○
政府委員(
奧野健一君) 大體この前の
提案理由を御説明いたします時に、大體のことを御説明申上げましたのでありますが、一應簡單に各條を
逐つて御説明を申上げたいと思います。
大體
改正いたしました點について總論的に申上げますと、今囘の
改正は御承知のように、すでに憲法及び
裁判所法の制定によりまして必要な應急的な
改正を、この前に審議を願いました
應急措置法によ
つていたしておるのでありますが、この
應急措置法は本年の七月十五日限り效力を失うことにな
つておりますので、一應この
應急措置法にあります
改正の個所を
民事訴訟法の中に取入れた點が、
整理と申しますか、形式的な
改正の點であります。即ち憲法及び
裁判所法、或いは
民法等の
改正によりまして、
條文の
整理をいたしました點、例えば戸主、家族、或いは又
軍人軍屬といつたような
條文の字句の
整理をいたしました點が第一點であります。
次に、
裁判所法の
改正によりまして
地方裁判所は一人の
判事でやる場合と三人の
会議制でやる場合とを認めたのであります。
從來裁判所構成法によりましては、
地方裁判所は必ず三人で構成してお
つたのを、一人の
裁判官でやる場合、いわゆる
單獨制でやることを認めた結果、それに應じて
地方裁判所の
手續を改める必要が出て
參つたのであります。それに關する
改正をいたしております。
尚御承知のように、
裁判所法では
簡易裁判所というのを認めております。
從來の
區裁判所というのを
廢めまして、
簡易裁判所、それから
地方裁判所、
高等裁判所、
最高裁判所ということにな
つておりますが、新らしく
簡易裁判所を
裁判所構成法で認めまして、その
手續は
地方裁判所の
手續とは違つた簡易迅速な
手續で以てやるということにいたしておりますので、
簡易裁判所の
審理及び
裁判についての特別な
規定を設けたのが第三點であります。
尚
裁判所構成法當時におきましては、上告はすべて大審院で取扱
つておりましたが、今度は
裁判所法によりまして、
簡易裁判所の
上告事件は
高等裁判所で取扱うということになり、
地方裁判所の
上告事件は
最高裁判所というふうなことにな
つて參りましたので、
上告制度について
裁判所法の
改正に伴いまして
變つて參りました點、この點は大
體應急措置法に
規定をいたしておるのでありますが、その點を
裁判所法の中に今囘取入れたわけであります。
それから以下やや實質的な點につきましては、
證人、
鑑定人の
證據調について、
當事者の直接
訊問權を認めました點、これが即ちクロツス・エキザミネーシヨンでありますが、この
制度を取入れた點がその一つであります。
それから又
民事訴訟というものが
當事者主義を徹底せしめることが
適當であるという見解から、いわゆる
從來裁判所の
職權による
證據調を認めてお
つたのを
廢めた點であります。即ち
證據調は必ず
當事者の申出によ
つてやる。
裁判所の方で
職權で取調をやるという
制度を
廢めたのであります。
それから次に、直接
審理主義というものをできるだけ徹底せしめるということで、
從來判所が更送いたしました場合は、前の
判事でやつた
證人の調べというようなものは、ただ調書の上に現われておるだけで、そのままそれを後の
判事が
自分で直接調べないで、その調書を基礎にして
裁判をいたしておりましたが、それではやはり直接
審理主義の徹底を期せないうらみがあるというので、
判事が更迭した場合に、前に調べた
證人をもう一遍調べて貰いたいという要求があれば、必ず後の
判事は
自分で直接調べなければならないということにいたした點、それからこれと同じことは、
證據保全の場合に調べた
證人でも後でもう一遍本案の
審理の際調べて貰いたいという要求があれば、必ず調べなければならないということにいたしたのであります。それから尚
裁判所の權威の保持というために、
證人が不出頭の場合に、これに對していわゆる
科料及び
拘留の制裁を科することができることといたした點であります。
それから又
訴訟記録の閲覽の
公開制を擴充いたした點が一つの
改正にな
つております。
それから
訴訟を遲延せし
むる目的のためのみで
