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1948-04-07 第2回国会 衆議院 不当財産取引調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月七日(水曜日)     午後二時十七分開議  出席委員    委員長 武藤運十郎君    理事 辻  寛一君 理事 田中 角榮君    理事 荊木 一久君 理事 小松 勇次君    理事 石田 一松君       高橋 英吉君    益谷 秀次君       明禮輝三郎君    足立 梅市君       池谷 信一君    河井 榮藏君       山中日露史君    矢野 政男君       野本 品吉君    田中 健吉君       徳田 球一君  委員外出席者         議     員 鈴木 仙八君  辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題について出頭  した証人       原  玉重君    高木 松吉君       草場 一平君    西田 當元君       中島 次雄君    高柳 泰壽君       渡邊 治湟君    高原 正高君       松岡 松平君    吉田彦太郎君       高源 重吉君    松葉  武君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題  資料要求に関する件  証人出頭要求に関する件
  2. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは前日に引続きまして会議を開きます。  証人陳述を求めるのでありますが、出頭せられました証人諸君に一言申し上げておきます。御承知通り、この不当財産取引調査特別委員会は、政界、財界、官界の淨化を目的として衆議院に設置せられ、活動しておるのでありまして、例の世耕情報をめぐる中曽根幾太郎軍服拂下げ詐欺事件に関連して、辻嘉六なる人物政界の各方面相当多額の金円を撤布していることを探知いたしまして、しかもこの金の中には中曽根幾太郎が詐欺して多くの國民に迷惑をかけた金を含んでおるのでありまして、辻が政界に撤布いたしました金は不当に領得せられた金であることを疑うに十分なるものがあるのであります。そこで当委員会は、辻嘉六中曽根幾太郎をめぐるこれら不当なる金銭授受関係を徹底的に糾明するために、あなた方証人に御出頭を求めた次第であります。証言及び署名いたします前に宣誓をしていただきます。なお昨年十二月二十三日に公布になりました昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証当等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことになつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人配遇者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するときに限られ、医師、歯科歯師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理晃弁護人公証人、宗教または祷祀の職に在る者またはこれらの職に在つた者がその職務上知つた事実であつて默秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には何人も宣誓または証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由なくして宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。それでは法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。どなたか代表してひとつお読みを願いいます。     〔証人松岡松平君各証人を代表して宣誓
  3. 武藤運十郎

    武藤委員長 では署名捺印してください。     〔各証人宣誓書に署名捺印す〕
  4. 武藤運十郎

    武藤委員長 尋ねます順序は、原さん、高木さん、草場さん、西田さん、中島さん、高柳さん、渡邊さん、高原さん、吉田さん、高源さん、松岡さん、こういう順序にいたします。大体におきまして、一人十分間ぐらいの予定でありますから、原さんのほかは別室で御休憩を願います。  原さんにお尋ねしますが、先ほど申し上げました問題について、檢事局において辻嘉六はこういうように述べております。  「原は三木武吉後継者として古くからの知合いです。同人は戰時中いわゆる翼賛議員をやつてつたので、追放に該当するものと思つたが、昨年も本年も資格審査も出さずそのまま立候補もいたしております。本年四月上旬ごろ原が私方に來て、今度選挙三木の代りに香川縣から天野富太郎が立候補するから、その選挙資金を出してもらいたいという話があり、その分として五万円と、別に自由党選挙地盤擁護のための政治資金趣旨で三万円、合計八万円を渡しており、この五万円は原から当然矢野に渡してもらうべき金で、三万円は原が適当に処分してもよい趣旨で渡しました。」こういうように述べておりますが、この通りでありますか。
  5. 原玉重

    原証人 その趣旨については辻さんの御意見で、私の方では必ずしもさような意味受取つたものではありません。金額は三万円と五万円を受取つたことは、それに相違ありません。
  6. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではあなたが受取られた趣旨はどういう趣旨でありますか。簡單に述べてください。
  7. 原玉重

    原証人 三万円が初めで、これは全く何らの意味もなく私に対して援助的に下さつたものと思います。それからあとの五万円についてはこれも同樣な意味で、受取るときには何らの、これは何に使うものであるというような話なくして受取つたものでありますが、その受取る前に天野富太郎君の選挙は、もうすでに選挙の始まつた後のことですから、相当苦戰をしておること、金の要ることなどを話しました。その話やいろいろ世間話の後帰ろうとするときに、今の五万円を渡されたので、渡すときには、ここに金があるからというだけで、何らの話もなかつたのであります。私はそれを受取つて天野君の選挙に必要ならば、これは本人に渡したいという希望をもつて、まず三木先生が四國にいまして、その事情はよくわかつておるのだから、三木先生の方に届けたら適当な処置がとられるものと考えまして、神田仙太郎方へ参いつて三木先生の所へときどき使いがありますから、何かつてがないかと聽きましたところが、別に使いに今行く人もないからという、それではこれを送つてつてくれと頼んで、三木先生の方へ届けたわけです。從つて両方とも私個人受取つたものであり、殊に自由党の何とかと今三万円について書いてありましたが、それは全然私の氣持としては考えたこともないことで、追放になつた私といたしまして、自由党のことを考えたこともなければ、その金をそういう方面に使う意味の話をしたこともありません。全然私個人として受取つたものであります。
  8. 武藤運十郎

    武藤委員長 五万円と三万円の金をただ漫然と出すということもちよつと受取れないわけですが、あなたと辻とはどんな程度のどういうつきあいですか。
  9. 原玉重

    原証人 辻先生は私の同郷の大先輩で、一度は三万円、一度は五万円を私にくださつたということについては、さして不思議と思はれるほどの関係ではないと思います。同郷の古い先輩であります。
  10. 武藤運十郎

    武藤委員長 その前後にどのくらい金を受取られておりますか。
  11. 原玉重

    原証人 前後と申しまして……。
  12. 武藤運十郎

    武藤委員長 長いつきあいのようでありますけれども、わずかこの期間に三万円と五万円渡しまして、あなたの方で受取られましてさして不思議もないような御説でありましたから、ときどきそういうふうな金をもらつてつたのですか。
  13. 原玉重

    原証人 金を受取つております。
  14. 武藤運十郎

    武藤委員長 どんなふうに受取つておりますか。
  15. 原玉重

    原証人 その金額日時は今記憶ありませんが……。
  16. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体で結構です。
  17. 原玉重

    原証人 ときどきは受取つて――辻さんの都合のいいような場合においては相当の額をくださることもあれば、あるいは半年一年全然そういうことのないこともありますから、今その点についての記憶はありませんがでとにかく同じように受取つておることはあります。
  18. 武藤運十郎

    武藤委員長 概算して一年にどのくらいになりますか、そうしてそれは選挙とか何とかいうような場合以外でもあるのですか。
  19. 原玉重

    原証人 選挙だということで私は受取つたことは一度もありません。すべて選挙以外の場合です。
  20. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体の金額をひとつ。全然記憶がないということもないでしよう。
  21. 原玉重

    原証人 一年に二万や三万はいただいたい思います。
  22. 武藤運十郎

    武藤委員長 ずつと長い間……。
  23. 原玉重

    原証人 長い間――そうですな、私がそういう関係にあるのはここ二、三年です。
  24. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人の政界におけるどういう存在であるかということについて、あなたの考えを述べてください。
  25. 原玉重

    原証人 政界における何ですか。
  26. 武藤運十郎

    武藤委員長 政界において辻という人がどういうような存在であるかということについて、あなたの認識を述べてもらいたい。
  27. 原玉重

    原証人 辻さんは古くから政界の裏面において活躍された人で、みずから好んで絶対表面には出ないという立場において、政界の各方面に活動しておられたことと考えます。
  28. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、こういうふうに大体伺つてよろしいですか。辻という人は政界表面には出ないけれども、政界に隠然たる勢力をもつてつて、大きな発言権をもつておる。どこということはないけれども相当莫大な金をつくつてきて、必要に應じては政党にも金を出すし、また選挙に際しては相当多額資金政治家に渡す。またあなたの場合にように選挙関係がなくても相当多額の金を出してやる。その結果は金を受取つた政党または政治家に対する辻氏の影響というものは、相当大きいものがあるというような形に考えてよろしいですか。
  29. 原玉重

    原証人 そういう結論は私は別にもつておりません。殊に政党に対してどれだけ金を渡されたかというような内容を私は知りませんから。本当出入りする人に対して、金のあるときは金でも援助されることと思いますが、政界において金でどれだけ活動しておられるかということを私は特にここで申し上げるほど詳しくは知つておりません。
  30. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねすることはありますか。
  31. 徳田球一

    徳田委員 ちよつと証人お尋ねしますが、選挙やその他政治的な活動に関等関係なしに、辻さんから金を受取られるということが習慣的になつておられるというお話でありますが、それについては何か辻さんとの間に密接の関係がなければ、ただ同縣の先輩であるというだけでそういう金を受取られるということはどうも解せないことと思いますが、何か特別の親密関係がありますか、どうですか。
  32. 原玉重

    原証人 ありません。
  33. 徳田球一

    徳田委員 そうすると、何ら親密関係もなしにただ金受取られる、またただ金をくれるというたとは、一体どういう理由にるくのですか。
  34. 原玉重

    原証人 向うのことはわかりません。
  35. 徳田球一

    徳田委員 いや、あなたとして――何ら親密関係もなしに、何ら政党的の関係もなしに、ただ金をやる、よしきたと受取るわけにはちよつといかぬと思いますがね。
  36. 原玉重

    原証人 同郷先輩で、私は別に金持でもありませんから、こういうふうにして援助してくださるものをいただいておるだけで、全然関係がないというわけぢやない。先ほどから申し上げておるように、同郷先輩であるという、それ以外には何もありません。
  37. 徳田球一

    徳田委員 それ以外には何事もない……。
  38. 原玉重

    原証人 ありません。
  39. 田中健吉

    田中(健)委員 辻さんとあなたの関係終戰後でございますか。
  40. 原玉重

    原証人 今のような関係終戰後がおもであります。
  41. 田中健吉

    田中(健)委員 そういたしますと、委員長からただいまあなたがお尋ねを受けたように、三万円と五万円、八万円を受けておられるわけですね。そうすると、それ以外にいろいろと金銭を辻氏からもらつておる、それは從つて終戰後にもらつてつたものと解釈してよろしうございますか。
  42. 原玉重

    原証人 そうです。
  43. 田中健吉

    田中(健)委員 その金額はただいま委員長に申し上げた通りに、記憶にない。そこできようわからなくともあと記憶を喚び起したならば、それはおわかりになるのですか。八万円以外に……。
  44. 原玉重

    原証人 ある程度記憶を喚び起して考えればわかることと思います。
  45. 田中健吉

    田中(健)委員 私の方では相当程度ここで陳情していただきたいと思いますけれども、今あなたの記憶にあるだけのことを、どれだけ、何遍に、どういう場所でいつごろ辻さんからもらつておるか。
  46. 原玉重

    原証人 今は記憶が一つもありません。
  47. 田中健吉

    田中(健)委員 全然ありませんですか。
  48. 原玉重

    原証人 そういうふうに何月何日にどこでどういうふうに受取つたかと言われると、今答弁するような記憶はありませんが、ある時間をおいてくだされば、考え出しましてお答えできる機会はあると思います。
  49. 田中健吉

    田中(健)委員 三万円と五万円以外に、終戰後においてもらつたことはある。但し詳しいことは今わからぬ。あと相当の時間をおけばお答えできるだろう。こういうわけでございましようか。
  50. 原玉重

    原証人 そうです。
  51. 田中健吉

    田中(健)委員 それでは委員長、それらの点について早急に記憶を呼び出してもらいたいと思います。
  52. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは原さんに申し上げますが、來る十三日までに書面で提出してください。
  53. 原玉重

    原証人 なおちよつと一言申し上げておきたいのですが、ただいまの五万円はそういう意味合で私はその金を神田なる者に託しましたが、天野君の手にはついにそれが渡らなかつたということでありますから、最近わかつたそのことをつけ加えておきます。
  54. 武藤運十郎

    武藤委員長 御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  55. 武藤運十郎

    武藤委員長 高木松吉さんですか。
  56. 高木松吉

    高木証人 そうです。
  57. 武藤運十郎

    武藤委員長 さつきお話しました問題について、辻嘉六檢事局においてこういうふうに述べております。「高木自由党員でかねて知り合つてつたのですが、去る四月の衆議院議員選挙には福島縣から出て落選しました。去る四月上旬頃高木が私方に來て選挙費用が要るというのでまず三万円渡し、間もなく松岡松平を通じて同樣二万円渡してあります。」こういうふうに述べておりますが、大体この通りですか。
  58. 高木松吉

    高木証人 日にちが違うように思うが……。四月何日ごろと言つておりますか。
  59. 武藤運十郎

    武藤委員長 四月上旬ごろとしてあります。
  60. 高木松吉

    高木証人 三月中旬ごろではないかと思います。檢事局でも私はつきり言つてあると思います。
  61. 武藤運十郎

    武藤委員長 その日時が違う以外は。
  62. 高木松吉

    高木証人 松岡君を通じてやつた金ですが、これは私その当時松岡君から頂戴したものとのみしか思つていなかつたのです。
  63. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻から松岡を通じてよこしたのではなくて、松岡自身から証人に渡されたものであると考えているのですか。
  64. 高木松吉

    高木証人 それは四月の中旬すぎではないかと思います。
  65. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻からよこしたという話はなかつたのですね。
  66. 高木松吉

