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1948-06-09 第2回国会 参議院 司法委員会 第38号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年六月九日(水曜日) ――
―――――――――――
本日の会議に付した
事件
○
刑事訴訟法
を改正する
法律案
(内閣 送付) ――
―――――――――――
午前十時四十三分開会
伊藤修
1
○
委員長
(
伊藤修
君) それではこれより
司法委員会
を開会いたします。本日は予備付託せられておるところの
刑事訴訟法
を改正する
法律案
を議題に供します。先ず
政府委員
の逐條の御
説明
をお願いいたします。第一編
総則
及び第一章を先ず御
説明
願いたいと思います。
國宗榮
2
○
政府委員
(
國宗榮
君)
改正刑事訴訟法案
につきまして、第一編第一章「
裁判所
の
管轄
」につきまして、逐條的な御
説明
を
簡單
に申上げたいと存じます。 先ず
刑事訴訟法
の
目次
でありますが、
目次
の点から申しますと、
現行刑訴
に比べまして、第二章は「
裁判所職員
ノ
除斥
、
忌避及回避
」と
現行刑事訴訟法
にはな
つて
おりましたが、本
改正法
におきましては、
回避
を
最高裁判所
の
規則
に讓ることにいたしましたので、この
回避
の点だけを二章の題目からこれを落しました。更に
現行刑訴
の第六章の「
書類
」、第七章の「
送達
」、これを
一つ
の章に集めまして、第六章「
書類
及び
送達
」といたしました。この二つにいたしましたが、これにつきましての
内容
の変更は余りございません。次に
現行刑訴
の第十章「
被告人訊問
」の
規定
を削除いたしました。そういたしまして、
改正案
におきましては、第十四章に「
証拠保全
」という
規定
を新たに設けました。更に
現行刑訴
の第十五章の「
通訳
」というところを、
改正法
におきましては、第十三章「
通訳
及び飜訳」と書き改めました。次には第二編でありますが、第二編の
現行刑訴
におきまする第三章「豫審」、これは削除いたしました。更に
現行刑訴
の第四章の「
公判
」の第一節「
公判準備
」並びに第二節「
公判手續
」を一緒にいたしまして、第二編第三章第一節といたしました。更に第二編中の第三章の第二節に「
証拠
」という
規定
を新たに設けました。次は第三編でありますが、第三編につきましては、
現行刑訴
と
変り
ない章を設けております。更に第四編の「大審院ノ
特別權限ニ屬スル訴訟手續
」という
現行法
の
規定
を削除いたしました。更に第九編の「私訴」を落しまして、
あと現行法通り
の編別に從
つて
おります。 次に第一編の
総則
から申上げますが、第一編
総則
の第
一條
「この
法律
は、
刑事事件
につき、公共の福祉の
維持
と個人の
基本的人権
の保障とを全うしつつ、事案の
眞相
を明らかにし、
刑罰法令
を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」この第
一條
を新たに設けました。この
趣旨
につきましては、先きに
提案理由
におきまして詳細御
説明
申上げた
通り
でありまして、公共の福祉の
維持
と、個人の
基本的人権
の保障とを調和しつつ、而も
刑事事案
の
眞相
を明らかにするということをこの
法律
の目的とするということを明らかに
規定
いたしたのであります。 次は第一章「
裁判所
の
管轄
」であります。第一章全般を通じまして、
現行刑訴
と異
つて
おりますところは、第十九條に新たな
規定
を設けたのでありまするが、その他におきましては、
現行刑訴
の
内容
を踏襲いたしております。ただ併し種々なる点におきまして、
裁判所
の
規則
に讓るのを妥当と考えましたものはこれを
規則
に讓りましたので、
現行刑訴
とその点において多少の違いが生じております。 第
二條
は御承知の
通り
の、
裁判所
の土地の
管轄
の
規定
であります。これは
現行刑訴
と
変つて
おりません。第三條は「
事物管轄
を異にする
数個
の
事件
が関連するときは、
上級
の
裁判所
は、併せてこれを
管轄
することができる。」この三條の規行も
現行刑訴
と
変つて
いないのであります。ただここに「
高等裁判所
の
特別権限
に属する
事件
と他の
事件
とが関連するときは、
高等裁判所
は、併せてこれを
管轄
することができる。」という第二項の
規定
を設けてありますが、この
高等裁判所
の
特別権限
に属する
事件
と申しますのは、大体
独占禁止法
によりまして
高等裁判所
の
特別権限
に属せしめてある
事件
があるのでありまして、この
事件
と他の
事件
とが関連する場合におきましては、
高等裁判所
は併せてこれを
管轄
することができるという
規定
を設けております。第四條も、
事物管轄
を異にします
数個
の
関連事件
が
上級
の
裁判所
に係属する場合におきまして、これを併せて
審判
する必要がないものがあるときは、
上級
の
裁判所
は、
決定
で
管轄権
を有する
下級
の
裁判所
にこれを
移送
することができる。この第四條も
現行刑訴
の
趣旨
と
変つて
おりません。それから第
五條
でありますが、第
五條
は「
数個
の
関連事件
が各別に
上級
の
裁判所
及び
下級
の
裁判所
に係属するときは、
事物管轄
にかかわらず、
上級
の
裁判所
は、
