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1948-06-04 第2回国会 参議院 司法委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月四日(金曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件 ○裁判官報酬等に何する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○檢察官俸給等に関する法律案(内  閣提出衆議院送付)   —————————————    午後一時四十八分開会
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより司法委員会を開会いたします。本日は裁判官報酬等に関する法律案並びに檢察官俸給等に関する法律案、両案共衆議院回付に掛かるところの修正附法案でありまして、これを議題に供します。本案に対しましては予備審査を行なつております。前回の予備審査に引続き質疑を継続いたします。
  3. 中村正雄

    中村正雄君 先日衆議院裁判官報酬等に関する法案につきまして修正回付されたわけでありますが、從つて裁判官檢察官との間に制度の上において一應の差を附けておるということになつておりますが、実際の問題としまして、現在の檢事判事というような人達を新たな給與体系に個人的に当嵌める場合におきまして、先程來法務廳総裁がいつも言われておりまする、任用資格を同じようにやつてつて、今まで同じ待遇であつたものを直ちに差を附けることはできない、こういうことをしばしば言われておりまするが、この制度の上に差の附けますこの両法案が通過しました際に、檢事判事との実際の個人別号俸を当嵌める場合に、どういうふうな方法を採られるかという点を第一にお尋ねしたいと思うのであります。
  4. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) 政府といたしましては衆議院修正は行き過ぎているものであると考えているのでありまして、やはり制度といたしましても、原案で示した程度の差を以て適当なものであると考えておる次第でありますが、是非本案におきましては、そのように一つ審議願いたいと思うのであります。任用の上におきましては、現在同じ学校を出て、同じ試驗を受け、同じく試補を経驗し、そうして任用されているのでありまして、甲乙を附け難いということは事実でありまするから、從つてこの與えられておりまする俸級表のそれぞれ該当する部分に同じ年度の卒業で、同じ年限修習した判事補と或いは檢事補と匹敵するように号俸を給する、こういうことで参りたいと考えておるのであります。ただ一番上に行つたときにやや差別が出て來る、こういうふうに考えておる次第であります。
  5. 中村正雄

    中村正雄君 次に裁判官檢察官との関係の同様なことは、法律廳職員判檢事との間に起り得ると思うのですが、大体現在の法務廳並びに裁判所檢察官の現在までの人事を見てみますと、大体判事檢事で優秀な人を法務廳の重要なポストに据えておるという現実であろうと思うのです。そういう場合におきまして、法務廳職員はいわゆる一般行政官としまして、政府職員の新給與という通過しました法律によりまして、一級から十四級まで、この最高一万円、最低一千円、こういう給與体系によつて律せられるわけでありますが、その場合現在法務廳に居ります判檢事前歴を持つているところの職員、こういう人達が恐らく一般行政官吏としまして支給され得る最高級というものは、恐らく十三級が最高だろうと思うのです。そうしますれば、十三級の六号俸を貰いますと八千円、ところが、自分達同等或いは同等以下の後輩の人達判事檢事の職に居るために、檢事であれば最高一万三千円、判事であれば最高一万四千円貰えるという、こういう制度なつたのですが、從つてこれも制度の上でこういうようになつたという点につきましては止むを得ないとしましても、現在の法務廳職員、半檢事前歴を持つている職員に対して、いわゆる給與体系の変更、職階制採用という制度の変革によつて直ちに五千円なり或いは七千円という差が附けられるというこの制度に対しまする救済策としまして、どういうお考えを持つておるかという点をお聞きしたいのと、もう一つ、一應判事檢事に対しましては、超過勤務手当をやらないという、こういう法案になつておりますが、一般行政官吏に対しましては、これは超過勤務手当があると思いますが、併し現在の、これは現在の関係でありますが、予算面その他を見ましても、大体超過勤務手当というものは人件費の一割以上出ておりません。從つてたとい一般行政官吏としまして最高級の十三級六号の八千円を貰いましても、恐らく或る人は忙しい仕事をして一日二時間、三時間残りましても、予算面としてあり得るところの超過勤務手当としての金はたかだか一割程度でないか。こういう点につきましてこの予算面をどうするかということ、又遡つては、先に申しました法務廳職員判檢事との給與の振合をどうするかという点につきまして、法務廳総裁所見を伺いたい、こう思います。
  6. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) その点は誠に御尤もの質問でありまして、法務総裁として非常に苦心しておるところであります。いずれこの法務が通過いたしまして実施せられることになりましたならば、引続いてその点について議を練りまして、御審議を煩わすようなことができるかも知れないと思うのでありますが、或いは政令その他の方法ででき得るかも知れません。とにかく判事檢事たる身分を持つておりながら、ただ法務廳職員になつておるというために非常な不利益を受けるということは誠にお氣の毒のことであり、又合理的でないと考えられまするから、そういう人々につきましては、例えば檢事たる地位を持つてつて法務廳仕事をやつておる、そういう形において檢事を対する給與を差上げることができるというようなことになろうかと思う。判事の場合には一應檢事に轉換をして頂きまして、そうして法務廳仕事を手傳つて頂く、こういうような形にすべきではないか。これは一案でありますが、又近く給與基準が変る予定でありまするから、その差というものは非常に今のように大きく開いていないで済むのではないか。それに超過勤務手当というものは一般行政官吏に與えられるわけでありますから、それも只今仰せのように少しの額でなく、もう少し二三割というような額に増加させることによりまして、それらの差の開きというものをできるだけ少くすることができはせんかというようなことも考えております。何と申しましても、法務廳職員は普通の行政官吏でありますから、どうしても判檢事並みというふうには参らない。その点は一つ犠牲を拂つて頂く。こういうことでやつて頂きたいということを考えておる次第でありまして、只今のところまだ確定した案を持つておりませんが、十分各方面から考えて適当に善処いたしたい、こう考えておる次第であります。
  7. 中村正雄

