運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-06-04 第2回国会 衆議院 本会議 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月四日(金曜日)     午後二時九分開議     —————————————  議事日程 第五十一号   昭和二十三年六月四日(金曜日)     午後一時開議  一 国務大臣の演説     —————————————
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 山下榮二

    山下榮二君 応事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわちこの際、山口喜久一郎提出予算案提出時期に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  4. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山下君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程に追加せられました。  予算案提出時期に関する緊急質問を許可いたします。山口喜久一郎君。     〔山口喜久一郎登壇
  6. 山口喜久一郎

    山口喜久一郎君 私は、民主自由党社会革新党、第一議員倶樂部日本農民党、無所属を代表いたしまして、予算提出時期に関する件について質問を試みたいと存ずるのであります。  芦田総理大臣は、一昨夜ラジオのマイクを通じて、全國に向つて予算案はでき上りましたと放送されたのでありまするが、いかに現内閣が羊頭を掲げて狗肉を賣ることに妙を得たといえども、われわれ議会人といたしましては、財政法の命ずるところにより、成規手続を経て國会提出されざる限りにおいては、予算案ができ上つた國民の前に僭称することは断じて許さないのであります。(拍手)街頭の紙芝居の解説といえども、かかる虚構の言を弄することはできません。(拍手)いわんや、さき政府議会において、五月の十五日までには必ず予算案提出すると確約されたはずであります。しかして、その審議期間を見込んで会期は六月二十日まで延長されたはずではありませんか。しかるに、今日まで荏苒日をむなしゆうしたその責任に対しては、苫米地官房長官が、昨日議院運営委員会において、わずか遺憾の意を表されたのみでありまするが、われわれは、苫米地官房長官のその言葉だけでは、了承することはできないのであります。(拍手)  政府は口を開けば、ただに本予算案遅延に限らず、自己の不明と不手ぎわをカバーするために、常に関係方面云云というようなことを言わるるのでありまするが、本予算案に関する限りにおきましては、関係方面の了解を得る日数も含まれて五月十五日までには必ず提出するということを約束されたではありませんか。(拍手)この原因はいろいろあろうとは思うのでありまするが、現内閣が根本的に主義主張の異なるところの三派連立をなしておられる、相異なる二つの魂が、政権に恋々たるあまり、かじりついておるということに原因があるのであります。(拍手軍公利拂といい、あるいは、鉄道運賃逓信料金の値上げといい、未だに三派間において種々の論議を交されておるということが、ひいてもつて今日予算遅延した理由ではありませんか。(拍手)みずから深く反省してもらわなければならない次第であります。  いわんや、聞くがごとくんば、五月二十日に行われたる宮城縣第二区の補欠選挙には、芦田総理大臣初め、一松建設院総裁竹田厚生大臣水谷商工大臣野溝國務大臣鈴木法務総裁岡田運輸大臣までが、大わらわになつて選挙に從事されて、予算編成すべき重大な時期において、かかる大臣諸公が、一補欠選挙中央をあけておいでになつておる。しかも予算遅延して、今日まで提出されないというのであります。本予算案遅延にこのことが重大な原因であつたということに、みずから思いをいたされなければならぬはずである。(拍手)  しかるに政府は、完全にでき上らない予算をもつて、今月八日を待たずして、軽率にも本日大藏大臣予算大綱なるものを説明されようというのであります。國会從來の慣例に從えば、予算案の全体ができ上つた上で、印刷の都合予算を内示し、あるいは政府施政方針演説をするということは、許されておつたことでありまするが、未完成の予算をひつさげてその大綱説明をなすというがごときは、思いつた行動であると私は思うのであります。(拍手)おそらくは、余命いくばくもない現内閣が退陣を急がれるところの前奏曲以外の何ものでもない。(拍手)  ここにおいて、われわれ野党連合といたしましては、これから行わるるであろう大藏大臣予算大綱なるものの説明に対しては、國会法の建前から、大藏大臣が自由なる立場においての財政方針中間報告として以外には承りおかれない次第であります。(拍手政府があらためて成規手続を経て予算案提出さるるまで、われわれの質問をここに留保しておくことを言明しておきます。(拍手)  以上に対する政府所信を質したいのでありますが、要は、五月十五日までに本予算議会提出すると本議場において、確約された政府責任はどこにあるかということが一点。しかして、われわれの久しく待望するところの本予算は、政府が昨日議院運営委員会において言明されたるがごとく、本月の八日までには、必ず今度こそは提出さるるかどうかという点か一つ。なお、五月の十五日に予算案提出さるると見て、本会期は六月二十日まで延長されたのであるが、はたして六月八日に本予算提出されて、六月二十日までに、会期を延長することなくしてこれを議了することがでふるかどうかということに対する政府所信を承りたいということであります。しかして、本予算提出後におけるわれわれ野党各派質問に対して、誠意をもつて政府はこれが答弁に当るかどうかという、以上四点であることを銘記されたい。(拍手)     〔國務大臣芦田均登壇
  7. 芦田均

    國務大臣芦田均君) お答えいたします。  五日中句に予算案提出する旨議院運営委員会において政府から約束をいたしておつたにかかわらず、種々事情によつてその期日に遅れて、やむを得ず、とりあえず大綱國会提出いたしましたことは、政府としてはまことに遺憾に存ずるところであります。  ついては予算案は、さき議院運営委員会において政府から言明いたした通り期日國会提出する決心であります。  さらに、第三の御質問でありました会期の問題につきましては、政府希望といたしましては、できるならば六月の末日ごろまで会期を延長して、その間に議案の審了を得たいと考えております。  第四の問題は、私からお答えいたすまでもなく、質問に対して政府が答えるのは立憲政治における当然の責任であることを御承知を願います。(拍手)      ————◇—————
  8. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 大藏大臣より、財政に関する演説のため発言を求められております。これを許します。大藏大臣北村徳太郎君。     〔國務大臣北村徳太郎登壇
