○山崎岩男君 ただいま
議題となりました性病予防法案について厚生
委員会における
審議の
経過並びに結果を申し上げます。
わが國における性病の蔓延
状態は、戰前すでに憂慮すべきものがあ
つたのでありまするが、戰時中より戰後にかけての社会的混乱に伴い、性道徳の紊乱、道義心の頽廃等眞に寒心にたえぬ実情であります。よ
つてこの際、性病の徹底的な予防及び治療を行い、も
つて健全なる
國家の建設に資せんとするのが、
政府の本法律案
提出の
理由であります。
次に、この法案の大要を申し上げますと、第一に、性病の徹底的な治療及び予防を國及び
地方公共團体並びに個人の義務とし、医師はこれに協力する義務をもつこととしておるのであります。第二に、性病の取扱いは急性傳染病とほぼ同様として、匠師の届出制度をとり、都道府縣知事の監督下に医師及び患者に徹底的治療を義務づけ、必要により患者を強制入院させ得るようにいたしておるのであります。第三に、感染原の発見追及を行う規定を設け、患者についていわゆる接触者調査を行い得ることといたしておるのであります。第四に、性病の対象範囲の拡大に伴い、業態者の健康診断を廃止しましたが、費淫常習の疑の著しい者に対しては強制健康診断を命じ得ることとし、公娼廃止後憂慮せられていました、この方面における性病の傳染を防止することができるようにいたしたのであります。第五は、性病の蔓延の著しい場合、その治療及び予防のため都道府縣知事が強力な予防
措置を講ずるには、特に厚生大臣の承認を必要とすることにしております。以上の都道府縣知事の健康診断命令が濫用されるときは、基本的人権蹂躪を招くおそれがありますので、知事の命令が違法であると考えたときには、裁判所に命令の取消しの訴えを提起することができるようにしております
本法律案は、六月二十八日、本
委員会に付託せられ、ただちに
審議にはい
つたのでありますが、その
内容が公衆保健上きわめて重要なる点に鑑み、連日
政府との間に熱心なる
質疑應答が行われたのであります。七月三日
審議を終り、
討論を省略して
採決に入りましたところ、全員一致原案
通り可決すべきものと決した次第でございます。
次に、健康保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。
健康保険法におきましては、從來、被保険着の権利義務に関する規定等で政令に委任した事項がきわめて多か
つたのでありますが、最近の立法の趨勢に鑑み、これを法律に規定するとともに、社会経済情勢の変動に伴い実質的な承足を行わんとするのが、
政府の本法律案
提案の
理由であります。
次に、本法律案のおもなる点について申し上げますれば、第一は、被保険者の標準報酬を、最近における
賃金の上昇に鑑み、最高八千円に改めておるのであります。第二に、國、都道府縣及び市町村等に使用される公務員をも被保険者とすることとしたのでありますが、そのうち
國家公務員については、法律をも
つて組織された共済組合がありますので、これに健康保険事業の実質的代行を認むることといたしておるのであります。第三に、健康保険の保険医及び保険薬剤師は、礎來の強制指定制を改めて、保険医または保険薬剤師となる者の同意を得てい都道府縣知事がこれを指定するこことしているのであります。第四に、保険料に関しては、
政府の管掌する健康保険については千分の四十とし、特別の場合に、主務大臣が健康保険
委員会の意員を聴いて、その一割の範囲内で決定して主務大臣の認可を受けることといたしているのであります。
次に、へい獣処理場等に関する法律案について申し上げます。
從來へい獣処理場等の衛生取締りは、各都道府縣令によ
つて行われてきたのでありますが、
昭和二十二年法律第七十二号日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の規定によりまして、これらの都道府縣令はその効力を失うに至り、かつ各都道府縣令による取締りをも
つてしても、その取締りの対象、
方法等が一定していなかつたため、取締りの徹底と指導の適正等を十分行うことが困難で、公衆衛生上遺憾の点がありましたので、この際統一的な
基準を定めて、これらの衛生取締りを徹底化せんとするのが、
政府の本法律案
提案の
理由であります。
次に、社会保険診療報酬支拂基金法案について申し上げます。
健康保険、船員保険、
國民健康保険及び法律をも