決定
で
下級
の
裁判所
の
管轄
に属する
事件
を併せて
審判
することができる。」、これも
現行刑訴
と
変つて
いないのであります。これにつきまして第三條の二項と同じように、
高等裁判所
の
特別権限
に属する
事件
が
高等裁判所
に係属しておりまして、これと関連する
事件
の
関係
におきまして、第一項との
関係
においての
規定
を第二項に設けておるわけであります。第六條は、
土地管轄
を異にする
数個
の
事件
が関連しますときは、一個の
事件
につきまして
管轄権
を有する
裁判所
は、併せて他の
事件
を
管轄
することができる。但し、他の
法律
の
規定
により特定の
裁判所
の
管轄
に属する
事件
は、これを
管轄
することができない。これも
現行刑訴
と
変つて
はおりませんが、この場合但書の「他の
法律
の
規定
」と申しますのは、この場合におきましては
独占禁止法等
を予想いたしまして、「他の
法律
の
規定
により」ということを、ここに書いたわけでございます。第
七條
でありますが、第
七條
は、
土地管轄
を異にする
数個
の
関連事件
が同一
裁判所
に係属する場合におきまして、併せて
審判
することを必要としないものがあるときは、その
裁判所
は、
決定
で
管轄権
を有する他の
裁判所
にこれを
移送
することができる。この
規定
も
現行刑訴
と
変つて
おりません。次には第
八條
でありますが、「
数個
の
関連事件
が各別に
事物管轄
を同じくする
数個
の
裁判所
に係属するときは、各
裁判所
は、
檢察官
又は
被告人
の
請求
により、
決定
でこれを一の
裁判所
に併合することができる。」、こういう
規定
にな
つて
おりますが、
趣旨
においては
現行刑訴
と
変つて
おりません。ただこの場合におきまして、
現行刑訴
におきましては、その
七條
でありますが、「
事物管轄
ヲ同
シクスル數個
ノ
牽連事件
各
別ニ數個
ノ
裁判所
ノ
公判ニ繋屬スルトキハ
各
裁判所ハ檢事
ノ
請求ニ因リ
」ということで、
檢事
の
請求
によりまして、
決定
を以てこれを
一つ
の
裁判所
に併合することができる
規定
にな
つて
おりますが、
改正案
の第
八條
におきましては
檢察官
と
被告人
との両方の立場を大体対等に見ております
関係
上、ここに「
被告人
の
請求
により」ということで、
被告人
の
請求
によ
つて
も
一つ
の
裁判所
に併合することができる
趣旨
を
規定
いたしております。この点だけ
現行刑訴
と多少
変つて
おると言えると思うのであります。次には第九條でありますが、「
数個
の
事件
は、左の場合に関連するものとする。」、いわゆる
関連事件
というのは如何なるものであるかということを、ここに明らかにいたしておるのでありますが、これも
現行刑訴
と大体
変り
はございません。ただ併し
現行刑訴
の第
八條
に
規定
しておりますが、「數人同時
ニ同一
ノ
場所ニ於テ
各
別ニ罪ヲ犯シタルトキ
」と、
現行刑訴
第
八條
第一項の四号には、かような
規定
がありますけれども、これを
改正法
におきましては削除いたしております。その
趣旨
はこの第四号は、大体
同時犯
のようなものが考えられるのでありますけれども、非常にこういうものを
関連事件
として扱う
必要性
が少いのじやないかという考えから、この第四号は落しました。外に深い
趣旨
はございません。次は第十條でありますが、「
同一事件
が
事物管轄
を異にする
数個
の
裁判所
に係属するときは、
上級
の
裁判所
がこれを
審判
する。」、「
上級
の
裁判所
は、
檢察官
又は
被告人
の
請求
により、
決定
で
管轄権
を有する
下級
の
裁判所
にその
事件
を
審判
させることができる。」かようにいたしましたが、これも先程第
八條
のところで申上げましたように、
現行刑訴
の第二項におきましては、單に「
檢事
ノ
請求ニ因リ決定
ヲ
以テ管轄権
ヲ有
スル下級裁判所ヲシテ某
ノ
事件
ヲ
審判セシムルコトヲ得
」とありますのを、
被告人
の
請求
によ
つて
も、これを
下級
の
裁判所
にその
事件
を
審判
させることができるようにいたしました。この点だけ
現行刑訴
と違
つて
おるところであります。次は第十
一條
でありますが、「
同一事件
が
事物管轄
を同じくする
数個
の
裁判所
に係属するときは、最初に公訴を受けた
裁判所
が、これを
審判
する。」これは
現行刑訴
の第九條でありますが、これと
変つて
おりません。ただ單に字の問題でありますけれども、
現行刑訴
におきましては、予審を認めておりますから、「
豫審又ハ公判ニ緊屬スル
」とありますけれども、
内容
におきましては何らの変化はございません。それからこの第十
一條
の二項も第
八條
、第十條二項と同様に「
被告人
の
請求
により、」ということを入れまして、その点だけ
現行刑訴
を改めております。次は第十
二條
でありますが、「
裁判所
は、事実発見のため必要があるときは、
管轄区域
以外で職務を行うことができる。」この
規定
は
現行刑訴
と全く
変つて
おりません。次は第十三條であります。「
訴訟手続
は、
管轄違
の
理由
によ
つて
は、その効力を失わない。」、この
規定
も
現行刑訴
と何らの
変り
はないのであります。第十四條でありますが、「
裁判所
は、
管轄権
を有しないときでも、急速を要する場合には、事実発見のため必要な処分をすることができる。」この