  9. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) われわれは漠然と希望し、明確に恐怖していると、ある戰勝國の詩人が申しましたが、今まで私どもは、明確な恐怖はあつても、安定への希望はきわめて漠然としたものでしかあり得なかつたのであります。しかし、今や耐乏と苦闘のうちにようやく生存から生活へ、危機感から安全感への十字路にたどりつこうといたしているのであります。この重大な時期に際会いたしまして、昭和二十三年度予算案編成にあたりまして、まず第一の努力は、予算物價との相互均衡をとるという一点に注がれたのであります。このことたるや、重大にして、しかもまたきわめて困難な問題でありますたけ、これに相当時日を要し、遂に暫定予算の御審議を煩わすこと数回に及び、このほどようやく成案を得るに至りましたが、なお事務上の都合で、正式な予算案としての提出は若干遅れる見込みでありますから、この際大綱について御説明申し上げるとともに、現下の財政金融政策につきまして所信を申し述べたいと存ずる次第であります。  まず、予算編成基礎となつております重要な点の二、三について申し述べたいのであります。  まず第一に、物價及び賃金予算との関係であります。昨年七月の物價改訂後、賃金実効價格との上昇線は相当弱まつたものの、なお継続いたしております。このため、特に官業と基礎産業とは今なお採算割れを來し、これがため、鉄道通信特別会計運営收支における赤字、石炭・鉄鋼・肥料等いわゆる安定帶物資に対する價格調整補給金等実質上の財政負担と見られるものは、最近月額百億円に達する状況なつたのであります。かかる財政及び金融上の負担を引続き持続いたしますことは、インフレーシヨンの前途に重大な暗影を投ずるのみならず、企業の見地から見ましても、かかる重要産業基礎を不健全なまま放置することはできないので、ここにこれらの價格の改訂を行い、企業運営正常化することが必要となつたのであります。しかしながら、賃金物價循環的高騰を遮断するためには、この際價格補正程度をできる限り低位に止める必要があるわけでございます。從つて政府は、困難な際ではありますが、財政負担において物價騰貴の波及を抑制し、健全財政を堅持しつつ物價賃金との安定をはかり、生産正常化へも効果あらしめようと努力いたした次第であります。すなわち一般会計においては、五百十五億円の價格調整補給金支出いたしまして、公定價格の著しい上昇を緩和することとし、鉄道通信特別会計に対しましては、一般会計から百二十億円の運営收支不足金の繰入を行い、かくいたしまして、鉄道運賃値上り通行税を含めて現行料率の三・五倍、通信料金値上り現行料率の四倍に止めることとしたのであります。賃金については、右の価格補正を斟酌して、現在における一般勤労者実質賃金を確保せしめることとし、これがため、所得税について相当大幅の軽減を行う等の措置を講じたのであります。  第二の点は、健全財政原則一般会計特別会計及び地方財政を通じて貫徹したことであります。財政健全性とは、申すまでもなく、一般会計のみならず、特別会計地方財政を通じた財政全体として、その收支均衡適合をはかるということであるべきはもちろんであるからであります。このことは、物價賃金との騰貴を抑制しつつ、しかもこれによる國民負担の増大をできるだけ避けねばならない情勢のもとにおいてはきわめて困難であり、予算編成にあたり最も苦心いたしたところでございます。結局、各特別会計においても、地方財政においても、運営上の收支についておおむね赤字を出さずに済ます見透しがつきましたことは、財政健全化のために喜びとするところであります。もつとも資本的支出に属するものにつきましては、経費の性質上公債または借入金によることとしたものもありますが、これは資本勘定として当然の措置と考えているのであります。  第三は、国民経済との関連でございます。財政健全化のためには、財政收支均衡を得るのみならず、さらに財政の規模が國民経済全体に適應することが必要でございます。國民事経済力総合的指標たる國民所得を見まするに、昭和二十三年度は大よそ一兆九千億程度と概算せられるのでありまして、これに対し、一般会計歳出三千九百九十三億円余は二一%にあたり、前年度の一八%に比し多少増率となつております。本年度國民所得は、実質的に見て昨年事に比し相当増加することは期待できますが、わが國経済の実力が未だきわめて貧困であることに顧みますれば、この負担は相当の重圧と思われます。しかし、経済の安定、國の復興その他のためには、わが國のなすべきところはきわめて多いのでありますから、われわれは、この際新しい日本建設のためには、この負担をもあえて甘受しなければならないと思うのであり、國民各位におかれましても、この点については今しばらく御辛抱を願わねばならぬと思うのであります。  第四に、行政整理に関する点でございます。國内経済態勢を整備して外資の導入を容易ならしめ、わが國経済復興するためには、経済部門と密接な関係を有する行政部門をまず能率化する必要があることは、申すまでもありません。この目的を達するため、政府行政事務の整理再編成と機構の簡素合理化を行うこととし、目下着々具体案檢討作成中でありますが、この際まず、予算上においてもとりあえず一般会計人件費の一割五分に相当する額を節約することとし、もつて行政整理の実施を財政の面からも促進することといたした次第であります。  以上の観点に立つて作成されました予算の概要は、大体歳入歳出ともに三千九百九十三億円余でありまして、歳入は、租税及び印紙收入二千六百三十二億円余、專賣益金九百四十三億円余、その他の官業及び官有財産收入七十三億円余、雜收入三百三十六億円余、前年度剰余金八億円余であり、歳出は、終戰処理費及び賠償施設処理費千六億円、價格調整費五百十五億円、鉄道通信行政監督費繰入二十億円余、鉄道業務収支差額繰入九十億円、通信業務収支差額繰入四十億円、船舶運営会補助四十億円、地方分與税分與金四百四十九億円余、公共事業費四百二十五億円、政府出資百八十九億円余、その他千二百十八億円余であります。  この内容については、近く予算案提出する際詳細に御説明申し上げることといたしたいのでありますが、概要について簡單に申し述べますれば、歳出のうち人件費については三千七百円ベース、物件費については、公定價格はおおむね七割程度騰貴を前提とし積算いたしたのでございます。  次に終戰処理費及び賠償施設処理費については、最近の実情に今後の見透しを加え、物價騰貴率を勘案して計上したのでありますが、事業費としては、前年度に比し若干減少するものと考えております。  價格調整費については、今回の價格補正以前にかかる分七十五億円、今後における石炭・鉄・肥料その他重要物資販賣價格騰貴を抑制するために必要な調整費四百四十億円を計上したのであります。  鉄道通信特別会計業務勘定に対する赤字の補填及び船舶運営会への補助は、いずれもさきに申し述べた價格補正方針により、現行料率に比し、鉄道運賃通行税を含めて三・五倍、通信料金は四倍、海上運賃は三倍の線にこれを抑制し、現状において実行可能な合理化を断行して、なお不足する分を一般会計から繰入れることといたしたのであります。  鉄道通信の行政監督費繰入は、両特別会計に属していた行政または監督の性質を有する経費をこの際一般会計負担に移し、これら企業特別会計独立採算制を徹底せしめることとした次第であります。  