○徳島
公述人 ただいま御紹介にあずかりました徳島であります。午前中の
公述におきまして、
風早さんに対して相当突つこんだ御質問がありましたし、またその
歳入の御説明については、相当一部の方で揶揄的な雰囲気がありましたので、私は主としてそういう
歳入の面について、餅屋は餅屋としての立場から、一應私の
意見を申し上げたいと思います。ます説明の順序でありますが、きよういただきましたプリントに
從つて、第一の
間接税中心主義に対して、どういうふうな
意見を
もつかという点でありますが、御
承知の
通り、本
年度の
予算におきましては、
間接税の
増徴歩合が非常に急激でありまして、二十二
年度においては大体直接税百に対して
間接税は專賣益金を含めて百六、大体半々であります。ところが本
年度予算におきましては、直接税百に対して
間接税が百四十三、つまり、直接税においては大体昨年にくらべて一倍半殖えておりますが、
間接税においては二一六%、二倍以上に殖えているのであります。それでは
間接税中心主義が
インフレーシヨン下の
租税政策としてやむを得ないかという点になりますと、これはわれわれとしてはやむを得ないと言い切れないのであります。租税制度におきまして、もちろん直接税中心がいいのは申すまでもないことであります。できるならば直接税中心で担税能力に憾じた
課税をすべきだ、これは皆様方も御異存ないことと存じます。問題は結局直接税でとれないから
間接税でとるということにな
つてまいります。しかし
日本の從來からの
租税政策におきましては、とかく
間接税依存主義と申しますか、とりやすい方からとるというふうな方針が一貫して流れておりまして、それが今年の
予算におきましても、大体直接税は頭を打つたから、もう
間接税に頼らなければならないというので、最も猛烈な、最も大衆
課税的な税金である
取引高税、これは非常時の租税として諸
外國の例にもあるのでありますが、それが本
年度登場したわけであります。それでは直接税はもう頭を打つかという問題にな
つてくるわけであります。私は総体的に考えますならば、現在の
國民所得に対する割合からい
つて、もう頭を打
つているのではないかという
意見でありますが、しかし同じ頭を打ちながらも、
間接税に頼らなくてもまだ直接税でとれる方法があるという
意見をも
つているものであります。その具体的な点につきましては以下項を遂
つて説明するうちに大体御了解願えると思うので、次の源泉
課税と
申告納税の不
均衡ははたして是正されたか。直接税において一番大きな問題はこの問題であります。つまり源泉課程と
申告納税との間に大きな不
均衡があつた。
課税の時期においてまた
課税の充実において、ほとんど比較にならないくらいの不
均衡があつた。これはすでに御
承知の
通りであります。源泉
課税におきましては、毎月きちんきちんと給料から天引されておりますが、申告納租の方におきましては、皆様御
承知の
通り、昨二十二
年度は非常にこれが時期的に遅れまして、そして昨年十二月から本年の一月にかけて、租税完納運動が大々的に行われたような次第であります。この
申告納税の方は、その後一月以來大体事態が
改善されたと申しますか、非常な権力が加わりまして、大体において
予算額程度はとれるような見透しがついたのであります。しかし時期的にはそういうふうな点で非常に不
均衡がまだ残
つておる。本
年度におきましても、すでにもうそういう時期的な不
均衡は起
つております。つまり源泉
課税におきましては、一月分以降五月分まではもう月給袋から天引されておるのでありますが、申告
課税の方におきましては、一月以來の利益対しては、まだ一銭も納入されていない。こういう状況であります。それでは時間的な問題を離れて、
課税の充実という方から言うとどうか。これもすでにいろいろな方から指摘されるまでもなく、非常に不
均衡が起
つておる。しかし同じ不
均衡でも、この
申告納税の中で、農民に対する農業
所得税、あるいは商工業者の中でごく小さな業君に対するもの、こういうもの比較的充実した
課税が行われております。これは今度の更正決定にあた
つて比較的充実されております。しかしわれわれとして最もおとらなければないもの、それは現在の
インフレ利得であります。こういう点につきましては、ほとんどと言
