○山崎岩男君 ただいま
議題となりました医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、歯科衛生士法案、歯科医師法案、医療法案、
國家公務員共済組合法案、理容師法の一部を
改正する
法律案、予防接種法案、優生
保護法案について、厚生
委員会における
審議の
経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、医師法案、歯科医師法案、保健婦助産婦看護婦法案、医療法案及び歯科衛生士法案について申し上げます。
國民医療法は、新
憲法下の現状には適合しない点が多々あるとともに、終戰後の社会情勢の変化に対應する新たな医事
制度の確立が必要でありますので、
國民医療法を
改正し、新たな医事法規を制定いたさうとするのが、
政府のこれら法案の
提案理由であります。以下、その内容の大略を申し上げたいと存じます。
医師法案及び歯科医師法案について申しますれば、第一に、両法案は医師、歯科医師の身分法とも申すべきものでありまして、從前の例にならい、両法案の内容は大体その軌を一にしておるのでありますが、両者の業務内容の異なるに從い、その
規定の内容にも若干の差異があるのであります。
第二に、両法案はいずれも医師及び歯科医師の職分、免許試験及び業務等内容はおおむね現行の
規定を踏襲しているのでありまして、
改正のおもなる点は、一、医道
審議会を設けて、免許の取消、停止等に関しその意見を聽くこととしたこと二、医師といえども、歯科医業を行うためには、歯科医師免許を受けなければならないこととしたこと。三、医師または歯科医師の処方箋の交付に関する從來の
規定に若干の修正を加えたこと等であります。
次に、保健婦助産婦看護婦法案でありますが、本法案の内容は、昨年七月制定公布されました保健婦助産婦看護婦令の内容を踏襲いたしたのであります。
本法案と從來の
制度との内容の相違のおもなる点を申し上げますと、第一に、これらの医療
関係者の素質の向上をはかるために、免許を受けることのできるものの資格を相当
程度高めたことであります。第二に、これらの者の業務の内容でありますが、新たに助産婦は当然に甲種看護婦の業務をなすことができることとし、乙種看護婦については、甲種看護婦に比し業務の内容を
制限いたすことといたしておるのであります。
次に医療法案でありますが、その内容は、第一に、病院の規格を引上げ、患者二十人以上の收容施設を有するものとし、その設備等に関しても、從來よりも相当高度の基準設けたのであります。第二に、診療所につきましては、患者收容につき一定の
制限を設け、また特定の場合を除き、同一の患者を四十八時間を超えて收容してはならないこととしたのであります。第三に、助産に関する施設につきましては、そのうち助産婦の管理するものは、その
名称を統一して助産所と称させるとともに、その收容人員等をも
制限することとしました。第四に、新たに総合病院の
制度を設け、患者百人以上の收容施設を有しかつ一定の診療科名を有する病院であ
つて、一定の完備した施設を有するものは、
都道府縣知事の
承認を受けて総合病院と称することができることとしております。第五に、從來すべて許可
制度によ
つておりました病院、診療所の開設は、今後は医師、歯科医師が診療所を開設する場合は届出
制度とし、その他の場合に限り許可
制度とすることにいたしております。第六に、今後のわが國の医療機関の整備の点につきましては、根本的には厚生省及び各
都道府縣に医療機関整備
審議会を設けて、その全般的整備計画につき調査
審議さぜるとともに、
地方公共團体等の経営する公的医療機関を早急に整備することにつき
國庫補助を行うこととし、また医療機関の運営に関しましては、主として公的医療機関中整備されたものをいわゆるメディカル・センターとして、その施設を開業医の利用等に開放させ、またその修習機関として活用することとし、も
つて公私すべての医療機関が一体とな
つて医療の普及向上に寄與し得るような態勢の確立を企図いたしておるのであります。
次に、歯科衛生士法案について申し上げます。わが
國民の多数が歯牙及び口腔疾患のために、その健康を損われている現状に鑑み、歯科医師との緊密な連繁のもとに、もつぱら歯牙及び口腔の疾患の予防
処置をなすことを業とする者の資格を定め、これを普及させることによ
つて、歯科疾患の予防及び口腔衛生の向上をはからんとするのが、
政府のこの
法律案を
提出する
理由であります。
以下、その内容の大略を申し上げますと、第一に、歯科衛生士になろうとする者は、
都道府縣知事の免許を受けなければならないこととし、免許は、文部
大臣または厚生
大臣の指定した学校、養成所等を卒業した者であ
つて、さらに厚生
大臣の行う歯科衛生士試驗に合格した者に対してこれを與えることとしております。第二に、歯科衛生士の業務は歯石の除去、予防のための薬剤の塗布等予防上の一定の