地方分與税分與金は、地方財政状況に顧み、赤字借入を避けるため必要な金額を地方公共團体に分與することといたしたのであります。  公共事業費については、昨年における災害その他の事情を勘案し、前年度に比し若干事業量の増加を見込み、これに價格補正による單價の増嵩を加えて計上いたしました。  政府出費については、復興金融金庫に対し、本年度において民間保有に属する復興金融債券の償還に必要な金額を目途として出費することとし、その金額百八十億円と、その他に対する政府出資とを合わせ、合計百八十九億円余を計上いたしたのであります。  以上歳出を概観いたしまするに、終戰処理費、実質上の價格調整費及び地方分與税分與金のみで、すでに歳出総額の五三%を占め、爾余の経費をもつて戰災復旧、教育文化保健衞生産業経済等々施策の万端を実行せねばならぬことは、物價騰貴の点を考え合わせ、財政の困難を如実に示しておるものであり、この大きな國民的苦悩について十分の御理解を願いたいと存ずるのであります。  次に、歳入について説明を申し上げます。  以上に述べた巨額の経費をいかにして賄うかにつきましては、健全財政原則から、財源のすべてを普通歳入によることとし、その大宗たる租税專賣收入につきそれぞれ所要の措置を講ずるとともに、その他の收入についても、物價等状況に顧みて、でさる限りの努力を盡すことといたしました。專賣收入については、すでに法律案提出しましたが、租税についても、数日中にそれぞれ法律案をもつて御審議を煩わすつもりでありますが、その大要は次の通りであります。  まず租税につきましては、最近における賃金物價等経済情勢の推移に即應して、國民租税負担を調整、合理化するとともに、財政需要に対應して收入を確保することを目標として、税制の全般にわたり改正を加えることといたしました。すなわち、租税の中枢たる所得税について、所得変動、課税の実情等に照らして財政事情の許す限り負担を軽減するため、基礎控除扶養控除及び勤労控除相当程度引上げるとともに、税率を大幅に引下げることとしたのでありまして、價格補正の改訂が勤労所得者に加える重圧に対し、税の軽減によつてこれを緩和しようと努めた次第であります。また法人税については、産業の振興、外資の導入等に資する見地から、超過所得の税率を引下げ、外國法人を本邦法人並に取扱う等法人負担の軽減をはかり、勤労者税負担軽減と相まつて生産活動の促進に対して期待できるような方途を講じたのであります。次に、物價変動に即應して、間接税從量課税酒税等につき相当の増徴を行うことといたしております。さらに経済情勢変動に即應し、所得税及び法人税減收の一部を補填して租税收入を確保し、財政基礎を堅実ならしめるため、今回新たに取引高税を創設し、各取引段階に対し百分の一程度の課税を行うことといたしました。  今次の予算に計上した租税及び印紙收入の総額は二千六百余億円に上り、租税は総歳入の三分の二を占め、決定的に重要となつているのであります。しかも、すでに國民生活が一般に相当窮迫している実情に顧みるならば、中央地方を通ずる國民租税負担は決して軽くはないのでありますが、租税收入の確保が財政收入均衡を得るために不可欠の前提でありますから、この際全國民各位に対し、租税の完納につき一段の忍苦協力のほどを切望する次第であります。政府といたしましても、國民所得分布状況変動が激しい現状において、租税負担の公正をはかりつつ租税收入を確保するため、徴税機構を整備強化し、税務の運営方法を刷新改善し、特に大口利得者の課税の充実に努力し、負担の適正をはかるとともに、國民の納税に対する認識の普及徹底に一層の努力を拂う所存であります。  次に、專賣益金は九百四十三億円余でありまして、タバコ專賣においては、國民生活との調和をはかりつつ財政需要の増大に即應するよう、新たに自由販賣品を発賣するとともに、生産数量を増加することとし、また從來の定價を、最近の物價情勢に應じて引上げた次第であります。  以上、租税及び專賣益金のほか、價格補正に伴う價格差益納付金百八十八億円余と、官有財産收入財産税等收入金特別会計受入命等その他の普通歳入合計二百二十一億円余を計上いたしております。  以上、昭和二十三年度財政の大要につき説明いたしましたが、この機会に、最近における財政経済情勢につき政府所信を申し述べたいと存じます。  惡性インフレーシヨンの根源が財政收支の不均衡に端を発することは周知の通りでありまして、健全財政インフレーシヨン克服のための第一の要請であります。この意味において、昭和二十二年度予算も収支の均衡を標榜して編成され、昨秋における予算補正に際しても、財政需要の著しい増嵩をすべて租税專賣益金とを中心とする普通歳入賄つたのであります。しかるに、支出済額と取入済額との間に生ずる時間的なずれのため、昨年末においては、支出は千八百十五億円余で、予算額の五五%に当るに反し、收入は五百七億円余で、予算額の二三・八%に止まり、收入支出の約半分を満たすにすぎぬ状況で、このため財政收支の破綻が深刻に憂慮されたのであります。その後さいわいにして、國会を中心とする納税國民運動と、税務職員のひたむきな努力とは、國民の深い理解と相まつて、一月以降顯著な成績をあげ、四月末日までに、予算額千三百五十億円余を若干上まわる程度税收を確保し得たのでありまして、昭和二十二年度は辛くも收支均衡を保持することができ、融資規制と相まつて通貨の増勢は著しく抑制され、インフレーシヨンの進行を阻止することに多大の寄與をなし得たのであります。すなわち、昨年末二千百九十億円を超えた日本銀行券発行高は、その後今日に至るまで二千二百億円を上下し、物價の騰勢も鈍化を示しております。しかしながら、年度の途中における收入支出との時間的ずれは通貨増発原因となりますので、本年度は、予算の実行上その時期的調整をはかり、通貨の増発を結果するようなことのないよう万全を期する覚悟であります。  次に、地方財政について一言いたします。健全財政の必要は、地方財政においても、中央の財政と何ら異なるところはないのであります。しかも地方財政の窮状は、國の財政における以上のものがあるのであります。これは六・三制の経費災害土木費あるいは自治警察の費用等々のため歳出がいよいよ増大し、本年度は大よそ二千億円になんなんとするにかかわりませず、その財源は大部分を地方分與税分與金等國歳出に依存しており、独立財源が貧弱なことによるのでありますが、政府はかねてから、國の財政地方財政吻合調整の方途につき鋭意研究を重ね、國費地方費との負担区分を明確適正にするとともに、実情に即した地方税制の確立、たとえば事業税の創設、あるいは入場税地方に委讓する等の方途を講じておるのであります。別途、地方財政法及び地方税法の一部を改正する法律案を近く提出いたすつもりでございます。  次に、当面の金融問題について政府の施策の大要を申し述べたいと存じます。  元來、通貨増発原因の一半は産業資金需要の増大にあるのでありますから、通貨面からするインフレーシヨン対策は、財政面金融面との双方にわたつて行わなければなりません。政府は、財政面における健全財政主義と相照應いたしまして、金融面においては健全金融主義原則を堅持しているのであります。このために、昨年三月以來金融機関資金融通準則が施行され、金融機関からの貸出は、原則としてその蓄積資金をもつて賄い、またいわゆる赤字金融をなさしめない方針をとり、信用面からする通貨膨脹を極力抑制してまいつたのであります。