○本間俊一君 私は、民主自由党を代表して、
政府の
財政経済に関して
質疑をいたさんとするものであります。
大藏大臣の
財政演説によれば、
政府は
外資の援助を支柱として、一應の中間安定を実現する
ために、
健全財政と健全金融の実現実質
賃金の確保、
経営の
合理化と能率化を行わんとしているようであります。この構想につきましては、われわれも大体これを諒とするにやぶさかではありません。しかしながら、この目的を達成する
ために、いかなる具体策を実施せんとするか。また、その具体的な方策を実行する力と勇氣をも
つているかどうかということが問題であります。
まず第一に指摘いたさなければならない点は、
政府のいわゆる
健全財政であります。
北村大藏大臣は、
中央及び
地方を通じて收支の均衡が保持されていると言明いたされておりますが、それはただ形式上の、名目的なものでありまして、
健全財政の実を備えていないと判断せざるを得ないのであります。(
拍手)
財政の原則は、申すまでもなく、
國民が
負担できる限度において收入を抑え、この收入の限度内に
支出を圧縮しなければならないということであります。しかるに、昨
年度の実情及び本
年度の
予算におきまして明らかな点は、
政府の
財政方針が
支出を抑えきれず、所要の経費を
國民からむりやりに搾りとるということにな
つておるのであります。今、租税
負担が近年いかに加重せられつつあるかを統計によ
つて見まするならば、
國民所得に対する
國民負担の割合は、わが國におきましては、
昭和十年ごろから二十年くらいまでは、概して一割前後を上下いたしておりましたものが、
昭和二十一年に相なりまして急激に増加して、二十一年は、実質的にこれを見ますると約二割二分、昨
年度は約三割三分に達しておるのであります。今
年度の
政府発表の
國民所得総額は一兆九千億というのでありますが、これに対する
中央及び
地方を通ずる租税その他の
國民負担を概算いたしますると、約四千四百億ぐらいと相なるのであります。この比率は、名目から見ましても二割三分強、これを実質上の比率に換算いたしますると、おそらく三割五分を下ることはあるまいと推定されるのであります。
この点から見ましても、二十三
年度のいわゆる
健全財政なるものが、いかに
國民の苛斂誅求の上に企てられでおるかということが、明らかと相なるのであります。しかも、このようにして辛うじて保持せられました形式上の收支均衡についてさえ、
國民の目を欺かんとする
予算技術上のいろいろのからくりが隠されておるのであります。
その第一は、金融機関その他に交付すべき補償二百三十億円であります。これは軍事補償の打切りに伴いまして、金融機関その他の最終処理に伴う損失に対する
國家からの補償金であり、その性質は何ら
資本的
支出に属するものではないのでありまして、
從つて、
昭和二十二
年度の歳出面に計上せられておつたのでありますが、本
年度はこれが
公債の交付で行われるから、直接現金の收入に影響しないという理由のもとに、これを歳出より除外しておるのであります。
その第二は、貿易
資金特別会計を通じて行われる、実質的な價格調整の
ための
支出であります。御
承知のように、わが國におきましては、終戰以來引続き進駐軍の好意によりまして、毎年
政府借款の形において食糧初め巨額の物資が輸入せられ、それが貿易
資金特別会計を通じて賣却せられ、その賣上代金が同会計の收入と相な
つておるのであります。しかして、この收入が、逆にわが國から輸出いたします品物に対する價格差補償として交付せられておるのでありまして、その実質は、明らかにいわゆる
價格調整費と何ら異ならないものであります。
昭和二十二
年度中の、このアメリカからの
政府借款の形において
負担をせられておりまする総額は、約四億ドルと称せられおるのであります。今一ドルをかりに二百円と換算いたしましても、八百億はまさにこの用途の
ために使用せられておるはずであります。
政府借款の形において行われる
外資導入がどれだけに相なりますかは、本
年度において、まだこれを詳らかにすることはできませんが、四億二千万ドルの救済費が過日アメリカの下院を通過いたしておりますから、この額は、おそらく昨年より上まわるとも、下まわることはないと私は考えておるのであります。
その第三は、
軍公利拂の延期による本
年度分の延期利子十五億円であります。この問題に対する賛否の議論はしばらく別といたしまして、
政府が意図する
軍公利拂の延期は、その実質は、その延期額に相当するだけ新たに
公債を発行した結果と同じに相なるのでありまして、歳出面に國債費十五億を計上し、
