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岡田國務大臣
昭和二十三
年度の國有鉄道
事業特別会計歳入歳出予算に関しましては、すでに四、五、六月分につき暫定
予算として、
昭和二十三
年度特別会計予算、同補正特第一号及び同補正特第二号をもちまして御承認を得たのでございますが、このたび
会計年度全体にわたる
予算の編成を完了いたしましたので、ここにその概略につきまして、御
説明をいたし、御
審議の資といたしたいと存じます。
予算の
説明に入ります前に、まず本
年度の
事業計画に大綱につきまして申し上げたいと存じます。
昭和二十三
年度輸送
計画は、國有鉄道が経済再建と民生安定の基盤たるに思いをいたしまして、車輌施設の戰災復旧と、保守度の向上によりまして、各種の設備の整備をはかり、も
つて輸送力の確保増強をいたす目途をもちまして、
計画を樹立いたしたのでございます。まず鉄道におきましては、旅客輸送人員三十五億六千万人、九百四十一億二千八百万人キロで、対前年比は五%増でございます。貨物輸送トン数は、目標一億三千万トンといたしまして、
予算におきましては一億二千六百万トン、二百五十四億六千七百万トンキロで、対前年比は一七%増でありまして、これに要する列車キロは二億三千三百万キロで、対前年比は一二%の増加と
なつております。國営自動車におきましては、旅客輸送人員五千六百万人、六億六千万人キロ、貨物輸送トン数八百万トン、一億三千万トンキロで、これに要する走行キロは一億千三百万キロ、船舶においては旅客輸送人員千四百万人、三億三千三百万人キロ、貨物輸送トン数五百万トン、四億四千万トンキロと
なつております。
次に工事
計画といたしましては、施設の維持をなすための、工事に重点をおきまして、鉄道諸施設、車輌、自動車、船舶の戰災復旧、維持修繕の工事が大部を占めておりまして、新規の改良工事中、そのおもなものは、輸送力増強と石炭の恒久的節減を目途とする電化並びに発電工事、すなわち沼津、浜松間、松戸、安孫子間、福島、米沢間の電化並びに改良工事、川崎発電所の戰災復旧、信濃川発電所の第三期工事と、電氣機関車二十輛、客車百七十二輛、電車四十二輛、貨車四千四百五十輛の新造、並びに青函間、宇野高松間、
連絡船六隻の新造費であります。新建設線につきましては、新規工事を一切中止する方針のもとに、二三の線につき工事打切りに伴う整理工事費と補償金を計上いたしたにすぎません。以上によります工事費の
総額は、設備の補修に要する
経費を計上せる、損益勘定において、施設、車輛機械、船舶の修繕費二百三十三億円、設備の取替改良に要する
経費を計上せる工事勘定において工事費百五十七億円で、工事費総計は三百九十億円であります。
以上の諸
計画に要する
資材は、そのおもなるものについて述べますれば、普通鋼々材十七万五千トン、銑鉄三万トン、セメント一〇万トン、木材二百四十八万石、枕木六百三十二万丁、石炭七百六十万トンでありまして、これを
昭和二十三
年度の
生産計画に対比いたしますと、普通鋼々材において一八%、銑鉄四%、セメント五%、木材六%、石炭二一%となるのでありまして、國家全体の
資材需給
計画において、國有鉄道の使用量は相当なる部分を占むることとなりますので、これが使用にあた
つては、極力節約に努むるとともに、合理的運用をなす所存でございます。
以上の諸
計画を実施するに要する職員数は、損益勘定所属のもの五十三万二千人、工事勘定所属のもの二万人、中間勘定所属のもの七万五千人、
合計六十二万七千人であります。先般も本
委員会おいて、御
説明申し上げたごとく、今回の
予算編成に際し節約に
努力いたしたのでございます。これを事項的に見ますと、戰前における平常状態の
年度を
基準年度として、これが各種設備、各種業務量及び労働
條件と、
昭和二十三
年度のそれを比較考量いたしまして算定いたしました
基準人員五十四万一千人と、交通保安一万三千人、保守復元一万一千人、渉外
関係四万人、
会計制度及び統計事務強化等五千人、道路運送監理強化三千人、労働
基準法に基く
定員外人員一万五千人であります。これを前
年度当初の
定員六十二万一千人と比較いたしますと、労働
基準法に基く
定員外人員一万五千人を除いたものは、本
年度六十一万一千人であり、輸送量が七%増加し、進駐軍の要請に基く増員、交通保安官及び道路運送監
理事務職員の増員をなしましても、なお一万人を節減したのであり、さらに又労働
基準法の