しかして融資については、経済の安定、産業復興生産増強等の見地から見まして、産業各般にわたつて緊急度應ずる順位を決定し、資金が当面必要な方面に重点的に融資せらるるよう規制してあるのであります。かくて過去一年余の実績は、通貨増発抑制上相当の効果を立証しているものと考えられます。  しかしながら、最近における徴税成績の著しい向上、政府支拂の引締め等のため、一部の産業において事業資金の逼迫が訴えられ、近く行われる價格補正によつて、この傾向はますますその度を加えるのではないかと懸念されているようであります。わが國経済再建上必要な事業に対し、價格補正等に伴い運轉資金設備資金の正常な需要の増加による適正な資金を供給することは、生産を続行し、経済の正常な循環を確保するゆえんであると考えられますので、政府インフレーシヨン防遏のため、健全財政と相並んで健全金融原則はあくまで堅持しつつ、しかもその運用にあたつては、実情に即してでき得る限り生産を増強するため効果的な施策をとる所存であります。すでに正規の配給物資貿易物資等生産配給に必要な資金の供給を円滑ならしめるため、公團認証手形配給手形貿易手形制度を創設し、また農村金融対策といたしましては、肥料、農機具、農薬等購入代金等農業生産資金を供給する手段として農業手形制度を創設し、その効果をあげている等が、その実例でございます。  なお、資金需要の根本的な原因企業自体に内在する不健全性に由來するものであるならば、企業自体に立ち入つて健全化を行わない限り、実質的な健全金融ば成り立たないのでございまして、國の企業行政面における行政整理に並行いたしまして、民間企業についても整備合理化をはからなければならないと考えております。  金融について特に注目すべきことは、いわゆる復金金融であります。復興金融金庫は、わが國産業復興再建に必要な資金で、一般金融機関から融資することが困難な資金の融通に当つているのでありますが、その額は昭和二十二年中の金融機関の貸出総額中約三分の一を占め、かつ融資先の性質上、相当の赤字金融をも行つております。しかし、その必要とする資金復興金融債券によつて賄われ、かつその大部分が日本銀行の引受によつておりますので、一部にはいわゆる復金インフレの非難さえ聞くのであります。石炭、鉄鋼、肥料、電力等緊急産業への資金供給は一刻もゆるがせにできない現況に鑑みまして、やむを得ぬことと存じます。政府は、復興金融債券についてはでき得るだけ市場消化に努めるとともに、融資の國收及び使途の監査につき一段のくふうを重ねたい所存でございます。なお、復興金融金庫は第五回の増資を計画中でありまして、近く必要な法律案提出するはずでございます。  なお、從來企業は、その必要とする事業資金の大部分を金融機関からの融資に求めてきたのでありますが、通貨の膨張を避け、健全な民主的経済を確立するためには、今後所要資金は極力これを増資、拂込み等の安定した自己資本に求めるよう、漸次切りかえていく必要がございます。このためには、申すまでもなく國民の証券投資に対する関心を高め、廣く國民の間に有價証券の分布をはかることが必要であり、さきに施行されました証券取引法の適切な運用等により、証券の民主化のため一層の努力を傾けたいと考えております。  以上、財政資金産業資金とにわたり、資金需要面について申し述べたのでございますが、かくして放出されたところの、通貨がただちに還流し、これらの資金需要を満たすことができれば、通貨の増発は起らないはずでありますから、從つて資金需要に対應する貯蓄が不足な点にも通貨増発の一因が存するわけでございます。  貯蓄増強については、すでに一昨年秋以來の救國貯蓄運動が末端まで滲透して、相当顯著な成果をあげ、徴税成績の急上昇にもかかわりませず、本年一月は百七十九億円、二月は九十五億円、三月は二百一億円と、順調に進展してきたのでございますが、四月には約四十億円と著しい減少を見ました点に鑑みまして、インフレーシヨン抑制のためには一層この國民貯蓄の増強が要請されますので、本年は貯蓄目標額を三千億円とし、これが達成のために、さらに一段の努力をいたしたいと存じております。貯蓄増強の方策といたしましては、まず第一に通貨への信頼感を増すことが必要である。しかるにもかかわりませず、ちまたにおいては新円再封鎖等の説をなすものがありますけれども、政府は、新円再封鎖のごとき、一切さような措置はいたしませんことはもちろんであります。なお進んで貯蓄組合の結成を促進し、貯蓄慣習を喚起し、郵便貯金を初め貯蓄成績による資金地方還元をはかる等諸般の施策を実施いたす所存でございますから、一層の御協力を切望する次第であります。  なお、外資導入の点から見ましても、特に必要なことは信用組織の確立でございます。御承知の通り銀行、信託会社、保險会社等の金融機関は、一昨年來再建整備に努め、三月末日をもつて最終処理を完了し、新旧勘定を合併いたしまして、いわゆる戰時補償の打切等に伴い生じました不良資産を清算いたしたのでありますが、さらに近くそれぞれ大増資を行いまして、諸外國に劣らぬ資本構成を有する金融機関として再出発することになつているのであります。  財政金融当面の情勢は以上の通りでありますが、終戰後第四年目の今年に入つてからの諸般の情勢は、全般的に見て次第に好轉しつつあるものと言えましよう。すなわち、納税成績の目ざましい向上を主軸として、通貨はほとんど安定的状態にあり、また物資面においても、供米は昨年に比しはるかに早く完遂され、各方面にれける國民各位のひたむきな経済復興への努力は、今やようやく歩一歩とその実を結び始めたのであります。  しかしながら、このような國民努力にもかかわりませず、脚下の現実を顧みますとき、戰争の惨禍はあまりにも大きく、鉱工業生産は未だ昭和五年ないし九年の四三%に止まり、食糧その他の生活必需物資の生産は、七千八百万の國民の最低必要量をとうてい満たし得ないのであります。この基本的な欠陷が解決されない限り、経済の終局的な安定は期し得られません。そしてこの解決は、脆弱となつた國内経済の基盤だけではとうてい望み得べくもなく、國際経済との関連において、すなわち外貨の援助と貿易の振興によつて初めて可能となつてまいるのであります。事実、今日までのわが国経済は、いわゆる緊急援助等米國政府予算支出による外貨の援助によつて崩壊を免れてきたのであります。しかしながら、今後進んで経済復興をはかるためには、政府による援助のみならず、いわゆる民間外資の導入をもはかる必要があることは言うまでもありません。  しかるに、わが國経済の現状は、インフレーシヨンにあつて労働不安は去らず、企業基礎は未だ整備されておらぬ等、民間投資にとつて採算の見透しが困難であり、その安全性と利潤とを確保するには、なおはなはだ未だいしのであります。また経済が不安定なため、為替レートも未だ決定せられず、國内價格は國際價格水準と遊離した、でこぼこのままに放任されております。しかも、相当非能率な経営が行われておる國内経済の状態が、貿易の振興に対して重大な妨げとなつているのであります。