規定
も
現行刑訴
と少しも
変つて
おりません。次は第十
五條
でありますが、「
檢察官
、左の場合には、
関係
のある第一
審裁判所
に共通する
直近上級
の
裁判所
に
管轄指定
の
請求
をしなければならない。一
裁判所
の
管轄区域
が明らかでないため
管轄裁判所
が定まらないとき。二
管轄違
を言い渡した
裁判
が
確定
した
事件
について他に
管轄裁判所
がないとき。」これも
現行刑訴
と
変り
はありません。次は第十六條でありますが、「
法律
による
管轄裁判所
がないとき、又はこれを知ることができないときは、
檢事総長
は、
最高裁判所
に
管轄指定
の
請求
をしなければならない。」かように
規定
をいたしましたが、これも
現行刑訴
とは少しも
変つて
おりません。次は第十
七條
でありますが、「
檢察官
は、左の場合には、
直近上級
の
裁判所
に
管轄移轉
の
請求
をしなければならない。」といたしまして、その一号が「
管轄裁判所
が
法律
上の
理由
又は特別の
事情
により
裁判権
を行うことができないとき。」、二号は「
地方
の
民心
、
訴訟
の
状況
その他の
事情
により
裁判
の公平を
維持
することができない虞があるとき。」、二項におきまして「前項各号の場合は
被告人
も
管轄移轉
の
請求
をすることができる。」この二項の
規定
は、先程
八條
以來申上げました観点からいたしまして、
被告人
も
管轄移轉
の
請求
をここに認めておりますが、これは
現行刑訴
と
変つて
おりません。ただ併し一号二号の
内容
におきまして多少
現行刑訴
と
変つた点
があるのであります。
現行刑訴
によりまするというと、第十六條の一号におきまして、「
管轄裁判所
又
ハ裁判所構成
第十三條第二項ノ
規定
ニ依り定
メタル裁判所ニ於テ法律
上ノ
理由
又ハ特別ノ
事情ニ因リ裁判権
ヲ
行フコト能ハサルトキ
」、それから二号におきまして、「
被告人
ノ地位、
地方
ノ
民心
、
訴訟
ノ
状況某
ノ他ノ
事情ニ因リ裁判
ノ公平ヲ
維持スルコト能ハサルトキ
」と、こうありますけれども、
内容
におきましては
変つて
いないのであります。そこで一号の「
管轄裁判所
が
法律
上の
理由
」と申しまするのは、これは
現行刑訴
にもある
通り
でありますが、
除斥
、或いは
回避等
によりまして、
管轄裁判所
の
裁判権
を行うことができないような場合、又「特別の
事情
」と申しますのは、
疾病等
によりましてやはり同様な事態が生じた場合を言うものと考えております。二号は大体「
地方
の
民心
、
訴訟
の
状況
その他の
事情
」、「その他の
事情
」と申しますのは、これは
被告人
の側におきまするところの
事情等
がこれに入ると思います。そういうような点につきましては、第十
七條
は
現行刑訴
とは
変つて
おりません。多少書き方は
変つて
おりますけれども、全体におきましては
変つて
いる点はございません。次は第十
八條
でありますが、「犯罪の性質、
地方
の
民心
その他の
事情
により
管轄裁判所
が
審判
をするときは公安を害する虞があると認める場合には、
檢事総長
は、
最高裁判所
に
管轄移轉
の
請求
をしなければならない。」この第十
八條
も
現行刑訴
の第十
七條
に基きまして、
内容
においては
変つて
おりません。第十九條でありますが、これは「
裁判所
は適当と認めるときは、
檢察官
若しくは
被告人
の
請求
により又は
職権
で、
決定
を以てその
管轄
に属する
事件
を
事物管轄
を同じくする他の
管轄裁判所
に
移送
することができる。」、「
移送
の
決定
は、
被告事件
につき
証拠調
を開始した後は、これをすることができない。」、この第十九條は
現行刑訴
にはない
規定
でありまして、
裁判所
が適当と認めるときは、主としてこれは
被告人
の
利益
のためになる場合を予想しているのでありますが、
裁判所
が適当と認めるときは、
檢察官
或いは
被告人
の
請求
によりまして、又は
職権
で以て
管轄
に属しております
事件
を
事物管轄
を同じくする他の
管轄裁判所
に
移送
する
規定
の問題であります。これは例えば、例を以て申しまするというと、
被告人
がたまたま
東京
に來ておりまして、元來郷里は大阪であります場合に、そこで以て
東京
の
裁判所
で起訴される、ところが、
被告人
のためにはいろいろな
関係
からみますと、
証人
その他の
関係等
におきまして、大阪で調べた方が妥当と思われる、こういう場合には
被告人
の
請求
によりましては
移送
することができる。或いは
檢察官
におきましても同様の
事情
がある場合には、
檢察官
の
請求
によ
つて
これを
移送
することができる。又
裁判所
みずからそう認める場合には
裁判所
もこれを
移送
することができる。かように廣く
裁判所
がどこで
行なつ
たらよろしいかということを
判断
いたしますのに、適当と認められる場合におきましては、廣くこの
移送
が
事物管轄
を同じくする場合におきましてはできるという
規定
にしております。他の
管轄裁判所
でありますから、勿論
管轄権
を有しなければ直ぐに
移送
はできないのであります。それから十九條の三項でありますが、「
移送
の
決定
又は
移送
の
請求
を却下する
決定
に対しては、その
決定
により著しく
利益
を害される場合に限り、その事由を疎明して、
即時抗告
をすることができる。」、これは
