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1948-06-04 第2回国会 衆議院 本会議 第55号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十三年六月四日(金曜日) 午後二時九分
開議
—————————————
議事日程
第五十一号
昭和
二十三年六月四日(金曜日) 午後一時
開議
一 国務大臣の
演説
—————————————
松岡駒吉
1
○
議長
(
松岡駒吉
君) これより会議を開きます。 ————◇—————
山下榮二
2
○
山下
榮二君 応事日程追加の
緊急動議
を
提出
いたします。すなわちこの際、
山口喜久一郎
君
提出
、
予算案
の
提出
時期に関する
緊急質問
を許可されんことを望みます。
松岡駒吉
3
○
議長
(
松岡駒吉
君)
山下
君の
動議
に御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
松岡駒吉
4
○
議長
(
松岡駒吉
君) 御
異議
なしと認めます。よ
つて日程
に追加せられました。
予算案
の
提出
時期に関する
緊急質問
を許可いたします。
山口喜久一郎
君。 〔
山口喜久一郎
君
登壇
〕
山口喜久一郎
5
○
山口喜久一郎
君 私は、
民主自由党
、
社会革新党
、第一
議員倶樂部
、
日本農民党
、無所属を代表いたしまして、
予算提出
時期に関する件について
質問
を試みたいと存ずるのであります。
芦田総理大臣
は、一昨夜ラジオのマイクを通じて、全國に向
つて予算案
はでき上りましたと放送されたのでありまするが、いかに現
内閣
が羊頭を掲げて
狗肉
を賣ることに妙を得たといえども、われわれ
議会人
といたしましては、
財政法
の命ずるところにより、
成規
の
手続
を経て
國会
に
提出
されざる限りにおいては、
予算案
ができ
上つた
と
國民
の前に僭称することは断じて許さないのであります。(
拍手
)街頭の紙芝居の解説といえども、かかる虚構の言を弄することはできません。(
拍手
)いわんや、
さき
に
政府
が
議会
において、五月の十五日までには必ず
予算案
を
提出
すると確約されたはずであります。しかして、その
審議期間
を見込んで
会期
は六月二十日まで延長されたはずではありませんか。しかるに、今日まで荏苒日をむなしゆうしたその
責任
に対しては、
苫米地官房長官
が、昨日
議院運営委員会
において、わずか遺憾の意を表されたのみでありまするが、われわれは、
苫米地官房長官
のその言葉だけでは、了承することはできないのであります。(
拍手
)
政府
は口を開けば、ただに本
予算案
の
遅延
に限らず、自己の不明と不手ぎわをカバーするために、常に
関係方面云云
というようなことを言わるるのでありまするが、本
予算案
に関する限りにおきましては、
関係方面
の了解を得る日数も含まれて五月十五日までには必ず
提出
するということを約束されたではありませんか。(
拍手
)この
原因
はいろいろあろうとは思うのでありまするが、現
内閣
が根本的に
主義主張
の異なるところの三派連立をなしておられる、相異なる二つの魂が、政権に恋々たるあまり、かじりついておるということに
原因
があるのであります。(
拍手
)
軍公利拂
といい、あるいは、
鉄道運賃
、
逓信料金
の値上げといい、未だに三派間において
種々
の論議を交されておるということが、ひいても
つて
今日
予算
が
遅延
した理由ではありませんか。(
拍手
)みずから深く反省してもらわなければならない次第であります。 いわんや、聞くがごとくんば、五月二十日に行われたる
宮城縣第二
区の
補欠選挙
には、
芦田総理大臣
初め、
一松建設院総裁
、
竹田厚生大臣
、
水谷商工大臣
、
野溝國務大臣
、
鈴木法務総裁
、
岡田運輸大臣
までが、大わらわにな
つて選挙
に從事されて、
予算
を
編成
すべき重大な時期において、かかる
大臣諸公
が、一
補欠選挙
に
中央
をあけておいでにな
つて
おる。しかも
予算
は
遅延
して、今日まで
提出
されないというのであります。本
予算案
の
遅延
にこのことが重大な
原因
であ
つた
ということに、みずから
思い
をいたされなければならぬはずである。(
拍手
) しかるに
政府
は、完全にでき上らない
予算
をも
つて
、今月八日を待たずして、軽率にも本日
大藏大臣
が
予算
の
大綱
なるものを
説明
されようというのであります。
國会
の
從來
の慣例に從えば、
予算案
の全体ができ
上つた
上で、印刷の
都合
上
予算
を内示し、あるいは
政府
が
施政方針
の
演説
をするということは、許されてお
つた
ことでありまするが、未完成の
予算
をひつさげてその
大綱
の
説明
をなすというがごときは、
思い
上
つた行動
であると私は思うのであります。(
拍手
)おそらくは、余命いくばくもない現
内閣
が退陣を急がれるところの
前奏曲
以外の何ものでもない。(
拍手
) ここにおいて、われわれ
野党連合
といたしましては、これから行わるるであろう
大藏大臣
の
予算
大綱
なるものの
説明
に対しては、
國会法
の建前から、
大藏大臣
が自由なる立場においての
財政方針
の
中間報告
として以外には承りおかれない次第であります。(
拍手
)
政府
があらためて
成規
の
手続
を経て
予算案
を
提出
さるるまで、われわれの
質問
をここに留保しておくことを言明しておきます。(
拍手
) 以上に対する
政府
の
所信
を質したいのでありますが、要は、五月十五日までに本
予算
を
議会
に
提出
すると本議場において、確約された
政府
の
責任
はどこにあるかということが一点。しかして、われわれの久しく待望するところの本
予算
は、
政府
が昨日
議院運営委員会
において言明されたるがごとく、本月の八日までには、必ず今度こそは
提出
さるるかどうかという点か一つ。なお、五月の十五日に
予算案
が
提出
さるると見て、本
会期
は六月二十日まで延長されたのであるが、はたして六月八日に本
予算
が
提出
されて、六月二十日までに、
会期
を延長することなくしてこれを議了することがでふるかどうかということに対する
政府
の
所信
を承りたいということであります。しかして、本
予算提出
後におけるわれわれ
野党各派
の
質問
に対して、誠意をも
つて
政府
はこれが答弁に当るかどうかという、以上四点であることを銘記されたい。(
拍手
) 〔
國務大臣芦田均
君
登壇
〕
芦田均
6
○
國務大臣
(
芦田均
君) お答えいたします。 五日中句に
予算案
を
提出
する旨
議院運営委員会
において
政府
から約束をいたしてお
つた
にかかわらず、
種々
の
事情
によ
つて
その
期日
に遅れて、やむを得ず、とりあえず
大綱
を
國会
に
提出
いたしましたことは、
政府
としてはまことに遺憾に存ずるところであります。 ついては
予算案
は、
さき
に
議院運営委員会
において
政府
から言明いたした
通り
の
期日
に
國会
に
提出
する決心であります。 さらに、第三の御
質問
でありました
会期
の問題につきましては、
政府
の
希望
といたしましては、できるならば六月の
末日
ごろまで
会期
を延長して、その間に議案の
審了
を得たいと考えております。 第四の問題は、私からお答えいたすまでもなく、
質問
に対して
政府
が答えるのは
立憲政治
における当然の
責任
であることを御承知を願います。(
拍手
) ————◇—————
松岡駒吉
7
○
議長
(
松岡駒吉
君)
大藏大臣
より、
財政
に関する
演説
のため発言を求められております。これを許します。
大藏大臣北村徳太郎
君。 〔
國務大臣北村徳太郎