つていいくらいとれておりません。
從つて総体的に見れば、
課税の充実の点において大きな開きがあります。しかしその開きのある中で、中小商工業者あるいは農民に対する
課税の充実の点においては、ある程度更正決定によ
つて均衛が得られた、あるいがそれ以上に
課税されておる向きもあるかもしれないということが考えられるのであります。
それでは次の問題の新
所得税法案によ
つて、はたして
勤労者の
負担は実質的に
軽減されたか。現在
政府は
勤労者に対する
所得税を
軽減した代償として、
取引高税を用意しておるのであります。しかしはたして
軽減されたかどうかという点は、大きな質問があります。まず第一に考えていただかなければならないことは、新
賃金ぺースは昨
年度の税法制定当時に比べまして
——昨
年度の税法と申しましても、これは
追加予算のときに、勤労
所得税は
軽減されております。その
軽減された税法制定当時に比べてすら、現在の
賃金ペースは倍以上にならんとしております。これは
政府の考えておる案でも倍以上になろうとしております。一應かりに計算を簡單にして
賃金ベースが倍に
なつたといたしますと、この
負担割合は基礎控除額の
引上げにもかかわらず、
課税額はかえ
つて殖えるというような結果にな
つております。
一應所得額を倍にして、もとの所得額二分の一の所得との税額のグラフを書いてみますと、独身着の場合は、最初から全部
賃金べースが倍に
なつた場合は、今度の
所得税法の方が税額がよけいかかるという計算になります。また扶養家族三人ある場合の計算をいたしますと、大体月収七千円程度からつは今度の
所得税法の方が
負担額が多いという結果になります。
從つて実質的にこれは決して税
負担は
軽減されていないというこが言えるのであります。
軽減と申しますが、物慣指数あるいは生計費の指数が上つたために基礎控除が上るのは当然でありまして、これは
軽減でも何でもぽいということが言えるのであります。たどえばドイツのあのインプレーションのもう爆発点に近づいた時期からは、源泉
課税の基礎控除はほとんど過ごとに変
つてい
つたのであります。これは
軽減でも何でもなく、当然そうなるべきものであります。それでは次の
申告納税の問題を一應飛ばしで、
農業課税は
農業生産に悪影響を與えないかという点について申し上げたいと思います。この点につきましては、十五日の各新聞に出ておりましたが、十四日の新聞記者会見におきまして、G・H・Qの天然資源局の農業課長のイーヴイスさんは次のような
意見を発表せられております。
日本の農民は、全人口の四七%を占めておるが、その収入は二一・六%にすぎず、さらに世界まれに見る高率税金が課せられ、新たに入手した土地すら旧地主に返還する例があり、土地
改革の成果がなくなるおそれがある。また批判されるのは、農林官僚よりも大藏官僚にあり、大腰官僚を非難するとその報復が恐ろしいという奇妙な習慣すらある。大藏官僚は農民にか
つてに
課税し、その権限を秘密な方法で行使しておる。これらの処置を索制し得るのは國会である。
こういうふうな
意見がG・H・Qの課長さんから発表されております。それでは一体農民はどのくらいの
課税を受けておつたか。こういう点で國民全般から比較して、はたして公正な
負担を負
つておるたかどうか、この点について御説明申し上げたいと思います。
その前に一体國民全体としてわれわれはどれくらい税を
負担しておつたか、この点について昨
年度の
國民所得に対する税
負担の資料が税制
委員会並びに國会の方へ提出されております。それにようますと、
日本は英米に比べて國税の
負担割合が非常に低い。英國は三七二%、米國は二〇・九%、しかるに
日本は國税において一七%しか
負担してない。この一七%の
負担割合をさらに直接税と
間接税にわけてみますと、先ほど申し上げました割合でわけると、大体直接税は国民所得に対して八・二%、こういうことが言えると思います。つまり国民全体で八・二%を
負担せねばならなかつた、こういう結果にな
つておりますが、農民はどれだけ
負担したか。これを農林省の統計調査局の発表に、よ
つて調べてみますと、調査農家が千九十六戸で、この農家の平均申告所得額が二万六千五百四十七円、これによ
つて税務署がやつた更正決定の金額が平均一戸当り三万九千十七円これに対する
