運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
1948-09-13 第2回国会 参議院 司法委員会 閉会後第1号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年九月十三日(木曜日) 午後三時三十分開会 ————————————— 本日の会議に付した
事件
○裁判官の
刑事事件不当処理等
に関す る
調査
の件(
帝銀事件容疑者取調
に 関する
説明
) —————————————
伊藤修
1
○
委員長
(
伊藤修
君) これより
司法案員会
を開会いたします。先ず最初に去る十一日当
委員会
の打
合会
を開きまして、最近街の顔役の第四次檢挙が開始せられる。こういう政府の方針が発表されておりますが、それにつきまして第一次乃至第三次の摘発によ
つて
檢挙せられました
ところ
の各
事件
が、その後
裁判所
でどういうふうに審理判決されておるか、その
進行状態
について、
不当裁判
の
調査
といたしまして、これらを
調査
いたしたい。御承知の
通り民主主義
の確立のために大きな阻害をなしておる
ところ
のこれらの
極石團体
若しくは
極右團体
に似かよう
ところ
の
右翼團体
の
暴力行爲
に対する
ところ
の
処置
について
裁判所
のその後の
処置
が明確でありませんから、これに対して
調査
をすることに一
應打合会
において決定いたしましたが、これを正式に取上げることに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
伊藤修
2
○
委員長
(
伊藤修
君) それではこの問題につきまして正式に
調査
を開始することにいたします。勿論今の事案は不
日当院
に非
日活動委員会
ができました際においては、或いはその部門に入るかとも存じますが、それまではこの
委員会
においてこれを
調査
することにいたします。 尚本日お集まり願いましたのは、最近
新聞紙上
において非常に問題とされておる
ところ
の
帝銀事件
につきまして、
新聞紙上
に現われておる
ところ
によりますと、
被疑者
に対する
ところ
の
人権擁護
という問題が大きく巷間に唱えられておりますから、これらについて
人権擁護
の
立場
から、
本件
につきまして
当局
からこの問題に対する
ところ
の
事件
の
経過
を先ずお伺いいたしまして、それについて質疑をいたしたい、かように存じます。 先ず
田中警視総監
の御
説明
を
お願い
いたします。
田中榮一
3
○
警視總監
(
田中榮一
君) 御紹介に預りました
警視総監
の
田中
であります。本日參議員の
司法委員会
におきまして
帝銀
の
毒殺事件
の
経過
並びに
警視廳
として
取扱い
ました事柄について簡單にお話を申上げたいと思います。尚予め御
了承
を願
つて
置きたいと存じますが、実は
帝銀毒殺事件
は
只今事件
が
搜査繼續中
でございまするので、私から詳細具体的なことをここで申上げかねる点が多々ございますので、この点だけは
一つ
何とぞ
搜査
の必要上機密を要する必要がございますから、予め
一つ
御
了承
を願いたいと思います。 一應この
帝銀事件
の今までの
搜査概況
を申上げて見たいと思います。
帝銀毒殺事件
の
容疑者
として目下
取調
中の
平澤貞通画伯
に対する
搜査
の
概況
について申上げたいと存じます。
帝銀
の
犯人
は本年の一月二十六日
帝銀毒殺事件
を起す前に二回に亘りまして同樣の手口の
犯罪
を企てて失敗をいたしております。その
一つ
はすでに
新聞
紙で皆
樣御承知
のごとく、
帝銀事件発生
一週間前に
犯人
が新
容區
の下落合の
三菱銀行中井支店
に參りまして
厚生省技官医學博士山口二郎
の
名刺
を利用いたしまして、
帝銀
同樣のことを申入れをしたのでありますが、
支店長
がこれを不審に認めまして、これを拒否いたしましたために、そのまま
犯行
を遂行することができず歸
つて
おるのであります。次に昨年の十月の十四日に
品川區
の平塚の
安田銀行荏原支店
に參りまして、このときには
厚生技官
の
医學博士松井蔚氏
の
名刺
を出しまして同樣のことを申入れしたのでありますが、行員二十数名は變な臭い藥を呑みましたけれども、別に中毒も起さずそのままにな
つた
事件
であります。
帝銀事件
が発生すると間もなく
右二つ
の
未遂事件
が発覺いたしました。調べて見ますと、
犯人
の
人相
、
服裝
、
犯罪
の
手段方法等
が全く
帝銀事件
と一致しておりまするので、正しく同一
犯人
のや
つた
ことと推定をいたしまして、
犯人
が
現場
に殘して
行つた山口二郎
と
松井蔚
の
名刺
を手掛かりに携査を進めてお
つたの
であります。その結果
山口二郎
の
名刺
は
犯人
が
三菱中井支店
で使用する直前、これは
銀座
の露店で作製した
贋名刺
であります。
松井蔚氏
の
名刺
は
厚生省東北地區駐在防疫官医學博士松井蔚
という活字でありまして、これは同
博士
が実際に使用せられました本物の
名刺
を
所持
してお
つた
ことで明白したのであります。
松井博士
はこの
名刺
を昨年の三月に百枚作りまして、本年の正月ごろまでに、即ち
帝銀事件
のあの
犯行
が行われるまでに主として
東北
、
北海道方面
の
関係者
にこれをばら撤いておるのであります。現在同
博士
の
手許
に七枚殘
つて
おることが判明いたしております。そこで行使せられた
名刺
の数は九十三枚でありまして、その九十三枚の一枚を
犯人
がいずれかで手に入れてこれを行使して
荏原安田銀行
で使
つた
ものと推定されるのであります。
從つて
この
名刺
の線から
手操つて事件
を
搜査
するということは、結局九十三枚の中の一枚の
名刺
が使われておりますので、その
的中率
がいわゆる九十三分の一といふことになるのでありまして、この
名刺
の線を手操るということは
搜査線
上頗る重要な事項にな
つて
おるのであります。現在では九十三枚の中で六十八枚を
関係筋
から発見回收をいたしておりまして、殘りが結局二十五枚ということになるのでありまするが、その二十五枚の中で十七枚が
受領者
が分
つたの
であります。
受領者
が分
つたの
でありまするが、
名刺
はその後受領した者がなくしたり、或いは破
つて
捨てたり、いわゆる
事故名刺
とな
つて
おるのであります。他の八枚がいわゆる行先不明の
名刺
とな
つて
おるのであります。
平澤画伯
が
帝銀容疑者
として
搜査線
上に
上つて參
りましたのも、この
名刺
を
搜査
してからでございます。
平澤画伯
は昨年四月二十七日に
皇太子殿下
に献上の「春遠からず」という繪を持
つて
上京の
途上
、
青凾連絡船
の船内で、たまたま
松井博士
と会われまして、
名刺
を交換した事実が、
松井博士
によ
つて
考え
出されたのでございます。そこで本年の二月の上旬に
小樽警察署
を通じまして、現に
所持
の有無を問い合せました
ところ
、
名刺
は貰
つた
が、昨年の八月
中日暮里
と
三河島間
の省線内で掏摸にすられてしま
つて
、
手許
には今ないという返事があ
つたの
であります。そこで一應この
平澤画伯
の持
つて
おりました
名刺
の確認につきましては、一
應事故名刺
として疑問を殘したまま
搜査
が保留されてお
つたの
であります。その後
名刺
の
搜査
が進むに從いまして、
事故名刺
も当然問題とな
つて參つたの
であります。この
事故名刺
の行先、その他につきましては特に周密なる
搜査
が行われました。その結果本年六月上旬この
搜査
に当
つて
おりました
主任
の
居木井警部補
その他係員が、
小樽
で
平澤画伯
に会いました
ところ
、同
画伯
の
人相
が
帝銀犯人
に
そつくり
なので、同
主任
以下も非常に驚いたのであります。
本人
は
名刺
はすられたという事実を言
つて
おるのでありますが、この点は頗る
疑惑
があるのでありますが、
本人
が
帝銀事件
後間もなく
東京
を去りまして、
小樽
に
行つて歸つて來
ないのであります。
東京
には
妻子
もありながら、何が故に
小樽
に行
つて
おるのか、この点も非常に理解に苦しむのでありますが、それは別といたしまして、
平澤画伯
の
写眞
を
主任
としましては何とかして手に入れたいという氣持から、
平澤画伯
と或る所で
記念撮影
に事寄せまして、
写眞
の
撮影方
を
お願い
したのでありますが、
平澤画伯
はその際にも殊更口と顎とを引き締めて、
本人
と全く違うような顏をしましたので、そうした
態度
が係官に対して非常に
疑惑
の念を持たしておるのであります。そこで更に
平澤画伯
の身辺を洗
つて
見ますると、
本人
は
帝銀事件
後間もなく十万円程の現金を
入手
いたしまして、妻女に渡した形跡があるのでありますが、その出所が
只今
もまだ不明であります。又
