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由良証人 これは昨年の四月ごろに決定いたしました
税金で、たしか四月の十五日が期限であ
つたと思いますが、当時われわれのいたしております
政府工事の
支拂がありませんので、立替が非常に多く、
從つてその
税金を拂うことができませんでした。その後
税務署から早く納めよという督促を受けました。いかにも
政府の
支拂いというものがいろいろ
関係の方々の御努力御盡力もあ
つたようでありますが、思うようにまいりませんで、やはり
支拂いが遅れておりました。そういう
関係でどうしても拂えないということで延ばしておりましたが、だんだん滯納ということが非常に世間でもやかましくな
つて、どうしても拂うことができなければ
差押えをしなければいけないという、ついに私の方でも
支拂いの見透しがつきませんので、これは
東京都のわれわれの
工事の取下金を
差押えるということにな
つて、十二月の初旬に
差押えられたのであります。その当時われわれとしては、滯納
税金に該当するだけの都の
工事の取下金を押えていただくつもりでおりましたが、いろいろ手続の
関係上それでは困るということで、
差押えのときには
東京都から引受けている全体の
工事について
差押えをされたのであります。そういたしまして年末に迫りましてから、
政府がこの際臨時
措置によ
つて支拂いをしようということが明かになりましたので、われわれはその取下金を全部
差押えられては営業資金に困りますので、そのうちの一部は営業資金にまわし、他の
部分はこれを
税金に充てるというふうにわれわれの方で考えておりましたところが、
東京の方では、どうもそうでないらしい、
差押えられた以上は
税金を完納するまでは全部それを税として取上げるので、それに満たない場合には
竹中が営業資金に困ろうが、それはしかたのないことであるというような意向を
東京の店から、たしか電話で通知がありました。ちようど私も月末に
東京に行く用事がありましたので、ただちに
東京に参りまして麹町
税務署に伺い、都から取下を受けるものを全部
差押えられては年末の
工事の
支拂金に差支える。
工事の
支拂金の中には労務者の賃金もはい
つておる。かつ前月の十一月には臨時
措置の金があるにはありましたが、それはほんの僅かでありまして、それがために前月の
工事費の
支拂いの保留分も含んでおります。この年末を控えて前月の保留分と、それから今月
税金に全部納めてしまえば、
支拂いができない。それまで
下請者が立替える能力はとてもないということは、われわれの方で明かでありましたので、こういうことがもし実現すれば、われわれは
下請に対して信用を失うばかりでなしに、その使
つている労務者の生活問題にも
関係する、大きく申せば一種の社会問題を起しはせぬか、むろんわれわれの
会社の信用というものは地に落ちてしまう、非常な重大問題であると思いましたので、
東京へ参りますとただちに麹町
税務署へ伺いまして、その
事情を申し上げたのでありますが、何分にも麹町
税務署の方は
大阪の
北税務署から
差押えの委託を受けているのであるから、われわのの方では委託を受けた
通りに実行するよりほかに事務上扱いようがない、
事情はよくわかるが、手続上そういうことはとうていできないことだ、これはひとの
北税務署が
差押えを
解除するならば、われわれの方はその通知を受ければ
解除するばかりだ、しかしわれわれ委託を受けている
税務署としては、そういうことはできないのだという
お話を伺いましたので、また
大阪へ引返しまして、
北税務署へ参りまして、前申し上げましたような
東京における
事情をるる御説明申し上げました。その代りにわれわれは誓
つて、この取上げをしましたときに十二月には二千五百万円、残額は一月中にお拂いしますという誓約書を入れますからとお願いしましたところが、われわれの願いが容れられまして、
差押えの
解除という書面を、これは郵送するのだそうでありますが、何分にも年末押迫
つておるのでありますから、それを私の方に頂戴しまして、社員がただちに
東京に参りまして、その翌日の二十四日に
解除されたのであります。