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1948-08-11 第2回国会 参議院 司法委員会資格審査不実記載に関する小委員会 閉会後第4号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十三年八月十一日(木曜日) 午後二時三十二分開会 ————————————— 本日の会議に付した
事件
○
証人平野力三
君の
診断報告
に関する 件 —————————————
伊藤修
1
○
委員長
(
伊藤修
君) では
不実記載事件
につき小
委員会
を開会いたします。 それでは
菊地
さんに申上げますが、先般当院からお願いいたしました
平野力三
氏に対する
診断
の結果を御
報告
願いたいと思います。
菊地甚一
2
○
証人
(
菊地甚一
君) 先に
宣誓
いたしますか。
伊藤修
3
○
委員長
(
伊藤修
君) その前に
宣誓
を一つお願いいたします。 〔
総員起立
、
証人
は次のように
宣誓
を行な
つた
〕
宣誓書
良心に
從つて眞実
を述べ、
何事
もかくさず、又、
何事
もつけ加えないことを誓います。
証人
菊地
甚一
菊地甚一
4
○
証人
(
菊地甚一
君)
報告書
がまだ清書されておりませんので取り急ぎ原稿を持
つて
参つたの
でありますが、一應これを読ませて頂いた方がお分りと思いますから少しの時間を拝借したいと思います。
報告書
私共両名は
平野力三
の
精神状態
を
診断
するよう依頼され、且つこれに関して数項に亘る
質問書
が発せられましたので、
昭和
二十三年八月七日
平野邸
に赴き同人の
診断査
を遂げました。その結果を纏め
應答
を別紙に認めここに提出いたします。
昭和
二十三年八月十一日 黒津
良臣
菊地
甚一
参議院議長
松平恒雄
殿 記 一、
抑鬱症
に関する
一般的説明
本病は
内因性疾患
であ
つて発作性
又は
循環性
に現われるのを常とする、遺傳を本質的な原因とするが実際上にはこれを証明し得るとは限らない。
体質的關係
も認められ、
肥満
型の
体型
と明らかに
親和性
を有する。本
病発呈
前の
性格
は軽ければ
循環性氣質
(
社会
的、親切、温情的、同情的、明朗、活溌、活動的=
軽躁性性格
=であるか、或いは
平靜
、
憂鬱
、柔和=軽
鬱性性格
=であるもの)或いはやや重ければ
循環性病質
を有するか、又は本病者の
家族
に同樣の
性格所有者
を見出し得る場合が多い。 本病の
精神症状
はその
状態
の
軽重
によりて相異するから、一見同一
疾患
かどうかを疑わしめることもあるが、その相異は本質的のものではない。又極めて軽度なる場合には
健康者
殊に
本人
の
平常
との境界、不明瞭である場合も生ずるのであるが、これは
経過等
によりて診定するより外致し方ないこともある。軽いときは
精神活動
の
粘着性
並びにその單色が
病人
を悩まし、主観的な苦痛と一切の
刺戟
を暗く色どりて領得する。
思考
は停滯して進まない。最も軽易な
仕事
も困難になる、力を一事に集中することもできないし、
疲れ
易く、
実行力
に乏しくなる。
病人
に取りては
睡眠
が必要であるに拘わらず
不眠状態
が続く。やや進めば全世界は無色となり、最早
何事
にも快樂を見出し得ない。
引込思案
となり、人との面会を好まない。
憂苦感
、
氣分
の沈鬱も著しくな
つて日常生活
も節約的となり、時として甚だしく吝嗇となる。僅かな
身体的故障
も強く響き、
重き病氣
となるのではないかなどと
心氣性
となる。初めから
自殺
の
念慮
を示す者もあるが、著しくなればややしばしばこれが
実行
を敢てするし、又
自殺
の拡大とみなされる
家族心中
(夫婦、
親子等
)も決行することは稀ではない。
病人
は絶えず不安を感じ、
日常
の
作業
にも堪えない。
理解力
、
作業力
、
読書力
、その他の
精神能力
を
失つた
と感じ、
社会
への参加は不可能とな
つた
と非観する。又往々にして
社会
に無関心となり、
自己
と世間との間に障壁が生じたるがごとく感じられ、
