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1948-06-16 第2回国会 衆議院 農林委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十六日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 井上 良次君    理事 岩本 信行君 理事 森 幸太郎君    理事 佐竹 新市君 理事 永井勝次郎君    理事 鈴木 強平君 理事 萩原 壽雄君    理事 北  二郎君       小川原政信君   小野瀬忠兵衞君       佐々木秀世君    重富  卓君       田口助太郎君    綱島 正興君       野原 正勝君    八木 一郎君       山村新治郎君    清澤 俊英君       黒田 寿男君    成瀬喜五郎君       野上 健次君    溝淵松太郎君      青木清左ヱ門君    神山 榮一君       菊池  豊君    小林 運美君       関根 久藏君    寺本  齋君       中垣 國男君    坪井 亀藏君      的場金右衞門君    平工 喜市君       松澤  一君    森山 武彦君       大瀧亀代司君  出席國務大臣         農 林 大 臣 永江 一夫君  出席政府委員         農林政務次官  大島 義晴君         農林事務官   山添 利作君         労働政務次官  大矢 省三君  委員外出席者         農林事務官   小倉 武一君         農林事務官   田辺 勝正君         專門調査員   片山 徳次君         專門調査員   岩隈  博君 六月十五日委員稻村順三君辞任につき、その補欠 として田中織之進君が議長の指名で委員選任さ れた。     ――――――――――――― 六月十五日  酪農業の保護に関する陳情書  (第五九一号)  罷業中の労働者加配米配給停止陳情書  (第五九六号)  蚕糸業振興に関する陳情書  (第六〇四号)  神奈川縣における土地改良事業費國庫補助増額  並びに稻毛、川崎二ケ領用水宿河原堰堤改良工  事促進陳情書  (第六一〇号)  食糧自給対策確立に関する陳情書  (第  六一五号)  公團式薪炭配給統制機関設置反対陳情書  (第六二九号)  満州大豆輸入要請に関する陳情書  (第六五七号  )  土地改良事業費國庫補助陳情書  (第六六四号)  鹿兒島種畜牧場存置陳情書  (第六六五号  )  食糧対策に関する陳情書  (第六六六号)  岡山縣における土地改良事業費國庫補助陳情  書(第六七三号)  蚕糸業振興に関する陳情書  (第  六七五号)  町村食糧調整委員会長選任に関する陳情書  (第六七八号  )  米價改訂等に関する陳情書  (第六八三号)  長野縣土地改良事業費國庫補助増額陳情書  (第  六九二号)  農業協同組合連合会設立促進陳情書  (第六九六号)  森林行政確立に関する陳情書  (第七〇四号)  薪炭生産者地位向上に関する陳情書外一件  (第七  〇七号)  主食の三合配給に関する陳情書  (第七一八号)  主食増産に関する陳情書  (第七二〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員選定に関する件  自作農創設特別措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出)(第一〇二号)  農地調整法の一部を改正する法律案内閣提出  )(第一〇三号)  輸出入植物檢疫法案内閣提出)(第一〇六号  )  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出)(第一〇四号)  農業改良助長法案内閣提出)(第一〇五号)  食糧確保臨時措置法案内閣提出)第一一五号  )  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出)(第一三九号)  獸醫師会及び裝蹄師会の解散に関する法律案(  内閣提出)(第一四二号)  家畜傳染病予防法の一部を改正する法律案(内  閣提出)(第一四八号)     ―――――――――――――
  2. 井上良次

    井上委員長 これより会議を開きます。  本日の議案の審議にはいる前に、先般本農林委員会を代表されまして岐阜縣雹害並びに水害現地調査に参りましたので、まずその被害状況について視察御報告を、調査委員であります成瀬委員にお願いいたします。
  3. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 國会の命を受けまして、民自党の八木一郎委員社会革新党の平工喜市委員及び成瀬の三名が、昭和二十三年六月十二日二十一時三十分の東京駅発によりまして、十三日午前五時二十分岐阜駅に着きました。折柄岐阜縣農林部長及び農林課長等出迎えを受けまして、早朝でありますので暫時小休の後、自動車をもちまして雹害現地向つたのであります。  本調査團の主たる目的とするところは、申すまでもありませんけれども、過般の委員会におきまして雹害数字上におけるいろいろの報告がありましたので、それらの被害程度がどの程度であるかというようなことで、調査目的は、もつぱらその実情を把握いたしまして、そうして本委員会報告するという任務をもつて臨んだのであります。  御承知通り岐阜縣は二十二の市郡でありますが、この中で加茂郡ほか十一郡に及ぶところの地帶雹害を受けておる次第であります。それらの雹害の実態につきましては、先般群馬、茨城及び栃木等におけるところの國会調査團報告にもありますように、まつたく二十分か三十分かの降雹によりまして、思わぬ多大なる被害を受けておることは、この地方におきましてもその通りでありまして、とりあえず中心地である山之上村にはいりまして、山之上村におけるところの村長及び食糧調整委員、あるいは実行組長、二十数名の人の出迎えを受けて、つぶさにその地方における実情を聽き、またその地方における、まだ刈取つておらない残存せるたんぼにつきまして、あるいは刈入れにつきまして、いろいろと聽いたり見たりいたした次第であります。  まずその山之上村の実情を申し上げてみますと、大体その地方におきましては水田はほとんどないと言つてよいくらいに、ごく僅少の水田しかないのでありまして、一年中における飯米を麦と甘藷というような方面に依存しております。あと寫債等によつて御覧願いたいのでありますが、降雹を受けたところの麦畑は、その麦がまつたく收穫皆無というような状態にまで各所に倒伏をいたしておる、あるいは小麦が吹つ飛んでおるというようなことで、わずかに多少残つておるところでありましても、それを刈取ることにつきましては、容易ならぬ手間を要するというような状態であります。その地方はほとんど八分通りは刈取られておりますけれども、刈取るということは次の甘藷を植えつけるための一つの手段としてやつたのでありまして、收穫というような点につきましては何ら期待すべき收穫がないという状態であります。五月二十八日の二十時二十五分ごろにおきまして雹害を受けて、農村民は一時は茫然自失いたしまして、ただただ失心的な状態であつたのでありますが、数日を経て漸次令靜をとりもどしまして、先に言つたようないろいろの農耕に從事いたしておるような現在の実情であります。麦の被害を受けておるところの反別及び收穫上における見当の報告につきましては、別にそれぞれの報告書において数字の記載がありますので、それをもつて皆さんの方に御報告申し上げることにいたしまして、大体麦の收穫はほとんど零であるというような形であります。また果樹園におきましても、せつかく果樹の收穫を期待いたしまして、今まで営々として栽培をやつてきたものが、ほとんど零によつて吹き飛ばされ、打ち落されておるような形であります。山之上村におきましては専業的な果樹園農業者が約七十戸存在するわけであります。從つて果樹回復につきましてはおそらく二年、三年を要するだろうというところに特殊的な被害の深刻が見受けられる次第であります。いろいろ村民の中から直接政府に対して衷情を訴えまして、いろいろの要望事項がありましたが、それらは一括してあとから申し上げることにいたします。  それから引続きまして上米田村、下米田村、蜂屋村、富田村、富岡村というふうに各町村長を訪れ、村のたんぼに働いておるところの農夫等につきましても、その当時の事情を聽き、あるいはすでに刈取つたところの麦を見るべく、農家の納屋にはいりましてその麦を見るというようなことで、いろいろとその当時の実情把握に努めたのであります。一郡におきましては、麦を燒いてしまつた場合においては穂が残るというようなことは北海道においても行われておりますが、そういう方法を講じてわずかの小麦をそこに收納いたしておるような形にもあります。また從來の刈取り方法をもつていたしましたならば、一日で刈取り得るものが四日、五日の日数を要するというような形であるのでありまして、麦を刈取ることだけにすらもう相当手間を要しておるような形であります。それから一反歩に対するところの收穫の点でありますが、これについては極端なものに至りましたならば全減でありますが、大体七、八升程度から一斗、二斗程度たんぼがほとんどであるというような状態でありまして、まつたく労力の点においても、また收穫の点においても非常に憂うべき状態でありますが、孜々営々としてまじめなる農民は、二年間におけるところの血の結晶とも言うべき麦の收穫に対しまして、経済を度外視いたしまして、その收穫に努めておる純心さには、ただただわれわれ調査團は非常な感激に打たれた次第であります。麦の方面につきましてはそういつたような方法でありますが、さらに現物等におきましても、御承知のような六十キロ、十六貫を一俵の麦装として仕立てておりますが、おそらくこの麦であつたならば四斗七、八升から五斗は十分はいるであろう。ます目において一斗、二斗ということでありましても、目方によることろのそれらの点を考えたならば、この面からいたしましても收穫の被害は随分大きいものであると考える次第であります。もちろん品質等におきましてもそういつたことは同じことでありまして、また一面その方面におきましては、きわめて農業経営が狭小でありますがために、そういつた面からいたしましても、経済上の打撃は非常に大きいということを考える次第であります。  それからそのほかにおきましては、馬鈴薯雹害を受けた結果ずいぶんと傷んでおるというような報告がありましたが、この馬鈴薯方面における被害は一部分に限られておる。中心地山之上その他の方面におきましては、ほんのわずかばかりでありまして、むしろ馬鈴薯のほんとうにたくさん傷んでおる所というのは、岐阜市の長森及び稻葉の那加町の方面でありまして、これらは降雹の結果また一部水害の結果等もありまして、病虫害による被害等原因いたしまして、ほとんど收穫皆無というような状態を見受けた次第であります。  それからたまねぎ指定町村が一、二箇村ありましたが、それについては、たまねぎは御承知のような收穫が根にあるのでありますが、これまたせつかくの根本りをする時期におきまして雹害を受けましたので、雹害を受けて以来の発育がまつたく止まつてしまたつというような形であります。從つてたまねぎは收穫におきまして八割あるいは七割程度減收である。また商品價値としての点から考えても、甚大な影響を受けておるというようなことでありまして、つぶさにそういつたたまねぎの畑に立ち入りまして、十分調査した次第であります。大体雹害による被害の点におきましては、さいぜん申し上げますように、それぞれ残存せる麦畑あるいは果樹園の中にはいり、いろいろの方法手段をもちましてその被害の実体を把握することに努めた次第であります。それ以上詳しいことにつきましては大体前回におけるところの茨城群馬方面と同じような状態であるということを、あとからその地方における麦なり、あるいは寫債等によりまして皆さんに御覧を願いたいと思うのであります。  それから、それらの地帶における人たち要望事項として一致せる意見は、農家に対する食糧配給をしてもらいたいということであります。農家が昨年來——昨年以前からでありまするが、特に昨年來國家の食糧政策に順應いたしまして裸供出をいたしており、せめて麦の收穫を見る時期になれば、早刈り及び早掘りをいたしまして、辛うじて農家生命を保つていこうということで、供出に対しましては最善の努力と誠意をもつて進んできたのであります。しかるにこういつた予期せざるところの被害を受けまして、まつたく糧道を奪いとられたという形にあるので、どうして今日の、あるいは明日の生命をつないでいくかということについては、范然自失いたしておるというようなことでありまして、保有米確保したいという意見なのであります。かような点につきましては、本委員会におきましても十分それらの実情を御了解くださいまして、強く政府にこれら災害を受けた農村に対する施策におけるところの、保有米確保に対する格段の措置を講じてもらいたいというのであります。  もう一点は割当補正をしてもらいたい。われわれはさいわい過日の農林委員会におきまして、五月及び六月一日現在における麦作の状態をもつて相当補正をするというようなことも聞いておりましたので、その意向をできる限り傳えたのでありますが、災害地実情を十分把握して、急速にこれらの補正をするために努めてもらいたいという意見であります。  また雹害地帶におけるほとんどの意見は、肥料特配をしてもらいたいという要望が特に強かつた。果樹方面専業農家相当多いが、それらの樹木の回復のためには二、三年要するが、肥料特配されたならば、その回復の時期が早くなつて被害最小限度に食止めることができるということでありまして、特に肥料特配を御高配願いたいという意見であります。なお農業保險等金融上における措置についても、農家が再生産に事欠かないよう、急速にやつてもらいたいということであります。大体以上述べました金融上の措置肥料保有米確保及び麦の割当に対する是正という四点程度に止まつております。私どもはできるだけ廣範囲にまわつて事情把握あるいは地方の声を聽くためにいろいろ努めたのであります。  十四日に縣廳にましりまして、知事室におきまして雹害におけるさらに詳しい点についての打合せをいたしましたが、岐阜縣におきましては本調査團の予期せざることが発生したのであります。それは本委員会雹害調査であるという当初の目的以外に、関東及び東北に次ぐところの水害を五月三日回において受けておるという事実でありまして、この方面調査を特に願いたいというので、調査團目的を逸脱しておるような形でもありますが、二日間にわたる大体予定せる雹害地帶調査を一日少々に止めまして、十四日の相当時間を水害地調査に赴いた次第であります。そういつた措置をなぜとらなくてはならないかと申し上げますと、さいぜん申し上げましたようなことによりまして、関東及び東北に続く水害であるということが、相当数字の上において、あるいは麦の割当是正あるいは農家食糧確保等につきましても、甚大なる影響がある。雹害被害もあることながら、それに匹敵するところの、より行上の被害があるという報告を受けたので、應急の措置といたしまして、調査團の相談の結果そういう行動をとつた次第であります。  水害におきましては、岐阜市ほか十四郡にわたりまして、特に顯著なる被害を受けておるのは本巣郡、安八郡等であります。反別におきましては一万二千五百町歩余りでありまするが、本巣合渡村等の六十町歩が完全水沒し、被害が全滅あるいは七割というような多大なる減收をいたしておる。あるいはまた判沒地帶においても相当の面積があり、同じ合渡村においても五十町歩、それらの集計が本巣郡全体においても二千四百六十九町歩というような形であるのでありまして、これらの水沒、完沒及び半沒、あるいは時間浸水による被害は、なぜそれだけの大きな被害を受けたかと申し上げますと、五月三日というような開花期あるいは開花期直後のことでありまして、完全に水の中に沒したところの麦畑あるいは甘藷畑馬鈴薯畑というようなものは、その收護が皆無になつてまつた。こういうようなことで、その收穫の皆無ということは、時期的に大きな被害をこうむつたことが原因であるのであります。さいぜんから申し上げますようなわけで、本巣郡及び安八郡の一部町村に対して水害地帶調査行つてまいつたのであります。その被害面積に対する被害の石数あるいは減收見込高における数字は、また別に書類によつて提出いたしまするが、概してこの水害地帶における被害は非常に深刻である。この方面岐阜縣における穀倉地帶というべき地帶でありまして、もつぱら米作中心といたしておりまして、麦はむしろ補助的な收穫にすぎない。高うね栽培等を講じて二反、三反程度つくつて農家保有米をこの七月から十一月までの間確保するというような程度農家がほとんどでありますが、それらの農村における保有米がひれによつて完全に失われてしまつておるということろに、甚大な影響があるということはるる陳情を受け、またわれわれ調査團はそれらについてもつぶさに調査いたしましたが、それらの被害実情については、ここに被害を受けた麦の現物を持つて帰りましたので、その現物を見ていただくなり、あるいは寫眞等によつてごらん願いまして、一層御認識を深めてもうらことに努めておる次第であります。  以上大体水害地帶における收穫は、時期的な関係もありまして、完全なる減收及び大きな被害を受けておるようなわけでありますが、これらの原因はどこにあるかということについて、さらに調べてみますと、この地帶においては年々二回なり三回なりさような水害があるのでありますが、特にさいぜんから申し上げるように、さような水害が五月三日というような期間にあつたというようなこと、しかもこういう経驗に今まで三、四十年間なかつたというようなことでありました、さような時期的な関係から、ここに予期せぬところの被害を受けたということも陳情がありましたが、これらは政府治水方面における施策によつて、一日も早く、かような被害を繰返さないようにとの要望がある次第であります。土地改良及び國土委員会等においても、この方面における被害を再び繰返さないよう、本調査團の方からも、このことに対しての運動をしていただきたいということも、特に附け加えて要望があつた次第であります。そういうような方面については、さらに地図等をお目にかけまして、それらの方面に対する対策を立てていただきたいと考えます。  以上大体簡單に申し上げた次第でありますが、ほかに補足的に八木及び平工委員の方からも、何か申し上げることがあれば述べていただくことにいたしまして、一應これをもつて調査團報告にかえる次第であります。     —————————————
  4. 井上良次