被告人
のためには沢山
証人
もおり、
弁護人
もおり、
被告人
のために適当な
親族関係
があるというのに拘わらず、
東京
の
裁判所
でや
つた
方が適当と認める場合にこれを
移送
する場合、さような場合においては、
被告人
はその
決定
により著しく
利益
を害されるという事実を明かにいたしまして、
即時抗告
ができろという
規定
にな
つて
おります。大体
管轄
につきましては極く
簡單
でございますが、以上申上げました
通り
であります。
伊藤修
3
○
委員長
(
伊藤修
君) 以上第一章について御
質疑
がありましたら、この際御
質疑
を願います。
松井道夫
4
○
松井道夫
君 十九條の二項でありますが、「
移送
の
決定
は、
被告事件
につき
証拠調
を開始した後は、これをすることができない。」とありますが、
証拠調
を開始した後ということにした
理由
を伺いたいと思います。
國宗榮
5
○
政府委員
(
國宗榮
君)
被告事件
につきまして
証拠調
を開始いたします場合におきましては、すでに一方の
法益防禦
の方法が起
つて
参りますので、
証拠調
まで入
つた
ならば、これは他の
裁判所
に
移送
するということは妥当でない、かように
考え
ましたので、
証拠調
を開始した後は
移送
することはできないと、かようにいたしました。
鬼丸義齊
6
○
鬼丸義齊
君 第十九條の
移送
の
決定
又は
移送
の
請求
を却下する
決定
に対しまして
抗告
が許されております。
移送
の
決定
に対しては一
裁判所
の
決定
は他の
裁判所
の
決定
をやはり覊束するのでありますか。或いは又他の
裁判所
の方から
移送決定
に対して異議を言うことを許されないのであるか。若しそれとするならば、
一つ
の
裁判所
が
決定
を以て
管轄
を指定するようなことになりますが、その点は
差支
ないのかどうかお尋ねしたい。もつと分り易く申しますと、甲の
裁判所
で
乙裁判所
に
移送
の
決定
になります。その
決定
は
乙裁判所
を覊束することになります。いわゆる
甲裁判所
が
乙裁判所
に対してその
管轄権
を指定することになります。その場合
乙裁判所
の方はその
決定
に無
條件
に從わなければならんのか。その点について、
裁判所相互
間における
関係
において
支障
がないか伺いたい。
國宗榮
7
○
政府委員
(
國宗榮
君)
改正案
の十九條におきましては、
民事訴訟法
のごとく、
移送
の
決定
が、
移送
を受けた
裁判所
を覊束するという
規定
は設けませんでした。從いましてこの
改正案
第十九條の第一項による
移送
の
決定
は、必ずしも
移送
を受けた
裁判所
を覊束するという建前にはな
つて
おりません。
從つて移送
を受けた
裁判所
が、
事情
によりましては更に
移送
をするということもなし得るわけでありまするが、その辺は要するに
裁判所
の健全な常識に待ちまして、適当な裁決を図りたい、このように
考え
ておるわけであります。
鬼丸義齊
8
○
鬼丸義齊
君 そうしますと、
法律
で定めまする場合に、その
帰趨
が明確でないというふうな不
確定
の状態を予想されますので、むしろその場合に、
移送
を受けたる
裁判所
はそれに対して覊束を受けるというふうなことを
法律
で以て定めるわけには参りませんか。
相互
に
移送
し合いしていると、結局
帰趨
は決まらない。私は
民事訴訟法
の
規定
のことは存じませんが、何だかその点について大変不
確定
の
規定
を作るような氣がいたしまするが、
政府
の御意見はどうでござりましようか。それを伺いたい。
岡咲恕一
9
○
政府委員
(
岡咲恕
一君)
移送
の
決定
がありました場合に、
当事者
であります
檢事
官及び
被告人側
が不服がある場合には、第三項によりまして
即時抗告
をいたしますわけですが、
即時抗告
をいたしますと、
移送
の
決定
の
確定力
を妨げまするので、
移送
の
決定
はその際には
確定
いたしませんで、
上級審
の
判断
によ
つて
、その
移送
の
決定
が妥当であるかどうかという
判断
をば受けて、
上級審
の
判断
で決まるということになるわけであります。それで
当事者
が不服がございませんで、
移送
の
決定
がそのまま
確定
いたしました場合に、更に
移送
を受けた
裁判所
が再
移送
をして、俗に申しますように、キヤッチ・ボールにならないかという御心配の点御尤もと
考え
まするが、要するに最も妥当な
裁判所
、
被告人
の
便宜
のため或いは
証人側
の
便宜
のために最も適当な
裁判所
で第一審の
公判
をするというのが最も適当であるという
考え方
によりまして、
法律
といたしましては、
民事訴訟法
のように一回の
裁判所
の
移送
の
決定
によ
つて他
の
裁判所
を覊束してしまうというところまで参りませんでした。併しながら
移送
を受けた
裁判所
が
証拠調
に入ります場合には、第二項によりまして再
移送
ということは
職権
によ
つて
もできないことになりますので、要するに
証拠調
に入ります以前の
管轄
をどこでやるかという点に、可なり
裁判所
に
自由裁量
を與えたわけであります。
鬼丸義齊
10
○
鬼丸義齊
君 「
裁判所
は、適当と認めるとき」ということにな
つて
おりまするので、
移送
に対して何らか
一つ枠
を定める必要がありはしないか。余りに
廣汎
に失しておりまする結果としては、或いはときに
移送
に次ぐに
移送