君
登壇
〕
北村徳太郎
8
○
國務大臣
(
北村徳太郎
君) われわれは漠然と希望し、明確に恐怖していると、ある戰勝國の詩人が申しましたが、今まで私どもは、明確な恐怖はあ
つて
も、安定への希望はきわめて漠然としたものでしかあり得なか
つた
のであります。しかし、今や耐乏と苦闘のうちにようやく生存から生活へ、
危機感
から
安全感
への十字路にたどりつこうといたしているのであります。この重大な時期に際会いたしまして、
昭和
二十三
年度
予算案
の
編成
にあたりまして、まず第一の
努力
は、
予算
と
物價
との
相互均衡
をとるという一点に注がれたのであります。このことたるや、重大にして、しかもまたきわめて困難な問題でありますたけ、これに
相当時日
を要し、遂に
暫定予算
の御審議を煩わすこと数回に及び、このほどようやく成案を得るに至りましたが、なお事務上の都合で、正式な
予算案
としての
提出
は若干遅れる見込みでありますから、この際大綱について御説明申し上げるとともに、現下の
財政金融政策
につきまして
所信
を申し述べたいと存ずる次第であります。 まず、
予算編成
の
基礎
とな
つて
おります重要な点の二、三について申し述べたいのであります。 まず第一に、
物價及び賃金
と
予算
との
関係
であります。昨年七
月の物價改訂
後、
賃金
と
実効價格
との
上昇線
は相当弱ま
つた
ものの、なお継続いたしております。このため、特に官業と
基礎産業
とは今なお
採算割れ
を來し、これがため、
鉄道
、
通信
両
特別会計
の
運営收支
における
赤字
、石炭・鉄鋼・
肥料等
いわゆる
安定帶物資
に対する
價格調整補給金等実質
上の
財政負担
と見られるものは、最近月額百億円に達する
状況
と
なつ
たのであります。かかる
財政
及び
金融
上の
負担
を引続き持続いたしますことは、
インフレーシヨン
の前途に重大な暗影を投ずるのみならず、
企業
の見地から見ましても、かかる
重要産業
の
基礎
を不健全なまま放置することはできないので、ここにこれらの
價格
の改訂を行い、
企業
の
運営
を
正常化
することが必要と
なつ
たのであります。しかしながら、
賃金
・
物價
の
循環的高騰
を遮断するためには、この際
價格補正
の
程度
をできる限り低位に止める必要があるわけでございます。
從つて政府
は、困難な際ではありますが、
財政負担
において
物價騰貴
の波及を抑制し、
健全財政
を堅持しつつ
物價
と
賃金
との安定をはかり、
生産
の
正常化
へも効果あらしめようと
努力
いたした次第であります。すなわち
一般会計
においては、五百十五億円の
價格調整補給金
を
支出
いたしまして、
公定價格
の著しい上昇を緩和することとし、
鉄道
、
通信
両
特別会計
に対しましては、
一般会計
から百二十億円の
運営收支不足金
の繰入を行い、かくいたしまして、
鉄道運賃
の
値上り
は
通行税
を含めて
現行料率
の三・五倍、
通信料金
の
値上り
は
現行料率
の四倍に止めることとしたのであります。
賃金
については、右の
価格補正
を斟酌して、現在における
一般勤労者
の
実質賃金
を確保せしめることとし、これがため、
所得税
について相当大幅の軽減を行う等の措置を講じたのであります。 第二の点は、
健全財政
の
原則
を
一般会計
、
特別会計
及び
地方財政
を通じて貫徹したことであります。
財政
の
健全性
とは、申すまでもなく、
一般会計
のみならず、
特別会計
、
地方財政
を通じた
財政
全体として、その
收支
の
均衡適合
をはかるということであるべきはもちろんであるからであります。このことは、
物價
と
賃金
との
騰貴
を抑制しつつ、しかもこれによる
國民負担
の増大をできるだけ避けねばならない
情勢
のもとにおいてはきわめて困難であり、
予算
の
編成
にあたり最も苦心いたしたところでございます。結局、各
特別会計
においても、
地方財政
においても、
運営
上の
收支
についておおむね
赤字
を出さずに済ます見透しがつきましたことは、
財政健全化
のために喜びとするところであります。もつとも
資本的支出
に属するものにつきましては、
経費
の性質上公債または借入金によることとしたものもありますが、これは
資本勘定
として当然の措置と考えているのであります。 第三は、
国民経済
との関連でございます。
財政
の
健全化
のためには、
財政收支
が
均衡
を得るのみならず、さらに
財政
の規模が
國民経済
全体に適應することが必要でございます。
國民事経済力
の
総合的指標
たる
國民所得
を見まするに、
昭和
二十三
年度
は大よそ一兆九千億
程度
と概算せられるのでありまして、これに対し、
一般会計
の
歳出
三千九百九十三億円余は二一%にあたり、前
年度
の一八%に比し
多少増率
とな
つて
おります。本
年度
の
國民所得
は、実質的に見て昨年事に比し相当増加することは期待できますが、わが
國経済
の実力が未だきわめて貧困であることに顧みますれば、この
負担
は相当の重圧と思われます。しかし、
経済
の安定、國の
復興
その他のためには、わが國のなすべきところはきわめて多いのでありますから、われわれは、この際新しい
日本建設
のためには、この
負担
をもあえて甘受しなければならないと思うのであり、
國民各位
におかれましても、この点については今しばらく御辛抱を願わねばならぬと思うのであります。 第四に、
行政整理
に関する点でございます。
國内経済態勢
を整備して外資の導入を容易ならしめ、わが
國経済
を
復興
するためには、
経済部門
と密接な
関係
を有する
行政部門
をまず能率化する必要があることは、申すまでもありません。この目的を達するため、
政府
は
行政事務
の整理再
編成
と機構の
簡素合理化
を行うこととし、目下着々
具体案
を
檢討作成
中でありますが、この際まず、
予算
上においてもとりあえず
一般会計
の
人件費
の一割五分に相当する額を節約することとし、も
つて
行政整理
の実施を
財政
の面からも促進することといたした次第であります。 以上の観点に立
つて
作成されました
予算
の概要は、大体
歳入歳出とも
に三千九百九十三億円余でありまして、
歳入
は、
租税
及び
印紙收入
二千六百三十二億円余、
專賣益金
九百四十三億円余、その他の官業及び
官有財産收入
七十三億円余、雜
收入
三百三十六億円余、前
年度
剰余金
八億円余であり、
歳出
は、
終戰処理費
及び
賠償施設処理費
千六億円、
價格調整費
五百十五億円、
鉄道通信
行政監督費繰入二十億円余、
鉄道
業務収支差額繰入九十億円、
通信
業務収支差額繰入四十億円、
船舶運営会補助
四十億円、
地方分與税分與金
四百四十九億円余、
公共事業費
四百二十五億円、
政府出資
百八十九億円余、その他千二百十八億円余であります。 この内容については、近く
予算案
を
提出
する際詳細に御説明申し上げることといたしたいのでありますが、概要について簡單に申し述べますれば、
歳出
のうち
人件費
については三千七百円ベース、
物件費
については、
公定價格
はおおむね七割
程度
の
騰貴
を前提とし積算いたしたのでございます。 次に
終戰処理費
及び
賠償施設処理費
については、最近の
実情
に今後の見透しを加え、
物價
の
騰貴率
を勘案して計上したのでありますが、
事業費
としては、前
年度
に比し若干減少するものと考えております。
價格調整費
については、今回の
價格補正
以前にかかる分七十五億円、今後における石炭・鉄・肥料その他
重要物資
の
販賣價格
の
騰貴
を抑制するために必要な
調整費
四百四十億円を計上したのであります。
鉄道
、
通信
両
特別会計
の
業務勘定
に対する
赤字
の補填及び
船舶運営会