    井上委員長 次に農業災害対策小委員長小野瀬忠兵衞君より、小委員会中間報告発言を求められておりますのでてこれを許します。小野瀬君。
  5. 小野瀬忠兵衞

    小野瀬委員 お許しがありましたので、農業災害対策小委員小委員長中間報告をいたします。先般農林常任委員会の決定によりまして設置をみました本委員会は六月十五日午後十二時から、第十一号委員室におきまして、会議の形式をとらず、小委員長外七名出席のもとに懇談会を開き、さきに雹害及び病虫害実情調査行つた点、並びに政府委員との質疑を基礎に檢討を加えた結果、これが対策措置は緊急を要するに鑑み、左記決議をなし、これを要林常委員会を経て、政府提出することに決定いたしましたので、ここに中間報告をいたします。その決議文は次の通りでありますから朗読いたします。    決 議   衆議院農林常任委員会は今回各地を襲いたる雹虫害及病害の甚大なるに鑑み裏に調査團を派遣し現地調査行つたがその災害状況は言語に絶しておるを以て政府は速やかに左記諸項につき遺憾なき措置を講ぜられるよう決議す。  一、農業災害保險の適用される共済事故についてはこれを即時仮拂いつ措置を講ずること。  二、災害に伴う所要営農資材たる肥料飼料等については速やかにこれを給付すること。  三、所要営農資金の融次並に封鎖予金拂出し措置を講ずること。  四、被害農家に対し主食特配を行うと共に二十三年度主要食糧供出割当補正を行うこと。  五、被害農家の実状に即し國税並府縣賦課税延納並免税措置を講ずること。  六、被害農家中の生計困窮者に対し救済の措置を講ずること。  七、雹害に伴う道路、橋梁、家屋等諸施設の破壞に対し速かに復旧の措置を講ずること。  八、共済事故並共済目的適用範囲を拡大するため農業災害補償法を改正すること。    昭和二十三年六月十六日          衆議院農林委員会     内閣総理大臣殿     農 林 大 臣     大 藏 大 臣     地方財政委員長     厚 生 大 臣     建設院総裁  右の決議をつくりました。それからなお今回の農作物の被害はきわめて廣く、ほとんど全國にわたつているような次第である同時に、またその程度もきわめて深刻でありましたので、これが対策はきわめて緊急を要する思うのであります。さらにまた最も強力なものでなければならぬと思うのであります。これが対策につきましては、また少なからざる予算を伴うと同時に、関係しておりまする官廳はきわめて多いのでありますから、われわれは各地方からの報告がまとまるのを待まして、さらに政府に具体的の施策を伺い、同時に急速なるこれが実施を要請する必要があると存ずるのであります。本委員会はさらに第二次、第三次の会議に開きまして、これが具体策につきまして研究いたしていきたい、かように考えている次第でございます。以上御報告申し上げます。
  6. 井上良次

    井上委員長 ただいま小野瀬忠兵衞君より、今回の雹害並びに病虫害被害の甚大に鑑みて、特に本農林委員会として決議したい、こういう小委員会報告でございますが、これをこのまま承認して御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 井上良次

    井上委員長 異議がなければ、小委員長報告通り、本委員会はただいま御報告されました決議案文を本常任委員会決議として政府に要請することにいたします。     —————————————
  8. 井上良次

    井上委員長 次に主要食糧の最近の配給状況に鑑みまして、特に坪井議員より、本委員会としてこれに対する対策についての御発言がありますので、これを許します。坪井君。
  9. 坪井亀藏

    坪井委員 昨日は食糧管理局長官より、十月にいたるまでの食糧事情についてるる御報告がありました。まつたく食糧事情は緊迫の度を加えておるのであります。このときにあたりまして、なおまただいまは小野瀬農業災害対策小委員長より、雹害並びに病虫害によるいろいろの被害状況等を拜聽いたしました。これらを総合いたしまするに、この機会において、どうしても食糧対策は一日も欠くべからざることでありまして、ただいま委員長も申されたように、本委員会としてもこれに対処しなければならぬという関係から、私はここにこの委員会といたしまして、左記事項決議をいたしたい、かように考えるのであります。決議につきましては、決議文を朗読いたしまして、満場の御賛成仰ぎたいと存じます。    決 議  主要食糧一割増産運動が展開され且つ物價改訂問題について対策の樹立が迫られている矢先早くも全國的に食糧遅配現象が発生し國民食糧不安に陷入れつつあるのは眞に憂慮に堪えないところである。仍て衆議院農林委員会政府に対し左記各項の速かにして且つ強力なる実施要望するものである。     左 記  一、米麦及び馬鈴薯供出緊急対策を速かに樹立し特に供出奬励金報償物資を交付する等の方法により有効適切なる措置を講ずること。  二、凍結米の放出を懇請し消費地への輸送のために緊急輸送計界を樹立し速かに実施に移すこと。  三、不足食糧輸入に関し連合軍司令部に対し積極的に懇請すること。  四、制粉整麦設備の稼動脂率を高め之が輸送の緊急措置を講ずること。    昭和二十三年六月十五日          衆議院農林委員会     内閣総理大臣 殿     農 林 大 臣     経済安定本部長官     運 輸 大 臣     商 工 大 臣  右御決議あらんことを要望いたします。
  10. 井上良次

    井上委員長 ただいま坪井君より、現在の主要食糧配給状況に鑑み、特に政府に対して、本農林委員会として要請する必要がありますので、今御朗読されましたような決議案文を本農林委員会において決定したいとのことでありますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 井上良次

    井上委員長 異議なしと認めまして、さよう決定いたしました。  以上雹害並びに病虫害対策決議と、食糧遅配現象に対する決議に対して、特に政府より発言を求められておりますから、これを許します。大島農林政務次官
  12. 大島義晴

    ○大島政府委員 ただいま御決議になりました事項に対しては、一々ごもつともな決議であります。  まず第一に雹害中心とする決議につきましては、農業災害保險の適用される共済事故については、これを即時仮拂いの措置を講ずることという御決議でありますが、実は被害がきわめて明確で、その結果がただちに判明いたしておりますものに対しては、すでに支拂をする順序にこぎつけております。ただ被害に何割になるかというような、刈取りの結果によならければ被害の判明いたしませんものに対しましては、遺憾ながらその刈取り結果の御報告を受けてその上において補償を拂う、こういう建前になつておりますので、この分は幾分の時間がかかると思うのでありますけれども、被害者の全面的補償に対しましては即時支拂の用意をいたしておりまして、すでに一部開始いたしました。特に水害活がこの雹害に伴つて起つたようでありますが、古來百姓が申しております通り、秋の一尺の水には恐れなくても、春の一寸の水には恐れよというようなことわざがあるのでありまして、春水がいかに大小麦の芽を腐らして、その結実を妨麦するかということは明瞭な事実であるのでありますから、これらの点につきましては、やはり全滅被害と同樣な考慮が拂われて差支えないと思うのであります。  第二番の、災害に伴う所要営農資材たる肥料飼料等につきましては、すでに急速を要する窒素肥料に対しましては、各府縣のストツクを一々渡す、そうしてこちらからそれを補充するという計画でどんどん渡しておりますので、この点はさよう御了承願いたいと思うのであります。  所要資金の融通等に対しまして、これまた万全の策を講じ、手落ちないようにいたしておりますが、封鎖預金の関係におきましては、大藏省に農林省の方からも申し上げますけれども、また委員会の方からも、大藏省にその旨をお傳え願いたいと思うのであります。  被害農家に対し主食特配を行うと同時に、供出割当是正を行う。これはまだごもつともなことでありまして、ただ主食特配を行うという場合に、私は一つの事実に基いて、はなはだ遺憾にたえないと思つたことがあるのであります。これは手当米に関することでありますが、せつかく政府が手当米を出すまことに決定いたしまして、一應のわくをもつてまいりますと、その村の最後の分け合いのときに平等割に割るという危險が多かつたのであります。事実食糧のない渡農家が、再生産に必要なる食糧確保するということは絶対に必要の條件でありますけれどう、現下日本の非常に窮迫せる食糧事情のもとにおきましては、かりに被害農家であろうとも、もし食つなぐ食糧のある方々等は、一應御遠慮願つて、実際に困る農家にこれを渡したいというように考えて、その点に遺憾なきを期したいと思つておるような次第であります。割当補正を行うことはもちろんであります。  第五番は租税の関係でありますから、これは大藏省の関係になると思うのですが、農林省といたしましてもできるだけ御協力をすることは申すまでもありません。  第七番の関係もその通りと思うのであります。  第八番の共済事故の問題ですが、これは先般も申しましたが、今年の雹害で一つの現象が出てまいりましたのは、たとえば養蚕の例にとりますと、蚕繭の損害に対しては災害補償を適用するが、桑園の雹害に対しては補償が適用されないであろうという農民諸君の考え方から、蚕を捨てたという実例があるのでありまして、國家のためにこれは悲しむべきことでありますので、養蚕に対しましては桑園の補償をすると同所に、また蚕繭の災害補償もするといふうに、二段の補償をいたしまして、この完璧を期したいと思うのであります。蔬菜その他については遺憾ながら災害補償の適用を受けることができませんので、これは他の方法で考えていくということ以外に途がないのではないかと考えている次第であります。  大体以上において災害に関する御決議に対しましては、政府もさような取扱いをいたしておるということで御了承願いたいのであります。  その後の食糧問題に関する御決議でありますが、これまた一々ごもつともな御意見であります。政府もこの線に沿うて万全を期したいと考えているような次第であります。以上本決議案に対する政府の見解を申し上げた次第であります。
  13. 井上良次

    井上委員長 それではこれより特に昨日議題になつておりました案件に続きまして、本日提案されております農業協同組合法の一部を改正する法律案農業改良助長法案食糧確保臨時措置法案農業災害補償法の一部を改正する法律案、獸医師会及び装蹄師会の解散に関する法律案家畜傳染病予防法の一部を改正する法律案の各案を議題といたしまして、まず政府の説明を求めます。大島政務次官     —————————————
  14. 大島義晴