所得税額が八千八百三十六円、更正決定に対して割合は二二・六%、こういうようにな
つております。さらにこれを農家の申告に対しますれば三三・三%という数字が出てまいります。つまり国民全体の平均では八・二%しか納めないのに、農家の方ではその二七・五%、つまり大方の三倍近く納税をしておるということが言えるのであります。
從つてこれは相当大きな影響を與えるということは、当然予想されることであります。殊に農家の
課税におきましては、ほとんど一律に割当
課税——名前の点においていろいろ大蔵省あたりで
意見がありますが、実質的に言えば割当
課税であります。つまり大蔵省の方で大体全体の租税
負担の割当をきめまして、各財務局に振り当てる、財務局は各税務署に振り当てる、税務署におきましては、農民所得に対して反当りの所得というものを大体種類別にきめます。
從つて税務署におきましては、機械的に耕作面積にその反当りの所得をかけ合わして決定いたします。もちろん実際の調査もいたします。しかしほとんど人員が少いのと、調査の時間がないので、そういうこまかい計算をする暇がないので、機械的な仕事にな
つております。
從つてそこに非常に大きな不合理があります。第一の不合理は、経営規模によ
つて収入が非常に違うという点を無視しておる。それから供出制度によりまして、小農民は供出制度の犠牲にな
つて比較的不利な立場に立
つておる。こういうものも考慮されていない。これは当然考慮すべき問題である。というのは、これは税務官吏としても、ほとんどみな
承知しております。しかしそれをやるだけの時間がない、人がない、これが現状であります。從いまして、これは非常に過酷な税金にな
つておるということは、われわれとしてはやむを得ないと言えないのでありますが、現状はそういう次第であります。それからそれでは農民はそれだけの
負担をしておるが、
勤労者はどのくらい
負担しておるか。これも具体的な数字を上げて申し上げますと、エコノミストによ
つて大体勤労収入の平均を調べてみますと、去年の七月当時のことでありますから、所得続が改正にな
つて軽減された月であります。この月の平均勤労収入が四千二百六円であります。これに対して大体
消費單位から家族数を換算いたしまして扶養家族三人という平均にしてみますと、税金が六百七十円かかります。そうすると、大体税金の
負担割合は一五・九%、こういうことになります。つまり
勤労者は全体の平均の一九三%、つまり二倍近い
負担をしておる。こういう結果にな
つております。こういうふうに
勤労者や農民というむのは、米價が
政府の一方的な値段によ
つてきめられたり、あるいは
賃金が
政府の方針によ
つて非常に低くきめられて、その画だけで非常に大きな犠牲を拂
つておるのに、
課税の面において最も能力の少い者が最も大きな
負担をしておる、こういうことが結論的に言えるのではないかと思います。それではどうしてそんな結果になるのかというと、これは申すまでもなく、
國民所得の中の相当部分が
課税されておらないから、こういう結果になるんだ。結論的に言えばそういうことになります。それではどれくらいの脱税があるか、これは先ほどの質問でもいろいろつつこんで聽かれましたが、この点につきましては、資料をも
つて私から申し上げたいと思います。
福井税務署に照会して調べた資料でありますが、これは全國的に一應照会を出して調べてみたのでありますが、二十二
年度の大体
申告納税の
所得税の目標指示額、これは
予算に合わした目標指示額であります。それは大体二億三千七百十九万二千円、これに対して調査額は全体でざつと三億であります。こまかい数字を省きます。この目標指示額二億三千七百万円の中で、福井税務署では脱税の摘発をいたしました。それはわずか三件の大口の脱税の摘発でありますが、その三件の脱税額を合計いたしますと五千三百四十三万九千円、つまり
申告納税の目標、つまり
予算の割当額の大体二二%、わずか三人分脱税がこれだけのものを脱税しておつたということになるのであります。またこの場合問題になるのは収入未済額の方でありますが、福井税務署は、大体目標額に対して調査額はそういう結果にな
つておりますが、収入調査額の方では二億六百万円しかはいらずに、結局収入の割合では八六%しかはい