つて組織されている共済組合が、その被保険者等の保険医等について診療を受けた報酬として支拂う費用は、従來各保険者または共済組合から直接支拂
つていたところでありますが、礎來の実績に徴し、各保険者等がら区々に支拂うことは、ややもすれば、その支拂遅延と診療担当者の請求の煩雑性によ
つて、ど
かく円滿な保険診療を阻害していた
事情に鑑み、今般社会保険診療報酬支拂基金を創設して、従來の支拂
方法を改め、その支拂機関を一元化して、円滿な保険診療の推進に寄與せんとするのが、
政府の本法律案の
提案理由であります。
次に、本法律案の
内容のおもなるものについて申し上げますれば、第一に、社会保険診療報酬支拂基金は公法人として、主たる事務所を東京都に、従たる事務所を各都道府縣に置き、業務を運営するのであります。第二に、基金の理事機関として、保険者代表、被保険者代表、保険医代表及び公益の各代表者をも
つて理事に充て、また、從たる事務所にも同様な代表者をも
つて幹事とし、最も民主的な運営に資することとしておるのであります。第三に、基金の基本金は百万円として、うち四十万円は
政府が醵出し、残額はその他の保險者で醵出することとしているのであります。第四に、基金の業務は、各保險医と契約して、保險者が診療担当者に対して支拂う診療報酬の支拂を代行し、またこれら診療報酬請求書の審査をすることであります。
次に、松原一彦君外六十五名の
議員の
提案にかかる恩給法臨時特例案について申し上げます。
終戰直後制定せられた恩給法臨時特例案は、公務員の俸給の
増加にもかかわらず、恩給金額計算について暫定的に制限的の
措置を講ずる趣旨のもので、最近における社会経済
事情に徹するときは、恩給法はすでに退職給與の実を失つたものと言わねばならぬのであります。これがため、恩給法改正の声は全國的に膨湃として起り、
國会に対する請願、陳情も、毎年おびただしき数に上
つたのでありますが、
國会においては、これらを採択の上、
内閣に送付して、その善処を促し來た
つたのでありますが、公務員に対する新給與制度の実現にもかかわらず、未だこの趣旨における恩給制度の改正案は
提出を見ない次第であります。よ
つて、
國家公務員法に明らかにされた恩給制度の趣旨にも鑑み、長年忠実に勤務せる公務員をして退職後も相應の生活を営ましめることを目途として恩給法の改正を行わんとするのが、本法律案の
理由であります。
次に、本法律案の
内容の主たるものについて申し上げます。
第一は、普通恩給年額、一時恩給または一時扶助料の金額の計算について、公務員の退職または死亡した当時の俸給額を
基礎とする恩給法の原則に復して、恩給法臨時特別による暫定的取扱を廃止せんとするものであります。
第二は、
増加恩給及び傷病年金の年額は、退職当時の俸給を
基礎とし、これに分務傷病の原因及び症状等差の区分のみによる一定の律を乗じて算出することとし、定額制を改めたのであります。
第三は、
増加恩給及び傷病年金の年額に対しては、暫時的取扱いとして、恩給受給者の家族一人につき年額二千四百円を加増することとしておるのであります。
第四は、公務扶助料の年額は、普通扶助料の額を
基礎とし、これに死亡の原因の区分のみによる一定の率を乗じて算出することとし、遺族加給については、遺族一人につき一律に年額二千四百円加給することとしておるのであります。
第五は、恩給國庫納金及び恩給交付金の金額算出率を、恩給法所定の百分の二の率に復しておるのであります。
第六は、普通恩給の停止に関し、恩給外
所得ある者については、その恩給年額を一万五千円、恩給外
所得年額を十五万円に
引上げ、若年普通恩給者については、暫定的取扱として、五十歳未満の者につき、その年齢に應じ恩給金額の金額ないし十分の三までの三段階に区分して、その支給を停止することといたしておるのであります。
第七は、この法律改正前に給與事由の生じた普通恩給、
増加恩給、傷病年金、扶助料については、從來の俸給給與を新給與水準に切替えた際の最低額程度までこれを増額改定することとしておるのであります。
以上四法律案は、それぞれ六月二十九日、三十日及び七月三日、本
委員会に付託せられ、連日
政府との間に熱心なる
質疑應答がが行われたのでありますが、その詳細は
会議について御
承知くださるようお願いいたします。
かくて、本日
討論を省略して
採決に入りましたところ、全員一致で案
通り可決すべきものと決した次第でございます。
右、御
報告申し上げます。(
拍手)