ということで以て、最も大切なる
事物管轄
というものが不
確定
の
地位
に置かれますことは、
訴訟
の進行上において大なる
支障
を來しはしないか。でありますから、何が適当である、どういう場合にやるということについて、この際
一つ
の枠を決めたならば、その弊害を除くことができはしないか。かように
考え
るのであります。
岡咲恕一
11
○
政府委員
(
岡咲恕
一君) 一点御注意願いたいのは、十九條一項によりまする
移送
は、第
二條
の
規定
によりまして
土地管轄
を持
つて
おりまする
裁判所同士
の
移送
でありまするので、或いは本人の
犯罪地
或いは
住所地
、
被告人
の
居所地
或いは
現在地等
に
移送
するということになりますから、自由奔放にどこの
裁判所
へも
移送
するということは
考え
ておらないのであります。
松井道夫
12
○
松井道夫
君 先程質問いたしました十九條の二項についてでありますが、
忌避
につきましては二十
二條
におきまして「
事件
について
請求
又は
陳述
をした後には、」云々……「
裁判官
を
忌避
することはできない。」ということが書いてあります。それで
移送
の
決定
の場合は「
証拠調
を開始した後は、これをすることができない。」というふうにな
つて
おります。勿論
移送
の
決定
と
忌避
とはこれを同日に論ずることはできないかも知れませんが、併し一面似
通つた
場合もあると存ずるのであります。
移送
の
決定
については「
証拠調
を開始した後は、これをすることができない。」、
忌避
につきましては、
請求
又は
陳述
をした後にこれをすることはできないというふうに区別をする
理由
がどこにあるか。御
説明
を願いたい。
岡咲恕一
13
○
政府委員
(
岡咲恕
一君) 最前十九條二項の立法の
趣旨
についてお尋ねがございまして、更に十九條二項と二十
二條本文
との
関係
についての御質問でございまするが、十九條二項については二百九十
一條
及び二百九十
二條
を御覽願いたいのでありますが、
改正案
の
考え方
といたしましては、二百九十
一條
第二項の後段で、
檢察官
が先ず
起訴状
を朗読いたしまして、その次に
裁判長
が
被告人
に默祕権その他の
権利
を保護するため必要な事項を告げました後に、
被告人
及び
弁護人
に対してその
被告事件
について
陳述
する
機会
を與えよ、こうな
つて
おりますが、この「
陳述
する
機会
」と申しまするのは、この
改正案
の
考え方
といたしましては、或いは
起訴状
の不備を攻撃する、或いは
管轄等
につきまして自分の主張を述べるという
意味
を含ましておりますので、從來のように單に控訴事実についての答弁というだけを
考え
ておらないのであります。それよりももつと積極的な
意味
を持たせておりまして、ここで
本案
以前の爭を
檢察官
及び
被告人
にさせる、こういう
考え方
を採
つて
おるわけであります。それでその爭が
收まり
まして、後で二百九十
二條
で
本案
の
証拠調
に入
つて
行くと、こういう建て方を採
つて
おりまするので、それと歩調を合せまして、十九條二項は、
証拠調
を開始した後はできない。で、
管轄等
の爭はその前にやる、こういう建て方を採
つた
わけであります。二十
二條
の
本文
の方は、それよりももう一歩前の
段階
を
考え
ておりまして、要するに今
被告人
が法廷に、この
被告人
がその
受訴裁判所
において
審判
を受けることに決まりました場合に、その
受訴裁判所
を構成いたしましたる
裁判官
を
忌避
するかどうかという問題が二十
二條
でありまするので、これは二百九十
一條
の
段階
に入らない前に、つまり言い換えますれば、
事件
について
請求
又は
陳述
をする以前に、この
裁判官
を
忌避
するかどうかということを決めて貰う。で一應その
受訴裁判所
を構成しておりまする
裁判官
の面前で、その
事件
について
審判
を受けるという態度を表明した以上、言い換えれば、
事件
について
請求
、
陳述
をやりました以上は、もう
忌避
できないという建て方にいたしたわけであります。
伊藤修
14
○
委員長
(
伊藤修
君) これは当然のことかも分りませんが、
被告事件
について
証拠調
を開始した後というのは、
証拠調
前は無論含まれないのですね。
岡咲恕一
15
○
政府委員
(
岡咲恕
一君) 含んでおりません。
中村正雄
16
○
中村正雄
君 この十九條は新たにできた
條項
なんですが、現在の
刑事訴訟法
の
関係
で、こういう
條項
を設けなければいけないという不便が現実に起
つた
事例
がありますか。
國宗榮
17
○
政府委員
(
國宗榮
君) 特にかような
條件
を設けなければ、これまでの
訴訟
において非常に
支障
を來したことを救うことができないと、こういう顯著な
事例
というものは今日まで実は起
つた
ことはないのであります。併し全体の
訴訟法
の建て方といたしまして、
被告人
の正当なる
権限
、
訴訟
におきまするところの正当なる
権利
の
行使等
を
考え
まして、又
裁判所
も
檢察官
並びに
被告人
の双方の権益を十分に
考え
る、こういうまあ
観点
に立ちますと、この十九條を設けた方がよろしいのではないかと、こういう
考え
から新たにこの第十九條を設けたのであります。
中村正雄
18
○
中村正雄
君 一應
事件
をどこの
裁判所
の
管轄
に属させるべきかということは、
檢事
がどこの
裁判所