一種
の
離人症
を呈することもある。非哀
状態
に加うるに
精神運動
及び
行爲
に
制止
が現われ、且つ
思考
の澁滯などを呈すれば定型的の抑
鬱状態
となるのである。
病人
が主観的なる判断によ
つて
現在の非境が
病人自己
の過去の責任、
罪惡
に基くものでありとする
罪業妄想
、財産の失われたとする
貧困妄想
、
自己
の
能力
を過小に評價する
微少妄想
、病なきに病ありとする
心氣妄想等
も現われるし、甚だしければ
自己
の内外のものは一切失われ、
自己
の
身体
、生命までも失われたとする
虚無妄想
を呈するに至る高度のものもある。 以上は純粹の
抑鬱症
につき
記載
したのであるが、その主要微候は非
哀的感情
、
思考澁滯並びに意思制止
の三つにあるが、時として不純な型のものもあ
つて
、後者の一又は二を認め難いものむしろ反対な方向の
症状
を呈する場合もあるが、
病人
の
症状
の基調が非
哀的感情
であり、本病の本質的な部分を逸脱しないこと、而もその
感情障礙
が原発的であり、且つ他種の疾病に基けるものでないことが証明されることに留意すべきである。これが一でございます。皆読みましようか。
伊藤修
5
○
委員長
(
伊藤修
君) どうぞ。
菊地甚一
6
○
証人
(
菊地甚一
君) 二、
平野力三
は
抑鬱症
なりや、若し然りとせばその
程度如何
。 註
診断
の
資料
の全部又は一部として
本人
又はその
家族
の
供述
、殊に
本人
の
自覚症状
に関する愬えあるとき、該
供述
が措信できるものか否かについての
根拠
又は
所見
を示されたし。
病人
を
一定期間専門病院
に
入院
せしめて、
専門的観察
をなし得るならば、
精神状態
の診査上に必要なる
相当
確実なる
資料
を得べきも、そうなし得なければ、その
資料
は
病人自身
並びにその
家族
及びその他の
人々
の
供述
より蒐集し、整理するより外ないのであるが、その
資料
をそのまま信を措くか否か予断の下に整理すべきものではない。
病人自身
の
供述
に關してはその内容を檢討し、慎重に整理すべきである。事実を告げなければそれはそれとして、
診断
上に或る種の
参考
となるべきものである。
家族
その他の人の
供述
は時として有力なる
参考資料
ではあるが、その取捨には慎重であらねばならない。
從つて既往
の
症状
として
記載
又は告げられるところと、現在症と照合して、
矛盾
や
撞著
がなければ事実として採ることを得るものである。 余ら両名が
証人平野力三
をその
自宅
に訪ね
診察
したのは
昭和
二十三年八月七日午前のことであ
つた
が、そのときの
所見
の大略を左に録して
診断
の
根拠
とする。
所見
檢診者である余ら両名は導かれて
証人
の應接室において
証人
と面会し、來意を告げたところ、
証人
は尋常なる態度で余らに挨拶を交し、余ら問診に対して少しも拒まずこれに應じた。
應答
の大略を左に録する。
昭和
十六年、
東條内閣
の圧迫が激しか
つたの
で
睡眠
不良となり、現在と同様の
自覚症
があ
つた
ために
龍病院
で
診察
を受けたところ、
抑鬱症
と
診断
されたが、尚
農民運動
は継続しており、
自覚症状
には余り変りがなく、不快なるままに過ぎ、それでも
氣分
は回復を見た。現在のような
精神状態
とな
つたの
は本年四月末のことで、
前記龍医師
を訪い診療を受けた。 現在の心境について述べたところを要約すると、世の中を何となく暗く感じ、氣が沈む思いがする。ときには倒れそうな氣もする。
平素
は
政治的方面
のことは一切忘れ、氣に辞めないようにな
つて
いるが、
裁判
のことだけは忘れられない。弁護士に任せ切れない。何か不安なものがある。
自分
は無論
無罪
を信ずるが、取り止めもなく
憂鬱
となる。今の
病氣
は治し得る
確信
があり、決して絶望だなどとは考えない。健康にな
つて
裁判
を受け、十分に述べれば
無罪
となり得る
確信
がある。何をしようとする
氣持
も起らない。
大臣
を罷免されたのは昨年十一月のことであ
つて