措置のみに限られ、しかも、その業務を行うにあた
つては歯科医師の直接の指導下においてすることを要し、独立してはその業務をなし得ないことにしております。
右のうち、医師法案ほか三案は六月二十一日、医療法案は二十三日、本
委員会に付託されたのでありますが、それぞれ関連性を有するがため、一括して二十四日より
審議に入り、連日熱心なる
質疑應答が交されたのでありますが、以下、そのおもなるものについて申し上げます。
第一に、保健婦、助産婦、看護婦に対し相当高度の基礎的教養が要求されているが、これがため保健婦等の数に不足を來すおそれはないかとの
質問に対しては、本
法律案施行の時期についてそれぞれ
経過的
規定があるのみならず、從來の保健婦等は、今後もその業務を継続することができるのであるから、ただちに数的不足を告ぐるようなことはない。
第二に、医療費の軽減と大衆の衛生知識の向上をはかるため医師の処方箋交付を
義務制とする意思はないかとの
質疑に対しては、藥の内容を知りたい患者は処方箋交付を要求することができるのみならず、一面において、交付することが診療上特に支障ある場合もあり、事実問題としても事務的に困難が多いから、全面的に交付を
義務制とすることは不適当に認めるとの
答弁がありました。
第三に、処方箋料を徴收することは、処方箋発行が医師の指導の一方法たる
趣旨にも反するのみならず、医薬の任意分業を妨げることはないか、またたとい徴收するとしても、きわめて低額とすべきではないかとの
質疑に対しては、処方箋料は理論的には一種の技術料で、診察料とは別個のものとも言えるが、事実問題としては外國立法例もあり、今後医療報酬
審議会でその料金額について十分研究する方針であるが、社会保險診療報酬算定
協議会できめておる処方箋掛額を標準とすべきものであるとの
答弁がありました。
かくて、二十八日
討論に入りましたところ、全員一致原案に賛成いたしたのであります。次いで採決に入りましたところ、また全員一致原案通り可決すべきものと決した次第でございます。
次に、
國家公務員共済組合法案について申し上げます。
現行の
政府職員共済組合令は、
昭和二十二年
法律第七十二号により、暫定的に
法律たる
効力を認められておりますが、近くその期限が満了いたしますので、新たに共済組合の組織活動等を規律する統一的
法律を制定せんとするのが、
政府の本
法律案提案の
理由であります。
まず、本
法律案の内容について申し上げます。第一は、共済組合を法人として、権利義務の帰属を明確ならしめたのであります。第二は、組合の民主的運営をはかるため運営
審議会を設けて、組合員をしてその運営に参加させる方法を講ずるとともに、給付の決定、掛金の徴收等につき
異議がある組合員の苦情を処理するために、共済組合
審議会を設けておるのであります。第三は、組合の給付でありますが、現在はその種類や額が組合により異な
つておるのを、
法律によ
つてこれを統一したほか、健康保險法、厚生年金法の
改正と実質的に権衡をはかり、またやむを得ない欠勤の場合に、俸給に代る手当として、新たに休業手当金を設けておるのであります。第四は、
國庫負担金の割合を社会
保険と同様として明確にするとともに、組合の事務に要する費用は
國庫が
全額負担いたしておるのであります。第五は、恩給法の適用を受ける公務員については、退職給付等、恩給法
改正の際考慮することとして、当分の間はこの給付は行わないことといたしておるのであります。
本
法律案は、六月十八日厚生
委員会に付託せられ、二十六日から
審議に入
つたのでありますが、二十八日、
討論を省略して採決にいたしましたところ、
全会一致原案通り可決すべきものと決した次第であります。
次に、理容師法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
現行理容師法によれば、理容師免許を得る資格としては、厚生
大臣指定の養成施設において修業した者と試驗に合格した者との二本建でありますが、ややもすれば弊害の件うおそれある試驗
制度を
廃止せんとするのが、本
改正法律案提案の
理由であります。
本法案のおもなる点を申し上げますれば、第一は、免許を受くる資格として、從來の理容師試験
制度を
廃止して、厚生
大臣指定の理容師養成施設において一年以上修業した後、さらに一年の実地修練を経ることといたしたのであります。第二は、厚生
大臣が養成施設を指定する場合の諮問機関として理容師養成施設指定
委員会を設けたのであります。第三は、從來の試験
制度は、六・三制の学校
制度が完備されるまでの期間、
経過的にこれを認めておるのであります。
本案は、六月二十五
日本委員会に付託され、榊原委員より
提案理由の
説明があ
つた後、
質疑應答にはい
つたのであります。
審議の進行に伴い、田中、山崎両委員より次の修正意見が
