○川北説明員
お尋ねにあずかりました三つの問題につきまして、私の
所見を申し合げましてお答えにかえたいと思います。
第一の問題、大藏省証券の発行、その他各特別会計の一時借入金の限度増加が、
予算の收支均衡にいかなる影響を及ぼすかという点でございます。大藏省証券の発行、特別会計の一時借入金は、いずれも歳入の後れを一時的につなぐために行うものでありまして、
財政收支が時期的に完全に適應せられるのでありまするならば、本來必要のないものでございまするが、歳出入の期節的食い違いからいたしまして、ある
程度やむを得ないという点は、私
どもも認める次第でございます。しかしながら、この歳出入の時期的ずれが、あまりに大きくなりますと、その間通貨の膨脹、物價の高騰を來します。しかも一度騰貴いたしました物價は、爾後通貨の收縮をかりに行いましても、
もとに返らず、結局インフレ的な傾向を助長いたしまして、場合によ
つては、これがために追加
予算の必要を生ずる、
從つて予算の均衡を破るおそれがあると
考えます。また強いてこの均衡を回復するために、ある時期に一時的に歳入の徴收を強行しなければならぬような事態になりまして、これはまた
一般経済界に大きなる影響を與えてまいります。このことは昨年度の二十二年度の
予算執行の面におきまして、御
承知の通り第三・四半期、第四・四半期との間に、
金融界に大きな対蹠的な影響を及ぼしました事実によ
つて、私
ども切実に感じた
ところでございます。若方計数的に昨年度の実績を申し上げてみますと、昨年の四月から十二月までの間に、通貨が千三十億増加いたしました。その九二%、九百八十億というものが、資金の出ました径路から申しますと、
財政資金の撒布超過によるものであります。もつともこれは申し上げるまでもございませんけれ
ども、これが通貨発行の原因ではないのでございまして、もしこれだけの資金が
政府から出ませんければ、その代りが
民間から出まして、必要な通貨を賄わなければならぬという事実はあるのであります。蓄積資金の大部分、すなわち約八割までをまず
民間資金に使いまして、残りの二割を公債と復金債券の消化に充てておりますので、
民間資金は大体蓄積資金で賄う。その代り
政府の赤字資金が日本銀行から出るという結果になるのであります。かりに
政府の資金がこれだけ撒布されませんといたしましたならば、通貨の必要が一面で起ります以上は、今度は
民間の貸出しによ
つて、ある
程度は出るということは御
承知を願いたいと思うのであります。しかし径路から見ますと、四月から十二月まで千三十余億、うち九百八十億が
財政資金の撒布超過によりまして
民間資金が賄われており、
民間資金の増加にな
つておる。こういうふうにな
つております。これは大体特別会計の赤字と歳出入の時期的ずれによるものでありまして、推算いたしますと、九百八十億のうち歳出入の時期的ずれと認められるものが約五百二十億円くらいに及んでおると予想されます。特に問題になりますのは、大藏省証券で賄いました
一般会計の歳出的ずれでございまして、十二月まどの租税收入は、
予算の三割三分、四百四十八億円にすぎなか
つたのでありますが、この間歳出の方は、
予算の五二%、千百七億円に達しました。その差額が大藏省証券の発行によ
つて賄われ、十二月一箇月だけで二百三十八億円に増加いたしたのであります。一月初めには、大藏省証券の発行は、最高三百七十億の残高になりました。その後本年に入りまして、御
承知の通り強力な徴税が行われまして、この歳出のずれを完全に一月から四月の間に消滅いたしました。そのため大藏省証券もゼロに返
つたのであります。
一般会計は歳入欠陷を生ずることなく、決算ができることになりました。後ほど申しますが、これによりまして通貨も小康状態を
示しました。物價も過剩購買力が抑えられまして、横ばいの状態にあるという、いわゆる一月から四月の最近までの表面的の安定状態を
示しておるわけでありますが、その主因は、おもに税を中心といたします
政府撒布資金の
関係による特別なる理由によるものと、私
どもは解釈しております、しかしこの新年になりましてから、一月から四月までに非常に多額の税がとられました
関係で、農村
