○美濃部
政府委員 それでは午前中の御
質問、つまり各省の統計
調査がどういうふうにな
つておるかという御
質問に対してお答えいたします。御承知のように、戦争中
日本の統計制度は、ほとんど中央におきましても、殊に
地方におきまして、壊滅的な状態に陥
つておりましたことは、御承知の
通りでございます。それが終戦後二年半でございますが、今までの間に徐々に整備してまいりまして、今日におきましては、農林省、
商工省及び労働省においては、
調査統計局という一つの局ができるところまでに
充実してまいりますし、また
大蔵省それから
法務庁及び厚生省におきましては、最近多少名前はいろいろでございますが、
調査統計部というように、部と称するところにまで整備
拡充してまいりました。またセンサス的な
調査を主としてや
つておりますので、総理庁の統計局も非常に整備してまいりまして、これを中央統計庁ということに昇格してはどうかというふうな話も出ておるほど、整備してまいつたと言うことができると思うのであります。また
地方――これは後になおお話いたしますが、
地方の統計組織といたしましては、
地方庁にございます統計課を非常に整備いたしまして、この
地方庁の統計化におきまして、国の重要な指定統計の
調査に従事いたします者は、全額
国庫負担の
給与をするということにいたしまして、
給与の面におきましても、またその人員におきましても、格段の整備をいたしております。と同時に、さらに最末端にございます市町村の統計吏員という者も、従来のように五つも六つもの
事務を兼務しておるというふうなことをやめまして、全額
国庫負担の専任統計吏員を置くというところまで進んでおります。この
都道府県市区町村に配置いたしました専任統計
職員と申しますのは、
国庫負担にいたしますが、全体で一万六千五百三十人に及んでおります。このように統計
機構というものは、よほど整備してまいりましたと同時に、こういう
機構を基礎にいたしましてや
つております現実の統計
調査というものも、最近はよほど進歩してきたと言
つて差支えないと思います。たとえば今年度計画しております基本的な重要な統計
調査を算えてみますと、まず総理庁の統計局においては、常任人口
調査、
住宅調査を本年度は今までか
つてやらなかつた初めての
調査を行います。それから最近たびたび問題にな
つております消費者
価格調査は、相かわらず続けますし、この消費者
価格調査は消費にはいります消費財価の
価格及び
価格指数を出すことを主たる目的としておりますが、それと同時に、この各階層の家庭における、あるいは世帯における現金
支出額の
調査にもな
つております。これは現金
支出の
調査だけでは十分でありませんで、その現金をどういう収入源によ
つて賄
つているかということがわからなければ、画龍点睛を欠く次第でございますので、今年の七月からは、この消費者
価格調査の裏表の
関係にございます収入
調査を
実施する予定にな
つております。それから
給与問題においていつでも問題にな
つております毎月勤労統計
調査、これは今年度においては、――これもまだはつきりきま
つておりませんが、労働行政と密接不可分の
関係にございますので、労働省が企画その他の責任を負い、
調査それ自体は、最も整備した組織をもつた統計局にやらせるという仕組で、その内容も
改善いたしまして、続けて
実施していくつもりでございます。それから失業あるいは有業人口数を推定する基礎になるいわゆる労働力
調査は、G・H・Qの命令によ
つて本年度もなお続けてまいります。
それから
商工省においては、今年度からは生産、特に
商工省の
所管に属します工業生産を、従来とはまつたく違つた方法によ
つて、
商工省が
自分で
調査していくという方式で、いわゆる生産動態統計を
実施することになりまして、着々準備を進めております。それから
商工省といたしましては、例年の
通り年末には工場
調査を行いますし、今年度は工業のみならず、商業に関する
調査も
実施する予定にな
つております。
それから農林省におきましては、作況報告
事務所を中心といたします主要農作物の収穫
調査はもちろんのこと、やはり作況報告
事務所を通じまして、作付面積の
調査もいたすはずにな
つておりますし、耕地面積及び収穫
調査のみならず、農家経営の
調査といたしましては、来年の二月一日に、従来とはまつたく異つた新しい方式に基く農業センサスを
実施いたしますし、同時にまた農業のみならず、漁業についても、漁業権の
調査と漁業経営の
調査とを今年度はいたす予定にな
つております。
それから
大蔵省の
所管といたしましては、法人の形態をも
つております会社の統計
調査の整備をはか