、当時はいろいろとなすべき
仕事
の計画も立て、メモも取
つた
が
実行
には至らず今はそんなことも考えなくな
つた
。著しく
憂鬱
とな
つたの
は、
裁判
の
関係
からではないように思う。何が
憂鬱
ならしめたともはつきり分らない。
大臣就任
中は快活に振舞
つた
が、今はそんな
氣持
にはなれない。殊に近頃は
自分
を詰らぬ
人間
に思われて來た。又立ち上ろうと思わぬでもないが、そこまでの元氣は取戻せない。元は
決断力
も
相当
あ
つた
つもりだが、今はそれも弱くな
つたよう
に思う。ときとして
自殺
の
念慮
に襲われるが
実行
したことはなく、絶えず
不安感
があり、恐しい
病氣
と感じられる。脳溢血や
心臓痲痺
を起すのではないかと心配になることもある。 現在の
日常生活
は
格別
のこともなく、活動的でなく、むしろ一日
ボンヤリ
として暮すことが多く、鶏を飼
つて
いるので、ときどきこれに餌をやりそれを茫然と眺めていることなどが氣が粉れることになる。新聞も大見出しだけ読むが、その他には興味もなく読まない。以前には好んで読んだ
探偵小説
なども今は僅かに二、三頁でやめる。そう退屈ということもないが、体もだるく精神的にも
疲れ
を覚える。殊に
裁判所
に行くと
心身共
に疲労が甚だしい。
平素
は精神的、活動的、社交的で
人間
としては正直明朗で、陰影を認めない。
抱擁力
もあり、人と争うことを好まず、部下に対して怒
つた
こともないと言
つて
いる。 以上
証人
の告げるところから、現在主要なる点を拾えば
社会視
は暗い。
氣鬱不安感
並びに
不信感
、
自己評價
の軽蔑、
決断力
の
減退感
、
活動力読書慾
その他
生活慾
の
減退
、
心氣性不眠
、
企死的念慮
(著明ではない) 又
身体
的に
肥満
型を呈していることは注意すべきである。尚
胸部及腹部等
、内臓に関する
所見
は
格別
のことなく、瞳孔及腱反射等に関しても異常は認めない。 以上の
所見
から
證人平野力三
は、軽度なる
憂鬱状態
を呈しているものと認めざるを得ない。 そこで、本
状態
を呈する
病氣
は
一種
ではないのであ
つて
、
憂鬱状態
を抑
鬱病
と即断するを許さない。病名の
診断
には他の
部面
からの考察を必要とするので、二、三について述べる。 (イ) 佯詐性
証人
の場合佯詐即ち病を佯わることは必ずしも
証人
に有利であるとは考えられないし、
前記
の
症状
間に何らの
矛盾撞著
はなく、全体の
症状
を総合して
一定
の
精神状態
にあることを認めしめるところに
作爲的
な共述とは考えられない。 (ロ) 常人の
憂鬱
反應
正常人
でも
精神的打撃
を受けた場合における一時的反應ではないかということであるがそうではない。 (ハ)
糖尿病
に罹
つて
いるときにかような
症状
が現われることがあるが、余らは
証人
の尿を檢査する機会を得なか
つた
けれども、曾て
医師
によ
つて尿
に糖が認められたことがなか
つた
ということで一應否定し得る。 (ニ) 精神分裂病の場合にもかかる
憂鬱状態
を呈することはあるが、
証人
に
精神分裂症
を疑わしめるような
症状
を他に認めない。 (ホ)
痲痺性癡呆
身体的所見
は、
痲痺性
は除外し得るばかりでなく、
精神的所見
から、
癡呆状態
を認め得ない。 (ヘ) 以上(イ)より(ホ)まで記述したところから、
証人
の呈する
憂鬱状態
は、かかる
精神症状
を主要微候とする
精神病
、即ち
抑鬱症
、正しくいえば
躁鬱病
の一
病相
の名であると考えることがどうかと思われる。
証人平野力三
の
体型
、並びにその
病質
が、本病であることを
診断
せしむる有力な基礎となるし、
証人自身
の告げるところと
龍医師
の
診断書
にすれば、曾て
抑鬱症
に罹
つた
ことあるがごとくであり、
抑鬱症
は
発作性
又は
循環性
に現われることがしばしばあるからである。 これらの点を願慮するならば、
證人平野力三
の
精神状態
は、
抑鬱症
の
症状
と一致するもので、
証人
は本症に罹りおるものと
診断
することが妥当と信ずる。