への補助は、いずれもさきに申し述べた
價格補正
の
方針
により、
現行料率
に比し、
鉄道運賃
は
通行税
を含めて三・五倍、
通信料金
は四倍、
海上運賃
は三倍の線にこれを抑制し、現状において実行可能な
合理化
を断行して、なお不足する分を
一般会計
から繰入れることといたしたのであります。
鉄道通信
の行政監督費繰入は、両
特別会計
に属していた行政または監督の性質を有する
経費
をこの際
一般会計
の
負担
に移し、これら
企業特別会計
の
独立採算制
を徹底せしめることとした次第であります。
地方分與税分與金
は、
地方財政
の
状況
に顧み、
赤字借入
を避けるため必要な金額を
地方公共團体
に分與することといたしたのであります。
公共事業費
については、昨年における災害その他の事情を勘案し、前
年度
に比し若干
事業量
の増加を見込み、これに
價格補正
による單價の
増嵩
を加えて計上いたしました。
政府出費
については、
復興金融金庫
に対し、本
年度
において
民間保有
に属する
復興金融債券
の償還に必要な金額を目途として出費することとし、その金額百八十億円と、その他に対する
政府出資
とを合わせ、合計百八十九億円余を計上いたしたのであります。 以上
歳出
を概観いたしまするに、
終戰処理費
、実質上の
價格調整費
及び
地方分與税分與金
のみで、すでに
歳出総額
の五三%を占め、爾余の
経費
をも
つて
戰災復旧、
教育文化
、
保健衞生
、
産業経済等
々施策の万端を実行せねばならぬことは、
物價騰貴
の点を考え合わせ、
財政
の困難を如実に示しておるものであり、この大きな
國民的苦悩
について十分の御理解を願いたいと存ずるのであります。 次に、
歳入
について説明を申し上げます。 以上に述べた巨額の
経費
をいかにして賄うかにつきましては、
健全財政
の
原則
から、財源のすべてを
普通歳入
によることとし、その大宗たる
租税
と
專賣收入
につきそれぞれ所要の措置を講ずるとともに、その他の
收入
についても、
物價等
の
状況
に顧みて、でさる限りの
努力
を盡すことといたしました。
專賣收入
については、すでに
法律案
を
提出
しましたが、
租税
についても、数日中にそれぞれ
法律案
をも
つて
御審議を煩わすつもりでありますが、その大要は次の通りであります。 まず
租税
につきましては、最近における
賃金
、
物價等経済
諸
情勢
の推移に即應して、
國民
の
租税負担
を調整、
合理化
するとともに、
財政需要
に対應して
收入
を確保することを目標として、税制の全般にわたり改正を加えることといたしました。すなわち、
租税
の中枢たる
所得税
について、
所得
の
変動
、課税の
実情等
に照らして
財政事情
の許す限り
負担
を軽減するため、
基礎控除
、
扶養控除
及び
勤労控除
を
相当程度引上げ
るとともに、税率を大幅に引下げることとしたのでありまして、
價格
の
補正
の改訂が
勤労所得者
に加える重圧に対し、税の軽減によ
つて
これを緩和しようと努めた次第であります。また
法人税
については、
産業
の振興、外資の
導入等
に資する見地から、
超過所得
の税率を引下げ、
外國法人
を本邦法人並に取扱う等
法人負担
の軽減をはかり、
勤労者
の
税負担軽減
と相ま
つて
、
生産活動
の促進に対して期待できるような方途を講じたのであります。次に、
物價
の
変動
に即應して、
間接税
中
從量課税
の
酒税等
につき相当の増徴を行うことといたしております。さらに
経済情勢
の
変動
に即應し、
所得税
及び
法人税
の
減收
の一部を補填して
租税收入
を確保し、
財政
の
基礎
を堅実ならしめるため、今回新たに
取引高税
を創設し、各
取引段階
に対し百分の一
程度
の課税を行うことといたしました。 今次の
予算
に計上した
租税
及び
印紙收入
の総額は二千六百余億円に上り、
租税
は総
歳入
の三分の二を占め、決定的に重要とな
つて
いるのであります。しかも、すでに
國民生活
が一般に相当窮迫している
実情
に顧みるならば、
中央地方
を通ずる
國民
の
租税負担
は決して軽くはないのでありますが、
租税收入
の確保が
財政收入
の
均衡
を得るために不可欠の前提でありますから、この際全
國民各位
に対し、
租税
の完納につき一段の
忍苦協力
のほどを切望する次第であります。
政府
といたしましても、
國民所得
の
分布状況
の
変動
が激しい現状において、
租税負担
の公正をはかりつつ
租税收入
を確保するため、
徴税機構
を整備強化し、税務の
運営方法
を刷新改善し、特に
大口利得者
の課税の充実に
努力
し、
負担
の適正をはかるとともに、
國民
の納税に対する認識の
普及徹底
に一層の
努力
を拂う所存であります。 次に、
專賣益金
は九百四十三億円余でありまして、
タバコ專賣
においては、
國民生活
との調和をはかりつつ
財政需要
の増大に即應するよう、新たに
自由販賣品
を発賣するとともに、
生産数量
を増加することとし、また從來の定價を、最近の
物價
情勢
に應じて
引上げ
た次第であります。 以上、
租税
及び
專賣益金
のほか、
價格補正
に伴う
價格差益納付金
百八十八億円余と、
官有財産收入
、
財産税等收入金特別会計受入命等
その他の
普通歳入合計
二百二十一億円余を計上いたしております。 以上、
昭和
二十三
年度
財政
の大要につき説明いたしましたが、この機会に、最近における
財政経済情勢
につき
政府
の
所信
を申し述べたいと存じます。
惡性インフレーシヨン
の根源が
財政收支
の不
均衡
に端を発することは周知の通りでありまして、
健全財政
は
インフレーシヨン克服
のための第一の要請であります。この意味において、
昭和
二十二
年度
予算
も収支の
均衡
を標榜して
編成
され、昨秋における
予算補正
に際しても、
財政需要
の著しい
増嵩
をすべて
租税
と
專賣益金
とを中心とする
普通歳入
で
賄つたの
であります。しかるに、
支出済額
と取入済額との間に生ずる時間的なずれのため、昨年末においては、
支出
は千八百十五億円余で、
予算額
の五五%に当るに反し、
收入
は五百七億円余で、
予算額
の二三・八%に止まり、
收入
は
支出
の約半分を満たすにすぎぬ
状況
で、このため
財政收支
の破綻が深刻に憂慮されたのであります。その後さいわいにして、
國会
を中心とする
納税國民運動
と、
税務職員
のひたむきな
努力
とは、
國民
の深い理解と相ま
つて
、一月以降顯著な成績をあげ、四月末日までに、
予算額
千三百五十億円余を若干上まわる
程度
の
税收
を確保し得たのでありまして、
昭和
二十二
年度
は辛くも
收支
の
均衡
を保持することができ、
融資規制
と相ま
つて
通貨
の増勢は著しく抑制され、
インフレーシヨン
の進行を阻止することに多大の
寄與
をなし得たのであります。すなわち、昨年末二千百九十億円を超えた
日本銀行券発行高
は、その後今日に至るまで二千二百億円を上下し、
物價
の騰勢も鈍化を示しております。しかしながら、
年度
の途中における
收入
と
支出
との時間的ずれは
通貨増発
の
原因
となりますので、本
年度
は、
予算
の実行上その時期
的調整
をはかり、
通貨
の増発を結果するようなことのないよう万全を期する覚悟であります。 次に、
地方財政
について一言いたします。
健全財政
の必要は、
地方財政
においても、中央の
財政
と何ら異なるところはないのであります。しかも
地方財政
の窮状は、國の
財政
における以上のものがあるのであります。これは六・三制の
経費
や
災害土木費
あるいは
自治警察
の費用等々のため
歳出
がいよいよ増大し、本
年度
は大よそ二千億円になんなんとするにかかわりませず、その財源は大部分を
地方分與税分與金等國
