○
政府委員(
久保敬二郎君) 最初に
持許法等の一部を
改正する
法律案につきまして御説明申上げたいと存じます。前
囘御注意がございましたので、法案が分り易くなりまするように一部
参照條文を刷り直しまして、本日お手許にお配り申上げた筈でございますが、
活版刷の
特許法等の一部を
改正する
法律案参照條文というのでございます。それから
今一つ特許法改正法律案要綱と申しまして、
ガリ版刷りにいたしたのがございます。この二つと、それから
政府提出原案になつておりまする
特許法等の一部を
改正する
法律案、この三つの印刷物を御覽頂きましたならば大体お分りを願えるかと思いますが、何分準備が不行届でございまして、お分り難い点があるかとも存じますが、惡しからず御了承をお願いいたします。
最初に
政府提案の
法律案につきましてちよつと正誤いたしたい点がございますが、これはその後内閣から
正誤表をお手許に差上げてあると思います。一枚刷のこういうものでございますが、まだお手許に……、それによりまして大体ちよつと直してみますと、第一頁の第
一條「
許特法の一部を次のように
改正する。」という隣の行に、「帝國内」を「國内」に、「勅令」を「
政令」に、その次に「
特許局」を「
特許廳」に、「
特許局長官」を「
特許廳長官」に改めるというのがございますが、これを削除いたしまして、唯單に「帝國内」を「國内」に、「勅令」を「
政令」に改めるという具合に訂正いたす、それが刷り間違いになつておるのであります。それから第三頁の三行目の第八十九條、それからその
五行目のところにもございまするが、「
特許廳長官」となつておりまするのは、これは「
特許局長官」と御訂正をお願いいたしとうございます。それから次に第六頁でございますが、六頁の三行目にやはり「
特許廳長官」というのがございますが、これを「
特許局長官」に、それから
五行目に「
特許廳」というのがございますが、これも「
特許局」に、それから六行目に「
特許廳」というのがございますが、これも「
特許局」でございます。それからこの六頁の左から二行目の一番上にも「廳」というのがございますが、これも「局」にお直しを願いとうございます。遡りまして、第五頁の第三行
目の下の方に「
審判又は
抗告審判」というのがございますが、この「又は」の「は」が平仮名になつておるのを片仮名の「ハ」に御訂正を願いたいと思います。それから五頁の第十行目になつておりますが、ここにある第五頁の左から二行目の一番下のところの「之
ヲ提起スルコトヲ得ズ」という、この下に括弧がついておりますが、この括弧は間違いでございます。それから八頁の第二行目に「
特許局」を「
特許廳」に改めるという、「
特許局」を「
特許廳」にというのを削除いたします。それから第九頁の二行目にもございますが、「
特許局」を「
特許廳」に改める、これも削除いたします。それから九頁の六行目でございます。六行
目の下の方に「第百十三條第一項」という文字がございますが、その「第」の上へかぎを付けて頂きたいと思います。それから第十頁の三行目に「
特許局」を「
特許廳」に改めるというのがありますが、これも誤りでございます。それから第十頁の九行目に三十三條というのがございますが、「第」の字が落ちておる、この「第」をお入れ願います。それからその隣の行に「第百二十
八條ノ六」というのがございますが、これを「第百二十
八條乃至第百二十
八條の六」、その「第百二十
八條乃至」という言葉がその上に入るのでございます。これだけ誤植になつております。それから本日お配りいたしました
法律案参照條文でございますが、これは今度この
改正案につきまして手の触れる点を全部ここを盛り込んで見たのでございます。この中に入つておりませんのは、「帝國内」を「國内」に、「勅令」を「
政令」にというその点だけが省いてございまして、その他の訂正は全部この中に盛り込んだつもりでございます。例を申上げますと、第一頁で第十
一條の中に、十
一條の二行目に「又
ハ判決アリタル」とございまして、その「又
ハ判決アリ」というところに右側に傍線が引張つてありまするが、傍線の部分はこれを削除する、今度の案で削除するという意味にお読み願いとうございます。第十
五條の「
軍事上秘密ヲ要シ又
ハ軍事上若ハ」というところに傍線がございますが、これは削除する、今度の
法律案でこれを削除するという意味でございます。次の頁の第二頁に、第三十條のところに
赤インクで「若
ハ抄本」というのが入れてございますが、これは新らしく訂正で書き加える意味のものであります。それから第三十
一條に全部傍線が引張つてあるのがございますが、これは三十