病状
より
程度
を推察するに経度であるといえる。 三ノ(1) 過去の
経歴殊
に
農民運動
及び
政治運動
の実情、
思想
を想起し得る
能力
は
相当
に存するものと思われる。これは
抑鬱症
は智力は冒されないのが常であるからであるし、
証人
のような軽度の場合には、
思考制止
も左程著しくないからである。併し正常と称せられるものでも、記憶及び
追想
は複雑なる
精神的條件
の
支配下
にあるものであ
つて
、正しくいえばこれは正確を期待するのは困難である。殊に
感情部面
の
障礙
がある場合に
追想
並びに
思考
のごとき
智的作用
に、或る
程度
の
影響
あるべきことは想像される。かかる観点からいえば、
証人
の
供述
から求められる
資料
については、それへの
感情的附帶
の多寡が
正確度
を左右することとなることを留意しなければならない。 三ノ(2) これは(1)から考えられるごとく、想起した
観念
を纏めるだけの
能力
はあ
つて
も、
思考
の
資料
に
感情的影響
があり、又表現が冷静を欠くことあるべきは想像される。 三ノ(3) 以上記したところから考えられるごとく、
証人
は現在
思想観念
を纏めて外部に表現し得ない
状態
ではないが、
平常
と同様の
程度
と質とを期待することはできないと思われる。 御
質問
の四、現在では
本人
に対し、精神的に余り
刺戟
せざるよう
努むべ
きであるから、
精神的負担
は
本人
の
病氣
に対し、惡
影響
なしと言えない。 御
質問
の五、現在進行中の
東京地方裁判所
における
証人
に対する
刑事事件審理
の、
証人
に対する
影響
については、その
審理
以前における
証人
の
病状
を知
つて
いないから、現在の
状態
との比較は困難であり、又
精神状態
を数字的に挙げることも困難であ
つて
、或る幅を以ての
軽重
で表現するに過ぎないから、
影響
の
程度
を具体的には挙げ得ない。
証人
みずから告ぐるところでは、
審理そのもの
を拒否せんとするものではないが、現在の
精神状態
では、正確なる
應答
を期し難いから、正常に復した後に
審理
を受けたき旨を熱望している。
從つて
現在の
裁判所
の措置については、決して快よしとしない。その
感情的刺戟
は
証人
に対して、よい
影響
ありとは思えない。 御
質問
の六、
昭和
二十三年七月三日頃の
証人
の
病状
を單に現在の
病状
より推定することは困難と言わざるを得ない。
病状
の
経過
は個人により又環境の
如何
により甚しく相違するからである。 御
質問
の七、今後約一ケ月間適当なる專門医の
監督下
に療養に努めれば、
相当
の
治療効果
を收め得るのではないかと思う。尤も
病状
の
程度
と、
治療
の長短とは、必ずしも一致するとは限らないから、確言することは困難である。 御
質問
の八、現在の
病状
並びに家庭の状況より見て、必ずしも
入院治療
を必要とはしない。
治療法
としては、
持続睡眠
を
試むるのが
最も適当と考えるが、他に
衝撃療法
なども
試むべ
きである。
療法
の
如何
によ
つて
は
入院
が必要となる。 以上であります。
伊藤修
7
○
委員長
(
伊藤修
君) ではお尋ねいたしたいと思いますが、あなたが御覧にな
つた
当時における
平野
氏の只今の御
診察
の外の肉体的の
関係
においては、
証人
として出頭し得る
程度
であるかどうか、要するに
歩行
に堪えるかどうか。
菊地甚一
8
○
証人
(
菊地甚一
君) それは
歩行
に堪えるし、出頭し得る。
伊藤修
9
○
委員長
(
伊藤修
君) そういうことには
差支
ないわけですか。
菊地甚一
10
○
証人
(
菊地甚一
君) そうです。
伊藤修
11
○
委員長
(
伊藤修
君) それから
平野
氏の今の御
報告
中にありますごとく、正しい
意見
は述べられんというのですが、それは何か
思考
を要するようなことは述べられんかも存じませんが、過去の
経驗
をそのまま表現するということはどうでしようか。
菊地甚一
12
○
証人
(
菊地甚一