    ○大島政府委員 ただいま議題になりました各案を各個別にその提案の理由を説明いたしたいと思います。  まず第一番に、農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げたいと思います。  農業協同組合の組織は、御承知通り金融事業を目的とする連合会は、他の事業を兼営してはならないという制限がございますほか、現行法には何らの制約がございません。しかしながら協同組合といたしましても、これが独占的な性質に発展いたしますことは、経済民主化の見地から避けなければならぬことは申すまでもないところでありまして、すなわち私的独占の禁止に関する法律、及び経済力集中排除に関する法律の精神は、農業協同組合にいたしましてもまた適用せられますことは、これを容認しなければならぬと思うのであります。  この意味合におきまして、今回の改正案により、農業協同組合連合会に対して、その事業の兼営の範囲に制約を加えようといるのであります。すなわち現在は、連合会の事業は、信用連合会を除いて包括的な兼営が認められているわけでありますが、これを事業目的別にそれぞれ別個の連合会として組織せしめるのでありまして、その事業種別は信用事業、購買事業、農地の管理等の直接農業生産関係する業業、販賣事業、共済事業及び農村の生活文化の改善に関する事業でありまして、これらの事業は相互に兼営することを禁止することといたしたのであります。もつともこの原則にあまりに狹く拘泥いたしまするときは、連合会の機能発揮をはなはだしく困難とする結果ともなりますので、連合会がその本來の事業として行う事業の目的を達成するために、通常必要とする範囲におきましては、他種の事業を兼営することもできることといたしたのであります。  以上がこの改正案の内容でありますが、何とぞ愼重御審議の上速やかに御可決あらんことを御願いいたします。  次は農業改良助長法の説明をいたしたいと思うのであります。  食糧増産をはかるために、農業に関する科学技術の発達及びその成果の速かなる普及をはかることは、きわめて緊要のことでありますので、これが基底をなす農業に関する試驗研究並びに技術知識の普及、及び交換に関する機構並びに機能を刷新することといたしまして、昨年來連合軍最高司令部天然資源局の積極的助言と指導のもとに種々研究を重ね、目下その成案をとり進めている次第であります。農業に関する試驗研究には一段と力を注ぐ必要がありますが、現在は國立農業関係、試驗場、大学、專門学校、都道府縣農業関係試驗場、その他民間機関において行われておりまして、ややもすればこれらの各機関における試驗研究には、重複反復するものも少くなかつたのでありますので、この際これらの各機関の有機的連絡調整を一段と緊密にいたしますとともに、時勢の要求に應じ、農業の発展に則應して、最も適切な試驗研究を能率的に推進助長することとし、一定の計画の下に研究助成をいたしたいと思うのであります。またかかる試驗研究の結果に基く諸成績の普及滲透に関しましても、種々努力が拂われ、最近におきましては、特に指導農場を中心とする普及方式を採用してまいりましたが、農業会解体後における諸情勢並びに國家財政等の点をも考慮いたしまして、今般組織的に普及技術者を設置し、これにより技術普及をはかるところの方式を採用することとなりました。この新方式の実施に関しましては、農林省並びに都道府縣等が、資金その他の面においてその最も緊密なる協力をいたしことによつて、所期の成果が発揮できるものと信じるのであります。  以上申し述べました諸目的を達成いたしますため、國庫の助成に関する法律を制定する必要があると認めましたので、ここに本法の制定を提案することになつた次第であります。愼重御審議の上速やかに御協賛あらんことをお願いいたします。  その次は食糧確保臨時措置法案についてもの提案の理由を説明申し上げます。  この法案は食糧供出制度の根本的な改善をはかろうとするもので、さきに第一回國会に提案をいたし審議未了になりました臨時農業生産調整法案について、その審議の際問題になりました点、並びにその後にも御意見のありました点等、幾多の事項にわたつて修正を加えてものであります。  この法案の主意といたしますところは、供出制度について、第一に今日の食糧生産状況に即して、國として合理的に期待し得るところの一定量の食糧供出確保すること、第二に供出制度が農家増産意欲をむしろ高める方向のものでなければならぬこと、第三に府縣、町村、次に各農家を通じて供出負担の公平化を促すことの三点でありまして、いわゆる地方に應ずる責任供出体制を確立することにあると存ずるのであります。以下内容の重要な点を述べますれば、  第一に、主要食糧農産物について、事前に生産供出割当を行いまして、農家生産供出の責任制を確立することであります。すなわち米、麦、芋類及び雜穀について、あらかじめ農業計画というものを定めるのでありますが、これはこれらの生産数量、供出数量を割当てて、農家生産及び供出の責任を明らかにするとともに、それに対して肥料、農藥及び農機具の配給の裏打ちを計画的に行うのであります。しかして農家増産意欲を高めるとともに、農家の責任の限界をも明らかにする意味において、強制的な意味における追加供出割当は行わないことを明らかにしたのであります。また農家供出を促進するために、政府は必要な奬励措置、たとえば本度には米の超過供出について、公定價格の三倍で買い上げる等の措置を講ずるとともに、主務大臣は、肥料、農藥、農機具等の生産配給輸送の業務を営む者に対して、それらの供出確保するために必要な事項を指示することができることにしたのであります。  第二に、この割当方法は、農林大臣が中央農業調整審議会と知事の意見を聽き、都道府縣別に農業計画を定めて、これを知事に指示するのであります。知事はその指示に從い市町村別に農業計画を定め、これを市町村長に指示し、市町村長はその指示に從い農家別に農業計画を定めて指示するのであります。しかして知事が指示する場合には、都道府縣農業調整委員会決議を得ることを必要とし、市町村長農家に指示するには、あらかじめ市町村農業調整委員会の議決を得ることを必要とするのであります。農家別に農業計画はこれを公表し、農家異議の申立を認めて割当の公正を期し、農家の納得のいく生産供出とを行つてもらおうとするのであります。  第三に、以上のようにして、あらかじめ生産供出との責任数量を明確にするのでありますから、肥料、農藥及び農機具はその生産の計画と結びつけて割当を行い、配給することになるのであります。また指示通りに作付を行つても、災害その他やむを得ない事由で生産があがらず、計画通り供出ができないときには、農家供出数量の変更を市町村長に対して請求することができることになつております。  第四に、以上のやうにして民主的なかつ合理的な方法と手続によつて割当を行い、主要食糧農産物の生産供出確保するのでありますが、特に必要がありますれば、知事は、ある種の不急作物の作付を制限するために、その作付について市町村農業調整委員会の承認を受けさせるとか、また農業生産上の障害を排除し、または増進をはかるため、必要があれば、市町村農業調整委員会病虫害の駆除予防、水利の調整等について、農家に対し必要な指示をする権限を與ておるのであります。  第五に、以上のような措置は、その実施機関が民主化されなければ、從來と何ら変ることがなく、実効もまたあがらないわけでありますから、市町村地方事務所の管轄区域及び都道府縣に農業調整委員会設置し、その委員は農民の間から公選することにし、他に学識経驗者若干名を加えることにし、会長は委員の互選とし、委員のリコール制を認めたのであります。前にも述べましたように、生産供出及び資材の割当委員会の議決に必要とするのであり、委員の任務はまことに重大でありますから、本案が成立しますれば、趣旨の徹底をはかつた上委員の選挙を行うことになりますが、それまでは食糧調整委員会がその権限を代行することになつております。なお町村においては、その計画の樹立と実施のために必要な專任職員を設置することになつておるのであります。  なお本法案は、当面の食糧危機を突破するための対策であり、主要食糧生産供出とを確保するためのものでありますから、その有効期間を一應昭和二十六年三月末とした次第であります。  以上が食糧確保臨時措置法の骨子となる点でありまして、要旨とするところは、農家生産意欲を高揚して増産への努力を励まし、食糧問題の根本からの解決をはかつていきたいと考えておるのであります。  農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由の大体を御説明申し上げたいと思います。  農業災害補償法は、御承知通り旧農業保險法及び家畜保險法を承継し、さらにこれを拡充強化したものとして昨年十二月十五日施行せられたのでありますが、昨年の関東東北の大水害に対しましては、水禍について本法を遡及して適用する等、施行当初より早くも新制度による農業災害の補償、農業生産力の維持確保という重要なる機能を発揮し、壞滅に瀕した農家経営の安定、農業生産の発展に寄與にするところ多大なものがあつたのであります。しかしながら、本法は施行以來日なお淺く、法律財容の不備も絶無とは言いがたいので、かかる点をできる限り近い機会に是正することは、農業災害補償法成立の際、衆議院の附帶決議中に要望せられたところでありますが、その趣旨に副つて農業災害補償法の一部を改正し、もつて本法の目的達成に遺憾なきことを期することとした次第であります。以下本法律の内容を御説明申し上げます。  第一は、蚕繭共済について共済掛金の消費者負担の規定を設けたことであります。御承知通り農業保險法におては、桑葉の保險について保險料の一部を日本蚕糸統制株式会社が負担し、生糸の生産確保する制度が規定されていたのでありますが、災害補償法の施行当時におきましては、蚕糸統制会社が閉鎖機関に指定されていた等の理由により、かかる制度をただちに実施することができず、一時新法より除外したのでありますが、今回農作物共済に関し消費者負担の制度を規定したと同樣なことを、今回蚕繭共済についても早急に実施し、もつて輸出の大宗である生糸の生産確保することは緊要なので、蚕繭共済にかかる共済掛金の一部を製糸業者等に負担せしめ、さらにその負担額を消費者が負担するごとく、政府が生糸等の統制額を定めることにいたしたのであります。この消費者負担額は別に政令で定めるのでありますが、その方法は原則的には農作物共済の場合と同一であります。ただ各都道府縣の通常共済掛金標準率より全國共通の最低掛金部分を控除した残りの八分の七、超異常共済掛金標準率の八分の七、超異常共済掛金標準率のすべてを加えた率を各都道府縣の共済金額に乘じ、都道府縣ごとに得られる金額の合計額が消費者負担部分となる点が異るのであります。この八分の七というのは、生産せられた蚕繭の八分の一が養蚕農家の自家消費となり、八分の七が販賣されるという從來の大体の実績に基くものであります。  第二は共済事故の拡大であります。農業災害補償法では蚕繭共済の共済事故を、蚕兒の病害及び風水害、干害、凍害又はひよう害による桑葉の減收に限定していたのでありますが、今回桑葉の減收について、地震及び噴火を含む氣象上の一切の原因による事故にまで、その範囲を拡大したのであります。なお前國会における衆議院の附帶決議の線に沿つて、農作物共済事故中に雪害を明示したのであります。  第三は、農林保險審査会を農業共済再保險審査会と改めたのであります。  從來農林保險審査会は農業保險、家畜保險のほか、漁船保險、森林火災國営保險の中央審査会たる権能を有していたのでありますが、機能の強化と運営の円滑を期するため、今回各保險の種類別に審査会を設けることにいたすので、これを農業共済再保險審査会に改めたのであります。  何とぞ愼重御審議の上速かに御協賛あらんことを切望する次第であります。  次に家畜傳染病予防法の一部を改正する法律案及び獸医師会及び裝蹄師会の解散に関する法律案の説明をいたしたいと思います。  御承知通り、わが國は周辺に各種各樣の家畜傳染病の常任地を控え、常時これら傳染病の侵入に暴露されているのが実状であります。過去数十年にわたる努力の結果、朝鮮、台湾から午疫、口蹄疫、牛肺疫のごとき惡性傳染病を駆逐し、さらに満蒙、北支那からの剿蕩に着々にその実を納めつつあつたところ、敗戰によつて國内家畜防疫と一連の関係にあつたこれらの家畜防疫施設を一挙にして失つたのであります。加うるに終戰の混乱に乘じて、これらの地域には再び各種の傳染病が流行している模樣であり、家畜の密輸入の絶えない事実等を考えます場合、実に寒心にたえないものがあるのであります。よつてこれらの新事態に対処するために、家畜傳染病予防法を整備強化いたして、その万全を期さなければならない次第であり、また御承知通り畜産の振興に対する世論の要請眞に切なるものがありますので、政府といたしましてもこの線に沿うてせつかく努力中でもあり、この意味からいたしましても、表裏一体の関係にある家畜防疫を從前よりさらに強化する必要に迫られておりますので、本法案を提案した次第であります。  次に改正案の要旨について簡單に御説明申し上げたいと存じます。  第一は海港において行う家畜檢疫は、税関長において実施し得ることになつておりましたのを、農林省直轄の動植物檢疫所が発足いたしましたので、税関長を動植物檢疫所長に改めた点であります。  第二は侵入または蔓延し、畜産に重大な影響を與えるおそれの多い傳染病を家畜傳染病として定め、すでに危險のないと認められるものを除き、また一部の傳染病を獸医学の進歩に伴つて病因的に配列換えを致した点であります。  第三は、以上のように家畜や傳染病の種類を定めておりましても、これ以外に発生して畜産に重大な影響を及ぼすおそれのあるものが、過去の例におきましてもありましたので、かかる事態の発生しました場合、農林大臣が臨機の防疫をなし得るよう改めた点であります。もちろん本法を適用いたしますれば、個人の経済にも制約を加えることになりますので、この措置はきわめて暫定的なものとし、引続き必要ならば法律を改正してこれに当るべきものであるから改正案においてはその有効期間を一年間以内に定めたのであります。  第四は、第二の改正に伴いまして、本法の傳染病から削除したものにつき、また新たに本法に加えたものの病性を考慮し、防疫措置に緩嚴の度を設け、関係條文の整理を行つた点であります。  第五は、新たに輸出家畜物についても、輸入の場合と同樣、本法に基く檢疫を実施するよう改めたことであります。  第六は、都道府縣外に家畜を移動せんとするときは、家畜は都道府縣知事または都道府縣知事の指定する獸医師の発行する健康証明書を要することとした点であります。家畜傳染病の蔓延を防ぎ、健康な家畜を入手せしめることが、畜産振興ひいては農業経営の改善にも、農業生産の増強にも必要でありますので、この措置をいたすものであります。  但し屠殺の目的を以て屠場に直行するものであることを、都道府縣知事において証明したものは、証明書を必要としないことにいたしております。その理由といたしましては、到着後一定の場所で短期間飼われるものであることを、いたずらに拘束することは、ひいては畜産の発達を阻害することを考慮したからであります。  第七は罰則の金額を改正した点であります。  第八は、從來勅令で定められることになつていた費用負担区分を、地方財政法制定の精神に副つて、法律の中に組み入れた点であります。  第九は、屠場において屠殺解体の結果傳染病にかかつていることがわかり、食用に適せずとして廃棄したものに対して、手当金を交付することになつていた條項を削除した点であります。その理由は出荷地において防疫施設をし、また屠場に入る際生体檢査をすれば、おおむね防疫の目的を果し得ると考えることと、過去においてこの事例の少なかつたことで、この條項を設ける必要を認めないからであります。  第十は、從來家畜檢疫に限つて、國または宮内省の家畜その他のものに適用することになつておりましたのを、檢疫に限らず全般的に適用するように改め、また軍に関する規定を除した点であります。  第十一は馬の傳染性貧血にかかつた馬の殺処分に関する法律と、畜牛結核病予防法を廃止し、これらの傳染病を本法に加えたことであります。馬の傳染性貧血は近年ますます漫延の傾向にありますが、さいわい診断法もある程度見透しのついたのを機会に、他の傳染病と同様な方法によつて防遏をはかるのが至当と考えるからであります。また牛の結核病は、長年の予防によつて重症のものはほとんど一掃され、第二段階としてその根絶を期する域に到達しているものと考えますので、総合防疫の効果をも考慮し、家畜傳染病予防法一本でまいることといたした次第であります。  以上要約いたしまするのに、現下の國情の下において、最も効果的な家畜防疫を実施し、畜産の振興、ひいては農業経営の安定、農業生産の増強をはからんとするのが本法案の趣旨であります。  次に獸医師会及び裝蹄師会の解散に関する法律案の提案理由を申し上げます。獸医師法及び裝蹄師法に基いて設立されておりまする現在日本獸医師会、都道府縣獸医師会、日本裝蹄師会及び都道府縣裝蹄師会は、強制設立、強制加入等種々の現在の情勢に即應しいな要素を含んでいる点があるのに鑑みまして、これを解散する必要があります。これがこの法律案提出する理由であります。  これで二法案の提案理由の説明を終りましたが、なにとぞ愼重御審議の上、速やかに御協賛願いたいと存ずる次第であります。
  15. 井上良次

    井上委員長 次に昨日政府から提案理由の説明を求めました自作農創設特別措置法の一部を改正する法律案農地調整法の一部を改正する法律案輸出入植物檢疫法案、これら各法律案の要旨について政府から詳細に説明を求めます。田辺農地部長から説明を願います。
  16. 田辺勝正