歳入面に十五億を計上いたしまして、正しくは債権、債務両建による記載を必要とするものであります。
以上の三つを合計いたしますると、本
年度の一般会計の歳出は約五千五十億に達し、少くとも、
政府の称してお夢まする四千億よりも千五十億の歳出増加が、当然これは発生するものと思わなければなりません。(
拍手)
國民所得に対しこの歳出は、先ほど
芦田総理大臣は二二%ということを申され、
大藏大臣の言うところによりますと一二%でありますが、私の
計算では二五・五%と相なるのであります。現
内閣は、
健全財政と称して、大いにこれを誇称いたしておるのでありますが、ただいま私が申し上げたのが、現
内閣の唱えておりまする
健全財政でありまして、まさにこのようなからくりの上に組み立てられていることを銘記しなければなりません。
次に、健全金融について一言触れてみたいと思います。健全金融の実体は、
國民生活を維持し、かつ
生産の増大を実現しなければならないという至上命令を担
つておりまするわが國経済の、
現下のその必要な
資金を、
國民資金の
蓄積した範囲内において大体賄い得て、かつ
産業資金の供給を受ける個個の企業が、眞に
合理化、能率化された基盤の上に立
つて、その
資金を
赤字のしりぬぐいに使用せらるることなく、いわゆる
赤字融資とならない
状態であることは、私がここに申し上ぐるまでもありません。そこで、
政府発表の本年第一・四半期の
資金計画を見ますると、
資金需要は、
産業資金五百億、これに
財政資金を加えますと、七百三十億であります。これを一箇月に平均して
計算いたしますと、約二百四十四億であります。しかるに、
大藏大臣の
演説によりますと、四月の自由預金の純増加はわずかに四十億円でありまして、
産業に必要な
資金が今日はなはだしく逼迫を告げ、今や
民間の一般
産業は、まさに窒息死の一歩手前にあることは、諸君も御
承知の
通りであります。(
拍手)
金融は、もともと
産業の
ためにあるのでありまして、誤まれる金融
政策から
産業を萎靡せしめている現在の
政府の金融
政策は、本末を轉到しておるものと申さなければなりません。(
拍手)さらにまた、すでに早く成就されていなければならない
民間産業の
合理化、能率化は、施策そのよろしきを得ない
ために、未だほとんどその緒にもつかず、大多数の企業は長い間
赤字経営を続けておることは、今日もはや常識とな
つておるところであります。貸出の当初健全な融資であつたものも、今日ではいつの間にか
赤字融資に変質しており、さもなければ健全融資を装つた
赤字融資が到るところに行われておりまする
現状から見て、今日の融資の大半はまさに
赤字融資であると断言いたしても過言ではないと信ずるのであります。(
拍手)いわゆる
基礎産業が、公價改訂遅延の
ために久しく
赤字に悩み、復金の貸出によ
つて辛うじて
経営を維持していることは、これまた周知の事実であります。
かくのごとき
産業金融の
現状に対して、
政府の立てている
対策は、すなわち約七割の
公債引上げがその第一であり、五百十五億の
價格差補給金の支給がその第二であり、百八十億の復金への出資がその第三であり、三千億を目標とする貯蓄
増強運動がその第四であります。完全に補給金を交付するとすれば、
石炭、鉄鋼、
肥料等いわゆる安定帶物資だけでも月額百億、一年に
計算いたしまして千二百億を必要とするのでありますが、
價格調整費が、苦しいふところのやりくりから五百十五億に切り詰められ、それ以上は公價七割値上げをも
つてカバーするというふうに
政府は
計算をいたしているのであります。ここにおちつくに至りました経過に顧みまして、
物價廰、商工省、あるいは農林、大藏省の各省の間に激しい論爭が繰返されておりました事実に見ましても、また、その決定に対して商工省から、やむを得ない場合は必ず金融面でそのめんどうを見ることの
條件が言い渡されているように、うわさされているのであります。この決定が、このような関係から考慮いたしますならば、きわめて危い綱渡りの藝当でありまして、もしも、何か
一つでも前提
條件が予想
通りにいかない場合には、公價改訂の実施のその日から、
赤字を繰返すものであることは、想像するにかたくないところであります。
さらに、当初五百六十億と世上に傳えられておりました復金への
政府出資が百八十億に減ぜられ、残りの三百八十億は、復金債券の借替でごまかされておるのでありますが、これはちようど借金の返済時期がきておりますにもかかわらず、金がないから
