○中野重治君 共産党は
原案にも
修正案にも反対であります。結論を言えば、
運賃は据置き、それが日本の
経濟の建直しに最もよろしい。これは実質的には先程休憩前に
運輸大臣自身が
認められた
通りであります。それでその理由とするところは沢山ありますが、第一は、
運賃の
値上げは大衆課税の性格を持
つておることであります。酒、煙草、それからすでに先に通信料が
値上げに
なつておりますから、私の今申上げる数字はもつと悪く
なつておるわけであります。三千七百円ベースは酒を除いても煙草、税金、
運賃で二千六百八十円になりまして、総
收入の四二・一%に
なつておる。これは通信料
値上げを入れるとも
つて悪化しておるわけです。こういう形が全体の構造の性格をなしておる。だからこれに我々は反対せぜるを得ない。それから次の問題は、これは他の人々からすでに述べられていた
通りでありますが、主として大資本家の利益のために、
貨物運賃を実質から切り下げておいて、そうしてそれを大衆的の
旅客運賃へ轉嫁する、これで穴埋めをする。このこともずつと継続的な
委員会ですでに述べられておる
通りでありまして、こういうことは許すこともできない。殊に
鉄道の利用者の九二%は三等
旅客なんですから、三等
旅客の方へ滑り込みさせる、こういうことになります。これはどこからも合法的であると言い張ることができなる。だからこれに我々は反対しなければならない、これが第二の点。第三の点は、この
運賃の
値上げが非常にインフレを促進しておる、これは今までの
政府発表そのままに言えば、
改正された
運賃が、主要商品の價格を占める割合は平均二・八七%であ
つて、昨
年度は一・五%ですから、すでに大幅に上
つておる、而も諸物價をリードする石炭について見ると、五・一五%に上
つておる。この
負担がさつき言
つたような構造として大衆に轉嫁されるのであるのであるから、これはそのままインフレの促進になる、現に問題が起るや否や米の価段が三百円に上
つておる。これは單なる
一つの証拠に過ぎない。諸物價のインフレの促進されるのであるからして、日本の
経濟の建直しの上から言えば、インフレを抑止して、これを停止させなければならんのであるから、日本産業の再建の根本の建前から言
つて、これに反対しなければならん。それから次に
鉄道の
特別会計の
予算案は、いわば編成された途端に崩壞をしておると言わなければならんと思う。仮に
運賃値上を
比較しましても、第一には
國鉄使用の資材の物價改訂は、まだ全面的に
決定しておりません。これを昨年に比べると、昨年はとにかく
予算案編成前にそれが決ま
つておる。今年はこれが全面的にまだ
決定しておらん。一種の砂上に樓閣を築くような形に
なつておる。第二に、賃金三千七百九十一円はまだ全官公労組合との間に團体交渉中であ
つて、これがどこへ行くかということはまだ
決定しておらん。第三に、一億三千万トン
輸送態勢、或いは新ダイヤ編成というふうなことが日程に上
つておりますけれども、先程
委員会の問答からも分りますように、
國鉄の施設の荒廢、これらの復興ということは、單に金額の面のみでなく、復興そのもの、物質的な復興そのものが
赤字々々で溜
つておる。それだから机上プランの五ケ年
計画さへも十ケ年掛からねばならんということに
なつておる。その五ケ年
計画が十ケ年後にや
つて復旧するということは、実を言へば、それは永久的に駄目だということを別の言葉で言い変えたに過ぎない。勿論これも他の方の言われことですが、今度の
値上げによ
つて、汽車賃は非常に高くなります。東京鹿兒島の間は往復二千円ぐらいになるのです。この
計算は大まかな
計算でありますが、そこで三千七百円ベースでは、とても人々は旅行をできないということになる。旅行を禁止するということになる。そこで非常に飛んでもない羽目に
政府自身が落込むのではないかと思われる。それはさつきも言いましたように、大資本の利潤のために、
貨物運賃と
旅客運賃とを、ああいうふうにる。そうして
旅客運賃におんぶさせるということをやらせる。ところが
旅客運賃の九二%を稼ぐのは三等
旅客である。三等
旅客に殆んど全部旅行を禁止するという
運賃の
値上げの仕上でありますから、これは昔話にあるように、何と言いますか、卵を生まそうと思
つて慾張
つて、その鷄の腹を裂くような形態に陷
つている。それだから
予算編成というものは、机の上で編成された時はすでに壞されておると経わなければならない。これに我々は賛成することはできない。
更にこの問題には、さまざまな政治上の問題が附隨しておりますが、それでは据置きでうまく行くかどうか、これは据置きで十分うまく行きます。例えば部分的なものを拾
つただけでも常に大きな経費の節約ができる。これは