    中村正雄君 今判檢事法務廳職員との関係について質問したわけでありますが、又これと同じことが判檢事前歴を持つておるところの裁判所事務官についても同様に考えられるのではないかと思うのですが、この点につきましての御所見を伺いたいと思います。
  8. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) この方は裁判所の問題でありまして、私から責任を持つてお答えいたしかねますが、恐らくは法務廳において考えておると同じように、判事たる身分を持つて、そうして裁判所調査事務に從事しておるという形をとりまして、同じ待遇を與えるということが可能になるのではないか、こういうふうに考えております。
  9. 中村正雄

    中村正雄君 最後に起過勤務手当につきまして再度お尋ねしたいわけですが、現在超過勤務手当というものが一應官吏にもできまして、一應の居残りその他によりまするところの、それに対する報酬という途は開かれておりまするが、実際これは一般行政官も同じことでありますが、一應法務廳職員については今問題がありますので、それに関連してお尋ねするわけでありますが、実際の超過勤務をしたという時間に対しての当然要求でき得る超過勤務手当に対しまして、予算面関係で非常に制約されておる。仮に現在の給與面から算出いたしまして、月に三千円ならば三千円ある人につきましては、超過勤務しておるという場合で、予算が五百円しかないという関係で五百円で抑えられておるという現状だと思います。これは法務廳に限らず、一般行政官廳全体の問題であろうと思いますが、こういうことに対しまして、やはり実際事務の繁忙のために居残りました時間に対するところの賃金というものは、それに相應したものを拂い得るという予算面の措置が必ず必要であろうと思いますが、これにつきましての政府の御見解を伺いたい、かように思うわけです。
  10. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) その点も政府としては十分考えておる次第でありまして、大藏大臣にその点を閣議において注意を喚起いたしまして、できるだけ余裕のある人件費を計上するように求めて置いたのでございます。今回提出する予算案によりますれば、少くとも二割以上の時間外勤務手当を給し得るような数計が残つておる筈でありまするが、尚欠員その他の、流用と申しますと語弊がありまするが、そういう点も斟酌いたしまして、できるだけ高額の時間外勤務手当を出せるように政府といたしましては努力いたしておる次第であります。
  11. 中村正雄