君) それはできると思います。大体私共聞いたのは正確と思われる。過去のことは大体正確を傳えておるように思う。
伊藤修
13
○
委員長
(
伊藤修
君) では
自分
が内心的に考えておることを、いわゆる
表示意思
とは、
表示
と異なるような、不一致を來たすようなことはあり得るでしようか。
菊地甚一
14
○
証人
(
菊地甚一
君) それは
本人
はこう言うのです。今は極めて
冷靜
だからいいが、
裁判
を受けておる最中に非常に苦しくなる。人に言えない程、苦しくなる。これはどうも
自分
より外は分らない。こういう
状態
ではどうも止めて貰いたい。
從つて
その答えることは非常に苦しい。だから病的な
状態
にあるのだから正しくないかも知れんというようなことを言
つて
おる。
伊藤修
15
○
委員長
(
伊藤修
君) だから正しくない……
菊地甚一
16
○
証人
(
菊地甚一
君) これはこの
説明
の中に私共証言しておるのですが、それは
感情的負担
のことがそれに
相当
する。
伊藤修
17
○
委員長
(
伊藤修
君) 正しくないという
程度
ですね。
程度
は過去の
経驗
をそのまま表現する。樂に表現するというような場合においては、
相当
正しい
意見
が述べられるのじやないでしようか。
菊地甚一
18
○
証人
(
菊地甚一
君) 併しこの病体の
性質
としまして過去のことを正しく表現できないということは恐らくない。
伊藤修
19
○
委員長
(
伊藤修
君) ないのですか。
菊地甚一
20
○
証人
(
菊地甚一
君) はい。できると私は思います。たといどういう
苦悶状態
が起
つて
も述べれば述べられると思います。
伊藤修
21
○
委員長
(
伊藤修
君) 述べられるのですか。
菊地甚一
22
○
証人
(
菊地甚一
君) ええ。
伊藤修
23
○
委員長
(
伊藤修
君) そうなると、何か外に
本人
の
氣持
を
刺戟
するようなことや、
煩悶
を來たさせるようなことが外界からあれば、或いは
病氣
が多少昂進してその
供述
に誤まりが生ずる、そういうようなことはあるのですか。例えば
裁判
とというような一つの権力の下に行われる場合とか、或いは
自分
の苦しいところを衝かれ、それが答弁をどうしようというような場合においては、
相当病氣
から來るところの
影響
はあるのでありますか。
菊地甚一
24
○
証人
(
菊地甚一
君) この
病氣
の
一般
から言えば、そういう場合には默
つて
答えない。
伊藤修
25
○
委員長
(
伊藤修
君) 答えなく
なつちやう
のですか。
菊地甚一
26
○
証人
(
菊地甚一
君) 默
つて
答えなくなるのが普通であります。ですけれどもあの人の場合は、默
つて
答えなくなるかどうかは、
ちよ
つと分りませんが、恐らく答えられると思います。
伊藤修
27
○
委員長
(
伊藤修
君) それから
本人
に自由に過去の
経驗
を述べて頂きたいと、こういうような場合は、述べ得られるじやないのでありますか。
菊地甚一
28
○
証人
(
菊地甚一
君) 勿論述べられます。ただ
抑鬱症
の
一般
の場合には、もう口をきくのもいやになる。人に聞かれても返事しません。もう悄然としておるのがまあ
一般
的ですね、あの人の場合は、そういう影が大体ありません。
伊藤修
29
○
委員長
(
伊藤修
君) ないと考えてよろしいですね。多少、御
承知
の
通り
今
平野
さんはいろいろの
事件
で御
煩悶
にな
つて
おられるが、日にちを貸したならば
相当
期待し得るところの
供述
が求められると思うですか、どうですか。
菊地甚一
30
○
証人
(
菊地甚一
君) 勿論できると思います。
伊藤修
31
○
委員長
(
伊藤修
君) あなたの御
診断
では一ケ月とありますが。
菊地甚一
32
○
証人
(
菊地甚一
君) これは一ケ月というのは、甚だ正確を期したことじやありませんが、一ケ月くらい……
伊藤修
33
○
委員長
(
伊藤修
君) 一ケ月ぐらいの日を貸せば、そう憂慮すべき
状態
ではないということは言えるのですね。
菊地甚一
34
○
証人