鉄道関係で、闇で賄われておると言われておる物資は約三〇%であると言われておりますが、これを削れば二百十億である。石炭は御
承知のように、
國鉄は大資本家の特殊消費者並ではなく、それの三一五%で
國鉄が買
つておる、自分で値を付けて高く買
つておる、トン当り三千百四十七円九十五錢ですか、特定産業にはトン当り千円で賣渡しておる。これを同じくみずから超重点産業などと言
つておる産業ですから、千円で渡せばそれで百六十七億出る。それからやはりこれもこの間しばしば熱心に討議された石炭の熱量問題、
政府の
答弁を聽いておると、石炭は重さを使うものであ
つて、熱量を使うものではないかのごとく言われておるが。そこでこれを六千カロリーまで引上げて行くとすれば、
政府自身の出しておる
數字によ
つても、六十一億節約ができる。これだけども四百三十八億節約できる。これは余程内輪に見積
つての問題で、更に進駐軍
関係の費用を、
一般会計から十分正しく受取
つていない。この間私が
質問しましたとき、
答弁者は恰も進駐軍の使う費用を、
國鉄、日本
政府がもつと削れと要求しろと、我々が言
つておるかのごとく取
つておるけれども、我々はそういうことを言
つておるのではない。すでに発表されましたように、抑留貨車の問題のごときが、
國鉄の営業に及ぼした
影響を換算して、これを
一般会計との
関係において收支を償うようにやらなければならん。このことをもつとやる必要があるというわけであります。ことに相当莫大なものが浮いて來る。それから宮廷列車の問題もさつき言
つた通りであります。こういうものを削減しても、やはり今日の日本の経済の現状においては補填しなければならないこの間、公聽会に
國鉄の技術研究所の村木氏が、それでも百八十億程補填しなければならないという意見を、詳しく技術的な面から挙げておられるようでありますが、私共の
計算によれば、更に八十億くらいは削ることができる百億程の補填ということに
なつてしまう。それでは今の
政府案とちつとも違わないぢやないかということになる。それで私共の問題の理解の仕方をお話を聽いて頂きたいと思います。これは今まで大分問題になりましたが、
経濟運賃であるべきものが、
財政運賃に
なつたということが言われております。それで
経濟運賃が
財政運賃に
なつて、今言
つたように
國家財政そのものを破壞するようなところへ行
つておる。ところが更に問題が進んで、いろいろな党派の
関係から、
倍率に
変化が生じて
修正案も出て來ております。そうして或るところへ落着こうという趣きが見えておる。そうすると經濟
運賃が
財政運賃へ轉化し、更に
財政運賃が一種の政治
運賃とも言われるべきところへ來たんじやないかと
考えられる。そこで私共は政治
運賃ということに絶対の反対ではありません。正しく政治がどういう方針で行われるか、大衆課税をどしどし強行して辻褄を合せるように政治
運賃が行われるか。それとも百億でも百二十億でも注ぎ込んで全体の構造とを強めて行く。やはりこれもさつきも
運輸大臣自身
認められた最も堅実なる方式これに乘換えて行くために、れれを政治の基礎としてや
つて行くか。を若し
大臣自身の
認められた最も堅実の方式、この方式に轉換して貰えば、百億のところを百二十億注ぎ込んでも決して得に
なつても損にはならない。や
つて行くことが肝腎なことであります。殊に先日
政府側の話を聽きますと、こういうふうにして
運賃を上げて、それによ
つて穴埋めをや
つておる。そうしたならば
独立採算制というものは、
將來実現されるように保証されるかという
質問をしましたところが、それに対して、それはそういうふうに
努力するつもりであるけれども、併しどうなるか分らん、すべてはインフレが止まるか、増産がうまく行くか、通貨が安定するか、これによ
つて政府の目論見がうまく行くか行かんか決まるのだどいうことを言
つておる。これについて当時私は意見を述べましたが、
運賃値上そのものがインフレ抑制、増産、通貨安定で、物價に関しての全般的に新らしい物價体系の一環として問題にされておる。その部分が全体を実現するために部分で、
運賃値上をするというのであるのに、
運賃値上を規定してうまく行くかどうかは、インフレを止めるか、止めんかにかか
つておる、
從つて断言できないということに
なつておる。これは最も悪い意味での悪循環であります。而もこれは止むなく生じた悪循環ではなく、企らまれた悪循環と言わなければならない。こういうものを我々は賛成することはできない。これを撃確して、今言
つた人民の生活を引上げて行く、これを実際の根柢にして、
運輸大臣が最も堅実なる方式であると
認めた方式へ、全面的に轉換しても、これは可能である。この意味で私は、我が日本共産党は、
原案並びに
修正案に反対して、据置を主張する者であります。