方面には資金難を惹起いたしました。また産業界
一般の大きなる金詰りに拍車をかけてまいりましたことも、御
承知の通りでございまして、やはりここに
政府の收支の均衡を得なければならぬという点が痛感されるのであります。本年度の
予算の実行にあたりまして、昨年度の
予算の運営の実績から
考えまして、私
ども特に
希望いたしますことは、この歳出入の時期的調整に遺憾なきを期せられたいということでございます。そのためには
政府資金收支調整
委員会という機構がございますが、この機構を大いに活用していただきたいと
希望いたしますとともに、まずも
つて大藏省証券の発行限度、あるいは各種特別会計の一時借入金の限度を極力圧縮することに努めていただきたい。こういうふうに
考えるのであります。各種特別会計の借入れ増加の
内容には一々触れませんが、この問題は大体その
程度でよろしゆうございましようか。
次に今回の物價改訂と
金融の
関係、特に日本銀行の
金融政策の
関係でございます。今回の物價改訂でいくばくの所要資金の増加が見込まれるかということは、いまだ正確に推算できないのでありまして、物價廳の方の案によりますと、公定が七割、やみ價格といたしましては、今日まで月に三、四%
程度しか上
つていないから、これは格別見ない。そういたしますと、自由價格によるもの七割五分と、公定價格によるもの二割五分というウエイトをかけまして、價格体系全体から見ますと、平均して二割の資金所要量が殖えるというふうに、一應推算ができておるようであります。問題は公定が7割、やみが三、四%という
程度の騰貴制止まるものかどうか、ここに問題の中心があると思うのであります。もしこれを公定が八割、やみが二割上るといたしますれば、平均いたしまして、三割五分
程度の資金量の増加になります。もし公定が倍、やみが三割ということになりますれば、四割七分
程度の資金量の増加になるわけであります。現在銀行の新勘定の貸出しは、約二千五百億でございます。この中で特に動いております運轉資金が
いくらあるかということは、私
どもにもよくわかりませんが、かりにこれを千五百億といたしまして、その二割とすれば三百億、三割とすれば四百五十億、大体三百億ないし五百億
程度の物價改訂によね資金量の増加というものが
考えられるのであります。これは
金融機関の面において影響いたします
金額であります。少くとも公定價格によ
つて生産並びに取引をいたします
事業の所要資金は、七割ないし十割の増加をみることは明らかであります。しかし原材料の仕入金が、改訂によ
つてよけいかかりますと同時に、製品代金も、やがて値上りで殖えて、收入金も殖えるのであります。ただその間に若干の時期的ずれがございまして、
事業者の所要資金は一時増大する。その間の資金需要が
一般的に増加するということが、
金融の問題になるわけであります。また同じことが
金融機関の資金繰りについても言えるのでありまして、
金融機関としては物價改訂によ
つて貸出資金の需要が増加いたします。しかし同時に一方においては預金の量もまた價格改訂によ
つて増加する。それによ
つて貸出増加の相当部分を賄い得るわけであります。しかし、これまた貸出資金の需要の増加と預金の増加との間に時期的ずれがありますので、その間
金融機関としては、資金繰りのきゆうくつないし不足を感ずるものであります。今日すでにどの
金融機関も、預金の増加する以上に貸出需要が多く、資金不足、金繰難という声が出ております。そうして日本銀行の借入金に相当依存しているのでありますが、さらに今回の物價改訂の時期的ずれの資金需要によりまして、その傾向が
一般金融機関に加重するということが言えるのであります。同時に復興
金融金庫は、今日まで價格改訂がないために、石炭、鉄鋼、肥料等の基礎産業に対しまして、大きな赤字の
金融をいたしておりましたが、これは今回の改訂によ
つて、その面の資金の調達は減少する。会社としては、これを消費者に轉嫁することによ
つて赤字
金融をすることが少くなる。それらの点をいろいろ考慮してみなければなりませんので、当初申し上げました通り、今回の物價改訂によ
つて、まだ物價改訂自体がどうなるかもしれぬ問題でございますが、物價改訂によ