帝銀犯人
として種々な
適格條件
を、この
画伯
に
一つ
一つ
嵌めて見ますると、これを否定することがどうも非常にむずかしいということにな
つて
行くのであります。そこで何分にも
小樽
にお
つたの
では一
應取調等
ができませんので、これを
容疑者
として地方
裁判所
の
吉田判事
の
逮捕状
を正式に取りまして、正式なる
手續
によりまして
本人
を
警視廳
に招致いたしたのであります。そこで本年の八月の二十一日
小樽
で
逮捕
いたしまして、二十三日に
身柄
を
警視廳
に送
つて參つたの
であります。
平澤画伯
を
警視廳
に連行して參ります際にも、
警視廳
としましては
相当
細心の
注意
を拂いまして、実は
居木井警部補
が出張する際にも
電報等
も普通の
電報
では直ちに分りますので、特別な
暗号電報
を用意いたしまして相互の
連絡
を図ることに相成
つたの
であります。それから尚先方に參りましても十分に
一つ
覺られんようにということに、
相当
主任
以下
苦心
に
苦心
を重ねまして、漸く海を渡りまして船で
青凾連絡船
に乘りまして
青森
に
參つたの
であります。この場合にも
警視廳
としましては、
從來
の例になく特に
青函連絡船
も他の者と一緒に混同するようなことがあ
つて
はいけないので、特に
船室
も
一等船室
を利用いたしまして、全然他と隔離するような
方法
で
參つたの
でありますが、
青森
に入りましていよいよ
汽車
に乘るときから、遂に
警視廳
の
電報
の何が外部に洩れまして、この点は誠に遺憾でございますが、そのために
平澤画伯
が
容疑者
として護送されるということが
世間
に知られまして、そこで大變に問題にな
つて來
たのであります。それで
警視廳
といたしましても、普通の
容疑者
と異りまして、極めて重大なる
容疑者
でありまするし、又
本人
の
精神状態等
を
考え
まして、又一
自殺
をする虞れがあ
つた
り、又途中におきまして逃走するような虞れがあ
つて
はと
考え
まして、実は
手錠
も嵌めて
參つたの
であります。
手錠
を嵌める際にも
相当注意
をいたしまして、直接喰い込まないように。
布片
を手に巻きまして、その上から
手錠
を嵌めて參りました。それから又列車中におきましても
本人
もそういう希望がございまして、服などを成るべく顏に掛けまして、他から見られんようにと
相当注意
をいたしたのであります。それから
汽車
も、とても三等では
混雜
をいたしますので、特に二等にいたしまして、二人の席を
平澤画伯
だけ一人乘せまして、そうして横に寝せて、その上に
本人
が非常に他から見られるのをいやがりますので、
洋服
を上から掛けて、そうして來たのであります。そこで、
居木井警部補
が途中におきましていろいろ
言動
が行過ぎたというようなことも報道されておるのでありますが、この点は、私共からいたしますと、非常に
居木井警部補
の
立場
を
考え
ますと誠にどうも氣の毒な氣もするのであります。狹い車内におきまして数時間
容疑者
を側に置いてのいろいろの一問一答でございまするから、
容疑者
を前にしてこれは
犯人
でありませんということもこれはちよつと言えない
立場
もありましようし、そこで多少
容疑者
であるという
程度
の強いことを
言つた
ことが
眞犯人
だというように言はれましたが、この点は我々といたしましても
將來十分
に
注意
をせねばなるまいと
考え
ておりますが、とにかく
護送途上
においての、
犯人
を前にしての一問一答というものは、余程今後
注意
をいたしませんと、いろいろ
誤解
を受ける虞れがあるのではないかということも
考え
ております。さてそれから我々といたしましては、
東北本線
を
通つて來
る予定であ
つたの
でありますが、
東北本線
を若し來た場合におきましては、途中にこれを下しまして、直ぐに
自動車
で以て連行して來るという計画を立ててお
つたの
でありますが、
汽車
の都合によりまして常磐線にな
つて
しまいました。その後
汽車
が途中驛に寄らずに急行で參りましたものですから、そのまま
上野
に參りまして、
上野
に參りましても、
相当
の
混雜
を予想いたしましたので、直ちに驛の方に
お願い
をいたしまして、
エレベーター
を利用させて貰いまして、
エレベーター
で下しまして、それからR・T・〇に
お願い
をいたしまして、R・T・〇の路を
通り
まして、他の者とは少し違
つた
ような路を
通つて
漸く
自動車
に乘せまして、それで
留置場
として
警視廳
で一番
設備
のいいと思われる所を選びました結果、
駒込
が
割合留置場
の
設備
もいいようでありまするので、
駒込
の
留置場
を選んだ次第であります。それから尚途中におきましても、いろいろ
果物等
を與えるとか、
給與
の点につきましても、大体において遺憾なくや
つて來
た筈であります。從いまして、
從來
の
容疑者
とは多少扱い方につきましても
警視廳
といたしましては細心の
注意
を
拂つて
実は
參つて來
たような次第であります。ただ
帝銀容疑者
という大きくクローズ・アップされております
関係
上、どうしてもその
取扱い方
というものがいろいろと大きく特筆大書されるようになりますので、多少そうした或いは
人権
蹂躙的な行動があ
つたの
ではないかというようにも
誤解
を受けるのでありますが、
從來
の
容疑者
としての
取扱い
とは全然
違つた取扱い
を
警視廳
としてはして參
つた
つもりであります。 それからその後、
平澤画伯
が
警視廳
に參りまして直ぐ
関係者
のいわゆる
面通し
というものをいたしたのでありますが、十一名会わせたのでありまするが、
大体大部分
が
犯人
に
相違
ないと言い、又頗る似ているという証言をいたしたのであります。そこで先ずこの
本人
の
面通し
を大体そういうように終りましたので、そこで
容疑
は一層濃くな
つた
わけであります。
引續
き
身柄
を留置いたしまして、
本格的捜査
に入
つたの
でありますが、
ところ
がたまたま
本人
の
所持品
の
文書
の中に、かねて
捜査本部
が
帝銀容疑事件
として
犯人捜査
中の
詐欺事件
に
関係
がありまする
山口
という
印影
に全く同一の
印影
を
画伯
の
文書
の中に発見いたしたのであります。その
事件
は、昨年の十一月二十五日の晝、丸ビルの
三菱銀行支店
で、
預金者
の
長谷川某
という者の女
事務員
が、一万円の
預金
を下げようといたしまして、
手續
を濟ましまして窓口に待
つて
おると、いつの間にか
犯人
が女
事務員
に代りまして金と
銀行通帳
を
受取つて
、その後十二月末頃、
犯人
はその
通帳
に二十数万円の
預金
があるように記入いたしまして、
山口
その他の印を捺してこれを僞造いたしまして、これを高利貸の担保に提供いたしまして、二十万円の
小切手
を手に入れまして、
銀座
の
日本堂時計店
に持
つて
參りまして、
小切手
と引換えに通計を詐取しようといたしたのでありますが、
日本堂
の店員に氣付かれまして、これは
未遂
に
終つたの
であります。
只今
申しました
銀行中心
の
詐欺事件
が、どうも
帝銀事件
と何らか一脈相通ずるものがありまするので、
捜査本部
はかねてから
犯人捜査
中であ
つたの
であります。
ところ
が全く偶然にも、
平澤画伯
の持
つて
お
つた書類
に
詐欺犯人
が
使つた通帳
と寸分違わない印を発見いたしたのであります。そこで右の
詐欺事件
が
平澤画伯
の所爲と
考え
るようになりまして、調べました
ところ
、
平澤
は遂にこの
詐欺事件
を自白し、又当時の
関係者
も
平澤
を
犯人
に
相違
なしと証言したので、九月三日に
平澤
を先ず
詐欺被告人
として
地檢
の
高木檢事
が起訴いたしたのであります。
帝銀事件
につきましては、
引續
き
取調
中でございまして、冒頭に申上げましたごとくに、今ここで多くを語る自由を持
つて
おりませんが、勿論
容疑
が薄いものを行き掛かり上止むなく調べておるわけではなく、
捜査
を進めるに從いまして、ますます
容疑
を深めるものがあるのであります。ただいろいろと
傍証
を固める上におきまして、
相当
な
苦心
を重ねておるのであります。 現在
平澤画伯
に対する
帝銀事件
としての
容疑
の点を、どこが一体
容疑
であるかということを抽象的に申上げて見ますると、大体におきまして、今まで
報道機関
が非常な活躍によ
つて
それぞれの社におきましてお取りにな
つた
と同樣なことでありまして、
殊更新
らしいものはなかろうと
思つて
、おりますが、先ず
人相
の似ておる点とか、それから
筆跡
が似ておる点とか、この点につきましては、
只今專門
の科学的の
鑑定
によりまして、
平澤画伯
の書いた
筆跡
と、又当時の
銀行
の
小切手
に
板橋云々
と書かれましたあの
筆跡等
の
鑑定
につきまして、科学的な