(
菊地甚一
君) はい、言えます。まあ
持続睡眠
でもや
つて
見たならば、もつと或いは早く治るかも知れません。
持続睡眠
というのは、御
承知
かも知れませんが、強い
催眠剤
を使いまして夜畫ともうつらうつら眠らせて、そうして今までの
煩悶
というものを、
感情
を一切去らせる。或いは
間違つた考え
というものを忘れしめるような
療法
、つまり時間を多く眠らせる。それには
相当
強烈な
催眠剤
を常に時間的に次々と飲ます。ですからこれは医者の監視の下に行なわなければならんのです。それは
自宅
でもやれないことはありませんが、大体
入院
してやるのが本当であります。
伊藤修
35
○
委員長
(
伊藤修
君) 先程
伺つたの
では、現在でも大体
供述
し得る
程度
のもので、尚一ケ月ぐらい経
つて
やれば、
本人
の
健康状態
とも併せて良好であると、こういうふうに考えてよろしうございますか。
菊地甚一
36
○
証人
(
菊地甚一
君) そういうわけでございます。
伊藤修
37
○
委員長
(
伊藤修
君) 外に……
岡部常
38
○
委員外委員
(
岡部常
君) お伺いいたしたいのでありますが、今承
つた
ところだけだと、大まかに私ら感じたところでありますが、
平野
氏に限らず、誰でもが
刑事被告人
になりますと感ずるところが多いのじやないかと、こうまあ想豫するのでありますが、実際
刑事被告人
とな
つて
おる
人々
の中に、それと同様な場合が私は
相当
多いように考えられるのでありますが、どんな割合にありましようか。
菊地甚一
39
○
証人
(
菊地甚一
君) それは私も割合
といつて
も、正確の数は持ちませんが、
平野
さんの場合にもこれを考えなければいけないと思いますが、何せよこの
事件
と離れて、
既往
に
抑鬱症
と
診断
されたことがあり、又ここに
説明
申上げた
通り
、
本人
の
平常
の
氣質
が
抑鬱症
に罹る
性質
なんですね、それと体格もその
通り肥満
型であ
つて
、そうして何と申しますか、
運動
型じやない、そういう体の人は
氣質
が
純化性
というのと、体の方の
肥満
型というのと相一致しておるんですね、そういう人は
抑鬱症
、正しく言えば
躁鬱病
を起し易い。起すことに約束されておるのです。これは
学説
なんです。それに反して体のむしろ痩せた筋肉の発達した、いわゆる鬪志型と言
つて
おりますが、
運動
型のような人、それから
氣質
がむつつりした内氣の人、そうして強靱に
性質
を持
つて
おる人、こういう人は、
精神病
を起す場合には、
精神分裂症
を起すように約束されておる。こういうのが今の
学説
なんです。それですから
肥満
型であ
つて
、
平野
氏のような
感情
型といいますか、これは
学説
でいろいろなことを言
つて
おりますが、
ヨーロッパ
の言葉で言いますると、
チクロチミー
ということを、いろいろな名前で訳しておりますが、
チクロチミー
の人は
精神分裂症
を起すことはないのであります。それと同様に分裂型の人、これは
シゾチミー
というので、
シゾチミー
の人、而もその体が闘士型の人、
運動
型の人、こういう体を持
つて
おる人は抑
鬱状態
、抑
鬱病
は起さん。どつ
ちか
に続いておるのであります。これが今の
精神病
を起す
学説
にほぼ決
つて
おることなんです。ですから今の御
質問
のように
被告人
ともなれば、多くの者が
憂鬱状態
になるのは、これは
一般通念
なんですが、それと区別を多少しなければならん。
平野
さんの方には、曾ては
抑鬱症
を起した病歴があります。それから体のそういうタイプ、それと
氣質
において
チクロチミー
の
氣質
を持
つて
おるということがある以上、
一般
の場合とは
ちよ
つと区別して考えるのが普通でございます。
岡部常
40
○
委員外委員
(
岡部常
君) これは
平野
氏の場合がよいとか
惡い
とかいう問題は別といたしまして、その
程度
の
症状
で訴訟を延ばすとか、或いは
審理
ができないとかいうようなことになりますと、私はこれは
刑事事件一般
の
審理