しかしさいわいにして、緊急援助費を初め相当巨額に上る米國政府の外資援助が傳えられ、ドレーパー使節團の報告書を通じて賠償の緩和、外資援助その他日本の経済的自立に対する深い関心が明らかとなり、また食糧事情が世界的に好轉しつつあること等を考え合わせますとき、われわれの前途に大きな光明がさしそめてきたことを認めることができると思うのであります。  政府としては、この機会をとらえ、國内的にもこれに即應して再建のための施策を総合的に事施し、まずインフレーシヨンの進行速度をできる限り緩慢化して、外資の援助を支柱とする一應の中間的安定を実現し、これを本格的安定への踏み台として、非能率なわが國経済を漸次國際水準に近づけ、もつて為替レートの決定、民間外資の本格的導入、貿易の振興を実現いたしたいと考えておる次第であります。  ドレーパー使節團の報告書にも明らかな通り、この場合、総合対策のうち最も重要なことは、健全財政の確立であります。それは單に形式的な收支均衡に止まらず、收支の時期的調整をはかり、また中央地方を通じて一貫した健全財政でなければならず、さらに金融面における健全金融と相表裏し、財政赤字金融面に轉嫁するごときことのない、実質的な收支均衡を目途としなければなりません。これと同時に、主食その他生活必需物資の供給確保の裏づけとする実質賃金の安定により、家計の赤字を克服し、また企業については、金融、資材の両方面から経営の合理化、能率化をはかることによりまして、その赤字を解消せしめるよう不断の努力が続けられなければならないのであります。  さきに述べましたように、終戰以來の國民の貴い努力は、今やようやく効轉が期待されるこのときこそ、わが國経済再建にまたとない好機であり、今こそわれわれは、経済安定の目標に向つて昂然と頭をもたげつつ、國内の協力態勢を整えて起ち上らねばならぬのであります。  昔、イスラエルの詩人は、「われ山に向いて目をあぐ、わが助けはいずこより來るや」と叫びました。たれに頼るよりも、まず私どもは目を上げて、世界的視野に立ちつつ、みずからを助ければなりません。申すまでもなく、わが國民経済への再建は……     〔発言する者多し〕
  10. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  11. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君)(続) わが國民自身の努力によつて初めて実現されるのでありまして、外國の援助のみに依存して、みずから最善を盡さないような安易なる態度では、國民経済の再建のため絶対に必要な外資導入すら期待し得なくなり、遂にはわが國民経済を再び不安のどん底に陷らしめ、民族自立の希望は遂に達成することもできずに終るでありましよう。連合國、殊に米國の好意にこたえる意味におきましても、われわれ國民は、この機会に昂然として起ち上り、一致協力して、苦しきに耐えつつ経済再建の一遂に努力を傾注いたさればならぬと思うのであります。かくて國民各位の再建への意欲と、不拔の勇氣と、たゆまざる努力とによりまして、不安と恐怖は一掃され、明確に前途を望みつつ、歩一歩経済安定がもたらされることの決して遠くはないことを私は信じて疑わない次第であります。(拍手)      ————◇—————
  12. 山下榮二

    山下榮二君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわちこの際、榊原亨導提出、救癩施設に関する緊急質問並びに多賀安郎君提出、鉄鋼増産に関する緊急質問を逐次許可せられんことを望みます。
  13. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山下君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  救癩施設に関する緊急質問を許可いたします。榊原亨君。     〔榊原亨君登壇
  15. 榊原亨

    ○榊原亨君 私は、最近激増しつつあります癩患者の犯罪に対する処置並びに癩病に対する救癩事業そのものにおいて、はなはだ遺憾の点多く、これが緊急の対策を要するものありと考えますので、以下諸点につき、法務総裁並びに厚生大臣の責任ある御答弁を要求する次第であります。  元來癩病という病は、ほとんど不治のものでありまして、恐るべき傳染病であることは、今日一般に認められているところでございます。しかして、これら癩病をまつたく社会から根絶一掃するためには、完全なる治療法のなき今日としては、どうしても癩病の患者を一般社会から隔離收容して、その傳染源を断ち切るよりほかに途がないのであります。すなわち、これらの隔離收容せられました癩患者は、自分自身の病気を治すというよりも、むしろ私ども一般の健康な國民に癩病を傳染させないために、みずからを犠牲といたしまして、孤独な、さびしい生活をもつて一生を終るのでありまして、ここに救癩事業が数多い社会事業の中で最も重要な意義を有するという理由があるわけであります。  私ども國民といたしましても、これら犠牲者が、その孤独の生活のうちにも何かしら温かい光明・希望を抱いて、安心して平和な生活ができるようにいたしますことは、國家の責任であり、また新しい憲法の精神よりいたしましても、あるいはまた人道上の見地よりいたしましても、最も大切なことであると信ずるものであります。  しかるに、ここにはなはだ遺憾にたえないことは、近來、これら癩療養所内において、言語に絶する不道徳なる行為が公然と行われ、ときには、きわめて惡質なる犯罪さえも次第に増加しつつあるのでありまして、かつては平和な別天地であつたこれらの療養所の秩序はまつたく乱れ、善良な收容患者の不安・迷惑を増幅しておるばかりでなく、さらにこれら療養所が一般社会におけるところの犯罪の温床と化しつつある事実であります。  しかして、これが原因のおもなるものは、現在わが國の癩病患者の犯罪者を收容すべき刑務所、あるいはこれに類する特殊なる施設が全然欠如しておることに起因するのであります。  たとえば、ここに癩病患者の一犯罪者が檢察当局によつて捕えられますと、その者は癩病患者であるという理由から、一般犯罪者を收容する拘置所に收容することができないために、結局取調べもうやむやとなつて、あたかもはれ物にさわるがごとく、そのままただちに癩療養所に送致收容せらるるを常とするのであります。その際癩療養所といたしましても、はなはだ迷惑至極ではございますが、やむを得ずこれらの犯罪者を收容するのでございまするが、その犯罪者を入れる設備がないために、一般患者のおる病室に收容せざるを得ないのを常とするのであります。結局、いかなる犯罪を犯しましても、癩病患者である限り処罰または監禁されないということになつてしまうのであります。  さらに驚くべきことは、癩患者の犯罪人と共犯でありますところの健康者の犯罪人がある場合は、結局取調べの煩雜さか避けるため、これも癩患者同様に癩療養所に送らるるという、まつたく常識をもつてしては判断することができない事実があるのであります。最近私の聞き及びました実例によりましても、殺人犯人が癩患者であるために、何ら刑法上の処罰を受けることなしに、そのまま癩療養所に收容されたばかりでなく、さらに、その共犯者である一健康人をも收容した事実があるのであります。  