捜査
を進めております。それから
松井博士名刺入手
の点であるとか、それから一番問題にな
つて
おりますのは、アリバイがさつぱり分らんのでありまして、
本人
の申立が常に變りまして、アリバイが少しも証明されんという点が一番困
つたの
であります。それから金の
入手
の径路が未だ不明でありまして、この点もまだ突き止め得ないのであります。それから先程申述べました
帝銀事件発生
後に、こちらに
妻子
があり家があるにも拘わらず
北海道
に
行つて東京
に
歸つて來
ないという点、それから
帝銀
で使用した
赤革靴
と同樣な
赤革靴
を
所持
しておる点、それから
洋服
も大体似通
つた
ものを
所持
しておる点、
知人
に
山口二郎
でなくして
山口三郎
という者がおる点でありまして、これはよく僞名を用いる場合におきましても、大体自分の知
つて
おる名前の一字を取るとか、そうしたことがよく行われるのでありますが、
知人
に
山口三郎
という者がおる点、それから
現場附近
の地図に非常に精通しておるという点、それから特に
疑惑
を深めておりまするのは、
平澤画伯
の性格でありまして、この点は我々も非常にいろいろと專門的な研究をして貰わなくちやならんと思いますが、他面二重人格的の半面を持
つて
おるという点、かような点がまだいろいろございまするが、先ず我々の方で抽象的に
考え
ましてピック・アップした
容疑
である点が、大体以上による
ところ
であります。
捜査本部
といたしましては、
目下地檢高木檢事
の指揮の下に、これらの
容疑
の点に対してあらゆる積極的な
捜査
をや
つて
おるのであります。この点につきまして、
從來帝銀事件
につきまして、國内の各
方面
から非常に御
協力
を頂きまして、
事件
後三、四月頃には、毎日何十通の投書なり、又いろいろな
注意
、警告、そうい
つた
ものが
捜査
の便宜のためにというので資料として送
つて
下す
つた点
が非常に多うございまして、今でもまだ各
方面
から、いろいろ
捜査
上参考になればというようなことで御
協力
を頂いております。いわゆる
國民的捜査
というようなことで、非常に我々としましては、
士氣
を鼓舞させて頂いておるのであります。又同時に各
方面
におきましても、
相当
これがために犠牲を拂い、多くの積極的な御
協力
も頂いておるのであります。又
事件
の点につきましては、
只今
鋭意
傍証
を漁りまして、いろいろと
捜査
を進めております。未だはつきりしたことは申上げかねるのでありますが、とにかく
相当
濃厚であるということは言えると思うのであります。 最後に、
平澤画伯自身
は、目下極めて
平靜
でありまして、
精神
的にも、肉体的にも、別段に異常はないのでありまして、尚我々といたしましても、こうした点を取扱う上におきまして、十分に
家族
の点、
家族
の方々には何も罪がないのでございまして、
世間
が
家族
に対するいろいろな
取扱い方
につきましては、我々としまして、非常にお氣の毒に
考え
ておるのでありますが、この点は、
家族
には何の罪もないのでありますから、社会が
家族
を冷く扱わんように、我々といたしましても、特にその点を
考え
たいと
思つて
おります。
伊藤修
4
○
委員長
(
伊藤修
君) それでは、次に
人権擁護局長
の
大室
さんの御
説明
をお伺いいたします。
人権擁護局
として、
本件
に対してどういう御
処置
をおとりにな
つた
か、又どういうお
考え
であるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
大室亮一
5
○
人権擁護局長
(
大室亮一
君)
帝銀事件
につきまして、
捜査当局
が非常な努力を
拂つておいで
になるということにつきましては、非常な敬意を拂うのでありますが、
人権擁護
の職にある者といたしまして、聊かこの
人権
についての
考え
を申述べて見たいと思うのであります。これは先ず第一にこの
容疑者
の
逮捕状
についての問題、次に函館から連行したその途中における問題、それから
容疑者
が
自殺
を企てた問題、それから
帝銀事件
の
容疑者
として勾留して置いて
詐欺罪
で起訴したという問題、こういう点について私の意見を申上げて見たいと思うのであります。 第一の
平澤
の
逮捕
の
容疑
の
程度
とそれから時期についてでありまするが、これは
人権擁護局
といたしましても、
逮捕
後数日の後に
檢察当局
から
事情
を聽取いたしましたが、その際
手續上
の違法はないものと
思つて
おります。ただその後の
捜査
の進展の跡を願みますれば、
手續上違法
でないといたしましても、まだ
逮捕
前に盡して置くことを
相当
とする
捜査
の
手段
があ
つたの
ではないかというような感じを受けるのであります。この点は
調査
の上でなければ何とも申上げられませんが、更に
事件
が落着いたとしましたらこの点を
調査
して見たいと
考え
ております。 次に、連行の
警察官
が、若し
新聞
に報道されておるように、
被疑者
が
眞犯人
に間違いないということを斷言したものといたしますれば、
現行刑事訴訟法
の二百五十三條、新
刑事訴訟法
の百九十六條にある、
捜査
の秘密及び名譽に
注意
するという、その趣旨にもこれは反するのではないか、そうして少し行過ぎではないか、こういうふうに
考え
ておるのであります。この点につきましては、そういうことを
言つた
と言われておる
警察官
が、
事件
の
捜査
に重要なる役割をしておるのでありまして、
事件
の
重要性
に鑑みまして、一先ず
捜査
を完了した後に、事実の
眞相
を
調査
して見たいと、こういうふうに
考え
ております。 次に
平澤
が
自殺
を企図したことでありますが、そのことにつきましては、これは
身柄
の
保護
上何か
手拔
りの点でもあ
つたの
ではないかというように思われましたので、当時
檢察廳
に
注意方
を口頭で要望して置いたのであります。 次に、勾留した罪名と全く
違つた罪
を
捜査
して起訴するというのは、原則的には妥当ではないかと思うのでありまして、併し
容疑者
を
詐欺罪
で起訴したのは、檢事局においてもよくよくの理由があ
つた
と思われるのであります。この点は後日
調査
したいと
考え
ております。 この
帝銀事件
につきましては、
人権擁護局
といたしましても大きな関心を持
つて
おります。
逮捕
後数日の後に
檢察当局
に諸般の
事情
を聽取して、
身柄
の
保護
、
取扱い
、
本件
の
容疑
が薄らいだならば直ちに釈放すべきではないかというように傳えて置いたのであります。その後順次推移を聞いておるのであります。 次に一兩日前に或る
新聞
に、
平澤
の談話としてこういう
記事
があ
つたの
でありますが、「交友、
知人関係
を調べる
警察官
の方までが、
眞犯人
と決ま
つた
ようなやり方で
云々
」と、そういうような
記事
があ
つたの
でありますが、果してそういうことがあ
つた
かどうかということは、これは
調査
して見なければ分りませんが、これは
ひとり帝銀
の
事件
ばかりでなしに、その
容疑者
が
眞犯人
と決するまでは、
眞犯人
であるというような
言動
はしないように
注意
して貰いたいのであります。大体現在まではこんな
程度
であります。
伊藤修
6
○
委員長
(
伊藤修
君) 次に
東京地檢
の檢事正の
代理馬場次席檢事
から御
説明
を願います。主として
本件
につきまして
詐欺罪
で起訴して、そうして
本件
の
殺人罪
の方の
捜査
にこれを利用したという点は
事情
上止むを得ませんかも知れませんが、新
刑事訴訟法
の
精神
にも反すると
考え
ますので、その点の御
説明
を願います。
馬場義績
7
○
東京地方檢察廳次席檢事
(
馬場義績君
)
帝銀事件
の
平澤容疑者
に対して
逮捕状
を出して、それから
捜査
をした結果、その中途において
詐欺
事実が発覺したためにこれを起訴いたしました
経過
は、先程
警視總監
から
説明
された
通り
であります。
只今委員長
から
詐欺罪
で起訴して
帝銀事件
の
捜査
を繼續することは、妥当ではないじやないかという御質問でありますが、これは
考え
方でありまして、私もただ
帝銀事件
の
捜査
を繼續するために、何か他の小さな
事件
で起訴して
捜査
をするということは妥当でないと
考え
ておるのであります。私共は
逮捕状
で連行して、
勾留状
を請求して
捜査
をいたしておりまする間におきましても、
捜査
をや
つて
おる第一線の諸君に対しては、白紙の
態度
を以て臨むようにと、予斷を以て臨むということは非常に危險であるということは、
主任檢事
を通じてしばしば警告して置いた
ところ
であります。そして私共の
考え
といたしましては、とにかくあれだけの騒ぎを起した
事件
でありますから、うやむやでこの
事件
を嫌疑不十分ということで打切ることは、
世間
