○安東義良君 ただいま
議題と相なりました、万国郵便条約及び
小包郵便物に関する約定に加入することについて承認を求めるの件について、外務
委員会における審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
本件は、六月二十五日
政府から国会に
提出され、ただちに本
委員会に付託されましたので、翌二十六日及び二十八日の二回にわたり
委員会を開き、外務、逓信両省
政府委員の出席を求め、
本件について審議いたしたのであります。
本件は、新憲法下条約審議の最初の事例でありますので、本
委員会といたしLましても慎重に審議し、活発に質疑応答及び討論が行われました。
政府委員の説明によれば、
昭和十四年五月二十三日、ブエノスアイレスにおいて署名された万国郵便条約及び
関係約定は、本月末ひも
つて廃止され、七月一日以後は、紹和二十二年七月五日パリにおいて署名された万国郵便条約及び
関係約定、これに代
つて実施されることとなり、わが國としても旧条約に加入していた
関係もあり、かつまた今回真条約に加入し得る
状態と
なつたので、右のパリ万国郵便条約及び
小包郵便物に関する約定に加入することとしたいというのであります。
共に、新万国郵便条約成立の経緯その他につき詳細に
政府側の説明がありましたが、それを要約いたしますれば、第十二回万国郵便連合会議は、
昭和十四年ブエノスアイレスにおいて開催されました前回会議の決定により、五年後の
昭和十九年にパリで開催される予定で、あつたところ、戦争のため延期され、昨年五月七日からパリで開かれたので、あります。右会議は、総数八百二十一件に及ぶ各国の提議を審議の上、万国郵便条約ほか七種類の約定及びこれら条約、約定の思考規則の条項を決定し、七月五日に、各国委員が各条約、約定の原本に署名を了したのであります。なお、新郵便条約に署名した國は七十六箇國、
小包郵便約定に署名したのは六十三箇國であります。本条約の最終議定書には特別規定を設けて、条約及び約定への加入を一時妨げられているドイツ国、日本国及び朝鮮は、
責任当局が適当と判断するときに、正規の手続、すなわち連合構成国三分の二以上の承認を得ずとも、外交上の形式により、当該
政府からこれをフランス共和国
政府に通知し、かつ同国
政府から他の連合国に通知することにより、これらの条約、約定に加入することができることにな
つているのであります。
新パリ条約が、旧ブエノスアイレス条約と比較して相違した主要点をあげますれば、一、万国郵便連合と国際連合との間に協定が締結せられ、万国郵便連合は國際連合の専門機関として認められ、これを本条約の規定に明らかにしたこと。二、万国郵便条約へ新たに加入しようとする場合、従前の規定では、当該國
政府からスイス
政府に外交上の手続により通告するだけ足りたのであります、新条約では、加入通告のほかに、連合構成国の少くとも三分の二の承認を要することと
なつたこと。三、万国郵便連合の大会議から次の大会議までの間において事務の継続を確保するため、実施
連絡委員会をスイス国ペルン市に設置し、原則として一年一回定時会議を開催することに相
なつたのであります。
日本
政府は、六月上旬にこの条約の全文を入手しましたので、
政府においては、翻訳その他右条約加入のための準備に鋭意努力しておりましたが、さしむき必要とみとめられる本条約及び
小包郵便物の約定に加入するを適当と認め、
関係節の正式承認を得た上、六月二十五日閣議の承認を得ましで、ただちに国会に
提出した次第でありまして、効力発生期日も七月一日に迫
つております
関係上、早急国会の承認を得たき旨の
政府側要望があつたのであります。
次いで、本委員と
政府委員との間に質疑応答が行われましたが、その詳細は会議録に譲り、ここでは、そのうち最も問題と
なつた諸点を述べることといたします。
まず、外国郵便の現状についての
質問に対し、
政府側としては、現に外国郵便については、一昨年九月から、連合郡当局の承認により逐次業務を開始し、現在は通常郵便物については例外なく業務が行われており、
小包郵便についても、外国より日本向けのものは自由に行われており、日本より外国向けのものも、目下国会に
提出中の郵便法の一部を改正する法案が通過すれば、例外なく自由に行われ得ることとなる旨の応答がありました。
また、新パリ條約に加入することにより、わが國として特に有利となることがあるか、特にないというのであれば、わが国は占領下独立
國家としての昨日も十分に発揮し得ない今日でもあるから、十分な審議の余日も少ないのに、取急ぎ本条約等に加入する必要があるのかとの質疑がありましたが、これに対し
政府側としては、新條的は旧条約と大差はないが、幾多新規な技術的規定を含んでおり、実施期日も七月一日に迫
つておることで、殊に郵便連合事務局よりも加入方の勧誘があり、
連合軍当局より特に加入許可の正式通知もあつた次第で、その示された好意にこたえるためにも、早急加入を実現いたしたく、かつ
本件は終戦以来條約締結について最初の事例であり、これからその他の條約へ加入する前例ともなり、国際
社会への仲間入りの第一歩ともなることで、十分意義あることと信ずる旨の應答がありました。
次に、本条約加入の結果、条約上の権利義務が生ずると思われるが、現在
連合軍の占領下におけるわが国が、完全に権利を行使することができるかにつき質疑がありましたが、これに対し
政府側として、
本件のごとく、条約中に占領下における日本の加入を予想して加入の手続をも規定しており、
責任当局の承認の上で加入すすものであるから、条約の上の権利は十分行使し得るものと信ずる旨の
答弁がありました。
さらに、本条約中国際事務局の経費の分担につき質疑がありましたが、
政府側から、旧条約時代では、わが国は一等国として、朝鮮その他の属領地の分を加えて年約一万七千スイス・フランンを分担したが、新条約では、わが国は以前一等国として、大体一万二千フランを分担することとな
つており、朝鮮は第四等国として分担金を課せられておるとの應答がありました。
最後に委員側から、
本件加入の承認を国会に求むるについて、
政府側が、今回のごとく国会閉会間際に至り、十分の審議を盡すの余日なきに至
つて、かかる重要なる条約の早急承認を求めらるることは、はなはだ妥当を欠くの
措置なりとして、今後は
政府当局において、条約その他の参考資料も
委員会開催前に配布し、本
委員会側ともあらかじめ十分
連絡を遂げ、
委員会に十分檢討の機会を與えられるよう
措置せられたい旨の要望がありましたが、
政府側においてもこれを諒とし、将来は十分
注意すべき旨の
答弁がありました。
右をも
つて質疑を終了し、討論に入り、委員竹内克巳君より、本条約及び約定は、現下の事態に鑑み、
政府の要求
通りこれを承認することに
異議はないが、今後条約案の審議に際しては十分なる審議の余地を與えられるよう
政府側に厳重なる
注意を促すべしとの意見が述べられ、また委員若松虎雄君よりも同
趣旨の意見が開陳せられた後、討論を終結し、本
委員会は、今後
政府において国会に条約の承認を求めるに際しては、本
委員会に十分なる審議の機会を興うるよう
政府当局に厳重要望し、
全会一致をも
つて本件を可決いたした次第あります。つきましては、本院において万国郵便条約及び
小包郵便物関する約定に加入することについて承認を與えられんことを希望いたします。
右、
報告いたします。(
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