    ○田辺説明員 それでは農地設整法の一部を改正する法律案要綱から説明を申し上げます。  第一がそこに書いてあります通り自作農創設特別措置法の規定により、政府が賣り渡した未墾地、宅地及び建物について、農地と同様に移動統制を行うということが第四條に規定しておりますが、これは從來は即墾農地につきましては、こういうような移動の統制をやつてつたのでありまするが、今度法律の改正によりまして、未墾地、建物、宅地等につきましても、やはり同様にこれは農地改革法によつてこれを賣り渡したことになりますから、その跡始末をすることに、しかもこれを合理的にやつていくために、農地と同様に移動の統制をしたのであります。それでこれを貸したり、あるいはいろいろの権利を設定したりする場合におきましては、やはり地方長官の許可を得なければならぬというようにしたのが第一であります。  それから第二が、農地調整法第九條による農地の賃借権の保護規定を永小作権にも及ぼしたのであります。これは從來永小作権の規定は民法に規定されておつたのでありますが、それは非常に長い期間でありますると同時に、二年間の小作料を滯納しなければ消滅できないというように保護せられておりましたけれども、一方賃借権の権利が非常に強くなつてまいりましたので、それに比べますると、永小作権の方が非常に弱いようなことになつたまいつたのであります。特に永小作権の消滅、更新、拒絶、それから一方においての解除、改約、というようなものにつきましては、永小作権の方が弱くて、從來の賃借権の方が強くなつたというような関係になつておりますので、これはどうも不都合だというので、永小作権にも同様の保護を與えることにしたのであります。でありますから、その上に永小作権は期間が非常に長い、その他いろいろの物件としての権利があるのでありますが、そういうふうに平仄を合わしたわけであります。  その三が市町村農地委員会の選挙の手続を、できる限り市町村会議員の選挙と同様にすることであります。それから市町村農地委員会の從來の選挙は、大体從來の市制町村制に準じた規定によりまして選挙管理委員会が手続をやつてつたのでありますが、今度はその間におきまして、非常に手続上におきましても不便なところがありますので、これを今度はかえまして、今度は衆議院議員選挙法及び地方自治法に準じた選挙手続によりましての管理委員会がやることに便宜にかえたわけであります。  それからその次に都道府縣農地委員会委員の選挙は間接選挙とし、選挙権は市町村農地委員会委員のみ有するものとし、被選挙資格は市町村農地委員会委員の被選挙資格と同様にすること、これは十五條の十一でありますが、この都道府縣農地委員会の選挙につきましては、この前の議会に御提案をいたしまして、御賛成を得たのでありますが、そのときにはこれは直接選挙にしておつたのであります。それゆえに日本全國、縣下一般にやらなければならぬというので、事実は非常に複雜であり、費用その他いろいろの点からいたしましても不便がたくさんありましたので、今度は市町村農地委員会委員にのみ選挙権を與えることにいたしまして、被選挙権者は市町村農地委員会の被選挙権を有する資格のものであるように、間接選挙に改めて運用を便宜にしたのであります。  第五は、市町村農地委員会委員は本年十二月、都道府縣農地委員会委員は明年二月に任期終了するが、委員の任期を明度三月三十一日まで延期すること。これに伴い現行の選挙人名簿の効力を明年三月三十一日まで延長すること。これは本度ただちにこれをやりますと、農地改革の関係上非常に複雜いたしますので、こういうような手続にしたようなわけであります。  それから第六が、都道府縣知事は特に必要ある場合は、市町村農地委員会の権限を都道府縣農地委員会に代行させることができる。これは、都道府縣知事は、特に必要がありました場合におきましては、市町村の農地委員会の権限を都道府縣の農地委員会に代行させることができるといたしましたのは、所によりますと、なかなか複雜な問題が起りまして、市町村農地委員会ではなかなか処理のできないような場合もありますので、これを都道府縣農地委員会に代行さすという一つの便宜な規定を設けたわけであります。  第七が、農地の賃貸借の解除解約または更新の拒絶は、市町村農地委員会の承認にかえて、本度の十二月二十三日までは、都道府縣知事の許可制となつているが、これを明度四月三十日まで延期することとしたのであります。これは御承知通り、市町村農地委員会で今まで原則といたしましてはこれを承認をするということになつておるのでありますが、現在の農地委員会ができました経過から申しましても、なお農地改革法その他の法律が十分に徹底していない。あるいはまたその中にいろいろの関係がありまして、この法律の趣旨に副うて適正な運用ができないような場合もあるのでありますから、やはりこれを來年の四月までもう一度延期をいたしまして、農地の返遷その他についてむりのないようにしようというのであります。  第八が、昭和二十度十一月二十三日以後に不当に行われた土地の取上げに対して、市町村農地委員会が賃借権の回復を行おうとする場合に、その農地が第三者の小作地となつている場合には、賃借権の回復ができないことになつているが、これを当該第三者が適法かつ正当に耕作権を取得した場合に限定すること。これは、從來の規定によりますと、引上者と第三者が脱法的な行為に出ることが考えられまして、この規定の精神が失われるおそれがありますので、今回その範囲を制限しまして、第三者が適法かつ正当に耕作している場合に限つたのであります。  第九が、小作調停制度を次のように改善すること。一、裁判所が小作調停を受理した場合は、原則として事件を市町村農地委員会の勧解に付することを要するものとすること。二、裁判所が調停をする場合には、小作官または小作主事の意見を聽かなければならないこと。三、地方裁判所長が選任する調停委員となるべき者は、これを都道府縣農地委員会において推薦する者及びその他適当な者について選任することとすること。この小作調停の改善につきましては、いろいろ委員会におきましても御議論がありましたし、これは全然廃止した方がよかろうというような意見もあつたのでありますが、この小作調停法は、一方におきまして非常に弊害がありますと同樣に、一方におきましては相当長所もあるわけでありますから、われわれはこの弊害のある点を今度はためて、そうして長所のある点を伸ばすというような考えからいたしまして、こういうように改善することにいたしたのであります。その要点は、ここに書いてあります通り、裁判所が全部独善的にやるのではなくして、今度は市町村農地委員会がこれに加わるというようなことにしたのであります。それで、裁判所が小作調停の受理をいたしますと、これをただちに市町村農地委員会の勧解にかけなければならない、市町村農地委員会の勧解にかけなければ一方において調停ができないというように、まず第一に市町村農地委員会が事実上の調停をなすことに改めたのであります。それから、從來は小作官、小作主事——小作官は役人であります。小作主事は地方自治法による縣における主事であります。從來は小作官の意見を聽くことを得と調停法に規定されておつたのでありますが、これはどうも、裁判所の方で聽くことを得ですから、聽いても聽かぬでもよろしいということで、一方的にきめられるおそれがあつたのでありますが、小作調停は十分に農村実情を知つて調停をやらなければいけませんから、今度は小作官の意見をどうしても聽かなければならぬ、こういうように規定を改めたのであります。それから、地方裁判所調停委員でありますが、小作調停は、御承知通り、裁判所の調停と、それから一方小作調停委員会の調停があるわけでありまして、小作調停委員の調停の方がむしろ原則になつておるわけであります。それで、小作調停委員選任するということは、この調停がいかに運用されるかということときわめて重要なる関係をもつておるわけでありまして、これにつきましては、從來裁判所が調停委員を各部門別に選任いたしまして、そうしていよいよ調停をいたしますときには、その中から適当な者を指定をいたしまして、これで調停委員会を組織いたしまして、そうして担任の判事が会長になつて調停をすることになつてつたのであります。それゆえに、調停委員会に新しい空氣を吹きこむということが調停を円満に運行するゆえんでありますので、民主的に選ばれたところの各縣農地委員会委員の方、その他適当なる者をこの中に入れていくということが必要でありますから、そこで、都道府縣農地委員会において推薦した者を、この調停委員にしてもらうということにしまして、この調停を民主的に運用していこうというのがこの調停制度の改正の趣旨であるのであります。大体調整法の改正の趣旨は以上の通りであります。  次は自作農創設特別措置法の一部を改正する法律要綱案であります。  第一は、民法施行法第四十七條に規定されている永小作権、すなわち民法施行前に永久存続すべきものとして設定された永小作権及び存続期間が五十年を超える永小作権は、同法の規定による本年七月十五日において効力を失うことになつているが、農地改革の趣旨に照らして、その処理を行うため、かかる永小作権の存する農地及び牧野は、政府において買收することができることとした。この永小作権は、皆樣も御承知通りに非常に古い沿革をもつておるのでありまして、從來これにつきましていろいろ調査をしてまいりましたけれども、大体今までの調査によりますと、三万町歩ばかりもあるというような関係になつてつたのでありますが、自作農創設その他によりましてだんだんこれを自作農にするというような対策を講じてまいりましたし、その他いろいろの変更をいたしまして、最近におきましてはこの永小作権は非常に減少しておりまして、農地改革以前における町歩は大体一万町歩余しかないことになつたおつたのであります。その永小作権の中には、御承知通り、設定永小作權、これはすなわち、民法ができまして、民法の規定によつて新しく設定された永小作権と、それから徳川時代からずつと続いておりますところの旧慣永代小作というのがあります。これは永久に存続すべきものとして認定せられたものでありまして、この中には、いろいろの負担のために永久に存続するものもありますれば、あるいは土地制度の関係から永久に存続するものとなつておるもの、その他いろいろの関係のものがありますが、要するに、永久に存続するという分割所有権的の性質をもつておる永小作権でありますが、この二つの面積は、大体約一万町歩余のうちで、旧慣永代小作の永久に続くというものが、大体六千町歩ばかりあるわけであります。  ところが、これにつきましては、これは民法によりまして、ずつと五十年以上続くものは五十年で打切るということになつておりますが、施行規則によりまして、これが五十年期間が過ぎますと、その期間の過ぎた後一年内において、地主の方が相当價格で買取るなり、地主が買取らなければ、その次の一箇度において小作人において買取ることを要すということが規定してありまして、買取権は地主に優先をせられておるのであります。それで五十年の期間がちようど本度の七月十五日に切れることになつておるのでありますから、放つておけば、これは地主の方が優先権があつて相当の價格で買取つてしまえば、小作人は買取ることができない。こういう結果になるのであります。それゆえにここにおいて何とかしてこれを整理しなければならぬということに逢着したのであります。それでこの対策につきましては、存続した方がいい、あるいは解消した方がいいという意見が種々ありましたが、これはもうわずかでありますから、この際一應原則として整理をするという方針をとつたのであります。  そこでその整理の方法はどうかと申しますると、これは現在の保有地は、日本全國平均一町歩ということになつておりますが、たとえばその一町歩以内にはいりましても、旧慣小作権がその中に含まれておるといたしますと、それは農地委員会が買うことを相当と認めた場合においては、認定買收によつて今度は買取る。そしてこれを小作人に賣ることができるというように、農地改革法の一環といたしましてこれを処理することにしたのであります。これが第一であります。  その次が、自作農が、全然農業に從事せず、しかもその自作地、自作牧野のある市町村及びその隣接市町村の区域内に住所を有しない場合における、その自作地を買收することができることとすること。これは從來自作地というものは、全然買收しないというのが大体の原則であつたのであります。しかしながら隣りの村、そのまた隣りの村というように、遠方に農地をもつておりまして、しかもそれが実際に自分で耕作していない、人頼みをしておるものがありますと、これはどうも自作と申しながらまことに適切でないということで、このような自作地、牧野については、買取ることに今度したのであります。  それから農地の遡及買收を円滑に行うため從來の規定を更に明確にすること。報償金算定の基準となる農地の面積は、一世帶につき平均北海道十二町歩、内地三町歩であるが、從來省令で規定されていた事項を法律に明文化すること。これはもう御説明申し上げるまでもないのでありまして、從來は面積は北海道十二町歩内地三町歩というのでありますが、これを各地方において、また小さく各縣によつてわけまして、中央委員会が定めた地方、おのおの廣いところと狹いところと平均三町歩になるのでありますが、それによつて報償金を定めることにしておりましたのは非常にめんどうであり、手続を要しますので、この場合法律に基きまして北海道は十二町歩、内地は三町歩というようにきめたのであります。しかしこれは從來は省令で仕方なくきめておつたのでありますが、これは重要なる事項でありますから、省令からのけまして、この法律の中に内容といたしまして規定をしたような次第であります。  それから次が、入会の牧野、個人有の牧野で共同利用の目的に供されているものを政府において買收しうることにすること、これは入会の牧野、個人有の牧野で共同の利用の目的に從來供せられておつたものは大体対象になつていなかつたのでありますが、これも一方解放という立場から必要であれば買收をし得るようにこれを定めたのであります。  それから第三には未墾地の買收であります。未墾地の買收に関し、昭和二十度十一月二十三日以後に旧軍用地で、國費が開発された農地は、未墾地として買收することができることとすること。これは從來未墾地の買收に関しまして、旧軍用地については、いろいろの人がはいりまして、そうしてこれを乱雜に開墾やいろいろなことをしておつたということで、現状を見ますと非常に適正でないような分割の仕方、しかも利用方法においても非常に不完全な利用をしておりまして、これを整理しなければどうにもならないというような場合が多々ありますので、これらの点を考慮いたしまして、今度未墾地として買收ができる、買收したものを政府の計画によつてうまくやつて、ほんとうの立ち行くような農家を入れて、これを再配分することができるという規定にいたしたわけであります。  第四は、都道府縣においても、未墾地の買收又は使用予定地域の指定をなし得るとするとともに、その指定の必要がなくなつた場合、これを取り消すべき旨の規定を設けること。これはこの通りであります。  それから政府が買收した未墾地又は牧野について、立木、竹建物等を所有する者又は家畜の放牧若くは採草をしてした者に対して、買收後定められた時期まで從前と同一の使用收益をさせるため当該土地を使用させるようにすること。これは書いてある通りでありまして、その牧野未墾地等についてこれを荒したり壞したりすることは困りますから、当分の間從來通り使用させるようにしたというだけのことであります。  要するに今度の自作農特別措置法の改正は大したことはありませんが、大体農地調整法の一部を改正する方に重点がおかれておるようなわけであります。どうかよろしくお願いいたします。
  17. 山添利作

    ○山添政府委員 輸出入植物檢疫法のことについてちよつと御説明をいたします。提案理由の説明にもございましたように、大正三年にできておる法律を新しく書き直したのでありまして、その変つておる点だけを申し上げますと、変りました点は、この点については御承知のように、それぞれの開港場において輸出入植物並びに動物について檢疫を現在やつておるわけでありますが、法制的に変りましたのは、外國から入れます植物について、外國で植物の檢疫制度をやつておるという場合におきましては、その檢疫の証明書をつけたものでなければいけない。すなわち病害菌が附いていないという証明のあるものでなければいけない。ということにいたしたのであります。それから輸入の場所を開港場並びに飛行場、新しく飛行場を加えたという点、それから郵便物にいたします場合は、小包郵便にして送らなければならないということになつておるのでありますが、これは今まで規則にありましたのを法律の中に繰り入れたという点であります。これは輸入の点でありますが、輸出の点につきましては栽培をしておる圃場の檢査をやるという制度を附けた。たとえばみかんにつきまして清水港等の輸出港で、檢査をいたしますほかに、産地の圃場において檢査をする。これはアメリカ等におきましてそういう檢査を要求しておるような事情もありますので、これを法制化した、それだけの簡單な事柄であります。  さらに輸出入植物檢疫の審議会を設置いたしまして、この法律の運用の重要事項について関係ある方々の意見を徴して決定する、こういうようにいたしたのであります。法律は古い法律の全文改正でありますけれども、内容として変つておりますのは、そういう程度であります。
  18. 井上良次

    井上委員長 これより質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。松澤君。
  19. 松澤一

    ○松澤(一)委員 田辺農地部長にちよつとお伺いいたします。農地改革は二箇年間に完了する、こういうことになつておるが、こつちに説明書がないので、さつきの説明でちよつと聽きもらしましたが、來年の三月まで継続するとか、あるいは委員をそのままにおくとかということであるが、その点御説明願いたいと思うのであります。
  20. 田辺勝正

    ○田辺説明員 農地改革がいつ済むかということにつきましては、はつきりその中では書いてありませんが、ただ農地買收、賣渡しにつきましては、これは本年末までにこれを完了するように、こういうふうに書いてありますから、買收、賣渡しにつきましては、これが農地改革の実質といたしますならば、そういうことになりましようが、農地改革は実際にこれがいつ済むかどいうことにつきましては、まだ何らきまつておりません。
  21. 松澤一

    ○松澤(一)委員 そうすると、第二次の農地改革は、法律施行後満二箇年で完了でき得ない情勢におかれておるわけですか。
  22. 山添利作

    ○山添政府委員 第二次農地改革は本年末をもつて完了いたすのであります。それからさつきの御質問に、來年の三月三十一日まで委員会設置するというお話でありますが、これは現在おかれております農地委員の任期がこの年末で切れますのを、しばらく暫定的にその時期まで延ばす、こういう意味であります。
  23. 松澤一

    ○松澤(一)委員 土地の買收とまた賣渡し等が数字においてあげられておるのでありますが、これから起きた弊害の、土地を取上げられた数字があがつていないが、その資料を今日でなくてよろしいから、ひとつ提出してもらいたい。ただ政府は、今度の農地改革で小作が百五十万町歩以上買收されたと、あたかも誇大に宣傳しておられるが、逆にこの反面に、農地委員等が、この農地改革の立法の精神を理解せずに、逆に小作地が取上げられたという現象が、全國到るところにあるのであります。從つてその資料をわれわれの方に、この自作農の一部の改正が完了するまでにひとつ提出を願いたい。  それから農地委員の三月までの継続の問題でありますが、われわれは今度の自作農の一部の改正と、農地調整法の一部の改正について、農地委員は一度改選したらどうか。全國を通じて農地委員が立法の精神をわきまえずに、逆にそのときそのときの請託や何かで、この農地改革をやつておるということは、全國到るところにある。こういう理解のない農地委員が多少はいつておる限り、農地部としては、この立法の普及というものを誤つておるのであります。土地が買收され、賣渡されるというこのときに、むしろ農地委員を全國的にかえて、そうしてよくその趣旨を徹底することが、私は今日では一番必要なことだと思つておるので、そういう改正も今度の改正の中にははいつていかなければならぬとわれわれは思つております。これに対しての御見解を承つておきましよう。
  24. 山添利作

    ○山添政府委員 農地委員の改選の問題でありますが、大体農地委員の構成等につきましても、一應既墾地の買入れ並びに賣渡し等が消みました状況に即して、やはり階級的に区分というものが、今五、三、二というようになつておりますが、それらの状況も新しい状況に即して考え直さなければならないと考えているのであります。從つてそれらの改正案を次の國会に提案をいたしまして、その結果によつて選挙をやる、こういう考え方をいたしておりますので、暫定的にその期間だけ延期をする。こういう措置を必要だと考えているわけであります。
  25. 松澤一

    ○松澤(一)委員 その弊害がわかつているのにかかわらず、その一部を改正するという法律案をこの際出すのに、それをなぜ入れなかつたか。今でも遅くない。ただちにこれを入れる意思があるかどうか、それを承りたい。
  26. 山添利作

    ○山添政府委員 これは現在の農地委員におきまして、土地の買入れ並びに賣渡しをいたしているわけでありまして、御承知のように土地の買入れ並びに賣渡しは本年で完了いたします。しかしながらその事柄自身は同一の農地委員会でやることが適当でございまして、結局そういたしますと、來年の一月から三月までの期間のことであります。そこで新しく農地委員会の構成等を考えるという意味におきまして、新しく次の國会においてそういう法案を提出いたしまして、それによつて選挙をいたしたい、こういう考えをいたしているのであります。
  27. 松澤一