も非常に
疑惑
を持ちますから、
飜つて平澤
氏の
立場
に取
つて
も非常に困
つた
問題であろうと思います。
苟くも捜査
を打切る以上ははつきりと発表せよとまでは言いませんが、要するに
相当
の嫌疑があ
つて起訴
をするか、或いは
捜査
した
結課
、とにかく
容疑
事実はないという
ところ
まで
捜査
をして行かないと、これは
平澤
氏並びにその
家族
の方々に対しても、非常にお氣の毒な
結課
になるだろうと
考え
て、とにかく白か黒かということをはつきりさせるようにということを特に
注意
して
捜査
をさせてお
つたの
であります。
ところ
がその間におきまして、先程
警視総監
からお話がありましたように、
詐欺
の事実が分
つて來
た。而もそれは最初に
帝銀事件
が発覺当時から、どうも
帝銀
の
犯人
が似た者が、やはり
詐欺犯人
として
捜査
線上に浮んで、何らかの関連があるのではないかということから、やはり手配中の者であ
つた
。それが先程申上げましたような
経過
で、これは
本人
の自白を待たず、もう
傍証
だけではつきり認められる程の明白な
犯行
が分
つて來
た。而もその
犯行
は非常に巧妙な
犯行
なのです。最初は名前は忘れましたが、或る
銀行
でとにかく番号札を拾
つて
、それで人の
預金
帳と拂戻金を騙取して、そしてその
預金
帳を僞造して大森のさる金融業者へ持
つて
行
つて
金借を申込んだ、
ところ
がそれを斷られた。次に又持
つて
行
つて
そこで二十万円の
小切手
を騙取することに成功して、それから翌日その
小切手
を持
つて
、
日本堂
という貴金属商に行
つて
十数万円に上る貴金属を買おうとして、そこで又しくじ
つた
という
事件
で、私は非常に巧妙な
犯罪
である。若したまたま
帝銀
行
事件
の
容疑者
であるために、そういう
詐欺
事実があ
つて
も起訴すべからず、或いは起訴したらもう
帝銀事件
の調べをしてはいかんということは、成る程法律的には簡單かも知れませんが、それじや
帝銀事件
の
捜査
をどうするかというと、これは
世間
の人は單なる法律論では納得させられないのではないか。私共といたしましては、あれだけの騒ぎを起し、あれだけの
事件
の
容疑
事実が出ておりまする以上は、何とかしてこれははつきりさせて、若し
平澤
に嫌疑がないということをはつきりさせることは、むしろ
平澤
の
立場
を擁護する意味ではないかというふうに
考え
ておる。だから或いは純法律論から申しますならば、そういう御批判も受けるかも知れませんが、私共といたしましては、成るべく早くいずれかに決したく鋭意
捜査
を進めておる。大体こういう氣持でや
つて
おるのであります。
伊藤修
8
○
委員長
(
伊藤修
君) 大内檢務長官から法務廳における
本件
に対するお
考え
をお聞きしたいと思います。
木内曾益
9
○檢務長官(木内曾益君) 御質問の点につきまして私からお答えいたしたいと思います。 問題のいわゆる
帝銀事件
につきましては、この
平澤
問題が取上げられるようにな
つた
ことにつきまして、地方
檢察廳
からまだ正式に報告を受けておりませんし、
事件
の
捜査
がどの段階にな
つて
おるか私はよくまだ
了承
しておらないので、ここで正確なことをお答えすることができないことは誠に申譯ないと思う次第であります。先程來馬場次席檢事或いは
警視総監
から、
事件
そのものについてはいろいろ御
説明
があ
つた
ことと思いますので、それを以て御
了承
を願いたいと思うのであります。法務廳といたしましては、問題の重点はいろいろこれが
新聞
に喧傳されますので、或いは一時は
人権
蹂躙問題というようなことまで取上げていろいろ論議されたのでありまするが、私といたしましては、さようなことはないと確信いたしておる次第であります。ただ問題は余りにも大きく
新聞
に書き立てられたため、これは私の想像でありますが、
世間
の
疑惑
として或いは
警視廳
なり、成いは
檢察当局
なりが
事件
をいろいろ発表するのではないかというふうな疑いを以て見ておる向きもないではないと
考え
るのであります。併しながら
警視廳
なり或いは地方
檢察廳
において発表すべきことは正式にそれぞれの所管の係の名前において発表しておるのでありまして、あらゆる点について
新聞
記事
にあることが全部これが
当局
の発表しておるというのではないのであります。ただ問題は、これは各
新聞
社も非常に
注意
されておる
事件
でありまして、いろいろの
方面
から材料を取
つて
おるのでありまして、これは又
新聞
社の使命として当然のことと思うのであります。ただ問題は
從來
は御承知の
通り
犯罪
捜査
につきましては
記事
の差止めができることにな
つて
お
つたの
でありますが、新憲法の施行によりまして言論の自由を保障しておる点と衝突するという疑いがありやしないかというので、これは廃止になりまして、現在においては
犯罪
捜査
中の
事件
について
新聞
記事
等を差止めるという、何らの法的根拠がないのであります。私はこの
事件
を通しましてもやはり憲法の要請する言論の自由も公共の福祉という枠が掛か
つて
おるのではないか、かように
考え
ておりますので、この
事件
を通しまして、これは何とかさような点について
一つ
の措置を講ずるのがいいのではないか、そのために非常に迷惑する人も起
つて來
ることでありますから、さような点について私共も何とか
一つ
憲法と衝突しない範囲内において何らかの
方法
があるのではないかということを
考え
ております。これは私の一個人の希望でございますけれども、この点は是非國会においても取上げて頂いて、而もこれは憲法の最も重大なる問題として取上げておる言論の自由に
関係
する問題でありますから、
一つ
お
考え
置きを下さいまして、これに対する措置を國会等においても
一つ
お
考え
願いたい、かように
考え
おる次第でございます。先程も申しました
通り
事件
の内容については、私はまだ十分報告を受けてないために承知しておりませんので、その点についてお答えできないのは申譯ないと思います。
伊藤修
10
○
委員長
(
伊藤修
君) 堀崎第一課長にお尋ねします。
事件
の詳細が刻々として
新聞
に報道されております。これは
捜査
陣から発表されるのか、若し発表されるとすると非常に基
本人
権に影響する
ところ
大なるものがあると
考え
ますので、その点の御釈明を願いたいと思います。
堀崎繁喜
11
○
警視廳
捜査
第一課長(堀崎繁喜君) 私直接
本件
の
捜査
の中心にありまして、又報道陣營の求めに應じて日頃接触しておる
立場
からその
説明
を申上げます。当初
本件
発生以來國民の関心又報道陣の活發なる行動は未だ曾
つて
ない状態でありました。我々
捜査
に当る者としましては、
捜査
の秘密を保持するために、これは長年の我々の習癖ですが、あらゆる
苦心
を
拂つて
お
つたの
であります。併しながら当初は何としましても刑事は後を尾行され、或いは訪問先は張込まれて、刑事の手足は十分に行かなか
つたの
であります。又次々と刑事の活動によるいろいろな
捜査
の秘密が掲載されますので非常に
捜査
陣としては困
つて
おりました。併しながらこれも憲法の言論の自由の尊重という意味から、これは我々みずからの
苦心
によ
つて
必密を保持しなければなりませんので、係刑事に対しましては、その発表どころか、顔色や擧動に至るまで現わしてはならないという訓辞をしばしばいたしております。又本部の
態度
といたしまして、藤田刑事部長若しくは私の談以外は、責任は持たんということをしばしば言
つて
おるのであります。併しながら何としましても余りに
事件
が
事件
でありますために、これは我々の
考え
ておる方向とは誠に違
つた
方向に參りまして、
捜査
事態から申しましても、又
容疑者
として擧げられた方々に対しましても非常なる御迷惑を掛けておるのでありますが、本部といたしましては、最初から一人も
容疑者
の名前を擧げたことはありません。むしろ
新聞
に名前の出たその者はこの
事件
に
関係
ないというような聲明をしたことがありますが、一人も
容疑者
の名前を挙げたことはありません。その間或る種の手を打
つたの
でありますが、これも一時は守られましたが、最近又こういう状態になりまして、恰かも警察若しくは
檢察廳
から洩れる、或いは発表するというふうな感を抱かせるようなことにな
つて
おりますが、私なり刑事部長なりの談話は発表事項を文章にしましてそれを読み上げまして全文掲載されることを望んでおります。併しながら抹殺される方がむしろ多いのであります。又私の談として載る場合に私はそういう形式で言うのでありますが、いろいろ話しておることが言葉の表現として反対な表現の
方法
を以て載ることもなきにしもあらずであります。私ははつきりその実情を申上げます。これまではともかく大過なくや
つて參つたの