の
歳出
に依存しており、
独立財源
が貧弱なことによるのでありますが、
政府
はかねてから、國の
財政
と
地方財政
の
吻合調整
の方途につき鋭意研究を重ね、
國費
と
地方費
との
負担区分
を明確適正にするとともに、
実情
に即した
地方税制
の確立、たとえば
事業税
の創設、あるいは
入場税
を
地方
に委讓する等の方途を講じておるのであります。別途、
地方財政法
及び
地方税法
の一部を改正する
法律案
を近く
提出
いたすつもりでございます。 次に、当面の
金融
問題について
政府
の施策の大要を申し述べたいと存じます。 元來、
通貨増発
の
原因
の一半は
産業
の
資金
の
需要
の増大にあるのでありますから、
通貨面
からする
インフレーシヨン対策
は、
財政面
と
金融面
との双方にわた
つて
行わなければなりません。
政府
は、
財政面
における
健全財政主義
と相照應いたしまして、
金融面
においては
健全金融主義
の
原則
を堅持しているのであります。このために、昨年三月
以來金融機関資金融通準則
が施行され、
金融機関
からの貸出は、
原則
としてその
蓄積資金
をも
つて
賄い、またいわゆる
赤字金融
をなさしめない
方針
をとり、
信用面
からする
通貨膨脹
を極力抑制してまい
つた
のであります。しかして融資については、
経済
の安定、
産業
の
復興
、
生産
の
増強等
の見地から見まして、
産業各般
にわた
つて
緊急度
に
應ずる順位
を決定し、
資金
が当面必要な方面に重点的に融資せらるるよう規制してあるのであります。かくて過去一年余の実績は、
通貨増発抑制
上相当の効果を立証しているものと考えられます。 しかしながら、最近における
徴税成績
の著しい向上、
政府支拂
の引締め等のため、一部の
産業
において
事業資金
の逼迫が訴えられ、近く行われる
價格
の
補正
によ
つて
、この傾向はますますその度を加えるのではないかと懸念されているようであります。わが
國経済再建
上必要な
事業
に対し、
價格補正等
に伴い
運轉資金
や
設備資金
の正常な
需要
の増加による適正な
資金
を供給することは、
生産
を続行し、
経済
の正常な循環を確保するゆえんであると考えられますので、
政府
は
インフレーシヨン防遏
のため、
健全財政
と相並んで
健全金融
の
原則
はあくまで堅持しつつ、しかもその運用にあた
つて
は、
実情
に即してでき得る限り
生産
を増強するため効果的な施策をとる所存であります。すでに正規の
配給物資
、
貿易物資等
の
生産配給
に必要な
資金
の供給を円滑ならしめるため、
公團認証手形
、
配給手形
、
貿易手形制度
を創設し、また
農村金融対策
といたしましては、肥料、農機具、
農薬等
の
購入代金等
の
農業生産資金
を供給する手段として
農業手形制度
を創設し、その効果をあげている等が、その実例でございます。 なお、
資金需要
の根本的な
原因
が
企業自体
に内在する
不健全性
に由來するものであるならば、
企業自体
に立ち入
つて健全化
を行わない限り、実質的な
健全金融
ば成り立たないのでございまして、國の
企業
や
行政面
における
行政整理
に並行いたしまして、
民間企業
についても
整備合理化
をはからなければならないと考えております。
金融
について特に注目すべきことは、いわゆる
復金金融
であります。
復興金融金庫
は、わが
國産業
の
復興再建
に必要な
資金
で、一般
金融機関
から融資することが困難な
資金
の融通に当
つて
いるのでありますが、その額は
昭和
二十二年中の
金融機関
の貸出総額中約三分の一を占め、かつ融資先の性質上、相当の
赤字金融
をも行
つて
おります。しかし、その必要とする
資金
は
復興金融債券
によ
つて
賄われ、かつその大部分が日本銀行の引受によ
つて
おりますので、一部にはいわゆる復金インフレの非難さえ聞くのであります。石炭、鉄鋼、肥料、電力等緊急
産業
への
資金
供給は一刻もゆるがせにできない現況に鑑みまして、やむを得ぬことと存じます。
政府
は、
復興金融債券
についてはでき得るだけ市場消化に努めるとともに、融資の國收及び使途の監査につき一段のくふうを重ねたい所存でございます。なお、
復興金融金庫
は第五回の増資を計画中でありまして、近く必要な
法律案
を
提出
するはずでございます。 なお、從來
企業
は、その必要とする
事業資金
の大部分を
金融機関
からの融資に求めてきたのでありますが、
通貨
の膨張を避け、健全な民主的
経済
を確立するためには、今後所要
資金
は極力これを増資、拂込み等の安定した自己資本に求めるよう、漸次切りかえていく必要がございます。このためには、申すまでもなく
國民
の証券投資に対する関心を高め、廣く
國民
の間に有價証券の分布をはかることが必要であり、さきに施行されました証券取引法の適切な運用等により、証券の民主化のため一層の
努力
を傾けたいと考えております。 以上、
財政
資金
と
産業
資金
とにわたり、
資金
の
需要
面について申し述べたのでございますが、かくして放出されたところの、
通貨
がただちに還流し、これらの
資金
の
需要
を満たすことができれば、
通貨
の増発は起らないはずでありますから、從
つて
、
資金需要
に対應する貯蓄が不足な点にも
通貨増発
の一因が存するわけでございます。 貯蓄増強については、すでに一昨年秋以來の救國貯蓄運動が末端まで滲透して、相当顯著な成果をあげ、
徴税成績
の急上昇にもかかわりませず、本年一月は百七十九億円、二月は九十五億円、三月は二百一億円と、順調に進展してきたのでございますが、四月には約四十億円と著しい減少を見ました点に鑑みまして、
インフレーシヨン
抑制のためには一層この
國民
貯蓄の増強が要請されますので、本年は貯蓄目標額を三千億円とし、これが達成のために、さらに一段の
努力
をいたしたいと存じております。貯蓄増強の方策といたしましては、まず第一に
通貨
への信頼感を増すことが必要である。しかるにもかかわりませず、ちまたにおいては新円再封鎖等の説をなすものがありますけれども、
政府
は、新円再封鎖のごとき、一切さような措置はいたしませんことはもちろんであります。なお進んで貯蓄組合の結成を促進し、貯蓄慣習を喚起し、郵便貯金を初め貯蓄成績による
資金
の
地方
還元をはかる等諸般の施策を実施いたす所存でございますから、一層の御協力を切望する次第であります。 なお、外資導入の点から見ましても、特に必要なことは信用組織の確立でございます。御承知の通り銀行、信託会社、保險会社等の
金融機関
は、一昨年來再建整備に努め、三月末日をも
つて
最終処理を完了し、新旧勘定を合併いたしまして、いわゆる戰時補償の打切等に伴い生じました不良資産を清算いたしたのでありますが、さらに近くそれぞれ大増資を行いまして、諸外國に劣らぬ資本構成を有する
金融機関
として再出発することにな
つて
いるのであります。
財政
金融
当面の
情勢
は以上の通りでありますが、終戰後第四年目の今年に入
つて
からの諸般の
情勢
は、全般的に見て次第に好轉しつつあるものと言えましよう。すなわち、納税成績の目ざましい向上を主軸として、
通貨
はほとんど安定的状態にあり、また物資面においても、供米は昨年に比しはるかに早く完遂され、各方面にれける
國民各位
のひたむきな
経済
復興
への
努力
は、今やようやく歩一歩とその実を結び始めたのであります。 しかしながら、このような
國民
の
努力
にもかかわりませず、脚下の現実を顧みますとき、戰争の惨禍はあまりにも大きく、鉱工業
生産
は未だ
昭和
五年ないし九年の四三%に止まり、食糧その他の生活必需物資の
生産
は、七千八百万の
國民
の最低必要量をとうてい満たし得ないのであります。この基本的な欠陷が解決されない限り、
経済