つていくらの資金が所要されるかということは、容易に推測しかねるのであります。日本銀行といたしましては、今回の物價改訂による時期的ずれの資金需要増加に対しましては、その資金が筋の通りました資金である限り、
金融機関の資金不足尻を見ていく方針であります。日本銀行といたしましては、
経済再建のために、眞に生産に必要な、あるいは取引に必要な資金の需要につきましては、從來からできるだけ融資の便をはか
つてまい
つているつもりでございます。すなわち市中銀行がこのような資金を融通するにつきまして資金が不足する場合には、これを日本銀行貸出金によ
つて供給しているのであります。実際の
数字を申し上げますと、昨年の第三・四半期は、
政府の撒布超過の資金が十、十一、十二、三箇月で六百五十億でございましたので、
民間の貸出しはほとんど増加いたしません。約五十億減少いたしております。本年一月から三月は、先ほど申し上げました通り、
政府資金の
関係は、まつたく裏が出まして、約二百五十億引上げ超過にな
つておりますために、市中の資金が不足いたしまして、日本銀行は一月から三月までに二百八十億の市中銀行への貸出をいたしております。インフレーションの克服、抑制を方針といたしております以上、
金融を
一般にゆるめるということは許されないことであります。しかしながら、同時に玉石混淆して緊急
事業の眞に必要なる資金の調達に支障を與えるということは、また許されないことでありますので、これがために重点的に資金の融通をするという方針を、今日まで日本銀行としてはと
つておる次第であります。すなわち緊要
事業に対する資金の順便を極力はかるとともに、不急不要資金の供給は、これを抑制するという方針をとらねばならぬことは当然であります。具体的措置の要点を御参考に申し上げますれば、昨年の春以來産業界の人々、大
事業家から
中小商工業者の方々に、定期的に日本銀行に集ま
つていただきまして、あるいはまた随時会合を
開きまして、その生産状況、並びに
金融状況をよく伺いまして、資金の不当の梗塞のないように努めております。また昨年の春以來日本銀行本、支店に融資斡旋部というものを設けまして、資金の需要者、その取引銀行、日本銀行と三者一体となりまして相談して、必要な資金ならば、その供給につきまして、銀行間に斡旋をいたしますと同時に、資金の不足する場合には、日本銀行からこれを供給することにいたしておるのであります。しかし結果から申しますと、
政府の大きな撒布がありましてときに、銀行はその預金が殖えますために、日本銀行の貸出しを求めることが少い。
政府の撒布貸金が少い場合に、その逆が起るというような結果にな
つてまいるのであります。またスタンプ手形、商業手形、貿易手形、公團手形、復金保証手形、この春からは
農業手形等、各種の手形制度を奨励したしまして、一面信用制度の回復をはかるとともに、他面先ほど申し上げました所要資金の
内容を、これによ
つて明確にいたしまして、必要資金の重点的融通をはかる。こういう方針をと
つておるのであります。
一般金融機関といたしましては、この物價改訂一巡後は、結局預金の増加によりまして、ある
程度貸出資金を賄うことができると思います。またそういうふうにならなければならないと思います。貯蓄の増強は、その
意味においても大いに努力されなければならないのであります。またさらにもし今回の物價改訂がうまくいきませんと、改訂後いくばくもなく、賃金と物價との惡循環が再び始まるというようなことになりますと、企業はまた赤字が出るということになり、
金融機関といたしましては、これら企業の所要資金のみが殖えて、預金への還流が少くなるということになりまして、インフレがはげしくなり、賃金、物價の惡循環が始まるということになります。そうなりますと、通貨や貸出しが
いくら出ても、常に資金不足、
金融のきゆうくつをますます感ずるようになるということは、インフレの歴史の示す
ところであります。これを要するに、今回の物價改訂後の
金融情勢いかんは、今後の物價賃金の改訂がうまくいくか、あるいは反対にやがてまた惡循環を始めるかということにかか