であります。我々としましては、その秘密保持に筆舌に盡せない苦労をしておる点だけを御了解願いたい。非常にその点は
苦心
して秘密の保持をしておる実態でありますから、その点御
了承
願いたいと思います。
伊藤修
12
○
委員長
(
伊藤修
君) これで一
通り
当局
の御
説明
は終りました。これから御質問を願うことにいたします。
來馬琢道
13
○來馬琢道君 法律に
関係
のあります方から見ますと、この度の
帝銀事件
の
犯罪
捜査
ということは、人身
保護
法を成立させた國会議員といたしまして、いろいろ違法に近いことがあると言われるかも知れませんが、來馬琢道は一介の市民として
考え
ますときに、
犯罪
の
捜査
に
当局
が全力を注いで呉れないということは我々の生命、財産を脅かされる所以である。その点については民主警察という聲に対しまして常に一種の不安を抱いていた者であります。過日司法委員として東海及び近畿
方面
の各
裁判所
関係
の
ところ
を訪問したときに、勾留期間が短いので、余罪の
捜査
ができなくて困るということは、殆んど万口一齊に放たれた不平の聲と承知いたしております。
平澤画伯
の問題につきましては、
相当
自分も
注意
いたしまして、
新聞
紙の報道する
ところ
を見ておりますが、よくもこれ程までに、細かい
ところ
まで手を盡して
捜査
せられたものであると感心する
ところ
が
相当
あります。西洋の探偵小説を読んで西洋の
事情
を知り又自分もヨーロッパの方へ行きまして、その探偵小説によ
つて
見たいろいろな
ところ
を見て來、ははあ、こういう所かなと感心したこともあるやうな自分の見聞から見まして、日本の警察もこれ程までに努力していられるかと、むしろ感心しているのであります。併しながら
只今
すでに発言があたりますように、同伴して來まする係員の言葉の中に行過ぎたことがあり、又秘密にして來る筈の
ところ
を、何か手落ちがあ
つて
漏洩したために、あのような騒ぎになりました。
只今
の
ところ
捜査
が段々黒というような工合に進んで來るというような
新聞
の報道がありますが、若しこれがそうでない場合におきましては、いわゆる
人権
蹂躙ということに近くなると思うのであります。この点につきまして、幸いこのときに
当局
におかれましては、
注意
はするけれども、どうも
新聞紙上
の報道が早いので
捜査
に困るということが本当にあるのでありますか。若しそういうことが今回の
事件
によ
つて
、むしろ日本の
捜査
陳に妨害になるというようなことがあるとするならば、今回の
事件
は、又
事件
といたしまして、國会議員の方から
考え
れば何かそこに新らしい立法の工夫をしなければならないかとも思う。幸いにして今日までの
経過
は甚だしき失態はないようであるけれども、
只今
主なる目的の
犯罪
は後廻しにな
つて
詐欺
の問題が先にな
つた
というようなこと、それを利用して主なる問題を
捜査
しようというような
手續
が違法であるというのか、或いは不穏当なれども、これは致し方がないというのであるか、最高のその
方面
の地位の方からこの際御所信を披瀝して貰い、又國会に対する答弁として伺うことができれば、私共も又民間に向
つて
その方針を釈明することもできようと思う。この際その意味において
説明
をして貰いたい。
木内曾益
14
○檢務長官(木内曾益君) お答えいたします。御質問の御趣旨は、要するに
平澤
を
詐欺罪
で起訴して置いて、そうして結局問題の
帝銀事件
の
捜査
に利用、
身柄
の拘束を利用しているのではないか。さような点についての御質問であ
つた
ように私は了解いたしたのでありますが、先程も申しました
通り
、私はこの
事件
の内容について詳細を存じませんのでお答えに違う点がありましたら直接担当いたしておりまする馬場次席檢事から御
説明
を願いたいと思ふのであります。私がこの
事件
全体を見ておりまして、又私が多年第一線檢察官といたしまして扱
つて
お
つた
経驗から見まして、私はこの
事件
に
平澤
を
帝銀事件
の
捜査
の便宜のために
詐欺罪
で起訴しておいて、そうしてその
身柄
の拘束を利用して
取調
べをしようというような
考え
方は私はいたしておらんだろうと確信いたす次第であります。やはりそれは現われました
詐欺罪
でありましても、
相当
惡質であり、当然起訴さるべき
犯罪
でありますので、それが明瞭にな
つた
分だけを起訴したまででありまして、例えて申しますならば、現われた派生的な
事件
が、いわゆる起訴猶予にすべき
程度
の
事件
であるのを、わざわざ一方の
事件
を
捜査
するがために、起訴をして置いたというならば、
只今
御質問のような
誤解
を受けましても
檢察当局
としてはなかなか申開きは困難であろうと思うのでありますが、
本件
のような場合におきましては、繰返して申上げますが、とにかく
帝銀事件
というものを離れましても、私の経驗から言いますならば、当然起訴、拘束すべき事案と
考え
ますので、そのために起訴したものであ
つて
、
帝銀事件
捜査
のために、その便宜上起訴したものとは
考え
られない次第であります。
馬場義績
15
○
東京地方檢察廳次席檢事
(
馬場義績君
)
只今
木内檢務長官から御
説明
にな
つた
ことで大体盡きていると思いますが、先程私が申上げたことで、多少足りない点があ
つた
ように思いますから、この機会に補足をいたして置きたいと思います。 先程も申しましたように、要するにこの
事件
は、若しこれが
眞犯人
であると申しますならば、天人倶に許さざる極惡なる
犯人
であります。又逆にこれが全然濡衣でそうでなか
つた
というならば、実にお氣の毒な結果になる、だからお氣の毒な結果になる場合には、そのことを
捜査当局
としてはつきりすることが、
容疑
を掛けた者の責任であろう、かように
考え
ているのであります。ただ
詐欺罪
で起訴とたから、もうそれ以上は調べないで放
つて
置くということは、これは
捜査
官として決して職責を盡したものでないと思います。と言
つて
もこれを無期限に
捜査
するということは、到底許さるべきものではないのであります。先程憲法の解釈で公共の福祉という枠がかか
つて
いるという御
説明
がありましたが、やはりこういう問題でも結局最後は常職が解決するものである。こういうふうに私は
考え
ます。起訴は決して先程も申しましたように、
帝銀事件
を
捜査
するために、起訴すべからざる者を起訴したものでないことは、私も申上げますし、檢務長官からも今申上げた
通り
であります。これはあの
詐欺事件
の内容を御覧になりますれば大体御了解頂けるのではないか、かように
考え
ている次第であります。
田中榮一
16
○
警視總監
(
田中榮一
君) ちよつと私から弁明して置きたいと思います。
居木井警部補
の
言動
でございますが、先程私の申上げましたように、
居木井警部補
は
北海道
へ參りまして、連日不眠不休で、
平澤画伯
連行の責任者として活動いたしました。而も船の世話から、
汽車
の世話から、一切のことを居木井一人でや
つて
いるのであります。恐らく
平澤画伯
以上に居木井は疲労困憊その極に達してお
つた
ろうと思います。そうして漸く列車の途中まで參りまして、多数の人々が列車に乘り込みまして、勢い一人に対して一年一答のいわゆる乱射乱撃がここに始ま
つたの
であります。彼としましては殆んどそのときに
精神
的にも、肉体的にも
相当
疲労困憊いたしております。 而も彼は非常に熱心な男でありまして、
名刺
班の班長としまして家に歸りましても、殆んど書類を自分の寢床の上に持
つて
寢るというくらいに熱心な男であります。そうして明けても暮れても、
名刺
のこと以外には彼の頭にはないのであります。而もその
本人
が參りまして、その
容疑者
を前にして、これが
犯人
であるか、
容疑者
であるかと言われた場合における彼の苦衷たるや、我々は又察するに余りがあるのであります。歸りましてよく調べました
ところ
が、斷言はしていないようであります。これは
容疑者
に対する
一つ
のジェスチュアでありまして、私はこれはどうも止むを得ぬと思うのであります。
容疑者
のいる前で、これは
容疑者
で分らないのだ、白いのだということは、これは
搜査
の
主任
として絶対に言い得ないと思うのであります。又同時に
容疑者
の前で、これが
犯人
だということは恐らく私はそういうことは言
つて
なかろうと思います。まあ併しそこは言葉のあやでありまして、彼も疲労困憊その極に達しておりますし、乱射乱撃の質問の中にありますので、或いは無意識の中にどういう言葉を発したか知れませんが、とにかくさような誠に毒の毒な状態に置かれてあ
つた
ことは、はつきりいたしておりまして、殆んどもう疲労困憊その極に達して
上野
に到着いたしまして、而も
上野
に到着いたしましてから後も、その責任上家へも歸らずに、その傍にあ
つて
嚴重に監視してお
つた
