○
加藤國務大臣 御
質問に
お答えする前に、
さきに要請をなさいました
部分については、多分に誤解をひき起す言葉が含まれておると思いますから、その点明白にいたしておきたいと存じます。
言うまでもなく
労働組合運動が、殊に戰後の
労働組合運動がどこからどうして起
つてきたかということは、私から申し上げるまでもなく御承知の点であります。今日
政府の官吏というか、だれであるか知りませんが、そういう人々の中に
労働組合を指導するというような、そういう間違
つた考えをも
つておる者は、おそらく一人といえ
どもないと私は確信しております。そういうことがか
つて特別警察制度の存在してお
つた当時における、その取締りを受けた印象が
中原君に残
つてお
つて、なおかつそういうことが自分自身の潜在意識として存在することから錯覚を起されたのではないかと思いますが、私は今日の
労働組合の運動に対して、官吏が指導するというような僣越な
考えをも
つておる者はあり得ない。官吏といえ
ども、その大
部分はみずから
労働組合を組織しておるのでありますし、殊におる官廳においては課長級の人までは組合に参加しておる状態であります。組合の指導者としては存在するのでありましようが、これが官吏としての立場から組合を指導するというような僣越な
考え方はあり得ないと信じております。もし具体的に官吏が
政府の立場をかさにきて組合を指導したとか、あるいは組合に何らかの拘束を加えたとかいう具体的事実があるならば、それは私
どもも参考のために聽かしていただきたいと思います。ただこういう問題は、抽象的ではいけないと思います。その点ひとつあらかじめはつきり申し上げておきたいと思います。さらにポツダム宣言の規定するところによりましても、極東
委員会における十六原則の明白に規定しておるところによりましても、
労働組合が野放図に放縱にあることを欲しておるのではないので、固より
日本民主化の大前提として、
労働組合が組織
発展されなければならぬということを規定しておるのでありまして、
從つて労働組合が成長の過程においても、みずから反省すべきものは反省し、みずから務むべき義務は務めるということをはつきり規定しておるのであります。十六原則の規定するところは、
労働組合みずからの反省による、義務づけによる、そして同時にそれが権利を主張する
裏づけとな
つておるということを、お互いに銘記しなければならない点であると存じます。
それから御
質問の要点でありましたが、御承知のように前の二千九百二十円
ベースの問題が解決いたしましたときに、覚書の交換によりまして、この問題が済んだならば、ただらに新給與の問題について審議するために給與
委員会を設ける、こういうことにな
つてお
つたのであります。
從つて私
どもはできるだけ早くこの
委員会が発足して、そして次の新給與の問題について論議されることが、最も望ましいと
考えておりまして。ところがどういう行き違いでありますが、
委員会が結成される前に、調停
委員会がどうしたとかこうしたとかいう点から、容易に
委員会の成立を見るに至らないで、準備交渉の過程において足踏状態がなされてお
つたわけであります。この点については、私
どもはきわめて遺憾に存じます。その誤解がどちらにあ
つたかは別問題としまして、ともかくも
委員会の結成がされないで、今日に至
つたということは、非常に遺憾なことでありまするが、そうかというて、
委員会の結成するまで
予算編成を待つというわけにはまいらないのであります。そこで
政府といたしましては、
予算編成にあた
つて何を
基準とすべきであるか、こういう点から、昨年一月からの全國工業平均
賃金をとりまして、これの一月から各三箇月ごとの平均をと
つて、それから今年三月の
数字が出ましたので、それを
基礎として四、五を推定して、五月は三千五百円、そしてこの水準を維持するということから三千七百円という六月の水準が推定されたわけであります。この三千七百円の推定は、三月を
基準としたものでありますから、その後どういうぐあいに変化するかということは、
数字が示すところでありますが、ともかくも
政府が一應の
基準としてとり上げたものは、今言うような全國工業平均
賃金の三月に現われた
数字を土台として、六月を推定したものであります。これに
財政的な見地からと、さらに
物價改訂がどのように
生計費に
影響を來すかということと、三つの点から勘案いたしまして、三千七百九十一円が
予算編成の標準として採用されたものでありまして、この点について組合側の了解を得られなか
つたことは遺憾でありまするが。もとより
政府としましても、今言う
通りいつまでも
予算編成を、時間的に制約されている
関係から放置するわけに行かないで、こういう
計算の
基礎に基いて採用したものである、このように御了承願いたいと存じます。