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政府委員(久保敬二郎君) それでは
只今より骨子を極く簡單に御
説明を申上げたいと存じます。極く掻摘まんで申しますと、今回の
改正は、変更の場所が非常に
廣汎に亘
つておりまするので、大変大きなような変更のように見えるのでございますが、実は実質的に変りましたところは、料金が五倍に上
つたというところだけでございまして、その他に形式的、或いは法律的には相当変りましても、実際の問題といたしましては殆んど変化がないのでございます。
大体要点を掻摘まんで申上げますと、
只今政務次官から御
説明申上げましたところで盡きておるのでございますが、今少しくその点を敷衍いたしますと、第一の
戰爭抛棄の
規定ができました
関係上、
祕密特許制度を廃止したことでありまして、即ち
軍事上祕密を要する
発明又は
軍事上必要な
発明に関する
規定を一切削除いたしたのでございます。これは單に法文的にその字句を削除するだけでございます。尚この
祕密特許制度を廃止いたしました
関係上、特許権の存続期間の計算は、すべて出願公告の日から起算されることになるわけでございます。
祕密特許制度がありましたときは、これは公告をいたしませんので、特許になりました日から勘定するというような場合もあ
つたのでございますが、この度それがなくなりまして、全部出願公告の日から特許権は十五年という計算をいたす次第でございます。
その次は、
裁判制度の
改正並びに
行政事件訴訟特例法の制定に関連しまして、
特許事件が
特殊性に富んでおるという
関係から、
訴訟に関する
規定を
改正いたしまして、これに
関係しておりまする條文を少しばかり整備したことでございます。特許局の処分に関する
訴訟にも、
民事訴訟法並びに
行政事件訴訟特例法が原則的な一般法として適用されるのではございますが、主として
技術的判断を
内容とする
特許事件の
特殊性に鑑みまして、これらの一般法に優先しまして適用されるところの特別法的
規定を
特許法の中に設けたのでございます。その
趣旨といたしまするところは、すでに
裁判所法施行法というものに基きまして発せられておりまする、
特許法の変更適用に関する政令というものがあるのでありまして、大体その中においてすでに認められておるものでありまするけれども、この際それを一層明確に現わしたらばよいだろうという
趣旨に副いまして
改正をした次第でございます。即ち
抗告審判の
審決又は
決定を受けた者が、その処分を違法とする場合、その取消の訴を
審決又は
決定の送達を受けた日から三十日以内に、
東京高等裁判所に提起できるものとしたこと。この場合におきまして特許局長官を被告とするのが原則ではございまするが、
抗告審判において請求人及び被請求人があります場合には、その請求人又は被請求人を被告とすることといたすわけでございます。又いま
一つは、審判又は
抗告審判を請求することができます事項につきましては、これらの審判を経ることなしに直ちに出訴することを認めましては、審判並びに
抗告審判制度を設けました
趣旨とも反しまするし、
裁判所といたしましても、その
技術的判断の点におきまして、鑑定人の制度だけでは十分でなくいろいろ支障がありまするので、
抗告審判の
審決があ
つた後でなければ、途中から
裁判所に出訴することができないという
規定を設けた次第でございます。
又特許権などの公益上の收用とか、又は強制実施権に対する補償金というようなものに関しまする訴につきましては、
從來も
特許法の第百十六條に特別の
規定がありまするので、その
趣旨を引継ぎまして、処分に不服があるときはその金額の増減を求める訴を処分の送達のあ
つた日から三十日以内に、各地方
裁判所に提起できるものといたした次第であります。即ち特許等の
事件につきましては、
東京高等裁判所に提起しなければならないものと、各地方の
裁判所にどこへでも出せるというものと二種類できた次第でございます。
訴訟に関する
規定がこのようなわけで相当増加いたしましたので、
特許法の中に新たに一章を起しまして、「第六章ノ二」としてここに一纏めていたしたのでございます。
第三の
改正点の主なるところは、特許局における
抗告審判の
審決は、行政処分としてそれ自体で確定するものとした次第でございます。
東京高等裁判所では破棄自判をすることがなく、違法な
審決に対しましては取消すのみでございますから、実体的なことは
審決確定によ
つて確定されるものでございまして、判決の確定を要件とする必要がなく
なつたからでございます。この点につきましては、例えば
特許法第六十二條、
実用新案法第十八條、
意匠法第十九條、
商標法第十八條等から判決の字句を削
つたのでございます。
その次は最近の物價趨勢を比較考慮いたしまして、
特許料及び
登録料を現在の五倍に増額することといたしました。昨年第一回國会ですでに五倍上げましたので、今度はその前に比べまして二十五倍の増額に
なつたわけでございます。この点も
発明者の
立場、その他いろいろ考慮いたしまして、大体五倍が適当というわけで一律に五倍にいたした次第でございます。尚又
民事訴訟法の
改正に倣いまして過料の額を二倍に
引上げました。
第五の点は、その後のいろいろ他の法律等が変遷いたしました
関係上、軽微な字句の整理をいたしたわけでございます。
最後に以上の
改正に伴いまして必要な経過
規定を設けました。これは附則に掲げてございます諸
規定がそれでございまして、
改正法律施行の前後に亘る事項につきまして、既得権的な利益を保護する配慮をいたしたものでございます。
大体この度の
改正法律案の
大要の
説明を
只今申述べた次第でございます。