ような実情であります。この点だけはどうか
一つ
護送の係員の言語、
態度
等につきましては、かような点も
一つ
十分に御同情を願いたいと思いまして、ここに一言申上げて置く次第であります。
來馬琢道
17
○來馬琢道君 私の質疑いたしましたことに対して、大層行き屆いた答弁がありましたが、私は初めに申したように
犯罪
に対しましては、十分なる御盡力を願いたい、そのために盡される
手段
が一方
人権
蹂躙となるということになれば、その方を恐れて
搜査
の手が緩むということにな
つて
はならんと思う。我々立法府におります者といたしましては、その辺の機微についてもよく考慮したいと思
つたの
で、
只今
の質問とな
つたの
であります。尚我々はこの点について考慮したいと
思つて
おります。
只今
の御答弁に対して私の
態度
を明らかにして置きます。
木内曾益
18
○檢務長官(木内曾益君) 先程來馬委員からの御質問の中で、私が最も大事な点を落しましたことは甚だ申訳がないのであります。先程の御質問の趣旨も、私共
搜査
陣にとりまして非常に御理解ある御質問を頂きましたが、それでこれは何を措いても御返事いたさなければならんのを、第二段の方だけになりまして前の方のお答えを落しましたことは申訳ない次第であります。私が最初申上げました
通り
に、この言論の自由ということと、そうして
搜査
の秘密の保持という問題が、これは非常に重大な問題であろうと思うのであります。で先程も申しました
通り
、私の
考え
方といたしましては、言論の自由にもいわゆる公共の福祉ということが公に掛か
つて
おるという
考え
方をいたしておるわけであります。一方
犯罪
搜査
についての
記事
の差止めということは、今日できないことにな
つて
おるのでありまして、又
本件
のような重大な問題で、國民的関心を持
つて
おるものについて、各
新聞
社がやはり成るべくその
眞相
を、材料を集めて一日でも早く國民に知らしてやろうという、その
新聞
としての使命、職責上から一生懸命や
つて
おいでになるのでありまして、この点については私共心から感謝いたしておるのであり、又その御労苦に対して御同情申上げておるわけであります。併し一方
本件
のように、或いは黒なら黒、白なら白と決ま
つた
ものならばよろしいのでありますが、まだいずれとも付かない状態にあるときに、
本人
の名譽の問題ばかりでなく、各
関係者
等もそのために非常な迷惑をする。それは一方名譽の問題ばかりでなく、又一面
搜査
の面から行きますと、次々と
新聞
に書かれると、
搜査
が非常にやりにくくなる。そこで第一線においては非常に困難しておるわけでありまして、この点について何らか憲法の趣旨と衝突しない限度において、その個人の
人権
保障ということと、言論の自由ということを、双方睨み合せまして、適当な法的措置を講ずるのがよいのではないか。私はこの
帝銀事件
を通じて見ました私の感想は、この措置が取られない以上は、常に同じような問題が起きるのではないか、かように
考え
ておるのでありまして、先程も
お願い
いたしました
通り
、國会の方におきましてもこの問題をどういうふうな立法措置をするのがいいのかということも
一つ
お
考え
置きを願いたいと、
お願い
いたす次第であります。
岡部常
19
○岡部常君 本
事件
は極めて重大なことでありまして、新らしい
刑事訴訟法
の趣旨から申しましても、
本人
の弁護権というものは十分に尊重せられておることを私は確信するのでありますが、実際今回
警視廳
に留置せられるようにな
つて
から、弁護権はどういうふうに行使せられておるのでありますか。
新聞
で傳える
ところ
によりますれば、すでに弁護人は選定されておるようでありますが、その弁護人と
本人
との
関係
はどういうふうにな
つて
おりますか。私実は惧れますのは、
本人
のための弁護ということも必要でありますが、
新聞
等に現われておりまする
ところ
から察しますると、或いはこれは弁護人と
本人
との間にそういうふうな材料がいろいろ話題に上
つて
搜査
の妨げをするというようなことも想像せられるのでありますが、そういう点について
警視廳
当局
ではどういうふうなお扱いをなさ
つて
おられるか、ちよつと承
つて
置きたいと思います。
馬場義績
20
○
東京地方檢察廳次席檢事
(
馬場義績君
)
事件
が起訴されておりますから、私から申上げる方がよろしいと思いますので申上げます。
帝銀事件
の
容疑者
につきましては、すでに山田弁護人が弁護屆を出しておられまして、その必要に應じては面会もしておられると聞いております。山田弁護人の
態度
は非常に紳士的でありまして、先程御心配になりました
搜査
の妨害になるという点は全然見られません。山田弁護人も恐らく腹の中ではとにかく眞実を発見するということに御
協力
をして頂けると、こう
思つて
おります。
高木檢事
と山田弁護人と一度私の部屋にお見えになりましたが、非常に両方とも了解し合
つて
、フェアプレーでやるということを申しておられましたが、その点は私は遺憾のない点だろうと思います。ただ山田弁護人も言
つて
おられるし、私もそう感じておるのでありますが、先程來問題にな
つて
おります報道が非常に盛んに行われますことが、いいにつけ惡いにつけ証言に影響を及ぼすのではないかということを憂えておられる、私も憂えておるのであります。これは報道人には報道人の
立場
があるので、いずれがいい惡いということを申上げるわけではないのでありますが、
事件
の性質上、若しこれが起訴にな
つた
と仮定をして、公判にでもなります場合に、証言をいうものの判斷をする上におきましても、私は
相当
影響力があるのじやないかということを惧れるのであります。でありますから、報道の使命と、それから
犯罪
記事
の扱い方ということについて、立法的措置なり何かその他の措置が講ぜられることが今後においても非常に必要であるということを痛感して、本
委員会
等においてこの問題を取上げられた機会に、何らかのイニシアテイブを取
つて
頂くならば、私らは非常に有難たい、かように
考え
ております。
遠山丙市
21
○遠山丙市君 大体私がお尋ねいたそうと
思つて
おりました事柄は、両委員においてお尋ねにな
つた点
がありまするので、重復せんように、極めて簡單に二三点お尋ねいたしたいと思うのであります。この今日の
新聞
の論調でありますが、先程來搜埼課長さんの御
説明
で私は了解したのでありますが、依然として
警視廳
一方的の行動ばかりをやる、依然として昔ながらの
犯人
と覺しき者に対するひどいことをしておるのではないか、こういうふうな巷の風評があ
つたの
でありますが、これは課長さんの御
説明
によ
つて
、
新聞
人の六感の働きによ
つて
それをお書きになることが多いので、自分として一々発表する場合は
文書
にしてやるのであるから、
文書
通り
傳えられないから
誤解
を生じたということを聞きまして、この点は了解したのであります。又一方このときこの場合において、あらゆる難関を突破してどうしても
眞犯人
を糾明して貰いたいという声のあることは、これ亦爭いのない事実であります。こういうような巷間に二つの流れがありますので、この
委員会
がこれを促えて、
事件
の内容をでき得る限り明瞭にし、天下に公表できることであるならば、幸福これに過ぐるものはないと思いまして、一、二点お尋ねをする次第であります。
搜査
手讀、いわゆる
逮捕
いたしますについてのこの問題については、恐らく如何なる機関も不都合なる所爲があ
つた
ということは耳にせんのでありますが、この
犯行
が行われた直前において、当時
新聞
に出ておりましたる
ところ
によりますと、まだ打つ手があ
つたの
ではないか、一万七千円の
小切手
が次の日に引抜かれておるではないか、これなどはいわゆる非常な大きな失敗ではないかというようなことを言い傳えられてお
つた
ようでありますが、この点に対する
搜査
ではどういうお
考え
であ
つた
か、お尋ねをいたして置きたいと思うのであります。 第二点は、護送せられましたる
居木井警部補
さんが、心身頗る過労で、而も今日
名刺
々々と一点張りで殆んど夜もすがら寝られんというように心配せられておるということ、誠に敬服に堪えないのであります。このお方が、言葉のあやということを申されましたが、言葉のあやにいたしましても、これが
眞犯人
なりということを言われたといたしますと、いわゆる先入感によ
つて
、どうしてもこやつこそは
犯人
なりという
考え
を持
つて
依然として第一線に大活躍を續けておられるということ、私は頗るこの点が一般國民として
疑惑
を持つのではないか。非常に働かれて苦労せられて、夜も寝んで今も総監のお話によりますると、
犯人
と言われる人以上に疲弊困憊をしておるというお方が、第一線で活動をすることによ
つて
世間
から疑われるということがありますということは、
本人
にと
つて