政府は拂わないというのと同様でありまして、健全な金融
政策とは、まさに正反対の措置と言わなければなりません。(
拍手)
貯蓄目標三千億に至りましては、その前提を明らかにしなければ批評の限りではありませんが、昨
年度は自由預金の増加額が千九百五十七億に上り、
政府はこれを貯蓄
増強運動の成果のごとく宣傳せられているのでありますが、昨
年度のこの増加のうしろには、千三十億の
日本銀行券の膨脹があつたことを見逃してはなりません。すなわち、わが國の
現状におきましては、大体において日銀券の増発なくしては貯蓄の増加は実現せられないのであります。それを裏から申しますならば、日銀券さえ、どんどん出せば、三千億はおろか、四千億でも五千億でも貯蓄は増加いたしましよう。しかしそれでは、貯蓄
増強の眞の目的とは相当にかけ離れてくるのであります。その効果は、きわめて微弱なものと相なるのであります。
政府は、本
年度の
予算において企図されておるように、
健全財政、健全金融がほんとうの効果を現わしてくるということに相なりますならば、一年を通じて、私は五百億の貯蓄増加さえ不可能ではないかと考える一人であります。
以上が
政府の宣傳している健全金融の実相であり、健全とは唱える方の言葉だけでありまして、その実質は、およそ不健全極まるものと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)働く人々がその
生活を保持し、労働力の再
生産に必要な
賃金は、
政府がいかにこれを
数字の上で抑えましても、必ず支拂われていくものでありましよう。
民間におきましては、源泉
所得税の企業者
負担でありますとか、各種の変態給與等がしばしば行われているのが例であります。さもなければ、今日におきましては欠勤をいたしまして、やみ商賣に走るというのが、俸給
生活者の收入の不足を補う、残されたただ
一つの途とな
つているのであります。物資の裏づけのない三千七百円
ベースが、すぐ崩れてしまうことは、今日すでに予見せらるるところであります。
経営の
合理化、能率化を心要欠くべからざる施策と考えておりまする
政府が、單に
人件費を一割五分節約いたしましたほか何ら見るべき模範を示さず、
民間に対しては、ただ金融を引締めて、その引締めによ
つて民間の整理を促進させんとする以外何らの具体的方策を講じないのは、一体いかなる理由に基くものであるか、その点を明らかにせられたいと思うのであります。
次に
お尋ねいたしたい点は、
國民負担の
現状に鑑みまして、一般会計四千億の約一割、四百億を目標として
予算に一大削減を加え、も
つて、惡税として全
國民が反対をいたしておりまする取引高税の新設を中止し、
所得税をさらに大幅に軽減すべきを至当と考えるのでありますが、これに対する
政府の御
所見を伺いたいと思うのであります。
先般発表せられた経済情勢報告書によれは、昨年末の
物價は、
昭和十二年を基準として、公定で、大体
生産財で八十四倍、消費財で七十倍とのことであります。かりに八十四倍のものが、今回の公價改訂によりまして七割方値上げになるといたしましても、その倍数は約百四十三倍であります。ちようど、
昭和十二
年度二十七億の歳出にこの倍率を乘じて見ますると三千八百六十億でありまして、本
年度の歳出三千九百九十二億に、金融機関の再建補償及び
軍事公債利拂の延期せられた分を加算した四千二百三十八億に比較いたしまするならば、約三百八十億の超過と相な
つているのであります。そこで
昭和十二
年度の
予算の中から、まず陸海軍省所管の
費用約十二億を控除いたしました残額十五億に、さきに申し述べました倍率百四十三倍を乘じますると、二千百五十億となり、この
数字が、前述の四千二百三十八億から
終戰処理費一千六億を控除した約三千二百三十億に見合うわけでありますが、約千八十億の超過となるのであります。かりにこの中から、
價格調整費でありますとか、
鉄道・
通信特別会計への繰入金、あるいは船舶運営会への補給金計七百五億を控除いたしましても、なお三百八十億の超過と相な
つているのであります。右の推算は、きわめて大ざつぱなものであり、この両者を比較いたします場合には、なお双方
年度におきまする特有な
事情がありますけれども、一應四百億程度の節減の目安は、これで私はつけ得ると思うのであります。
そこで私どもは、官廳職員数の著しい増加の事実を指摘いたしたいと考えるのであります。
昭和二十二年十月現在の官公職員数は、一般会計分のみで
計算をいたしましも、約三十二万人でありまして、これを