上訴をした場合に、そういう
上訴權の濫用をいたした場合に、これに對して制裁として
上訴状に貼
つておる印紙の或る
一定倍の、十倍以下の金額の制裁的に負擔を命ずることができることにいたして、
上訴の濫用を防止いたし、併せて
上級裁判所の負擔の輕減に資そうといたしたのであります。
次に、
判決の
言渡後、
從來は單なる誤記とか、計算の誤りといつたような場合だけに
限つて更正決定というものを認めておりますが、
法律の適用を誤つたというような場合に、後で直ぐ氣が付いた場合に、
言渡後
變更判決をすることができることといたしまして、無用の
上訴をする必要のない、無益な費用の負擔を
當事者に拂わさないで、
裁判所がみずから誤りを
覺つた場合には、一定の期間内に
限つて變更判決ができることといたした點であります。
それから最後に、差押の禁止の範圍を
從來と改めた點であります。
これらの點が大體
改正いたしました要點でありますが、以下簡單に各條に亙りまして御説明をいたしますと、
先づ最初に
從來判事とあるのを
裁判官、これは
裁判所法によりまして
判事というのは
地方裁判所と
高等裁判所の
判事だけを
判事と申しますので、その他は
判事補或いは
簡易裁判所判事、
最高裁判所判事と
おのおの別になりましたので、そういう
裁判官全體を現わす場合は、
裁判官という言葉に直りました結果、
判事を
裁判官に改め、或いは
受託判事とあるのを
受託裁判官に改め、或いは
執達吏を
裁判所法では
執行吏とな
つておりますので、これに合せたのであります。その他字句のここに現われておるものは、すべて
裁判所法に基く讀替えの意味の
整理な過ぎないのであります。
三條の「
東京市」というのを「
最高裁判所ノ定
ムル地」といたしましたのでありますが、これは
東京都ができました
關係で一應「
東京市」とあるのを「
東京都ノ
存スル區域」ということに都制百九十
一條でな
つておりますが、併し
簡易裁判所が
東京都の區の存する所でも十數ケ所できておりますので、その
管轄等の問題がありますから、むしろこれを
最高裁判所の
ルールで決めるということにいたした方が、
適當であるということで改めたのであります。
それから第七條は「軍人、軍屬」というものを削つたわけであります。尚「艦船ノ本籍」というような文字を削つたわけであります。
それから二十二條は、これは
地方裁判所の
管轄に屬せしめる場合の
規定でありますが、五千圓を超える場合が
地方裁判所に屬することになりましたので、「千圓」というのを「五千圓」に改めたわけであります。結局趣旨は變らないので千圓を五千圓に改めて、
地方裁判所の
管轄に屬せしめる。これは
從來も
地方裁判所の
管轄であ
つたので、そういたしたのであります。
二十四條は、
裁判所法によりまして
裁判所構成法十三條の二項というふうな
規定がなくなりましたので、ただこれを
整理いたしたのであります。
三十條は、これは
簡易裁判所の點につきまして
管轄の
融通性と言いますか、
簡易化を認めたのであります。即ち
地方裁判所はその管内の
簡易裁判所の中で、そういう
簡易裁判所の
管轄に屬する場合に、相當と思えば申立又は
職權で全部又は一部をみずから
審理裁判することができる。ただ
專屬管轄、例えば
支拂督促手續というふうなものは、これは
簡易裁判所の專屬に屬しておりますから、こういうものを除いては
簡易裁判所の
事件を、
地方裁判所がみずから
適當と思えば行えるということ。
それからその次の三十
一條の二は、やはりこれに關連がありますが、
簡易裁判所の
事件を、その土地を
管轄する
地方裁判所の方へ移すことができる
規定であります。要するに
地方裁判所の方が
審理が丁寧である。大は小を兼ねると言いますが。
簡易裁判所の
事件を
地方裁判所も自由にやり得るということにいたしたのであります。
次の三十三條の
改正は、
從來は移送の
裁判に對しては
即時抗告ができるということにしてお
つたのを、移送するという
裁判のみならず、移送の申立を却下した
裁判に對してもやはり
即時抗告を認めることが
適當であるということで、移送をする
