○藤田榮君(続) 私は、
社会革新党を代表いたしまして、
総理大臣並びに
関係閣僚に対して
質問を申し上げます。
第一点は、
予算の均衡化に関する問題でありまするが、特に終戰処理費について
総理大臣の所見を伺いたいのであります。終戰処理費をわが國が
負担するのは、敗戰國として
國際法上の神聖なる義務であることは
承知しております。
從つて、講和條約締結までは、これは当然
國民の
負担をしなければならぬところであることも、また当然であります。
しからば、現下の情勢からい
つて、講和條約は一体いつ締結されるかという問題であります。昨年の夏、アメリカが対日講和條約をやるという
意思表示をしましてから、もしその
通りにい
つておれば、昨年のクリスマスには東京裁判は終結して、本日ただいまころは、すでに講和條約の締結が成らんとする時期であつたはずであります。しかるに、昨年暮のロンドンにおける四國外相
会議の決裂によ
つて、対独講和條約が無期延期となり、
日本に対する講和條約も、またほとんど半永久的に、その実現が危ぶまれる
状態であります。
しからば、一体何が
日本並びにドイツに対する講和條約の締結を遅延せしめているか。戰爭当事國の一方の降伏によ
つて結果されるところの戰爭の結末についての講和條約が、半永久的に延期されるということは、
國際法上の異例の現象であります。半永久的に延期されるとしたならば、この終戰処理費は、われわれ
國民はまた半永久的に
負担しなければならぬものであるかどうか。われわれ
國民の常識によれば、現在
世界は二つか
一つかという問題に直面している。冷き戰爭が現実に行われつつある。この現実が、
日本における
國民心理をはなはだ不安ならしめるものがあります。
われわれはもちろん、講和條約の締結が半永久的に延びるとしても、
國際法上の神聖なる義務に基き、敗戰國がその條約上の義務によ
つて國際法上の義務を
負担し、終戰処理費を半永久的に
負担するといたしましても、やむを得ないところでありまするが、しかし、本
予算のうちに占める、総歳出
予算の中に占める、かくのごとき厖大なる比率を、いつまで
國民は
負担しなければならぬか。この点について、
政府は内外の情勢とにらみ合わして、明快なる見透しを
國民に與えられんことを希望する。(
拍手)一体、占領下における外交問題として、この終戰処理費を、今
世界をめぐる特殊の
國際関係のもとにおいて、
日本の國内問題として取上げることができないのであるかどうか。かような点について、私は
総理大臣の率直なる
將來の見透しを伺いたいのであります。
本
予算案が、終戰処理費を初めとして、公共事業費等の
予算の
範囲内で、はたして
追加予算を必要としないかという問題につきましては、この壇上で
関係閣僚よりしばしば言明がありました。すなわち、今日
追加予算の
提出は必要でないと
考えるという
答弁であります。しかるに所得税について、たとえば二十二年度の税收は千三百五十四億円であり、そのうち六百八十五億が所得税の徴收でありまして、その五割強に当つたものが、二十三年度においては、勤労所得税の軽減にもかかわらず、五割六分と、逆に比重が重くな
つているのであります。かように厖大なる税收を、歳入歳出のずれのないように円滑に徴收するためには、
政府はいかなる具体的な準備をも
つておるか。また、当初五百六十億と予定された復金出資は、百八十九億に削限され、結局
財政の赤字を
金融面に轉嫁することになるほか、災害復旧、六・三制等の完全実施のためには、
追加予算を必要とする確率はきわめて濃厚であります。われわれの計算するところによれば、六・三制を完全に実施するためには、少くとも百二十億を要するはずであるが、この本
予算内に組める公共事業費の中に占める六・三制の費用をも
つて、はたして二十三年度の問題としての六・三制を完全に実施することができると
考えるか。できないとするならば、