も氣の毒でありますが、先程の総監のお話によると、非常に弱
つて
おられるようでありますが、暫し休養をせられるよう御
処置
をとられるようなお
考え
がありや否や。 第三の問題は、
自殺
の問題で、先程ちよつと御
説明
がありましたが、
自殺
をし掛けたということが
新聞
に出ておりましたが、その後の模様はどうな
つて
おるか、それから傷の
程度
はどういうものか、何がために
自殺
をしなければならんかということ、何がためにということは、
新聞
によ
つて
いろいろ書き方が違
つて
おりますので、私共了解に苦しむのでありますが、差支えなければお聞かせを願いたいと
考え
ておるのであります。 それから重復するようでありまするが、少し變
つた
面からお尋ねしたいと思いまするのは、
本件
と
詐欺罪
の
関係
問題でありまするが、これは非常にむずかしい問題で、
搜査
に從事しておられる人の
苦心
はよく分るのでありますが、
平澤
が
眞犯人
であらうと見当を付けておられまする理由を先程御
説明
にな
つた
ようであります。彼の
人相
、彼の
筆跡
、それから松井氏の
名刺
の点、アリバイの頗る不明なる点、即ち彼の申立の不明瞭なる点、それから金の
入手
の径路の頗る明らかでない点、それから
事件
発生以來
北海道
へ行
つて
おりまして、
東京
に
妻子
があるのに
歸つて來
なか
つた
というような点、
赤革靴
とか
洋服
が大体似てお
つた
というようなこと、
知人
に
山口三郎
というような者がお
つた
というような点、
現場
の地図に頗る精通してお
つた
というようなこと、最後に彼が四重二重人格者と思われるというようなことを擧げておられるのであります。そういたしますると、この度御起訴になりましたる
詐欺事件
というものと、それから外部から固めておいでにな
つた
こういうようなる証拠のどの
程度
集ま
つて
おるか知りませんが、
詐欺事件
と
帝銀毒殺事件
との関連性というものを、少しく納得行くように御
説明
を願いたいと思うのであります。 次にお尋ねいたして置きたいと思いまする点は、これ亦山田義夫弁護人の説であ
つた
かと
考え
ておりますが、
相当
彼の
精神
上怪しい
ところ
がある、
精神
鑑定
とい
つた
ようなことを言
つて
おるようでありますが、その点は、先程のお言葉の中では、頗るしつかりしておるということでありまするが、こういうようなる
精神
が果してどの
程度
のものであるかどうか。いわゆる
精神
が全く變にな
つて
おる、而も疲弊困憊の極に達してお
つて
、言いなり次第の答弁をするような状況に至
つて
おるかどうかというようなことは、これは誠に重大なことでありまするので、これ亦お尋ねをいたして置きたいと思うのであります。 最後に、或る
程度
御進行にな
つて
おるのでありまするが、近い將來において保釈の申請があ
つた
場合においては、お許しになる
なつ
もりであるかどうか。 以上の点を、私箇條書に申上げましたが、ただ
搜査
段階中でありますので、お答えということが
搜査
の面に影響するというような点は、お伺いできんでもよろしいと思いまするが、できるだけ詳細に御答弁願いたいと思うのであります。
堀崎繁喜
22
○
警視廳
搜査
第一課長(堀崎繁喜君)
只今
の御質問に対しましてお答えいたします。 第一問の
事件
発生当時の措置についての御質問でございますが、殊に
小切手
の問題であります。あの
事件
は一月二十六日
警視廳
で承知しましたのは午後五時判頃でございます。
現場
は十数名の死体が散乱し、入院
手續
なりその
処置
、指紋その他現状の
保護
というようなことで一日忙殺されまして、何が取られておるかという被害
調査
は翌日にな
つた
と思います。それで全部金を持
つて
行かれれば、金を取られたということが直ぐ分るのでありますが、
現場
に、後ろの箱には三十数万円の札束があり、机の上にはやはり十数万円の札束があり、僅か机の上にあ
つた
もののみ取られたのでありまして、行員の殆んど全部が死亡若しくはああいう失神状態で、金の
関係
は少しも分らなか
つた
。
帝銀
の本店から應援を頂きまして、早朝から帳尻を合せて、翌日二十七日の午後に至りまして、帳尻が合わんということにな
つたの
であります。その中に
小切手
一万円があ
つた
というのは、
小切手
を持
つて來
た人が届けて呉れて分
つたの
であります。それは百円の紙幣の中に挾んであ
つた
。正規の
手續
をとり印鑑を捺して、受附から百円札入れた途中にありましたので、入金があ
つた
ことすら帳面ずらでは分らないのでありまして、持
つて來
た後藤豊治さんから、持
つて來
た話を聞くと、直ぐ手配したときにはすでに遅か
つた
という状態にありますので、誠に私達としては、一番よい直ぐとられる点を失したのでありまして、これは御批判を頂きましても止むを得ないのでありますが、実情がその
通り
であります。 それから次は、
居木井警部補
の疲労の問題につきまして、休ましたらどうかというお話でありますが、誠に当時參りましたときには、何と申しましても、事前の
搜査
、書類作製等に非常に連日の仕事で疲労しておりましたが、併し
搜査
というものは、途中でなかなか變え難い微妙な
ところ
がございますので、連行までは居木井
主任
とその部屋の刑事が当りました。參りまして翌日からは、そうい
つた
御批判もあると思いまして、ああいう
言動
があるという報道を見ましたので、内容はともかくとしまして、檢事と相談しまして、
主任
以下
平澤画伯
をや
つて
お
つた
刑事を全部退けまして、そうして三日間休養させまして、未だ居木井
主任
は、今までの書類作製をしておりまして、
捜査
の本筋には当
つて
まりません。全部白紙の者に取替えて繼積中でございます。この点はそういう
注意
をしておりますが、大分居木井
主任
の健康も回復しまして、今はすつかりよくな
つて
おります。 次は
自殺
を企てた問題でありますが、これは傷は殆んどかすり傷
程度
で、ガラスペンの先でちよつとこうした
程度
で、当時
警視廳
の医者並びに麹町の医者、警察病院と三者に診て頂きましたが、何ら異常がないということで、血止めの
程度
に繃帶をしただけで、当日から
取調
べに少しも支障はないと、又現在も非常に元氣で、食欲も進んでおりますから、この点は御
了承
願いたいと思います。 その次は、第四点のいわゆる
日本堂
の
詐欺事件
と
帝銀
との関連性でありますが、これは微妙な
捜査
途中でありますので、一、二申上げますが、
人相
が似ておる、服装、携帶品が、当時
日本堂
の被害者が届け出たもの徳
帝銀
の服装とよく似ておるという点が
一つ
。それから舞台が
銀行
である。それから
犯人
の
態度
というか、手口というか、これが非常に似ておる。例えば帝國
銀行
大森支店、ここでつまり竹内から二十万円の
小切手
に
詐欺
して、翌日三菱
銀行
の丸の内支店で、それに五万円を加えて、つまり五万円の謝礼を付けて返すとい約束の下に取
つたの
でありますから、そこで竹内氏の
小切手
を取
つて
しま
つて
、金を返す約束の日の朝
帝銀
の大森支店に現われておる。竹内さんは念のためにそこへ行
つた
ときにぶつか
つた
。
ところ
が、極めて自然にそこをごまかしまして、すつと拔けてしつぽを出さないで逃げた。それは
一つ
の例を挙げますと、荏原の中井の支店で、交番の巡査が行
つて
も、口の先でうまく巡査を追い返して、後で煙草を悠々と吹かしながら少しも動ずる氣配がない。この
事件
というものは、少しも怪しいと疑うような心身の動搖がないのでございます。こうい
つた
ような点まだ挙げればあるのでありますが、例えば、
山口
という名前が双方に出ておる。或いは
筆跡
が似ておる、これは可なり似ておるというような点が忽がせにできない、私共
捜査
に当る者のみならず、当時材料を提供した人達が
犯人
と似ておると言
つて
届け出ておるのであります。
関係者
が皆異句同音に言われております。その皆樣の御
苦心
に應えて眞疑を確かめておるわけであります。私達は皆さんのこの疑義を糺すべく、公の
立場
で何とか白黒を付けて、眞実を発見したいと努力しておる次第であります。関連性と申します点はこの
程度
でお許しを願いたいと思います。
馬場義績
23
○
東京
地方
檢察廳
次席検事(
馬場義績君
) 最近の機会に保釈の申請があ
つた
ならば釈放するかという御質問のようでありますが、その趣旨は保釈は
裁判所
がやることであるが、それに檢事が同意するかという御質問のうよに理解いたしましてお答え申上げます。 これは、若し
帝銀事件
の嫌疑が十分であるとして檢事が起訴いたしましたならば、
犯罪
の性質上証拠湮滅の虞れが十分にあるという点を
考え
ると、到底檢事といたしましては、保釈に同意することができるないだろうと思うのであります。若し嫌疑が晴れて
詐欺事件
だけということになれば、これは一般の
事件