    高木証人 ありませんでした。
  67. 武藤運十郎

    武藤委員長 多分辻から出たであろうとは思わなかつたですか。
  68. 高木松吉

    高木証人 思いませんでした。ただ檢事局へ行きまして檢事の方からそう言われたので、あるいはそうかなあとその時思つただけで、それまでは松岡君から私によこした金と思つておりました。
  69. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは昨年十月二十日檢事局において、「この二万円の出処については聽いてはおりませんが、松岡自身の金であるはずはなく、辻先生松岡氏との平素の関係から見て多分辻先生から出たものであろうと推測しております。」と述べておりますね。
  70. 高木松吉

    高木証人 それは辻先生がそうお話になつたというから、それを尊重して檢事の言う通り言つただけのことです。今日言うことがほんとうで間違いありません。
  71. 武藤運十郎

    武藤委員長 これはいずれも選挙にお使いになりましたか。
  72. 高木松吉

    高木証人 選挙にも使いましたし、他にも使いましたが、それについて克明に記憶しておりません。
  73. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんとあなたとはよほど前からの知合いですか。
  74. 高木松吉

    高木証人 そうです。昭和二十一年の何月か記憶しておりませんが、二十一年以來です。
  75. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人は政界表面には出ませんけれども、政界に隠然たる勢力をもつてつて、從つと大きな発言権をもつておる、どこからともなく相当莫大な金を作つてきて、必要に應じて政党に金を出す。また選挙に際しては相当多数の政治家選挙費用をやるような人であるということを御存じですか。
  76. 高木松吉

    高木証人 それほどはつきりは私は認識しておりません。
  77. 武藤運十郎

    武藤委員長 しかしあなただけではない、相当多勢人に金が渡つておるということを御存じですね。
  78. 高木松吉

    高木証人 私は辻先生とはあまり深い交りでありませんから、そういう内容をはつきり認識するところまではいつておりません。
  79. 武藤運十郎

    武藤委員長 今まで辻から何回くらい金をもらつておりますか。
  80. 高木松吉

    高木証人 一度もありません。
  81. 武藤運十郎

    武藤委員長 これが初めてでありますか。
  82. 高木松吉

    高木証人 そうです。
  83. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと三万円もらうまでのいきさつはどういうことですか。
  84. 高木松吉

    高木証人 私は呼ばれていつて大いにやりたまえというだけのことで何もあとはない。それでこの金を頂戴してまいりました。
  85. 武藤運十郎

    武藤委員長 何をやりたまえというのでありますか。
  86. 高木松吉

    高木証人 言葉はやりたまえというだけですが、私の方で受けることは、われわれの政治生活を努力してやれという意味ではないか、こう考えて帰つて來ました。
  87. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かありますか――それでは済みました。御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  88. 武藤運十郎

    武藤委員長 草場一平さんですか。
  89. 草場一平

    草場証人 そうです。
  90. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは先ほど概略を申し上げました事件につきましてお尋ねするのですが、辻嘉六檢事局におきましてこういうふうに述べております。  「草場福岡縣から去る四月の衆議院議員選挙に立候補し、落選した男で、自由党所属です。同人とは古く政友会時代からの知合いで、去る四月上旬ごろ本人が私方に來て、前同樣選挙資金をもらいたいと言うので、四万円渡してやりました。」  こういうふうに述べておりますが、これに相違ありませんか。
  91. 草場一平

    草場証人 いや、もらいたいということは私は申し入れません。ただ選挙に帰りますという話をしたところが、突然立つて奧の方から四万円を持つてきてくれました。別段催促したわけでもなければ、お願いしたわけでもありません。
  92. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつごろ辻のところに行かれたのですか。
  93. 草場一平

    草場証人 四月の上旬だと思います。
  94. 武藤運十郎

    武藤委員長 何のために行かれたのですか。
  95. 草場一平

    草場証人 田舎に帰るからという挨拶に行きました。
  96. 武藤運十郎

    武藤委員長 田舎帰つて選挙をするから……。
  97. 草場一平

    草場証人 そうです。
  98. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしたらしつかりやりたまえというわけで……。
  99. 草場一平

    草場証人 そうです。頑張つてこいということで……。
  100. 武藤運十郎

    武藤委員長 それで出してくれたのですか。
  101. 草場一平

    草場証人 そうです。
  102. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと選挙陣中見舞というようなものですか。
  103. 草場一平

    草場証人 そうですね。陣中見舞という意味もありましようし、かねがね私の居郡、八女郡で自由党の支部を結成したらどうかというようなことをしきりと慫慂されておつたものですから、そういう意味もあつたのではなかろうかと、今そう考えております。
  104. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻とはどのくらい長い関係ですか。
  105. 草場一平

    草場証人 辻さんは、大正十二年に政友本党が立党せられるにあたつて、私もこれに参加して、そこにおられた関係で爾今知合いです。
  106. 武藤運十郎

    武藤委員長 大分長い話ですね。
  107. 草場一平

    草場証人 二十六、七年くらいになります。
  108. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人は政界表面には出ませんけれども、政界には隠然たる勢力をもつておる、どこからともなく相当莫大な金をもつてきて、必要に應じては政党にも、また選挙の際には相当多額の金を多数の政治家に渡してやるというようなことを從來しておられるそうですね。
  109. 草場一平

    草場証人 そうらしいです。
  110. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは選挙等に際して、何回くらい辻から金を受取りましたか。
  111. 草場一平

    草場証人 私はそのあとさきには頂戴しておりません。
  112. 武藤運十郎

    武藤委員長 それが初めてですね。
  113. 草場一平

    草場証人 それが初めてです。
  114. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙が済んでから挨拶に参りましたか。
  115. 草場一平

    草場証人 いや、挨拶に行かないと思います。私はちようど病氣をしまして、外出できない状態にあつたものですから、行かなかつた記憶しております。
  116. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねがございますか。――それでは済みました、御苦労さんでした。     ―――――――――――――
  117. 武藤運十郎

    武藤委員長 西田さんですか。
  118. 西田當元

    西田証人 そうです。西田當元と申します。
  119. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど申し上げました問題について伺うのですが、この問題について辻嘉六檢事局におきましてかように述べております。  「西田は本年四月の総選挙鹿兒島縣から衆議院議員選挙に立候補し、落選した男で、所属自由党です。西田の場合も右同樣松岡からの紹介があつたので、西田に対する選挙費用の援助として私方で西田に一万円渡したのです。渡した日は本年三月下旬と思いますが、岡田と同道したわけではなく、最初に松岡から話を受け、あと西田が一人來たとき金を出しております。」こういうふうに述べておりますが、この通りですか。
  120. 西田當元

    西田証人 日にちが三月中旬だと覚えております。
  121. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻の所に行つたのがですね。
  122. 西田當元

    西田証人 そうです。
  123. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかはこの通りですか。
  124. 西田當元

    西田証人 大体間違いありません。
  125. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、今までに辻から金を受取られたことがありますか。
  126. 西田當元

    西田証人 ありません。
  127. 武藤運十郎

    武藤委員長 これが初めてですね。
  128. 西田當元

    西田証人 初めてであり最後です。
  129. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人は政界表面には出ないけれども、政界相当な努力をもつておる。金をどこからともなくつくつてきて政党にも出すし、選挙でもあると多くの政治家相当莫大な金を出してやつておる。そのために政界に対する相当大きな発言権をもつてつたというような人だそうですが、そうですか。
  130. 西田當元

    西田証人 私はあまりその内容については知りません。ただ同じ政党所属する松岡君からその名刺をもつて挨拶に行け、こう言われたので、そのまま行つただけで、その人物、閲歴その他について詳細は知りません。
  131. 武藤運十郎

    武藤委員長 松岡とはどういふ関係ですか。
  132. 西田當元

    西田証人 同じ政党に属するからです。
  133. 武藤運十郎

    武藤委員長 それ以上ではないのですか。
  134. 西田當元

    西田証人 それ以上ではありません。
  135. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは選挙資金というわけですか。
  136. 西田當元

    西田証人 選挙資金というばかりでもありません。松岡の所に挨拶行つたら、この名刺をもつて牛込へ行けと言われたので、その通り行つたので、必ずしも政治資金獲得のために行つたわけではありません。
  137. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでも、何か話が出て、この名刺をもつて行けということになつたのだろうと普通考えます。この名刺をもつて行けと突然に言うはずはないのであつて、今度選挙をやるについてお互いに金が要るだろうという話が出て、それではこの名刺をもつて行けば多分出るだろうから、というのでもなかつたら、ただ突然おまえこの名刺をもつて行けということは……
  138. 西田當元

    西田証人 それは私が金をたくさんもつているとはわかていませんから、それを松岡が配慮してくれたものだと思います。
  139. 武藤運十郎

    武藤委員長 從つてこの金がどういう種類の金か知りませんね。
  140. 西田當元

    西田証人 それは全然わかりません。
  141. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねございますか。――それでは終りました、御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  142. 武藤運十郎

    武藤委員長 お名前は中島何と読みますか。
  143. 中島次雄

    中島証人 中島つぐおと言います。一名しようすけとも言います。
  144. 武藤運十郎

    武藤委員長 どちらが本名ですか。
  145. 中島次雄

    中島証人 次雄本名です。
  146. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではお尋ねします。先ほど概略を申し上げました事件につきまして、辻嘉六檢事局においてこういうふうに述べております。  「中島は実田谷新町澱粉会社を経営している人と思いますが、同人とは十年くらい前からの知合いで、ちようど本年四月上旬ごろ同人が私方に來たので、私から同人に対し、中曽根を世話しているから選挙の世話をしてくれと頼み、その資金として三万円を渡した、」と言つておる。その趣旨岡村吾一の場合と同樣だというのですが、岡村吾一というのは、やはりあなたと同じように中曽根を援助してくれという意味ですか。
  147. 中島次雄

    中島証人 はあ。
  148. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういうふうに書いてありますが、その通りですか。
  149. 中島次雄

    中島証人 大体私はもとは世田谷新町二町目辻嘉六先生の研究所だつたものを青年の道場に変更してやつたのですが、終戰後会社を設立しました。その関係辻先生の所に出入りをしております。中曽根の話が出たときに私は先生に対して、中曽根人物はわかりませんが、若い者もいるから中曽根の應援をしてもらいたいということだつたので、若い者も活動いたしまして、中曽根氏はどういう人かわかりませんが、先生のお言葉によつてこれを應援したことがあります。
  150. 武藤運十郎

    武藤委員長 それで三万円渡してもらつたのですか。
  151. 中島次雄

    中島証人 さようであります。
  152. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻はほかの人にもあなたにすると同じように、中曽根をひとつ應援してやつてくれないかということを頼んで、幾人かに相当の金を渡しているのですが、辻は相当中曽根に力を入れているような話ですか。
  153. 中島次雄

    中島証人 私はただ同じ世田谷にいるので、その点で私は中曽根という人の人物も何もわかりませんが、ただ青年たちがいるものですから、それに対する援助をしてくれというお言葉だつたために、トラツクや何かを雇い入れまして應援したことがあります。
  154. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは辻という人を政界においてどういう存在であるか、お考えを言つてみてください。
  155. 中島次雄

    中島証人 私は十年ほど前に、先生と武道の関係で――私は戸山学校、士官学校の劍術の教官をやつておりましたので、青年の指導をやつておりまして、その間辻先生の人格に触れましたので、政界の一つの黒幕という意味でなく、スケールの大きい、非常に慈悲深い人だという考えで接触しておりまして、青年指導に少からずわれわれも應援していただいたことがありまして、人格的な立場から言えば、むしろ恬淡な人でありまして、金銭に頭を使う人ではありません。われわれは自分の親父同樣に崇拜し來つたものであります。その意味で今日の問題も、私は選挙の問題かありましてから先生に、馬鹿どもががたがたやつておりますが、先生大丈夫ですか、とはなはだ弱輩でございますが、一言御進言申し上げたことがございます。そのときに、絶対そういうことは心配要らない、自分は日本を明るくしたいために、自由のためにやつているのだから、お前らそのつもりで頭を切替えてやれ、ということで、今日私未だに先生を支持しているわけであります。先生の人格的立場というものは、單に一部分的なものではなくて、日本全体の大きなスケールのもとにごらんになつている方だと確信しております。その点で再三申し上げますが、辻先生はいわば大きい器でありまして、小さいやからがいくら研究してもわかるものではなく、総合的な大きい人物なのであります。われわれとして日本の現在が今日あるごとく、ああいう辻先生の大きな力をもつて総括的に見なければ、政治というものはよくならない。そういう点で私は今日未だに辻先生を崇拜している次第であります。
  156. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは今まで選挙とか政治運動とかいうものをしたことはないのですか。
  157. 中島次雄

    中島証人 私は武道一本でありまして、政治運動はやつておりません。私の親父が神兵隊事件に引つかかつたことがありますから、政治は嫌いであります。ただ青年を指導するという意味において、政治に関心をもつております。
  158. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんは政界表面には出ないけれども、政界相当隠然たる勢力をもつていて、どこからともなく金をつくつてきて、必要に應じては政党にも金を出すし、選挙に際しては相当多額の金を多数の政治家に出しているというようなことをお聞きになつておりますか。
  159. 中島次雄

    中島証人 聞いておりました。これは私は淨財であると思つております。先生の大きな理想に向つて各実業家あるいは教育家、あらゆるものの國家を建設せんがためのいい意味に属する金であるということを、私はあくまでも信じておりますし、事実そうであると私は証言したいと思います。
  160. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたはこの金のほかにいつかもらつたことがありますか。
  161. 中島次雄

    中島証人 私は十年の間のことでございますから、現在の道場も辻嘉六氏からもらつたものでありまして、その意味から私としては若い者が行くときには、欠かさず、われわれに対する小づかいといつたようなものをいただいたことがたびたびあります。
  162. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か選挙の場合は中曽根の場合と同じように、今度これを應援してくれというようなことで、金を出したことがありますか。
  163. 中島次雄