これらの犯罪者が療養所に参りますると、自身自暴自棄のふるまいをなすばかりか、公然と、自分は殺人を行つてきたのであるが、何らの処罰を受けておらない、癩患者は、どうせ前途に希望がないのであるから、何をやつても差支えない、何をやつても処罰されないと公言いたしまして、他の善良なる患者を誘惑いたしまして、病室内において大がかりな賭博を始め、その他種々の忌わしい犯罪を犯して、平然として療養所内の秩序を乱し、まつたくの療養所内の暴君と化しつつあるが、これに対して療養所の当局も、まつたく手も足も出せぬという状態であります。かつて平和な理想郷であつたところのこれらの療養所は、今やまつたく百鬼横行のちまたと化しつつあるのであります。  さらに寒心にたえないことは、これら犯罪者に限つて、必ず折を見て再び療養所を脱出して一般社会に潜入し、傳染の根源となるばかりか、凶惡犯罪の害毒を流すに至るのでありまして、今にしてこれが対策を講じなければ、その社会的害毒の及ぶところ、眞に膚にあわを生ずるものがあるのであります。  さらに問題となりますのは朝鮮人患者のことであります。現在朝鮮人癩患者は、一療養所に約四、五百名くらい收容せられておるのでございまするが、戰前朝鮮の小鹿島にありました約六千名の癩病患者は、終戰と同時に日本人職員が引揚げたのを機会に、全部これが脱出をはかりまして、この脱出いたしました六千名の癩患者の大部分は、あらゆる手段を講じて、日本に向け多数密航してきたのであります。その一例を申しますると、兵庫縣の尼崎市におけるがごときものでありまして、これら朝鮮人患者は、日本において一團を組織いたしまして、不良なる日本人または朝鮮人と共謀いたしまして、いろいろ凶惡なる犯罪を犯しつつあるのであります。そして、彼らの一部が万一警察に捕われましても、前に申し上げた通り、何ら処罰を受けることなく、そのまま癩療養所に再び收容され、彼らはますます増長いたしまして、療養所内の秩序を乱し、勝手氣ままな生活をした後、折を見て再び三たび脱出するという順序を繰返しておるのでございまして、療養所は、この種犯罪者の安全なる温床となつておるのであります。これらの点につきましても何らか緊急の処置を講じなければ、單に一般社会への癩病の傳染の危險があるばかりでなしに、社会の安寧秩序の上から申しましても、実に重大なる事態に至ることを憂うるものであります。  次に、一般に癩病患者が発見せられた場合、從來は警察署においてこれが收容方処置を講じておつたのでありましてきわめて円滑に運営せられたのでありまするが、現在におきましては、これが全然警察力のないい保健所において行われておりますので、いろいろその点におきまして障害・摩擦を起しておるのであります。この点、何らか、あるいは他の強力なる收容方法を考慮するとかいう対策が要望せられておるのであります。  私どもの見るところによりますと、近來厚生省の方針はあまりに結核対策に重点をおき過ぎ、癩対策に対しては関心がないようでありまするが、の点は、ぜひとも当局の猛省を要望するのであります。これは、單に予算の面において現われておるばかりでなしに、他の部面においても、一例を申し上げますると、現在の医藥品の配給は、先年の配給機構改正の当時、これによつて今後は医藥品は円滑に出まわると当局が確約せられたにかかわらず、今年一月から三月までに約八百名近くを收容いたしておりますところの一癩療養所に配給せられました医療用繊維製品は、驚くなかれほうたいは一本もないのであります。ガーゼがわずかに三千メートルという状態であります。御承知のごとく癩患者は、ほとんどすべて全身に多数の傷をもつておるのを常といたしまするが、療養所長のお話によりましても、この夏は、十分傷のほうたい交換ができないために、おそらく入院患者の傷をもつておる者は全部うじがわくということを言つておるのであります。これに反しまして國立結核療養所は、日光が直接患者に当ると有害であるという理由から、厖大なカーテン地が割り当てられておるということを聞いておるのであります。この一例をもつていたしましても、前途に光明のない、われらの犠牲者たる癩患者に、さらに温かき同情ある恩惠を與えられんことを熱望するものであります。  さらに、これらの癩療養所に勤務いたしておりますところの職員の待遇問題であります。これらの職員は、まつたく犠牲的崇高なる同胞愛に燃え、自己の危險をも顧みず、みずから進んで療養所内に入りこんでおるのでありまして、その待遇は最も意を用いなければならないことは当然であります。御承知のごとく、癩患者のほとんど大多数は、癩病そのもので死亡する者は少く、大多数の死亡の原因は結核であります。癩療養所に從事しておるところの職員は、予防消毒をいたしますから、癩病には感染しにくいのでございまするが、空氣傳染をいたします結核が結局癩患者からうつされまして、惨澹たる状態になることが非常に多いのであります。ところが、現在これらの職員の待遇はきわめて粗惡でありまして、漸次職員は減少の一途をたどるばかりでなしに、看護婦のごとき、ほとんど志望者がない実情に遭遇しておるのであもます。これに対しましても、ぜひとも從業員を増員し、十分なる休養の期間を與え、また職階制に対しても深甚なる考慮を拂うべきものであります。さらにまた、草津問題の例に徹しましても明らかでありますが、これら職員に万一過失あつた場合に、その責任を明らかにすることは当然でありますが、その処罰にあたりましては、仕事の性質に鑑み、苛酷にわたらないよう特に十分注意を要すると存ずる次第であります。  最後に、癩に対する学術研究についてであります。現在の癩療養所は、研究機関きわめて貧弱でありまして、かつては世界に最も卓越しておりましたわが國の癩研究も、次第に列國より落伍せざるを得ない現状であります。たとえば、癩病の特効藥である大風子油は、目下はなはだ入手困難でありますが、これに代るべきものとして、すでに米國においてはズルフオン剤の一種たるブロミンの効果が実証せられ、わが國の癩学者もこれを十分認めておるのでありますが、研究施設なきため、これが根本的基礎研究の不可能なる現状でありまして、かつて原子爆彈またはペニシリン等の研究に関し、当局の無理解から百年の悔を残した愚かさを繰返さんとしておるのであります。國家財政の緊迫しているわが國の現状として、癩療養所内に十分なる研究施設を設けることの不可能なることは当然でありますが、少くとも癩療養所に勤務される有能にして忠実なる医員をして、内地留学の制度のもとに、内地の各大学の研究室に派遣し、これが研究をなさしむるならば、十分その目的を達し得るのみならず、職員優遇の一端ともなるものと考える次第であります。  以上の諸点につき、まず法務総裁に対し、第一に、いかなる理由により癩患者の犯罪人は一般人と同じく取調べ並びに処罰を受けておらないのであるか。第二、癩患者の犯罪に対しこれを処罰拘禁しておられるといたしますならば、いかなる方法によつてこれをなしておるか。第三に、いかなる理由により、癩患者とその共犯がある場合に、その共犯者たる健康人もまた癩療養所に入れなければならないか。以上の諸点につき、法務総裁の明確なる答弁を要求する次第であります。  次に厚生大臣に対して、次の諸点の答弁を希望する次第であります。第一に、朝鮮人癩患者の帰國を連合軍と交渉の上、朝鮮の癩療養所にこれを送還する方法を講ぜられてはどうか。第二には、癩療養所内に犯罪者を收容する特殊施設——刑務所のごとき施設を緊急に設ける意思があるかどうか。第三番目は、癩患者收容に対し、單に無力なる保健所のみに一任することなく、強力なる措置を講ずる意思があるかどうか。第四番目に、癩対策を結核対策同様重点視し、予算の面においても医藥品配給の面においても、これが実現を期する御意思があるかどうか。第五は、癩療養所の職員待遇に関し、速やかに連合軍関係方面に十分の交渉了解に努力されて、その増員並びに職階制につき深甚の考慮を拂わるること。第六、癩療養所の医員に対し内地留学の制度を設け、癩研究の発展に資せらるる御意思があるかどうか。以上の諸点につき厚生大臣の御答弁を要求する次第であります。  以上私どもは、対策のよろしきを得れば、今後十箇年をもつてわが國から全部の癩病を撲滅一掃し得ると信ずるものでございまするが、われら健康人の犠牲となり、孤独なる生活をしておる不幸なる同胞のため、いま少しく眞劍かつ温情ある施策の講ぜられんことを熱望いたしまして、私の緊急質問を終ります。(拍手)     〔國務大臣鈴木義男君登壇
