○上
林山榮吉君 去る二十
日本議場において、
芦田内閣総理大臣のきわめて抽象的な
施政方針演説が行われたのでありますが、この際私は
民主自由党を
代表いたしまして、
総理大臣及び
関係閣僚に対して率直なる
質疑を試みたいのであります。
すでに
総理大臣も御
承知のごとく、
議会の第三勢力である
民主党が
中心とな
つて、
難産に
難産を重ねて先般やつとでき
上つたのが
芦田内閣でありまするが、これは
社会、
民主、國協の三党が解散を恐れてできた連立
内閣であり、その性格は言うまでもなく、
國民の世論に圧倒されて、政策の行詰まりによ
つてもろくも退陣してい
つた社会党連立
内閣を偽裝したところの延長
内閣であると言わねばなりません。(
拍手)ただ前
内閣の性格と違う点は、朝に左派を切るべしと主張した
民主党の
諸君が、夕に急轉して左派の政策をのみ、左派の加藤、野溝両君を入閣せしめて、世間をしてあつと言わしめたところに性格の相違があるだけであります(
拍手)かくのごとく複雑にして不安な基盤の上に立
つて組織された
内閣でありまするがゆえに、ひいて
首相の
演説も、國際的に微妙な今日、敗戰
経済のみじめなる祖國を再建するの迫力を
國民に全然感ぜしめなか
つたということは、遺憾の極みであると思うものであります。
まず私は、外交の問題に
関連して質してみたいのでありますが、去る十七日、あわただしい世界
情勢の中に、
アメリカの
議会において発表されたるところのトルーマン大統領の声明に対して、
日本國民は重大なる関心を寄せておるのであるが、占領下における
総理大臣といたしまして、この声明をいかに解釈し、いかに受け取
つておるかということを、この際はつきり発表せられたいのであります。なぜかと言えば、
首相は
施政方針演説の中に、今や世界は第三次大戦の可能性におびえておると言われたのでありますから、この際において、この声明をいかに解するかということを私は
要求いたしたいのであります。殊に総理は発言して、
政府が特に注意を傾けんとする点は、現在の環境においてわが内政の処理をなすにも、まずも
つて世界的
関連においてなすべきであると強調しておるのであるが、追放によ
つて極右的政党や極右的國体のない今日、國内で行われておる
民主主義破壞の活動に対しまして、いかなる
態度をも
つて臨まんとせられておるのであるか、この
決意をばこの際明らかにしていただきたいのであります。
さらに重要なることは、本議場において
首相は
日本人の血液の中には
凶暴性があるから、これを刈りとらねばならぬと世界に向
つて宣言したのであるが、一体これは河を
意味するのであるか。(
拍手)この一事こそは、まさに私は
日本國民として聞き捨てならぬところの暴言であると言わねばならぬと思うのであります。(
拍手)われわれは、新憲法において戰爭を否定し、平和主義を高く宣言したのであるが、
首相は今やこの宣言が虚偽であると修正をしたのであります。言うまでもなく、いずれの民族にも一部には
凶暴性があるし、もちろん
日本人の一部にも
凶暴性の行為のあることは率直に認めるのでありますけれども、血液の中に
凶暴性があるということは、單に制度の
改革や教養を高めることによ
つて、これを根本的に刈りとることはできないのであります。今やわれわれは、講和会議を迎えて世界平和に貢献せんとの
熱意に燃えておるのであるが、しかも一方には第三次世界大戰に世界はおびえておると
首相は発言をしながら、わが党
代表者のこれに対する
質問に対し、何ら
國民を安心させるほどの答弁をなし得ない今日、
日本人の血の中に
凶暴性があるからこれを刈り取らなければならぬと宣言するに至
つては、史上まれに見るところの認識不足の暴言であると私は信ずるのであります。(
拍手)さらに現
内閣も、近くまた実現するであろうところの
内閣はもちろんのこと、外資導入について相手方の了解をより求めなければならぬ今日において、世界に向
つて一種の大きな疑問を投げかけたということは、いかに口に平和主義を強調いたしましても、
國家の一大損失であるといわなければなりませんが、これに対する総理の見解を質したいのであります。
さらに芦田総理に質したいのは、三党連立の基盤であるはずの政策協定について、その基本
方針を伺いたいのであります。三月十三日、大藏大臣北村君は記者團との会見において、政策協定は三党の連帶責任であるが、具体的には未だきま
つていないので、二十三年度
