○
井上證人 それでは
委員長のお許しを得まして……。実は二十二年の七月十五日以前のことで、私ははつきりしたことは覚えておりませんが、軍の直接の命令で——軍と申しますのは占領軍であります——当時
日本の軍閥が占領
地域から持
つてきた、つまり掠奪して持
つてきたところのそうい
つた非鉄金属等があれば速やかに
報告せよ、こういう御指示がありまして、それで
電氣銅の問題にもなりますし、それに附け加えまして
亞鉛地金の問題も併せ御説明申し上げますが、当時
亞鉛地金を百八十七トンばかり
特殊物件として拂い下げを受けたのであります。その中に百六十六トンばかり掠奪
物資があ
つたのであります。掠奪物質と申しましても、私は元軍にお
つたわけではありませんので、どうい
つたものが掠奪
物資であるかはわかりませんでした。当時そうい
つた地金を扱
つております
会社その他に聽いてみましたところが、そうい
つたものは掠奪
物資だから、こういう御回答を得ましたので、多少疑問もありましたけれ
ども、百六十六トンは全部掠奪
物資として
報告いたしました。ところがその
報告をしたあと、その内九十一トンはかりは実は掠奪
物資でなか
つたということがわかりました。そこで早速
関係官廳なり軍政府の方に連絡して、九十一トンの掠奪
物資でないものを返していただくように折衡したのですが、まだ現在のところではお許しがありません。それで
亞鉛地金につきましては、もしこの掠奪
物資でない九十一トンが沒收されるといたしますれば、その代りとして殘
つた亞鉛地金をいただきたい、こう思
つたのであります。それから
電氣銅につきましては、その当時約二百トンばかりの掠奪
物資がどこかに
隠匿されておるのではないかという、デマと申しますか、うわさがございまして——ところが先ほど
お話のありました鑄物工場の地下に埋沒しましたところの
電氣銅は掠奪
物資ではないのであります。それで
亞鉛地金について非常に苦い経驗もありますので、それを全部
報告いたしますと、掠奪
物資でなくとも、全部沒收されるのではないかという、これははなはだ勝手な考えではありますが、考えたわけであります。そこで軍政官から掠奪
物資について、現地
調査もございましたが、軍政官といたされましては、大体これで
調査は済んだ、お前のところもいいから、こういう
お話でございまして、もしまだ
電氣銅の掠奪
物資があるとか、
亞鉛地金の掠奪
物資があるとかいうような御指示がありまして、もつと徹底的に
調べろとかいうことでございますれば、やむを得ずその両
物資も
報告したのでございますけれ
ども、大体
調査も完了したからいい、こうおつしやいましたので、それでは前の苦い経驗もありますし、損失もカバーしたいという、勝手な考えもも
つておりましたが、あらためてこういう物が出てきましたということを、その掠奪
物資の
調査のほとぼりが冷めたころに申し出まして、そうしてあらためて拂下げを受けた。こういうような非常に混入
つた事情でございますが勝手に考えてや
つたわけです。それで御了解願えますか。