政府は
追加予算を
提出しないと明言する限り、いかなる方法によ
つて六・三制を完全に実施しようとするのか、この点についての明快なる回答を求めます。
さらに
政府は、本年度の
予算編成にあたりまして、
予算案は
物價と
賃金と
予算の同時安定をはかるために、今日まで
提出するのが遅れたと
説明するのであります。しかるに、先日來の
財政演説に対する
質疑に対して
大藏大臣は、現下の不安なる情勢のもとにおいて、われわれに健全
財政を守れとい
つても、それは無理であるというような放言をされておりました。
一体政治というものの眞髄は、
國民に対して希望をもたせるところになければならぬ。昨年
片山内閣のもとにおいて、七月
物價改訂をいたしまして、七月
物價体系を樹立した際に、時の和田
安本長官は、十一月になれば家計は黒字になると
説明したのであります。この安本官僚の数字になるところのものが、実際においていかなるものであつかということは、後日事実がこれを証明したのでありまするけれ
ども、しかし、当時といたしましては、進行するインフレの荒波にもまれて、
政府の呼号する十一月の家計の黒字、これは荒波に飜弄される
國民に対しては、確かに
一つの希望ではあつたのであります。それが実現されなかつたということは、官僚の官僚的ずるさをはつきりと現わしておつたのでありまするが、今回の
物價改訂にあた
つては、政政はさような希望すらここにもたせようとはしない。逆に、現在のような不安定な情勢のもとにおいて健全
財政を希望することはできない、かような捨鉢的な言明は、これは片や官僚的ずるさに対して、まさに政治家的ずるさを十二分に発揮しておるものであります。(
拍手)
一体戰いに破れ、
憲法は新しく制定されたとい
つても、忠誠という言葉は、今日なお存在するはずであります。か
つての明治
憲法下における天皇に対する忠誠は、
國民に対する忠誠に切りかえられているはずであります。政治を取扱うところの官僚が官僚的ずるさを発揮し、政治家が政治家的ずるさを発揮して、
國民は一体どこに希望を求めるか。私は、
大藏大臣の
質問に対する
答弁に対し、はなはだ不満を感ずるがゆえに、あえてこの点を強調しておきたいのであります。
次に、新
物價水準と新
賃金ぺースが、はたして來年の三月まで維持できるかという
質問に対し、これまた、たびたび
大藏大臣から回答がありましたが、この点については一点触れておかなければなりません。それは、マル公が七割
値上げをされるという場合に、安定本部のもつ資料は、
やみ價格は三・六%しか上らないということを、その前提にしておるのであります。つまり、この五月から六月にわた
つての
やみ價格の騰貴率は、わずかに一・六%である。これに安全率をかけて、本年の一月から四月までの実績を加味して、
やみ價格の騰貴率を三・六%と見たのであるから、これによ
つて一應
やみ價格は安定するという基礎に立
つております。
今、総理廳統計局の本年一月の調査に見まするならば、俸給生活者の生活の中で、マル公價格に依存するものは二五・四%であり、四分の一であります。われわれの生活の四分の一に該当するマル公生活が七割
値上げになり、しかも四分の三に該当する
やみ生活の部分においては、三・六%の騰貴率によ
つて、以後これが安定するという
考え方に立
つております。私は、かくのごとき安本官僚の机上
計画が、必ずや破綻を來すことを確信いたします。
一体実質
賃金を上げる場合には三
通りありまして、まず名目
賃金の引上げ、名目
賃金の中からの、いわゆる勤労所得税の引去り分を少くすること、
政府は今回の
物價改訂あた
つて、この二つの方法によらんとしたようでありますが、第三の方法として、生活物質の
裏づけに対しての対策が欠けておる。この点については、昨年七月以降の三派連立政権が行
つてきた
流通秩序の確立は、今日完全に失敗しておる。家計の赤字を埋めるための傾斜