昭和十二年に比較いたしますると、三級官次上のいわゆる本官のみでも、約三・二倍殖えているのであります。これを軍備を全廃いたし、四割四分の領土を失い、
行政機構を縮小すべき立場にありますわが國の
事情と考え合わせますならば、相当程度の定員の縮小に伴う諸経費の節減は当然であり、またむずかしいのでありますけれども、可能であると私は考えるのであります。(
拍手)この意味においても私どもは、近時ますます強化されつつある官僚統制に対して、嚴正なる批判と再檢討の必要を痛感せざるを得ないのであります。
次に、これを
國民所得に対する
國民負担の割合から見ましても、昨年の実情は、すでに能力の限度をはるかに越えているのであります。それは、統計もこれをよく証明いたしておりますし、また
國民大多数の実際の感情からいたしましてもそうであります。そこで、本
年度の
國民所得一兆九千億に対し、かりに昨年程度の
負担率に止めるといたしますと、
國民負担の限度は、大体三千七百六十億以内に食い止められなければならないのでありまして、本
年度の四千三百六十億との間には、約六百億の開きがあるのであります。
この場合一言いたしたいと思いますのは、
政府は
國民所得に対する
負担の軽重を論ぜられる場合に、よく英米の諸國と比較されるのでありますが、もしかりに、各目的の
負担率がどんなに軽くなりましても、問題は、その残額において、私ども
國民の最低限度の
生活が維持できるかどうかということが急所であります。
生活費の最低限度に食いこむような
負担は、
インフレを抑止する効果よりも、むしろかえ
つてインフレを高進せしめる作用のありますことは、すでに私が前に指摘した
通りであります。
國民は、
生活の最低限では、どんなことをいたしても獲得するものであるという嚴粛な事実と、これがもし行われ得ない場合には、必付
生産力の著しい減退を招來するものであるという、この冷嚴な現実に照らして明らかであります。
以上の
諸点から判断いたしますならば、最低四百億の歳出は圧縮の必要があり、困難ではありますが、勇氣とその実行力いかんによ
つては、これは実行し得るものと私は考えるのでありますが、これに対して
政府はいかなる御
所見をも
つておられるかを伺いたいのであります。
次に
お尋ねいたしたい点は、
所得税收入
予算と税制
改正との関連についてであります。合同の税制の
改正によ
つて、
政府は
所得税を大幅に軽減したと呼称せられておるのでありますが、先ほど來、本
年度予算に関して主計当局の説明によりますと、本
年度の
所得税收入
予算千二百八十三億中、申告納税による分が九百二億余でありまして、そこで、さらにこの内訳を事業
所得並びに農業
所得について説明を聽いてみますと、まことに不可解な事実を発見いたしたのであります。
その
一つの事実は、課税対象となる人員がいずれも大幅に増加しているという事実であります。すなわち事業
所得においては、昨
年度において二百三万人余であつたものが、本
年度においては二百六十八万人に増加いたしている。農業
所得においては、昨
年度においては三百七十三万人余でありましたものが、本
年度は四百八十二万人余に増加しているのであります。課税の最低限が
引上げられ、
所得税が実質的に軽減せられるという
政府の二張が事実であるといたしまするならば、課税対象となる人員は当然昨
年度よりも減少しているのが私どもの常識であります。(
拍手)しかるに、逆にそれが増加して、昨年課税を受けなかつたものが本
年度は課税を受けるということであれば、実質的にこれを見ますならば、課税は軽減せられていないということにならざるを得ないと私は思うのであります。(
拍手)
第二に私が疑をもつ点は、一人当り平均
所得を、本
年度は事業
所得においては十万八千三百円、農業
所得においては四万八千八百円を
政府は見積
つているようでありますが、これを昨
年度に比較いたしますと、事業
所得は六万円、農業
所得は二万四千円とな
つておりまして、事業
所得は八割強の増加、農業
所得は二倍強の増加を見ているのであります。最近の一般の傾向は、取扱高が増加いたしました調合には利益はあがらないというのが通例でありまして、そうい事実から考え合わせましても、事業
所得八割強の増加の見積られるということは、相当過大ではないかと私は考えるのであります。農業
所得につきましては、その主要
生産物たる米、麦、芋類等は、すべて價格が公定せられております以上、農業
所得の増加のぐあいは、米麦等の公價の引上率いかんによることはもちろんでありますが、もし現在の米麦の公價が二倍程度の
引上げでは、農業