提出せられたのであります。すなわち第一は、最近の立法例に鑑み、第四條の理容師養成施設指定
委員会を理容師養成施設
協議会に改めること。第二は、
國民学校高等科卒業者で徒弟見習中の者に対する特例を
規定する第二十
一條及び第二十
二條は、
政府提出の理容師法特例案を重複するため削除すること。第三は、厚生
大臣の指定する養成施設の普及状況に鑑み、
学校教育法第四十一七條に
規定する者に対して、
昭和二十八年六月三十日まで從來の試驗
制度を認めることの三点でありますが、これに対しては、
提案者を含めて全員
異議なく修正に賛成いたしたのであります。
かくて、二十八日
討論を省略してまず修正案について採決に入りましたところ、全員一致これに賛成いたしました。次いで修正
部分を除く原案の他の
部分について採決に入りましたところ、これまた全員一致原案通り賛成いたしました。すなわち、本
法律案は全員一致修正可決すべきものと決した次第でございます。
次に、予防接種法案について申し上げます。
わが國の傳染病発生の趨勢は、戰争末期より逐增の傾向にありまして、終戰後の社会的混乱に伴い、
昭和二十年、二十一年と引続き傳染病の爆発的発生と蔓延を惹起いたした次第でありますが、
國民をしてこれら疾病の災厄より免れしめ、その発生による傳染のおそれのある疾病に対して、学界において疫病の効果を確認されたる免疫源による予防接種を全面的に実施し、も
つて疫病予防の完璧をはからんとするのが、これが
政府の本
法律案提出の
理由であります。
次に、この法案の内容の大体を申し上げます。第一に、定期の予防接種を行うものは、痘瘡、ジフテリア、膓チフス、パラチフス、百日せき、結核であり、臨時に行うものは、以上の疾病のほか、発疹チフス、ペスト、コレラ、猩紅熱、インフルエンザ及びワイル病といたしておるのであります。第二に、予防接種を行う義務者を市町村長とし、市町村長は保健所長の指示を受けてこれを行うこととしております。第三に、厚生
大臣は必要があると認めるときは、
都道府縣知事に命じて臨時に予接防種を行わせることができることといたしたのであります。第四に、
都道府縣知事も、疾病蔓延防止のため必要があると認めるときは、同じく臨時に予防接種を行い、または市町村長に行わせることができるようにいたしております。第五に、予防接種を受けた者に対して証明書を交付し、市町村においても台帳を作成し、これが記録を明瞭ならしめ、実施の確実を期したのであります。
本
法律案は、六月二十三
日本委員会に付託せられ、二十七日
審議にはい
つたのでありますが、二十八日、
討論を省略して採決に入りましたところ、全員一致をも
つて可決すべきものと決した次第でございます。
次に、優生
保護法案について申し上げます。
現行の
國民優生法は、戰時國策、の一立法として、人口增進政策の基調に立つもので、戰後の変貌した社会的環境を考慮するときは、
國民素質の向上策についても新たな発足をすることが必要なのであります。すなわち、悪質な素質の遺傳による
國民資質の低下を防止すべきはもちろんのことでありますが、さらに進んで母性の生命、健康
保護の見地から、優生手術の
対象範囲を拡張するとともに、ある
程度の人工妊娠中絶を認めんとするのが、本
法律案提案の
理由であります。
次に、本
法律案が從來の国民優生法と異なる点を申し上げますれば、第一、悪質疾病の遺傳防止と母性
保護の立場から、一定範囲のものには任意に断種手術を受け得るようにしたこと。第二、強度の遺傳性精神病その他悪質遺傳者の子孫の出生を防止するため強制断種手術を行い得る
制度を設けたこと。第三、悪質疾病を有するものが妊娠し、または妊娠分娩によりて母体の生命を危險に陥らしむるおそれがある場合は、医師の判定によ
つて妊娠中絶を行い得ること。第四、妊娠によりて母体の健康を害し、または暴行強迫によ
つて妊娠したる場合は、地区優生
保護委員会の決定によりて妊娠中絶を行い得ること。第五、妊娠中絶手術の実施について指定医師
制度を設けたること。第六、三種類の優生
保護委員会をつくり、
地方委員会は強制断種手術の判定にあたり、中央
委員会は
地方の判定に対し不服あるものの訴願を審査し、地区
委員会は人工妊娠中絶手術の適否の決定に当らしめたること。第七、各府縣に優生結婚相談所を設けて、優生
保護の見地から結婚の相談に應じ、不良子孫の出生を防止するとともに、
地方人士に対し優生の知識、避妊器具の撰択、受胎調節の方法等の理解に努めしむることといたした等の諸点であります。
本
法律案は、六月二十三
日本委員会に付託せられ、二十七日より
審議に入り、二十八日、
討論の後採決に入りましたところ、全員一致原案通り可決すべきものと決した次第でございます。
以上諸法案の
審議に関しては、いずれも
政府との間に熱心なる
質疑應答があ
つたのでありますが、その詳細は
会議銀について御
承知くださるよう御願いいたします。以上、御
報告申し上げます。