つておりまして、この九月一日には会社に関するセンサス的
調査をいたしますし、さらにその後の会社の動き方、動態をつかみますために、登記所の登記を使いまして、会社の動態統計を続けていく計画を立てまして、着々準備を進めております。さらにより以上こまかい会社の内容を
調査いたしますためには、この九月一日よりの会社統計の結果をユニヴアースといたしまして、抜取り
調査を行
つて、来年度からより詳しい会社に統計
調査をや
つていこうというふう考えております。
さらに最後に、今税その他あらゆる面において最大の関心事にな
つております国民所得の
調査でございますが、これは
日本の状態は、残念ながら非常に遅れておりまして、材料の不備その他から申しまして、正確なる国民所得の計算というのは、不可能に近い状態にな
つておりますが、これを何とかしていろいろな政策の基礎になるために使用に耐える程度にまでよくしようという気持から、
経済安定本部の中の
財政金融局の中に、国民所得
調査室をつくりまして、私たち統計
委員会と共同いたしまして、アメリカの最新式の国民所得の計算方式に則りまして、大改革をすべく
努力中でございます。もちろん今申し上げましたような統計
調査は、
日本の統計の体系における基本的な統計
調査でございまして、第二次統計、つまり行政
事務を行
つていくことの附随的な結果として出てまいります。第二次的な統計に至りましては、無数にあるとい
つていいのであります。またこれらの
調査で、
日本の統計の体系が整備したとは、もちろん申せませんけれども、一応各面における基本的な
調査は、やや整備の段階にはいつたとは言い得ると思うのであります。しかしながら、問題は体系ができただけでは少しも解決いたしませんので、その
調査が正確であるということが、絶対的に必要であると思うのであります。この正確な
調査をするという意味におきまして、
日本の現状は、非常に困難な状態にございますので、その点において、私たちは一番苦心をしておるのでございます。まず第一の前提といたしましては、先に申し上げました末端における
地方統計
機構が整備していなければならないわけでありますが、一万に近い市町村の市町村役場に優秀な統計吏員を配置するということは、
予算の面その他からい
つて、ほとんど不可能に近いと言わなければならないと同時に、末端における
調査に当る人が、正確に
調査してくれなければ、正確な
調査ができないことは、言うまでもないのでございますから、この末端の組織をどういうふうにして整備していつたらいいかというのが、私たちの頭痛の種にな
つておるのであります。この点アメリカの状態などは、非常にうらやましいのでございまして、アメリカの
調査機構におきましては、
地方統計
機構というものは、ほとんどまつたくございませんで、郵便でも
つて小票を
調査対象に配
つて、その返事をもら
つて集計する。そうして各
調査される
人たちが正確な申告を約束
通りの期日に郵便で出すというふうな仕組にな
つておるそうでありまして、そういう状態にまで
日本がなりますればよろしいのですが、現在のところにおいては、末端の組織を整催するという点が、非常な困難な状態に立ち至
つているわけなのでございます。それからさらに、もちろん
日本の人民全体の統計の重要性の認識程度が、非常に水準が低いことも、不正確な虚偽な申告が非常に多いことの原因にな
つておりますので、私たちは、一般民衆に対する統計の重要性の宣伝ということも、講演会その他を通じて、できるだけ宣伝してまいりましたが、今のところ、まだ十分には行
つていないということは、明らかであると言わなければなるまいと思うのであります。しかしそのほか現下の
日本の
情勢におきましては、正確な統計をとることに対しまして、根本的な障害とも思われるものが二つございますので、その点非常に苦慮している次第なのでございます。その一つはこういう統制経済のもとにおきますと、そのとられました統計というものが、統制のための
資料として使われるということなのでございます。これは集計されました結果である結果表が統制のための行政的
資料として使われるというなら、まだ問題は少ないのでございますが、しかしほかに
資料というものが非常に不整備でありますために、集計の結果表だけでなく、申告のための小票それ自体が、あるいは課税の目的のために、あるいは供出のために、あるいは余裕
住宅の課税のために、あるいは配給の是正のために、というふうに、行政それ自体のために用いられますので、国民はたださえ統計の重要性を十分認識しないところにも
つてまいりまして、統計の
調査がくれば、これはすぐ課税に使われ、あるいは配給人口の是正に使われるということで、ますます眞実な報告をしないという傾向がはげしくな