    中島証人 一遍もありません。私は中曽根そのものの人物はわからないけれども、お前やれということで、その金が小づかいであつたか、應援であつたか、そんなことは頓着せず、私は自分の私財も投じて、彼を應援いたしました。非常にきれいな立場にあつたわけであります。
  164. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねはありませんか。
  165. 山中日露史

    ○山中委員 証人お尋ねしたいのですが、辻嘉六氏から中曽根選挙のために骨を折つてくれと頼まれたときに、証人は辻氏と中曽根関係はどういう関係だとお考えになりましたか。
  166. 中島次雄

    中島証人 全然私はそのことは考えておりませんでした。先生の言われることに対しては私は絶大なる信用と、また尊敬をいたしておりますので、私は無條件でそれを引受けたわけであります。
  167. 山中日露史

    ○山中委員 普通だれそれのために應援してくれと頼まれたときは、その人と應援する人の関係は大概常識的にわかるはずなんですが、あなたは全然それを考えられなかつたのですか。
  168. 中島次雄

    中島証人 私はただ先生に言われたことのみが頭に執着しておりましたから、人物いかん、関係いかんということは私の関係すべきことでありませんでしたから無視して、ただ言われるままを実行しておりました。
  169. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにありませんか――では済みました。御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  170. 武藤運十郎

    武藤委員長 次に高柳泰壽君。先ほど概細を申し上げました問題につきまして、辻は檢事局においてかように述べております。「高柳氏は弁護士で、去る四月の選挙には無所属全國参議院議員に立ち落選しました。同力が去る四月上旬ごろ手紙で立候補の挨拶状を送つてまいり、御援助願いたいとの趣旨つたので、書留郵便で三千円郵送いたしました。」こういうように述べておりますが、この通りですか。
  171. 高柳泰壽

    高柳証人 それは違います。私は今度知己の人にも、立候補して援助願いたいということはどこえも出していない。私の立つた目的は、当時燒けてあまりに悲惨であつたから救國の叫びをしたいというのと、選挙というものは國家試驗と違つてちよつと出られないものだから、言論戰のみでどのくらい効果があるかということを試驗して、それを統計にとつて、これから立たんとする後輩に示さんとして、私は東京地区から立つたのです。辻氏が全國から立つたと言うことは違つております。そういう次第ですから、私は手紙を辻氏のところへやつた覚えはないのであります。ただ演説から帰つてくると亡妻が、私は五千円だつた檢事局言つたけれども、後で見ると三千円でした。――辻氏のところから使いが來て金を置いていつたと申しました。当時私は私の顧問先の三上という人のもつている家屋と土地を、辻氏に終戰の直前賣つたのであります。私は十数年來これを引受けて辻氏と折衝をしておつたのでありますが、燒けてしまうから安く賣つてしまつたのであります。辻氏は私が燒けますと五千円の見舞金をくれて、それ以來辻氏と会つたことはない。しかるところ終戰の八月十五日から約一箇月経ちますと、私のところへ辻氏の知人が刑務所へはいつておりますので、保釈で出してくれという依頼がきて、それで私は辻氏のところに行きまして、それから運動してそれは保釈になつて出てきた。爾來私は辻のところへ行かずして、約二年近く経つた。そのとき私が立候補したのであります。これを新聞でおそらく辻氏は見たと思います。私は弁護士をして以來三十年、依頼者にも金のことは触れたことはない。從つて辻氏はそういうことに対する報酬の観念でくれたか、あるいは終戰直前に家屋や何かの賣買に努力したことに対してくれたのか。とにかく好意をもつてそれを受取つておいたというのが眞相なのです。だから辻氏のところへ手紙をやつたとかなんとかということは、多くの人にやつたためにおそらく混同してそういうことを言つておると思います。その点は違います。実は政界浄化のためにこういうことをやると言いましたけれども、私のごとく弁護士で保釈させても何も要求せず、二年も寄りつかない。そういうものがかように新聞に出されて実は迷惑の限りなのです。私としては中立で立ち、政治的目的も私のはほんとうの浄化のためにやつたのです。しかしながらこれがたまたま不浄の金であつたということのために、いろいろのところへ呼び出され、新聞に出されて浄化どころではない、結局こういうことを新聞に出されて誤解を受けるので、迷惑千万なのですけれども、そういう人も喚ばれておる人の中にはあるということを新聞記者の方も御記憶を願いたい。非常に迷惑千万なのです。
  172. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か五万円辻からもつてきたといふことはないのですか。
  173. 高柳泰壽

    高柳証人 ないのです。私は五千円だと思つてつたが、よく調べたら三千円なのです。辻の言つたことがよく合つております。しかし私は会いません。選挙に行つてつてきたら、亡妻が辻から届けたというから、辻の子分のことで保釈運動をしたのでもつてきたのか、あるいは選挙に立つたというので好意でもつてきたのかわからなかつたが、当時そのままになつてつた。ただ私が手紙で立候補したからよろしく頼むということは、辻氏どころではない、親友にも出さなかつた。それから去年参議院に立つたのは、全國区で立つたというのは間違いで、東京都地区から立候補した。
  174. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは記録の間違いかと思いますけれども、あなたは去年の十月二十八日に、檢事局へ行つて取調べを受けたときに、「辻から本年の選挙の際陣中見舞をもらつたことがありました。たしか四月中旬頃のある日のことでした。演説から自宅に帰ると家内が辻さんのおうちからお使いがみえたと言つて紙包を取出した。それを見ると陣中見舞金と書いてあり、中には現金で五万円はいつておりましたので、金は選挙費用の一部に充てましたが、この金の入手経路については承知しておりません。辻さんには早速御礼状を差上げておきましたが、御挨拶には参上しておりません。」これは五千円の間違いですか。
  175. 高柳泰壽

    高柳証人 そのときは五千円と答えました。しかし家へ帰つていろいろの書類を調べたら、五千円でなくて三千円でした。ゆえに檢事局で五千円と答えたのは間違いで、辻氏が言つておる、今お読み聽けの通りの三千円でした。それと今言われたのと違うのは、陣中見舞と書いてあつたということは、記憶はありませんけれども、家内がもつてきたと言う。選挙当時にもつてきたから陣中見舞じやないかという、自分の一つの想像だつたのです。檢事局のはそれだけでございます。
  176. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると辻という人は政界においてどういう存在であるか……。
  177. 高柳泰壽

    高柳証人 それは私も二十五年も前に衆議院の立候補したのですから、辻が政界の惑星であるということは聞いておつた。ところが、私は麹町の最上という家の顧問弁護士をしており、辻のはいつておる家及び地所をもつてつたので、この係爭関係で、辻と行き來はあまりしませんでしたが、十七、八年前一度会つたきりです。私は手紙をやつたきりで、訪問したことはなかつた。十五、六年経つて、家の登記をすることになつて、終戰直前に初めて会つたというだけなんです。それで金を三千円よこたのも、保釈運動を頼まれて、出しましたが、それから約二年会つたこともなくて、私が選挙に立つたということを新聞で初めて見て、おそらくもつてきたのでしよう。だから前後に会つておりません。これが眞相です。
  178. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人は政界表面には出ないけれども、政界に隠然たる勢力をもつておる……。
  179. 高柳泰壽

    高柳証人 それはかつて新聞や何かで読んで、私と親交はないのですけれども、記憶は存しております。しかし人は、会つてみてよい人だという感じを受けましたね。やつぱり親分はだで、私が罹災したときに五千円罹災見舞金をくれた。そのときは確かに五千円だつた。それは私が燒けると同時にもつきた。
  180. 武藤運十郎

    武藤委員長 祭災の場合もそうでしようが、選挙とか何かの場合には、多くの政治家の候補者に相当の金を出してやつてつた政党にも相当な金を出しておるというような人ですか。
  181. 高柳泰壽

    高柳証人 そういうことは、私はあの人と個人的に長いつきあいがありませんから、知りませんし、また私はそういうことはきらいな人間ですから……。
  182. 武藤運十郎

    武藤委員長 いやあなたではない。
  183. 高柳泰壽

    高柳証人 そういうことは私は知りません。ただ想像を述べろと言えば、それは述べますけれども……。
  184. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは要りません。  何か御質問ございますか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  186. 武藤運十郎

    武藤委員長 渡邊治湟さんですか。
  187. 渡邊治湟

    渡邊証人 そうです。
  188. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど概略お話しました問題について、辻嘉六檢事局におきましてもかように述べておりますが、読んでみます。「渡辺は自由党所属で去る四月神奈川縣から衆議院議員として立候補し落選した者です。渡邊に本年四月上旬ごろ私方で二万円河野を通じて出しておりますが、そのいきさつ、金の趣旨などはすべて前同様であります。  前同様というのは政治資金というような趣旨です。」  「もつとも渡邊はその後私方には一度も來たことはなかつたように思います。」この通りですか。
  189. 渡邊治湟

    渡邊証人 河渡を通じたという点がちよつと違うように思いますが、あとは大体その通りと思います。
  190. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういうふうに違うのですか。
  191. 渡邊治湟

    渡邊証人 それは、私の選挙が始まつて間もなくと思うのですが、晝間街頭演説などをやりまして、事務所へ帰りましたときに、私の長い間の先輩つきあいをしておる濱野という人物から、辻先生のところへ伺うようにという傳言があつたということを事務所の者が聽いて、所書きなどを書いて控えてあつたのです。私は前から辻さんのことはよく伺つておりますし、一度お会いしたいと念願しておつたときであつたものですから、非常にいい折であると、早速辻先生のところへ参つたわけでして、その点がちよつと違うと思うけれども、あとは大体間違いない。
  192. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻とはいつごろからの知合いですか。
  193. 渡邊治湟

    渡邊証人 知合い関係はありません。
  194. 武藤運十郎

    武藤委員長 今言つたような関係で全然知合い関係はない……。
  195. 渡邊治湟

    渡邊証人 ありません。
  196. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると辻からほかに前に金をもらつたというようなこともない……。
  197. 渡邊治湟

    渡邊証人 ありません。
  198. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは選挙資金というようなわけですか。
  199. 渡邊治湟

    渡邊証人 陣中見舞にくだすつたと考えております。
  200. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう性質の何であるかは知らなかつた……。
  201. 渡邊治湟

    渡邊証人 もちろん知りません。私もう少しお会いしてお話しできると思つたのですけれども、ふだん無口の方ですか、あまりお話なさらぬで、少いがと言うてくだすつた程度です。
  202. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねありますか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  204. 武藤運十郎

    武藤委員長 高原正高さんですね。
  205. 原玉重

    原証人 そうです。
  206. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど概略を申し上げました問題について、辻嘉六檢事局においてかように述べております。  高原自由党所属で、現在自由クラブ員です。去る四月の衆議院議員総選挙には、千葉県から立候補し、次点で落選いたしました。同人とは自由党創立後からの知合いで、本年三月下旬ごろ私方に來て、選挙費用に援助してくれとの依頼があつたので、現金三万円を前同私方の部屋で渡しております。当人は次点で落選しました。」こういうふうに述べておりますが、この通りですか。
  207. 高原正高

    ○高原証人 三万円貰つたということは事実です。今のお考えは辻さんのお考えであつて、私とはよほど考えが違つております。私は選挙費を人に求めたことはありません。いずれの人にもありません。交りは、二十五年前床次邸で会つて以來の交りです。
  208. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、その後ときどき行き來をしておられるわけですね。
  209. 高原正高

    ○高原証人 十年くらい、爾後交りをいたしませんでしたが、たしか昨年の二、三月ごろ突然訪ねて行つたようなわけです。
  210. 武藤運十郎

    武藤委員長 何に行かれたのですか。
  211. 高原正高

    ○高原証人 私は單なる薬屋ですから、政治ということよりは、むしろ辻先生が身体が惡い、病氣だからというので、ただお訪ねしただけです。
  212. 武藤運十郎

    武藤委員長 そのときに選挙をおやりになることになつてつたのですね。
  213. 高原正高

    ○高原証人 選挙はたしか私は四月になつて届出をしております。
  214. 武藤運十郎

    武藤委員長 届出はそうですが、行つたのは二月ですか。三月下旬ではございませんか。
  215. 高原正高

    ○高原証人 三月の初旬と心得えております。
  216. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう話合いでその三万円の金が出てきたわけですか。あなたからも別に要求はしないというのだが、何かそこにきつかけがなかつたらおかしいことではないですか。
  217. 高原正高

    ○高原証人 おかしいとも別に考えておりませんが、選挙をやることは向うで考えたであろうし、どうせ一遍落ちておりますから、またやるだろう、こういうふうにすべて想像の意味であつたのかもしれませんけれども、いろいろ藥のことなども頼まれております。そういうようなことで飛んで歩いてもいましたから、そういうことに絡まれて、選挙のことも意味し、今日の三万円だから大したものでもないので、くれられたのだと思います。
  218. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙のことも大分そのころには話も出ているわけでありますから、ただ藥の話だけでなく、選挙や政治の話も大分出るだろうと思いますが……。
  219. 高原正高

    ○高原証人 それは政治の話も大いに出ます。
  220. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙費用はどのくらいかかるというような話になつてきて、それでこの三万円というわけではないのですか。
  221. 高原正高

    ○高原証人 そんなわけではありません。辻先生という人は、先ほど私は委員長がそこでお読みになつたとき靜かに聽いておつたのですが、あれは少しピントがはずれているのではないか。一党一派のことなど考えておりません。そうして日本の國をいかにすべきかということで、各党のことを思つている。だから單に自由党関係の人ばかりではない、各党の人が出入しております。それで私たちが論じてみても、自由党がどうの、自由クラブがどうのとけちなことを言つておれば、來るなと言うだろうし、やはり日本國はこうすべきではないかというような意見をわれわれ若い者から聽こうとしておるのではないか、こういうふうに考えております。從つて相当に國家のことも話し合つておるし、政治の問題もむろん触れております。だが選挙ということはもちろんやると信じておるし、私もやるし、そうけちな意味で言つているのではない、こう私は解しております。
  222. 武藤運十郎