裁判も、移送の申立を却下する
裁判に對しても、同じく
即時抗告ができることといたしたのであります。
從つて三十三條の
從來の二項というものが創られることになるわけであります。
次の三十五條は、これは「妻」を「
配偶者」に、或いは「戸主、家族」というのを民法に基いて改めたわけであります。
次の三十九條は、
会議裁判所の
構成員の
裁判官、或いは
地方裁判所の一人の
裁判官の除斥、忌避について、誰がその
裁判をするかということに關する
規定でありまして、これは
從來地方裁判所は三人の
合議體であ
つたのを、一人の
裁判官の場合もありますので、この
規定を置かなければならなく
なつたわけであります。
四十三條、これは
從來、
監督權ある
判事とありましたのを、
監督權はむしろ
判事にはなくて、
裁判所という
合議體にあることに
裁判所法の
改正でな
つておりますので、それに歩調を合せて
民事訴訟法を
改正いたしたのであります。
次の四十四條、これは書記に關する囘避の
許可等に關する事柄で、これは三十九條と相牽連した
規定であります。
それから五十條もやはりこれは男女平等ということから、即ち夫の
許可というようなことを創つたわけであります。
それから七十九條は、
區裁判所を
簡易裁判所に改める。これは
辯護士にあらざる者が
訴訟の代理を、
許可を受けてできるというのは、
從來區裁判所に
限つておりましたが、
區裁判所というものがなくなりまして、全部
地方裁判所になりまして、新らしくその下に
簡易裁判所というものができることになりましたので、
簡易裁判所に
限つては
辯護士でない者でも、
許可を受ければ
訴訟代理ができるという
規定にいたしたのであります。
次の百十
一條の
規定は、
從來訴訟が不適法で訴を却下する場合は、
判決を以て訴を却下するのでありますが、これは
口頭辯論を經ないで、
相手方の陳述も聽かないで訴を却下する
判決ができたのでありますが、
苟くも判決によ
つて訴を却下するという終局的な
判決をいたすのでありますから、やはり却下される訴を起した
原告に意見を陳述する
機會を與えるのが
適當だろうという意見がありまして、即ち「
原告ヲ審訊スルコトヲ要ス」ということにいたしました。即ちいわゆる意見を述べる
機會を與えることにいたしたのであります。この
規定と同じような
規定が二百二條、三百八十三條等にありまして、この
規定を準用いたしております。
次の百四十條の
改正は、一項を加えたわけでありまして、これは
口頭辯論の期日に出頭しない場合に、いわゆる
缺席判決をやることにな
つております。即ちこれは明らかに
相手方の主張を爭わないものということにみなして、いわゆる
擬制自白の
規定を
口頭辯論に出席した者に準用することにいたして、いわゆる
缺席判決ができることにいたしたのであります。この點はこういう
改正を行わなくても、
從來判例によ
つてそういうように認められてお
つたのであります。ただここに特にそういうふうに準用するということをはつきり謳いましたのは、但書を出すためでありまして、即ち
公示送達によ
つての
呼び出しを受けた場合には
缺席判決をやらない。大
體公示送達の場合に、
公示送達を受けた者は大體知らない場合が多いので、その場合に
缺席判決をやることは酷に失する嫌いがありますので、普通の
呼び出しを受けて來なければ、
缺席判決はやられますが、
公示送達によ
つて呼び出しを受けた場合にはこの限りでないということにいたしたのであります。
百四十三條の
改正は、
裁判所法の
改正によりまして、同じ
判事の中で席次の順序をつけないことにいたしましたので、その席次の順序によ
つて署名するというのを止めまして、これは
最高裁判所の
ルール等によ
つて、
裁判長が調書に署名できないときには、その次席の者がやるということにな
つてお
つたのでありますが、その席次の順序というのを削りまして、誰がそういう場合に
裁判長の代りに調書に署名するかということは、
裁判所の
ルールで決めることにな
つております。
それから次は、先程申しました
訴訟記録の
閣覽公開制を擴張いたしたことであります。これは
從來は
當事者以外の者は、