の終局的な安定は期し得られません。そしてこの解決は、脆弱と
なつ
た國内
経済
の基盤だけではとうてい望み得べくもなく、國際
経済
との関連において、すなわち外貨の援助と貿易の振興によ
つて
初めて可能とな
つて
まいるのであります。事実、今日までのわが国
経済
は、いわゆる緊急援助等米國
政府
の
予算
支出
による外貨の援助によ
つて
崩壊を免れてきたのであります。しかしながら、今後進んで
経済
の
復興
をはかるためには、
政府
による援助のみならず、いわゆる民間外資の導入をもはかる必要があることは言うまでもありません。 しかるに、わが
國経済
の現状は、
インフレーシヨン
にあ
つて
労働不安は去らず、
企業
の
基礎
は未だ整備されておらぬ等、民間投資にと
つて
採算の見透しが困難であり、その安全性と利潤とを確保するには、なおはなはだ未だいしのであります。また
経済
が不安定なため、為替レートも未だ決定せられず、國内
價格
は國際
價格
水準と遊離した、でこぼこのままに放任されております。しかも、相当非能率な経営が行われておる國内
経済
の状態が、貿易の振興に対して重大な妨げとな
つて
いるのであります。しかしさいわいにして、緊急援助費を初め相当巨額に上る米國
政府
の外資援助が傳えられ、ドレーパー使節團の報告書を通じて賠償の緩和、外資援助その他日本の
経済
的自立に対する深い関心が明らかとなり、また食糧事情が世界的に好轉しつつあること等を考え合わせますとき、われわれの前途に大きな光明がさしそめてきたことを認めることができると思うのであります。
政府
としては、この機会をとらえ、國内的にもこれに即應して再建のための施策を総合的に事施し、まず
インフレーシヨン
の進行速度をできる限り緩慢化して、外資の援助を支柱とする一應の中間的安定を実現し、これを本格的安定への踏み台として、非能率なわが
國経済
を漸次國際水準に近づけ、も
つて
為替レートの決定、民間外資の本格的導入、貿易の振興を実現いたしたいと考えておる次第であります。 ドレーパー使節團の報告書にも明らかな通り、この場合、総合対策のうち最も重要なことは、
健全財政
の確立であります。それは單に形式的な
收支
均衡
に止まらず、
收支
の時期
的調整
をはかり、また
中央地方
を通じて一貫した
健全財政
でなければならず、さらに
金融面
における
健全金融
と相表裏し、
財政
の
赤字
を
金融面
に轉嫁するごときことのない、実質的な
收支
の
均衡
を目途としなければなりません。これと同時に、主食その他生活必需物資の供給確保の裏づけとする
実質賃金
の安定により、家計の
赤字
を克服し、また
企業
については、
金融
、資材の両方面から経営の
合理化
、能率化をはかることによりまして、その
赤字
を解消せしめるよう不断の
努力
が続けられなければならないのであります。 さきに述べましたように、終戰以來の
國民
の貴い
努力
は、今やようやく効轉が期待されるこのときこそ、わが
國経済再建
にまたとない好機であり、今こそわれわれは、
経済
安定の目標に向
つて
昂然と頭をもたげつつ、國内の協力態勢を整えて起ち上らねばならぬのであります。 昔、イスラエルの詩人は、「われ山に向いて目をあぐ、わが助けはいずこより來るや」と叫びました。たれに頼るよりも、まず私どもは目を上げて、世界的視野に立ちつつ、みずからを助ければなりません。申すまでもなく、わが
國民経済
への再建は…… 〔発言する者多し〕
松岡駒吉
9
○
議長
(
松岡駒吉
君) 静粛に願います。
北村徳太郎
10
○
國務大臣
(
北村徳太郎
君)(続) わが
國民
自身の
努力
によ
つて
初めて実現されるのでありまして、外國の援助のみに依存して、みずから最善を盡さないような安易なる態度では、
國民経済
の再建のため絶対に必要な
外資
の
導入
すら期待し得なくなり、遂にはわが
國民経済
を再び不安のどん底に陷らしめ、民族自立の
希望
は遂に達成することもできずに終るでありましよう。連合國、殊に米國の好意にこたえる意味におきましても、われわれ
國民
は、この機会に昂然として起ち上り、一致協力して、苦しきに耐えつつ
経済
再建の一遂に
努力
を傾注いたさればならぬと思うのであります。かくて
國民各位
の再建への意欲と、不拔の勇氣と、たゆまざる
努力
とによりまして、不安と恐怖は一掃され、明確に前途を望みつつ、歩一歩
経済
安定がもたらされることの決して遠くはないことを私は信じて疑わない次第であります。(
拍手
) ————◇—————
山下榮二
11
○
山下
榮二君
議事日程
追加の
緊急動議
を
提出
いたします。すなわちこの際、榊原亨導
提出
、救癩施設に関する
緊急質問
並びに多賀安郎君
提出
、鉄鋼増産に関する
緊急質問
を逐次許可せられんことを望みます。
松岡駒吉
12
○
議長
(
松岡駒吉
君)
山下
君の
動議
に御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
松岡駒吉
13
○
議長
(
松岡駒吉
君) 御
異議
なしと認めます。よ
つて日程
は追加せられました。 救癩施設に関する
緊急質問
を許可いたします。榊原亨君。 〔榊原亨君
登壇
〕
榊原亨
14
○榊原亨君 私は、最近激増しつつあります癩患者の犯罪に対する処置並びに癩病に対する救癩
事業
そのものにおいて、はなはだ遺憾の点多く、これが緊急の対策を要するものありと考えますので、以下諸点につき、法務総裁並びに厚生大臣の
責任
ある御答弁を要求する次第であります。 元來癩病という病は、ほとんど不治のものでありまして、恐るべき傳染病であることは、今日
一般
に認められているところでございます。しかして、これら癩病をま
つた
く社会から根絶一掃するためには、完全なる治療法のなき今日としては、どうしても癩病の患者を
一般
社会から隔離收容して、その傳染源を断ち切るよりほかに途がないのであります。すなわち、これらの隔離收容せられました癩患者は、自分自身の病気を治すというよりも、むしろ私ども
一般
の健康な
國民
に癩病を傳染させないために、みずからを犠牲といたしまして、孤独な、さびしい
生活
をも
つて
一生を終るのでありまして、ここに救癩
事業
が数多い社会
事業
の中で最も重要な意義を有するという理由があるわけであります。 私ども
國民
といたしましても、これら犠牲者が、その孤独の
生活
のうちにも何かしら温かい光明・
希望
を抱いて、安心して平和な
生活
ができるようにいたしますことは、國家の
責任
であり、また新しい憲法の精神よりいたしましても、あるいはまた人道上の
見地
よりいたしましても、最も大切なことであると信ずるものであります。 しかるに、ここにはなはだ遺憾にたえないことは、近來、これら癩療養所内において、言語に絶する不道徳なる行為が公然と行われ、ときには、きわめて惡質なる犯罪さえも次第に
増加
しつつあるのでありまして、か
つて
は平和な別天地であ
つた
これらの療養所の秩序はま
つた
く乱れ、善良な收容患者の不安・迷惑を増幅しておるばかりでなく、さらにこれら療養所が
一般
社会におけるところの犯罪の温床と化しつつある事実であります。 しかして、これが
原因
のおもなるものは、現在わが國の癩病患者の犯罪者を收容すべき刑務所、あるいはこれに類する特殊なる施設が全然欠如しておることに起因するのであります。 たとえば、ここに癩病患者の一犯罪者が檢察当局によ
つて
捕えられますと、その者は癩病患者であるという理由から、
一般
犯罪者を收容する拘置所に收容することができないために、結局取調べもうやむやとな
つて
、あたかもはれ物にさわるがごとく、そのままただちに癩療養所に送致收容せらるるを常とするのであります。その際癩療養所といたしましても、はなはだ迷惑至極ではございますが、やむを得ずこれらの犯罪者を收容するのでございまするが、その犯罪者を入れる設備がないために、