配給の確立と、
やみ撲滅について、
政府はいかなる具体的対策を準備しておるか。これを欠いて、單に七割の
物價の改訂、
やみ價格の三・六%の騰貴率によ
つて物價と
賃金と
予算とが安定するというが、その基礎がどこにあるかを承りたいのであります。
一体自由と
統制の問題について、先ほ
ども網島君がいろいろ
質問されておりましたが、自由と
統制の限界を
政府はどこに求めんとしておるか。特に芦田総理に承りたいことは、芦田氏は、よく中央党的な構想ということを新聞紙上に述べられます。また片山氏がこれに対して、中央党的なものはナンセンスであると言
つておる。少くとも芦田
総理大臣が中央党的な性格を
考えておるとするならば、そのもつところの自由と
統制に関する限界をどう
考えておるか。自由を徹底すれば弱肉強食の
自由主義経済となり、
統制を徹底すれば
社会主義の惡平等
経済となる。その中間にあ
つて一体中央党的な性格を
考えるという場合に、生活物資
流通秩序の確立において、どのような具体的
処置をとれば、それが現実に実現されると
考えておるか。
統制を撤廃するのに、鮮魚を撤廃したではないかと芦田氏はこの席上から言われましたが、鮮魚を撤廃したことと、自由と
統制を両立させるところの中央党的な性格と、この間にどういう関連があるか、具体的に承
つておきます。
政府は、家計の赤字を埋めるための傾斜
配給の確立についての対策を示す代りに、ここにいわゆる
賃金統制を実施せんとしておる。新
賃金統制なるものは、
物價の安定と
財政の均衡、
配給秩序の確立の方策が立たない限りは、直接
統制も間接
統制も実施すべきものにあらず。加藤労働大臣は、三千七百円ぺースは維持できるかという
質問に対して、現在
政府のもち合しておる数字によるならば、三千七百円
ベースは確保できると断言しました。しからば加藤労働大臣に承るが、
組織労働者のもつところの数字、つまり五千二百円
ペース、あるいは
理論生計費によ
つてはじき出されるところのこの
賃金ベースの数字が、間違
つておると
考えておられるか。タフト・ハートレー法に関する加藤労働大臣に対する
質問の中で、現在
敗戰後の
労働者が生活費に困り、惡性インフレのもとに苦しんでいるから、われわれは彼らの血の出るような生活の叫びを取上げると言つたが、この五千二百円
ベース、あるいは
理論生計費によ
つてはじき出される彼ら
労働者側のもつ数字が正しいと
考えられるか。これが血の叫びと
考えられるか。あるいはそれとも、
政府の、官僚のもつ三千七百円
ベースの数字が正しいというのか。この点についての明快なる
答弁を求めます。(
拍手)
さらに、
政府が三千七百円
ベースを決定するにあたりまして、名目
賃金の引上げと、名目
賃金より勤労所得税を軽減して支出額を削減することによ
つて、あたかも
國民の実質
賃金が増加するというような錯覚に陷り、
國民全体を錯覚に陷らしめんとしたことが、その新たなる財源をいわゆる取引高税に求められたのであります。
取引高税は、主食を除く野菜を初め、日常生活必需品及びサービスの全般にわた
つて課税されるものでありまして、大衆の
負担は集積して
相当の金額に上るのみならず、分業を主とする中小工業、数段階を経て仕入れをしなければならないところの中小商業、これに対してきわめて不利益を與える。また中小企業を不当に圧迫することは、今日周知の事実であります。またその税率百分の一も、
大藏大臣は先般この壇上において、ドイツ等における
外國の例を見れば、大体百分の三から四
程度に止まると思うという
答弁がありましたが、これはきわめて樂観的なる見透しであると
考える。実際的には非常な高率課税になることは、すでに一般の周知するところであります。