ということに大変な
影響
のある大問題だと実は考えられるのです。今
証人
のお方から承わるところによりましても、今までそれに対して特別な
審理
の
処置
がとられておらないように想豫されるのでございますが、これに対しまして
ヨーロッパ
、或いは
アメリカ方面
では何かそういうふうな
症状
を呈した者に対して特別に
裁判
のときに、何か
処置
がとられておる例がありましようか、どうでしようか。これは
將來日本
の
刑事事件
の
審理
の上にも重大な
影響
があると私は考えるのでが、その点お願いいたします。
菊地甚一
41
○
証人
(
菊地甚一
君)
ちよ
つと、私それは知識として持
つて
おりませんが、私共ここに何しましたのは、
本人
がそういうふうに
苦悶
の
発作状態
になるという場合には、まあどつ
ちか
と言えば、や
つて
もやれないことはないかも知れないが、まあ時を貸してやるべきでないか、こういうような
意見
で、まあ二人で申合わしたわけで、まあ無理にや
つて
やれないわけはない、そんなふうな
状態
なんです。
伊藤修
42
○
委員長
(
伊藤修
君)
平野
氏のような
病氣
の場合に、
裁判所
が
審理
を仮に続行するとした場合に、
平野
氏の言うがごとく
相当病氣
が重くて、延いては人命にも関するというようなことになるでしようか。
菊地甚一
43
○
証人
(
菊地甚一
君) そんなことになりません。
伊藤修
44
○
委員長
(
伊藤修
君) そんなことはありませんか。又氣狂いにな
つて
行くとかいうことがあり得ますか。
菊地甚一
45
○
証人
(
菊地甚一
君) あの人の場合にはないようです。
本人
は非常な
負担
を感じておりますが、苦しいと言いますか、私共が
参つたの
は八月の七日でございまして、丁度六日に
公判
があ
つた
と思いますが、そのときのこと、非常に
疲れ
て厭な
氣持
にな
つた
、こういうことを言
つて
おりましたが、法廷で
自分
がそうな
つた
と言いますが、だけれども翌日の七日にはそういうふうな影は客観的には見られなか
つた
。
伊藤修
46
○
委員長
(
伊藤修
君) この前の二日の
裁判
か何かでは、尋問を拒否するのは、鬪爭をしてお
つて
苦しくな
つて脂汗
が出てお
つた
というようなことを言
つて
おりましたが、それはその
病状
が然らしむるのでしようか。その他精神的の
作用
なんでしようか。
菊地甚一
47
○
証人
(
菊地甚一
君) 実は私二日でしたか、その前の
公判
には傍聽しませんが、六日の日実は傍聽しておりましたが、元氣よく大いに声を大きくして、
自分
も苦しいのだから、健康になるまで延ばして呉れということを頻りと私共に要求しておりました。
伊藤修
48
○
委員長
(
伊藤修
君) 事案に対する
供述
は拒否されておるようですけれども、それ以外の
自分
の主張というものは殆んどおやりにな
つて
いらつしやいますからね。そういう点から見てもそう大して
供述
が
身体的故障
の
負担
となるようには考えられませんですか。
菊地甚一
49
○
証人
(
菊地甚一
君)
身体
的の
故障
の
負担
とは勿論なり得ません。
伊藤修
50
○
委員長
(
伊藤修
君)
供述
に答えたから
といつて
、
病氣
が亢進するというように考えなくてもよろしいですね。
菊地甚一
51
○
証人
(
菊地甚一
君) 体の方にはそう大して
影響
はありません。
大野幸一
52
○
委員外委員
(大野幸一君) 精神的の意欲というものと、
病状
の回復ということの関連性、例えば
自分
が
病氣
であると重く
診断
して貰いたいと、考えておる場合と、
自分
が
病氣
だと思われたくないという意味で
診断
を受ける場合とありますね。それから成るべく長い期間の
病氣
が
自己
のために利益だという場合があります。こういう場合に回復
状態
は長い方が、
自分
が
病氣
が長く続く方が
自分
の利益だというような場合があるのですが、そういう場合の
病氣
の回復
状態
はあるのでしようか、ないのでしようか。
菊地甚一
53
○
証人
(
菊地甚一