つておりません。そうして未済額の方は九千四百万円、大方一億円近くの未済額でありますが、それで三人の脱税の未納額を合計いたしてみますと四千六百万円、つまり未納額の約半分は三人がその責任を負
つておるというような結果にな
つております。これは一例であります。
從つて現在この
インフレ利得に対する調査を拡発するならば、われわれ想像できないようなものがとれるのではないか。これはもちろん
インフレ利得の性質によりまして調査が非常に困難だということは当然であります。しかし現在はこういうものに手をつけるだけの人がないのであります。最近の新聞に上りますと、
政府の方は今度
インフレ利得を徹底的に捕捉するために、國税査察官というものを約一千名簡抜して、大蔵本省に二百名と財務局に八百名置くということを発表しております。しかしこれは発表しておるだけであ
つて、はたしてこれがうまくいくかどうか、非常に疑問であります。その疑問の理由を申し上げますと、同じくこういうことを発表しております。税務職員の職責の特殊性に対應する任用資格、職階、給與、身分その他に関する制度を確立して、量及び質において所要の人材を確保する。つまり職階制度において有利にするから、量及び質において人材が集ま
つてくる、こういう説明であります。しかしながら、不思議なことには、優秀な者を簡抜するという大蔵本省、あるいは税務署、これが今度の
政府が二千九百二十円ペースにおいて企図した職階制においてはまるで逆であります。つまり優秀な者を財務局に從來からも簡抜してお
つたのでありますが、今度の職階制では、財務局は税務署よりも一号下げる、こういう方針であります。これはわれわれは絶対に反対しておるものでありますが、実施本部の意向だということでその方針を押つけてきております。大藏本省につきましては、
一般職はもちろん財務局よりもまだまだ下であります。つまり優秀な者ほど職階が下だという結果にな
つております。こういうような職階制を実施して、どうして優秀な者が集まりますか。われわれは今
政府がやろうとしておる職階制に大きな疑問をも
つております。また税務官吏の職階制を有利にするということを発表しておりまが、これは非常にわれわれとしては不満足であります。昨年の十一月におきまして、議会の審議を経まして、税務官吏に対する特別手当が成立いたしました。その結果われわれとしては、約月収の二割五分に相当する特別手当をいただいてお
つたのであります。これは一月から三月までの実績であります。待
つて今度の職階制においてこういうものを織りこむということになれば、当然二割五分というものが職階制において認められなければならない。こういう主張をわれわれはも
つておるのであります。主税局の案も最初はそういう案でありました。ところが途中で大蔵官僚の中でごたごたいたしまして、これが実施本部の意向だというので、われわれが協議してから一月経
つて示されたる案では、これは大方半分近く減されて、二割五分の特別手当相当額は一割三分に減
つてしまつた。こういうふうなけちな考えで、
政府は
インフレ利得をとろうとしておるのでありますから、およそどういうことか想像にあまりあるのであります。われわれといたしまては、この
インフレ利得を徹底的に調査するために、いちいちな方法を考えておりました。われわれとしては、特別調査班を設ける必要があるというので、盛んにこの意味の宣傳をしておりました。そして官府の方で
——官職というより大藏省の官僚の方で、積極的にこれに着手しないので、それではわれわれ
労働組合でこれをやろうじやないかというのでやり出しますと、これは
労働組合がやるのはいけない、官紀紊乱だ、おれの方でやる。今度は
労働組合で積極的に自発的にや
つてはいけないが、おれの方がやるというので、特別調査班というものが官制ででき上りつつあります、これでも結構であります。しかしそういうふうに何でも面子にとらわれて、われわれがやろうとする熱意を冷却さす、こういうふうな考え方で、どうして積極的に
インフレ利得というものをつかむことができましようか。つまり
インフレ利得というものは、徹底的に捕捉するということは困難でありましても、これを可能な限り捕捉するというまでには、まだまだ
余地はあるのであります。從いまして、われわれとしては、その次の問題の
取引高税実施のほかに
財源はないかどうかという点につきまして、こういうふうな與えられた條件で、可能な