所得税は昨年に比較いたしまして、実質的には少しも減税にならないと私は考えるのであります。この点について、
政府の説明はどうでありまするかを明らかにせられたいと思うのであります。私どもが收入見積に重大なる関心を寄せておりますのは、收入の見積が大きい限り、必ず
政府はその限度まで徴税を強行せられる結果となることは必然であります。そこで、本
年度の
所得税が実質的に軽減せられるか否がは、いわゆる
政府の收入見積がどのような
計算にな
つておるかということに、きわめて緊密な関係をも
つておりますがゆえに、私はこの点を
質疑いたしたいと思うのであります。
次にお伺いいたしたい点は、復金融資の監査の強化と、その
責任体制の確立についてであります。今や急速度に膨脹しつつある復金融資は、ようやく、あらゆる意味において問題を提供しつつあります。最近二十二億の融資の使途に妥当を欠くものがあると判定せられた
昭和電工問題のごとき、今後この種の問題を生じた場合、一体何人がその
責任をとられるのであるか。
復興金融委員会、あるいは同監事会でありますとか、融資懇談会でありますとかいうような、外から見ますと、きわめて巧妙な民主主義的運営の機構も、過去一箇年間の実績に徴し、その点に重大なる欠陥があることが痛感せられておるのであります。
責任の所在の明らかでないところには十分な監督は行われないのであります。金融機関が、最も便宜な手段として、いろいろな委員会のような制度を設けておるようでありますが、
政府は、復金理事機関の権限を拡大するとともに、その
責任の範囲を明らかにせられて、貴重なる
國民融資の運用に万全を期せらるべきであると考えるのであります。この点に対する
政府の
所見はいかがでありませうか。(
拍手)
さらにお伺いいたしたいのは、中小企業の振興と
政府の施策についてであります。與党各派は、もとより
政府もそうでありますが、口を開きますと、中小企業の振興をお題目として掲げておるのであります。しかるに、具体化せられたる
政策を見ますと、いわく中小企業廰の設置、いわく
資金・資材の配給統制の強化であります。中小企業が今最も悩んでおりますのは、質材と
資金の問題であります。この二つの問題さえ解決いたし、自由なる活動を許されたならば、
政府が何のせわや、めんどうを見なくとも、必ず振興するにきま
つておるのであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
中小企業を今日まで生き延びさせてきましたおもな原因は、いわゆるやみ取引でありまして、配給の少い資材を加工して公定で販賣して、
経営採算が立ち得る中小企業は、
一つもありません。また、配給の品を定められた手数料で取扱
つて経営を続けていかれるような中小商業を、今日の
日本のどこに一体私どもは見出すことができるでありましようか。われわれは、この意味において、傾斜
生産の方式なるものに重大なる疑惑をもつのであります。
重点基礎産業方式なるものは、それが限られた短期間に行われるときは、それ自体に十分なる存在理由と効果を認めることに私どもやぶさかではありませんが、これが長期にわた
つて行われ、その
ために非
重点産業がまつたく顧みられないということになりますと、その弊害の発するところ、また大きなものがあることを知らなければなりません。中小企業は、今や資材と
資金難の
ために窒息の一歩手前にあるのであります。
政府は、はたして本氣でこれを生かす御意思をも
つておられるのかどうか。
石炭も、鉄も、肥料も、もちろん大切であります。しかし、
國家財政を支え、
國民生活を円満に運行せしめるには、中小企業もまた必要欠くべからざる存在でありますことは、何人もこれを否定することができないのであります。どうか
政府は、中小企業については、中小企業廰の設置がその
対策であるというようなお座なりな
答弁を避けられて、簡明率直な
答弁を私は期待することを申し添えておきたいのであります。
次に
お尋ねいたしたいのは、農業不振と農業不況の見透しと、その
対策についてであります。永江農林大臣は、就任直後、何かの機会に、農村恐慌はそう急には起るまいという意味の御意見を発表されたことがあるようであります。われわれの見るところでは、農村恐慌とは言えないまでも、農村不況の兆候はすでに本年現われておるのであります。その端的な現れは、最近における農村のはなはだしい金詰りにこれを見ることができるのであります。
わが國農業の危機が、もし來ることがあるといたしますならば、それは二つの方面から推進せられるものであると考えます。その