君) ございます。ございますが、單純な抑
鬱病
にはそれは余りないと思います。これはヒステリー
症状
の強い場合にはそうなります。
自分
は治りたくない、治りたいということが一面にあ
つて
も、片方に治りたくないというような場合には、治りが非常に惡うございます。併しこれは抑
鬱病
の場合には余り考えられないので、むしろ抑
鬱状態
に加えたヒステリー
症状
を持つような場合にはそういう場合があります。つまり治そうと思
つて
もなかなか治らないし、
本人
が一面、まあ妙な言い廻しですけれども、今のお言葉の
通り
意欲が、治りたくないというように向いておる場合には、
病氣
の
治療
というものは非常に困難であります。これは普通の
事件
の、普通の
被告人
の勾禁性現象という特別の現象でありまして、こういう場合にはよくあるのであります。殊にヒステリー人格から起
つたよう
な勾禁性現象の場合には、何とかして
自分
が治らないで、治らないままで
裁判
を受けたくないというようなことが
相当
強く働いております。これは治そうとした
つて
なかなか治るものじやありません。そういう場合はあり得ると思います。重ねで申上げますが、抑
鬱状態
の場合にはそう押し拡げてそれを判断するのは少し酷なように思います。
伊藤修
54
○
委員長
(
伊藤修
君) それではどうもお忙しいところを恐れ入りました。 來馬さん只今お聞きの
通り
でございますね、
病状
でございますが、先般の八月三日に出頭しなか
つた
ということについては正当の理由があるかないかという点に対しましては、どうも正当の理由があるというふうにも考えられるのですが、併しながら出頭しても
供述
ができないかというと、医学上においてはでき得るという御判断のようですけれども、
本人
としてはできない、こういう自覚の下に出頭しなか
つた
といことは正当の理由にならないでしようけれども、多少恕すべき点はあると思います。これだけを取上げて今ここで訴追するということはせずに、再び出頭を命じまして、そうして
宣誓
の上
供述
を命じて尚これを拒む場合には合せてこれをも附隨して訴追するということにしては
如何
でしようか。
來馬琢道
55
○來馬琢道君 私の実際において見たところによりますと、
本人
は何か
質問
が手酷しくな
つて
來たときに考え違いをして間違
つた
答えをするかも知れないという心配があ
つて
、まあこういうときに行かない方がよいという理由も
相当
あるものと思います。それから
平野
君を訪問して臨床尋問をするということにな
つた
という点について、家人が非常に心配して一言半句と雖も間違
つた
ことがあれば大きな問題になる虞れがあるというので、先ず我々にも会わせないようにしようとしたということを認められると思います。
本人
自身は或いは去る三日に出頭して、國会議員同士のことであるからざつくばらんに話をしたいという希望があ
つた
かも知れないけれども、家人がそれに対して阻止したようなことがないとも言えない。それらの状況を察して見ると、直ちにここで訴追するということは今
委員長
の言われたように必ずしも穏当でないと考えます。尚貸すに時を以てして
本人
の心持がよく答弁できると思うときに
審理
をするということで、我が司法
委員会
の任務は達成できると考えます。只今の
委員長
の御
意見
に対して賛成し、この
通り
に進行あらんことを希望します。
伊藤修
56
○
委員長
(
伊藤修
君) それでは更に改めて適当に定めまして出頭を命ずることにいたします。そうして
宣誓
の上
供述
して頂くことにいたしますが、若しその際出頭もせず又
宣誓
もせず又
供述
もしなか
つたよう
な場合には改めて御協議願
つて
然るべき手続を取ろうと思います。取敢えずさように決定いたしたいと思います。どうも有難うございました。ではさように決定いたします。 では本日はこれを以て散会いたします。 午後三時十九分散会 出席者は左の
通り
。
委員長
伊藤 修君 委員 來馬 琢道君 遠山 丙市君 松村眞一郎君
委員外委員
岡部 常君 大野 幸一君
証人
菊地
甚一
君