利害關係のあることを證明しなければ閲覽ができないことにな
つておりましたのを、
裁判はすべて公開であるのが
原則でありますし、又
國民審査等の
關係から言いましても、
記録を何人も閲覽し得るという建前が
適當であるという意見がありまして、
訴訟記録は何人も閲覽ができる、ただ勿論いろいろ仕事に差支があるとか、或いは
記録の保存上支障があるという場合、或いは又
公開禁止の
記録についてはこの限りでないことにいたしたのであります。これが百五十
一條に關する
改正であります。
百六十
一條は、これは
區裁判所を
廢めましたので、
地方裁判所に改めたのであります。これは
送達に關する
規定であります。これは
送達の囑託をする場合に、大體
送達は
執達吏、いわゆる
執行吏がやるので、而して
執行吏は
地方裁判所に所屬して置いておりますので、
地方裁判所に
送達の囑託をやるということに改めたのであります。
百六十七條を止めましたのは、
軍用廳舎におる場合の
送達でありますから、これは削除いたしました。
百七十六條もやはり
出頭軍人に關する
送達でありますので、これを削除いたしたのであります。
次の百八十條の
改正は、
外國においてなすべき
送達について
公示送達をやつた場合に、
效力發生の期間が二週間でありましたのを、二週間では短かきに失するというので、六週間に改めたのであります。
次の百八十
一條は、
區裁判所を
地方裁判所に改めました。これはやはり
執行吏の
關係であります。
それから百八十七條、これは先程申しましたように直接
審理主義をできるだけ徹底せしむるというので、
裁判官が
變つた場合に前の
裁判官のときに調べられた
證人を、いま一度
訊問して貰いたいということを
當事者から申出られたときには、
裁判所は必ずいま一度
訊問しなければならない。即ち徹底して申しますならば、
自分の調べない、直接
自分が訊かない
證人の證言を取
つて裁判ができないということになるかも知れませんが、それでは
裁判官が更迭した場合にすべてやり直すということにな
つて、煩瑣でもありますし、
訴訟を遅延せしむることになりますので、
當事者の方でいま一遍調べて貰いたいという要求があつた場合に
限つて必ず調べなければならないということにいたしたのであります。
会議裁判所の場合には
過半數の
判事が
變つた場合、
變つたと申しますのは、その
證人の
訊問を標準にして
判事の更迭を見るわけでありますが、三人の中の二人、つまり即ち結局三人でその
證人について調べた中の二人の
判事が
變つたという場合には、いま一度調べ直して貰いたいということであれば調べなければならないということにして、直接
審理主義せ徹底せしめたのであります。
次に、先程申上げましたように、
判決を一度やつたが誤まりがあつた、法令に違背したことを
自分が發見した場合には、
言渡後一週間内に
限つて變更判決ができることにいたしたのであります。これが百九十三條の二であります。即ち大體において
愼重審議を加えて
判決するので、まあ
判決は誤まるということはありませんが、神ならぬ身のやはりそういう過ちを犯すということもなきにしも非らず、そういう場合にどうしても控訴をやらなければ變更ができないということでは、無用の
上訴をするということになりますし、又
裁判の威信ということから
言つても、みずから過ちを改めるという
機會を與えることが
適當であろうということで、百九十三條の二というのができたのであります。尤もそれは法令の違背の點だけに
限つて、事實の認定の誤まつたという場合はこの中へ含まないことにいたしておるのであります。殊に又そのために更に辯論をやらなければならないというような必要のある場合は、この適用がないことに但書でいたしたのであります。尚その前にもうすでに
當事者双方が
上訴權を抛棄したというようなことで
判決が確定して
しまつてからき直せない。變更ができないということにいたしたのであります。これが百九十三條の二であります。
それから二百七條の二、これは
裁判所法によりまして、
判事補は單獨では、特に外に
法律の
規定のない限り発、別段の
法律の
規定がない限りは、單獨では