    中村正雄君 念のためにこれはお伺いして置くわけですが、この裁判官檢察官報酬に関する別表でありますが、これは現在政府の決めておりますところの一月の物價水準によるところの二千九百二十円ベースによる号俸だ、從つて賃金ベースが変れば又号俸も変わるのだ、いわゆるスライドするのだと、かように考えてよいですか。
  12. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) その点は非常にデリケートの問題でありまして、大体スライドするつもりでおりまするが、併し機械的にスライドするものであるというふうには考えておらないのでありまして、特に法律を提出して、法律によつて規定しておりまする以上は、これが毎月々々インフレーシヨンで非常に貨幣價値が下つて行く、それでこれを機械的に計算して追い掛けて行かなければ間に合わないという事態に相成つたといたしますれば、これは当然スライド制採用しなければならんと思うのでありますが、我が國のインフレーシヨン状況はそれ程惡化しておりませんので、重ねて若しこの給與が実際の事情に即しなくなりましたならば、更に御提案をいたしまして御協賛を願うという余裕があろとかと考えておるのであります。從つて機械的にスライド制採用したというつもりではおらないのであります。精神的に原則として將來そういう法律を出すと、そういう了解の下にスライドして行くということを考えておるのであります。そういうふうに御了解願いたいと思います。
  13. 中村正雄

    中村正雄君 私のお尋ねしましたのは、そういうふうに機械的にスライドするという意味ではありませんので、現実に申しますれば、二千九百二十円を基準にしましたために、一般行政官につきましてはこういう賃金体系なつた、又これによつて檢察官裁判官もこういうふうになつたわけでありますから、若しも政府は二千九百二十円ベースを破りまして、幾らかに新たなベースができました場合は、一般行政官につきましてもこの給與別表というものは変るだろうと思うわけであります。從いまして、一般行政官吏給與号俸が変るときは、同時に裁判官檢察官も変るような法案を提出される用意があるかないかということをお聞きしておるわけです。
  14. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) それは当然でありまして、二千九百二十円ベースで大体これはやつておりますが、ただ幾らか二千九百二十円ベースに加うるに、体面、地位というものに対する報酬を考慮に入れておりますので、正確にいえば、労働賃金と同じような意味においては申しかねると思うのでありますが、大体二千九百二十円ベースで立案せられたる号俸でありますから、ベースが変れば又当然立案をし直しまして御協賛を頂く、こういう方針であります。
  15. 岡部常

    岡部常君 先程裁判官檢察官法務廳職員との給與の権衡問題について総裁がお答えになりました点で、一つの案としては或いは檢官を兼務せしめて、檢察官俸給を給する途もあるんではないかというふうにおつしやいましたが、この点は私は大いに考え物であろうと存ずるのであります。これは從前においてはままあつたことであります。併しそれは会計檢査院或いは法制局等によりまして非常に批難せられたところであります。これはそれらの官廳によつて批難せられるまでもなく、面白くないやり方であろうと私は考えるのであります。新らしい憲法の時代におきましては努めてこれは避けなければならないと思います。会計檢査院が批難いたしますのは、予算区分を紊るというところが強く言われたのでありますが、これは檢査院俟つまでもなく、常識として避くべきことであると私は信ずるのであります。又一歩を讓りましてそれが許さるるものといたしましても、これは他の行政官廳においても同じようなことが言えるのではないか、地方の官廳と本省との間の関係というようなものは恐らく同樣であろうと考えるのでありまして、一度法務廳と檢察廳の間にそういうふうな便法が生れまするならば、他もこれに傚いたくなるのはこれは自然の情であります。こういうふうになつて参りますれば、これは予算区分というものがもう根底的に破壞せられると申してもいいと存ずるのでありまして、この点は他の方法一つよくお考えになつて便法があればその便法を採られるように私は希望いたすのであります。
  16. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) その点は謹んで御意見を承つて置きます。無論先程申上げましたように、確定した意見を述べたのではないのでありまして、例えばということで、そういうことも考え得るということを申上げたのでありますので、十分考慮いたしまして愼重に処したいと思います。
  17. 小川友三