今、中小企業界に対する課税の実際を見るのに、所得税は百分の六十五から七十五、府縣税は百分の十五、市町村附加税は百分の十五、住民は百分の五でありまして、担税能力はまさに飽和点に達しておるのであります。この状況のもとに本税を課することは、ますます正常の取引を回避せしめ、
流通秩序は一層混乱して、店舗を有するまじめなる業者は、さらに不利益をこうむることになります。私
どもは、かくのごとき惡税に対して、本質的に、徹底的に反対を表明する者であります。(
拍手)
次に、軍事公債利拂停止問題について、
資本主義か
社会主義かという観念的イデオロギーの対立の問題が三派連立政権の中にうず巻いて、帝國主義戰爭の遺産である軍事公債の利拂停止問題をめぐ
つて闘わされました。わずか十五億円の処分問題が、体年の
予算案提出を遅延せしめた
一つの大きな
原因であつたことは、今日いなむべからざる事実であります。この問題は、終戰後の
日本経済の混乱期にあ
つては、帝國主義戰爭の遺産を断ち切るという意味においては、実は軍事補償の打切りと同時に行うべきものである。その利子のみならず、元本まで全部これを芟除して、
日本経済を再建するの勇断を揮わなければならなかつたのであります。しかるに、内外の情勢は一日も早く
外國資本の導入を必要とし、國内的には一日も早く
國民経済の安定をはからなければならぬ今日において、
資本主義か
社会主義かという観念論をも
つて律すべき問題ではない。現実に
金融機関に與えるところの影響、ひいては
國民大衆に與えるところの影響を純
経済問題として取扱うことが、この問題を政治問題として扱う方法であると
考えるのであります。(
拍手)私は、本問題の取扱いにあた
つて政府並びに與党三派のとつた方法は、まさに民主主業の最も惡い典型を示したものであると
考える。今日の
民主主義は、口を開けば常に
民主主義を口にするが、多勢の人が集ま
つて、長い時間をかけて、だれも好まない結論を出しておるのが今日の
民主主義である。この最も惡い例を軍事公債利拂停止の中に私は発見するのであります。
私はこの点について、この問題に附随して芦田
総理大臣に承りたい。
日本は一体近き
將來において
資本主義の原則の上に栄えると
考えておるか、あるいは
社会主義の原則の上に栄えると
考えておるかという点であります。これは客観的には
外國資本の導入のいかんによ
つて決定されることでありましようけれ
ども、しかし修正
資本主義と言い、自由
資本主義と言い、これらはもともと
資本主義そのものでしかない。今日この壇上において、もし
資本主義によ
つて日本を
將來再建せんとするならば、何ゆえ保守党は、今両頭のへびのごとく——野党と與党とにあ
つて両頭のへびのごとく本問題をめぐ
つて爭
つておのか、まさにナンセンスである。(
拍手)よろしく保守新党として大同團結したらどうか、われわれはかようにアドヴアイスしたい次第であります。
次に、鉄道運賃料金の
値上げ問題について運輸大臣に承りたいのでありまするが、
政府案の海上運賃三倍、貨物並びに旅客運賃三・五倍、この比率につきましては、現在貨物運賃と旅客運賃はきわめてアンバランスに構成されておるのであります。貨物運賃は低過ぎみ。この低過ぎる貨物運賃と旅客運賃を、そのままのでこぼこの
状態で三倍半に引上げておる。これは運賃
政策としてはまさに愚劣なる方法であります。一体貨物運賃を引上げることが、直接
生産費に加算されて
物價水準を上げるからと言はれたことは、これは
経済の運行がきわめて安定した時の話である。今日のような
やみ経済の横行する
状態において、貨物運賃の比率を旅客運賃より大きくすることが、
物價に直接的な影響を與えるものではありません。むしろ、旅客運賃を高率にすることによ
つて國民に與える心理的な影響が、まさに直接的なものであると私
どもは
考えます。(
拍手)それゆえに、私
どもはまずかような運賃料金の
値上げに反対するが、
財政上の事由によ
つて、万やむを得ずしてこれをいじらなければならぬとするならば、旅客運賃は倍、貨物運賃は三倍、この旅客並びに貨物運賃の倍率は、運賃