予算は政策協定とは別個に編成するとの、無責任きわまることを言明しておるのであるし、
総理大臣の
演説にいたしましても、これを明確にしていないのであるが、政策協定が具体的に
決定せずに、單に了解事項つき
程度で抽象的に協定しておるということは、まさに
芦田内閣がよ
つて立つ重要なる基盤が脆弱であることを証明しておるものであり、政権獲得のためには、のめないものをのみ、実行性なきものも協定しておかねば都合が悪いという謀略的の印象を強くするのは、健全なる
民主政治のためにはなはだ遺憾とするところであります。(
拍手)はたして芦田
首相あるいは西尾
國務大臣等は、当面の緊急
対策とも見るべきこの政策協定をして、二十三年度の
予算編成に取入れて実行するだけの
決意があるかどうかということを伺いたいのであります。
殊に、大局的見地からいま少しく具体的に政策協定の内容に触れてみるならば、それ自体矛盾を感じ、実質的にば價値のないものが多いと思われるのであります。すなわち、まず第一に軍事公債利拂停止の問題であるが、これは協定によれば、軍事公債の利拂停止的処理、その
方法は今後処理
委員会を設けてきめるとして妥協が成立しておるのでありまするが、すでに社民両党の間においてこれが見解を異にしておるというほどのあいまいな協定は、一体どういうふうにこれを受け取ればよいのであるか。もしかりにこれを実行に移すとすれば、満州事変以來終戰まで軍事費として明かに使用された公債は約七百九十億円で、その利拂は年額二十七億三千万円であるが、これを停止した場合、公債は九割五分金融
機関に保有されて、預金と見合
つておるので、その処理はただちに金融
機関の收支勘定に大きく
影響してくるが、これが金融
機関の損害を一体何によ
つて埋めるつもりであるか。すでに第二封鎖預金の切捨ても、金融
機関の整備が最終段階に進んでおる今日では困難であるから、結局
政府がその損失を負担しなければならぬことになるのであ
つて、二十三年度における
財政負担の軽減はおそらく問題になるまいと思うし、処理
方法のいかんによ
つては、かえ
つて戰爭犠牲の負担公平化の目的にも反する結果となるのであります。要するに、
インフレの進行に伴
つて公債が実質的に漸次処理されている今日、実際問題として鳴物入りで宣傳するほどの効果があるのであるか、良心的な答弁を
要求するものであります。かかる無
意味な協定を何がゆえに結ぶのであるか不明であるが、これはおそらく、これのみを目的にしたものでなくして、そのねらいは、あたかも衣の下からよろいをのぞかせているごとく、究極のところ、金融
機関の國有國営あるいは國管というようなことを目ざしているところの
社会党
諸君のイデオロギーに基くものであろうと考えるのであります。
要するに、軍事公債利拂の問題と
程度や内容の差こそ違え、大体以上のようなあいまいな結果になるというのが政策協定全般を通ずるものといわなければなりません。すなわち國富調査税にしても、その性格は第二財産税的のものであり、
徴收額はわずかに十億円
程度のものであると言われる。また第三次農地
改革にしても、第二次農地
改革を完了し、第三次農地
改革を準備するというのであ
つて、
民主党の案が重点であるのか、それとも
社会党の案が
中心であるのか不明瞭であるが、かりにこれを
諸君が実施してみたところで、増産体制の
確立にもならねば、健全なる
農村民主化にもどの
程度役立つかということは、その質と量とを考え合わせてみるならば大して期待のもてる問題ではないと思うのであります。(ノーノー)かくのごとく解剖してみると、結局三党協定は、世間に言われるごとく、非常に政治的な含みをもつものであ
つて、
社会党左派を引込むための形式的のもので、何ら権威のあるものではないと思うのであるが、どうであるか。(
拍手)この点を質しておきたいのであります。
次に、大藏大臣及び
安本長官に質しておきたいことは、明年度の
予算編成についてであります。
予算編成は未だ
決定をせずに、やつと四月分の暫定
予算が提出できるか、あるいはこれすらも提出できずに、四月から
予算がなくなるはめになるのではないかというよような
状態におかれておるのであるが、はたしは
政府は、五月以降の明年度
予算を最近提出するところの見込みがあるかどうか、率直に披瀝せられたいのであります。なお、四月分の暫定
予算の中に六・三制の
予算あるいは水害
対策費がはい
つておるのであるかどうか、この点を明瞭にせられたいのであります。
また