    武藤委員長 その前後には金を受取つたことがでございませんか。
  223. 高原正高

    ○高原証人 ありません。これが最後です。
  224. 武藤運十郎

    武藤委員長 これはどういう性質の金であるか知らなかつたのですか。
  225. 高原正高

    ○高原証人 それは知る由もありません。
  226. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体辻さんという人は、こういうふうに金をあつちこつちに出してくれる人ですか。
  227. 高原正高

    ○高原証人 そうです。
  228. 武藤運十郎

    武藤委員長 各党を問わず……。
  229. 高原正高

    ○高原証人 そう心得えております。
  230. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたの知つている範囲でどんな程度ですか。
  231. 高原正高

    ○高原証人 うわさに聞き及ぶ程度ではそすいうふうに聞いております。
  232. 武藤運十郎

    武藤委員長 具体的には知らないのですか。
  233. 高原正高

    ○高原証人 知りません。
  234. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういうふうに政治資金なり、選挙費用をばらまいておりますために、表には出ませんけれども、政界には隠然たる勢力をもつておるというようなわけですか。
  235. 高原正高

    ○高原証人 隠然たるということは、世間がそうしてしまうんじやないかと思うのです。別に勢力があるとか、ないとかいうことは、私も考えたことはないし、そういう意味の口添えをしたことはないが、とにかくあれだけの年をとられて私をなくしたということは、よほど偉大だと思う。まつたく自己というものを去つて、自己が金もうけをするでもない。自己が栄耀栄華をするわけでもない。高位高官になる氣持もなければ、むろん代議士などになる氣持はない。まつたくおのれを去つておりますから、よほど大きなところがあります。從つて淨財も相当に集まるんじやないか。それをやはり國を憂うる若い人々にどんどんまくんじやないか、こういうふうに私は考えております。
  236. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かございますか。
  237. 田中健吉

    田中(健)委員 証今はただいまお話の中で、自由党だけでなく、各党も集まつている。こういうお話でありましたが、各党というのは、各党のいろいろな人物という意味だろうと思いますが、それはどういう人物が出入りいたしておりますか。
  238. 高原正高

    ○高原証人 それらはうわさに聞いている程度であつて、あそこに出入りする人たちの名前は存じておりません。
  239. 田中健吉

    田中(健)委員 あなたの各党というのは、そううわさに聞いただけですか。
  240. 高原正高

    ○高原証人 そうです。うわさも聞くし、あそこで代議士の徽章をつけた人たちに会つておりますが、名前を聽くわけにいかぬし、自由党でないことは事実です。顔を知らないから……。
  241. 田中健吉

    田中(健)委員 そうすると、その場合に代議士の徽章をつけたいろいろな方が出入りしているが、あなつたは名前は知らないわけですね。
  242. 高原正高

    ○高原証人 そうです。
  243. 田中健吉

    田中(健)委員 そのほかに辻さんのところに誰かあなたの知つている人がおりましたか。
  244. 高原正高

    ○高原証人 知つている人はおりませんでした。そのときは……。
  245. 田中健吉

    田中(健)委員 それから淨財が集まるだろうというようなお話でありますが、どんなところから淨財が集まるだろうと思うのですか。
  246. 高原正高

    ○高原証人 それも私はあまり金を集めたり散じたりすることをしていない職業ですから、ただ想像ですけれども、しかし観音さまや成田さんにあの厖大な金がはいるのだから(笑声)人正しくさえあるならばおのずから集まるんじやないか、こういうふうな氣持です。だから代議士諸公も一生懸命に國のために盡せば、費用なんかそう困らないんじやないか(笑声)こういうような感じをしております。
  247. 田中健吉

    田中(健)委員 それから淨財が集まつて、各党の連中が出入りしている、各党に金を出ているだろう、こうおつしやいますが、それはどういう党に金が出ておるとおつしやるのですか。
  248. 高原正高

    ○高原証人 それは私の想像です。
  249. 田中健吉

    田中(健)委員 うわさでなくて想像ですね。
  250. 高原正高

    ○高原証人 そうです。
  251. 田中健吉

    田中(健)委員 わかりました。
  252. 徳田球一

    徳田委員 あなたのもらわれた三万円は、選挙費用でも何でもないということですが、そうすると、それは一体選挙費用以外にどういう理由でそれを向うがくれるし、またあなたはそれを受取られたのですか。
  253. 高原正高

    ○高原証人 それは辻さんの氣持で、辻先生にならなければわかりませんけれども、私から見れば、もし辻先生とすれば、高原まじめに実業をやつておるから困つているだろう。よく人の世話もしておる。今度選挙をやるについていくらかくれてやろうというのではないかと思い、謹してでありがたく頂戴いたしました。
  254. 徳田球一

    徳田委員 そうするとやはり選挙ですね。
  255. 高原正高

    ○高原証人 選挙にもむろん使つておりますが、それだけでは選挙もできないし、それを全部選挙に使用したということもありません。
  256. 徳田球一

    徳田委員 むろんそれだけでは選挙はできないが、やはり選挙に使つたことだけは事実ですか。
  257. 高原正高

    ○高原証人 選挙にも使つております。
  258. 徳田球一

    徳田委員 それなら納得しました。
  259. 武藤運十郎

    武藤委員長 済みました、御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  260. 武藤運十郎

    武藤委員長 松岡さんですか。
  261. 松岡松平

    松岡証人 そうです。
  262. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは辻嘉六と大分深い交際があるようですが、その関係をまず述べてください。
  263. 松岡松平

    松岡証人 私と辻さんの関係は、自由党の創立準備会時代からです。深いといえば、その程度問題ですが、一心同体になつて仕事をしておるという関係でもなければ、ただ私は準備会時代から知り合つているので、非常な経驗者でもあるし、ときどき訪れては意見を伺う、こういう関係でございます。別に私は辻さんから命令を受けて仕事をしたこともなければ、指図を受ける関係にもおかれていないし、ただ人間的に私が辻さんを非常に尊敬し、向うも私を尊重しておる。それだけの間柄です。
  264. 武藤運十郎

    武藤委員長 自由党ではあなたはどういう地位におられたのですか。
  265. 松岡松平

    松岡証人 私は自由党では最初幹事をしておりましだが、後に総務になりました。
  266. 武藤運十郎

    武藤委員長 今は。
  267. 松岡松平

    松岡証人 一應追放を受けておりますから無関係です。
  268. 武藤運十郎

    武藤委員長 昨年の選挙に際しまして、たれか選挙費用のことについて相談を受けたり何かしまして、あなたが紹介をして、辻から金を出してもらつたというようなことがございますか。
  269. 松岡松平

    松岡証人 あります。
  270. 武藤運十郎

    武藤委員長 それを述べてください。
  271. 松岡松平

    松岡証人 まず社会党の参議院の岡田宗司君の件と、高木君の件と西田君の件があります。岡田君の件から述べますが、岡田君は二十年以上前、社会主義運動に関係しておりました当時からの友人であります。爾來ずつと交際は続けておりまして、ちようど終戰後に氏が衆議院に出る、私も出るという関係におかれで、お互いに党の立場は異にしておりましたけれども、岡田君は私と違つて、あまり経済的に惠まれた方じやない。從つて多少の援助をいたしました。第二回に先生は参議院に出馬すると、いう挨拶がありましたので、前年のこともあり、また援助いたしました。辻さんに紹介状を書いたという話は、こういうわけなのでございます。昭和二十一年の暮の三十日に辻さんの方から使いが來まして、金を少し用立てろという話しがありまして、用立てた金があるのです。まあその関係もあるし、岡田君に名刺をやりました。あとで聽きましたが、二万円辻氏が渡してくれたそうであります。  それから西田當元君が行つた。これは自由党から立候補いたしました。これにも私からも金をやりましたが、少し足らぬような顏つきでありましたので、辻さんに名刺をあてました。これは後に聽きましたが、一万円受取つたそうであります。  それから高木松吉君でありますが、これは選挙区から私のところへ、矢のように金が足りないからという電話をえけてきましたので、辻さんから二万円もらつて本人に渡しました。合計五万円になります。私はこれは用立てた金の返還を受けたものと考えております。ことに岡田君に至つては辻さんと何の関係もないのです。紹介名刺を出したからといつて、出すべき筋合ではないのですが、当時私の手もともあまり樂じやありませんでしたから、その前年の暮に用立てた金を返してもらう意味もあり、また辻さんにその前に会つたときに、あの金を返そうかという話がありましたから、いや別に返してもらわなくてもいい、金をやつてくれと名刺でも出したらその者に金を渡していただいたら結構だと言つておりましたから、何と言いますかその名刺が一種の請求書みたようになつた。ですから岡田君が辻さんからもらつた金は、私がやつたものである。高木君がもらつた二万円の金も、西田君がもらつた一万円も私がやつたものと私は解釈しておりますし、辻さんもおそらくそう理解しておると思います。
  272. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻は中曽根幾太郎が詐偽をした金のすち二百五十万円を三回にわつて献金を受けて、その金のうちから岡田、高木西田らに松岡の紹介によつて渡したと言つておるのですが、あなたが今言われたのと、あなたの考えておることと辻の考えておることは違うようですね。
  273. 松岡松平

    松岡証人 金のことですから一々中曽根という極印が打つておるわけじやないし、またはたして現金を保有されておつたか、銀行にはいつてつたか、それはわからぬ。そかし私は少くとも昭和二十一年の暮に貸したことは事実ですから、その金がどういう方面からどういうふうに來て返されたか、それはわかりません。私の方としては返還を受けたるものと理解をしておるのであります。
  274. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたの方ではあなたがお話になつたようなつもりでございますね。
  275. 松岡松平

    松岡証人 そうです。辻氏の方では中曽根の分とか、あるいは先生の関係者はたくさんおりますから、あるいは吉田君とか、高源君とか、それらの人々からも相当出ていると私も聞いておりまするが、その金であるか、それはわかりません。
  276. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻はいろいろ政治家に金を援助しておるのであるけれども、今自分がかように援助した政治家だけでも七八十人はあると言つておるのですが、たとえば選挙の際などには、そんなふうに金を出すのですか。
  277. 松岡松平

    松岡証人 意見になりますが、この機会に多少述べてよろしかつたら述べさしていただきます。大体辻さんが営日ごろ言つておられるのは、自分は年をとつて、この上は代議士になる望みもなし、また大臣にならうという希望をもつているわけでもない。ただ自分が念願していることは、いい人間を議会に送つてやりたいが、そういう人間には金がない。どうも金をもつている者にはくずが多い。従つて貧乏なよき政治家を世に出したいためには、自分ができるだけそういう者を助けてやりたい、こういうのが辻翁の朝に夕に考えていることではないかと思います。殊に終戰後日本に非常に便乘主義者が多い。もつと確固たる信念をもつて政治をやつてくれなければ困るということを常に言つております。世間では辻翁を称して右翼の残党かフアシズムの再來のごとく言う人がおりますけれども、私はそういうふうに解釈したくはない。あの人はただ時代が古いし、相当過去の政党の中の経驗ももつております。自由党の中には随分辻翁を曲解している人もたくさんあります。しかしながらこれは非常な誤りで、辻翁はこの終戰後において、あくまでも日本の民主主義を正しい軌道に乗せたいと考えている点においては人後に落ちない人だと私は考えております。ただあの人のかつての経驗なり、環境なりからものを見た場合に、右翼の関係がありはしないか、あるいはフアシズム的傾向がありはしないか、いろいろな親分連中が出入りするというような事実を取上げてものを見ますると、非常な偏頗な見解に立ちまするけれども、無條件にまつすぐに辻氏を観際した場合には、非常にいい民主主議者の一人だと私は解釈しております。ただ人はおのおの間違つた考えをもつている場合もあるでしようし、また誤れる考えをもつている場合もあるでしようが、少し金をまき過ぎたと私は思います。
  278. 武藤運十郎

    武藤委員長 昨年の選挙にはどのくらいきましたか、大体見当はわかりませんか。
  279. 松岡松平

    松岡証人 大体それは委員長並びに委員の方々が想像しておられるところでいいのじやないかと思います。
  280. 武藤運十郎

    武藤委員長 その時分あなたは関係しておりませんでしたか。
  281. 松岡松平

    松岡証人 私はそういう謀議に参画しておりません。
  282. 武藤運十郎

    武藤委員長 金を出してやるという話だけは聞いておられたのですか。
  283. 松岡松平

    松岡証人 私は辻さんの書記長を命ぜられておつたこともないし、從つて私がもし采配を振つてつたら、もつと賢明な采配を振ります。何しろ老人はすでに七十を越しておいでになりますから偏頗な傾向もあります。私らくらい若い者になりますと、もつと賢明な方法で金を出します。
  284. 武藤運十郎

    武藤委員長 とにかく金を出して選挙をやらせるということはやるのですね。
  285. 松岡松平

    松岡証人 どの政党でも金がなくては選挙はできますまい。社会党であろうと、自由党であろうと、共産党であろうと金なしでは選挙はできません。
  286. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはそれとして、辻氏の立場ですね……。
  287. 松岡松平

    松岡証人 辻翁が金を出して、金のつるで人を統御していこうというふうに考えているというのは俗説なんです。ところが事実辻氏はそういう考えを少しももつていない。現に一面識ない者にも金をくれる。しからばその電話番号を知つているか、所を知つているかというと、全然知らない方が多い。それは意義がないじやありませんか、金をまいて金のつるで人を統御していくというならばわけはわかる。ところが今度の場合に金を渡された見面を私がちよつと観察してみますと、実に氣紛れでやつたところもあるし、関係の薄いところが非常に多いと思うのです。そういうことを考えてくると、まあ老人としてはもう自分は長く政治に関係もしておれないから、一目見たところこれはよさそうだと思えば金を出す、こういうことになるだろうと思うのです。
  288. 武藤運十郎