と同一でありますから、若し証拠湮滅の虞れなし、又は逃亡の虞れなして認めましたならば保釈に同意いたします。併しこれはただ私の判斷で、
主任檢事
の意見も聽かなければなりませんので、その点、そういうおつもりでお聽き取り願いたいと思います。
遠山丙市
24
○遠山丙市君 それからちよつと今のお答えがないようでありますが、檢事さんがお調べにな
つて
おる模樣よりすると、彼の
精神
鑑定
の問題が
新聞
に出ておりますが……
馬場義績
25
○
東京地方檢察廳次席檢事
(
馬場義績君
) これは
主任檢事
にその点を聽きました
ところ
、今の
ところ
檢事といたしましてはそういう心配はない、かように申しております。
遠山丙市
26
○遠山丙市君 これはさつき木内長官と
大室
局長さんとえらい食い違いがあるようで、揚足を取るやうでありますが、ちよつとお尋ねして承
つて
置きたいと思います。
人権
蹂躙の点については遺憾の点がなか
つた
やうに木内さんは仰せにな
つた
ようでありますが、正式の報告はないけれども、どうも
取調
中にはあるのではないか、
大室
局長さんのお話によると遺憾の点があ
つたの
で目下
取調
中であると言われておりますが一法務廳の中においてそういう違
つた
食い違いのような御答弁を承わることは何かそこに統一したる御答弁が願われないでしようか。
木内曾益
27
○檢務長官(木内曾益君)
人権擁護局長
から先程どういうお話がありましたか、私は席におりませんのでしたので承知いたしませんが、私の申上げました趣旨は、この
事件
について詳しい報告は聽いてないから十分納得の行けるまでの御
説明
はできないのでありまするが、とにかく多少聽いておる
ところ
の範囲内におきましては、
人権
蹂躙ということはなか
つた
ろうというふうに私は
考え
ておるというお答えをしたわけであります。
岡部常
28
○岡部常君 私はちよつと
新聞
報道との
関係
でお尋ねいたしたいのであります。
本件
が
新聞
を賑わしましてから、微に入り細を穿
つて
いろいろな材料が
新聞
に取上げられておるのであります。実はこれがやはり
警視廳
方面
、或いは檢察
方面
から出ておるのではないかという懸念を持
つて
おりましたが、本日皆樣からの御
説明
によりまして必ずしも然らず、これは
新聞
の新道人の独特な取材によ
つて
いろいろな点が挙げられておるのだろうというお話であります。私も大体さように
考え
て
參つたの
でありますが、とにかくあの、現在報道せられておる有樣を見ますると、先程もちよつと申上げましたように、
捜査
に
相当
妨げを來するではないかということも
考え
られまするし、もつと大きく
考え
まはと、あれは、
眞犯人
が若しありといたしまするならば、勿論それに逃げ途を與えるということにもなりましようし、もつと突込んで
考え
ますると、今後惡いことを企てる人間に
犯罪
の手口を教えるという
ところ
まで進んでおるように
考え
て非常に寒心に堪えないのであります。この点につきましては、木内長官からも何らか立法的措置が講ぜられなければならないのではないかという御意見もありました。私共國会議員といたしましてもさように
考え
ておるのでありますが、これは法律を待たなければできない相談でございまするし、差当りこの問題につきましては、何らか
新聞
社
方面
と御交渉できもおありであるかどうか、この点を私は承
つて
置きたいのであります。併し
新聞
社といたしましても、
新聞
本來の任務として報道に熱中するということは、これは無理からん点はございますが、併し
新聞
と雖もこの重大
事件
の
眞犯人
を探し出す、或いは眞実を発見するということに関しては、檢察人、或いは
世間
一般と少くも變ることはないと私は
考え
るのでありまして、徒らに
新聞
の使命々々とい
つて
外を顧みないという、そんな挾い
考え
はないと
考え
るのであります。ですから法的措置を講ずるということも結構でありますが、現在これでがきないといたしますれば、何らか
新聞
陣營と御交渉にな
つて
、現在までのようなああいうことを差控えて貰うというような措置を私は講ぜられないことはないと
考え
るのでありますが、今までに何らか措置をお講じになりましたかどうか、その点を伺
つて
置きたいと思います。
田中榮一
29
○
警視總監
(
田中榮一
君) 報道陳營との
関係
につきまして、ちよつとお答えを申します。実は大分前でございましたが、
帝銀事件
につきまして、非常に連合國
方面
の御
協力
を頂いております。特に
新聞
課長から非常に御後援を頂いておるのでありますが、
帝銀事件
の
取扱い方
についてこれを差止めるということはちよつとできないのでありまして、GHQの御
注意
によりまして実は各社の社会部長さんに刑事部長さんの
ところ
に集ま
つて
頂いて、GHQからもこういうことを希望しておるので、
捜査
上に支障を來す虞れがあるから
一つ
双方の紳士的協約によ
つて
、できるだけ必要があれば
捜査本部
が発表する。それ以外においては成るべく書かぬことにしようじやないかというので、各社の社会部長さんに集まりを願
つて
懇談をいたしまして、その際には非常に氣持よく引受けて頂きまして、一時大分報道も下火とな
つて
お
つたの
でありますが、その際に尚後日のためと思いまして、刑事部長と各社の責任者との間において覚書の交換をいたしまして、発表するときは全部平等に発表しよう、それから
捜査本部
名を以て発表する、それ以外については
一つ
できるだけ
捜査
の必要上のことについては、眞実については成るべく書かんようにして貰いたいという一應紳士協約をしてお
つたの
であります。今回
平澤画伯
の
容疑
問題が発生いたしまして、
警視廳
といたしましては、
相当
これが発表等につきましては最善の努力をいたしまして、発表するときには刑事部長なり、
捜査
一課長の方から同時に発表いたしておるのであります。併し発表以外にやはり各社としましては
相当
な
捜査
網を持
つて
おりますから、これの活躍も実はあるのでありまして、各社に対しまする一應打つべき手は打
つて
おるのでありますが、これは一應の申合せでありまして、やはりこうした問題になりますと、天下の耳目を聳動する問題でありますから、こうした覚書をやりましても、やはりお互いに競爭というものがありますから、それを守るということは、実際問題としまして至難の事ではないか、從いまして
捜査
に携わる者としましては、詰らん
事件
につきましては、これは一々やる必要もなかろうと思いますが、
帝銀
のような極惡非道な
犯人
を
捜査
するという場合におきましては、やはり何らか法的の措置を講ぜられて置くことが私は一番必要ではないかと
考え
ております。又
新聞
社側から申しましても、
一つ
の社が拔け駈けをしますと他の社が拔かれたというようなことになりますから、同時に全部いけないというふうにすると全部書かないことになりますから、何かこうい
つた
ことを
新聞
社の方にも法的の根拠を持
つた
ものをしてやることが、やはり報道陣に対して親切な
一つ
の施設ではないかと思います。
伊藤修
30
○
委員長
(
伊藤修
君) ちよつと伺いますが、
面通し
をされますときに
容疑者
の頭を坊主刈にしたそうですが、
本人
はこれをどう言
つて
おりますか。
田中榮一
31
○
警視總監
(
田中榮一
君) あれは余り髪が伸びてお
つたの
を刈り髭を剃
つた
だけに過ぎません。それをいろいろ書き立ててニユース張しておるのです。
伊藤修
32
○
委員長
(
伊藤修
君) 今
一つ
伺いますが、
本件
に対する起訴、不起訴の
関係
はいつ頃しますか。
馬場義績
33
○
東京地方檢察廳次席檢事
(
馬場義績君
) これは甚だむずかしい御質問でありまして、いつと申上げる自信はございません。とにかく
事件
の性質上そう長く放置することはできないと思います。極力証拠を集めまして、いずれかに決するようにいたしたいと
考え
ております。
伊藤修
34
○
委員長
(
伊藤修
君) 本月中とか來月中とか……
馬場義績
35
○
東京地方檢察廳次席檢事
(
馬場義績君
) これは
主任檢事
と相談しませんと、私一人では決めかねます。長くはしません。
伊藤修
36
○
委員長
(
伊藤修
君) 成るべく早く決定せられんことを望みます。 では本日はこの
程度
にしまして、尚詳細お聞きしたいことがありますから懇談の形式でいたしたいと思います。一應これで散会します。 午後三時十五分散会 出席者は左の
通り
。
委員長
伊藤 修君 理事 岡部 常君 委員 大野 幸一君 中村 正雄君 遠山 丙市君 鬼丸 義齊君 來馬 琢道君 松村眞一郎君 宮城タマヨ君 星野 芳樹君 政府委員 檢 務 長 官 木内 曾益君 法務廳事務官 (
人権擁護局
長)
大室
亮一君
説明
員 警 視 総 監
田中
榮一君
警視廳
捜査
第一 課長 堀崎 繁喜君
東京
地方
檢察廳
檢事 馬場 義績君