裁判がやれないことにな
つておりますが、別段の
規定としては、
民事訴訟に關する限りにおいて
判決以外の
裁判、いわゆる決定とか命令とかいうふうなものに
限つて、
判事補でも單獨にこれをなすことができる。これは
應急措置法で、すでに認めておりますので、それを踏襲してまでであります。
それから、その次の二百四十九條の辯論の準
備手續に關する
規定であります。
從來地方裁判所は必ず三人の
判事でや
つておりまして、その中の一人の
受命判事をして準
備手續をやらせるということにな
つておりまするが、今
囘地方裁判所は
單獨判事の場合もあるし、三人の
会議制の場合もある。殊に
單獨判事である場合には
自分一人で
裁判をやるのでありますから、その場合に特に
受命判事をして準
備手續をやらす
といつてようなことは無意味になりますので、準
備手續をやるのは
会議裁判所で
裁判をする場合に
限つて受命裁判官により準
備手續を命ずることができるということにして、
單獨制でやる場合には、
地方裁判所と雖も準
備手續の
制度はないことにいたしたのであります。準
備手續の
制度は
從來餘り成績を擧げていないので、むしろ止めてはどうかというような、
餘程特別な
計算關係とか複雜な場合だけに
限つてしてはどうかというくらいの議論もあるくらいでありますので、むしろ
單獨判事でやる場合には準
備手續の
制度はなく、会議でやる場合に始めて必要があると思えば準
備手續を命ずることができるということにいたしたのであります。
次に證據の
關係でありますが、二百六十
一條といいますのは、先程申しましてように
從來當事者の申出た證據を調べて見ても、結局
裁判所は十分な心證を得られない場合に、
裁判所みずから
職權で尚更に
證據調ができるという
規定があ
つたのでありますが、それを止めたのであります。即ち現行の
民事訴訟法のその前の
舊民事訴訟法では、やはり
職權の
證據調を認めてなか
つたのを、この前の
改正法で
職權の
證據調を認めたのでありますが、又再訂いたしまして、結局
立證責任というのは各
當事者がみずから
自分の責任によ
つてやるので、
裁判所の方から
職權調査までやると、一方をむしろ援助することにな
つて、
當事者の自由なる競爭といいますか、
當事者の處分主義という
民事訴訟の
根本原則にむしろ反するので、立證しなければその不利益は立證しない方の
當事者が
自分の責任において負擔すればよいので、
裁判所がそれを援助してやる必要はないのではないかという有力な議論がありまして、これは
職權による
證據調という
制度を止めたわけであります。尤も公益的なものであります
人事訴訟或いは
行政事件の場合に
限つては、例外として
職權による
證據調を認めております。これはこの前御審議を願いました
行政事件の特例或いは
現行法の
人事訴訟におきまする
條文によ
つて明らかでありますが、
民事訴訟法だけは
当事者主義を決定いたしたわけであります。
次の二百六十五條というのは、これは單なる
裁判所法に基く
整理に過ぎないのであります。
それから二百六十九條は五百圓の
科料を千圓と改めてのであります。
次の二百七十三條、これは
證人訊問の場合における内
閣總理大臣等の
國務大臣を
證人として呼ぶ場合には、内閣の承認を得なければならんということであります。
それから二百七十四條は、「
貴族院若
ハ衆議院」とあるのを「
衆議院若
ハ參議院」ということにして、院の許諾を必要とする
證人の
訊問の
規定であります。
それから二百七十七條の二というのが、先程申しましたように
證人が正當な事由がなくして出頭しない場合の
規定であります。
從來は五百圓以下の
科料であ
つたのを、これを改めまして二百七十七條の二で「
證人が正當ノ
事由ナクシテ出頭セサルトキハ拘留又は
科料ニ處ス」ということにいたしたのであります。これは
英米等におきましては、やはり
裁判所の
出頭命令に應じない場合は、
法廷侮辱罪として拘禁、拘束並びに罰金、これを併科或いは別々に科するということにな
つておるそうでありまして、或いは我が國においても、
裁判所の