総理大臣にしても
安本長官にしても、
インフレ克服のための具体的施策、通貨安定に関する具体案等を何ら示さなか
つたばかりでなく、
総理大臣がその
施政方針演説の中で、
インフレ高進にかかわらず
國民の実質的
生活が向上したと説明するに至
つては、
経済政策に対するところのナンセンスであるといわなけばなりません。今や
國民は、住むに家なく、着るにも食うにも非常に欠乏しておるのであるが、実質的に
國民の
生活が向上したということは一体何を
意味するものであるか。これはあたかも片山
内閣が、千八百円べースで去年の十一月ごろには一戸当り四百円の黒字が出ると言
つて、
國民から笑われたと同じたぐいの言いぐさであるといわなければなりません。(
拍手)かかる貧困なる認識の上に立
つて、
國民経済の実力に相應する実質的な
健全財政を堅持しつつ、
インフレーシヨンの抑止と通貨の安定を
確保する建前において、はたして
予算の編成が可能であるかということを明確に質したいのであります。殊に
政府は、この際
インフレ対策からして浮動購買力を吸收すると説明しておるのであるが、年度末の
支拂はさらに七百五十億円、租税の滯納は、いくらかとれたといたしましても三百五十億円、合計一千億円を突破するところの浮動購買力が、さらに放出されていくわけであるが、これに対して
政府は何らか具体的
方策をも
つておるのであるかどうか。
殊に、長期の預金に対するところの免税をいかに考えるか。あるいは預金を吸收する建前から、もし非常処置を金融面にしなければならないような場合においては、長期の預金に対しては特典を與え、あるいはたんす預金のごときものに対しては、これを割引きして換算をするというようなことについて、
政府は研究の準備をする必要があると思うが、これに対していかなる考えをも
つておられるのであるか。この際、浮動購買力に
関連いたしまして質しておきたいのであります。
そこで、まず檢討せねばならぬところの重大なることは、明年度
予算の編成の前提となる
物價の
改訂をどの
程度に、しかもいつからこれを行うかということであります。もし現行
物價で
予算を編成するとすれば、補給金は数百億円の支出となり、鉄運、通信の両
特別会計は毎月数百億円の赤字となるのであるが、この
財政支出を單に
國民の税金のみで賄うということは、担税能力が頂点に達した今日、許さるべきことではないと思うのであります。さればとい
つて、
マル公を極端に
引上げて利用者負担とすれば、
予算の歳出は直接にこそ増加しないが、
予算に使う物資の單價の値上りから、結局
予算はそれだけ多くの支出を要することになるのであります。もしこうな
つた場合、特に考えなければならぬことは、
物價高にあえぐ
國民生活の苦しさをして、さらにどん底に突き落されねばならぬということであります。
そこで具体的に伺いたいことは、大体何割くらいの
値上げをする
方針であるか、さらに全面的な
値上げをやるのであるか、あるいは一部の
改訂をやるのであるか、この点であります。さらに、前
質問者よ
つても尋ねられたのであるが、
政府の答弁がないので質したいのは、先般片山
内閣の命取りとな
つたところの
運賃値上げの問題である。これをどの
程度に
値上げし、いつから実施するかということについても、この際具体案を示されたいのであります。
殊に明年度の
予算編成上困難な問題は、歳出の厖代化に対して
財源、となる歳入がとうていこれに伴わぬので、この不均衡をいかに処理するかということが重大であると思うのでありまするが、今大藏省に集ま
つておるところの
要求額は、現行
物價水準においてでさえ五千五百億円といわれ、これをかりに傳えられるがごとく五割くらいの
値上げをいたしたといたしましたならば、その金額は七千五百億円というような厖大な金額になるのでありまするが、これに見合うところの歳入は、
インフレによる増收を見込んでも、三千億円
程度というのであるから、差引
要求額に二千五百億円も不足する結果となるのであります。これに対して、要は
政府といたしましては、きびしい査定をやるはずでありまするが、表面上いかに公約し、いかに弁解をいたしましても、
教育文化政策にあまり
重きをおかなか
つた片山
内閣同様、現
内閣も六・三制実施の
予算を三たび犠牲にし、
能率増進と行政の
民主化を前提とするところの
行政整理をあいまいなものにするとともに、失業
対策費、
経済再建費、戰災復興費、東北・関東の水害
対策費を初め、九州地方の漁船集團災害の