つておると思うのであります。うまくいきます場合には、二、三箇月の時期的ずれさえ特別に
金融の順便をはかりますれば、
あとは改訂によ
つて一時取引資金量は殖えますが、殖えたなりにまた自動的に回轉して、新規追加資金の供給は必要がなくなります。これはうまくいきました場合であります。その反対に改訂がうまくいかないで、さらに惡循環を始めるといたしますならば、資金の回轉はいつまで経
つても平常化せず、すなわち資金の需要のみが殖えて、
金融機関への環流が十分行われない。
從つて常にあるいは一層
金融機関の資金の不足の状態が続くということになるわけであります。
最後に第三の問題、インフレの見透してついてでございますが、先ほ
どもちよつと触れましたように、本年にはいりまして、通貨の膨張が著しく減退し、また実際に物價も
主食等一、二の例外がございますが、大体において横ばいの状態であります。また大きな赤字を予想されました
一般会計の收支も均衡を得るというようなことは、当面の
経済の状態が非常に安定した、いわゆる中間安定という
考え方が一部に行われたくらいでございます。一月から五月までの通貨の発行は四十三億円、今月は五、六十億の増加が見込まれますので、一月から六月まではおそらく九十数億、百億までの増加に止まると思います。前年同期の半年四百三十億に比べまして、きわめて少い発行高でございます。物價も、これは実際物價でございますが、平均いたしますと、約一割八安の騰貴にな
つております。しかしながら、これは
内容的に見ますと、通費は非常にはつきりした実数が出ますので問題はございませんが、物
價指数というようなものは、よきにつけ惡しきにつけ、誤りやすいものでございまして、総平均をいたしますと、一月から五月まで一八%の騰貴であります。しかしながら、
内容を見ますと、なかなか重要なものがかなり上
つております。これは一月から五月までの実際物價でございます。騰貴の大きなものは米二割、麦四割、牛肉二割八分、季節的な
関係もございますが、大根、いもが六、七割上
つております。繊維が一割五分、靴、石けん等のようなものは五、六割、一方低落しておりますものに砂糖の五割八分、眞空管の一割七分、電球の七分、そういつた小さい機械とか、日常
生活にあまり切実でない日常
生活品は、御
承知の通り店頭にもかなり出ておりますように、價格も下りぎみでございます。それらを平均したしますと、結局約一割八分というような騰貴にこの五月がな
つております。とにかく今までにない安定傾向をこの一月ないし四、五月の間は
示してまい
つたのでありますが、この情勢の主たる原因は、先ほど申しましたように、二十二年度の租税徴收に起因しているのでありまして、すなわち二十二年度の租税徴收が本年一月、四月の期間に集中し、
從つて政府資金の対
民間関肩が第三・四半期、すなわち昨年十月から十二月には六百五十億の撤布超過でありましたものが、第四・四半期、すなわち本年一月から三月には、反対に二百五十億の
政府資金の引上超過に
なつた。終戰以來
政府の資金引上超過になりましたのは、この期間だけでございます。なおこれに加えまして、御
承知の二十三年度の
予算がまだ
暫定予算でございまして、本格的に
予算が動いていない。この点からまた預金が伸びない、
金融がきゆうくつであるという状態にな
つておるのであります。そういう事情でございますので、最近の
経済の状態が一服しておるという状態は、特殊の原因によるもので、必ずしも
一般的な傾向と見得ないと、私
どもは
考えております。すなわちこれをも
つてインフレが終熄に向うとか、あるいは中間安定が得られるとかいうふうには
考えられないと思うのであります。当面問題にな
つております、たとえば物價の改訂、鉄道運賃、郵便料金の大幅引上、あるいは二十三年度の
一般会計四千億の
予算、それから
政府特別会計の赤字の收支、
民間企業の実態等を
考えますれば、資金面、價格面から申しましても、インフレの前途に重大なる
関係をもつ多くの重要問題が山積しておるように思うのであります。これらの点につきまして詳述することは畧しますが、とにかくそれらの
関係によ
つて、目先金資の所要量が殖え、通費がさらに膨張し、物價が公定のみならずやみ物價の引上となるおそれが多分にあるのではないかと