  16. 鈴木義男

    國務大臣(鈴木義男君) 榊原君から癩患者の犯罪について御質問でありまするが、癩患者の犯罪はまことに困つた問題でありまして、もとより檢察当局としては、区別をして取扱うようなことはないのであります。しかしながら、癩患者であるということを発見いたしますれば、できるだけ通常の刑務所に收容せずに、特別の刑務所に收容をするか、あるいは病院に送付いたしまして、病院について調査をし、あるいは取調べを継続するというようにいたしておるのであります。ただいま刑務所に特別の病監を設けて癩患者を收容しておる所がありまするが、癩患者としてはいつております者はごくわずかでありまして、大体は通常の癩病院の方に委託しておる次第であります。処罰につきまして決して差別いたさないのでありまするが、あるいは御指摘のような事実が絶無とは保せられないのでありますから、具体的に御指示くださいまするならば、十分に取調べて善処いたしたいと考えるのであります。殊に共犯者であるから、健康であるのに癩病院に送つてしまつたというようなことは、乱暴きわまる話でありまして、許しがたい人権蹂躙でありまするから、そういう事実がありまするならば嚴重に処置いたすつもりであります。法務廳といたしましては、ぜひ特別の癩患者のための刑務所を施設いたしたいということで、数年前から予算提出しておるのでありまするが、國費多端であるためと、この問題に対する認識が十分でないためと伴いまして、いつもこの予算が削られておるような次第でありまして、やむを得ませんから、厚生大臣と交渉をいたしまして、近く國会病院のうちの適当なるものを、せめてその一部でも開放していただきまして、刑務所に代用するような設備にいたしたいということを考慮いたしておる次第であります。なお問題の重要性に鑑みまして、できるだけ努力いたすつもりであります。
  17. 竹田儀一

    國務大臣(竹田儀一君) 参議院の引揚同胞委員会に参つておりまして、榊原議員の御質問の全部を聽きませなかつたので、あるいは落ちるところがあるかもしれません。その場合は、さらに答弁をさせていただきます。  癩病患者を保健所等で発見いたしますと誰その患者が病毒傳播のおそれがあるということになりますと、癩予防法の第三條によりまして、都道府縣知事は警察と協力いたしまして、これらの患者を國立療養所に強制入所させることができることに相なつております。  なお、厚生省の癩予防対策が結核対策のように重点的ではないのではないかという御質問であります。決してそういうわけではないのでありまして、厚生省といたしましては、現在約二千三百の未收容者がありますが、これを全部收容いたすべく努力をいたしております。そのために療養所の病床も約一万の準備がありますので、現在は十分これらの人を收容し得ることと考えております。なおこのほかに、これは大よそでありますが、約千名の患者があると考えられますので、この発見にも大いに努力をいたしたいと存じておるのであります。昨年癩予防法の補助率を改正いたしまして、在來の六分の一を二分の一に引上げましたので、これらの対策も今後円滑に行われるであろうと期待をいたしておるのでありまして、決して軽視いたしておりませんことを申し上げておきます。  なお、職員の待遇が十分でありませんことはまことに残念でありますが、厚生省といたしましても、これら職員の待遇向上には常に努力をしてきましたが、特に近く実施されまする職階制によりまして、でき得るだけ均衡をはかり、改善をいたしたいと存じておるのであります。なお、きわめて危險の多い、過労なこれらの從業員の職務に対しましては、特殊勤務手当というものも支給いたしたく、目下関係方面と折衝中であることをお答えいたしておきます。  なお研究機関の拡充について、大いにやれという激励のお言葉をいただいたのでありますが、この問題はきわめて重要な問題でありまして、現在國立予防衞生研究所及び癩療養所等におきまして、これが研究をいたしておるのであります。プロミンのお話もありましたが、聞きますところによると、内地にも、それと同程度くらいのものも大阪方面で発見されたるやに聞いておるのでありますが、まだ十分なる実績をあげたと聞いておらないことを残念に思つております。今後ともでき得る限り予算を計上いたしまして、万全の処置を講じたいと思つております。(拍手)      ————◇—————
  18. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 鉄鋼増産に関する緊急質問を許可いたします。多賀安郎君。     〔多賀安郎君登壇
  19. 多賀安郎

    ○多賀安郎君 私は、鉄鋼生産に関し商工大臣に質問いたしたいと思うのであります。  全産業復興の不可欠の要素であり、かつまた多くの場合、その國、その民族の文化的経済尺度ともいわれる鉄鋼が、終戰以來ややもすれば重点産業の圏外に追出されたかの印象を與え、忘れられがちの感なしとしないことは、わが國経済再建の途上において、きわめて遺憾に存ずるのであります。敗戰によつて手痛い打撃をこうむつたわが國産業生産水準は、今日わずかに戰前の三割を維持するに汲々たる状態であり、わけても、重要産業基礎資材とも申すべき鉄鋼に至つては、文字通り壊滅的打撃を喫し、戰前の一割程度にすぎないという惨澹たる現状であります。なるほど、昨年一月ごろにおきましては、一應石炭とともに最重点産業のわく内にあつたのでありまするが、昨年十月ごろからは、電力事情等の制約から、再び縮小再生産の過程に入り、一月からは遂に十万トンの線を割つて、二年前の悲境に追いこまれてしまつたのであります。  申すまでもなく鉄鋼の用途は、單に大砲や軍艦のごとき兵器に限られているのではなく、食糧増産のための農機具にいたしましても、交通施設にいたしましても、平和的國民生活の文化水準は、すべてをその基礎資材を鉄鋼にまつているのであります。さればこそ、極東委員会におきましても、わが國に保有すベき鉄鋼が二百万トン、鋼塊三百五十トンがそれぞれ論議され、さらにストライク案なり米國國務省案として新聞に傳えられるところによれば、このような極東委員会の数字をはるかに上まわるごとき情勢にあるのであります。