    小川友三君 本案は大分長く審議されておりますので、簡單ちよつと伺いたいと思います。歴代の司法省、今の法務廳予算を取るのが非常に下手で、法務廳に勤めている人はどうもいつも貧乏籖で、待遇が悪くて困つているということを、法務廳なんか訪問しますと先ず第一番にそう言われるのであります。今回の超過勤務手当は支給しないというようなのも非常に法務総裁は遠慮なさいまして、どうかと思つております。支給したいと思いますが、実際におきまして警察署あたりを調査して見ますと、時間外は殆んど二倍の時間外の仕事をやつておるように思われます。そこで政府は支給を相当にすべきであると、こう考えております。これにつきましてお考えを拜聽し、それから第十條ですが、今中村委員のおつしやつたお話も幾らか入つておりますが、俸給その他は物價上つた場合には上げるという政府の御意見かと認めますが、これは今の法務総裁のお答で、上つた場合には國会へ出して協賛を得るということでありますので、余り突つ込んでお伺いいたしませんが、これは予算を伴いますので、國会の承認を得る、そうしてほんの少し上げるのでなくて、ふさわしいだけの給與を上げて行く、報酬を上げて行くという方針だと思いますけれども、この点につきましては法務総裁及び政府を信頼しておりますので、公平なる運用をして頂けると思つて、丸否みに本議員はしようと思つておりますけれども、これに対して御所見を拜聽いたしたいと思つております。  それから第十三條ですが、この昭和二十二年法律第六十五号というのは、五月二日で切れておるのではないかと思いますが、ここでは抹消してよいと思いますが、大臣の御所見を拜聽申上げるときに、司法修習生における給與についてはもう少し明確に待遇を改善するというような点で、もう少し案がございましようかしら、それについて御所見を拜聽いたしたいと思います。
  18. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) 時間外勤務について、政府としては沢山の部課を持つておりまするので、余り不公平なこともちよつと希望いたしかねまするので、その点は一つ議会の方の心ある御協賛をお願いいたしたいと、こう考えておるのであります。  それから只今スライドという言葉語弊がありますが、物價の変動に伴う増額の問題は、第十條の規定でありまするが、先程來申上げまするような原則をここに謳つて政府が、將來かくのごとき事情が起つたならば、國会協賛を仰ぐということを條件にしてスライドして行くということを明らかにして置く、こういう程の意味を持つておるのであります。こう御了承を願いたいのであります。もう一つは何でしたか。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五月二日。
  20. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) 五月二日、これは提出の時が切迫しましてかくのごとき現象を生じたのでありまして、誠に申訳なく存じておりまするが、併し法律は、これが通過いたしますれば実際は一月に遡つて支給いたすのでありまするから、実際問題としては不便がないわけであります。ただ二つの面において一度失効して、通過の日を以て、公布の日を以て新たに整理するということで、その点御了承を願いたいと思います。
  21. 小川友三

    小川友三君 但書の「司法修習生の受ける給與については、なほ從前の例による。」と簡單に書いてございますが、法務総裁はもつと明確に待遇を明記するお考えでございますかどうかということをお伺いいたしたい。
  22. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) この司法修習生のことは最高裁判所の方で扱つておりますので、最高裁判所の方でお決め下さるわけなんで、それで「從前の例による」ということは、結局一般公務員と同じように二千九百二十円ペースのときは二千九百二十円を土台にして給與が與えられます。又基準が変りますれば、その基準に從つたものが與えられる筈でありまして、大して不都合はないと考えております。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御発言がなければ法務総裁から……。
  24. 岡部常

    岡部常君 ちよつと委員長、一言あります。今の十條を伺いましたら、これは或いは前にどなたか質問されてるかも知れませんが、いささか言葉尻を捉えるようでありますが、スライドになりますと、これは上るということだけでなく、下るということも含まるべきことだと思うのであります。これは一般生活費なんかが増嵩する場合のみを想像して書いたのですが、これは物價が下落した場合のことについては何にも触れておらないように思いますが、この点について何か御説明がございましたらろうか、何か承らないようにもいいますが、下落する場合のことについてお伺いして置きたいと思います。
  25. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) その点はこの十條の問題としてでなく、もつと大きな問題として、司法官の給料を將來物價が下落した場合にどうするかという問題としてお答をいたしてあるのであります。それで非常にこれは困難な問題でありまするが、政府解釈としては、実質上の報酬が変らなければ、名義上の報酬が減額せられることがあつても、いわゆる憲法のその報酬を減額しないという保障を破るものでないのだという解釈を採ることができる、こういうふうにお答をしておるわけであります。併しその終局的な問題は、結局憲法の正当な解釈になるかならないかということは、最高裁判所の判断に俟たなければならないことに相成つております。一應政府としてはそのように考えとおるということを申上げて置いたわけであります。この條文では下る時のことは考えてないのであります。
  26. 岡部常