対策費のごとき、当面緊急の諸経費にはなはだしく
影響するのではないかと思うのでありまするが、これに対する
政府の具体的
所信を明らかにせられたいのであります。殊に文部大臣は、六・三制に関するところの追加
予算が実現をしない場合は文部大臣をやめると言
つていたのであるが、追加
予算は二回もこれが実現しなか
つたにもかかわらず、今また文部大臣とな
つてこの問題と取組んでおるのであるが、この際文部大臣としての感想伺いたいのであります。(
拍手)
さらに進んで、
予算と
関連をいたしまして強調せなければならぬことは、税制の根本的
改革であります。
政府は税制の
改革に対しましていかなる構想をも
つておるのであるか、いまだ徹底を欠くので、大きなものについての説明を求めたいのであります。一部
政府の説明するところによれば、税制
改革の
一つの
方法として、わが党の基本政策のごとくああまり徹底はしていないけれども、
勤労所得税や
法人税の軽減を考えているということであるが、この構想はもちろんわれわれも賛成するものであります。しかし要は、このために三百億円を予想される税の減收をして、どうしてこれを埋めるかということが重要な問題であると思うのであります。
政府はこれが代り
財源としてあるいは賣上税を
考慮しているかもわからないが、が十分にあるといわなければならぬのであります。わが党は税制
改革の
根本方針として、特別のものを除く
一般の税率を思い切
つて軽減し、も
つて滯納者をなからしむるところに
財源を
確保することができると考え、権威ある調査会を設置して
対策を檢討中であるが、承
つておきたいのであります。
もちろん、赤字公債が不可とされ、
健全財政を守り拔かんとすれば、税收の増大を、しかも確実にこれをはからなければならぬことは当然のことであるが、片山
内閣の時代より
芦田内閣にがあるということは、まことに遺憾であるといわなければなりません。しかし、この滯納の
原因は片山
内閣が
所得税の更正法定をしたところにあるのであり、しかも、農漁村や
中小商工業者等の申告に対して十倍というような高額の
決定をしたところに無理があるのであります。これに対しては、さらに税務官吏等も反省されなければならぬ点が多いが、
政府より各税務署へ不当な税額を強制的に割当をしたところに大きな
原因があると思うのであります。よ
つて政府といたしましては、更正
決定の期間を延期して、これが大きなでこぼこを調整する用意ありや否や、この点を伺いたいのであります。
特に最近注目せねばならぬ現象は、各地方の税務署や
労働組合に巧妙なる一種のフラクシヨン活動があ
つて、申し立てる納税者に対し、これは君らの
代表者であるところの
國会議員がきめたのであるから、いまさらどうにもならないと反駁している事実、一方外部からは過激主義者が陳情現場や各職場大会において
演説でアジリ、故意に
政府や
議会に悪感情をもたしめていることが最大の
原因であると思うが、
政府はかかる言動に対していかなる
対策をも
つているか、この点を質したいのであります。
最後に、労働
対策について具体的に質してみたいのであります。片山
内閣倒閣の責任者の一人である
社会党左派の加藤君が進んで大臣に就任したということは、まさにふしぎとされているところであるが、この際
労働大臣にまず聽いてみたいことは、片山
内閣の労働行政と現
内閣のそれとは何か根本的に違
つておる点があるかということであります。すなわちまづ第一に、
社会党
内閣が世論に押されて
行政整理の断行を声明し、その基準まで示してきたのであるが、現総理の発言によれば、二割五分の天引の
行政整理を片山
内閣同様やりたい、こういう答弁であるが、加藤君は大臣就任以來、片山
内閣の
天引整理は不合理だから、自分としてはやらないつもりである、こういうことを発表しているのであるが、これをいかに取扱わんとするのであるか、特に加藤君に
お尋ねをいたしたいのであります。
今日労働問題の
中心は、言うまでもなく
生産を前提とする適正
賃金の安定であり、勤労者に食える
賃金を保障することであると思うのであります。ゆえに
賃金対策の根本は、高
能率高
賃金の原則によ
つて労働の成果を高めるとともに、それに應ずるところの十分な
賃金を
支拂うことにあるのであるが、しかしながら、官といわず民といわず、過剩な人員をそのままにして、全部の者に
國民の犠牲において高い
賃金を
支拂うことのとうていできないということは、敗戰後における