範囲の施設をし
つて、徹底的に
インフレ利得をとろうという努力があれば、まだまだとれる。
取引高税を実施しなくてもとれるということは、税務官吏全部が痛感いたしておることであります。それがいくらぐらいとれるかということは、国民所得というものが
日本では正確でないので、われわれとして確信を
もつたことが言えないのでありますが、現在の実情をながめてみるときに、あまりにも現在の税務機構というものは貧弱であります。
從つてこういう
財源の問題は、まず
政府に
インフレ利得をとろうとする意思があるのかないのか、これが根本の問題であります。さらに申し上げますならば、その他
法人税等の問題におきましても、いろいろの問題におきましても、
金融資本というものに対する遠慮が、非常なものであります。われわれ財務局におりました当時でむ、保険会社あるいは銀行に対する調査は一應や
つても、これはあとめんどうだがらいい加減にや
つておけという気分が非常に多いのであります。保険会社でそうかう実例が一件あつたそうであります。私知らなか
つたのですが、そういう例を聞きました。また去年こういう例がございます。これも福井縣の例でありますが、ある銀行が一万一千円の利益を計上しておつた。ところが税務署で調査いたしますと、大体三百十六万四千円の利益があたり。これは何もむりしたのではなしに、理屈の上からそういう結果に
なつたわけです。ところがこれに対していろいろ大蔵省のえらい人の
意見が出ましてそれがいろいろまわりまわ
つて訂正された結果、結局一万一千円の利益に追加すること八十四万七千円、それに二百十三万六千円という利益と、十六万九千円という利益の三つの脱税があつたわけでありますが、その中で一つだけ八十四万七千円の分を一應利益に加算して、あとの分を放
つてしまつたという結果があります。その結果当初税務署で計算した税額が二百四十五万円、これに対してそういう
意見が出たために訂正した結果の利益が四十七万円、大方二百万円というものがここで消えてしま
つているのであります。また
法人税におきまして問題になるのは、
法人税は
事務が非常に遅れているということであります。これは税務局によ
つていろいろ違うのでありまして、特に東京あたりは遅れているのでありますが、大阪あたりの比較的中庸を得たところにおきましても、
法人税の
予算に出ておる数字というものは前
年度の繰越分が半分と本
年度の分が半分、大体そういう割合にな
つております。つまり繰越が非常に多い。
申告納税制度になりまして、幾分かその点は是正されるかもしれな心のでございますが、この申告というむのがまた非常に低くて、ほとんど税務署で決定しなければならない。つまり
法人税の申告額と脱税の摘発によ
つて増加した金額と、ほぼ半々であります。從いまして、そういう点についても、また人員の問題にな
つてまいります。
そういうわけで、直接税の方にはまだまだ手を入れる
余地は十分あるのであります。
從つて申告納税の更正決定の方法というものを、いろいろ
改善する方法はありますが、何を申しましても、これをする人がない。また現在のこの給與制度のもとにおいては、どんどん優秀な人がやめていく。たとえて申しますと、私がおりました職場の大阪財務局の直税の法人の特別調査班は約六名か七名おりました。ところがその中で最も中堅級の仕事をする人間が三名三月頃から辞表を出しまして、うち二名はいろいろ慰留されて現在も残
つておりますが、一名はやめました。そういうわけで、相当な経験者というものは、ほとんどやめてまいります。
從つて人員は殖えておりますが、質的に非常に低下しまして、
お話にならないような現状であります。
それで次の問題の
取引高税実施のほかに
財源がないかどうか。それで一應私の
意見は終るのでありますが、
取引高税がはたしてどんな結果をもたらすか、この点は非常に大きな問題であります。現在物品税が相当廣
範囲にかか
つておりますが、今度の
取引高税は、主食を除いたほとんど全部のものにかかります。あらゆる労力にかかります。
從つてこれは最も徹底した大衆
課税であります。特に
日本のように仲介業者の多いところにおきましては、
生産者から
消費者に渡るまでの
取引の回轉数が非常に多いのであります。先般の
財政の
公聴会におきまして、