一般
患者のおる病室に收容せざるを得ないのを常とするのであります。結局、いかなる犯罪を犯しましても、癩病患者である限り処罰または監禁されないということにな
つて
しまうのであります。 さらに驚くべきことは、癩患者の犯罪人と共犯でありますところの健康者の犯罪人がある場合は、結局取調べの煩雜さか避けるため、これも癩患者同様に癩療養所に送らるるという、ま
つた
く常識をも
つて
しては判断することができない事実があるのであります。最近私の聞き及びました実例によりましても、殺人犯人が癩患者であるために、何ら刑法上の処罰を受けることなしに、そのまま癩療養所に收容されたばかりでなく、さらに、その共犯者である一健康人をも收容した事実があるのであります。 これらの犯罪者が療養所に参りますると、自身自暴自棄のふるまいをなすばかりか、公然と、自分は殺人を行
つて
きたのであるが、何らの処罰を受けておらない、癩患者は、どうせ前途に
希望
がないのであるから、何をや
つて
も差支えない、何をや
つて
も処罰されないと公言いたしまして、他の善良なる患者を誘惑いたしまして、病室内において大がかりな賭博を始め、その他
種々
の忌わしい犯罪を犯して、平然として療養所内の秩序を乱し、ま
つた
くの療養所内の暴君と化しつつあるが、これに対して療養所の当局も、ま
つた
く手も足も出せぬという状態であります。か
つて
平和な理想郷であ
つた
ところのこれらの療養所は、今やま
つた
く百鬼横行のちまたと化しつつあるのであります。 さらに寒心にたえないことは、これら犯罪者に限
つて
、必ず折を見て再び療養所を脱出して
一般
社会に潜入し、傳染の根源となるばかりか、凶惡犯罪の害毒を流すに至るのでありまして、今にしてこれが対策を講じなければ、その社会的害毒の及ぶところ、眞に膚にあわを生ずるものがあるのであります。 さらに問題となりますのは朝鮮人患者のことであります。現在朝鮮人癩患者は、一療養所に約四、五百名くらい收容せられておるのでございまするが、戰前朝鮮の小鹿島にありました約六千名の癩病患者は、終戰と同時に日本人職員が引揚げたのを機会に、全部これが脱出をはかりまして、この脱出いたしました六千名の癩患者の大部分は、あらゆる手段を講じて、日本に向け多数密航してきたのであります。その一例を申しますると、兵庫縣の尼崎市におけるがごときものでありまして、これら朝鮮人患者は、日本において一團を組織いたしまして、不良なる日本人または朝鮮人と共謀いたしまして、いろいろ凶惡なる犯罪を犯しつつあるのであります。そして、彼らの一部が万一警察に捕われましても、前に申し上げた
通り
、何ら処罰を受けることなく、そのまま癩療養所に再び收容され、彼らはますます増長いたしまして、療養所内の秩序を乱し、勝手氣ままな
生活
をした後、折を見て再び三たび脱出するという順序を繰返しておるのでございまして、療養所は、この種犯罪者の安全なる温床とな
つて
おるのであります。これらの点につきましても何らか緊急の処置を講じなければ、單に
一般
社会への癩病の傳染の危險があるばかりでなしに、社会の安寧秩序の上から申しましても、実に重大なる事態に至ることを憂うるものであります。 次に、
一般
に癩病患者が発見せられた場合、
從來
は警察署においてこれが收容方処置を講じてお
つた
のでありましてきわめて円滑に
運営
せられたのでありまするが、現在におきましては、これが全然警察力のないい保健所において行われておりますので、いろいろその点におきまして障害・摩擦を起しておるのであります。この点、何らか、あるいは他の強力なる收容方法を考慮するとかいう対策が要望せられておるのであります。 私どもの見るところによりますと、近來厚生省の
方針
はあまりに結核対策に重点をおき過ぎ、癩対策に対しては関心がないようでありまするが、の点は、ぜひとも当局の猛省を要望するのであります。これは、單に
予算
の面において現われておるばかりでなしに、他の部面においても、一例を申し上げますると、現在の医藥品の配給は、先年の配給
機構
改正の当時、これによ
つて
今後は医藥品は円滑に出まわると当局が確約せられたにかかわらず、今年一月から三月までに約八百名近くを收容いたしておりますところの一癩療養所に配給せられました医療用繊維製品は、驚くなかれほうたいは一本もないのであります。ガーゼがわずかに三千メートルという状態であります。御承知のごとく癩患者は、ほとんどすべて全身に多数の傷をも
つて
おるのを常といたしまするが、療養所長のお話によりましても、この夏は、十分傷のほうたい交換ができないために、おそらく入院患者の傷をも
つて
おる者は全部うじがわくということを言
つて
おるのであります。これに反しまして國立結核療養所は、日光が直接患者に当ると有害であるという理由から、厖大なカーテン地が割り当てられておるということを聞いておるのであります。この一例をも
つて
いたしましても、前途に光明のない、われらの犠牲者たる癩患者に、さらに温かき同情ある恩惠を與えられんことを熱望するものであります。 さらに、これらの癩療養所に勤務いたしておりますところの職員の待遇問題であります。これらの職員は、ま
つた
く犠牲的崇高なる同胞愛に燃え、自己の危險をも顧みず、みずから進んで療養所内に入りこんでおるのでありまして、その待遇は最も意を用いなければならないことは当然であります。御承知のごとく、癩患者のほとんど大多数は、癩病そのもので死亡する者は少く、大多数の死亡の
原因
は結核であります。癩療養所に從事しておるところの職員は、予防消毒をいたしますから、癩病には感染しにくいのでございまするが、空氣傳染をいたします結核が結局癩患者からうつされまして、惨澹たる状態になることが非常に多いのであります。ところが、現在これらの職員の待遇はきわめて粗惡でありまして、漸次職員は減少の一途をたどるばかりでなしに、看護婦のごとき、ほとんど志望者がない
実情
に遭遇しておるのであもます。これに対しましても、ぜひとも從業員を増員し、十分なる休養の期間を與え、また職階制に対しても深甚なる考慮を拂うべきものであります。さらにまた、草津問題の例に徹しましても明らかでありますが、これら職員に万一過失あ
つた
場合に、その
責任
を明らかにすることは当然でありますが、その処罰にあたりましては、仕事の
性質
に鑑み、苛酷にわたらないよう特に十分注意を要すると存ずる次第であります。 最後に、癩に対する学術研究についてであります。現在の癩療養所は、研究機関きわめて貧弱でありまして、か
つて
は世界に最も卓越しておりましたわが國の癩研究も、次第に列國より落伍せざるを得ない
現状
であります。たとえば、癩病の特効藥である大風子油は、目下はなはだ入手困難でありますが、これに代るべきものとして、すでに米國においてはズルフオン剤の一種たるブロミンの
効果
が実証せられ、わが國の癩学者もこれを十分認めておるのでありますが、研究施設なきため、これが根本的
基礎
研究の不可能なる
現状
でありまして、か
つて
原子爆彈またはペニシリン等の研究に関し、当局の無
理解
から百年の悔を残した愚かさを繰返さんとしておるのであります。國家
財政
の緊迫しているわが國の
現状
として、癩療養所内に十分なる研究施設を設けることの不可能なることは当然でありますが、少くとも癩療養所に勤務される有能にして忠実なる医員をして、内地留学の制度のもとに、内地の各大学の研究室に派遣し、これが研究をなさしむるならば、十分その目的を達し得るのみならず、職員優遇の一端ともなるものと考える次第であります。 以上の諸点につき、まず法務総裁に対し、第一に、いかなる理由により癩患者の犯罪人は
一般
人と同じく取調べ並びに処罰を受けておらないのであるか。第二、癩患者の犯罪に対しこれを処罰拘禁しておられるといたしますならば、いかなる方法によ
つて