    武藤委員長 昨年の三月ごろ自由党本部の説築寄附金として二十万円出したということをお聞きになつておりませんか。
  289. 松岡松平

    松岡証人 それは私が受取つてきました。それは庸人が選挙直前に――私はその時分に幹部の一人でありまして辻翁からしばしば党は金が要らないか、こう言われましたから、いや今度はおやじさんの金は頂載しない、こう言うと非常に不氣嫌です。何遍もこれを促されましたが、私は党は何とかやつていくから金は要りません。こう言つたところが、いつのときでありましたか行つたら、建築の寄附をせよという話があつたからこれをもつてつてくれと言うから、私は、建築資金として頂戴していく、党の政治資金として受取るわけにはいかないと言つたところが、その通りである、君らは党の金は要らないと言うが、建築資金なら受取つたらどうだと言うから、私はそれをもつてすぐ院内の事務室が藤木という事務長にその金を手渡して、正式に私はただちに領收書を発行して郵便で届けることを言いつけておきました。その通り実行したはずであります。
  290. 武藤運十郎

    武藤委員長 本部の建築金というのは党の金とはどういうふうに違いますか。
  291. 松岡松平

    松岡証人 つまり選挙資金でない。選挙資金はもらわないという建前をはつきり党はもつておる。建築ですからそれはどなたからでも寄附を受ける。殊に関係の深い辻翁から建築の寄附をしたいというものを、これはどうもいかぬ、お前さんの金は受取れぬとはちよつと言いにくいですな。私はそう解釈しておる。
  292. 武藤運十郎

    武藤委員長 さようにいろいろな方面に金を惜しげなく出されるようですが、一体辻はどこからそういう金をもつてくるのですか。
  293. 松岡松平

    松岡証人 結果から見て、みなまくり上げて見るとたいへんな金に見えますけれども、あのとき私らの見ている面では、選挙になれば二百万や三百万の金はあの地位に置かれれば要るものと解釈しておりますし、またそのくらいのきれいな浄財があそこへ集まらぬわけはないと考えます。
  294. 武藤運十郎

    武藤委員長 いや、要るというのではなくて、どこから出てくるのか、そうしてまた集まらぬわけはないというのはあなたの考えであつて、われわれから考えると集まるのが不思議だという見方もあると思うのです。
  295. 松岡松平

    松岡証人 辻氏の置かれておる環境は、先生が育てた人だけでも十人や十五人じやないのです。相當実業界にも飛躍しておりまして、選挙になれば金の百万や二百万は電話一本でもつていく人は先生の教育した、また育ては人の中に十五人や二十人はおると思うのです。つまりいろいろな利権とか何とかに絡んで金をとるというのではなくて、無條件にもつていく人があると思います。またそれでなかつたらあそこに門戸を張つておれないわけです。田舎へでも引きこもつて百姓にでもなるよりしようがない、こう私は解釈しておる。
  296. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかに何かお尋ねはございませんか。
  297. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 いろいろお話が出ましたからちよつと伺つてみたいのですが、辻氏がこの中曽根事件以外に六百万円ほどの金を受取つておられることが明瞭になつておるのでありますが、ただいまの証人のお伊によると、辻さんはどの党にもそういつたような献金をしておる、浄財を寄附しておられる……。
  298. 松岡松平

    松岡証人 ちよつと待つてくでさい。どの党とも私は申しておりません。党という名前は使いません。
  299. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 党ということにこだわらないで……。
  300. 松岡松平

    松岡証人 個人です。
  301. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 個人ですが、党派と言いますか、どこの党派に属しておるというような狹い考えをもつていないという話を聽きました。そこで伺いたいのは、あなたが社会党の方にも世話をなすつたようなことでありますから、あるいは民主党なり、その他の各党なりへそういつたようなほかにも事実があることをお知りじやないでしようか、それを伺いたいのです。
  302. 松岡松平

    松岡証人 ほかの方へも出ていないかというのですか。――檢事局からもたびたびその質問がありますけれども、これは証人ですから、事実にさわらないことは私は申し上げない。私の触角やその他の情報によつて知つたものをここで申し上げる筋合はない。私がタツチしたことでしたなら申し上げます、タツチしないことは申し上げにくい。
  303. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 タツチされたことはありませんか。
  304. 松岡松平

    松岡証人 ありません。先ほど申し上げた三件以外にはありません。しかし私の触角でここで申せと言えばたくさんありますが、それは申し上げません。関係してはいないから申し上げないのです。証人であるなら……。
  305. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 関係していないから言わない、こういうわけですね。
  306. 松岡松平

    松岡証人 そうです。そこで私は辻老の心中をはかると、実に断膓の思いをしておるものがあると思う。言えば障りが出る。しかし言わなければつじつまの合わないものが出て來る。実に苦しい立場におかれておる。おそらく暮夜ひそかに考えたときに今現に議員の中にも……。
  307. 武藤運十郎

    武藤委員長 松岡君、もうよろしうございます。
  308. 松岡松平

    松岡証人 ずゐぶんおわかりになる方があるということだけ委員の諸君に申し上げておきます。
  309. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 証人に対して他の機会にまた触角や、そのほか情報の結論に対してお聽きするときがあるかもしれませんが、きようなごく簡單にお尋ねしたい。やはり触角を通じても、どういう情報によつても、直接関係せられないことでも、証人として知られておる限りにおいてはお述べにならなければならない。義務がある場合があるのであります。この程度だけのことはぜひお話願いたいと思うのです。その中曽根の二百五十万円以外の六百五十万円の金の力は、政治界で言えば、あらゆる党派に所属する人にそれが出されておるというふうなことになつておるかどうか一つの党派の所属の人ばかりではなく、たくさんの党派の所属の人にそれがそれぞれ贈與それておるというふうな事実です。そういうことを御存じになつておるかないか。
  310. 松岡松平

    松岡証人 いつの選挙後でありましたか、私が辻老に会いました際に、自分はずいぶん今度金を使つたが、しかし自由党ばかりということはない。あらゆる政党関係の人にも自分は金を出した。今度くらい氣持のいいときはなかつたということを述べておられたことがありますので、ひとり自由党ということはない。いろいろな方面に出されている私も考えております。
  311. 田中健吉

    田中(健)委員 先ほど証人は辻氏にいくばくかの金を用立した、その貸した金を返してもらつたつもりでいる、こういう証言がありましたね。
  312. 松岡松平

    松岡証人 そうです。
  313. 田中健吉

    田中(健)委員 そうだとすれば、辻さんの方では二百五十万円の中曽根幾太郎から出た金から岡田にやつている。こうおつしやる。そこに食違いがある。そこであなたの方で眞に貸した金を返してもらつたものだと思うとするならば、名刺にはどういうふうにお書きになつたのですか。貸した金を返してくれという書き方をしたのか、それともただ單に紹介したのか。その点を明確にしてもらいたいと思う。
  314. 松岡松平

    松岡証人 いやそれは前に本人と打合わせてありますから、私の名刺をもつて行つたときに、名刺をもつて行けばやつてくれることになつているというのは、つまり先ほど委員長に申し上げたように、選挙直前、昨年の暮に融通してもらつた金を返そうかど言うから、返すに及ばぬ自分の名刺をもつてつた者にやつていただければ結構だという話合がありますから、それによつて私が名刺を出してあるわけです。
  315. 田中健吉

    田中(健)委員 名刺には何も書いてないですね。岡田君を紹介するにあたつて、その名刺には援助というようなことは書いてなかつたですか。ただ紹介するというだけですか。
  316. 松岡松平

    松岡証人 御援助相なりたくと書いてある。
  317. 田中健吉

    田中(健)委員 御用立申し上げた金を……
  318. 松岡松平

    松岡証人 書かぬでも、辻老と私の間は、名刺を出せず領收証と等しいものです。これはほかの人は知りませんが、二人だけの関係ですから、二人の間には、金何百円也、右正に領收候也というのと同じことです。
  319. 田中健吉

    田中(健)委員 そうすると、岡田君は、あなたからお名刺をもらつて辻さんの所へ行くにありたまして、その事情を知つてつたですか。
  320. 松岡松平

    松岡証人 岡田君に、私は今あなたに上げたいが、少し足らぬから、辻さんの所へこれをもつて行けばもらえる……。
  321. 田中健吉

    田中(健)委員 そうでなしに、岡田さんはあなたから辻さんに貸してある金をもらいに行くとでも思つてつたのか、そういつたようなことは、岡田さんは承知しておらなかつたわけですか。
  322. 松岡松平

    松岡証人 暗示しておいた。
  323. 田中健吉

    田中(健)委員 暗示というとどういうふうなことですか。貸してある金をとりに行くと……。
  324. 松岡松平

    松岡証人 他人の名誉を傷つけるようなことは申せません。
  325. 田中健吉

    田中(健)委員 私はそこを明確にしておいた方がいいと思う。
  326. 松岡松平

    松岡証人 大体名刺を渡すときに、これをもつて行けばもらえることになつているから、行きなさい。
  327. 田中健吉

    田中(健)委員 もらえることになつているということは、あなたの貸した金が受取られるという意味が、それともそうでないという意味か、その点がきわめて不明確であるから、そこを明確にいたしたいために私は聽いている。
  328. 松岡松平

    松岡証人 そうですか。貸しがあるから、これをもつて行けばわかるということは言うておきました。
  329. 田中健吉

    田中(健)委員 岡田君に言つてあるのですか。
  330. 松岡松平

    松岡証人 言つてあります。
  331. 田中健吉

    田中(健)委員 それから高橋君、明禮君から話はありましたけれども、各党に所属する方々にも相当出ておるということは、今ここでは申し上げることはできないが、あなたはそれを明確に知つておる、こういう意味でありますか。
  332. 松岡松平

    松岡証人 いやそんなことはありません。私はそういうことに事実関與していないから証人として申し上げにくいということです。私が自分の触角なりあるいは情報なりで知つたものは述べるわけにいかぬというわけです。
  333. 田中健吉

    田中(健)委員 述べることはできないけれども、証人は大体知つておる、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  334. 松岡松平

    松岡証人 事実に関與しておらないのですから、私の言うのは情報なり自分の触角なりで、この筋に行つてやしないか、この筋に行つておるだらうという見当はつきます。その見当は申し上げにくい。
  335. 田中健吉

    田中(健)委員 見当は申し上げにくいが、見当はついておるというわけでしよう。
  336. 松岡松平

    松岡証人 それは私の主観です。客観的事実は知りません。
  337. 田中健吉

    田中(健)委員 二百五十万円というのは中曽根関係で出ておる、それ以外のことは触角である、こういうことですね。
  338. 松岡松平

    松岡証人 そうです。
  339. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか――それでは済みました。松岡さん御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  340. 武藤運十郎

    武藤委員長 実は先ほど一般的に申し上げましたが、あなたと高源さんの場合は少し違うのであつて、辻が檢事局でこういうふうに述べておる。  「應援の資金として渡しておるわけですが、そのような私の知合い政治家が七、八十人もあります。金をだれに何ほどやつたかということについては、先方に非常に迷惑を及ぼすという私の思いやりから、私としては立場上この際申し上げたくないのです。私の心情を十分御了察いただきたいと思います。もつとも私に対し自由に使つてもらいたいとの趣旨で金を提供する者は、右中曽根らのほかにそのような私の懇意な人があり、この点は申し述べておいてよかろうと思うので申し上げます。」こう言いまして、「東京の緑産業株式会社社長吉田彦太郎らは昨年より」昨年というのは昭和二十一年です。昭和二十一年より「現在」――というのは昭和二十二年の十月十日です。「この間に約三百万円を受取つておる。」こういうことを申しておる。この通りですか。
  341. 吉田彦太郎

    吉田証人 昭和二十二年の八月もしくは九月ごろ百万円は渡しました。それから戰爭中から終戰後まで引続き十万円とか二十万円しか渡した金が、延べるとやはり二百万円近くになるかと思います。
  342. 武藤運十郎

    武藤委員長 終戰後ぼろぼろ十万円とか二十万円とか……。
  343. 吉田彦太郎

    吉田証人 戰爭中から戰後までです。
  344. 武藤運十郎

    武藤委員長 それが二百万くらいになつて、二十二年の八月に百万円渡したので三百万円になるという勘定ですか。
  345. 吉田彦太郎

    吉田証人 そうです。
  346. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんとはどういう関係ですか。
  347. 吉田彦太郎

    吉田証人 私は二十一歳のときに上京してきまして、自分の國の先輩がおりました牛込の大化会というところに入会したのであります。その大化会の会長の岩田冨美夫という人のおやじみたいにしておつたのが辻さんであります。その関係でときどきお供をして行つております間に非常に可愛がられまして、私はほんとうの親みたいなつもりでおりました。
  348. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういう関係で出入りをしておるのですか。
  349. 吉田彦太郎

    吉田証人 そうです。
  350. 武藤運十郎

    武藤委員長 こういうふうに十万とか二十万とかで、三百万からの金を辻に獻金するのはどういう趣旨ですか。
  351. 吉田彦太郎

    吉田証人 お前らはとにかく金廻りがいいそうだから、あつたら少しくらい小遣いもつてこいというようなわけで、ちよちよい電話がかかつてきたり、直接おやじが遊びにきたりしたときに渡しておりました。
  352. 武藤運十郎

