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武田證人 それで、それは非常に困るじやないか。せつかく私としては、自分の
関係者として代議士に立たれたというのでございますから、その大成を願
つてお
つたわけであります。できればこの
問題を何らか解決してあげたい、こう考えまして、いろいろつつこんで聽きましたところが、金額は五十万円だが、自分の手でも
つて五月の初めに三十万円はできる。さしあた
つて二十万円あれば
問題は解決するのだという話でございましたから、そこでその二十万円というのは、自分も今持
つておらぬ。しかし相談をしてみる所があるから、それでは相談してみようということで、油糧公團の西川英三氏に相談をいたしました。西川さんも、自分の
手もとにそういう金があるわけでないが、油脂業界から出た代議士として、やはり大成を願
つてお
つた。かつ私は西川氏と非常に昵懇にしておりましたので、せつかく君の頼みであるから、できれば何とかしてあげたいと思う。けれ
どもすぐにというわけにいかないから、一日ばかり待
つてほしいということでございました。では、できたらお願いいたしますというので、その日は別れたのであります。その旨を飯村君にも傳えまして、明日來てもらいたいと
言つて、帰
つてもらいました。それから翌日飯村君がまた参りましたので、
ちよつと待
つてくれと
言つて、私の事務所に待たせておきまして、また西川さんのところに参りまして聽きましたら、さいわいに自分の
関係している株式
会社、日本油脂新報の方から一時融通することができることにな
つたから貸すことにしよう。しかし飯村君は自分はよく知らぬ、飯村君自身に貸すというわけにはいかぬ。私に対して融通するから、そのような証書をつく
つて出してもらいたいということでございました。私は当時非常に困
つておりまして、それだけの金を借りて返すというあてもございませんでしたので、そのことを西川氏に言いましたところが、それはよくわか
つているが、しかし飯村君に対してはとても融通できぬ。そういう
事情ならば飯村君に何らかの担保物件を担保にして貸すということにしたらどうかと言われましたので、飯村君に対して、何か担保物件を提供できぬか、話によれば今住んでいる家が十万円かそこらのものだそうでございますが、それを担保にできないものか話しましたら、差支えないということで、それでは明日その証書がつくれれば、金の用意をしておくからあした來てもらいたいという約束をして帰
つてもらいました。ところがその日にどうしても二十万円を持
つて行かないとぐあいが悪いと言う。というのは伴という商事
会社が銀座にあ
つたと思いますが、そこで
債権者が待
つているから、きよう持
つて行くという約束をしてあるのだ。それを持
つて行かぬとぐあいが悪いというのでございますが、私といたしましてはそういう條件で融通することにいたしましたので、それではあしたまで待てないことはないだろうから、もし君が單独で行
つて信用されないというのであれば、自分が一緒に行
つてよく話してみてもよい。それならば一緒に來てもらいたいというので一緒に参りました。そういたしますと、そこに
関係者が四人ばかりおりました。それで私はいりまして、実はこういうわけでもう一日だけ待
つてほしい、金は確実に明日お渡しできると思う、明日午前中に私の事務所までお出で願えれば、飯村君立会の上でお渡しをいたしましよう。ということで、先方も私の言うことを信用してくれまして、それでは明日午前中にお
伺いしますからということで帰
つてまいりました。翌日先方から、奈良教一という方、もう一人長谷川さんという方が、二人
ちようど十時ごろに事務所へお見えになりました。ところが飯村君がなかなか見えない。私西川氏の方から二十万円の金を受取
つてまい
つておりまして、机の上に置いておきました。金はできました。飯村君が証書をも
つてきましたらばお渡しをいたしますから、ということで待
つてもらいました。待
つております間にいろいろとその御両氏から今度の
問題の経緯を詳細承りました。それはまことにお氣の毒でございますというようなことで待
つておりましたが、畫に
なつても午後二時に
なつても飯村君が見えません。とうとう夕景になりましたが、遂に見えません。そこで、ここまで待
つても來なければきようは見えないのであろう、そうすると、私としてはこういう
事情で融通した金であるから、これはまことにお氣の毒だけれ
どもお渡しするわけにはいかぬ。このままお帰りを願いたい、ということで先方はまことに殘念そうでございましたが、そのまま帰られたわけであります。