定員外については、労働
基準法施行により夜間作業、危險作業の就業停止となる女子年少職員は四万人になる見込みのものを、極力配置轉換致しまして、最小限の一万五千人といたしておるのであります。もちろん今後におきましても、新規採用を原則的に停止いたし、配置轉換を促進し、職員の地域的不均衡を是正いたしますとともに、職員の労働意欲を向上せしめて、
経営の合理化をはかる考えでおります。
次に
昭和二十三
年度國有鉄道
事業特別会計歳出歳入予算につき
説明いたします。以上の諸
計画を織りこみました
予算の
総額は、
歳入、
歳出共に千二百六十九億円でありまして、その
歳出から申し上げますと、
人件費については、四月五月はいわゆる二千九百二十円ベース、六月一日以降は三千七百円ベースで、
物件費については四月から六月十四日までは、昨年七月に
改訂せられたいわゆる七・七價格で、六月十五日以降はおおむね七割騰貴するものと見込んでおります。総
経費は、百二十六億で、これが
内訳は業務運営及び工業施行に要する監理部内の諸
経費、百八億円と発行済
公債二百十五億、借入金百十五億円及び
昭和二十三
年度新規発行
予定の
公債百七十四億円に対する利子及び債務取扱諸費十八億円との
合計額であります。
業務費八百九十二億円は、鉄道、自動車、船舶、病院に要する
人件費、修繕費、業務委託費及び業務上必要なる諸
物件費等業務運営に必要なる直接的諸
経費を計上いたしております。
陸運行政費十四億円は、陸運監督費、観光行政費、鉄道保安費等、鉄道
事業外の諸
経費を計上いたしまして、これが財源は、國有鉄道
事業の企業
独立採算に資するため、
一般会計からの
受入れにまつこととして、別途法律案を
提出いたしております。
建設改良費百五十七億円は、先ほど御
説明いたしました取替及び改良の工事費を計上いたしてあります、
運轉資金補足六十億円は、
同額を
歳入に計上いたしておりますが、ともに
事業遂行途上における運轉資金の増減に備え、補足及び戻入を計上いたしました。諸
支出三百万円は、地方鉄道及び軌道における納付金等に関する法律に基く地方鉄道及び軌道の補助費を計したものであり、これまた、
同額を同法に基く納付金
收入として
歳入に計上いたしております。
予備費二十億円は、業務取扱
数量の増加その他避けがたい事由により生ずることあるべき業務運営上、その他の
予算の不足に充つるために計上いたしました。以上で
歳出の
合計は、千二百六十九億円となります。
これに対する財源といたしましては、
事業收入で、これは運輸
收入九百十五億円と、病院
收入二億円、
雜收入八億円との
合計額九百二十五億円でありまして、運輸
收入につきましては、別途國有鉄道運賃法を
提出して、御
審議を願
つておりますごとく、六月十五日以降、鉄道客貨とも三倍半に、自動車同じく三倍に
改訂するものとして、これが増收額五百八十九億円を見込んで計上しております。
雜收入八億円は、土地物件の貸付料、廣告料金、不用財産または物件の賣拂
代金等による
收入を見込んでおります。
公債金受入百七十億円は、工事勘定に要する
経費に対する財源として、損益勘定の内部保留金たる
減價償却金相相額六億円と、
公債発行
差額相当額四億円との
合計額十億円と、財源賣拂
代金たる
雜收入とをも
つて、資金に充つるのほか、残額全部を
公債発行にまつことといたしたのであります。
一般会計からの
受入金百十四億は、前述いたしました陸運行政費
受入金十四億円と、これまた別途法律案をも
つて御
審議を願
つております
業務收支
差額受入金百億円との
合計額であります。
運輸資金戻入六〇億円と、地方鉄道及び軌道特別資金
收入三百万円については、前述いたしましたので、
説明を略します。
以上、
歳入歳出予算のほかに、
事業施設の建設改良工事に要する
経費につきましては、工事の性質上、
年度内に
支出を完了することが予期しがたいので、本
年度の
支出残額を、翌
昭和二十四
年度に繰越し使用する明許をお願いしております。なお以上のほか
予算総則第二條に掲示しております國庫債務負担行為に関しましては、
業務費に九十億円、
建設改良費で四十五億円を必要とするものといたしております。さらにまた
予算総則第四條には、國有鉄道
事業特別会計におきまして、その
事業收入が
予算額に比し増加したときは、その
増加額に相当する
金額を借入金の借入額の減少またはその返還に充つるほか、その
收入増加が
事業量の増加に伴う場合においては、
予備費使用の例に準じまして、その