もちろん、許可されるこれらの鉄鋼は、産業機械なり建築復興資材として、あらゆる平和的、文化的用途への自由が認められるのであります。  しかるに、現在までの調査によれば、わが國土内の鉄鉱石は、生産許可数量をフルに継続するとすれば、わずか数年間にして國内の鉄鋼源は枯渇し、その後は全面的に輸入にまつほかないという、眞に寒心すべき状態におかれているのであります。あまりに目先の事象にとらわれるに急にして、このような鉄鋼事情に目をおおうならば、基礎工事なき百年の設計に落ちこみ、日本経済の再建など、とうてい望むべくもないと思うのであります。  そこで、これが対策の一つとしては、必然的に少量をもつて最大の効果をあげるべく、鉄鋼の品質向上による性能の完全なる発揮を考究し、一方においては、不足する数量の最小限を輸入の懇請にまたなければならないと思うのであります。かかる方向に指向いたさない限り、わが國の工業水準が世界市場の列に伍していけないのみならず、國内の需要にさえ、きわめて近い將來に行詰りを喫することは必至であります。鉄鋼源を無限に藏すると言われる米國を初め、鉄鋼源に惠まれたその他の先進諸國におきましても、鉄鋼源節約の目的を含めた優良鉄鋼の生産に非常なる苦心と努力とを注いでおる現状であります。  わが國におきましても、近時この点を重視して日本鉄鋼協議会なり、全國鉄鋼復興議会なりが、鉄鋼生産を担う労働者並びに業者諸君とともに、この線に沿うて活動いたしておることは、きわめて適切な行き方であると思うのであります。しかしながら、鉄鋼の生産対策として、これら当事者の適切なる努力と車の両輪をなすべき鉄鋼行政の不備弱体は、今日わが國における鉄鋼生産の上に大いなるネツクをなしていると思うのであります。すなわち、鉄鋼行政の拡大強化が強く要請されているゆえんであります。  現に、鉄鋼とともに重点産業のわく内にある石炭、電力、肥料等に対しては、それぞれ石炭廰なり電力局なり肥料部なりが確立されて、いずれも行政の一元化のもとに、強力にその施策が推進されているのであります。もちろん、行政整理によつて苦しい國家財政歳出を抑制いたすことは現下の急務であります。しかしながら、重点産業、特に鉄鋼の飛躍的増産を通じて全産業施設にその基礎を與え、現下のインフレーシヨンを根本的に解決する方途も、軽く扱うことのできない問題であると思うのであります。  しかも、私の強く主張いたしまする鉄鋼行政の拡充強化は、國家財政歳出を伴う人員増加ではないのであります。すなわち、かつての鉄鋼局が、終戰後は鉱山局に属する一鉄鋼課に圧縮され、さらに同じ系統の鋳鋼、鍛鋼、鋳鉄等は、いずれも機械局に配置されているのであります。鉄鋼に限らず、かくてはすべての行政体系はばらばらに分裂して、総合的計画性を失い、事務の複雑と非能率の集約的形態を露呈いたすほか何ものもないのであります。なるほど鉄鋼局が鉄鋼課に縮小されたのは、鉄鋼行政の権限が廣汎に日本鉄鋼協議会に委讓されたからでありましようが、鉄鋼行政の権限が依然として政府官廰に集中され、さらには司令部との連絡、独占禁止、過度経済力の集中排除、企業の整備、賠償工場の措置、残存工場に対する生産方策、鉄鋼統制令廃止による生産資材の割当等のごとく、その所管内容がきわめて厖大なるにおきましては、一鉄鋼課をもつてしては、とうてい背負いきれるものでないことは当然と言うべきであります。むしろ鉄鋼課であつた戰時中は、軍部の一方的傳達機関にすぎず、その事務はきわめて單純であつたのであります。國家財政歳出に何らの影響をもたらすこともなく、現存し分散している同じ系統の行政機関を集約いたしまして、鉄鋼課を鉄鋼局に昇格せしめ、少数精鋭の能率主義行政によつて、一元的総合計画のもとに優良鉄鋼の増産をはかることが、深刻なる現下のインフレーシヨン克服に欠くベからざる大きな要素となることを私は固く信ずるのであります。  すでに、米國の対日救済費四億二千四百万ドルは昨三日の下院歳出委員会で承認され、外資導入も好都合に進んであります。從いまして、これが受入態勢の整備はきわめて喫緊であると思うのであります。私は、わが國産業復興に不可欠の條件の一つとして、鉄鋼の生産状況にきわめて大きな関心をもたざるを得ないのであります。政府は、わが國のきわめて乏しい鉄鋼源の現実の上に立つて、いかなる対策を講じておられるか、また鉄鋼行政のあり方についてどう考えておられるか、商工大臣の御答弁を承りたいと思います。(拍手)     〔國務大臣水谷長三郎君登壇
  20. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 多賀議員の御質問にお答えいたします。  鉄鋼が日本経済再建のために不可欠の基礎物資であることは申すまでもないのでございまして、商工省といたしましても、決してこれが生産を軽視しておらないのでございます。特に御案内のように、本年度経済再建計画の初年度にあたりまして、引続き石炭の増産、電力の補修、輸送力の増強が要請されておるのでございますが、しかも、これらの三つの基礎物資の増産が成るか成らないかということは、一は鉄鋼増産の裏づけいかんにかかつておる問題でございますがゆえに、商工省といたしましては、昨年度以上の強力なる施策を鉄鋼に注入して、全力を捧げていきたいと考えておる次第であります。  第二の、今後の鉄鋼政策でございますが、本年度の鉄鋼生産は、さきに発表いたしましたように、昨年度に倍加されまして、普通鉄鋼材百万トンを中心とするものに決定したのでございますが、その後関係方面から強い意向もございまして、さらに普通鉄鋼材百十四万トンを中心とする計画を目下檢討中でございます。もちろん、これが目標の即時達成のためには、相当量の輸入原料を必要とするものでありまして、さいわい連合軍の好意によりまして、鉄鋼石、原料炭等の原料の輸入もほぼ見透しがつきまして、一部はすでに入港しつつある現状でありますが、なおこれら原料の輸入確保及びその他原料・資材輸送力の確保には困難が予想されておりますので、今後も引続きあらゆる努力を傾倒いたしまして、目的達成に遺憾なきを期する所存でございます。なお一層の國民的協力をお願いする次第でございます。  第三は、鉄鋼局設置の問題でございますが、以上述べましたような趣旨によりまして、商工省といたしましては、何とか鉄鋼増産の機構措置を講じたいと考えておるのでございますが、御案内のように、ただいまはできるだけ行政機構を縮小しようという傾向に出ておるのでございますがゆえに、御質問の鉄鋼局が設置されるかどうかということは、ひとえに國会方面がいかにこの問題を御推進くださるかどうかということにかかつておるのでございまして、われわれは、國会の意思がはつきりいたしますならば、その意思を尊重いたしまして善処するつもりでございます。(拍手)     —————————————
  21. 山下榮二

    山下榮二君 大藏大臣演説に対する質疑は延期し、明五日定刻より本会議を開きこれをなすこととし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
  22. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山下君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十六分散会