経済状態を見ればよくわかることであり、ソ連においてさえスタハノフ運動が起
つた原因を考えてみれば判然とした問題であるから、人員の整理は、
労働者に十分な
賃金を
支拂い、これを正しく待遇するためにも、
生産を伴う失業
対策と併せて適正に行うということが必要であると思うが、私は
労働大臣の
所見を特に質すのであります。
第二に、二千九百二十円ベースの
支拂に対する大藏大臣と
労働大臣との
國会における重大なる答弁の食い違いについて質したいのであります。大藏大臣は、
給與委員会案を
組合側が承諾しなくても勤労を対象として
支拂うと答弁しているのに対して、
労働大臣は、これを承認した
組合のみに
支拂うべきであると、ただいまこの壇上がら答弁したのであるが、これは閣内の不統一ぶりを露呈しているばかりでなく、労働
爭議をさらに紛糾せしめた
原因がここにあると思うのであるが、これに対していかなる考えをも
つているのであるか。殊にこの場合一言したいことは、
政府職員の俸給等に関する法律が未だ
國会を通過せざる去る十九日、
國会の権威を無視したところの暫定
給與支給準則を無視して、各省に
支拂の指令を
政府はしているばかりでなく、
委員会案を承認した
組合のみにこれを
支拂うことに
決定したというのであるが、これに対するところの確然たる根拠をば明らかにせられたいのであります。
さらに第三に、
労働大臣は、労働省の職員
組合の
申入れであるところのスライド制の実施と
組合專従職員の問題を確認したというが、これは一致せざるところの
政府の
方針であるのであるか、それとも加藤君が勝手にや
つたところの確認であるのか、この点を明らかにせられたいのであります。ただいま官公労の專從職員の数は約一万人と称せられ、これに
支拂うべきところの年俸は一億二千万円と称せられているが、この人々は
組合の仕事をしているのであ
つて、大藏大臣が言うがごとく勤労を対象にしているのではないと思うのであるが、この点をどういうふうに考えるか。殊に全逓の
委員長等は
政府より自動車まで提供され、
組合に対するところの
政府の補助金のごときは莫大なものであるというが、事実であるかどうか。もし事実であるとするならば、これは憲法第八十九條及び
労働組合法の違反であるばかりでなく、
政府にかくのごとく秩序せしめるということは、
組合の健全化、
組合の自主性尊重の建前よりして適当であるかどうか、われわれは疑問をもつものであるが、加藤君の
所見を質したいのであります。
殊に、最近
労働大臣の言動について不可解なのは、認証式直後における記者会見において、私は閣内にあ
つてあくまで労働階級の利害の
立場に立ち、
労働者の
生活防衞のために鬪うつもりだと、まことに威勢のよい第一声を放
つていることであります。はたして加藤君は、ただいまその
労働者諸君のために鬪
つているのであるか、
國務大臣として閣内でだれを相手に鬪うというのであるか、この点を明らかにせられたいのであります。(
拍手)
さらに私は、か
つて左派のアジテーターとして
労働者をアジ
つてきた加藤君が、大臣としての抱負を語るに、又この壇上からもただいま聽いたのであるが、労働省は
労働者にサービスするための省であると言
つているのは一應は了解できるといたしましても、労働省や
労働大臣が
國民に奉仕すべきものであることを忘れて、勤労者の御機嫌のみをと
つたり、勤労者だけの
利益をはかることを
意味するものであるならば、はなはだしい間違いであると言わなければなりません。すなわち労働省は、言うまでもなく他の各省同様、あくまでも
國民全体の
立場から見た勤労者の正当な
利益を守るものでなくてはならぬと信じるものであるが、この際同僚左派
諸君のとめるのを振り切
つて労働大臣に就任した加藤君のイデオロギーを明確に質したいのであります。
以上、
総理大臣を初め各閣僚に対し、当面重要なる問題について率直に
質疑を試みたのであるが、姿勢
演説の劈頭において芦田
首相は、この際いたずらに党派心にとらわれ、議論に時を空費するがごときことは断じて許さないところであると、あたかも政党政治を否認し、正常なる
議会政治を毒殺せしめたところの軍閥官僚や、大政翼賛型一派のおもかげに彷彿たるものがあ
つたのであるが、眞劍なる
審議に時を借しむことなく、かつまた再
登壇せし怏むる必要のないように、責任のある明なる答弁を
要求するものであります。(
拍手)
〔
國務大臣芦田均君
登壇〕