に起訴するかということによ
つて
第一に決まるわけでありますが、そういたしますと、この
條文
によりますと、
檢察官
も
移送
の
請求者
にな
つて
おりますが、こういう
檢察官
が
移送
の
請求
をするということと、
檢事
の方が起訴するという場合に、どこの
裁判所
が適当かどうか、それは
土地管轄
の
関係
ではありますが、何か齟齬するように思えるのですが、この点何か別な
理由
で。
檢事
も
請求
の中に入れられておるわけですか。
國宗榮
19
○
政府委員
(
國宗榮
君) 大体お説の
通り
檢察官
が適当な
裁判所
と認める所で、
管轄権
のある
裁判所
に公訴を提起いたすのでありまするけれども、時によりましては
檢察官
がここが適当だと思
つて
起訴したときにおきまして、
証人
取調その他について、他の
裁判所
に
移送
した方が尚適当であるということが
考え
られないこともないのでありますので、「
檢察官
の
請求
」ということをここに入れて置いたわけであります。
伊藤修
20
○
委員長
(
伊藤修
君) 他に御
質疑
がなければ、進行いたしまして、第二章
裁判所職員
の
除斥
及び
忌避
を、
政府委員
から
説明
願いたいと思います。
國宗榮
21
○
政府委員
(
國宗榮
君) 第二章「
裁判所職員
の
除斥
及び
忌避
」でありますが、この章におきましては、概括的に申しますと、
忌避
の
規定
を一切
裁判所
の
規則
に讓ることにいたしました点が大きな違いであろうと存じます。
改正案
におきましては、第二十條におきまして、
裁判官
の
除斥
の場合の
規定
を設けました。第七号までございますけれども、このうち第七号が
現行刑訴
とは変
つた
規定
を設けておるのでありまして、この第七号におきましては、第二百六十六條第二号の
決定
、この
規定
は、人権蹂躪の
事件
につきまして不起訴処分のあ
つた
場合に、被害者から
裁判所
の方に不服の申立をいたしまして、
裁判所
がその不服を
審判
することに
決定
いたしました場合に、その取調に
関係
した
裁判官
が、この第二百六十六條の第二号の
決定
をした場合、それから
現行刑訴
の場合におきましては、略式命令に関與いたしました
裁判官
は、解釈上
除斥
の
規定
に入らないことにな
つて
おりましたが、これを新たに略式命令に関與いたしました
裁判官
も
除斥
の
理由
があることにいたしました。次に前審の
裁判
、それから「第三百九十
八條
乃至第四百條、第四百十三條若しくは第四百十三條の
規定
により差戻し、」云云とありますが、これは控訴審或いは上告審におきましての差し戻し若しくは
移送
の場合でありまして、その場合における原判決又はこれらの
裁判
の基礎と
なつ
た取調に関與した
裁判官
は
除斥
されることにいたしたのであります。この第七号をかように改めましたのは、大体
改正案
が、公訴提起の際に、
起訴状
だけで公訴提起をいたしまして、
裁判
の
審判
に当りまして、
裁判官
に予断を抱かせない
趣旨
を徹底さしておりますので、それにも大体照應いたしまして、第七号をかように改めたのであります。次は第二十
一條
でありますが、これは大体
現行法
と
変つて
はおりませんです。それから第二十
二條
でありますが、「
事件
について
請求
又は
陳述
をした後には、不公平な
裁判
をする虞があることを
理由
として
裁判官
を
忌避
することはできない。但し、
忌避
の原因があることを知らなか
つた
とき、又は
忌避
の原因がその後に生じたときは、この限りでない。」、この点につきましては、只今岡咲
政府委員
からお話を申上げましたが、「
請求
又は
陳述
をした後」というふうにいたしまして、大体
現行刑訴
とその
趣旨
は
変つて
いないのであります。第二十三條、「会議体の構成員である
裁判官
が
忌避
されたときは、その
裁判官
所属の
裁判所
が、
決定
をしなければならない。この場合においてその
裁判所
が
地方
裁判所
であるときは、会議体で
決定
をしなければならない。」、「
地方
裁判所
の一人の
裁判官
が
忌避
されたときはその
裁判官
所属の
裁判所
が、簡易
裁判所
の
裁判官
が
忌避
されたときは簡轄
地方
裁判所
が、会議体で
決定
をしなければならない。但し、
忌避
された
裁判官
が
忌避
の申立を
理由
があるものとするときは、その
決定
があ
つた
ものとみなす。」、以下三項四項とありますが、これらはいずれも
趣旨
におきまして
現行刑訴
と
変つて
はおりません。それから第二十四條でありますが、この
規定
も
訴訟
遅延を
目的
とした明らかな
忌避
の申立は、これは却下しなければならない。そうしてこの場合におきましては、
忌避
を申立てられました
裁判官
が、この却下
決定
に関與して
差支
ないことが
規定
してあります。これは
現行刑訴
とは
変り
はないのであります。第二十
五條
は、
忌避
の申立を却下する
決定
に対します不服の申立でありまして、
現行刑訴
と同様に
即時抗告
を認めております。第二十六條は
裁判所
書記に関しまする
忌避
の
規定
であります。これは当然に第二十條の七号の場合を除きまして、その他の場合に
除斥
の事由によることを明らかにしております。この二十六條の
規定
も
趣旨
におきまして
現行法
刑訴と変
つた
ところはございません。
伊藤修
22
○
委員長
(
伊藤修
君) 「第三章
訴訟
能力」をお願いします。
國宗榮
23
○
