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國務大臣(
水谷長三郎君)
只今の問題は、衆議院においても非常に論議された問題でございますので、少し詳細にお答えして見たいと思います。
中小企業廳において
資材、
資金に關する直接事務を取扱えるという御意見でありまするが、それに對してお答えいたしますが、
中小企業廳が
中小企業者に對する
資材、
資金の
割當を直接行うことにつきましては、慎重に
考えなければならん問題であろうと思います。即ち各種の
生産計畫というものが縦に業種別に立てられております關係上、若し
資材につきまして、一定分を
中小企業用として横に
割當てるようなことになりますと、當該
生産計畫の一貫性と綜合性を害するような結果となりまして、
産業行政全體としては却
つて弊害がございますので、
中小企業廳が
中小企業一般に對する
資材を直接
割當てるというやり方は避けねばならんのではないかと
考えております。例えば綿織物業を例に取りますならば、綿布何ヤールを
生産するという計畫が立てられまして、綿織物製造工場に對する綿絲とか石炭とかの
所要量、即ち供給量が決定されるのであります。ところが、この綿織物工業の中には大
企業者がございますならば、
中小企業者もあるのでございまして、その
生産用
資材を、大工場分としてどれだけ、
中小工場分としてあれだけと、いきなり割
つてしもうことは、個々の
具體的な工場につきまし、A工場は大
企業、B工場は
中小企業として
はつきり區別することになりまして、
從つておなじ織物工業でも、大
企業は繊維局で、
中小企業は
中小企業廳で、別々に担當することになりますので、繊維製品としての
生産計畫及び配分計畫を的確に實施する上におきましては、
實際問題として非常な困難と缺點とを生ずるのでございます。
中小企業の
振興という問題は、むしろ個々の
具體的企業にどれだけ
割當てるかということよりも、一般的に
中小企業者であ
つて十分實力を持
つたものが、大
企業に比して公平に取扱われているかどうかということの檢討が必要なことでございます。即ち
中小企業者が大
企業と比較いたしまして公平な
立場で
資材が
割當てられるようにすること、及び
中小企業全般に
資材が適正に確保されることが必要なことでございます。これがためには、第一に、各
産業部門の中における
資材の
割當につきましては、今後各局に
設置せらるる予定でございますところの
資材割當諮問
委員會に、
中小企業廳は代表者を送りまして、
資材割當上
中小企業者が輕視されることのないよう強く要求、監視することにしたいと思います。第二には、
經濟安定本部及び各省、各原局に對しても、
中小企業廳は絶えず強力に要求をいたしまして、
中小企業に對する
資材の強化、確保について
努力したいと思
つております。第三には、
中小企業の技術及び經營の改善合理化を
指導するといいましても、結局その改善合理化を現實に行うためには
資材が必要になりますので、それに必要な一定量の
資材を別に取りまして、この分については商工局等の
割當に強い指示を與えまして、
中小企業廳の
指導方針に副う
割當を行わせて行く
考えであります。第四には、
地方商工局の調整保留分を擴大強化いたしまして、その活用を圖ることによ
つて、中央におきましては把握されない多くの
中小企業に對しまして、現地の實状に即して
資材の確保を圖るようにしたい、このように
考えております。このようにいたしまして、以上のような各種の
方法によりまして、
中小企業者に對する
資材の的確な確保を圖る決心でございます。
從つて中小企業廳で直接各工場に對する
資材の
割當を行うということは必ずしも必要でなく、又強いて直接の
割當事務を行うこととするときは、前申上げましたように、同一の業種におきまして、大
企業は繊維局とか機械局とかで取扱い、
中小企業は
中小企業廳で取扱うというような結果を生じまして、同じ製品の
生産計畫なり配分計畫なりが、いわゆる原局と
中小企業廳との二つに分離されることになりまして、非常な困難と混亂とを生ずるということを我々は知らなくてはならんと思います。
次に
中小企業の
範圍を、こういうような場合においてはどういう工合にして明確に決めるかということが關連して
考えられるのでありますが、この點につきましては、
政府としては形式的に
中小企業の限界を定める必要はないので、むしろ常識的に彈力性ある運用を圖ることが
實際上
適當であると
考えておるのであります。ただ私共の目安として
考えておりますのは、先日來説明したことと思いますが、獨立の
企業であ
つて、當該業種としては投資額、
生産高、販賣高、取扱量が比較的少なく、その活動が少數の事業分野に止りまして、且つ他
企業との間に相互に投資關係のないもので
政府の
援助を必要とされるようなもの、その他これに準ずるものということにな
つているのでございまして、この基準に副い各業種別に
指導の對象を取上げて行きたいと
考えております。
中小企業廳の
仕事は、いわゆる助長行政、
指導行政でございまして、直接に權利義務關係の設定されることがなく、
從つて中小企業廳所管の
企業の
範圍が明確でないために不都合を生ずるということは餘りないと
考えております。ただ
實際問題としては、
中小企業形態が多いような
産業が主として
中小企業の對象となるのであります。例えば、農機具、綿織物、絹織物、毛織物、メリヤス、布帛製品、陶磁器、合成樹脂製品、鋳物、電氣通信機械部品、作業用具、マッチ、セルロイド製品、玩具、ボタン、木製品、ゴム製品、皮革製品、その他日用雑貨等の工業は、
中小企業形態のものが多いのでありますから、これらが先ず對象として取上げられることと思いますが、他の業種の
企業につきましても、從業員數、資本金、經營のやり方等から見まして、
中小企業として取り上げるべきものはどんどん取上げまして、その
指導なり助最なりを圖
つて行くつもりでございますが、
中小企業の
範圍及至は
中小企業廳の對象を法律上明示して、一線を畫するということは却
つて適等でないと
考えております。又
資金につきましては、先程申上げましたように、
中小企業專門の
金融機關の
設置を準備いたしているこは前に申上げた
通りでございますが、このほか
資金計畫、
復金融資計畫中の
中小企業關係の枠の擴大、商工組合中央金庫の活用等を考慮いたしまして、これを
中小企業廳において協力に推進して行きたい
方針であります。長々と答えましたが、この點が衆議院におきましても非常に問題になりました點でございますので、一應我々の
考えをば詳しく申述べまして御了解を得たい、このように
考えております。