一つは、わが國農業の劣惡な
生産諸
條件が、世界農業の渦中に置かれた場合において、これとの競争に耐え得ないというところから來るものであり、他の
一つの面は、都市と農村、商工業と農業との対立において、農村と農業とが都市と商工業の犠牲にせられるという面から來るものであります。前者の面から來る原因は、今日の
状態においては未だ発生しているとは私ども考えておりませんけれども、鋏状價格差でありますとか、あるいは
資金の
地方還元という問題が、ようやく識者の口に上りかけてまいりました最近の状況は、このあとの面から來ます農村不況の進行を物語
つているものであると私は考えるのであります。
農村に金があると言われましたのは、大都会近郊の一部の土地でありますとか、あるいは特殊な
事情を有する
地方を除いては、今日はすでに昔の夢物語とな
つておるのであります。しかしてこの傾向は、東北でありますとか、裏
日本でありますとかいうような單作地帶におきましては、一層はなはだしいのであります。ただいまは、御
承知のように作付期間でありますが、配給の物資を農度の人々は買うことができない。その金をもたないのであります。あるいは農機具の修理をする
費用に困
つておるのであります。そうして、町々に金を借り歩いておりますのが、今日の東北あるいは裏
日本の農村人のわびしい姿であります。
從つて農村の先覚者たちは、今や眞劍にわが國農村の將來を考えて、
経営の多角化に、あるいは農村工業化等にくふう研究をこらしておるのでありますが、その場合に突き当ります二つの困難は、資材と
資金の不足であります。
政府は、過般來農業手形制度を創設して、当面の金融の途を講ぜられたのは、これを多とするのでありますけれども、問題は、すでに單なる金融面の一措置で解決し得るには、あまりにも深刻かつ本質的なものとな
つておるのであります。はたして農林当局は、この農村不況の実体を認識し、いかなる具体的
対策をも
つておられるかを、ここに明らかにせられたいのであります。(
拍手)
次に
お尋ねいたしたい点は、
地方財政の確立についてであります。
地方自治権の確立は、御
承知のように
地方財政権の確立をま
つて初めて成就し得るものでありますことは申すまでもありませんが、この問題をめぐ
つて、大藏省及び
地方財政委員会の間に意見の対立を見、
地方財政委員会の
地方自治体側委員の、全面的辞表提出まで問題が発展しておるのであります。私どもは、この問題につきまして重大なる関心を有するのでありますが、またさらに、最近
地方の実情を見てみますと、
財政上の困難から町村長の辞職をいたします者が次第に殖えてきておるのでありまして、これは、わが國自治
行政の將來の
ために、ゆゆしい問題と考えるのであります。はたして
政府は、この問題に対していかなる具体案を用意しておるか。
さらに
お尋ねいたしたいのは、本
年度における
追加予算の問題であります。先ほど
植原先輩の御
質問に対しまして、
北村大藏大臣は、
追加予算は今のところ考慮していない、こういうふうな御言明があつたのでありますが、私は、さらにもう一言、この点について念を押しておきたいのであります。
昭和二十二
年度の
予算が、当初の
追加予算なしの原則に立ちまして
編成された千百四十五億に対しまして、その後十四回の補正の結果、当初の
予算の約倍額に膨脹いたし、その
ために
國民の
負担を加重いたしました事実は、爭い得ないところであります。
財政法第二十九條は、
追加予算というものは、
予算作成後に生じた事由に基き、必要避けることのできない経費についてのみ
追加予算を提出し得ることを規定いたしておるのでありまして、
國民が、
政府の放漫かつ無
計画なる
國家支出から生ずる
負担を加重されることのないように、擁護しておるのであります。ところが
政府は、議会の情勢を考慮せられて、
鉄道、通信の倍率にもしも
修正が行われるといたしました場合には、その
赤字については、苫米地官房長官などは、
追加予算でこれを埋めようというようなことを
新聞で語
つておるようであります。また災害復旧費、六・三制
予算の増額に関しましては、財源がないから一應この程作に止めたのであるが、新しい財源が見つかるならば、その財源を災害復旧あるいは六・三制の方に向けてやろうというような、内々の約束も行われておるように私は聞いておるのであります。
そうしますと、なるほど
大藏大臣は、今のところに
追加予算を考えてはおらないと言明せられておるのでありますが、
予算を提出いたしますと同時に、すでに
追加予算の必要を考慮せられておる、
追加予算を出さなければならないような