取引所の方が例をいろいろあげておられました。たとえば石けんの回轉数が最高十三回轉、書籍が十五回轉、こういうふうな例を出されておりました。もちろん回轉数に感じて税率は上りますが、十回轉するから一〇%かかるというのではなしに、その段階のいろいろな労力、そういうものに應じてかか
つていくのであります。これが楯当かかる。三%以上ぐらいかかるだろうということは、もう腰だめでも大体予想されるものであります。待
つてそれが
物價に影響しないということはうそでありまして、非常に影響があるだろうと思います。特に今日のように物資の少いときにおきましこは、殊に生活必需品においでは、大きな影響があるだろうと思います。
それから脱税と、やみ
取引を助長しないかという点でありますが、脱税の危険性はこれまた非常に大きいのであります。それは税務行政の面から言いましても、この
取引高税の申告を正直にいたしますと、
所得税が比較的とりやすいのであります。つまり正直に申告すれば、それだけの
取引高があつたということにな
つて、それに應じて
所得税が
課税されます。
從つてこういう点について、從来の、物品税の脱税とか、あるいは遊興飲食税の脱税が多か
つたのでありますが、この例がこのままこれにあてはまるのであります。礎
つてそういう意味の脱税が非常に多い危険性がある。それに税務官更が多ければある程度防げるのでありますが、現在税務署で一番弱体なのは間税課であります。この
取引高税は、
間接税として当然間税課の受持でありますが、間税課は人が足りません、ほとんど充実しておりませんので、この税金は非常に危険があります。現在の税務署は間税課の者に最初の出発をやらして、あとの締めくくりは直税課の方でやろうというようなことを申しておりますが、現在の直税課は、一々納税者に当
つてい
つて所得税を決定しているのではありません。税務署では、それで望遠鏡という言葉を使います。つまり調査期間が非常に短いので、ある程度望遠鏡式の調査をやります。
從つて一々こういう
取引高税の調査をしようと思
つて納税者をまわ
つて歩くことになると、とても今の人員の三倍くらいなければできないということにな
つてまいります。
從つてこの
取引高税の脱税の危険は非常に大きなものであります。
次は
法人税の
軽減というふうな問題にな
つてまいりますが、この場合考えなければならないのは、法人営業と個人営業が非常に密接な
関係があるということであります。
法人税は必ずしも大きな会社ばかりではありません。二、三人寄つた小さな十万円、二十万円という会社が大部分であります。待
つてそういうものに対する
法人税を
軽減いたしますならば、個人営業がほとんど法人に変ります。
從つてこういう点で税務は非常に複雑にな
つてまいります。
從つて外資導入のために、
法人税を
軽減するならば、
法人税全般を
軽減する必要があるかどうか。この点が疑問にな
つてまいるのであります。殊に現在大法人はほとんど納税しておりません。大きな法人はほとんど現在無税の状態であります。礎
つて法人税を
軽減したために、にわかに
外資導入がはたして実現されるかどうかという点も疑問であります。
それから次に租税積算はいかにして行われるか。こういうことは、われわれも知りたいのでありますが、こういう点は、なかなか秘密でありまして、われわれにもわからないのであります。
從つてわれわれとして、これに対する答弁としては、自分の考えを申し上げることもできないのでありますが、この租税の積算が非常に杜撰なものである。これは
日本の統計制度が杜撰であるのと同じように、あるいはそれ以上に杜撰なものかもしれません。從來
昭和十一、三年ごろまでは、大体主税局の統計を基礎にして国民所得も推定されてお
つたのでありますが、これは現在物的の方法、あるいは人的の方法によ
つていろいろ変
つてきて、相当低下した
國民所得ができ上
つてきております。それによりますと、主税局の見込んでおる所得と、物的の方法によ
つて計算した
國民所得の間には、大きな開きがあるといつうことが言えますこの点はある程度最後の問題の
やみ所得にも関連してくるのでありますが、主税局の方では、とれるような見込みのもとに租税の積算をや
つております。從いまして、この積算は絶対的なものでないということが当然言えるわけであります。
なおこの