これをなしておるか。第三に、いかなる理由により、癩患者とその共犯がある場合に、その共犯者たる健康人もまた癩療養所に入れなければならないか。以上の諸点につき、法務総裁の明確なる答弁を要求する次第であります。 次に厚生大臣に対して、次の諸点の答弁を
希望
する次第であります。第一に、朝鮮人癩患者の帰國を連合軍と交渉の上、朝鮮の癩療養所にこれを送還する方法を講ぜられてはどうか。第二には、癩療養所内に犯罪者を收容する特殊施設——刑務所のごとき施設を緊急に設ける意思があるかどうか。第三番目は、癩患者收容に対し、單に無力なる保健所のみに一任することなく、強力なる
措置
を講ずる意思があるかどうか。第四番目に、癩対策を結核対策同様重点視し、
予算
の面においても医藥品配給の面においても、これが実現を期する御意思があるかどうか。第五は、癩療養所の職員待遇に関し、速やかに連合軍
関係方面
に十分の交渉了解に
努力
されて、その増員並びに職階制につき深甚の考慮を拂わるること。第六、癩療養所の医員に対し内地留学の制度を設け、癩研究の発展に資せらるる御意思があるかどうか。以上の諸点につき厚生大臣の御答弁を要求する次第であります。 以上私どもは、対策のよろしきを得れば、今後十箇年をも
つて
わが國から全部の癩病を撲滅一掃し得ると信ずるものでございまするが、われら健康人の犠牲となり、孤独なる
生活
をしておる不幸なる同胞のため、いま少しく眞劍かつ温情ある
施策
の講ぜられんことを熱望いたしまして、私の
緊急質問
を終ります。(
拍手
) 〔
國務大臣
鈴木義男君
登壇
〕
鈴木義男
15
○
國務大臣
(鈴木義男君) 榊原君から癩患者の犯罪について御
質問
でありまするが、癩患者の犯罪はまことに困
つた
問題でありまして、もとより檢察当局としては、区別をして取扱うようなことはないのであります。しかしながら、癩患者であるということを発見いたしますれば、できるだけ通常の刑務所に收容せずに、特別の刑務所に收容をするか、あるいは病院に送付いたしまして、病院について調査をし、あるいは取調べを継続するというようにいたしておるのであります。ただいま刑務所に特別の病監を設けて癩患者を收容しておる所がありまするが、癩患者としてはい
つて
おります者はごくわずかでありまして、大体は通常の癩病院の方に委託しておる次第であります。処罰につきまして決して差別いたさないのでありまするが、あるいは御指摘のような事実が絶無とは保せられないのでありますから、具体的に御指示くださいまするならば、十分に取調べて善処いたしたいと考えるのであります。殊に共犯者であるから、健康であるのに癩病院に送
つて
しま
つた
というようなことは、乱暴きわまる話でありまして、許しがたい人権蹂躙でありまするから、そういう事実がありまするならば嚴重に処置いたすつもりであります。法務廳といたしましては、ぜひ特別の癩患者のための刑務所を施設いたしたいということで、数年前から
予算
を
提出
しておるのでありまするが、
國費
多端であるためと、この問題に対する認識が十分でないためと伴いまして、いつもこの
予算
が削られておるような次第でありまして、やむを得ませんから、厚生大臣と交渉をいたしまして、近く
國会
病院のうちの適当なるものを、せめてその一部でも開放していただきまして、刑務所に代用するような設備にいたしたいということを考慮いたしておる次第であります。なお問題の重要性に鑑みまして、できるだけ
努力
いたすつもりであります。
竹田儀一
16
○
國務大臣
(竹田儀一君) 参議院の引揚同胞委員会に参
つて
おりまして、榊原議員の御
質問
の全部を聽きませなか
つた
ので、あるいは落ちるところがあるかもしれません。その場合は、さらに答弁をさせていただきます。 癩病患者を保健所等で発見いたしますと誰その患者が病毒傳播のおそれがあるということになりますと、癩予防法の第三條によりまして、都道府縣知事は警察と協力いたしまして、これらの患者を國立療養所に強制入所させることができることに相な
つて
おります。 なお、厚生省の癩予防対策が結核対策のように重点的ではないのではないかという御
質問
であります。決してそういうわけではないのでありまして、厚生省といたしましては、現在約二千三百の未收容者がありますが、これを全部收容いたすべく
努力
をいたしております。そのために療養所の病床も約一万の準備がありますので、現在は十分これらの人を收容し得ることと考えております。なおこのほかに、これは大
よそ
でありますが、約千名の患者があると考えられますので、この発見にも大いに
努力
をいたしたいと存じておるのであります。昨年癩予防法の
補助
率を改正いたしまして、在來の六分の一を二分の一に
引上げ
ましたので、これらの対策も今後円滑に行われるであろうと期待をいたしておるのでありまして、決して軽視いたしておりませんことを申し上げておきます。 なお、職員の待遇が十分でありませんことはまことに残念でありますが、厚生省といたしましても、これら職員の待遇向上には常に
努力
をしてきましたが、特に近く実施されまする職階制によりまして、でき得るだけ
均衡
をはかり、改善をいたしたいと存じておるのであります。なお、きわめて危險の多い、過労なこれらの從業員の職務に対しましては、特殊勤務手当というものも支給いたしたく、目下
関係方面
と折衝中であることをお答えいたしておきます。 なお研究機関の拡充について、大いにやれという激励のお言葉をいただいたのでありますが、この問題はきわめて重要な問題でありまして、現在國立予防衞生研究所及び癩療養所等におきまして、これが研究をいたしておるのであります。プロミンのお話もありましたが、聞きますところによると、内地にも、それと同
程度
くらいのものも大阪
方面
で発見されたるやに聞いておるのでありますが、まだ十分なる実績をあげたと聞いておらないことを残念に思
つて
おります。今後ともでき得る限り
予算
を計上いたしまして、万全の処置を講じたいと思
つて
おります。(
拍手
) ————◇—————
松岡駒吉
17
○
議長
(
松岡駒吉
君) 鉄鋼増産に関する
緊急質問
を許可いたします。多賀安郎君。 〔多賀安郎君
登壇
〕
多賀安郎
18
○多賀安郎君 私は、鉄鋼
生産
に関し商工大臣に
質問
いたしたいと思うのであります。 全
産業
復興
の不可欠の要素であり、かつまた多くの場合、その國、その民族の文化的
経済
尺度ともいわれる鉄鋼が、終戰以來ややもすれば重点
産業
の圏外に追出されたかの印象を與え、忘れられがちの感なしとしないことは、わが
國経済再建
の途上において、きわめて遺憾に存ずるのであります。敗戰によ
つて
手痛い打撃をこうむ
つた
わが
國産業
の
生産
水準は、今日わずかに戰前の三割を維持するに汲々たる状態であり、わけても、
重要産業
の
基礎
資材とも申すべき鉄鋼に至
つて
は、文字
通り
壊滅的打撃を喫し、戰前の一割
程度
にすぎないという惨澹たる
現状
であります。なるほど、昨年一月ごろにおきましては、一應
石炭
とともに最重点
産業
のわく内にあ
つた
のでありまするが、昨年十月ごろからは、電力
事情
等の制約から、再び縮小再
生産
の過程に入り、一月からは遂に十万トンの線を割
つて
、二年前の悲境に追いこまれてしま
つた
のであります。 申すまでもなく鉄鋼の用途は、單に大砲や軍艦のごとき兵器に限られているのではなく、食糧増産のための農機具にいたしましても、交通施設にいたしましても、平和的
國民生活
の文化水準は、すべてをその
基礎
資材を鉄鋼にま
つて
いるのであります。さればこそ、極東委員会におきましても、わが國に保有すベき鉄鋼が二百万トン、鋼塊三百五十トンがそれぞれ論議され、さらにストライク案なり米國國務省案として新聞に傳えられるところによれば、このような極東委員会の数字をはるかに上まわるごとき
情勢
にあるのであります。もちろん、許可されるこれらの鉄鋼は、