政府委員
(
國宗榮
君) 「第三章
訴訟
能力」でありますが、これも全体におきまして
現行刑訴
と
変つた点
はないのでありますが、第二十
七條
は、
被告人
又は被疑者が法人であるときは、その代表者が、
訴訟
行爲についてこれを代表する。代表者が数人ある場合におきましても、
訴訟
行爲については各自がこれを代表する。法人の
訴訟
能力を明らかに認めておる
規定
であります。第二十
八條
でありますが、これは刑法の第三十九條乃至第四十
一條
の
規定
を適用しない罪に当る
事件
につきましては、
被告人
又は被疑者が意思能力を有しないときは、その法定代理人が、
訴訟
行爲についてこれを代理する。こういう
規定
でありまして、この「刑法の第三十九條乃至四十
一條
の
規定
を適用しない罪」と申しますのは、只今非常に少くな
つて
おりますが、税法等にこれを散見いたすのであります。こういう罪につきましては、これは法定代理人が
訴訟
行爲についてこれを代理する
規定
を設けております。これも
現行刑訴
とは
変つて
おりません。第二十九條は、前のような
二條
の
規定
によりましても代理する者がない場合に、
檢察官
の
請求
によりまして、又は
裁判所
の
職権
で特別代理人を選任しなければならない
規定
を設けております。ここでちよつと違いますのは、第二項の
規定
でありますが、「被疑者を代表し、又は代理する者がない場合において、
檢察官
、司法警察員又は利害
関係
人の
請求
があ
つた
ときも、前項と同様である。」、こういう
規定
を設けまして、被疑者の
訴訟
行為を代理する者の場合を
規定
いたしております。被疑者はこの
弁護人
選任の件、或いは今回の
改正法
におきましては被疑者が
訴訟
行爲を遂行する場合が
規定
してありますが、その場合におきまするところの第二十
七條
、二十
八條
に該当するような場合におきまして被疑者を代表する者を
規定
する
規定
をここにおいたわけであります。この第三項はこれはただ「被疑者を代表し」という点が
現行刑訴
と
変つて
おる点でありまして、あとは
現行刑訴
そのままの
規定
でございます。以上「
訴訟
能力」について申上げました。
伊藤修
24
○
委員長
(
伊藤修
君) 以上第二章、第三章に対して、御
質疑
がありましたら御申出を願います。
鬼丸義齊
25
○
鬼丸義齊
君 先だ
つて
提案理由
説明
のときお願いして置きました、これまでの
忌避
の取扱についての実績調査でありますが、どんなふうにな
つて
おりましようか。
國宗榮
26
○
政府委員
(
國宗榮
君) その点につきまして早速統計を調査いたしましたが、統計が
忌避
だけの統計はございません。外のものと一緒にした数にな
つて
おりますので、今それを分るだけ整理したいと努力しております。それから尚その際
委員長
から
回避
の御
請求
もございました。それに関しましては全然統計がございませんので、どうも御希望に副い難いと思います。
鬼丸義齊
27
○
鬼丸義齊
君 私の承知しておりまする範囲においては、從來もやはり同樣な
忌避
或いは
除斥
とか
回避
とかいう
規定
につきまして
規定
がありました。
忌避
の申立については相当の数のものがあ
つた
ものだと記憶しております。然るに
現行刑事訴訟法
が施行されまして以來、私は寡聞にして
忌避
の申立が
裁判所
において容れられたという先例は未だ曾て一件もないと承知しております。若しそれそういうことであるとするならば、この際最もこの
裁判
を公正に、信用をいやが上にも高めて行かなければならない
裁判
において、こうした空文的な
規定
を作
つて
置いて、それでよいのであろうかどうか。当然
政府
において
改正法
案を研究するにつきましては、立案に当
つて
いろいろその点も考慮に入れたであろうと思いまするが、何らかの方法において、從來の先例を考慮に入れて、少くともそうしたような我田引水的のようなことに終らないように、制度の上においてする必要がありはしないかと、かように思いまするが、
政府
はどういうふうにお
考え
を持
つて
おるかをこの際伺いたいと思います。
國宗榮
28
○
政府委員
(
國宗榮
君) 御指摘のように、
忌避
につきまして、
忌避
の申立が成立したということは私は実はあ
つた
かどうかにつきまして甚だ疑問を持
つて
おります。併し
忌避
の申立があ
つた
ことは非常に多か
つた
ということを承知しておるのでありまして、これは仮にこの
裁判所
の方におきまして、みずからこの
忌避
をされる
理由
がない、又客観的にそう思うと
考え
ておりました場合にも、
訴訟
関係
人から申しますと、
忌避
すべき
理由
があろうと思うのであります。そういうことにやはり
訴訟
関係
人の十分なる
裁判所
に対する意見を開陳する方法を存置して置くことは最も必要であろうと存じまするし、又同時にこの
裁判所
の公正確保の
意味
におきまして、この際
除斥
並びに
忌避
の
規定
というものは、
訴訟法
上必要であると
考え
ておるのであります。ただ併し
現行刑訴
にもありますように、又本
改正案
もこれを採入れましたが、
改正案
の第二十四條におきまする
訴訟
を遅延させる
目的
のみでなされたことの明かな
忌避
の申立ということは、
決定
で却下しなければならない、この
規定
でございますが、この
規定
の運用が相当に
忌避
の問題を、或いは
裁判所
の一方的な
判断
のみに委ねられる虞があるようにも
考え