一條全部削除するという意味でございまして、その隣にもう一つ、第三十
一條と書きまして、そこに赤線が引張つてございますが、この赤線の入つておりまするのは、これは全部新らしく入るという意味でございます。結局三十
一條は古い三十
一條を全部省きまして、その隣に書いてありまする三十
一條をその代りに新らしく入れるという意味でございます。
それでは内容に入りたいと存じますが、お手許に本日お配りいたしました
ガリ版刷りのものに、大体
改正の要点を分類いたしまして掲げてございます。一昨日御説明申上げました点がこの五つになるわけでございます。
第一は、
日本國憲法の施行に伴いまして、
軍事上秘密を要する発明又は
軍事上必要な発明に関する
制度を廃止いたしましたことであります。
第二は、
裁判所制度の
改正に伴いまして、違法な
抗告審判の
審法又は
決定に対しましては、その取消の訴を三十日以内に
東京高等裁判所に提起できるものといたしまして、その
関係條文を整備することでございます。その左の方に條が挙げてございますが、これだけはこの第二の
趣旨に副
つて手が触わられたという意味でございます。
第三は、右の
裁判所との
関係の調整に伴いまして、すべて判決によることを要しない事項が生じましたので、この点の
條文を整理した点でございます。
第四は、最近の
経済事情に対應するため
特許料及び
登録料を五倍に
引上げ、又
民事訴訟法の
改正に倣いまして過料を二倍に
引上げることといたしたのでございまして、次に左に掲げてございます四つの
條文がこれに該当するものでございます。
第五が、その後の他の
法律等の変遷に伴いまして、
條文又は字句の軽微な整理を加えたことでございまして、左の方に掲げてありまするものは、大体内容は極くばらばらなものでございます。この外に
経過規定を少しばかり織込んだだけでございます。では第一から順序を追つて御説明申上げたいと存じますが、
参照條文では先ず第十
五條でございます。これは憲法によりまして戰爭を放棄いたしました
関係上、
軍事に
関係する発明を特別に取扱う必要がなくなりましたので、削除いたしたのでございまして、第十
五條「
特許出願ニ係ル発明ガ軍事上秘密ヲ要シ又
ハ軍事上若
ハ公益上
必要ナルモノナルトキハ特許ヲ
與ヘズ、
特許ヲ
受クリノ権利ヲ
政府ニ於テ收用シ又
ハ制限ヲ
附シテ特許ヲ
與ヌルコトヲ得」というものにつきまして
軍事上に
関係するものを、省きまして、公益上必要なもののみに限定した次第でございます。これに
関係いたします三十
一條も、全く御覧願いますと直ぐお分り願えると思いますが、「
軍事上ノ秘密」に関するものでございます。それから四十條も、これは十
五條に対應いたしまして、十
五條は
特許出願に関するものでございまするが、これは
特許権になつたものを対象として取扱つておるものでありまして、内容は十
五條と殆んど同じものでございます。その次が四十三條でございますが、これは
秘密特許がありまするときは
出願公告をしないものでございますから、
特許権の
存続期間の十五年というものを
特許が登録になつた日から割定するということが必要であ
つたのでございますが、今後すべて
特許は
出願公告をするということになりましたので、
特許権の
存続期間はすべて
出願公告の日から計算するという
趣旨によりまして、一本に直しまして、
改正のものでは「
特許権ノ
存続期間ハ出願公告ノ
日ヨリ十五年ヲ
以テ終了ス」ということになるわけでございます。次の六十三條の但し書とか、それから七十三條の第六項、或いは百
八條の第一項と申すものは、すべてこれを全部同
趣旨のものの提案でございます。これで第一を終りまして、次に第二の点について御説明申上げたいと存じます。先ず百二十
八條から御説明を申上げたいと存じますが、第十五頁の左の端に「第六章ノ二
訴訟」というのが新らしく加わつてございます。これは今度の
改正によりまして
訴訟に関する
條文が大分殖えましたので、第五章の中から
訴訟に関する部分を削除いたしまして、第五章はただ單に審利、
抗告審判として、
訴訟に関するものだけを新たに「第六章ノ二」といたしまして一章を起したのであります。
從來特許に関しましては、
特許局の
審判、
抗告審判と
大審院とは密接な上不審の
関係でありましたので、こういう
審判、
抗告審判と一緒に
規定しておられたのでございますが、今回の
改正で
裁判制度の
改正に関連いたしまして、
審判、
抗告審判と、それから
裁判所との
関係を新たな観点から
規定いたしましたために、かくのごとき
條文が一つ殖えるのでありまして、又一章を設けたわけでございます。
訴訟に関する新たな
規定を設けました