政策上当然違わなければならぬと思うが、運輸大臣はどのように
考えるか。
また運賃
政策の場合には、常に輸送
事情、海陸輸送調整の問題を忘れず——なお、現在のこの運賃改正によ
つて現れておるところのものは、一体陸上物資を海運に轉稼しようと
考えておるのか。もし、そうであるとするならば、海陸輸送
事情の
考え方によ
つてこれをきめるならば、貨物運賃を三倍とするならば、海上運賃はさらにこれより低くしなければならぬはずである。二倍
程度にしなければならぬはずである。今回の運賃改正を見ておるのに、單に独立採算制の名にとらわれて、運賃
政策に見て何ら見るべきものがない。この点についての運輸大臣の所見を承りたいのであます。
この問題に関連をいたしまして、いわゆる現業官廳における労働の
生産性の問題であります。現在
國民の大多数が端的に
考えることは、厖大なる現業官廳における労働の
生産性がきわめて低率であるということであります。労働の
生産性高揚のために、運輸大臣並びに逓信大臣はいかなる措置をとりつつあるか。また、この
政府提案の比率より低くすることによ
つて、その
財政は鉄道並びに逓信
作業の機械化、人員の整理、停年制の実施、自然減耗による人件費の節減、また選炭の適正化による物件費の合理化、その他附帶事業の合理化により、これを節減する余地はないのであるかどうか。この点について明快なる
答弁を求めます。
さらに、行政機構の改革の問題について、特に運輸省の、いわゆる行政と現業とを分離すると言われるが、しからば、本省と鉄道局、管理部、現場の四段階制については、これをいかに扱わんとしておられるか。
また、特に芦田
総理大臣に承りたい点は、
日本の
國際観光事業を振興するために外資導入をはからんとする
計画があると承
つております。あるいは、その意図があると聞いておりまするが、しからば、
國際観光事業振興のために外資を導入するならば、その受入態勢を整備する点において、運輸省に
國際観光局を復活する
意思はないか。この点について芦田
総理大臣の所見を承りたいのであります。
次に農漁村問題につきまして、われわれの意見を述べながら
政府の所信を質したいのであります。
日本再建の基盤は、民主化の徹底と
経済の復興にある。なかんずく、食糧の確保はその大前提である。
農民が、この重大なる役割を完遂するために、今いかなる措置がとられているのかと見るのに、今次天降り的重税、飯米をも残さないところの供出制度等によ
つて、農地買收の拒否が行われ、土地放棄の最惡の事態が今日現出しているのであります。すなわち、徴税は苛烈を極め、税額査定の多くは、不当にして画一的、官僚的威圧をも
つて臨み、これに加えて新税の重課を企てんとし、
農業の拡張再
生産への蓄積を根こそぎ破壞せんとしている現状であります。
二十二年度所得税賦課の実態は、税務当局の一方的査定により
農民に重税を課しましたが、二十三年度の
國家財政政策を見るに、またも
農民に対して不当の重税を課せんとしている。これは明らかに、
政府が
農民の過度の犠牲においてのみ
國家財政を維持せんとするものであ
つて、今や
農民は、不当なる農産
物價、供出の強行及び購入物資價格の高騰に加えて、さらに新たなる
農民課税の重圧を累加し、ために農家経営は危殆に陥り、食糧その他農畜産物の増産、農地改革の遂行を不可能ならしめんとしております。よ
つて政府は、
農民課税につき、左の諸点に対して
農民負担の適正化をはかる
意思はないか承りたい。
第一は、徴税に当
つて農民の團体に團体交渉権を與えないかという問題であります。第二は、
農民の
生産費控除の問題、控除は
生産費控除の一本建として、
農民の最低生活を保障し、自家保有食糧並びに早場米出荷奬励金その他供出完遂報奬金等に課税しないという方針が立てられないかどうか。また開拓者に対しては五箇年間所得税の免除。供出については、一般農家の超過供出扱いはできないかどうか。