權威及び訴訟の促進というようなことからいたしまして、ただ罰金や從来の過料だけでは不十分であるというので、
拘留、
科料に處する、これは
拘留、
科料はすべて刑法の
規定によ
つて規定されております。又これも檢事の起訴を必要とすることは一般の通りであります。
二百八十條はやはり單なる
整理であります。民法に基く「戸主」を削る等の
整理であります。
二百八十四條は、これは證言を拒んだ場合の制裁を
從來の五百圓を千圓の過料に値上げいたしてのであります。
それから、二百九十三條これも
整理に過ぎません。
それから二百九十四條というのが先程申しましたように
クロス・エグザミネーシヨンを採用したのであります。憲法におきましても、刑事の
關係は主でありますが、直接
證人の
訊問權というものを認めておりますので、殊に段段英、
米方式に
訴訟法がな
つて參ります
關係から、いわゆる
クロス・エグザミネーシヨンの
制度を認めたのであります。即ち
自分の方で
證人の
訊問を申出た場合には、その申出をして
當事者が、先ずこれを
訊問して、それからその
訊問が
終つた後に他方の
相手方の
當事者が
訊問する。それから後
裁判長が補充的に
當事者の
訊問の
終つた後に
證人を
訊問するということにいたしたのであります。勿論
裁判長は法廷の
指揮權を持
つておりますので、いつでもみづから
訊問し、
當事者の
訊問を
許可するという法廷の
指揮權は持
つておるわけでありますが、
原則として
原告が申出た
證人を先ず
原告の方で
訊問し、それから後で
被告側で
訊問して、最後に
裁判長が
訊問するというふうな建前にいたしたのであります。併し
當事者の
訊問が場合によ
つては重複することもあるし、爭點に外れた場合もありましようし、その他必要ありと
認むるとき、例えば
誘導訊問をするとか、或いは人格を誹謗するようなことに亙るとか、或いは脅迫的な言辭を弄するというような場合においては、
裁判長はこれを制限することができるという
法廷指揮權的な權限を與えて、この
當事者訊問の濫用を避けることにいたしたのであります。
その次の二百九十五條、これは現在でも大體二百九十九條の二項と同樣な
規定でありますが、これは
クロス・エグザミネーシヨンに對する異議があつた場合におけるその異議をどうするかという
異議權を認め、尚
異議權に對する
裁判に關する
規定を設けたのであります。後はずつと大體
整理であります。五百圓とある場合を千圓ということに改めたのであります。その他字句の
整理をいたしてあるのであります。
三百五十
一條の二というのがやや實質的な
改正でありまして、先程も申しましたように、今度は
原則として直接
訊問の主義を徹底いたしたいというので、
證據保全の際に調べた
證人について今度は本當の公判、本案の
審理に入つた場合にもう一度その
證人を呼んで貰いたいという申出があれば、
裁判所は再びその
證人を呼ばなければならないということにいたしたのであります。尤もその場合に、もう
證人が死亡してしまつたとか、或いは
外國へ行
つてしまつたというようなことで、
證據保全はそういうことの必要でやるのでありますが、そういう死亡してしまつたような場合は勿論問題にならないのでありますが、本案のときと雖も、尚
證人がそこに生きてお
つて、いつでも呼べるという状態であれば、調接調べて貰いたいと言えば、どうしてもこれはもう一遍調べなければならないというのが三百五十
一條の二の
改正であります。
それから次の三百五十二條以下が
簡易裁判所における特別な簡易な
手續であります。即ち三百五十二條では「
簡易裁判所ニ於テハ簡易ナル
手續ニ依リ迅速ニ紛議ヲ解決スルモノトス」という大前提を置きまして、以下簡單なる
手續で
審理が行われることにいたしたのであります。即ちその三百五十六條の二では、呼出の方式を非常に簡單な
送達以外の方法でも、例えば電話でも使いでも葉書でもいいというふうな簡易なやり方を認めたのであります。
次の三百五十八條というのは、
現行法の百三十八條というのは、最初の
口頭辯論だけに來ない
當事者が缺席した場合に
規定がありますが、そういう
規定を最初でなくても、續行の