趣旨は
裁判制度の
改正に伴いまして、
行政事件に関連する
訴訟については、
民事訴訟法及び
行政事件訴訟特例法が適用せられることになりまするが、
特許事件は高度の技術的問題をその内容といたしますために、強大な対
世的独占権をその主体として、
特別複雜な
権利関係を取扱つておりますので、その
特殊性を考慮いたしまして、
民事訴訟法及び
行政事件訴訟特例法の一般法的な立場に対しまして、特別法的な
規定をする必要があるために、こういう新たな
規定を設けた次第でございます。
從來特許事件に関しまする
訴訟につきましては、第百五十條、第百十
五條ノ二、及び第百十六條に
規定してあ
つたのでございますが、
裁判制度の
改正に伴いまして、先に発せられました
裁判所法施行法の
規定に基く
特許法の
変更適用に関する
政令、これが昭和二十二年の
政令第三十二号で公布されておるのでございます。この
政令によりまして今回の
改正の
趣旨は概ねすでに認められてお
つたのでございますが、今回の
改正はこの点を一應明確に
規定して必要な
規定を整備したものでございます。第百二十
八條ノ二、
参照條文の方では第十六頁でございますが、第百二十
八條ノ二、三、四、五というようなものは旧來の第百十
五條に代るべきものでございまして、第百二十
八條ノ七、八というようなものは旧來の百十六條に代るべきものでございます。第百二十
八條ノ二の
規定でございますが、これは
特許事件に関する
訴訟につきまして、その
特殊性から
行政事件訴訟特例法の
一般法的原則に対して必要な
特別法的規定を設けたものでございます。これの第一項の「
抗告審判ノ
審決又
ハ抗告審判請求書却下ノ
決定ニ対
スル訴ハ東京高等裁判所ノ
專属管轄トス」というのは、
抗告審判の
審決に対しましては、
從來大審院への
出訴が認められておりまして、その後、
裁判所法施行法の
規定に基く
特許法の
変更適用に関する
政令で、これが
東京高等裁判所へ
出訴するように改められたのでありまするが、この從來の
規定をそのままここに
規定したものでございます。
裁判所を
東京高等裁判所に限定いたしましたのは、
特許局においてすでに査定及び
抗告審判又は
審判及び
抗告審判と二審を経ておりますることと、
特許事件は高度の技術的問題をその内容といたしておりまするので、特殊の
專門的知識を必要とする
関係から
東京高等裁判所に限定して、この要請に應じようとしたものでございます。
抗告審判請求書却下の
決定に対する
出訴を認めましたのは、
從來抗告審判における
決定に対しましては
大審院への
即時抗告が認められておりまして、その後、
裁判法施行法の
規定に基く
特許法の
変更適用に関する
政令で、これが
東京高等裁判所に
即時抗告できるようになつていたのでございますが、今後は
裁判制度の
改正によりまして、
行政廳の処分に対する
裁判所への
即時抗告ということがなくなりまするので、訴の形としてこれを認めることといたしたのでございます。
抗告審判請求書却下の
決定のみに限定いたしましたのは、
抗告審判における
決定中これだけが独立の処分と考えられるものでございまして、他のものは本案の
審決と共にその違法を主張することを適当とするからでございます。百二十
八條ノ二の第二項は「前項ノ
訴ハ審決又
ハ決定ノ
送達アリタル日ヨリ三十日ヲ
経過シタルトキハ之
ヲ提起スルコトヲ得ズ」「前項ノ
朝間ハ之
ヲ不変期間トス」というのでございます、旧第百十
五條並びに
特許法の
変更適用に関する
政令におきましても、このように
規定しておるのでありますが、これを踏襲してここに
規定したものでございます。
決定につきましては、從來
即時抗告として認められておりました期間は一週間であ
つたのでありまするが、今回の
改正でこれを訴として認めることになりまするので、
出訴期間として、
審決の場合に同調することにしたのであります。
行政事件訴訟特例法に対しまして
特例を設けましたのは、
行政事件訴訟特例法というものがこの
参照條文のお終いの方に附けてございますが、これでは六ケ月以内に
行政廰の処分に対して訴えをなすことにいたしておりますが、
特許法ではこれを三十日というような工合に
特例を設けたわけでありまするが、これは
許特権の対
世的独占権たる
特殊性から、
権利関係を長く不安定の状態に置くことによつて、複雑な
権利関係の発生することを防止しようとする
趣旨でございます。第三項で、第二項に
規定いたしまする
出訴期間を
不変期間といたしましたのは
民事訴訟法の
規定の一例に倣つたものでありまして、三十日間の期間内に
出訴できない特定の事情のありまする時は、
