○野田(信)
政府委員 それでは時間も経ちましたので、ごく
簡單に價格補正をいたすことにつきまして、御説明申し上げます。
昨年七月のいわゆる七月体系という
價格改訂をいたしまして、それで相当
インフレの波は抑え得たとは思いますけれ
ども、御
承知の通り、その後
インフレはやはり進んでまいりまして、すでに七月体系というものは維持できなくな
つてきた
ような情勢におることは、皆様御存じの通りでございます。それに
政府の
財政も健全
財政にしなければならぬという必要にも迫られておりますし、企業は全部非常な赤字で経営を続けてまいりまして、これ以上赤字
金融で経営をつないでおくことは、企業それ自身の存立に
関係いたしてまいりますし、從業者の利益から見ましても、このままで赤字経営を続けるということは、非常な問題になる情勢に追いこまれてきたわけであります。それでわれわれといたしましては、早くこれを実行したいと存じておるのでありますけれ
ども、何分いろいろの基礎條件が未確定でありまして、どうにも処置ができない。少くとも六月の十五日には発足したいと思
つておりましたが、それも思うに任せません。二十日にし
ようと思
つても、それもできないという
ような
状態で、日を送
つてまいりましたが、どうしてもこれ以上延すことは困難になりましたので、それで今日、今回の價格補正を発表いたすことにいたした次第であります。
簡單に申しますと、
計算の方法は、この前の七月体系と同じ方法で、その後の新しい情勢を盛りこんではおりますが、体系から申しますれば、前の七月体系と同じ方法であります。つまり基礎的の生産資材に対しましては、安定帶
物資と稱しまして、この前は基準年次の六十五倍のところで消費者價格を抑えて、生産者價格がそれを上まわる部分につきまして、價格補給金を支給してきたわけであります。今回もやはり安定帶
物資というものを設けませんと、
物價の上り方が非常なものに相なりますので、やはりその方法を踏襲して、この倍率を六十五倍であ
つたのを、大体百十倍——
物資によりまして今度は倍率が違
つてまいりましたけれ
ども、大体は百十倍見当のところで收め
ようということにいたしております。それから鉱工業品の價格は、やはり前と同じ
ように、原價
計算主義で原價を主として
計算いたしますし、農産品はやはりパリテイ
計算でや
つております。それで賃金ベースは、この前はいわゆる千八百円ベースでありましたものを、今回はそれを三千七百円ベーすに
引上げまして、それを前回と同樣に産業別の産業賃金に開きまして。それを先ほど申した原價
計算の労務費の賃金に見込んだわけであります。もちろんその後、こういう方法で開きました産業別の
平均賃金以上の賃金をすでに実施しておる産業が相当出てまいりましたので、それにつきましては、それだけの水準の賃金でなければ、労働者を吸收することが困難であろうと思える
ような産業であり、か
つて重要な産業につきましては、実際に支拂
つておる賃金を採用する
ような方法をもちまして、業種別に開いた賃金水準そのものとは別個の賃金を織りこんで、現実に近寄せる。但しやはり
物價全体を見なければなりませんので、他産業との賃金水準との均衝も一方には
考えて、なるベく実際支拂
つておる賃金を織りこむという
ような方針に今回はいたしたのであります。これが前回とはちよつと違
つたところであります。
今度の
物價改訂で、一番われわれの苦心しましたところは、價格の重要な要素の
一つである運賃などが、未だに審議中でありまして、われわれといたしましては、これを織りこむことができないという
状態でありますので、運賃につきましては、
現行のまますえおきの價格をきめまして、それをさし
あたり実行する。そうして運賃が國会の審議によ
つて決定に相なりますのをまちまして、その
決定に
從つて價格を
物價廳長官の名で告示しまして、その統制額に乘り換えるという方法をと
つた次第であります。それで前の價格を甲統制額、あとの價格を乙統制額としまして、乙統制額の方は、かりに
政府原案の
ように國会が通
つたならばこういう價格になるという
ような價格を出すわけであります。と申しますのは、二段の補正をいたしておきますと、二段の補正をするということが、世間一般の議題になりますと、非常にそこで思惑が生じまして、現在でも近いうちに
物價改訂があるということが一般に知られておりますために、賣惜しみ、退藏という
ようなことが、盛んに行われて、非常に生産が澁滯をしておりまして、司令部
方面からも、盛んにそれを言われてお
つたような
状態でありますが、價格をもし改訂いたしましても、また近いうちに運賃がきまり次第改訂になるのだということが皆誰でもわかる。そういう期待をも
つたときに改訂をしましても、思惑が依然として絶えないという
ような点が
考えられますので、どうせ一番上
つてもここまでしか上らぬのだ、だから思惑したとて、これくらいしか思惑の余地がないのだぞということを示すという意味から乙統制額というものも添えて発表してみ
ようと
考えた次第であります。それで國会の御審議を待ちまして、きまり次第、それがどういう率にきま
つても、そのきま
つた率によ
つて、今度は乙統制額をはつきりきめまして、それに乘り換える。こういう方式を今回はと
つたのであります。これも七月の場合とは違
つた点であります。その他はおおむね前の通りの方法を踏襲したのであります。その
計算しました結果をおもなるものについて、ちよつと御
報告申し上げますと、石炭では、これは安定帶
物資でありまして、一定の重要産業向けの石炭は、
從來一トン六百円で賣
つていたわけでありますが、それを今回は千円に
引上げたわけであります。特定産業の消費者にと
つては一・六七倍にな
つておるわけであります。電氣料金は電燈も電力も、一般に全部約三倍にならざるを得ない。肥料は春肥は全然すえおきでありますから、変化ありません。今回のきめました最初の発表の中にはい
つておりますものには、トラツク、運賃、荷牛馬車、リヤカー、荷車小運送、汽船の貨物、機帆船、港湾作業、こういう
ような一連の料金も、同時にこの第一回の分に加えております。これらが目下非常に窮境に立ち至
つておりまして、一刻も早くきめてくれないと困るという
ような要請を前々から受けてお
つた産業でありますので、これを最初の分に加えた
ような次第であります。あとは基礎
物資からだんだん廣めていきまして、二次製品、三次製品と、だんだん製品の方に追かけてまいるつもりでありますが、この前の七月の場合には、基礎資材と製品とのきまります間に、非常に長い時間を費しまして、その間非常な迷惑を産業界にかけたという苦い
経驗もありますので、今回はなるべくこの期間を短縮して、材料の方が先に上
つて製品の方の値段はまだきまらぬという
ような時間の
ずれをなるべく少くするということに全力をあげていくというつもりでおります。