次に地租の問題でありまするが、何ゆえ
政府は、地方
財政委員会の決定に
從つて地租の引上げを百分の八十
程度に止めなかつたのであるか。この点についてのいきさつを承りたい。
次に米價の決定につきまして、われわれは、二十二年度の産米
生産者價格石当り千七百円の決定にあたりましては、これが
農業再
生産に重大なる支障を及ぼすことを憂慮いたしまして、不満の意を表明したのでありますが、その後
政府の公約にもかかわらず、
物價は日を逐うて改訂
値上げされ、新
物價体系の樹立のやむなきに至つたのであります。現在
農業経営は異常な困難に直面するに至
つておりまして、現行米價の算定基礎品目の改訂
値上げにより算定されたる月別推定米價と旧米價との差額を供出農家に還元する点については、昨日院議をも
つて衆議院は意向を決定いたしましたが、芦田
総理大臣の
答弁はきわめて不満である。衆議院の全員の決議について、なぜもう少し誠意をも
つて明快なる
答弁をすることができないか。いわゆる新米價と旧米價の差額を供出農家に還元支拂をする点についての総理の明快なる
答弁を求めます。
次に
農村金融につきましては、現在
農民は、
生産資金はもとより、
生産資金さえ枯渇し、これに加え、融資の途はまつたく梗塞され、まさに恐慌
状態にあります。不当に低位なる農産
物價格と、
農村必需物資價格の異常なる高騰による鋏状價格差の拡大、災害復旧
資金、報奬物資購入、苛酷なる徴税等による
農業資金の逼迫に加うるに、
農村金融機構の画期的変革に逢着して、急激なる都市
金融機関への
資金の逃避があり、今や
農村資金の枯渇は頂点に達している。事態ここに至つたのは、情勢の変化に即應する
政府の施策乏しき結果によるものであるが、今にして適切なる対策を講じなければ、
農村経済が
崩壞するに至るは必至であります。よ
つて政府は、速やかにこれが措置を講ずる
意思はないか。
まず、当面焦眉の急を要するところの春耕
資金及び旱水害地帶における営農
資金調達のため、
農業手形の適用を全面的に拡充し、その手続きを簡素化するということ。第二番目には、農地改革による農地賣渡し代金、つまり全國二百六十万町歩の小作地のうち、その百五十万町歩を賣渡すとして、一町歩七千円とすれば、今後自作
農民から百億近くの金を
政府は取上げるはずであります。この農地改革による農地賣渡し代金を
農村復興
資金に還元すること、これについて
政府はいかように
考えておるか。さらに次には、
農業協同組合金融を速やかに確立するよう措置するとともに、その業務を制限し、あるいは
農業金融の特殊性を無視するがごとき
金融事業法の設定をしない。かようなことについての
政府の見解を問います。
私はここに、自由の原則を阻止し、協同組合
連合会を分裂せしめる
農業協同組合法の改惡に反対をし、左記事項について
政府の意向を質します。
まず
農業協同組合に対し、法人税、事業税、取引高税、所得税等を賦課しないということ。速やかに
農業協同組合金融を確立して、
農村経済の混乱を防止するとともに、わが國
金融の特殊性を無視し、かつ組合
金融を制約するがごとき措置を講ぜざること。
農業協同組合の行う事業を遅らせ、阻害する諸
統制法規を速やかに改廃するとともに、許可、認可の手続を簡素化する点について
政府の所見を承りたい。
次に、災害復旧の問題であります。終戰以來、中國地方並びに近畿、東北、関東各地方において、風水害によるところの水害は甚大である。これによ
つて、多数
農民が土地と家財を失い、
農業再
生産を破壞し去るとともに、わが國食料問題の解決に甚大なる暗影を投ずるに至
つております。これが復旧に対する
政府の應急対策は遅々として進まず、根本施策についても何ら見るべきものもなく、再び雨期を目捷に控えて、われらの不安は増大しております。かくては、食糧増産と
