます。大体三割は三〇%と仮定した。それによりますと、四百七十五億円、國全体で四百七十五億円という
所得税附加税収入が計算土出て來ます。今度の
税制改正によりまして、
地方税の増収が三百六十億円、全体で三百六十億円にな
つております。それと比較いたしましても、
所得税附加税の
復活だけで
相当大きな
税収入が止るということはすでに分るわけであります。それから所得税は御
承知のように非常に
彈力性を持
つております。
昭和二十二年度と二十三年度とを比べましても二倍以上の増加にな
つております。
從つて附加税もそれに伴いまして、税率を動かさなくとも所得税の増收に伴
つて、
將來も担税力を持つということは十分期待されます。それで
所得税附加税の
復活につきまして、從來問題にな
つておりますのは、
所得税附加税をどうして徴收するか、課税技術上困難があるのじやないかということが非常に今までから反対論の
中心にな
つております。それについて
自分の
考えたところを
簡單に申上げますと、所得税の中で申告課税によるものが千五百八十三億円の中で、二千八十三億円、源泉千五百と言いますが、法人税も入
つておりますが、個人所得の源泉課税は三百八十一億円、そういうふうにな
つております。個人所得税だけは合計千四百六十億円、そこで申告課税分については問題はありませんので、税務署で決定した額を道府縣市町村に通知する、それに基いて、都府縣市町村が附加税の税率を附加して行けばよしのであります。問題は源泉課税の外にあるわけでありますが、源泉課税の分につきまして、勤労所得の分と利子配当の分を現して見る必要がございます。勤労所得の分につきましては、これは源泉課税をや
つておりますのは、各会社とか官公署その他でや
つておるわけでありますが、その各官公署や公社銀行というところで、國に提出しますところの、そこで雇
つておる職員、社員の所得税に関する
資料というものを都府縣に送る、道府縣からその府縣内の市町村に職員の居住地市町村に廻すというふうにすれば解決が付くと思います。ただ大都市で官公署や会社、銀行でそういう手数をするのが
相当問題になると思うのでありますが、併し交通
関係その他を
考えまして、大都市においてもせいぜい数府縣以上には跨がらないと
考えられます。これで從來行われております特別徴收
義務者に対する報奬的な
意味の交付金を或る
程度交付すれば、この問題の解決が付くのじやないかというふうに
考えられます。只一番問題になりますのは、利子配当所得税でございます。この利子配当所得税というのは僅かに十一億円でありまして、全体の個人所得税の一%にも達しない〇・七%という僅かな額で、この利子配当所得税に対する
所得税附加税を徴收することが困難だから、
所得税附加税の徴收は無理だという議論があるのですが、僅か〇・七%のもので全体を否定するということは間
違つている
考えだと思います。この利子配当所得につきましては、何しろ銀行や会社からの利子配当の利用者というものは、非常に多数に上
つており、又その所在は縣や市町村が非常に分散しております。又中には無記名証券その他の問題もありまして、これを各府縣市町村で別々に捉えて
所得税附加税を正確に取
つて行くということは、これは抜術上むずかしいと思います。それでこの利子配当所得税に限
つて、
所得税附加税に当る部分、即ち三〇%のものを所得税で増徴いたしまして、それを配付税の財源に廻す、こういう方法によるより仕方がないというふうに
考えられます。更に又ただ便利だけの問題ではなくして、利子配当所得税というふうなものは、ただその利子配当を受ける人の居住の府縣や市町村の利益だけではなくて、全國的な
地方団体の恩惠を受けているという点も
考えられますので、配付税に廻すことも理論的に
考えても決して矛盾はしておらないというふうに
考えます。それから法人税については、これは同一の市町村又は府縣内に全部営業所を持
つているところでは問題は極く
簡單でありますが、数府縣に亘
つているという場合には、これは営業税の場合と同じように、その所得を分割いたしまして、一定の標準に基いて分割をいたしまして徴收するという方法が、営業税でも現に行なわれておりますので、行ない得ると
考えられます。こういうふうにして
所得税附加税の
復活は理論的にも亦実際的にも十分主張し得るものだというふうに
考えております。そうして
所得税附加税を
復活したしますというふうにいたしまして、それを前提にしまして
税制改正案を
考えたいと思うわけでございますが、そういたしますると、
所得税附加税が
復活すれば、それに影響されまして、先ず第一に住民税が問題になります。住民税はできれば全然廃止した方がよいと
考えられるのですけれども、併し住民の負担分という問題もございまするし、又町村においては
所得税附加税の
復活によ
つては、都市に比べて利益を受けるところが少ないとてう点もございますので、住民税はうんと税率を低下して、ただ各住民がその民属の
団体の負担を分任するという
意味を生かすだけの
意味で、ざつと三分の一
程度と
考えるのですが、その
程度に下げる。それから地租、家屋税、これについては各
方面の
意見において、税率が今度の
改正で少し高過ぎるという
意見が大部分なんです。そうして賃貸價格の改訂をすべし、これも殆んどすべての人が
要求しております。それで賃貸價格を改訂いたしまして、それと同時に税率を引下げる。これは
所得税附加税を
復活いたしますれば、所得税の中には
不動産所得も入
つておりますので、そういう点を
考えまして、ともかく二重課税にならないように、税率を大体四〇%
程度引下げる。ただ收益税の財源という
意味から残存する必要がございますが、その
程度に、四〇%軽減するということが適当だと存します。それから
事業税、特別所得税、特別所得税というのは実際は
事業税と同じ性質のものでありますが、これも
所得税附加税が
復活いたしますと二重課税の虞れがありますので、やはり三割
程度低減する。その外には前々からそれの廃止が
要求されております自転車税、荷車税、舟税、そういうものを撤廃する。そういうことを
所得税附加税の
復活に伴
つて、直ぐに修正すべき修正として
考えております。そういう点を改めましても、結局
所得税附加税が
復活いたしますれば、二百五十億の、このお
手許に廻
つておりますプリントには、住民税を全部撤廃するという建前で、今申しました減税をいたしましても、二百二十二億円の残りが、財政上の余力ができるわけでありますが、住民税を三分の一
程度にいたしますと、二百七十億
程度の後に余力が残るようになります。そうしますと、これは偶然の一致なんですが、大体今度の
税制によりましても、二百六十五億の
赤字が出るというものが、大体充たされるようになるわけでございます。この
税制改革案につきましては、尚外にいろいろな細かい点、修正すべき点も
考えております。
それから
税制だけでなくて、
地方財政法についてもいろいろな各
方面から
意見がありますので、或いは公益企業について、もつとしつかりした
規定を設けるとかいう問題もございます。又
地方債の問題に
関係いたしまして、
地方債
中央金庫の設置、
地方団体中央金庫の設置の問題もあります。それから御
承知かと思いますが、最近に銀行預金の増加いたしましたところの百分の五を
地方債に
義務的に廻すということが決定されまして、もう一月ばかり前でございますが、実際実行されております。これは非常に、何と言いますか、有名な
地方債としては財源になりますのですが、百分の五は大体四十億か、五十億になるそうであります。これを百分の五でなくて、もう少し引上げることもできやしないかというふうに
考えております。そうい
つた地方債その他の問題もございますが、余り長くなりますので、大体
中間報告といたしまして、今までの
経過を御
報告申上げます。