    岡部常君 今の点につきましては、鬼丸委員から何か御質問があつたように承つておりますが、この程度で留保して置きます。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時に質問があつたので、お答もあつたのですが、それを了承したとも何とも……大いに研究するというところまで言つておられましたのです。では法務総裁発言を申出られておりますので、これを許可いたします。
  28. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) 質疑を終るに際しまして、法務総裁として一言発言をお許し願いたい。この政府原案というものは、御承知のように質疑の過程において明らかになりましたように、非常な政府といたしましても愼重審議を重ねました結果到達した結論でありまして、一方に憲法精神も生かし、他方に現実の事実に即して、現在勤めております判事檢事諸君の地位、感情その他を顧慮いたしまして、この辺ならば我慢をして頂くことができよう。又我慢をして頂くより外ないという差別を立案いたしたわけでありまして、これが衆議院委員会におきまして更に差別を強くせられたということにつきましては、先程來申上げておりますように、同じ学校を出、同じ試験を受け、同じように修習を経て、そうして同じ年限勤続年限を持つておる判事檢事とが、上の方に参りましてからずつと待遇の上に開きができるということは、社会的に見ても如何にもその人間の價値に相違があるというようなふうに誤解される虞れがあるのでありまして、一種の信義の問題である、権威の問題であるということから、低い方の待遇を與えられます檢事としては、誠に遺憾に存じておるところであろうと思うのであります。そこで一つ差別というものは、憲法が確かに裁判官を以て最高官吏とし、檢事との間に若干の差認めているということは否定いたしませんが、この精神に副うような制度を先ず立てなければならん。制度を立てて、そうして先づ採用試験も大体弁護士檢事とも採用する、そうして五年或いは十年の修習を経て後にその優秀な人を裁判官任用するというような制度を開くことによつて初めて、そういう差別待遇というものが素直に受取ることができるようになると信ずるのであります。政府はその点に意を用いまして、早晩そういう制度を、この國会にも間に合わないかも知れませんが、次の國会には必ず御提案申上げまして、新らしい任用制度採用いたしたいと考えているのであります。そうでありますから、それを諒とせられまして、何卒政府原案をお通し下さるようにお願いをいたすのであります。この制度の方を改革しないで、いきなり政府原案差別すらも、甚だ心安からざるものを感じておりますのに、更にこの上差別を強くせられますことは、現在この任にありまする人達にとつては堪え難いことであるのであります。それで万止むを得ないならば、当分の間これは差別を附けないというように留保を附せられまして、御審議を煩すことがでぎますならば、それも幸いである、かように考えておりまするので、何卒政府の意のあるところをお酌み取り下さいまして、然るべく御審議を賜わりたいと存ずる次第であります。
  29. 來馬琢道

    來馬琢道君 甚だ浅薄の質問のようですが、私共民間におつて聞いたところでは、弁護士に前判事という肩書を附けることは許されておりますが、前檢事という言葉はなかつたかと思います。あれはそういうことについて、何か考慮せられて、弁護士たる人の履歴を飾るために、前判事という称号を、例えば弁護士事務所の表札にも掲げていたことがあるように思います。今の状況ははつきりしませんが、それは私大いに判事に対する待遇の上に影響するものと思いますから、伺つて置きたいと思います。
  30. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) それは私の理解しておるところでは、法令上は別に何ら根拠はないが、事実前に判事であつた人は前判事、元判事弁護士何某ということを看板名刺に書くのでありますが、余りいい習慣ぢやない。檢事も同じように、前檢事弁護士という看板を書き、名刺を出す人は少くないのでありまして、別にこれは法令上でそういうことを使つてよろしいというような規定はないと信じます。事実上むしろ医者の場合、医学博士という言葉を使わせないようにいたしましたが、それと同じように前歴看板等に使わないようにさせるというようなことを考えれば考えることはできると思いまするが、只今のところは禁止規定もない。それでありますから、檢事判事も同じように前歴使つているというふうに了解いたしております。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではこの程度にいたしまして、本案に対しましては両案共月曜日これが採決を諮りたいと存じますから、各派において十分一つその用意をお願いいたしたいと思います。では本日はこれを以て散会いたします。    午後二時二十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君    委員            中村 正雄君            水久保甚作君            宇都宮 登君            來馬 琢道君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君            西田 天香君   国務大臣    國 務 大 臣 鈴木 義男君   政府委員    法務廳事務官    (法務廳調査意    見第一局長)  岡咲 恕一君