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松永政府委員 ただいま
議題となりました
夏時刻法案の
提案理由を申し上げます。
この
法案は、欧米各國におきまして古くより実施せられ、好成績をあげておりますいわゆる
夏時刻、英語で申し上げるとサンマー・タイムあるいはデーライト・セーヴイング・タイムの
制度、すなわち
夏季の
一定期間を限り、
標準時より
一定時間繰下げた
時刻を常用する
制度の、きわめて合理的かつ有益なるに鑑みまして、これをわが風土に適合するようにして採用しようとするものであります。
その主要な利点は、第一の
國民生活において
日光を十分に利用することによ
つて、
國民保健の
増進に寄與し得ること。第二に
光源としての
日光を十分利用することによ
つて、
電力、
石炭等の
重要資源を節約すること員できること。第三に
夏時刻という
國民常用の新しい
標準時刻を採用することにより、心理的に無理なく
國民の間に
日光活用のよき習性が生れること等にあるのであります。
さて本
法案の
内容について御
説明いたしますと、從來わが國におきましては、
明治十九年
勅令第五十一号(本初
子午線経度計算方及標準時ノ件)及び
明治二十八年
勅令第百六十七号(
標準時ニ関スル件)等によりまして、東経百三十五度の
子午線をも
つて本邦一般の
標準時と定め、これを
中央標準時と称え、
國民一般においてよく帶用しているわれでありますが、本
法案によりますと、毎日四月の第一土曜の
中央標準時の午後十二時から、九月の第二土曜日に次く日曜日の
中央標準時による午前零時までの
期間は、
中央標準時より一時間ずつ繰下げた
時刻、すなわち測に申しますと、時計を針から一時間進めた
時刻を新した
夏時刻と定め、原則としてこれを常用すべきものといたしたのであります。もつとも、法令、條約等によりまして、
國際関係や学術上の
必要等から特に
中央標準時のよることを定めた場合は、例外として
中央標準時によることとな
つております。なお以上の結果、四月の第一土曜日に次ぐ日曜日は、午前一時より始まることとなりますので、同日は二十三時間をも
つて一日とし、また九月の第二土曜日の一日は特に二十五時間として、これに次ぐ日曜日の
中央標準時午前零時において
中央標準時に復帰することといたしました。以上が本
法案の第一項の規定すところであります。
次にただいま申し述べましたように、四月の第「土曜日に次ぐ日曜日は、午前零時より一時までの一時間が消滅し、九月の第二土曜日の午後十一時より、翌日曜日の午前零時までが二時間となりますので、それぞれその両日にまたがる
法律関係につきまして、時間の
計算上特別の
手当を必要とする場合が予想せられますが、それらは政令をも
つて規定するのが妥当と考えられますので、第二項にこれに必要なる
委任規定を設けた次第であります。
次に
附則について申し述べますが、第一項につきましては特に御
説明申し
上ぐることはございません。
附則第二項は、本年はすでに本則に定める四月第一土曜日を経過しております
関係上、始期を特に五月の第一土曜日、すなわち五月一日の午後十二時とする旨を定めたものであります。
以上か本
法案の
内容の概略でありますが、本
法案が成立施行せられますれば、
國民は晝間の長い
夏季の間、早期及び夕刻の
日光を十分利用し得て、
國民保健の
増進が期待せられますのみならず、
光源用電力の
相当量が節減せられ、ひいては現下の
石炭事情にも好影響を與えるところが少ないと存ずるのであります。何とぞ愼重御審議くださいまして、速やかに可決せられるようお願い申し上げます。