つてまいりますので、この点私たちとしては、統計のプリンシプルとして、小票は行政的目的には使わないというプリンシプルを確立したいと思
つて、
努力している次第であります。それからもう一つの難関は
予算の面でございまして、あらゆるその他の事業も同じことであると思いますが、統計
調査というものは、特に一定の
予算額以下に下りますと、どうしても正確な
調査はできないという性格をもたざるを得ないものなのです。そうして一方
予算というものは、御承知の
通り、非常に窮乏化しておりますので、もつとも重要なる統計、どうしてもなければならない統計に、
調査を集中するといたしましても、ややともいたしますと、その
予算額が、とうてい正確なる
調査をなし得る程度以下の
予算しか得られませんので、この
予算の面から申しまして、正確な
調査をすることに対する非常な障害があるわけなのでございます。こういう根本的な障害がございますので、思うようには
日本の統計の進歩発達をはかることができ得ませんことは、まことに残念至極でございますが、しかし現在の許された状態の範囲内におきましては、私たちといたしましては、各省と全面的に協力いたしまして、最善の
努力をしておるものと考えます。さらにもう一言言い添えておきたいことは、来年の六月三十日、つまり一九四九年の六月三十日から五一年の七月一日の二年間にかけまして、アメリカにおいて国際的な比較ができるような大規模なセンサス的
調査を行う計画がございまして、
日本もこの一九五〇年センサスと呼んでおります国際的なセンサスに加入するように、メモランダムをもら
つておるのでございます。これはまだ計画がすつかり熟しておりませんので、どういう
調査を行うかということを、はつきり申し上げられませんが、人口
調査、
住宅調査、事業所統計
調査、工業
調査、商業
調査、農業センサスというようなものを基本にしていたしたいと思
つております。さらに従来の
日本の統計
調査は、国際的な比較にはとうていたえ得ないようなふうにつくられておりますので、
日本の統計とアメリカの統計を比較しようと思
つても、多くの場合において比較できないのでございます。たとえば自動車の製造工業という項目をと
つてみますと、従来の統計によりますと、
日本の自動車工業の事業所の数の方が、アメリカよりもはるかに大きいというふうな結果が出ております。これは
日本の自動車工業にはそこら辺の町に見かけます修理工場まで全部はい
つておるにもかかわらず、アメリカの統計においては、近代的な装備を備えた純粋な自動車工業だけが、自動車工場として算えられておるために、こういう比較不可能な統計
調査の結果が出てくるのでありまして、ただいまアメリカからいろいろなエキスパートが参りまして、
日本の統計
調査を近代化し、そして国際的な比較にたえ得るように直す仕事を、全力を尽してや
つております。それでございますから、そういうふうな規模において、この大センサスを、いわゆる国際的統計コンクールのような舞台においてなし遂げ得るとしますならば、
日本の統計も、これを機会に格段の進歩をするだろうとひそかに喜んでおる次第でございますが、ただ問題は
予算の面でございまして、この大規模な
調査を他の世界の各国に負けないような程度にやりますには、非常な額の
予算が要るのではないかということ、それがどこまでその
予算の
支出が許されるかという点を、非常に懸念をいたしております。それからまたここでもう一つ御報告しておかなければなりませんことは、御承知だと思いますが、国際連合の社会経済局だつたと思いますが、それの一部分に、極東及び東亜の経済
関係に関する
調査小
委員会というものができておりまして、上海にその本拠が置かれておるわけでございます。ここはおそらく東亜におけるマーシヤル・プランみたいなものをつくることが、その任務でございますと推察いたしますが、そこからは厖大な
日本の経済に関する統計の
資料の提出を求められまして、昨年の十二月にこの
調査を私たちの方でまとめて提出しておきました。そして私たちの方と、最も密接な
関係にございますレサーチ・アンド・プロブレム・セクシヨンのチーフでございますロスという方が、今度極東経済復興
委員会の
事務局長に就任して、八月一日に赴任されることにな
つておりまして、そしてその際にわれわれの方と統計
資料の提出において密接なコネクシヨンをも
つてもらいたいという
希望を述べられておりますので、単なる統計
調査の作成という面においても、私たちの働く場所が拡大されつつあるように感じておる次第でございます。簡単でございますが、御
質問に対してお答えいたします。