○菊川
委員 私先ほどの
山花君の
質問の中の
労働組合法第十
一條違反の問題に関連して、
鈴木総裁にお尋ねをしたいのであります。なお同時に加藤
労働大臣へのお尋ねになる点があると思います。
先ほど前田君の
質問に対しての
鈴木総裁のお答えでは、直接に
労働関係法規の改正ということは、法務廳として関與はしておられないということであります。ところがこの
労組法の十一條の問題につきましては、現在のままでは
労働者と雇主の間において粉爭をさらに激発するおそれがあるのみならず、当面増産の上においても、これを阻害しておるというふうな点があろうと思います。この問題につきましては、
法規の改正の立場から、またそこまで行えないといたしますならば、現実にこの
法規の
欠陷を救済するという立場から、何らかの対策がなければならぬと思うのであります。私はこういう点から
一つの例を申してお尋ねしてみたいと思います。これはもちろん現在進行中の爭議でありますから、この爭議そのものをこの
委員会が取上げていかに処置をするかということを申し上げるのではないのであります。それは山口縣の大浜炭鉱の爭議であります。これは昨年の八月二十日に端を発しています。問題は当時の炭鉱の六月分の
賃金差額金が八月に至
つてもまだ支拂われていない。あるいはまた無償で配給をされるところの特別の増産拡奬の酒が、当時会社が有料で配給しておる、そういうことから代金の拂戻しを要求した、そういう点と関連して大浜炭鉱の所長の責任を追究する。こういつた問題を中心にして起つたのであります。またこれが山口縣の地方
労働委員会に提訴になりました。地方
労働委員会でもいろいろこれについては斡旋をしたのであります。ところが地方
労働委員会だけでは会社がなかなか應じないというふうな
事情から、九月の二十九日には東京にまで代表者が参りまして、当時石炭廳、それから石炭増産協力会、さらに山口の地労委、こういうようなものの調停を煩わして、
一つの覚書ができたのであります。その覚書に附随して、さらにこの爭議については犠牲者を出さない。こういうことまでもつけられまして、そうして十月四日にはストライキが打切りとな
つて、全員が從業したのであります。しかるに十一月の五日に当
つて、会社はその覚書と附帶協定に反して、突如として工員の七十六名、職員の十四名に解雇を申し渡したのであります。そこと
労働組合側といたしましては、再度昭当の地労委に提訴をいたし、地労委といたしましてはこれを明らかに
労組法の十一條並びに労調法の四十條違反であると断定いたしまして、山口の檢察廳に告発をしたのであま回す。十一月の二十四日以降檢察廳では重盛鉱業所長を起訴するというふうなことに
なつたのであります。それ以來十二月の十日、二十三日、二十五日の三日間の審理の結果、山口地方
裁判所におきましては、今申しました
労働組合法違反の事実を認めて、重盛所長に対しては罰金五百万の判決を言い渡したのであります。しかしなばら
檢事側といたしましてはこれに対して禁錮二箇月を求刑いたしておりましたので、その鉱業所長並びに
檢事両方が廣島高等
裁判所に控訴することに
なつたのであります。その後五月の二十一日に至りまして、廣島県高等
裁判所では重盛所長に対して禁錮二箇月、三年間の執行猶予の判決を下したのでありますが、引続いて重盛所長はこれを最近東京に移して、そうして
最高裁判所で爭う。こういう事態にな
つているのであります。このように
一つの
労働組合法第十
一條違反というものが、発端以來すでに十箇月以上経過しており、なおおそらく東京に移
つてから数箇月はかかると思うのでありますが、その間においてはすでに現地におきましては、七十六名の炭鉱從業員、十四名の職員が解雇されて、そのままにな
つております。これに対してはわれわれ
組合側といたしましては、毎月
組合員が負担をしてその家族の
生活を支えながら、この
裁判の闘争をやらなければならないことにな
つているのであります。しかも会社側はこの期間に、この
組合のおもだつた者を現場から追出して、そうして工場の中を切崩して第二
組合、いわゆる御用
組合をつく
つて、その間において
裁判の長引く間に、現場において問題をうやむやにしてしまおうということで、一生懸念や
つているというのが現状であります。そいわいにして山口の地労委においては、その御用
組合に対しては、これはやはり
法規違反であるとして、禁止をするというふうな挙に出ましたからして、頓挫はいたしておりまするがゐ今なおこういう
状態が現場においては続いております。でありますから、こういう点から見ますというと、せつかく
労働組合法第十一條というものがありましても、これに対してどこまでもこれを控訴から、さらに
最高裁判所までも
つてくるというふうなことで、違反は覚悟で引延ばしをする。しかもその間において從業員の大量解雇をやる、さらに
組合の切崩しをやるということでありますれば、何ら十一條というものが労資の間の協力を好意的に進めるということには役立たないという結果になるので、さようなことから
考えまして、一体この十一條というものを今後改元することはお
考えにな
つているかいないか。それから現在ただ十一條というものだけをいじることではなくて、
労働法規全般にわた
つていろいろな見地からこれが急に間に合わないといたしますまれば、この
欠陷を救済する上において、何らかの方法をお
考えにな
つておるかどうか、この点を私お尋ねを申したいのであります。先ほ
ども山花君に対する御
答弁によりますと、仮執行処分のごとき方法があるということでございまするが、これはとうていわれわれ
労働組合運動をや
つておるものにとりましては、その救済方法ではないということを
考える。何らかそこにやはり明確な救済方法がなければ、この
法規だけでも改正を断行しなければならない、こういうふうに
考えております。なお附け加えて申し上げますが、この大浜炭鉱は、昨年において八百人ほどの從業員を使いながら、しかも現場において六時間交替を実施して、一日四交替、しかも非常な條件の惡い山でありまするが、從業員のはとんど血の出るような協力によ
つて一箇月七トン以上の出炭成績をあげておる山であります。現在においては遺憾ながらそれが落ちつつあります。
從つて從業員そのものは惡い條件の山においても非常に熱意をも
つておりまして、数炭増産に邁進しつつあつたのであります。しかもこういうところにおいてもなお十
一條違反を行うところの資本家が現われてきて、現在せつかくの
労働組合法規で何ら救済できない。こういう点があるのであります。しかもさらにこの間四月におきましては、東京においては
労働省の労政局長が中心になられて、その間において從業員を一時大部分を仮復職の形にして
仕事をする。しかし現地は一應休戰
状態にする。
裁判は
裁判として進行せしめるというふうなことをお骨折りを願つたのでありますが、そのときは会社側も一應了承したのでありましたが、現地に帰
つてみますと、それすらもやはり拒否して、從業員を路頭に迷わしておるということをやりながら、しかもあえて東京の
最高裁判所までも
つてい
つて爭
つておる。だれが
考えましても、この
事件は常識をも
つてすれば無罪になる得るはずがないにもかかわらず、
有罪は覚悟の前であるが、半年でも一年でも爭うことによ
つて、
組合を切崩そうという魂膽に出ておることは明瞭であります。こういうことがありますから、これはこの
事例を私申し上げまして、この問題の解決に対してどうこう言うのではないが、おそらくこういう
事例が全國に相当あるということ、また今後こういう行動をこのままにしておきますれば、方々にこういうものが出てくるということをおそれるのであります。この点についてお尋ね申し上げたいのであります。