    武藤委員長 金額が少し多いようだけれども……。
  353. 吉田彦太郎

    吉田証人 うんと金があつたものですから、そのころは別に大した苦痛ではなかつたのです。
  354. 武藤運十郎

    武藤委員長 このくらいの金は何でもなかつたのですか。
  355. 吉田彦太郎

    吉田証人 そのころはそうでしたが、去年の八月ころはもうちよつと金がなくなつておるときで、おやじから少し金がないからまとめてつくつてくれというような話があつたものですから、今度が最後くらいならあつちこつち何とか借金ができるかもしれぬというようなわけで、百万円こしらえてもつていきました。
  356. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう仕事をしておられるのですか。
  357. 吉田彦太郎

    吉田証人 進駐軍の飛行場に砂利をもつてつたりしております。
  358. 武藤運十郎

    武藤委員長 戰爭中は……。
  359. 吉田彦太郎

    吉田証人 戰爭中は兒玉機関の副隊長をしておりました。
  360. 武藤運十郎

    武藤委員長 どのくらい收入があつたのですか。
  361. 吉田彦太郎

    吉田証人 收入と申しましても、私のところはみんな同志が集まつて上海に行きました。その連中が兒玉から、こういう仕事を頼まれてきた、みんなでやらないかというようなことでやり始めまして、それから上海とか南方からもつてくるモリブデンとかタングステンとかいうものが非常に拂底してない。それで今度は日本にある鉱山の開発などをやつてもらいたい。そういうわけで上海における私の方の商賣であげました黒字でいろいろなものを買いつけ、それを船で積んできまして海軍に渡して、その金を鉱山開発の金に充てたわけであります。これが欠損するばかりで、終戰前までになくなるはずのものが、あまり早く戰爭が終つたから金が残つた。残つた金を海軍にもつていきましたら、これはお前らの金で海軍の金ではない、お前たちにはまことに相済まぬということで、海軍からまた金を十万円かお礼としてもらつた。そのときに大体四千万円くらいの金があつたと思います。
  362. 武藤運十郎

    武藤委員長 あんたの手もとにね。
  363. 吉田彦太郎

    吉田証人 私の手もとというか、そのときに残つてつた金が……。結局それは兒玉が戰犯に指名されまして、全部進駐軍の方でお調べになつておりますから、おわかりと思います。
  364. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはあなた方が自由処分した金ではないのですか。
  365. 吉田彦太郎

    吉田証人 ある程度処分しましたときに兒玉が戰犯関係になつて、戰犯関係の特定財産ということで自由にならないようになりました。
  366. 武藤運十郎

    武藤委員長 どのくらい処分したのですか。
  367. 吉田彦太郎

    吉田証人 結局建物になつてつたり、鉱山の設備になつてつたりしておりまして、そういう不動産は今でも大分残つておりますが、金の方はほとんど残つておらぬのであります。
  368. 武藤運十郎

    武藤委員長 終戰後は何をしておられるのですか。
  369. 吉田彦太郎

    吉田証人 終戰後は鉱山をみんなやめまして、それから一年くらい何にもしないで、前の関係の者が百人ばかりおりまして、それは養つて何とかみんなでやつていく方法をとろうじやないかということでやりましたけれども、結局何をやつてもうまいぐあいにいかぬから、一月初めに解散したようなかつこうになつております。
  370. 武藤運十郎

    武藤委員長 緑産業というのはどういう会社ですか。
  371. 吉田彦太郎

    吉田証人 それは戰爭中は日南鉱業株式会社と申しまして、タングスチンとかモリブデンを採掘する会社です。それを終戰後はタングスチン、モリブデンの必要がないものですから、附帶事業を何かやらなければいかぬ、あるいは製材とか何か平和的に必要な仕事をひとつやろうじやないかということで、附帶事業の願書を出す時に緑産業という名儀にかえたのであります。
  372. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは相当もうかる会社ですか。
  373. 吉田彦太郎

    吉田証人 いや、これは全然だめでした。
  374. 武藤運十郎

    武藤委員長 この緑産業に倉石忠雄という者が関係しておりますね。
  375. 吉田彦太郎

    吉田証人 はあ
  376. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう地位にあるのですか。
  377. 吉田彦太郎

    吉田証人 それは去年やめました。その時は会長ということでした。
  378. 武藤運十郎

    武藤委員長 今は関係ないのですね。
  379. 吉田彦太郎

    吉田証人 はあ。
  380. 武藤運十郎

    武藤委員長 さつきのまとめて百万円というのは何でつくたのですか。どういうところから持つてきた金ですか。
  381. 吉田彦太郎

    吉田証人 それは私の方のビルに共立金属という会社がありまして、友達がこの社長をしておりますから、その友達にひとつ金策してくれというので頼んだ。それから一番下の室を淺野東日本スレート会社に貸しまして、預り金、保証金というような名目で金を借りたりしました。そうしてその期限が來るまでに私はその会社に返すという約束でつくつたのであります。
  382. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻はこの金を何に使うような話だつたのですか。
  383. 吉田彦太郎

    吉田証人 借金の支拂に使うような……。首がまわらなくなつたとか何とか、借金ばかりで首がまわらなくなつた……。
  384. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう支拂いに……
  385. 吉田彦太郎

    吉田証人 あちこちから金を借りたのだろうと思う。
  386. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういうわけであなたのところに一つまとめて金を作つてくれないかということであつたのですね。
  387. 吉田彦太郎

    吉田証人 ええ。
  388. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻がこういうふうな金を政党とか政治家にまいておるということをあなたは知つておりませんか。
  389. 吉田彦太郎

    吉田証人 はつきりわかりませんけれども、いやな道樂をもつているとは思つておりました。
  390. 武藤運十郎

    武藤委員長 いやな道樂というのはどういう意味ですか。
  391. 吉田彦太郎

    吉田証人 いろいろ人には道樂があるでしようが、とにかく人に金をやつて喜んでおる。私から無理して金をつくらして、随分変な道樂があるものだと、そういうふうに解釈しておりました。
  392. 武藤運十郎

    武藤委員長 それじやこれは別に借金を返すというわけでもないのだが、政治家に金をやるというようなことに使うというのじやないかね。
  393. 吉田彦太郎

    吉田証人 そういうことはよくわからない。私もたまに行つたりすることがあるが、床の間に十万円くらい積んであつたりするときは、半分もらつていきますよと借りたこともあるし、何に使うのかというようなことを聽かぬ仲ですから、道樂をやつておるなということはわかりましたが、はつきりしたことはわかりません。
  394. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か御尋ねありますか――それでは済みました。御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  395. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは高源と読むのですか――。新夕刊社長ですね。
  396. 高源重吉

    高源証人 ついこの頃やめましたからそれは前です。
  397. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人はあつちこつちの政治家七、八十名に政治資金の應援をしておる、そういう金の一つの出場といいますか、一昨年から昨年十月頃までの間に、あなたから百万円の献金を受けたということを言つておるですが事実ですか。
  398. 高源重吉

    高源証人 ええ。
  399. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻とあなたとはどういう関係ですか。
  400. 高源重吉

    高源証人 昭和八、九年頃からの交友関係ですが、非常に世話になつた人です。それ以來親子というような関係で尊敬し、私のことも非常に可愛がつてくれております。
  401. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういう関係で献金をしたわけでありますか。
  402. 高源重吉

    高源証人 献金じやない。献金というと妙にこのごろあなた方のおつしやるような趣意に触れるようなことになるかもしれませんが、私は過去において、青年時代に非常に厄介になつたということに対して、向うの要望があれば今後ともにそれに対して御恩返しをするという心持以外にはないわけです。政治ということには全然無関心であり、政治家というものを尊敬してもおりませんから、そういうところに使われるような金と意識して出したわけではないです。要するに辻という人を心から尊敬し愛しておるからこそ出したわけであります。
  403. 武藤運十郎

    武藤委員長 この百万円は一度に出したのでありますか。
  404. 高源重吉

    高源証人 そうじやありません。それは終戰後約十回近くになりますか、その間に五十万円、それから昨年の五月末かあるいは六月当初でしたか、辻老人が病氣で倒れられたとき困つているということを聞いて、そのときに五十万円才覚して渡しました。
  405. 武藤運十郎

    武藤委員長 合わせて百万円ですか。
  406. 高源重吉

    高源証人 そうです。十数回になりましよう。五十万円は一回です。最後が五十万円で、まとめて上げました。
  407. 武藤運十郎

    武藤委員長 これを辻が何に使うのですか。
  408. 高源重吉

    高源証人 百万円くらいの金は辻老人の場合には鼻くそにもつかぬのですから、何に使うかということを考える必要はなかつたように思います。
  409. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻はどういう生活をしておりますか。
  410. 高源重吉

    高源証人 さあ、皆さんが先ほどからお話になつているごとく、過去においては相当政治方面にも裏面的に盡しておられたようですが、最近では情勢の変りとともに、おそらく勢力もない、あつたところでそれは大勢を動かすほどの力はないというようなことは私たちにもわかりましたね。
  411. 武藤運十郎

    武藤委員長 いや、そういう返事を求めているのではないのであつて、百万円という金は辻の立場からいけば、鼻くそにも足りないというようなお話がありますから、じやどの程度の……。
  412. 高源重吉

    高源証人 現在では百万円というものは、過去における跡始末もありましようけれども、家屋が差押えされたとか、あるいは生活費にともすれば窮するとか――あの人は非常に金を散らすことが好きですから、常に困つてつたように私は存じております。
  413. 武藤運十郎

    武藤委員長 金を散らすことが好きというのは、どういうふうに散らすのですか。
  414. 高源重吉

    高源証人 現在は知りませんが、過去においてはたくさんの人のめんどうをみるとか、政党人ばかりでなく、若いわれわれのごとき者も相当やつかいになつた事実がありますから、われわれ以外の、政党方面関係のない人間に対してもめんどうをみていられる、こういうふうに解釈しております。
  415. 武藤運十郎

    武藤委員長 政党方面にも相当金をまくけれども、またあなたのような全然立場の違う者にも出している。金の使い方が非常にはでだから、百万円くらいは大したことはない、そういうふうに解釈してよいですか。
  416. 高源重吉

    高源証人 そうです。今日としてはことさらに時勢が変つておりますから、終戰後あの人が百万円の金を政党に出すということは、私としては信じられないことです。
  417. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたが辻に――献金と言つてはいけないかもしれませんが、出した金は條件とか何とかいうものはないのですね。
  418. 高源重吉

    高源証人 ありません。
  419. 武藤運十郎

    武藤委員長 無條件で……。
  420. 高源重吉

    高源証人 無條件です。
  421. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは新聞社の收入ですか。
  422. 高源重吉

    高源証人 いいえ、新聞社の收入ではありません。現在私にはその借金が残つているわけですが、新聞社の收入も一万円や二万円のものははいつているかもしれませんが、当時創刊以來二年にも足りませんから、新聞社の儲けということはありません。大部分は借金です。
  423. 武藤運十郎

    武藤委員長 まとまつた五十万円というのは……
  424. 高源重吉

    高源証人 一番おしまいの五十万円というのはやはり借金です。現在私は大体金にあまりタツチしない方で、人任せが多いですから、どこから借りてどうということは詳細には聽いておりませんが、責任者がおりますから、そういうことは質せばただちにわかると思います。
  425. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か御質問ありますか――それでは済みました。     ―――――――――――――
  426. 武藤運十郎

    武藤委員長 松葉さんですか――それでは辻嘉六をめぐる政治資金の問題につきまして、あなたを証人として調べます。事実を述べてもらいたい。もし知つておることを言わなかつたり、間違つたことを言つたりしますと、三月以上十年以下の懲役に処せられるということになりますから、あらかじめ御注意を申し上げておきます。その意味宣誓をしていただきます。     〔証人松葉武君宣誓
  427. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻嘉六檢事局におきましてこういうことを言つております。  「松葉は古くからの知合いで、もと牛込区会議員で、去る四月の選挙には東京都議立候補につき金が要るといふので、一万円渡してやりました。」  こういうことになつていますが、この通りですか。
  428. 松葉武

    ○松葉証人 いや違います。
  429. 武藤運十郎

    武藤委員長 どこが違うのですか。
  430. 松葉武

    ○松葉証人 私はただ挨拶に行きましたら、一万円をくれましたが、運動金などという意味でなく、再三これまでも長年の間もらつたことがあります。そういう軽い意味でもらいました。
  431. 武藤運十郎

    武藤委員長 しかし時あたかも選挙ではなかつたですか。
  432. 松葉武

    ○松葉証人 しかし一万円の金で選挙せよというような氣分でもらつたのではありません。
  433. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙にはどのくらいかかるのですか。
  434. 松葉武

    ○松葉証人 都会は一万円いくらかかるのじやないですか。
  435. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではちようどいいじやありませんか。
  436. 松葉武

    ○松葉証人 ちようどいいと言つたつて、すでに選挙をやつておりましたからね。それは選挙半ばで、私いただきましたのは立候補してからであります。
  437. 武藤運十郎

    武藤委員長 足りなくなつてからもらいに行つたのじやないですか。
  438. 松葉武

    ○松葉証人 そんなことはありません。そんな氣分はありませんけれども、辻先生とは多年出入さしていただいておりました関係上、毎年いろんな関係で頂戴しておりました。
  439. 武藤運十郎

    武藤委員長 毎年どのくらいもらつております。
  440. 松葉武

    ○松葉証人 そのときによつて、昔の金では五百円とか千円とか、現在では一万円くらいは私の小遣として頂戴したことがあります。
  441. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻はあなただけでなく、よほど多くの人にも一万円、二万円というふうに出しておるのですか。
  442. 松葉武