民事訴訟法の
規定するところの
訴訟行爲の追加の
制度等によつて、これを救済できるようにした
趣旨でございます。第四項も又
特許事件の
特殊性に基く新設の
規定でありまして、
行政事件訴訟特例法によりますると、
行政廰の違法の処分に対しましては原則的に
裁判所に
出訴できることになりまするが、本條の第一項の
規定によつて、
特許出願中の
事件及び
特許法で
審判を請求することができる事項につきましては
抗告審判を経て
東京高等裁判所に
出訴できる途が開か途れることになつておりまするので、これと別に、直接に途中から
裁判所に
出訴することを認めますと、
抗告審判の
制度を
事件の
特殊性から設けましたる
趣旨とも反しますし、又
裁判所しても、その
技術的判断の点において、單に
鑑定人というような
制度では十分でなく、差支が起りますので、すべて
審判又は
抗告審判を請求することができる事項につきましては、
抗告審判を経た後でなければ
出訴できないということにいたしまして、別の経路からの
出訴を封じたのであります。
抗告審判の
審決に対してのみ実施できるものと
規定いたしましたのは、
抗告審判を経た後であれば、又別の
事件として査定又は
審判の
審決に対して、
出訴することができるかという疑義を生じますので、これを明確に封じてあるのでございます。
第百二十
八條の三は、この
訴訟における当事者に関する
規定でありまして、この文章にありますように、單なる
手続法でございます。
第百二十
八條の四も
裁判所と
特許局との間の
関係が密接に参りまするように、その手続を
規定したものでございます。
第百二十
八條の五でございますが、これは訴の請求があつた場合の手続を
規定したものでございます。第一項は
裁判所が訴の請求を理由があると認めましたときは、即ち
抗告審判の
審法又は
決定が違法であると認めましたときは、その
審決又は
決定を取消すことといたしたのであります。
行政事件の
訴訟特例法では、
行政廰の違法な処分に対しましては、取消の訴と変更の訴とを認めておるのであります。これは
行政事件訴訟特例法の第
一條、第二條の方に出ておるのでありますが、西方の取消の訴と変更の訴とを認めておるのでございますけれども、
特許事件におきましては、その高度の
技術的内容と、複雑な
権利関係によりまする
特殊性によりまして、その一部の変更を認めるのは妥当でありませんので、ただこれを
取消云々といたしまして、取消されたる場合は、第二項に
規定いたしましたように、更に
抗告審判で
專門的な審理をすることといたしたのであります。即ち
特許事件に関しましては、
一般行政事件と違いまして、ただ單に取消の訴だけができるのでありまして、変更の訴はできないということにいたしたのであります。第二項は、第一項の
規定によりまして、
審決又は
決定が取消された場合における
特許局の手続を
規定いたしたものであります。
審決が取消されますと、その
事件は
抗告審判におきまして、未だ
審決がなされない状態に戻りまするので、
抗告審判において改めて審理を行なつて、
審決をすることとなるのであります。
決定につきましても全く同樣でございます。
抗告審判で改めて審理をするに当りましては、
行政事件訴訟特例法の第十二條の
規定がございまして、
裁判所の
終局判決に拘束されることになるのは当然でございます。これによりまして
裁判所と
特許局とが、徒らに
決定を遅らせるということは、その
特例法の十二條でできなくなつておるのでございます。第百二十
八條の六のところも單に手続を
決定しておるだけでございます。
第百二十
八條の七でございますが、この
規定は從來の百十六條の
規定の
趣旨を踏襲したものでありまして、第十
五條第四十條の
規定する
特許権上の諸法律上の收用及び第四十
八條、第四十九條の
規定に基いて第五十條の
規定するいわゆる
協定実施権に対する
補償金額を
商工大臣又は
特許局が
決定した場合において、その処分に対する
出訴の
規定でございます。この
趣旨も全く百二十
八條の二、三の
趣旨と同じところと存じますので省略させて頂きます。第百二十
八條の八では、やはり單に手続を
規定いたしておりまして、誰を被告とすべきかを
規定しておるものでございます。この百二十
八條の九の
規定はただ單にそのまま適用できない部分を削除したというだけでございます。これで新たに百二十
八條の二から九を設けました
趣旨を御説明いたした次第でございますが、この
趣旨に副いまして、元の百十
五條、百十
五條の二並びに百十六條というものがなくなりましたので、これを削除いたした次第でございます。