    ○松澤(一)委員 その弊害を認めながら、しかも選挙の改正がこの條文の中にはいつていながら、なぜ過ちをただちに改めるうとい考え方をもたぬのか。次の國会というならば、われわれはそそ國会まつわけにはいきません。農地委員がイデオロギーがなくして、むしろそのときどきの請託によつてひいきしてみたり、あるいはコンミツシヨンをとつたり、あるいはそれを職業的になるという弊害が、全國にもう今日では顯著に現われているのであります。この顯著に現われていることがあればこそ、今日われわれはただちにこれを賣渡計画等に使つてはいかぬ、從つてもう一度農地委員の改選をしなければいかぬということを、初めてやつてみてわかつたのでありまして、ただちにその弊害を政府も認めていながら、その改正ができ得ないということは、理由はどこにもないと思つております。  質問者が多いようですから、私はどしどし自分の思いついたことだけ言つておきますが、もう一つは、さつき田辺部長のお話では、採草地、牧地等も今度は今律の中にはつきりしてきた。一体、今日は開拓局長がいないから、私は遺憾だと思うのだが、農政局にお尋ねしますが、農地開放と開拓と非常に摩擦を起している。村の入会権をもつた採草地、牧地にどしどし引掲者がはいつてきて、それが爭つている。しかも開拓地は開拓局で勝手な熱を吹く。それで村の人たちがこれと爭つている。こういう点に対して、同じ農林省の中にいてこれだけのことがわかつていながら、今までなぜこれを等閑に附しておつたか。われわれが農地改革当初において一番強く主張したのは、將來の日本の農業経営は近接林の開放なくしてはできない。しかるに農林省は山の開放には手を着けぬとか、あるいは山林資本閥に対して常に躊躇した意見ばかり、盛んに不必要だというような意見まで吐いている。近接林の解放ということは、今後の日本の農業経営に重大なる影響をもつにかかわらず、今まで入会をもつておつたところの牧地、採草地あるいは薪炭林等に対してのいきさつがいろいろとかもされておるのでありますが、この点もこの際この改正によつてはつきりしていただきたとい思つておる。またわれわれはしようと思つておる。こういうわけでこの点に対する見解をこの機会に承つておきたい。
  28. 山添利作

    ○山添政府委員 開墾いたしますのにつきまして、いわゆる農業林、入会地等をいかに処理するかということにつきましては、地元関係に非常に問題が起る場合があるわけであります。結局農業経営には薪炭林、採草地でありますとすそういう資源を得ます土地が必要であります。この要求が一つ、それからまた國全体といたしまして、開拓をいたしまして入植せしめ、これによつて食糧増産を期しますとともに、併せてある程度入口収容力を殖やす、これもまた大きな政策であります。從つてこれは両方にらみ合わせて適切なる開拓の振興をはからねばならぬのであります。從つてこの未墾地の買収につきましては、山林の方面、畜産の方面、お互いに相寄りまして相談をしてきめていく。そうして全体として國土利用の適当をはかつていく。こういう精神並びに手続をもつて進めておる。こういうわけであります。
  29. 松澤一

    ○松澤(一)委員 それは大きな間違いで、農林省がかつて開拓地として引揚者などを入れているのぢやないか。それがために関係町村と爭いを起しておる。次の機会でいいのですが、開拓局長を呼んでこれに対する御説明を願いたい。  それからこの機会にただいまの御説明中の一部を十分聽いておきたいと思うのであります。離れた他町村に自作地をもつている者は、みずから耕さざる限りこれは今度買収の対象にする。ごもつともであります。一体離れた町村であろうと自分の町村であろうと、みずから耕さぬ所に自作地があるとは私は思つていなかつた。みずから耕すから自作地と思つていたのだが、そうすると人を雇つてもあるいは他に管理者を置いておいても、今までそういう自作地があつたのかどうか。そういう自作地は実際的に買収の対象としなかつたのかどうか。その点をひとつ御説明願いたい。  山添政府委員 自作地という以上はみずから耕すということを常識的に考えておるのであります。ところが法律の解釈といたしましては、自分の計算でやれば、それを自作地と解する。こういう法律の書き方でもあり、また立法当時における政府の解釈でもあつたわけであります。そこで今回そういう全然自分で耕さない人は、おおむね外におるわけであるわけでありますが、これを買収するという規定を設けたというのであります。一方またみずからこの土地に住んでみずから自作をしておる、しかも雇傭労力を多く使つておるというような場合には、これはその経営が適当でないということにいたしまして、通常の地域に定められております、全國平均で申しますと、三町歩そこまで縮小していく。こういうふうにいたしておるわけであります。
  30. 松澤一

    ○松澤(一)委員 今局長は自作地とは自分の計算する土地だから人を使つてもいいというような解釈で政府はいたというが、われわれ第一回の農地法を通すときに、そういう解釈は速記録を取寄せて見ればわかるが、かなり違つているので、みずから耕さなければならぬと思つている。ましてや特別な者に耕すような形式をとつて、自分たちが計算して自分でつくつておるような仮装的な自作地はないかということに対して、そんなことは絶対にありませんときつと答弁しておると思う。そういうふうなあやふやな解釈をしておるがために過去において弊害を起した。それがために農林省は確固たる方針をもたなかつたから、そういう弊害によつて逆に農地が開放されなかつたということが多くあるのであります。この機会に少くとも今日では名目だけの自作農というものは、土地の農地委員会、村の農地委員会等によればそれは十分わかるのでありますから、仮装的であつたり、名目だけの自作農は断じて許さぬという、この点に対してはつきりした御答弁を願いたいのであります。
  31. 山添利作

    ○山添政府委員 松澤委員のおつしやるように、農地改革の精神はあるわけでありまして、われわれもそういう精神で運用に当つておるわけであります。この自作農創設特別措置会の第三條に書いてありますが、「自作地で当該自作地に就いての自作農以外の者が請負その他の契約に基き耕作の業務の目的に供しているもの」こういう字句がありまして、大低の場合はそれによつて買収ができるというふうに考えておつたのですけれども、これだれでは足りないというので今日條文を附け加えたのでありまして、結局この法律の解釈そのものといたしましては、文字の解釈としては自己の計算でやるものを自作地と称する。しかし実際上の精神から申しますと、何と言いましても、常識から考えてもみずから労作に從事するものを自作、こう見るわけであります。しかしただいま申し上げますように、法律的には自己の計算でやるものを一應自作地と見ておるけれども「当該自作地に就いての自作農以外の者が請負その他の契約に基き耕作の業務の目的に供しているもの」これを買うということでずつと買つてつたのでありますが、しかし今申しますように今回附け加えますような條項に該当するようなものは、ただいまの條文ではちよつと不十分である、こういうわけで附け加えることになつたのであります。
  32. 松澤一

    ○松澤(一)委員 私は常に申し上げておるのですが、農林省から一つの法律を議会を通過して、これを運用していくには常に立法の精神がその中に十分含まれていなければならない。議会でわれわれがこうやつて審議して、その質疑をいたすゆえんのものも、立法の精神を生かしておるのであります。しかるに往々にして末端にいくと、運用にあたつてそれが適用されて、そうして立法の精神が失われるというのが今までの日本の法律のいき方であります。これをわれわれは今まで指摘しておるのでありまして、今後は委員で審議した精神というものは、運用の上に生かしていつていただきたい。  もう一つ、さつき田辺部長のお話の中に、調停等において小作官の権限が今まで弱かつた。私はときに官僚攻撃をいたしますけれども、今日の小作官ほど日本の農地開放を理解しておるものはないと思つております。また実に強い意見をもつております。この点に対しては私は敬服しております。ところが今までの立会では、調停等において小作官の発言権というものは非常に弱かつた。しかも先ほど私が申し上げた通り、農地開放の精神を忘れた農地委員が多少あつて、かえつて小作官等が追い込まれておつたというこの弊害を見るにつけても、この点は特に強調しておきたい。むしろ小作官はこの農地開放に対する指導的立場にあると同時に、公正なる立場に立つて、運営をする上に強い力をもつてよろしいと私は考えるのでありまして、この点については、この機会に十分立会の精神を活かしておいてもらいたいと思うのであります。一應これで私の質問を打切ります。
  33. 井上良次

    井上委員長 皆さんにお諮りいたします。速記の関係がありますので、午後正一時に開会をいたしますから、質疑のある方はそのときにお願いします。  この際特にお諮りをしておきますが、薪炭價格調整生産配給統制問題、木材生産配給問題、治山治水造林の問題、木材賣拂問題等の諸問題を協議いたすために、林業小委員会を設定いたしたいと思いますが異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 井上良次

    井上委員長 異議ないものと認めまして林業小委員会設置することにいたします。その委員選任方法委員長に御一任願いたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 井上良次

    井上委員長 異議なきものと認めます。  それからさらに畜産振興の諸問題、畜産局存廃の問題、昭和二十三年度畜産計画の問題、酪農協同株式会社問題、酪農関係法令問題、乳價問題等の諸問題を協議するため畜産小委員会設置し、小委員選任したいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 井上良次

    井上委員長 異議なきものと認めまして畜産小委員会設置し、小委員選任をいたします。小委員選任方法委員長に御一任を願いたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 井上良次

    井上委員長 異議なければさよう決定いたします。  午前の会議はこれで休憩いたします。午後正一時に開会いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後一時四十八分開議
  38. 井上良次

    井上委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  休憩前にお諮りをいたして御決定をいたしました林業小委員会委員及び畜産小委員会委員委員長において指名いたします。林業小委員会といたしまして、       小川原政信君    野原 正勝君       松野 頼三君    森 幸太郎君       清澤 俊英君    永井勝次郎君       成瀬喜五郎君    野上 健次君       小林 運美君    鈴木 強平君       関根 久藏君    坪井 亀藏君      的場金右衞門君    松澤  一君       北  二郎君  畜産小委員といたしまして       小川原政信君   小野瀬忠兵衞君       佐々木秀世君    田口助太郎君       野原 正勝君    清澤 俊英君       永井勝次郎君    成瀬喜五郎君       小林 運美君    鈴木 強平君       中垣 國男君    坪井 亀藏君      的場金右衞門君    平工 喜一君       北  二郎君 以上指名いたします。なお小委員長は小委員会において互選願います。     —————————————
  39. 井上良次

    井上委員長 それでは午前に引続いて質疑を継続いたします。特にこの際お諮りをいたしておきます。昨日青木委員より緊急質問がいたしたいとのことでありましたので、これを許しましたが、政府委員の御出席がございませんので本日に延期せられておりますから、最初に青木君の緊急質問に関する要求を許します。
  40. 青木清左ヱ門

    ○青木(清)委員 去る五月二十九日の拂曉福井市に火災がありまして、農業会、郵便局、その他の建物が烏有に帰したのであります。ところがこの農業会の倉庫の中には、農民が過去一箇年間において、粒々辛苦の末供出いたしました物件に対する報奬物資が多数に貯藏されており、なお今明両年度の耕作に必要欠くベからざる重要な物資が同樣貯藏されておりましたが、それも烏有に帰しておるのであります。その金額は大よそ二千百六十万円という巨額に達しておるのでありまして、そのうち最も重要なものは、農機具課関係において電動機とか、ゴムロールとか、ベルトとか、その他あらゆる農機具、また資材課の関係におきましては、いろいろな農藥があるのであります。また蚕糸課の関係においても、それぞれ重要なものがあり、開拓課の関係では自動車のタイヤとか、その他いろいろな繊維品があるのであります。また農村振興課の関係では、板ガラス、亞鉛板、くぎというものがあり、農政課の関係ラジオでは受信機、また農産課の関係では種子、畜産課の関係では麻袋、人工受精器具、特産課の関係ではゴム長靴というふうにあるのでありまして、こういうふうな非常に多数の農業生産に必要なもの、また報奬物資として農民の希望しておるものが烏有に帰しておるのであります。その火元は労働省関係の職業安定所でありまして、新聞紙の傳うるところによりますと、その宿直員がタバコをくわえて夜半に巡視をやつた。しかもその直後、市内の親戚に出かけて行つて、ここで宿泊して帰つて來なかつた。そのためにタバコの火から燃え移つた火災が、宿直員のおらぬために知らなかつた関係上、大火に及んだというのであります。こういう実際の情況から勘案いたしますと、私は現在の官公、労務者の責任感がどうも弛緩しているのではないかと考えるのであります。この問題について政府当局はいかに考えておるか。こうした事例は全國に数多くあるかに私は聞いておるのでありまして、おそらくこのまま放任しておきますならば、全國のあらゆる官廳が、こうした事態から火災を起し、ひいては最も重要なる書類とか、あるいはこうした生産に必要なる物資が烏有に帰することになりはせんかとおそれるのでありますが、政府はこれに対していかなる対策をもつて臨まんとするか。私はその責任を明らかにしていただきたいと思うのであります。しかる上において私の質疑をさらに続けてまいります。
  41. 大矢省三

    ○大矢政府委員 大臣があいにく都合がありますので、私から答弁を申し上げたいと思うのであります。今青木委員から、お尋ねの火災は、去る五月二十九日の午前三時に、福井縣の職業安定所の所長の宿舎附近から出火したということでありまして、今お述べのように、農業会倉庫その他の官廳、あるいはまた各方面の類燒をみたことは、はなはだお氣の毒に思うのでありますが、六月五日の現地からの報告によりますと、さらにまた昨日福井の安定所の課長が参りましたので、そこでその後の経過、その時の事情を、報告と照らし合わして、いろいろお聽きしたのであります。それによりますと、未だ出火の原因が明らかでないのであります。その当時の模樣によりますと、中村某、高橋事務官及び藤田という三人が当直をしておりまして、所長の宿所と言いまするか、そこは全然火の氣のないところでありまして、そこから四尺ばかり離れたところに民家の炊事場が継続しております。なるほど本人の供述によりますると、午後八時ごろにタバコをくわえたまま戸締りをしたということを言つているそうでありますが、火事は午前三時半であります。それにそれからずつと夜警をしてまわつていたということも認めているし、自分またそれを申しているのであります。いろいろ調査の結果、そこは漏電その他火事の起きるようなところではないし、しかも四尺ほど離れた近くには、そうした炊事場が二箇所もあるということでありますから、どうも警察が今日まで調べたところによりますれば、出火の原因が安定所であるということは、未だはつきりしておらないのであります。しかしながらそのことは別として、農民諸君に配給するこういう多くの物資が燒却されたということは、はなはだお氣の毒であります。これに対しては所管の商工省、または農林省においてもいろいろ御盡力願えることと思うのでありますが、私の方といたしましても、そういうお氣の毒なことに対しては、省といたしまして各官廳に向つて、努めてそれの補充ができるように努力いたしたいと深く考えているのであります。ただいまの報告によりましては原因が明らかでないのでありますから、安定所の所管者である労働省において、これをどうするというようなことの意見なり、答弁ができかねるのであります。さよう御了承を願います。
  42. 青木清左ヱ門

    ○青木(清)委員 政府の答弁によりますと、火災原因はまだわからないということであります。私も実際警察についてその事情を調べたのでないのでありまして、あの地方において最も信用のある福井新聞紙上に、私が以上述べたことが麗々しく記載してあるのでありまして、それに基いて私も質疑をなつたわけであります。しかしこうした事件は、ともすれば責任のなすり合いになるのでありますから、その事実のいかんにかかわらず、こうして綱紀の弛緩がないように、——ただいまタバコをくわえて巡視したということだけはとにかく認めているのでありますが、その他の問題についても、とかく近來官公労務者の綱紀が弛緩しているように考えますから、今後ともこの件については、政府において十分留意されんことを望む次第であります。  なおこれらの物資が烏有に帰しましたことによつて、福井縣下の農民が、しかもそれが縣下全般にわたる物資を取扱つている縣の農業会の倉庫であつたという関係上、その影響するところは非常に大きいのであります。しかも金額にして二千百六十万円ということに相なりまするならば、現在市間に行われておりまするやみ價格等に換算いたしますならば、これは非常に尨大なる金額となるのであります。從つて政府からこれが補充の途を至急講じていただかなければ、過去における農民の粒々辛苦も無になるし、まだ來るべき出來秋の調整等にも、ゴムロールがないということが、まず非常に差支えを起してくるのであります。また來年度の耕作等に関しましても、その間影響するところが甚大だと考えるのでありますが、農林当局はこれについていかなる補充の途を考えられておるか。もちろんこれはまず物資の面におきましては、全國的に保有さるる量というものはわかつておるのでありまするが、福井縣にこうした災害があつたために、そこへ特配されるということによつて、他府縣に及ぼす影響というものもわれわれは考えるのであります。從つて政府に特別にこうした危急の場合に処すべく、保有されたる物資があるのであるかどうか。あつたらそれをまわしていただく。また全國的に見ましても、そうした全縣下にわたつて、しかも多量にこうした災厄に遭つておる現状から、福井縣のみならず他縣の農民諸君も、そこは同憂相わかち合うて、その一部を福井縣の方に流していただく。また新しく生産計画を至急お立てになりまして、これが物資を新しくつくつていく、手に入れていくという方途等を講ぜられていただきたいと考えるのでありますが、農林当局はいかに考えておられるか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  43. 山添利作