取引高税について、先ほど
公述人の方から、これはできるだけ早い機会に止めるようにしなければならないという
意見がありましたが、これは諸
外國の例を見てもわかりますように、アメリカでも行われたのでありますが、殊にこれはドイツの
インフレーシヨンのときに、危機突破税として採用され、フランスでも
財政危機のときに採用されたのであります。しかしこれが一旦採用されたとなると、この税金は非常に重要な役目を果しまして、租税收入のほとんど中心的な地位にまでぜり上
つてくるりであります。
從つてこういうふうに從來からの
日本政府、殊に大藏官僚のやり方を見てみるときに、この税金が一旦きまつたならば、これは毎年戸々大きくな
つていくに違いないということは、十分想像できるのであります。こういうふうな大衆
課税は午前の
公述人風早さんも申されましたが、これはフアッシヨに続く途である。結局ドイツはこういうフアツシヨに続いた大衆
課税によ
つて、いろいろな軍備をやつたということも考えられるのであります。
最後に今度の通行料金の
値上げに絡んで通行税は非常に大幅に
——昨年の
予算に比べて約十一倍半の
増徴になりました。これは今度の三倍半の
値上げから計算してこういう数字を出したのだろうと思います。今まで通行税はキロ数に感じて
課税してお
つたのでありますが、今度は通行料金に感じて
課税する、こういう制度に変りました。
從つて料金が変るごとに、通行税は自動的に上
つてまいります。東京から大阪までの通行税で計算しても、今までば二円七十六銭ほどの通行税が、今度は二十七円に上ります。こういう面から言
つても、こういう通行税というようなものは、こういうふうな方法でも
つて、とりさえすればいいというような考え方で、はたしていいものかどか。この点も大いに
検討しなければならぬと思うのであります。なお最後にわれわれとしていつも痛感することは、今日税務行政が非常にむずかしいということであります。ほとんど摩擦なしに税務行政をやることは、現在は一日もできないことであります。先般來租税完納本部ができまして、いろいろな宣傳ポスター、そういうものがはられました。現在でも東京の財務局におきましては、入口のところにころいうポスターがあります。「今あなたが納める税金はやがてあなた方により以上の収穫を與えるものです」。こういう文句を書いたポスターが、新潟税務署と名前がはい
つて財務局の入口には
つております。百姓が百円税務署を通じて
日本政府へ納めた税金が、今度は農事試験場の設置とな
つて百円納税者のもとに帰
つてくるという絵が書いてあります。はたして現在のこの
予算の上において、そういうことができ上
つておるかどうか。われわれはこういう何でもないようなポスターでありますが。非常に重大だと思うのであります。われわれが納めた税金が、結局われわれにそれ以上の利益とな
つて帰
つてくるかどうか。今までのように何も文句も言わずに、今日まで権力でも
つて抑えつけられてきた時代ならいざ知らず、こういうふうに民正主義がやかましく叫ばれておる時代において、こういうふうなポスターは、非常に有害であります。つまり現在の
予算制度は、決してこういうポスターのようなことが実現されておりません。
從つてわれわれとしては、この
予算というような問題は、われわれが税務を執行する上において、重大な関心をも
つておるわけであります。つまりわれわれは納税者を説得する場合に、
予算全体から考えて、われわれとしては納税者に対應していかなければならないのであります。その意味において、この
予算制度そのものが、われわれの考えているように、結局
歳入の方は能力に應じてとる。そうして
歳出の方は、なるべく困つた人間に多くの
予算を出す。こうしなければ、現在のこの租税危機の突破もできなければ、
日本の再建ということも、非常にむずかしいものではないか、これが税務署の目を通じてながめた
予算に対する要望であります。この点においてわれわれとしては、今
年度の
予算は、全面的に不満であり、反対であります。
從つてわれわれとしては、この租税の問題を通じこの租税がどういう
方面に使われておるかということについては重大な関心をも
つております。その意味において、どうか愼重御審議の上、十分われわれの
意見を取入れられるようにお願いして終りたいと存じます。(
拍手)