口頭辯論に來なかつた場合も、同樣に大體
記録だけで
裁判ができるということにいたしたのであります。
それから又調書の記載方法の三百五十八條の二で、
裁判官の
許可があれば省略することができることにいたしております。
それから又三百五十八條の三で、「
裁判所ハ相當ト認ムルトキハ
證人又ハ
鑑定人ノ
訊問ニ代ヘ書面ノ提出ヲ爲サシムルコトヲ得」、即ち一々
證人を呼ばなくても、こういう事項について書面で答えて呉れということで、書面による
訊問ができることにいたしたのでありまして、これによ
つて一々
證人を呼出さなくてもいい場合を認めたのであります。勿論これは宣誓等をいたしませんから僞證とかいつたようなそういう問題は當然起らない、非常に輕い意味のもので、併しそれは單に書證ではなくて、やはり
證人の
證人調べということになるわけで、その記載が單に書面の書證という、書面の證據ではなくて、
證人の證言ということになるわけであります。これはまあ戰時民事の特例法で、こういう
規定を設けたことがありますが、ドイツにもこういう
規定がありますが、それを
簡易裁判所に
限つて採用いたしたのであります。
次に三百五十八條の四では、丁度家事審判所の場合に參與員という者を立會わし、或いは調停の場合に調停委員を立會わしておりますと同樣に、司法委員というものを補助員として和解をしたり、或いは
審理に立會わしめて意見を徴することができるという途を開いたのであります。大體これは家事審判所の參與員或いは調停の調停委員と同じような選び方で選ぶのでありますが、司法委員というものを
簡易裁判所の民事に
限つてつけるということにいたしたのであります。これは臨時法制審議會等によ
つてこういうことが決定されておりますので、それに
從つて入れたわけであります。
次の三百五十八條の五、三百五十八條の六というものが今言いました司法委員に關する
規定であります。
それから三百六十條におきまして、これは大
體應急措置法でこういうことにな
つておりますが、結局
高等裁判所におきましては、控訴といいますのは、
地方裁判所が一審とした場合に
高等裁判所に對する控訴、それから
簡易裁判所の終局
判決に對して
地方裁判所に控訴するという場合であること、又
裁判所法によ
つても明らかでありますが、その点を特に
民事訴訟法で明らかにいたしまして、後の又上告の點におきまして、それに繋が
つて簡易裁判所の方の
判決に對する上告が
高等裁判所、それから
地方裁判所に對する控訴、それに對する上告に
最高裁判所ということにいたしております。これは三百九十三條がそれでありまして、
應急措置法の四條と同樣であります。
それから三百八十四條の二というのが先程申しましたように控訴の濫用、
上訴權の濫用の場合に制裁を加えて、これによ
つて無默な
上訴を防ぎ、併せて
上級裁判所の負擔の輕減を圖ろうというのであります。即ち控訴を棄却する場合に、その控訴が全く
訴訟の完結を遲延せしめる目的のみに控訴をした場合と認められるときには、控訴状に貼用すべき印紙の額の十倍以下の金銭の納付を命ずる、これはむしろ國庫への納付命令、丁度過料と同じようなことになるわけであります。この強制執行の方法は、丁度過料支拂いの執行の場合と同じような方法で執行いたすのであります。即ち控訴棄却、それから印紙の金額の三倍以下の範圍内における金銭の納付命令というものを發することができるという
規定であります。
次の三百九十三條は先程申しましたように、上告が普通
裁判所法によりますと、
最高裁判所の
管轄にやはり上告というものがあり、それから
高等裁判所の
管轄にも上告がありますので、どの上告がどこに行くのかということが
裁判所法でははつきりいたしませんので、ここで
最高裁判所の方に行く上告は、
地方裁判所の
判決に對して
高等裁判所に控訟をし、その
判決に對して
最高裁判所に對し上告する、それから又
簡易裁判所の
判決に對しては
地方裁判所に控訴する、それに對する上告が
高等裁判所に廻るということにいたしたのであります。これは
應急措置法からそういうことにな
つておるのであります。
それから四百六條の二、これも亦
應急措置法の五條にあります通りでありますが、