    ○山添政府委員 多くの物資につきましては、そのまま府縣に配当いたしておりますので、さしあたり保有があるものという種類は少いのであります。物によつては、今お話にもございました電動機等については、若干あるかと思いますが、保有のあります物の保有分から、ありません物は次の割当の機会に、ただいまのような物を補充するような意味合いをもつて割当をいたしたい。いずれにいたしましても必要なのでありますから、その辺の事情は考慮いたしまして、生産にできるだけ支障がないような処置をとりたいと考えております。
  44. 青木清左ヱ門

    ○青木(清)委員 今の政府の御答弁で、大体政府の誠意のあるところはわかつておるのでありますが、物によりましては時期を失してならないものがあるのであります。たとえばゴムロールのようなものはしかりでありますが、これは割当経済安定本部でやつておられる関係上、今農林当局にお伺いしてもだめかとは思いますが、これらの点は特に留意されまして、この出來秋に間に合うように、しかも福井縣は早場地方で、特に急いでおるわけでありまするから、出來秋に間に合うよう手配していただきたいと思います。またさつきの火元である職業安定所の問題でありますが、これが火元でないということになれば、おのずから議論は別になるのでおりますが、もしこれが火元であるということが判然としてきた場合には、物品の補充にみならず、損傷を與えた金額ということについても、おのずから政府の責任ということが生れてくるのであります。そうかと申しまして、金額の補償ができないというようなことも、もちろん考えられるのでありまするが、その場合には金において損害を與えたということ以上に、今度は物資においてそれを償うだけの補充は、至急やつていただかなければならぬという政府の責任が、当然生れてくると思うのであります。これはまだはつきりしない仮定的な問題でありますが、こうした事件がはつきり現われてきましてから、私は政府の責任をさらに追究していきたいと思うのであります。本日はこの程度で私の質疑を打切ります。
  45. 井上良次

    井上委員長 次は清沢君。
  46. 清澤俊英

    清澤委員 最近供米の強化と供出の強化、その上に税金の負担過重で、農民の生活が極度に窮迫してまいりまして、その結果今年へはいりましてから非常な勢いで、土地を手放す者ができておるのであります。これについて新潟縣のごときは、まだ詳しい統計は見ておりませんけれども、こういつた原因によつて耕地を手放す者が、田畑を通じて三月末までに二百二十六町歩、今日ではおそらく千町歩に達しておるという状態を知らしておるのであります。この中には相当に、一應土地開放でもらつた土地さえも放しておる者がある。また現実の土地開放によつて、飯米農家が一面において非常に殖えておつて、このことは將來における日本の適正規格の農家をつくり上げまする上には、一つの障害をなしておることは、だれしも考え得るところであります。この現象によりまして轉換します土地の二割ないし三割が、農地開放の精神から離れて、細分割された飯米農家に顛落しておる。こういう状態が顯著に見えておるのであります。議会へ出て参りまして、いろいろ同僚諸君に各出身地の縣の樣子を聞きますると、いずれもその傾向は急速に進展しておる。量が非常に殖えておる。こういうことを言うておるのであります。これについて農大省におきましては、資料を集めて統計等をおとりになつておるのであろうかどうか。その点を一つお伺いしたいのと同時に、農林当局としてはこの現象に対してどうお考えになつておるのか。それは困つたくらいのことは考えておられるだろうけれども、もつとつき詰めた意味合いにおいて、どうその困つたことについて考えておられるか。その点をひとつ腹を割つてお聽きしたい。実は昨日小委員会の各党の代表がGHQの方へ参りまして、例の國会決議によりまする米價値上りによる差額金の還元を、いろいろ懇談していただいたのでありますが、結論として私どもがとり得たことは、農民の言うことは無理だ、こういう面が非常に多かつたのであります。いろいろ日本の農地制度がアメリカとは違つて、ほとんど家庭労働による農民の労働状態であるからという点を強調して、私どもがそういう点を説明してまいりました。その結果がどういうことになつたかといいますと、何分こういう米價であるから、いろいろ還元金というようなことは、日本の政府の役人といろいろ懇談しておるのである、というような話で、どうも私どもの感じとして聽きましたところでは、そういう説明がなつておらない。そういうような痛切な日本の農村の実態というものが、アメリカのような企業的な農耕でなく、ほとんど家庭的な労働農耕をやつておるというような、形態の変つたところが、ほんとうにはいつていないようなことをどうも言われているような氣がしているのでありまして、こういう点から見ますと、今申しました現実に行われておる土地の細分割というようなものが、一面大きな目で見ますなら、日本の民主化の障害ともなり、また当面の問題としましては、供米の問題に一大支障を來す根源ともなることが明瞭であるということをお考えになりましたならば、もつと農林当局が中心になつて、私は、安本や物價廳のお役人が、何も日本の農民や現実の姿をどこまでもわかるように話してくれということは希望はいたしませんが、少くとも農林当局がこういう点に本腰になつて、そうして御交渉くださるならば、われわれの願うところがもつと意が通ずるのではないか。こういう点を痛切に感じましたがゆえに、この機会を得ましてお伺いするのでありますが、この土地開放の道程におけるところの細分割についてどういうようにお考えになつておりますか、この点をひとつお伺いしておきたいと思うのであります。
  47. 山添利作

    ○山添政府委員 耕作権の放棄というような名前で呼んでおるのでありますが、この問題は御承知のように、今年の税金の問題から非常に起つてきたわけであります。こういうことが起きます理由は、御指摘になりましたように、結局農家の負担とそれから供出の問題にあると思います。その結果、農家といたしまして、田にはあまり見ないのでありますが、山の方の地方の低い畑地、また非常に労力を要する遠隔の畑地等について、そういう傾向が見られるのであります。こういうことはもとより農村の方で非常に困つた事態が、ここに深刻なる結果として現われておるということでありまして、政府といたしましては、本來、かような事柄が起らないように農業に関する條件を整える、また農家経済を維持するということが必要なのでありまして、農林省といたしましては、その点について改善すべき点を大いに改善したいというふうに考えておるのであります。税金にいたしましても、御承知のような非常な問題を起したのでありますが、私の方で多くの農家について、はがきを出して回答をもらいましたその調査によりましても、最初農家が申告をしました所得額と、それから税務署の更生決定との間には、三割ないし四割が増されておる。こういう状況になつておるのでありまして、私どもが見ましても、最初の申告、これは適正なところであろうと思う。しかもそれは事実農家自身の発意と同時に、税務署の指導も加つての申告がされたと考えておるのでありますが、それに対して三割ないし四割というような増加の更正決定があつたというところに問題が発生したと思うのであります。そこで本生の問題といたしましては、これを團体的に解決をしてもらうということで、それぞれ各地で税務署と農村の間に交渉が行われたのでありますが、今後といたしましては、かようなことを繰返すようではまことに不安にたえないのでありますから、あらかじめ課税につきましても、農村と税務署の方で、双方の納得のできるような方法に改めていきたいという考えをもつております。そのごく大体の考えにつきましては大藏省に申し入れたのでありますが、さらに詳細なる具体案をつくつて、お互いに交渉をして円満に進めていきたい。その要旨といたしますところは、課税標準を考えるにつきましても、大藏省がきめるときには農林省によく協議をしてもらう。そうしてコスト計算等についても、所得から差引きます経費の査定というようなものにつきましても、適正を期しまするとともに、所得も大体パリテイ計算の趣旨に則つた所得というようなものを参酌して、合理的なものを算出する、さらに地元におきましては、農家の方におきましても、非公式に委員会でもつくりまして、耕作反別、作物の種類、土地の等級というようなものを税務署に通報いたしますとともに、課税標準というようなことも、税務署の方からもあらかじめ相談をしてもらう、農民からは資料を提供し、税務署側からは一方題な処置をしない、こういうやり方、いわばある程度昔にかえるわけでありますが、そういうやり方をいたしまして、今年のような非常なでこぼこが起ることのないようにいたしていきたいと考えておるのであります。大体パリテイ計算を基礎において所得を算定する。米で申しますれば、收穫の中の五割五分とか六割とかいう点をもつて所得とするということが大体きまりますれば、農家の方でも、あらかじめ税金の計算も腹づもりもできるわけでありますから、そういうやり方をしていきたいと考えておるのであります。  それからもう一つは供出の問題でございますが、これは御承知のように本年から事前割当をいたしますとともに、地方に應じた公正なる割当をするということで、地方調査もいたしておるわけであります。これに関する法案は、先ほど提案趣旨の説明があつたわけでありますが、これもやはり問題の起ります所を見ますと、山地と平坦地との間に起つておるわけであります。どうしても山の畑等は地方が低い、にもかかわらず、勢力の関係等がありまして、どうしてもそちらの方に比較的に重くかかるというような傾向が隨所に見られるのであります。これらのことにつきましても、地方に基く割当という観念をはつきりし、一挙に正しいところまではいかないのでありますけれども、趣旨を徹底し、さらに緻密な指導を加えて適正を期してまいりたい。そういうふうに、農業生産がおちついてでき、農家経営が安心してできるという観念をつくり出すように、いろいろ改善を加えるとともに、他の省に対して要求するところは要求して、安心して増産に励んでもらうようにいたしたい。そういう考えをもつて努力をいたしておるわけであります。
  48. 清澤俊英

    清澤委員 いろいろお伺いしましたので、私の申し上げたことが徹底しておらなかつたかもしれませぬが、大事な点に触れておりません。大体局長さんのお話は、どうもさかさのことが多いのでありまして、供出の点につきましては、今年の状況などは、山の方が比較的ゆとりをもつておりますが、平場が実際問題になつておるのであります。しかも土地を放しまする者は、山間部の人が多く放すのではなくて、蒲原の平野において、二町三町とつくつておりまする人が、この営農状態であつてはこれだけのものがとうていつくられない、だからいくらかでも、精農法とでも申しますか、耕作地域を減らして、そうして手数をかけて收獲を上げなければならない、こういう関係から、相当に自小作の人たとが土地を放す、こういう傾向になつておるのでありまして、これは非常にゆゆしい重要事であると考えるのであります。その根底をなすものが、結局税金の問題にしてみましても、きのうのGHQの方で言われた通り、日本の農業が労働を中心にする農業であるということが本氣にわかつておらないのではないか、こう私は考えます。アメリカのような企業農業をやつておる農業体系ではなく、全家が、みんな家内中が出て働く農家の一つの労働体系なのである。これが日本の特質のある農業体系なのである。それが完全に把握せられないために、今年の税金の問題などもいろいろ言われておりまするが、要は一口で言いまするならば、かけました労働力を所得の中から引かないで、これを全所得に入れて、自分のかけた労働力に税金をとられるというようなばかげたことが行われておりまするから、大問題になつたのでありまして、さまつの計算や、あるいは申告がとうだとかこうだとかいうような、小さい問題で問題が起きておるのではありません。根底の問題は、しばしば大藏当局にも私どもが痛烈に肉迫したのでありますが、かかりましたる労働力の計算を少しも引いていない。それは結局しまするならば、勤労所得税はかけていないのだからという簡單な説明のもとに、自分のかけました労働力が收入の中にはいつているに違いないのであります。それを税金の対象にして、自分のかけたものにまで税金をとられるなんという、こんなばかな話をやつておりましたならば、いつまで経つても問題にならない。その根底は、結局日本の農業が労働を中心にしたものであるということに帰著するのではないかと私は思いますので、そういう点がはつきりしておりましたならば、きのうもGHQの方で言われる通り、いま少し日本の農業の実体をのみこんでいただきますならば、そういつた状態において、実際困つている農民に、米が値上げになつて、その差額金がわれわれ農民のところへ調整金として返されるということは、私は当り前の方法ではないかと思われるけれども、どうしてもそれがのみこめない、そこに農林当局の努力の足らぬところがないか、こういうことを御質問してみたいと思います。
  49. 山添利作

    ○山添政府委員 農家の所得は、考えてみますると、これは自家労力の評價分ということでありまして、たとえばわれわれがわれわれの俸給に対して勤労所得税を拂うのと同じ意味であります。それなるがゆえに、またパリテイ計算の趣旨に準じて、米價が改訂になれば、それに即應した價格を支拂う、こういう理論になるわけであります。それは理屈でございまするが、事情関係方面に徹底していないという事柄につきましては、これは向うの方におきましても、天然資源局と経済科学局では大分様子が違うことは、当然考え得るところであります。その辺につきましては、今後ともやはり絶えず状況の説明をする必要は痛感をいたしております。
  50. 北二郎

    ○北委員 ただいま清沢さんから御指摘になりました耕作権放棄の問題でありますが、これは実に重大な問題で、もちろん今御指摘になりました税金の問題もありますが、一番大きな問題は、農林当局が農村に強権発動で臨むということだと私は思うのであります。このままでしていけば、ちようどロシヤのようになつてしまつて、耕作権をだんだん放棄していくと思いますが、この点農林省はどうお考えになりますか。
  51. 山添利作

    ○山添政府委員 いわゆる強権発動に関する勅令は、たしか昭和二十一年の春制定されたものと思います。当時の終戰後の、混乱せる社会事情に應じての必要性に基いて制定されたものでありますが、これは絶えずあの法令をもつて農家を脅かしておるという態度ではないのでありまして、最近ああいう問題が起つたという例は事実ございません。ただ供出の問題といたしまして、場合によつて非常に惡質の農家があるとすれば、ああいう措置も法的にはあり得る、こういう程度でありまして、あのこと自体を農家が絶えず頭においており、そのために耕地をもつておるのがいやになつている。こういうふうには私は観察をいたしていないのであります。
  52. 北二郎

    ○北委員 それはちよつと考え間違いで、私は北海道でありますが、昨年北海道あたりは、片つ端から強権発動をやつたのでありまして、百姓はもう生産意欲を根本的に底下しており、一割増産と言いますけれども、こんなものは問題にしてはいないと思います。今の耕作権放棄もここから來ていると思いますが、農林当局はただ一番極端な者だけにと、こう思つていられるでしようが、下部においては全部やつているということを御了承願いたいと思います。そして今後そういうことをやらせるかやらせないか、お考えを伺いたいと思います。
  53. 山添利作

    ○山添政府委員 事前割当の制度によりまして、通常の生産を基礎にして割当をする、そうして災害等で実際供出ができない場合は、これを減免するのでありまして、それも委員会制度により、合理的にかつ民主的に解決する方法をとつておりまするので、今後ああいう法規を実際に発動しなければならぬような事態はないようにしていかなければならぬ。またそういうふうになることを期待いたしておるわけであります。
  54. 清澤俊英