    ○松葉証人 その点は新聞紙上で今度初めてわかりました。それまではさらにそういうことは知らなかつたです。私は一人でした。
  443. 武藤運十郎

    武藤委員長 御自分だけのこと……。
  444. 松葉武

    ○松葉証人 そうです。
  445. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏はこういう金をどこからもつてくるかあなたは知りませんか。
  446. 松葉武

    ○松葉証人 全然わからぬですね。あの方の過去におかれて頂戴しておる金も、昔いただいた金も、どういうところから出たかについては全然知りません。わかりませんでした。
  447. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたがもらつた一万円はやはり選挙に使つたのですか。
  448. 松葉武

    ○松葉証人 いや、そうではない。
  449. 武藤運十郎

    武藤委員長 何に使いました。
  450. 松葉武

    ○松葉証人 まずお菜でも買つたり何かして……。
  451. 武藤運十郎

    武藤委員長 まじめにやつてもらわなくちやこまる。
  452. 松葉武

    ○松葉証人 その間雜誌なんか買つたり、いろんな家庭の生活の小遣として使つておりました。
  453. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙には使わない……。
  454. 松葉武

    ○松葉証人 使いません。
  455. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお聽きなることはありますか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  456. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  457. 武藤運十郎

    武藤委員長 この際鈴木仙八君が何か一身上の弁明について発言を求めておられるのですがいかがいたしましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  458. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは時間を五分に限つてつてください。
  459. 鈴木仙八

    ○鈴木仙八君 五分ではできませんからもう少しください。
  460. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは十分くらい。
  461. 鈴木仙八

    ○鈴木仙八君 人樣を召喚してまでも事実を確かめなくちやならない委員会ですから、そう制限されずに、私の言うことによりましてどんな事実が出るかわからないのですから、そういうふうに制限されないで……。
  462. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういうことを私どもは期待しておるのでないのです。
  463. 鈴木仙八

    ○鈴木仙八君 しかし話のついでですから、またそこからヒントを得るかわからないから、そう制限されては弁明できないのです。
  464. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはゆつくり聽きたいのですが、遠くから來ている人もあり、非常に人数が多いものですから制限しておりますので、なるべく短くお願いしたいと思います。
  465. 鈴木仙八

    ○鈴木仙八君 私一身上の弁明で発言をお許しくださいましたことを感謝いたします。私は大体この不当財産取引委員会ができまして非常に迷惑をしておる一人でございます。その迷惑たるやお話にならない程度の迷惑なんです。その以前に遡りまして、この隠退藏物資の問題がいかに私の一身上の問題に重大な関係を及ぼすかということを考えると恐ろしくなつてまいります。私はこういうところに出てお話することは嫌いなんですが、やむにやまれない心持をもつて私は申し上げた。制限されるとはなはだ困るのですがなるたけ御寛大に御取計らいが願いたいと思います。  まず私は最初に議員の心構えを申し上げたいと思う。私はかつて先輩古老から、議員になるには十分に覚悟をしなければならない。まず一般社会にいる相当の人格者であつても、議員になると品性が劣等になる。議員にならないときの方がよほど立派な心構えをもつてつても、議員になるとどうもぐあいが惡くなるというふうなことをしばしば聞かされております。また私の亡き母の訓戒であります――私の母の無学に近い女です。言うこともきわめて月並体のものでありました。まず人樣にものをもらうな、與える立場になれ、人樣から受けた恩義は絶対に忘れるな、かけた情は忘れてしまえ、こういうふうな母親の訓戒でした。私はそれを求に刻みつけて、人間として一人前の者になろうと心掛けておつたのであります。まず私は幼少の折からあまり人によく言われない乱暴者でしたが、当時三十の年に町会議員にならんとした。周囲の人が止めるのも聞かないで立候補いたしました。血肉をわけた兄が二人おりましたけれども、私の立候補に対しまして決して賛意を表してはくれなかつたのであります。まずやめろ、お前が町会議員候補に立つなんというから自分たちは世間に顏出しができない、きまりが惡いというふうな話でした。それも無理からぬと私は兄の心境を考えていた。それは乱暴者であつた私が町会議員になるというのですから、しかうして私はその当時の町会議員、小さな議員であつたかもしれませんが、それはわれわれとは立場の違つた雲の上にいるような貴い人たちであるというふうな存在であるというような考えておりましたが、いずれにしましても私は自分で考えるところがあつて、町内会や親戚知巳に一切何事を申し上げないで立候補いたしましたところが、自分で一票入れましたから百五十八票、ところが百五十八票をとつた者が三人出てしまつた。当時の私の生れました王子町の町会は定員三十名でありまして、二十九、三十、三十一番、年少のゆえをもちまして私が三十一番目でもつて同じ点数をとつて、当時の定義に從い落選をしてしまいました。爾來貴きものは一票であると骨の髄まで沁み込んでおります。おそらくはこれは同僚議員各位が皆おもちになることだろうと思います。しこうして私はこの同点というにがいにがい体驗をもちまして、何とかして人間になりたい、何とかして母親の言葉を尊重して、胸に刻みつけて一人前の男になりたい。爾來寢た間も忘れないでおりました。また私は一つの例を申し上げますが、私に対する兄、知己はともかく、友人等が私を男にしてくれるために、どのくらい涙をもつて私に対し諌め、また激励をし、あるときはこういうようなことまであります。それは昭和八年九月八日附の私に対する書簡でありますが、王子区上十條町千三百六十番地高木貴代吉という私の友人からまいりました書簡であります。   「拜啓其の後は御無音に打過ぎ申候へ共御変りも御座無候や小生儀此度ある事情の為此の世を去る。元より自死の罪惡なる事は万々承知致し居り候へ共何とも致し方無之候、唯々残念なは君をして今一度來る市会改選の時犬馬の労を取らず行く小生の心御察し下され度。最後に臨んで大兄の健康をお願ひ折角御自愛專一に御暮し下され度願ひ上候    伊東温泉山海樓にて 書  鈴木仙八」  こういうふうな、今や死んでいくその友人までが、私のために何とかして当選をさしてやりたいというその心境を考えまして、爾來私は何と申しますか。自分は議員として、自分の身体とともに自分はそういうふうな支持者の身体である。いわゆるその当時は市民の代表者である、あるいは町民の代表者である、今日國会議員として眞に國民の代表者であるという考えは、寢た間も忘れたことはないのであります。これが私の議員としての心構えであり、どんなことがあつても友人に対してその期待を裏切りたくないのが私の心持であります。ところが私は二十年の議員生活の間ただの一度もさいわいにして選挙違反も起したことはないし、また公の殊に金銭などの問題は一回も起したことはありません。しかしてまたこういうような友人が同志のその氣持を裏切らないために、私は十年間本年四月十日をもちましてまる十年間大酒のみであつた、大タバコのみであつた私が、酒もタバコもやめまして、足りないながらも國家のために盡そうという考えをもつておりましたところが、はからずも私に対して何と申しますか、議員生活二十年間のうちに、かつて見ることのできないような大きな問題がここに惹起をいたしました。それは先般昭和二十二年九月七日附の毎日新聞であります。
  466. 武藤運十郎

    武藤委員長 鈴木君、そのことは当時新聞で大分こまかく報道されて一般に周知だと思いますから、当委員会で弁明されますのは先ほどお話のありました何か御迷惑をこうむつておるその点だけにしていただきたいと思います。
  467. 鈴木仙八