予算をもしも本議場に提出いたしたとしますならば、あるいは現
内閣のもとにおいて、もしも新しい財源が発見せられた場合には、六・三制の
予算あるいは災害復旧の
予算にまわすであろうとかいうようなことを言明しておるようなお役人があるといたしますならば、明らかに
財政法二十九條の違反であると私は考えるのでありますが、
北村大藏大臣の、もう一度この点に対する明確な
お答えをいただきたいと思うのであります。(
拍手)
次に私は、
軍公利拂延期の欺瞞性について
お尋ねをいたしたい。軍公
利拂停止ならば、まだはつきりしているのでありますが、一箇年間延期するというのでありまして、
國民の目をごまかして
社会党と妥協しておられるようであります。拂うのか拂わないのか、これを明確にさせるのが、
政治家の当然の務めであります。(
拍手)しかるに、一箇年延期というような、えたいの知れない措置をとりながら、結局十年後には、延滞利子を全部つけてお支拂をする、こういうのであります。これでは、
國民の目をごまかすのみか、友党
社会党にさえ一ぱい食わしておる処置だと私は思うのであります。(
拍手)
軍公利子を一箇年延期して、十年後に支拂うのでありますから、これは一種の借金であります。私どもの常識から申しますならば、できるだけ借金はあとに残したくない、できるだけ借金は子孫に残したくないというのが私どもの人情でありますが、しかるに、残さないでもいい借金を十年後に残しておくというのでありますから、現
内閣閣僚の心情は、私どもの常識の想像外にあると言わなければなりません。殊に、今回の措置で浮いてまいります金はわずかに十五億円でありまして、総
予算に比較いたしますならば三厘七毛であります。これはまつたく純経済的立場を離れて、イデオロギーの観点から、
政治的にこの問題を取上げたものであ
つて、
國民の
負担は、これによ
つていささかも軽減しないのであります。(
拍手)しかも、金融機関の
軍公利子に対しましては、未收入利息としてこれを処理することにな
つておりますから、この未收入利息を引当に、日銀が最高度の融資を行うことにな
つておるという。これでは、何の
ための
軍公利拂延期でありますか、私どもはその解釈に苦しむのでありますが、
芦田首相並びに
北村藏相の、この点に対する率直な御
答弁をいただきたいのであります。(
拍手)
外資導入につきましては、
植原先輩が触れられましたから、私はこれとダブらないつもりでおりますが、なるほど、一億五千万ドルの
復興費が下院において削減の運命に遇いました。今日上院において、これが復活に奔走せられておることは、私どもは暗夜に
一つの光明を見出したような心地がするのでありますが、もしも、この一億五千万ドルの
復興費が日の目を見ないで葬り去られるということになりますと、
政府が二十三
年度に立てておりまする
生産指数四割
増強ということは、その根底から崩れてくるのであります。そこで私は、その非を率直に認めて、
生産計画を大幅に変更なさる御意思があるかどうかを、
安本長官に
お尋ねいたしたいのであります。(
拍手)
最後に、
政府が目下立案しておると傳えられております、いわゆる中間安定の構想につきましては、われわれも一應これを承認するものであります。
政府の案に見ても、本年十月から開始されます中間安定の第一期にはいる前に、いわゆる準備期において措置しなければならない幾多の事項があるのでありますが、
政府が現在実施しつつある諸施策が、この準備期の措置として適切有効なものでないことは、私が以上申し述べました
通りで御判断のつくことと私は存ずるのであります。準備期の措置が、もしも実際の効果をあげるに至らない場合には、第一期、すなわち十月以後の諸
計画は、全面的に崩れてしまうことは申すまでもありません。
これを要するに、今日
國家といたしまして急を要する
政策並びにその方向が、
政府の描いておりまする中間安定
対策中に盛られておることは、私どもこれを了承するのでありますが、要は、これを單なる作文に終らせるか、また実際に効果を現わさしめるかは、一にかか
つてその
内閣の
政治力いかんにあります。私は、この主義主張を異にする寄合世帶で、一時逃れの放送ばかりに身にやつしておるような他力本願の現
内閣で、はたしてこの中間安定施策を準備期において十分実施し得るか否かということは、多大の疑いをもたざるを得ないのであります。(
拍手)
以上の
諸点について、
芦田総理大臣を初め関係閣僚の明確なる
答弁を要求して、降壇するものであります。(
拍手)
〔
國務大臣北村徳太郎君
登壇〕