收入の一部を
事業のために直接要した
経費に充当することができるように規定して、企業運営の機動性を発揮できるように措置いたしております。一時借入金の限度につきましては、
予算総則第八條に百三十億円を規定いたしました。これは
予算執行に伴う資金の一時的不足に処するためのものでございます。
最後に國有鉄道の財政につきまして、今後の見透しを申し上げますならば、本
年度六月以降價格
水準が
改訂された場合に、運賃をかりに現行賃率のまますえおくものといたしますれば、行政監督的
経費については、
一般会計の
受入金にまつといたしましても、なおかつ六百八十九億円という
尨大なる赤字を生ずる見込みでございます。從いまして今回
提出の
予算におきましては、六月十五日以降鉄道貨客とも三倍半、自動車貨客とも三倍に運賃を
改訂いたしまして、増收を見込んだのでありますが、しかもなお百億円の赤字を生じますので、現下の経済的情勢より見まして、
一般会計から繰入を受けることといたしまして、一應
收支を合致せしめたのでございます。この際ここで特に御考慮をお願いいたしたいことは、百億円の赤字と申します場合においては、
経費中
減價償却相当額につき、財産の帳簿價格を
基礎として
計算いたしているのでありまして、実質的に財産を維持していくためには、いかにしても再調達價格をも
つて計上せねばならぬと考えるのでございます。かくなりますと、
昭和二十三年三月末固定財産價格は帳簿上では二百二億円でありますが、時價によれば四千二百五十億円程度となる見込みで、これによる償却額は、百三億円となるので、結局現在提案している
收支見込におきましても、九十数億円の赤字を生ずるのでありまして、この分だけ赤字
公債を発行いたしているということになるのでございます。從いまして、かかる赤字の状態を今後も永続いたしますことは、
事業の円滑なる運営に支障を來すものと考えられますので、國有鉄道
事業につき、今後完全に
独立採算制を確立して運営するためには、
会計上、法規上の諸制度を改正いたしますとともに、
收支の点においても
経営を合理化して、
経費の節減に
努力いたしますことはもちろん、さらにまた経済情勢の安定をまちまして、何らかの
收支均衡の措置を講ずるの必要があるものと存じます。
以上
昭和二十三
年度國有鉄道
事業の
特別会計予算の大綱につきまして御
説明申し上げましたが、何とぞ御
審議の上、御承認あらんことを切望いたします。
次に海運
関係の
説明を簡單に申し上げます。
政府は状來外國航路に從事し、國際
收支の改善に資するように、日本海運の振興発展をはかりますためには、方針としましては、船舶運営会傘下の船舶を漸次民間に還元いたしまして、民間の創意と経驗を十分生かして、合理的
経営と
能率向上とに、さらに一般のくふうをはかる必要があると考えております。しかしわが國経済の
現状より見まして、今ただちにそれを実行することは、幾多考慮を要すベき点があるのでございます。
政府といたしましては、可能な限り現在の船舶運営会による船舶の運行方法に改善を加えまして、民間の創意とくふうと責任を参加せしめることによりまして、輸送能力増強の現下の要請にこたえるベく、目下
関係方面とも折衝中でございます。
汽船の貨物運賃につきまして、簡單に御
説明申し上げますが、内航の運賃は現行の三倍といたしたのでございます。これは
從來はブロック別運賃で、航路の長短、難易、積荷の種類等の要素をまつたく無視したものであ
つたのでありますが、今次の
改訂では、これを航路別、貨物別に編成替えすることといたしております。値上比率は原價
計算の結果は五・七九倍であるのでありますが、
從來海上輸送費が鉄道輸送費に比しまして、著しく割高でありましたことを考慮いたしまして、鉄道の三・五倍に対し、海上を三倍といたすことにいたしまいた。外國航路運賃、これまた三倍にいたしまいたが、外航運賃は現在比較的原價に近いのでございまして、現行の一・七七倍にいたしますれば、採算までに達するのではございますが、一面船舶運営会に対する國庫補助金等を減少せしめまして、他面外國船舶との競爭をも考慮しつつ、三倍といたすことにいたしたのでございます。タンカー(油槽船)の運賃は、海運調整の必要なく、また外航にも貨物運賃ほどの注意を拂う必要がございませんので、内外航路を通じまして、採算点に達するごとく、これまた三倍といたしました。
以上簡單でございますが、なお詳細にわたりましては、御
質問等の場合御
説明を申し上げたいと存じます。