られるのであります。併し
訴訟法
全体から申しますると、先程も申しましたように、
忌避
につきましての
忌避
申立並びにその結果につきましての十分な統計がございませんので、甚だ遺憾でございますが、それに即應したような改め方というものを、甚だ忽忙の際でございましたので、
考え
ることはできませんでしたけれども、併しその制度というものは、この
訴訟
関係
人のためにも、是非存置して置かなければならない。で、今後の運用におきましては、尚一層これが
改正案
の
趣旨
といたします点から
考え
ましても、有効に十分に運用しなければならんと、かように
考え
ますので、本法においては、大体
現行法
をそのまま踏襲をいたしまして、ここに存置した次第であります。
伊藤修
29
○
委員長
(
伊藤修
君) ちよつと速記を止めて。 〔速記中止〕
伊藤修
30
○
委員長
(
伊藤修
君) それでは速記を始めて。他に御
質疑
ありますか。今の点は御明確に
なつ
たと思いますが、よろしうございますか、鬼丸委員。
鬼丸義齊
31
○
鬼丸義齊
君
裁判官
の
忌避
に対しまする問題については殆んどこうした
規定
がありますに拘わらず、從來空文化されておりまする謙いがあるので、この際そういうように状態に置きますることは、やがて司法権の一般的信用を傷つけるの虞が多分にありますので、法案改正のときに当
つて
、特にこの点を、
政府
の方において、この
規定
に励行が的確に実行されまするようなふうなことにおいて、尚一段の
一つ
御研究をお願いして置きたい。
國宗榮
32
○
政府委員
(
國宗榮
君) 先程も申上げましたように、
忌避
の申立てが非常に多く行われておることを私共承知しておりますが、併しその結果が統計上はつきり分
つて
おりませんので、これが空文に帰しておると言われても、さような
事情
にあるように
考え
られる点につきましては、先程申上げました
通り
でありまするが、この
忌避
の申立てがありました場合に、この本章の
規定
全般が全然空文に終らないように、立案の際におきまして、一應十分
考え
たのでありますけれども、
現行刑訴
の第三十條におきまして、
忌避
の申立てがあ
つた
ときには原則といたしまし
訴訟手続
を停止すべきことにいたしておりますが、ただ
訴訟
を遅延させる
目的
でなされたと明らかに見られる場合におきましては、
訴訟手続
を停止しなくてもよろしいということに相成
つて
おりまして、これが現行
裁判
の実際におきまして非常に行われてお
つた
のでありまして、この
現行刑訴
の第三十條の
規定
につきましては一應考慮いたしましたが、私共といたしましては、これを
最高裁判所
の
規則
に讓りまして、
忌避
の申立てがありました場合に、
訴訟手続
を進行させるか或いはこれを停止するかということはルールによ
つて
定めるという方針を採
つた
次第であります。尚御要望の点につきましてはルール制定の際におきましては十分に考慮したいと思います。
鬼丸義齊
33
○
鬼丸義齊
君 私は他の場合は別といたしまして、
裁判官
の
忌避
の申立につきましては、徹頭徹尾この
現行刑事訴訟法
の制定されまして以來、
裁判所
が
忌避
の申立を入れたという先例がないと称しておりますることは先例申上げた
通り
であります。
政府委員
の方において私は常に統計は嚴重に取
つて
おられますに拘わらず、この点に対してのみ統計がないというようなことは、私はこの法文を空文に終らしておりまする一点からいたしましても実は信用し難い。そういうことでなく折角この重要法案改正の期でありまするから、
裁判
例を調べますることには、私はそれ程の困難はないと思いまするので、実際上私より質問申上げましたごとくに、
忌避
の申立を容れたという先例がないというのであるならば、潔く私はお認め願
つて
、それに対する
訴訟
遅延に悪用されない
意味
における現状に、そのまま良心的な
裁判
ができまするような制度に私はして置くことが必要と思います。この際その点について只今お分りにならなか
つた
ならば、重ねて
一つ
お調べを願い併せて若、しそうであるとするならば、これまで
訴訟
遅延の
目的
のためにこれを悪用したようなことも私共あり得ると思いまするし、必ずしも全部が全部そういうふうには取り得ないのであります。その点を考慮に入れられまして本当の法文にして頂きたいと思います。是非
一つ
資料の点をもこの際お示し願いたいと思います。
國宗榮
34
○
政府委員
(
國宗榮
君) 重ねて資料につきましての御要望でありますが、先程申上げた
通り
のような次第でありまして、完全な統計がございませんので、御満足な数字をお目に掛けることはできないと存じまするけれども、尚できるだけの努力をいたしまして、どけだけの
忌避
の申立がこれまでになされておるか、更にその
忌避
の申立が認められた事態があるかどうかという点につきまして、尚他のいろいろなものを取調べまして、できるだけ御要望に副うように努力したいつもりであります。
伊藤修
35
○
委員長
(
伊藤修
君) 他に御
質疑
なければ今日はこれで散会いたします。 午前十一時五十八分散会 出席者は左の
通り
。
委員長
伊藤 修君 理事 岡部 常君 委員 大野 幸一君 中村 正雄君 水久保甚作君 鬼丸 義齊君 宇都宮 登君 來馬 琢道君 松井 道夫君 宮城タマヨ君
政府委員
法務廳事務官 (檢務局長) 國宗 榮君 法務廳事務官 (檢務局刑事課 長) 宮下 明義君 法務廳事務官 (法務廳調査意 見第一局長) 岡咲 恕一君