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田中(稔)
委員 外資を
導入した結果、植民地化の危險があるにしても、それに対する保障は、
日本の
國民の氣力にあるというような首相の御答弁である。私はきわめて観念的な御答弁だと思うのであります。私見といたしましては、この植民地化の傾向に対する保障は二つあると思う。
一つは、二千六百年という年数は間違いであるとしても、まあ二千年近いことは間違いない。二千年にわたる
日本の
國民的な傳統、これが私は
一つの保障であると思う。しかもこの
日本の
國民的傳統というものは、脈々として今日の勤労大衆の間に傳わ
つていると思う。なかんずく四千万に達する
日本の農民の
生活の中に保持されていると思います。第二の保障は、戰後急速に発達をいたしましたところの、
日本の組織労働者の力に、これを発見するのであります。この
國民的傳統、その保持者としての
日本の農民、それと組織労働者、この二つの保障が植民地化の傾向に対する最も確実な保障であろうと思うのであります。しかるに
芦田内閣の施政のあとを見ますと、この二つの保障を強化するというのでなく、むしろ弱化するという
方向に行われておるように感ずるのであります。いささか私見を述べてみたいと思うのでありますが、
日本の二千年の歴史において、さいわいにして、われわれは他國の属國になり、植民地になるということはなか
つたのであります。元寇の時代に、北條時宗という
政治家がおりました。そうして蒙古の襲來を防いだのでありますが、これはどうしてできたかと申しますならば、それに先だつところの康時、時頼の善政のおかげである。これらの偉大なる当時の指導者は、その時代の封建制のわく内においてではありますけれども、
日本の農民の
生活をゆたかにするために、彼らは一生懸命に努力したのである。それがあ
つて初めてあの蒙古の襲來に対して、挙國一致して防ぐことができた。決して鎌倉武士だけの力で蒙古の襲來を撃退したのではない。その背後に
日本の農民の銃後の強い力があ
つたのであります。その後徳川時代におきましても、いろいろと虐政もあり、惡政もあ
つたのでありますけれども、やはり名君賢相というものが出まして、松平定信、あるいは上杉鷹山のごときは、その領内の百姓、農民の
生活をゆたかにするということを、彼らの
政治の目標とした。こういうようなことで徳川時代三百年、
日本の
生活を、
外國からや
つてまいりましたところの長崎あたりからはい
つてきたオランダのカピタンその他が見まして、
日本の
國民は勤勉にして礼儀を解する民族として、いろいろな文献においても非常に賞揚しておる。明治になりまして明治以來の
日本の指導者につきましての歴史的評價は、まだ定ま
つておりませんから、名前をあげることははばかりますけれども、とにかく明治以來の
日本を指導した
政治家の中にも、やはり
日本の農民の
生活、
國民の
生活、これをゆたかにするために、一生懸命に働いた
政治家がたくさんおつた。それでも
つて明治以來の
日本は急速に興隆したのであります。例は少し穏当を失するかもしれませんが、今日元寇の当時の時宗の
地位、あるいはまた
一つの藩ではありますけれども、松平定信の
地位、上杉鷹山の
地位、そういうものに似た
地位に立
つておられるのは
芦田首相であります。
芦田首相は、ほんとうに
日本の
國民的傳統、この保障をしつかり固めるというためには、
日本の農民
生活がほんとうにしつかりするというために、ひとつ努力をしていただかなければならぬのでありますけれども、御
承知の
通り、今日の農村は、一時はインフレで非常によかつたとはいわれておりますが、最近は必ずしもそうでない。非常に苛酷な供出の割当が下されており、惡税があり、米價その他農産物の價格と、工業生産物の價格との間の鋏状價格差というもののために、農民は非常に苦しめられておる。しかもこういうような場合に、
芦田さんが今おつしやつたように、一切を進駐軍の責任に轉嫁するようなお話、どうもしかたがない。今日
日本は占領されておる以上しかたがないというふうにして、百姓を説得することに懸命であります。こういうことでは、私は
日本の二千年の歴史を守
つてきたところの偉大なる指導者に対して
芦田首相は顔色ないと思う。
それから次に申し上げたい点は、組織の力、これが
日本の
民主化を保障する非常に大きな力である。
民主化だとか、非
軍事化だとか、いろいろなことをおつしやいますけれども、こういうものを、ほんとうに形の上において確保するものは何かと言えば、労働組合その他の民主的な組織であります。しかるに戰後三年半ばかりの間に、
日本の労働者が六百万の組織労働者とな
つて成長し、そうして労働組合法あるいは労働基準法というようなものをとにかく與えられ、そうして労働権あるいは基本的な人権というものを獲得したのに、最近におきまして、どうも
芦田首相あたりのお
考えとしまして、労働法規を改惡しようというような御意向があるようであります。そうして労働者が得たところの既得権を、むしろ剥奪しようという御
意見がある。
加藤労働大臣は閣内にあ
つて独りこれに向
つて反対してがんば
つておるということを私どもは聞いておる。一方また賃金にしましても、実質賃金の確保がなくして、三千七百円というような今日のいろいろな
事情のもとにおいて、私は非常に妥当を欠いたペースだと思います。そういう賃金ベースを固定化しようとしておる、さらにまた昨
日本会議におきまして、わが党の出身であります清澤俊英君が緊急
質問をいたしました。新潟縣小千谷における理研工場の人権蹂躙問題、こういうふうなわけで、労働者に対しまして、その組織力を伸ばすという
方向に努力する代りに、むしろ労働者が過去三箇年に得たところの既得権利をば剥奪しようとする
方向に向う。しかもこれは結局は
外資導入の途を滑らかにするために行われておるということを聞いておるのでありますが、こういうことになると、
芦田首相は
外資を
導入するために、
日本の労働者の権利を剥奪し、
日本の労働者の
生活を抑え、そして一種の奴隷監督的役割を演じようとするのであろう。私どもはこの点について組織労働者六百万の意向を
考えまして、責任ある御答弁を承りたいと思うのであります。