    ○鈴木証人 大事な点ですから。早くやります。  その毎日新聞の中に   「政治献金はした、一千万円はデマ損害は弁償、沈默破つた中曽根氏、世耕事件の主流をなす軍服拂下詐欺関係檢事当局の取調べは被害者関係の取調べを終り、第二段階の安本隠退藏物資処理委員会と政治献金関係の取調べに入つたが、政治献金について当時自由党関係者への軍服拂下運動を担当した中曽根幾太郎氏は、六日朝熱海の仮寓で「政治献金」のいきさつについて次にように語つている。   「軍服拂下運動費として全國鉱山会代理中村清文氏並に岩手縣軽米農業会代理足立正雄氏から各九十五万円、水野繁彦氏から二百万八十円合計四百七十万円を受取り、その外雜費として水野氏から矢島事件解決費として五十万円、狹間祐幸氏を通じて名刺代りに三十万円合計八十万円を受取つた名刺代りの三十万円を除いた五百二十万円の金の中から四百六十万円を「政治献金」した、その内訳は辻嘉六氏を祕書を通じて二百五十万円、鹽月、藤川両氏へ百六十万円、鳩山一郎氏邸新築費として祕書を通じ五十万円、合計四百六十一万円を自分から渡したほか、残額の六十万円は車馬費、交際費に費消してしまつた。   厚生同胞協力会の綿引理事長、小川理事等がいつている自由党への「一千万円献金」はデマで、厚生同胞協力会と自分との直接関係はない、協力会関係は水野氏の方で扱つた、なお自由党から私が立候補した際辻氏の口添えで公認となり、また当時の石橋藏相が陣中見舞に私の選挙事務所を訪ねたり、そして私はこれなら大丈夫とますます確信を固めていたところ、待ちわびた軍服はあり騒ぎで一着も出ず今日の有樣となつて私は非常に遺憾に思つている。   殊に鹽月、藤川両名は献金するといつて受取つた金の大部分を自分達の選挙費用に費消しながら、今日まで責任を回避し徒らに他に罪をなすりつにているのはひきよう千万で、同時にまた世耕氏がろくろく在庫を調べもせず拂下を要請合いしたその無計画性と責任逃れにきゆきゆたる狹量さにはあきれる、犯罪上の責任はともかく以上三氏の道義上の責任は大きく徹底的に追究すべきで事件一段落をまつて少くとも私自身関係した被害者にはその損害を弁償するつもりだ。」  こういう中に、どうもなさけないことには鳩山一郎氏私邸新築費五十万円祕書鈴木伸八氏えとして特段に括弧して出ている。これには私は愕然としてしまいました。これは昨年の九月七日の朝であります。私はただちに毎日新聞を訪れまして、取締役主幹兼主筆永戸政治氏並びに鈴木一郎氏一色直文氏というような方々に会いまして、自分の今までの議員としての心構えその他についてるる申し述べまして、この偽りであることを私は申し上げたのであります。ところがいろいろ調査をいたしまして、私がまず申し上げましたのは中曽根幾太郎という男と一面識もないこと、鳩山氏の祕書などやつたこともないこと、当時私は商工参與官として追放になつております。鳩山一郎氏の秘書を絶対にやらないということは事実が証明している。もう一つは五十万円どころかビタ一文の金も見たことがないこと、以上三点を私は毎日新聞に行つてるる申し述べました。ところが翌日になりまして、  「面識ない中曽根、「世耕事件関係の鈴木氏」、世耕事件に関連して中曽根幾太郎氏は政治献金の経緯について軍服拂下げの運動費として自身が各方面から受取つた合計五百二十万円のうちから四百六十万円を献金したと献金先の内訳を語つたが、氏の言明した鳩山一郎氏に新築費として秘書を通じ五十万円を渡したということについて、氏の言う秘書に当る鈴木仙八氏(自由党割議院議員)は八日朝参議院議員遠山丙市氏と同道、本社を訪れ次のように語つた」   中曽根氏の話は事実無視だ、私は次の三つの事実からこれを証明する。   (1)中曽根幾太郎という男と一面識もないこと(2)鳩山氏の秘書などやつたことがないこと(3)五十万円どころかビタ一文も金のことを知らぬこと   ただ中曽根という人については彼が東京三区から立候補する時、党の公認にするかしないかについて論議されたが、私は支部幹事長の立場として反対、公認しなかつたことはある、それを彼が知つているかどうかは知らない」  という意味合いのことが記事に出ております。鈴木司法大臣は当時の隠退藏物資の委員会か何かで中曽根君がとにかく自由党の公認候補であるがごとく、自由党の公認候補中曽根幾太郎氏ということをはつきりおつしやつたそうでありますが、これは全然無視であります。中曽根氏は大野幹事長の手もとへ党の費用として二百万円献金をするからどうか公認にしてくれと頼んできたが、私どもはその公認選考の席上で、しかも東京支部幹事長として断乎として排撃した。尾崎嘉之助氏も私は公認ではいけない。これはやめてもらおうと言つて、がんとして受付けなかつた。いわゆる中曽根幾太郎氏は非公認であります。それがはつきりわかつているのに、鈴木司法大臣は自由党の公認であると、委員会で述べられたそうでありますが、これは言語道断の事実であります。  それから私はなおこれでは自分として氣持がよくない。とにかくこの訂正の新聞記事だけではどうも納得ができない。というのは私をいわゆる死ぬときまでも思つてくれる同志、私は人間にしてくれ、一人前の政治家にしてくれるために支援してくれたその人々に対しても申訳がないから、ただちに毎日新聞の記者にお願いして、帶同して熱海の小川旅館に行つた。その時でありますが、私が考えましたのには、ただいきなり行つてその帶同した記者から、これは鈴木仙八であると言われては困る。努めて新聞社の社員のようなかつこうをしてと申したいんですが、私は新聞記者諸君のようにスマートでなく、インテリ型でありません。しかしことさらそれを装いまして、小川旅館に参つて、とにかく僕は默つているから、君がこの男をあなた知つているかと中曽根氏に聽いてくれと申した。そうしてその手口のように小川旅館に参りまして尋ねると、中曽根君がおつて、直接ではたれにも会わないのに、その新聞記者には会つてくれるそうでありまして、私はその背後に從つて行くと、中曽根君が向うの部屋で机の行の書類か何か片づけものをしておりましたが、ちよつとこつちを見て、やあしばらくだつたね。しかしあの記事を大分大きく取扱つてくれてよかつたね。こういうふうな中曽根君の言葉でした。ところがその記者はあなたこの方を知つておりますかと何氣ない体で言うと、中曽根君は私をちよつと見て、いや知らぬわ。覚えがないね。いや御存じでしよう。いや覚えはない。どこで会つたか、記憶がないと言う。今度は私のすわつている卓の前に來て、顔をつき出して私の顔を眺めた。ところが中曽根氏はまるつきり知らない。見覚えがないと言うから、そんなことはないでしよう。あなたは私を知らないのですか、知りません。あなたは私に五十万円くれたと言うたではありませんか、私は五十万円もらつたと言われる鈴木仙八だと言うと、びつくりぎようてんいたしまして、にわかに態度が変つて、何かしらこびるような、少しぐあいの惡いような、名状しがたい挙動をして、ははあ鈴木先生はあなたですか、どうもあなたは家のせがれや辻先生から聽いていると、浅草、下谷方面では、あなたの人気は大したものですねというような、お追從たらたらの彼の態度です。そんなことはどうでもいい。あなたはいつ私に五十万円の金をくれたか、私は五十万円もらつたというので、非常に迷惑しているというような、とにかくやりとりがありました。これはその後の毎日新聞に出ております。  「鳩山献金はうそ。世耕問題、鈴木、中曽根氏対決、世耕問題に関連して鈴木仙八代議士(自)を通じて鳩山一郎氏に同氏邸新築費用として五十万円を渡したと語つた中曽根幾太郎氏の言明に対し、「一面識もない」と語つた鈴木代議士は中曽根氏がどんなつもりでそんなことを言つたのかを明らかにし、また身の潔白を証明するため、九日午前十一時中曽根氏の仮寓先熱海の小川旅館で氏と対決した。鈴木氏は白麻の背廣姿、中曽根氏はゆかた姿で、その結果両氏はこの日が初対面であり、從つて中曽根氏の鈴木氏に関する談話はでたらめであることが判明、中曽根氏は陳謝の上先の言明を取消した。  鈴木氏「中曽根さん。貴公は私を御存じか。」  中曽根氏「さあ年をとつたので、ちよつと思い出せぬが……。」  鈴木氏「知らないはずだ。私はあなたが五十万円渡したという鈴木仙八です。」  中曽根氏「えつ(びつくりした樣子で)あなたが鈴木代議士か。」  鈴木氏「あなたから五十万円もらつたと言われ非常に迷惑している。」  中曽根氏「まつたく申訳ない。あの話はあなたが鳩山邸新築問題にせわ役として骨折つておられるということを聞いていたので、実はある人に渡した五十万円の金があなたのところに行つたものと思い、軽く言つたことがあの始末になつた。深くお詫びする。」  鈴木氏「貴公はそれでよいかもしれぬが、全然無関係の鳩山氏こそ氣の毒だ。ぼくが五十万円受取つたとしたら世間で一体何と言うか。着服して事業に投資したと心ない人々に言われる。これで私の無関係がはつきりしたわけだが、鳩山邸の新築は自由党幹部の同志たちで計画されたもので、材料をもちより燒跡にささやかな家を建てて贈ろうということで始めた仕事で、当時私がその方のせわ役をやつてつたことは事実だ。しかしその建築費はすべて有志から出ており、貴公の関係からは一銭も出てはいない」  云々というような記事が出ておる。これで私の身の潔白は立証されている。そればかりでない。その次に彼中曽根がいかにでたらめな男であるかということは、この問題について政界ジープ社から、何か随想を書けと言われたのであります。そこで私が書いた記事は、少しも拔かずに掲載してくれるならばということでお引渡して、「噂は廻る」という一文を呈したことがあります。とかろがかんじんのところが拔けている。当時は社会党の内閣でありましたが、とにかく私は後々のことを考えまして、熱海の毎日新聞の支局というか、出張所の方に來て立会つてもらい、また写眞班を呼んできてもらい、また朝日新聞の支局長に來て立会つてもらい、自由党熱海支部長の畠山鶴吉という人も立会つて、小川旅館に行つた。そのとき中曽根言つたことは、いやあなた方に御迷惑をかけて申訳ないが、私のところに西尾、平野、水谷、片山の四人が、どうか二百万円貸してくれと、手をついて頼んだ。こういうことを言つておる。一体どこでそういうことを言つたのかというと、それは新橋の片山のめかけの家へ僕が呼ばれて、そうして手をついて頼まれたと言う。私はそいうことは信じたくない、絶対あるべきことではない。とんでもないうそつき野郎というふうに考えておりました。しかし君、そんなうそついて、とんでもないことになる。ここにぼくばかりではない。こういう人たちがおると言うと、それはうそぢやない、しかも勘定まで拂わされた。片山さんにめかけなどあるのかと言うと、これは社会党の黒幕になつておる三浦某というものが仲介したので、うそでも何でもない。そういうことを手をついて頼まれたのだと言うに至つては、私はどうもふしぎ千万でしかたがない。しかしこういうことは私は申し上げたくないけれども、どうも政界ジープなどは、かんじんのところを拔かして、私の前の新聞記事に似たような記事ばかり掲載されまして、あまり効果が上りませんでした。これで私はもう片がついたと思つておりましたところが、檢察廳から吉橋檢事という方が電話で來てもらいたいということを、警視廳を通じて私の方に知らせがありましたから、行きましたところ、鳩山邸の問題で、いろいろお尋ねになりましたけれども、その点に対しても、もうよくあなた方の方が調書の点についてはおわかりでしよう、賢明な委員長その他の各位にもおわかりでしようが、とにかく私は身に一点やましいことがない。ないことであるけけども、事件に介在しておると言えば、言われる。私はここが微妙なのではないかと思う。とにかくそのときに私は、自由党では非常に正義感をもつておる同志が激昂して、世耕事件や隠退藏物件などの問題に関連した者は、同志といえども全部除名しろという強硬論があつた。だから私は吉橋檢事に喚出されて、新聞に鈴木仙八十頭などと書かれると、自分の背後におる同志からいろいろ追究され、非難攻撃されるし、選挙区のぐあいも惡くなり、同時に院内においても同僚から除名されることになりますと申しますと、吉橋檢事が、鈴木君そういうことはない。あなたの態度はりつぱである。あなたのやつてきたことは決して間違つていない。裁判所で証明を出してもいいと言われた。それで意を安んじていたところが、今度はたまたまこの不当財産取引調査委員会なるものができて、私はまたもや寢耳に水だ。それは二月二十五日水曜日東京民報で、その一面に掲載された衆議院不当財産取引調査委員会近く証人召喚というところに、情ないことにまたもや鈴木仙八の名が出ている。私は愕然としました。それでただちに東京民報に行きまして、るる申し述べたところ、もちろんないことですから、それはわかります。それでは調査をして取消しましようと言うから、栗林という編輯部長に、いや取消すといつても、どんな策略で、どんな人がどんなことをやつておるかわからないから、調べてもらいたいと言つたところが、向うで言うのには、何でもあなたがそのリストに載つているらしい。そのリストというのは、とにかく私は世耕事件中曽根幾太郎の問題で、ああいううそ偽りを言われて、そうしてこの事件に載つていると言えば、載つているんだが、どうもおかしい。とにかく調べた結果、翌日訂正の記事が出ました。「二十六日附、一面所載の衆議院不当財産取引調査委員会近く尭人召喚の記事中、鈴木仙八(自)とあるが、下澤氏のリストには同氏の名はなく、木村公平氏(自)が載つているので、この点訂正をします。」なお私の談話が発表されている。しかしこれが私は奇怪当極でしかたがない。私はどうも世間でいろいろなことを言う。芦田さんまでが各地の演説会において、やがてこの不当財産取引調査委員会がいよいよメスを研いで、これを解剖していつたならば、続々と自由党の議員から、いろいろな人間が飛び出すというような意味合いのことを言われている。そういうことを、風の便りにいろいろ聞いております。そんなことはどうもあり得べきことではない。個人同僚を傷つけることさえもどうかと思うのに、とにかく一党を傷つけるのはどういう考えか。どうも私はそういうことは信じたくないのですが、その点をますます深めましたのが四月六日の読賣新聞の記事であります。またもやこれが出てしまつた昭和二十三年四月六日読賣新聞、まず   証人にまず五議員    政治資金撒布をつく   衆議院不当財産取引調査委員会では、五月午後問題の政治資金撒布事件をとりあげた、現職の同僚議員を相手の証人として喚問しているだけに、複雜微妙な空氣をはらみ、証人の出足も惡く、定刻より遲れること一時間、二時開会した、召喚をうけている証人はまず現議員のみで民自党三浦寅之助、木村公平、磯崎貞序、鈴木仙八、  どうです、私はびつくり仰天してしまつた。それで早速読賣本社を参りまして、編集局長を訪れ、私はこの問題について質そうと思つていた。ところが読賣新聞の政治部次長の高田義郎さんが、特に面会してくれました。私は非常にこの方は紳士だと思つております。私も鈴木さんのために一票を投じておりますと言つてくれた。とにかく問題は、投票してくれるのはありがたいが、こういう問題はどうしますかと言うと、今調査しますからと言う。ところがその調査の結果、不当財産取引調査委員会委員長である武藤運十郎氏が言つたというのです。どうも私には受取れない。ほんとうに武藤さんが言つたのか、それではあなた一筆書いてくれ、書くことはできませんが、取調べたところ、確かに武藤委員長が鈴木仙八も関係があると言つたから、つい載せたと言う。私は計画的であれば、事件関係ないとは言わぬ。前にはつきり公明正大なことはわかつておるけれども、結びつけようとすれば召喚もできる。それには政治的も意図が含まれていなけれぱならぬ。私は、はてこの委員長はどんな考えでそういうことを言つたか、疑問になつてきた。しかして私は登院しました。私の党から出ております委員の高橋君にいろいろお願して、私が召喚を受けているかどうかという事実を確かめましたところが、何でもあなたの帳面に、鈴木仙八も書いてあるというのです。この新聞記事のわずか鈴木仙八という四つの活字ですが、その時と所を得なければ、どんなにその活字によつて迷惑をこうむるかということは、おそらく賢明なるあなたはよくおわかりでしよう。殊に弁護士であり、委員長であるから、もしそんなことを軽々に新聞記者にお話されたとしたならば、迷惑至極です。これは科学的の殺人と同じです。昔のくだらない本によくあるが、人を殺そうと思うときには共謀して、どうもお前の顔には死相が現われておる。お前の骨相は惡い、死病にとりつかれていやしないか。みんなにそう言われると、結局その人間が死んでしまうと同じです。「政界ジープ」に出る、その他まだまだ私の眼に触れないところに書き立てられては、選挙区に帰つていかに弁明しても取返しのつかない一身上の重大問題だ。しかして私が本日ここに発言したのは、一身上の弁明と、委員長のあなたの態度についてです。あなたにそういうような政治的意図があつたか、なかつたか、鈴木仙八も召喚をするのだということを、軽々に新聞記者各位に言つたかどうか、その点をお尋ねいたしたい。読賣新聞の高田義郎という人が、あなたがそう言つたから書いたとはつきり言つている。同僚である私を召喚するには理事会にも御相談があるはずだ。それなくして、あなたの帳面に書いてある召喚の見込みというようなことで、政治的に人一人が殺されることは重大問題である。殊に党を傷つけられるということは重大問題である。その点をはつきりとあなたから聽きたいのです。きようは自分の一身上の弁明ですから、あとで私の方から出ている委員から、この点をきつて聽いてくれるだろうと思いますが、どうかそういう間違いのないようにお願いしたいと思います。鳩山さんも召喚したいというが、とにかく中曽根に聽きました。一体君が鹽月、藤川に渡した金は、鳩山さんにやつたのがどつちかと言うと、鹽月、藤川に貸したと言う。それを鹽月、藤川が鳩山に好意をもつてつたかどうかわからないが、私は鹽月、藤川に貸したと、はつきり言明しておる。これをほじくり立てれば、中曽根が今言う片山さんのお妾の家で、手をついて頼んだ人がないではないから、どうか間違いのないようにお願いいたします。時間が制約されておりますから、簡單ですがこの程度にいたします。ありがとうございました。
  468. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは議事に移ります。証人約四十人を喚び出したのでありますけれども、取調べの済みましたのは約二十人であります。あとの二十人もぜひ喚問しなければならないと思いますが、委員会日を十三日、十四日の二日間に充てまして、午後一時から続行いたしたいと思いますけれども、いかがでありましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  469. 辻寛一

    ○辻委員 ちよつと一言、鈴木君の弁明中にありました委員長の御発言と称する新聞記者の言葉ですが、前委員長以來現委員長もともに愼重に愼重を加えてこの問題を処理していただいておると思つておるので、まさかそういう軽率なことはなかろうと思いますが、とにかくこの問題をめぐつて、あるいはその生命を断たれるような迷惑を受けるような人があとからあとから出てくると思う。こういう問題に対して新聞記者の責任も相当重大だと思うのですが、今後こういう問題については、各関係者のみならず、新聞記者諸君にも愼重に善処していただかなければならないという意味で、今の鈴木君に召喚状を発したということを新聞記者に語られたことが委員長にあるかないかということについて、明確なる御答弁を願いたいと思います。
  470. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど鈴木仙八君から一身上の弁明を求められましたが、そのうちに委員長が読賣新聞記者に対して鈴木仙八君を証人として召喚すると語つたということがありましたが、委員会としましては、今まで鈴木君を証人として出頭を求めたことはありません。從つて委員長が鈴木君を証人として出頭すべき旨を読賣新聞記者に語つた事実はありません。  残余の証人については來る十三日、十四日両日午後一時より再喚問をいたします。辻嘉六、鳩山一郎、福井ます及び松風も同日これを証人として喚問をいたします。なお群馬コーヒー事件について前橋檢察廳より取調べ記録の取寄せをいたしたいと思いますが、いかがでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  471. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは異議なきものと認めてさよう決します。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十七分散会