    清澤委員 農地改革推進協議会というものを、農林省の指導か、農地部か何かの指導で、各縣にもたれておるのでありますが、これはどうも二重組織になつておるような感じがするのであります。こういう二重組織のようなものをどういう必要があつておつくりになつているのか、その愼意をお伺いしておきたいと思うのであります。私ども新潟縣における問題でありますが、現実において縣農地委員会なるものが存在しておりまして、その中にまた別の機関で農地推進協議会というものができて、これがほとんど農地委員会をリーとしているというような形になつておるのでありますが、こういう二重組織をどういう必要があつておつくりになつているのが、その点をひとつ伺つておきたいと思います。
  55. 山添利作

    ○山添政府委員 推進協議会をつくりましたのは、農地改革法を実施いたします当初、まだその趣旨が十分一般に徹底しておりませんし、同時にまた一般に徹底しまするために、非常なる困難があるということを予想いたしまして、趣旨の徹底、実行の促進をはかりますために、当時の適当と思われた方々、言いかえてみますと、農民組合行びに農業会答でその方面に力を入れますならば、農業会をも加えてこういう会をつくり、そうしてこの仕事の推進に当つてもらつたというのであります。しかしもとよりこの推進協議会は、一應その使命を足したと考えておりますので、中央におきましては、昨年來これはほとんど活動を停止しております。当初は國から宣傳費等を出して趣旨の普及の委託をいたしたのでありますが、その事柄も目的を達しましたからやめております。地方におきましても、おおむねそういう状況であろうと一般には私は推測しておるのであります。
  56. 清澤俊英

    清澤委員 その次にお伺いしますのは、都市の市街地とでも申しましようか、都市内における都市計画区域内においてやりまする農地の開放の問題であります。この地区にある土地開放の対象としましては、局長達か何かで大体の標準がきめてありまして、その標準に適應しておるものが開放の対象になつているのでありますが、わずかの差でこの土地が開放にならないというような場合が出てまいりますと、それが旧來の地主の所有するところとなりまして、いずれはその土地が住宅地あるいは工場地帶というような、本然の都市の必要性のあるものに轉換しまするときには、必ずそこが——私どものような新潟縣の田舍の小なさ都市におきましても、三百円とか六百円になるのでございます。一坪とちようど一反歩の開放價格が同額というような、非常な差額が生ずるのでありまして、この場合農民のこうむるものは、決して自作をやつている者には、農民組合でもありまして、よほど強力にこれを処置しなかつたならば、自作料のようなものは還つてこない。かりにこれは自作料のようなものをとり、地上権というようなものの権利金を出させるといたしましたならば、六百円に六百円の地上権をとるならば千二百円になる。こういうことになると、これを使う者がほとんど使いきれないという実情に追いこまれる。これは非常に不合理な形がここにでき上りますので、私は現在耕地をもつておりまする農民は、全部これは三町とか何町とかと言わないで、全部を開放してやることが、將來土地を利用する上において、当然都市が発展してまいりますとき、ここに住宅ができるとしますならば、これは公定でもつて離すが、しかしそこの差額金は農民の手もと人権利金として渡すということになりますならば、非常な利便もあり、これを利用するに利便が多いのではないかと思うのでありますが、そういう点に対して、現在のこういう問題に直接に参加しておられますところの当局のお考え、もしくはこの問題を中心にした——昔なら都市計画でありまするが、今はどこでやつていますか、内務省関係とでも申しますか、そういつた方面の都市課の方との非常なるもつれが、やはり始終出てまいることだろうと思いますので、この点について何かお考えがないのか、あつたらひとつお伺いしておきたいと思いますと同時に、何らかのこれを法制化し、そうして健全な都市の発達と農民の耕地を護り、またどうしても離さなければならぬ場合、その生活を保護していくという観点に立つたところの、法制的のお考え方が今進められているのかどうかというような点を、ひとつお伺いしておきたいと思うのであります。
  57. 山添利作

    ○山添政府委員 ただいま清沢さんのお述べになりましたのは、区画整理施行地区内における農地の取扱いについてでありまして、昨年の十一月二十六日附をもつて、農林次官、内務次官、当時の戰災復興院次長、この名前でもつて通達した條項についての御質問であります。農地改革法を施行するのにあたつて、この都市計画の区域内の土地をいかに扱うか。区画整理はしてある、どの程度宅地化されるか、しかし現在農地になつておる、かような地域についていかに取扱うかということは、非常にむずかしい問題であります。從つてただいま申しました三つの官廳が相談の上で、それぞれ農地側の意見、また都市計画側の意見を調整して通牒を出したのであります。これによつてあるものさしをつくり、それによつて処理をしていくということにいたしたのであります。清沢さんのお話を承つておりますと、その通牒に書いてあるうちの第一項、すなわち特別都市計画法による区画整理施行地区と、戰災復興のための特別の計画地域内についての取扱いでございます。この場合にある区画整理の中に、現状農地のものがちよいちよいくしの歯のようにはいつておる、これは原則として区画整理の中にはいるのであるけれども、一單地三町歩以上のものであるならば農地である。すなわち開放の対象になるということになつておるのでございまして、これが区画整理の処理につきましては、この通牒に示しております通りに、施行をしていくのが適切だと考えております。しかしながら將來の問題といたしまして、区画整理地区で半分とか、あるいは三分の一とか買收になる土地もあるわけでありまして、残つた土地の区画整理をいかにして続行していくかというような問題については、なお考究を必要といたしますので、これは今後に残された問題として考究いたしたいと考えておるのであります。しかし今具体的にどういうふうにやつたらいいかということにつきましては、具体案を得ておるところまではまいつておりません。それからそういうふうに開放をされなかつた農地が將來宅地になる。これは用途変更を相当とする場合にはそういうことになるわけでありますが、その際の作離れ料の問題は、法制的に何ら規制もございませんし、規定しておるところもございませんが、これはやはり相当の作離れ料は支出すべきだと思うのであります。そこでそのときにおける諸般の状況を考えて、農地委員会等で適当に斡旋をすることが適当であると考えておるのであります。
  58. 清澤俊英

    清澤委員 最後の問題でありますが、自作料というようなものを農地委員会等で適当に斡旋するがよかろうというようなお話でありますけれども、それは決してできないのであります。一應土地は取上げられる形でとられ放しというのが、実際相当な、強力な組合等をもつておる所でも行われておる。これが現実の問題でありまして、なかなかむずかしいのでありますから、そういう点は十分法制化して擁護する必要があると考えるのであります。  これは私の意見でありますが、次にただ一つお伺いして、あとはやめますが、農地委員会の土地開放の進行上、たまたまこういつた市街地において、戰爭中における工場敷地をめぐつて開放問題が出ました場合に、小作調停にもこれがもち出され、一方農地委員会の方では、これを正当なる解釈のもとに何とか片をつけていこうとする場合に、これが非常にからみ合つて苦しいことがありますとともに、不純な地主が小作調停法を惡用して、委員会の活動を混乱に陷れる。こういうことがあるのでありますが、こういう場合において、農地委員会が権限をもつて小作調停の停止をするという、優先権を與えることに対しましては、どういう御意見でありますか。承りたいと思います。
  59. 山添利作

    ○山添政府委員 小作調停の問題につきましては、かねがね改善の必要を認めておつたのでありますが、今回農地調整法の一部の改正する法律案の附則をもちまして、小作調停法の改正をいたしたのであります。小作調停の申立がありましたら、一應それを地元の農地委員会の調停に付する。こういうふうにいたしております。
  60. 清澤俊英

    清澤委員 これで私の質問を終りますが、開墾促進のために現在の薪炭地等が一部分奪われて、非常な迷惑をしておる所がありますので、この点はいずれ開拓局長が参られました際に、あらためて質問するために保留しておきます。
  61. 平工喜市

    ○平工委員 さいぜん発言中に関連した部分からまず申し上げます。耕作放棄の事実があるかないかというお話でありましたが、一昨日成瀬委員もやはり、岐阜縣本巣地方事務所長が、一郡で百町歩の耕地が返還され、これは一体國有地にするかどうかということで非常に困つておる。その原因は、單に供出が過重かあるいはその他の理由があるのか知りませんが、こういう事実があります。われわれも訴えられて答弁に困つたのであります。それは全縣下で相当の数に及ぶと思います。  それから農地改革のことについて相当質疑應答が繰返されましたが、一体この法律の上では、法律の裏潜りをやつた者や、農地改革を妨害した者は嚴罰に処罰するときめながら、どんな処罰をされたか。日本國中で一人も処罰された者がないことは、それにはいろいろ理由がありましようが、当局においては今後どういうふうに処理されていくという方法があれば、それを承りたいのであります。そうしてその査察をする縣の農地部及び地方事務所等が、今日までいかに活動しても、追放された惡地主といわれるような人たちが、農地部や農林省へ陳情にいく。そこで私どもとはち合わせするようなことが実際ある。地方で農地委員や縣の農地部の人たちが査察をやつたときに、恫喝するような者がいても一件も処罰された者がない。それで今度の農地改革の査察に対して、予算をどんなに今後用意するか、当局のお考えを承りたい。  もう一つ、自作農地の檢定をした地方の農地部に対して、独断でないかのごとくちよつと誹謗のごとき風評が、院内ですらここにおると耳にすることがある。ところが私どもの出身縣においては、当局の態度は非常に結構だと思つております。自作農地の適正規模の限度などに対して当局から指示されたことは、私どもは満足しておりますが、一体都道府縣農地委員会の意向、大体の趨勢というものをどの程度汲み入れられてあるかということを伺いたいのであります。  なお希望として農地改革の査察は徹底的に行うべしと私は主張するのでありますが、こういう点についても合わせて御回答をいただきたいのであります。
  62. 山添利作

    ○山添政府委員 農地改革の中でも二つ問題がございまして、査察等を要するという点について、規定の通りに土地の買収、賣渡しが行われるや否やという点と、不法不当な土地取上げが行われておるかどうかという、この二つの問題があるわけでありますが、農地を買收しかつこれを賣渡すことにつきましては、今や最後の段階といいますか、碁で申せば、寄せといいまするか、そういう段階なはいつております。從つて綿密詳細に、漏れたところがないかどうかということを檢討するように、絶えず府縣当局と連絡をし、また鞭撻にも努めておるわけであります。この点については、從來は買收ということで非常に手一ぱいでありましたが、ややゆとりも出てきておりますので、それぞれの村について、府縣の方から調べをするというふうに、棉密に取運をでおるのであります。また土地取上げの問題については、一体今までそれで処罰されたものがおるかどうかというようなことが問題にされたのであります。この点については、今回の農地調整法の改正によつて、不法不当の土地取上げはこれを旧に返す、この前そういう規定を設けましたけれども、それがいかにも動きにくくできておつたという点を改善いたしまして、もとの地主以外の人がつくつております場合でも、現につくつております人が公正かつ適法に耕作権を取得したのでない場合は、やはり耕作権の回復を行うということにいたしたのでありまして、そういうことによつて実際的の問題の解決をはかつていきたいと考えておるのであります。これらのすべての点を通じて、もとより農地改革の問題でありますので、やはり絶えず査察といいましようか、嚴正なる指導を要することはもちろんでございます。それで査察という特別の予算項目はとつてございませんけれども、必要の都度そういうことを行います費用は出せるのであります。
  63. 平工喜市

    ○平工委員 ちよつと伺いますが、それは中央においてその予算が用意ができておるのか、都道府縣の農地改革の予算の中から使わせてもよいのか、そういう点をちよつとお伺いいたします。
  64. 山添利作

    ○山添政府委員 農地改革に要する費用は國にもあり、府縣にもございますから、一体たれが査察するかということによつて費用の出し場所が違うわけであります。國が中央農地委員の方々にお骨折を願うということでありますれば國において出しますし、府縣限りにおいて、府縣農地委員会委員のしかるべき人にどこそこの町村を見てもらうということであれば、これは府縣から出すわけであります。
  65. 井上良次

    井上委員長 皆さんにお諮りしておきますが、他の委員会委員長から、会議が開けないので速記を貸してくれという要求が非常に強いのであります。そこでいろいろ記録部長とも相談をいたしました結果、三時まで速記をいただくことにいたしております。ほかで速記を必要といたしますので、ぜひ簡潔に要点だけをつかんで質問を願います。
  66. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 それでは簡潔にお尋ね申し上げますが、農地改革がすでに末期になりまして、相当期待いたしておりますが、本年二月司令部の方から、農地改革進行を阻害するところの旧勢力の掃蕩に対しては、断固たる処置をとるようにという、日本政府に対する申入書があつたのでありますが、政府も、それに基きまして適切なる行動をとられたとは存じておりますけれども、その後全体として見る場合に、遅々として改善されておらないというふうに考えるのであります。たとえば、北陸方面においては、一縣の三分の一しか農地改革の趣旨が徹底しておらない。現在、今なお小作料は現物において取引されているようなところもありますし、またそのほか農地の取上げも頻々として行われている。過般本会議におきましても、富山縣の矢後議員が、それらの内容について緊急質問によつて質問したのでありますが、一体二月の申入のときから以後において、どのように改善されているかということをお尋ね申し上げたい。  それから、地方における農地委員会の書記の待遇でありますが、この問題が日本民主化のための最も基本的な事業であると考えまして、農地書記はこれらの大事業の貫徹のために明治維新当時の志士のごとき氣魄をもつて事務に携つたのであります。そういつた志士的な興味をもつたいき方が、今日におきましては、買收もすみ、すでに賣渡しというふうな事務的な方向な相なつてまいりまして、事務そのものに倦怠を生ずるというようなことも一つの理由ではありますが、それ以上に、せつかく予算において認められたそれらの経費におきましても、町村における委員長その他の旧勢力によりまして、借入金等の措置を講じない。またそれを講じようとしましても、最近における銀行はいわゆるやみの金利を拂うといつたような、サービスの金利を拂わない限りは金融をしないというような両方の関係からいたしまして、予算としていかにとつてありましても、実質上の仕事ができないというようなことに相なつてまいりまして、まじめな委員会あるいは書記等におきまして、この点について非常に訴えるところがあるのでありますが、政府はかようなことは、もうすでにとうの昔に知つておると返答しておられるのでありますが、これらの方面に対する金融上の措置に対しまして、どういう考えをもつておられるか、成行傍観主義でいかれるつもりであるか、お尋ねしたい。  なお書記に関係いたしまして、もう農地改革も終ると同時に、自分たちの次の就職に対してどういうふうに進んでいくか。今まで保守勢力ににらまれて、むずかしい仕事をやつてきたが、まもなく自分の仕事が解消されることになるので、インフレの高進とともに生活も不安も伴いまして、最近はせつかく事務になれてきた書記が離れていく傾向が多いのであります。かような点に対しましても、身分保障といいましようか、そういつた方面についてどういうようなお考えをもつてこういう離職をすることに対しての措置を講ぜられるかをお尋ねしたい。  それから小作料の統制ということも、依然として重要なることは、昨年中央農地委員会発足以來、またその他の機会においても、農村の声が期せずして第三次農地改革等を徹底せしめて、眞に農村の民主化のための完全開放を叫んでおりますが、これに対しましては、未だにはつきりした当局の言明がない。当初におきまして、わずかに全國平均一町歩というような地主保有を認めたことは、別に何らの意味がないというようなことで、それらの残したことについての理由が判明しておりませんが、早晩これらの盲腸的な存在の農地保有制度は解消されるものであろう。從つて小作料なんかについては、第二義的に考えていいというふうにわれわれは考えてきましたが、最近の状態におきましては、小作料の存在ということも相当重きをもつて考えなければなりません。現在までの物納当時の一石三斗、一石四斗、またそれ以上に、小作料一石に対しては千七百円というべらぼうな、石七十五円のこの基本的金額を考えずに取引いたしているようなところがあるのでありますが、この小作料統制については、関係するところがまだまだここ両三年、あるいは相当程度存続するものであると考える場合に、政府昭和十四年以來小作料統制のもとに、全國の小作人の一反收穫に対し大体四割七分、あるいは四割というふうに、收穫の歩合に基いて指導されてきておりましたが、ある縣におきましては、その方針のもとに、一反歩金納にいたしまして五十円あるいは四十五円に統制されておるのに、ある縣におきましては千七百円というようなばかげた金額になりまして、百円あるいは百五十円、二百円というようなことに相なるのでありまするが、かように全國の各地において統制がとれておらない、小作料の統制の実をあげておらないところに対しましては、政府は一体第三次農地開放で、完全開放ができるという見込のもとにこれをなおざりになされておるか。また過般來最近の七十五円を相当大幅に引上げる意向もあるということを聞いておりますが、もしそういうことになつたならば、基礎的な数字において一反歩七斗五升で決定しているところと、同じ地味のところで一石四斗も五斗も旧態依然としてとられているところが、同じ基本的な石数の上において、金に換算して取引されることは公平でない処置であると考え、本法施行の精神にも反すると考えますが、こういう小作料統制の徹底化についての御意見を承りたい。  それから農調法の中の第九條におけるところの分でありまするが、これは本法の精神に反して、永小作人の立場の者がきわめて不利益な立場に追込まれる。今どき五十年の期限をもつところの永小作人が、わずかに二箇年以上の滯納というようなことはあり得ません。今どきに第九條の二のような文字を挿入することは、あるいは地主に対する保護規定として、ゼスチユア的な立場から入れられたものか。あるいはこういうことが現に存在しているかどうかということをお尋ねしたい。おそらくこういうようなことはあるまい。わずか二年くらいで永小作権を收棄するようなことはどうしても考えられない、この点についてもお尋ね申し上げる次第であります。  それから自作農の方においても、第六條の二でありまするが、「市町村農地委員会が当該幡貸又は使用貸借の解除若しくは解約又は更新の拒絶のあつたときにおける当該所者及び小作農についての事情調査して当該解除若しくは解約又は更新の拒絶を適法且つ正当であると認めた場合、当該解除若しくは解約又は更新の逼絶に係る小作地」とこの六條の二において除外されておるのでありまするが、こういう点についてもさつきの第九條の二と同じように、むしろ保守化した反動的な規定のように考えられるのでありますが、こういう点について十分考えざるを得ない。  次に現在の農地委員会の構成でありますが、先ほどある委員から、農地委員会はこの際至急に解散して、新たに再選すべきものであるという意見がありましたが、それに関する限りは、私りリコール制等の適用もございまして、法がいかに完備研究されても、農民自体が法に自覚していない以上はだめだということは言うまでもございませんが、われわれはこの農地委員会の改選というようなことが眞に取上げられて考える場合に、次の点を一つ考慮に入れてもらいたい。現在本年十二月あるいは來年二月に効力を失うところのこの選挙名簿による基礎で選ばれた委員の構成、地主及び小作及び自作というような現在の数字における構成では、実際の改選の目的を達することができない。眞に農地改革を強力に遂行するという立場におきましては、むしろ民主團体から強く要望しておるところの小作六、地主一、自作二というような比率においてこそ、初めて完全なる農地委員会の運営なり、法の精神に徹するところの目的を達する、かように考えるわけであります。以上農地問題につきましてはほかにもありますけれども、時間の関係でこの程度に止めまして、後日に讓ることにいたします。
  67. 山添利作