高等裁判所が
上告事件を取扱
つておる場合に、
最高裁判所の
ルールで決める事由があるときは
最高裁判所に移送するということにな
つて、例えば判例を變更する必要があるかも知れませんようなことの場合に移送しなければならないことにいたしたのであります。
それから四百九條の二というのも、やはり
應急措置法の六條の通りでありますが、
高等裁判所を上告審とした終局
判決でも、違憲の理由ありという場合には、更に
最高裁判所に上告ができる。即ちこの場合には事實上四審級になるわけであります。
簡易裁判所の
判決に對して
高等裁判所に上告しておりますが、併しそれが違憲問題を爭う場合におきましては、やはり憲法八十
一條で
最高裁判所が終審としてやらなければならないということにな
つておりますので、
最高裁判所に更に上告できる途を開いたのであります。四百九條の三はその
手續に關する事柄であります。
次に四百九條の四・五・六という
規定は、先程申しましたように
變更判決に關する事柄であります。上告審の
裁判と雖も場合によ
つては法令に違背した場合がないとも限らないわけであります。この場合もやはり最後の段階であるからして法令違背があつたことが分れば
變更判決ができる途を開くのが相當であるということで、この場合は法令違背を理由とするときは、その上告
裁判所に異議の申立てをすることができることにして、異議は判当の
送達から十日以内に必ずやらなければならない。そうしてそれに對して異議が、理由があれば上告
裁判所は變更の
判決をするが異議がなければ、決定をいたして却下する。そうして上告
裁判所の
判決が決定するということにいたして、異議がある間は確定しないということにいたしたのであります。
次の四百十二條の三項、これはまあ
整理であります。四百十九條の二、これ又應急措置の七條をそのまま承けて來たのでありまして、決定いたしまして、やはり決定に對して不服を申立てることができない決定でも、違憲問題を理由にする場合には、
最高裁判所へ特に特別抗告ができるという途を開いて、憲法八十
一條の、
最高裁判所は違憲問題についての最終審の
裁判所であるという趣旨を徹底いたしたのであります。その後は大體
整理でございます。ずつと
整理で、ただ差押の點につきまして六百十八條というのが即ち
從來給料等の差押につきましては年額三百圓を超える場合、その半額を差押えることができるということにな
つておりますが、現在の經濟事情から見て、三百圓だけを保障して、その超える部分の半額を差押えられては非常に生活上脅威でありますので、その點を改めまして、最低の生活の保障するというのが差押え禁止の趣旨でありますから、然らばどの程度で最低の生活權を保障してよろしいかということになりますと、こういうふうに物價或いは通貨の變動の際におきましては一線を畫することが非常にできない、むずかしい問題でありますので、結局分數的にやりまして、一年間に受くるべき總額の四分の三を超える部分に
限つて差押えることができる、即ち全收入の四分の一だけを差押えることができるということにいたしました。併し月給の四分の一くらい差押えられても何ら痛痒を感じないような特別な人もあるかも知れませんので、そういう場合に但書で以て、差押えによ
つて債務者がその生活上窮迫の状態に陷る虞れのないときは
裁判所の
許可を得て、その二分の一までの範圍内において差押えることができることに
許可することができる、そういう場合には二分の一まで差押えられるが、そうでない限りは、普通は四分の一だけ差押えることができる、併しながら四分の一差押えられても、逆に今度は、到底そのために生活ができないという場合もあるかも知れないということが考えられますので、六百十八條の二で、
現行法の五百七十條の二の
規定を準用して、そういう場合には又差押えを禁止し、更に差押えをしてはならないという財産を定めることができるという五百七十條に二の
規定を準用いたしたのであります。大體そのあとの
規定はすべて
整理に關する
規定であります。尚附則は
從來の通り新舊の經過的な
規定に過ぎないのであります。甚だ簡單でありますが、大體逐條的に御説明申上げました。