産業
機械なり建築
復興
資材として、あらゆる平和的、文化的用途への自由が認められるのであります。 しかるに、現在までの調査によれば、わが國土内の鉄鉱石は、
生産
許可数量をフルに継続するとすれば、わずか数年間にして國内の鉄鋼源は枯渇し、その後は全面的に輸入にまつほかないという、眞に寒心すべき状態におかれているのであります。あまりに目先の事象にとらわれるに急にして、このような鉄鋼
事情
に目をおおうならば、
基礎
工事なき百年の設計に落ちこみ、日本
経済
の再建など、とうてい望むべくもないと思うのであります。 そこで、これが対策の一つとしては、必然的に少量をも
つて
最大の
効果
をあげるべく、鉄鋼の品質向上による性能の完全なる発揮を考究し、一方においては、不足する数量の最小限を輸入の懇請にまたなければならないと思うのであります。かかる方向に指向いたさない限り、わが國の工業水準が世界市場の列に伍していけないのみならず、國内の
需要
にさえ、きわめて近い將來に行詰りを喫することは必至であります。鉄鋼源を無限に藏すると言われる米國を初め、鉄鋼源に惠まれたその他の先進諸國におきましても、鉄鋼源節約の目的を含めた優良鉄鋼の
生産
に非常なる苦心と
努力
とを注いでおる
現状
であります。 わが國におきましても、近時この点を重視して日本鉄鋼協
議会
なり、全國鉄鋼
復興
協
議会
なりが、鉄鋼
生産
を担う労働者並びに業者諸君とともに、この線に沿うて活動いたしておることは、きわめて適切な行き方であると思うのであります。しかしながら、鉄鋼の
生産
対策として、これら当事者の適切なる
努力
と車の両輪をなすべき鉄鋼
行政
の不備弱体は、今日わが國における鉄鋼
生産
の上に大いなるネツクをなしていると思うのであります。すなわち、鉄鋼
行政
の拡大強化が強く要請されているゆえんであります。 現に、鉄鋼とともに重点
産業
のわく内にある
石炭
、電力、
肥料等
に対しては、それぞれ
石炭
廰なり電力局なり
肥料
部なりが確立されて、いずれも
行政
の一元化のもとに、強力にその
施策
が推進されているのであります。もちろん、
行政整理
によ
つて
苦しい國家
財政
の
歳出
を抑制いたすことは現下の急務であります。しかしながら、重点
産業
、特に鉄鋼の飛躍的増産を通じて全
産業
施設にその
基礎
を與え、現下の
インフレーシヨン
を根本的に解決する
方途
も、軽く扱うことのできない問題であると思うのであります。 しかも、私の強く主張いたしまする鉄鋼
行政
の拡充強化は、國家
財政
の
歳出
を伴う人員
増加
ではないのであります。すなわち、か
つて
の鉄鋼局が、終戰後は鉱山局に属する一鉄鋼課に圧縮され、さらに同じ系統の鋳鋼、鍛鋼、鋳鉄等は、いずれも機械局に配置されているのであります。鉄鋼に限らず、かくてはすべての
行政
体系はばらばらに分裂して、総合的計画性を失い、
事務
の複雑と非能率の集約的形態を露呈いたすほか何ものもないのであります。なるほど鉄鋼局が鉄鋼課に縮小されたのは、鉄鋼
行政
の権限が廣汎に日本鉄鋼協
議会
に委讓されたからでありましようが、鉄鋼
行政
の権限が依然として
政府
官廰に集中され、さらには司令部との連絡、独占禁止、過度
経済
力の集中排除、
企業
の整備、賠償工場の
措置
、残存工場に対する
生産
方策、鉄鋼統制令廃止による
生産
資材の割当等のごとく、その所管内容がきわめて厖大なるにおきましては、一鉄鋼課をも
つて
しては、とうてい背負いきれるものでないことは当然と言うべきであります。むしろ鉄鋼課であ
つた
戰時中は、軍部の一方的傳達機関にすぎず、その
事務
はきわめて單純であ
つた
のであります。國家
財政
の
歳出
に何らの影響をもたらすこともなく、現存し分散している同じ系統の
行政
機関を集約いたしまして、鉄鋼課を鉄鋼局に昇格せしめ、少数精鋭の能率主義
行政
によ
つて
、一元的総
合計
画のもとに優良鉄鋼の増産をはかることが、深刻なる現下の
インフレーシヨン克服
に欠くベからざる大きな要素となることを私は固く信ずるのであります。 すでに、米國の対日救済費四億二千四百万ドルは昨三日の下院
歳出
委員会で承認され、
外資
導入
も好
都合
に進んであります。從いまして、これが受入態勢の整備はきわめて喫緊であると思うのであります。私は、わが
國産業
の
復興
に不可欠の條件の一つとして、鉄鋼の
生産
状況
にきわめて大きな関心をもたざるを得ないのであります。
政府
は、わが國のきわめて乏しい鉄鋼源の現実の上に立
つて
、いかなる対策を講じておられるか、また鉄鋼
行政
のあり方についてどう考えておられるか、商工大臣の御答弁を承りたいと
思い
ます。(
拍手
) 〔
國務大臣
水谷長三郎君
登壇
〕
水谷長三郎
19
○
國務大臣
(水谷長三郎君) 多賀議員の御
質問
にお答えいたします。 鉄鋼が日本
経済
再建のために不可欠の
基礎
物資であることは申すまでもないのでございまして、商工省といたしましても、決してこれが
生産
を軽視しておらないのでございます。特に御案内のように、本
年度
は
経済
再建計画の初
年度
にあたりまして、引続き
石炭
の増産、電力の補修、輸送力の増強が要請されておるのでございますが、しかも、これらの三つの
基礎
物資の増産が成るか成らないかということは、一は鉄鋼増産の裏づけいかんにかか
つて
おる問題でございますがゆえに、商工省といたしましては、昨
年度
以上の強力なる
施策
を鉄鋼に注入して、全力を捧げていきたいと考えておる次第であります。 第二の、今後の鉄鋼政策でございますが、本
年度
の鉄鋼
生産
は、
さき
に発表いたしましたように、昨
年度
に倍加されまして、普通鉄鋼材百万トンを
中心
とするものに決定したのでございますが、その後
関係方面
から強い意向もございまして、さらに普通鉄鋼材百十四万トンを
中心
とする計画を目下檢討中でございます。もちろん、これが目標の即時達成のためには、
相当
量の輸入原料を必要とするものでありまして、さいわい連合軍の好意によりまして、鉄鋼石、原料炭等の原料の輸入もほぼ見透しがつきまして、一部はすでに入港しつつある
現状
でありますが、なおこれら原料の輸入確保及びその他原料・資材輸送力の確保には困難が予想されておりますので、今後も引続きあらゆる
努力
を傾倒いたしまして、目的達成に遺憾なきを期する
所存
でございます。なお一層の
國民
的協力をお願いする次第でございます。 第三は、鉄鋼局設置の問題でございますが、以上述べましたような趣旨によりまして、商工省といたしましては、何とか鉄鋼増産の
機構
的
措置
を講じたいと考えておるのでございますが、御案内のように、ただいまはできるだけ
行政
機構
を縮小しようという傾向に出ておるのでございますがゆえに、御
質問
の鉄鋼局が設置されるかどうかということは、ひとえに
國会
方面
がいかにこの問題を御推進くださるかどうかということにかか
つて
おるのでございまして、われわれは、
國会
の意思がはつきりいたしますならば、その意思を尊重いたしまして善処するつもりでございます。(
拍手
) —————————————
山下榮二
20
○
山下
榮二君
大藏大臣
の
演説
に対する質疑は延期し、明五日定刻より本会議を開きこれをなすこととし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
松岡駒吉
21
○
議長
(
松岡駒吉
君)
山下
君の
動議
に御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
松岡駒吉
22
○
議長
(
松岡駒吉
君) 御
異議
なしと認めます。よ
つて
動議
のごとく決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時三十六分散会