農村近代化の促進は、まさに一片の空文に化し去らんとしておるのであります。われわれは、速やかに水害復旧の應急対策を講ずるとともに、この種災害の拔本的予防策として総合的治山治水
計画を実施しなければならぬことをつとに叫んでまいりましたが、
政府は雨期を前にして、治山治水
計画についていかようなる具体的
政策を
考えておるか、この点について承りたいのであります。
これを要するに、
日本の
農民は、
日本の明日あるを確信してあらゆる惡條件と闘い、増産運動を盛り上げ、供出を果し、その負荷にこたえておりまするけれ
ども、これにはおのずから
一定の限度があります。連合國の援助は日を追うて厚きを加えておりまするけれ
ども、わが
農村の頭上には、まさに恐慌の暗雲が低迷し、日とともにその重圧を増大し、連合軍最高司令部より発せられた
農民解放令は、まさに空文化し去らんとしておりまして、われわれは、
農民の
生産活動を阻害し、最低生活を破壞する一切の惡政をはねのけて、
農業をして
國家自立の基盤たらしめなければならないと確信しております。
以上、私が
政府の対農漁村
政策の大綱について意見を述べながら、
政府の所信を質しましたゆえんのものは、要するに
政府提出予算案は、
政策の重点をどこにおいて立案されておるか、すなわち
政府が、農漁業の、原始産業の犠牲の上に近代産業の復興を
考えておるならば、われわれはその基礎理念の改訂を要求する。われわれは、
総理大臣が、
日本の
経済は生存
経済より生活
経済の安定期にはいつたと樂観しておりまするけれ
ども、その言とは逆に、今や
農村は生存そのものが重大な危機に逢着したる事実を強調しなければならない。私は、
政府の対
農村政策を
政府の超重点
政策の
一つに加える
意思はないか、これをぜひ加えなければならぬと思うが、
総理大臣並びに
関係閣僚の所見を聽きたいのであります。
以上要するに、
國民の聽かんとするところは、四千億に達する一般会計
予算の実施が
國民生活をどんなに圧迫するか、この圧迫に対して、
政府がいかなる決意をも
つて、いかなる対策を実施するかという点にかか
つております。施策のいかんによ
つては、四千億の
予算がただちに追加補正を必要として、倍額になるおそれは、
國民のすべてが感じておる。勤労所得税は表面的には軽減されても、租税全体としては昨年度の倍額であり、タバコ
値上げを
中心とする專賣益金の驚くべき増額、運賃三倍半、
通信料金四倍という、常識を超えた官業の
値上げが予定されております。しかも、これのみではない。戰前
物價に対して、昨年度は六十五倍、本年度は七割の
値上げを予想され、
公定價格、
やみ價格の高騰が
國民生活に重圧を加えることは、火を見るより明らかであります。
賃金ペースは、
政府がつい先日の法案で二千九百二十円を衆議院に諮り、次いで
予算におきましては三千七百円、しかるに、この三千七百円を
審議しておる間に、全官公においては、五千二百円
ベースを指向する労働攻勢がほの見えておる。
これらの
財政経済を流れる一連の不安と焦燥の中で、
國民はただ耐乏せよと言われただけでは、さようなお説教だけでは、共感を感ずるものではありません。われわれは、
政府がどれだけの決意をも
つて國民生活の確保に当らんとしておるか。われわれの最も聽きたいところは、その点であります。この点について、
関係閣僚は何ら納得のいく回答をしておらぬのではないか。單にお座なりの、いわゆる野党の攻勢というような名における、それに対する捨鉢的なる回答をわれわれは聽かんとするものではありません。われわれは、
國民代表の資格において、
國民の名において、この厖大なる
予算を
政府がいかに実施せんとするか。それに対していかなる責任をとらんとするか。この点についての、
政府の責任ある、明快なる回答を求めてやまない次第であります。
〔
國務大臣芦田均君
登壇〕