考えるのであります。特に今回の物價改訂は、
予算の実行上、あるいは
國民生活上、重要なる
関係をも
つておる問題でございます。今回の物價改訂が当面通貨膨張を來すことはある
程度やむを得ないと思うのであります。またその
金融措置も、それだれであれば、これは
簡單でございますが、しかしこの物價改訂によ
つて、それ以後物價の安定が得られるかどうかという問題、そこに
財政につきましても、通貨あるいは
國民生活、賃金の
関係につきましても、大きな問題が横たわ
つておる。今回の物價改訂によりまして、原價をペイする價格が一應定められ、あるいは
政府の補給金によ
つてそれが補われ、一應企業の赤字が解消する。あるいはその面におきましては、それらの企業の
金融難も緩和すると思います。またそれが今回の改訂の目的であると思います。しかしはたしてその物價あるいは定められました信金が均衡を得て、そのまま続き得るかどうか、もし今回の物價改訂によ
つて賃金物價を安定せしめ得ないといたしますと、ここにインフレの見透しについて悲観的ならざるを得ないのであります。將來の見透しはなかなかむずかしいのでございます。私もはつきり申し上げかねます。インフレの問題は、廣く
経済全般について
考えなれればならぬのであります。日本のインフレの根源が生産の過小、
從つて物資供給の不足に対して需要が過大である、
從つて國民生活が不安定である、その間賃金物價の惡循環を生じ、物資に見合わない、
財政方面、産業
方面の資金、通貨が増発されておるという
ところに、インフレの根源があると燃し上げたいのであります。生産物資の供給でございます。生産な低位な水準で急速になかなか打開しがたいのであります。この三月に鉱工業生産が日支事変直前の三割九分という
数字を
示しており、また四月が四割一分という好成績を
示しました。これは電力の
関係、石炭が暖房用がなくな
つて産業
方面に向きました
関係その他によりまして、鉄鉱、肥料、石炭以外の
関係は、すベて生産増加を
示しましたが、それでもなおかつ四割
程度、イタリーが七、八割、フランスは百二、三十数パーセントという
ところまで回復しております國情から比べまして日本の生産状態は、まだまだ困難な状態にあることは明らかでございます。この点で最も問題になりますのが、海外の援助による原材料の輸入いかんでございます。これらの見透しにつきましても、すでに御
承知のことで申し上げません。なおこの生産に私
どもが最も関心をも
つております
労働事情、これは私は生産の面におきましては、ある
意味において原材料の問題、あるいは海外の援助以上に重大な問題であると
考えております。物價と賃金の
関係、どうしてこの両者の惡循環を遮断するか。これは廣く言われております通り、実質信金の
確保以外にないのであります。それがためには
生活必需物資の配給
確保が必要であるわけでありますが、それは現在の國内生産では、ほとんど不可能でありますから、この点についても、海外の援助いかんが問題になる。
主食の増配は、この
関係において、当面きわめて重要な影響をもつものでありますが、また
主食のほか副食、衣料、燃料等の
生活必需品につきましても、ある
程度の増配が行われなければ、実質賃金の安定はなかなか困難であると思います。同時にまたわれわれ
國民といたしましては、日本
経済の実情に鑑みまして、勤労と耐乏との
生活に
國民はもつともつと努めなければならぬ。最近アメリカから参りました人たちの言うことは、大体これに盡きておりますが、確かにそういう点が反省されるべきだと私は
考えております。
財政の問題は、もはや繰返すまでもございませんが、インフレーションには大きな
関係をも
つております。
一般会計は收支均衡をするごとく編成されましたが、インフレーション下におけるとはいえ、はなはだ厖大なものであります。これに
地方財政の二千億、特別会計の赤字の七、八百億というものを加えて
考えてみますと、はたしてそれだけの收入が
確保されるか、今後の歳出増加をきたすことはないか、歳入と歳出の時期的なずれの大きなものが生じないか、そういう点が問題でございます。
從つてやはり今後におきましても、
財政面からのインフレを進める可能性が少くない。現に、先ほど申しましたが、昨年二十二年度の会計年度、四月から今年の三月までの状態で申しまして、この間の通貨膨張千三十億、その七割に当る七百三十三億というものが、すなわち
財政の赤字で、日本銀行の信用膨張が行われております。この一年間
政府関係の信用膨張の
内容は、大藏省証券で五十七億、
國鉄の借入金がこの間に百七億、これは主として運轉資金でございます。ほかに建設資金が七十五億、通信会計で借入が四十二億、公債が二十五億、ほかに糧券が四百億、貿易
関係に五十二億、その他を加えまして約七百九十億というものが、日本銀行の信用膨張に
政府関係からな
つたのであります。私はやはり今年も大体昨年と同じような傾向を
財政面から中央銀行に與えるのではないか、つまり通金信用膨張の原因になるのではないか、こういうふうに
考えるのであります。
最後に企業
金融の面につきまして、インフレーションとの
関係を申し上げてみたいと思いますが、現在
一般的に企業は過剩雇用でございます。また不急不要の部面における企業数が、あまりにも多いと
考えられます。これは
経済の安定を妨げ、生産の能率を阻害し、また過剩な資金を流通せしむる重要なる原因になるのであります。この点に関しまして企業の整備合理化が必要でございます。これは久しく叫ばれておりますが、実行がなかなか困難のようであります。
政府を初め、行政整理特別会計の合理化はなかなかできない、
民間企業も大体そうであります。もちろん失業者に対する再配置その他の失業対策を一方で講じなければならないが、それもなかなかむつかしい。それらの点につきまして非常な困難がありましよう。しかしできるだけ企業の合理化の面に進みますことは、インフレーション抑制の上にどうしても必要であると思います。これに対する
金融の
関係は、御
承知の融資規則というものが行われておりまして、
金融機関もこの線に沿い、緊急
事業には
金融するが、不急不要の
事業には金を出さぬこととな
つております。あるいはまた最近は企業の赤字が漸次殖えてまい
つておりますので、
金融機関といたしましても、若干警戒氣分があると思われます。これもある
程度やむを得ぬと
考えます。そういう次第で
金融は引き緊められがちでございます。しかし先ほど申しましたように、必要な資金は出していかなければなりませんが、大体
民間産業に対する
金融はゆるまない。
從つてこの面から著しくインフレに拍車することはないのじやないか、こういうふうに
考えるのであります。しかし生産増加と見合う産業の資金需要は、
金融といたしましては、当然これに應ぜざるを得ないのであります。その間の
金融措置は、先ほど申しましたような次第でございます。結局今後の見透しといたしましては、絶対的にあるいは客観的に断定することはすこぶる困難でありまして、それは多分に海外の援助ということ、そうして一方國内におけるいろいろな努力、つまりインフレに対する各総合施策の成否いかんにかか
つておりますので、軽々に予測することは困難でございます。ただ大局的に申しまして、急速にインフレーションが終熄する、あるいは完全に終熄するということは、とうてい
考え得られない、と同時に、現在の日本は、かなり國内統制も行われております。対外
関係も、貿易その他為替、すべて管理されている実情でございますので、現在の中國におけがるごとく、あるいはよく例に引かれます前大戰後のドイツにおけるがごとく、急激なるインフレーション、ましてインフレーションの破局というようなことは想像し得ない。実際の見透しといたしましては、今後もある時期まではなお漸進的にある
程度インフレーションは進行するものと
考えております。しかしその間生産の回復と海外の援助とによ
つて経済の基盤が健全化する。それに應じて漸次安定する。通貨
金融の政策は、その
経済の基盤の回復を待つそれに対應して通貨信用の面から貨幣的にこれを崩壊せしめることのないようにチェックしていくということになると
考えるのであります。
まことに杜撰な卑見でございまして、お答えになりますかどうかわかりませんけれ
ども、一應これをも
つて終ります。