    ○山添政府委員 G・H・Qの農地開放を妨害するものに関する指令の件でございますが、この結果によりまして、いわゆる裁判等を闘爭手段とする地主攻勢というような問題につきましては、非常に反省を促したところが多いのであります。そのほか各農村等におきましても、あらためてまた農地改革の意義を高調し、主旨の徹底をはかつて、農地改革完遂の徹底をはかることに努めるように通牒も出しましたし、そういう点で地方では行われておると考えておるのであります。  第二番目の書記の待遇並びに身分の保障について申されましたが、この点につきましては、私ども書記諸君と時々話合いをいたしておるのでありまして、御指摘になりました金を借りるというような問題は、昨年はございましたが、本年は四月にはいりまして相当の金の令達をいたしましたので、そういう問題は現在は解消いたしております。ただ予算にせつかくあげられてあるだけの金額を支給してくれないという問題は、役場の待封等との振合上、ままそういう場合もあるのでありまして、しかしそれにつきましては、書記諸君が激務に從つております事情から見ましても、当然予算に計上されておりますだけの待遇、すなわち普通の役人なみは待遇すべきであるといういとで、強い指導を加えておるわけであります。それからまた將來に関する身分保障の問題につきしましても、これは書記の代表者諸君とは、いろいろ話をいたしておるのでありまして、私といたしましては、それは具体的の成算をもつております。  それから小作料の問題でございますが、小作料はただいま千七百円の基準でやり直すとかいうようなお話がありましたけれども、政府といたしましては、そういう考え方をもつているわけではございません。農地改革が終りますにしても、小作地としてはやはり五、六万町歩は残存するわけでありまして、この問題は相当愼重に取扱う必要があると思つておりますが、いずれにいたしましても、これを大幅に引上げるという考えは全然もつていないのでありまして、と同時に小作料のごときものも、たとえばある年金なら年金とみてもよいわけでありますから、たとえば公債の利子が変れば、そういう程度の待遇をしなければいかぬじやないかという考え方はもつております。いずれにしましても、これは將來の問題といたしまして、地方農地委員会等においてとくと練つていたたぎたいと思つている問題であります。  それから永小作権の問題を農地調整法第九條に入れましたのは、事実問題として永小作権は強いから、こういう規定はなくとも今まで差支えないのでありますけれども、しかし観念の上からしますと、民法では二年小作料を納めなければいきなり消滅を請求することができる、こういう規定になつておりますので、その民法の規定が不当でありますので、こちら方を直したのであります。  自作農創設特別措置法の第六條第一項の、土地の引上げが合法かつ適正に行われた小作地は買收の対象にしないという規定であります。小作地を買收する面積は、そういうことに関係なしに、二十年十一月二十三日現在でやるのであるが、その買收する小作地としては、今自作になつているようなものをわざわざ買收の対象にすることはない。こういう断わり書をつけてあるのでありまして全体として土地所有者から買收します小作地の面積には、今の御指摘になりました條項とは何ら関係がないのであります。  それから委員会の問題がございましたが、これらのことは、將來よく情勢を見た上で檢討したいと考えている問題であります。
  68. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 今の自作農の六條の二でありますが、適法というような場合、昭和二十年十一月二十三日における適法という問題は、小作料統制に基きまして、町村の農地委員会に届出主義をとつておるが、そういつたことをやらないというのがほとんどだと考えておりますが、この場合に適法というのは何を意味しているかということをお尋ねしたい。  それからもう時間がありませんから簡單に申し上げますが、次に一点だけお尋ねしたいのですが、この自作農の第五條及び農地調整法の第五條にありますところのいわゆる國または公共團体というものが担任いたしております全國各地の療養所関係につきまして、最近物議をかもしている。それは何かと言えば、戰時中におきまして、傷病兵士の人たちに、自然の景風に惠まれ急速なる回復のために相当無理をいたしまして、傷痍軍人等の療養所を各地の設置したことは御存じの通りでありますが、そうしたことから関連した問題でありまして、最近におきましては、作業農法等に実際上あてはまらない相当廣範囲面積をその療養敷地に取入れまして、ためにその附近の農民はたいへん迷惑と犠牲と拂つてきている。その作業場法として用いるべき当然の土地というものが、実は患者の療養地でなくて、その療養所の官吏が、自己の食糧のためにそれを私いたしているという不都合な事実が出てきている。かようなことは最近徳島縣の西尾等におきましてもあるのでありまして、軍の方から調べられた場合に食糧隠退藏があつたというので、強い申入も軍の方からも受けておりますが、こういうことは第五條の一、二を惡用いたしまして、食糧管理法に違反しての行動であるというふうにわれわれは考えて、断固たる処置を講じなければならぬ。こういう類以の土地は相当全國的にあるということも聞いておりますが、これが中央にまいりますと、農林省と厚生省との方面の間の折衝になりまして、何が何だかわからないというようなことになつていくということは、農地開放の趣旨に反するし、実際一部のそういう不都合な者の惡徳行為を容認するということにもなつておるのでありまして、これらに対しては、このせつかく農地調整法改正のときに、もう少し何とか、これらの弊害を除去するようなことを挿入すべきだと考えられますが、これについてはどういうふうに考えておるか。  なお一点だけ、これは委員長に対して関連して御希望申し上げまするが、仕事ももう末期的な立場になつてきておりますが、農地開放の精神に反して、農地法第十四條第四号に明らかに該当しておるところの犯罪件数が、全國で相当多数に上つておるというふうにも存ぜられますが、これらは常に檢察当局の方面における人員が少いとか、何とかかんとか難くせをつけまして、これらの法の適用をうやむやにいたしておるようなきらいがあるのであります。こういつたことに対して、最近までにおける問題が何パーセント程度取り上げられて調べられたか。これも局長から伺えれば結構でありまするし、さらに法務廳の檢務長官を次の機会に呼び出してもらいまして、土地取上犯罪行為等の檢挙の内容を聽かしてもらいたいと思います。以上であります。
  69. 山添利作

    ○山添政府委員 自作農創設特別措置法の第六條の「適法」と言いまするのは、当初におきましては、農地委員会の承認、それからしばらくして、これは農地委員会の承認を地方長官の許可ということにいたしましたので、地方長官の許可、それを得ておることが適法であります。  それから療養所の例をおあげになりました、國または公共團体に属しておる農地の開放問題についてお述べになりましたが、これは農地委員会におきまして、開放の計画を立てて決定をいたしますれば、そのおのおのの事業を所管しております所管の大臣等において、許可をするということになつておるのでありまして、これを適当に処置すべき途は整つておるわけであります。しかしその運用におきましていろいろ問題もあろうかと思いますので、具体的な問題につきましては、それぞれそういうことに関係しております官廳とも連絡をとりまして、適切なる解決を得るようにいたしたいと思います。
  70. 井上良次

    井上委員長 北君。
  71. 北二郎

    ○北委員 農地調整法の農地政革の目的は、大体耕作者に全部土地を與えるというのが本心でと思います。一体在村地主としてひとつも耕作の意思がない者に土地をもたせるという考えは、どこからきているのか、この点。次には、今まで行われておるところの農地開放が滿足にいつておるかおらないか。まず最初にこの二点をお伺いする次第であります。
  72. 山添利作

    ○山添政府委員 けさほど松沢さんから御質問になりましたところの、すなわち在村地主で、かつ見かけ上自作農であるかのごとく見える。こういう問題でございますが、本來土地所在者がみずから耕作に從事しないものを残す観念はない。しかしながら、この法律の定義といたしましては、自己の計算によつて耕作といいますか、農業を営んでおるものは自作農と見ておる。こういう定義がある。その定義と実際上のわれわれがもつております自作農の観念、また農地改革の精神であります自作農の観念とは、そこに距離がある。そこでそれを埋めるためには、午前中も申しましたが、諸負その他何らの名儀をもつてするを問わず、脱法のような行為は許さない。さようなものは皆農地改革の対象にして國が買収する。こういう規定があるということを御説明したのであります。北さんの仰せになるようなものを認める趣旨は毛頭ありません。
  73. 北二郎

    ○北委員 次に先ほどお伺いしたのでありますが、もう農地開放の末期でありますが今まで行われたところの農地開放はうまくいつておるか、いつていないか、この点を農林省はどう考えるか。
  74. 山添利作

    ○山添政府委員 大体において、その目的を達しておると考えておるのでありまして、われわれが予期しましたよりも順調に進んだということを喜んでおるわけであります。しかしながら、さらに微細な点にわたりまして落ちがあるかどうかというようなことは、さらに精密に当ることを決して怠るわけではないのでありまして、徹底してやりたいと考えております。
  75. 北二郎

    ○北委員 そこで私は思うのでありますが、大体今の農地開放のやり方は、うまくいつてないと思う。そこで農地委員の選挙を今後行う意思ありや否や。
  76. 山添利作

    ○山添政府委員 その意思はございません。
  77. 北二郎

    ○北委員 そこで次には畜産問題でありますが、この農地開放の趣旨は、面積において平均して内地三町歩、北海道が十二町歩だと言われておりますが、北海道でたとえば有畜をやつておる場合、十町自分の土地で十町借りておる。こういう場合に、平均十二町歩だからといつてあとに八町歩を取上げるというような場合が非常に起つておるのでありますが、この点農林省としてどう考えるか。
  78. 山添利作

    ○山添政府委員 これはその農業経営が適正と認められるかどうかという点でありまして、適正の限度においては、十二町歩を超えても、すなわち小作地も何も合わせて十二町歩を超えても、それは差支ないわけであります。また自作地、自己所有の土地自身でも、十二町歩を超えてもおき得る場合があるわけであります。從つて今の場合は、その農家の経営が適正と認められるかどうか、すなわち自家労力をもつて、それを根幹として能率よくやつておるかどうか。こういう点が判断のわかれ目になるところであります。現在北海道におきましては、現に耕作しておる限りは、面積に頓著なく、結局いかに廣い面積でありましても、そのままにしておくという傾向でありましたのでそれは法律の趣旨からいつても間違つておる。やはり十二町歩を超える場合は、たとえ自作農でありましようともその経営が不適正のものであれぎ、この超過分は買收の対象になると警告いたしたようなこともごづいます。從つて一概にやり方がよかつたか惡かつたかということを申すことはできませんので、要はその農業経営が適正に行われておるかどうかということの認定の問題になるわけであります。
  79. 北二郎

    ○北委員 そうしますと、今の場合なんかにおきましては、ほんとうの耕作者に土地をもたせるという趣旨に反すると思うが、農林当局はどう思うか。
  80. 山添利作

    ○山添政府委員 反しておるとは思いません。
  81. 北二郎

    ○北委員 私は反しておると思う。たとえば北海道の場合、一家が三人四人でありましても、私も事実やつてつたのでありますが、機械を使う場合は十五町歩や二十町歩の土地は樂です。これはほんとうの耕作する者に土地を與えるという趣旨に反すると思うが、農林省の所見いかん。
  82. 山添利作

    ○山添政府委員 そのような能率のよい経営をやつておられれば、そのまま認めるのであります。
  83. 北二郎

    ○北委員 しかし末端においては、農林省がどう指令したかしらないが、それがやられていない。たとえば十二町歩以上だから取上げるといつたような場合が非常に多いのでありますが、この点ひとつ農林省として、北海道はもちろん、各縣に対して注意を発せられるようお願いしておく次第であります。  それからもう一つは、今度の農地改革によりまして、大体先ほども申しましたが、北海道が十二町歩、内地三町歩でありますが、これによつて今牧場の大経営が成り立たない。すなわち牧場の大経営が成り立たないとは変な話でありますが、たとえば海道におきましては、小岩井だとか町村というような農場がありますが、これらの人はおもに乳牛の改良に重きをおいて、ただ不在地主で遊んで食つていこうという考えはないのであります。ところがこの農地改革によつて、それが皆平均十二町歩、三町歩にわかれますと、日本の畜産の將來に非常に重大な障害がくると思いますが、一体農林省はこの点どう考えるか。
  84. 山添利作

    ○山添政府委員 牧野の開放の問題でございますが、当初われわれの考えといたしましては、町村牧場のごとき優秀な牧場で、種畜の供給というようなことに重大なる貢献をなすというような牧場は、相当面積を保存する必要があるという考えでおつたのでありますが、いろいろ関係方面とも折衝いたしました結論は、一律にそういう牧場といえども、北海道で最高四十町歩というのが法律に書いてございますが、この全國を通じて四十町歩までということに決定をいたしてのであります。そこである種の牧場につきましては、これは從業員等をもつて構成する協同組合の形で、なるべく現在の機能を破壊せぬように続けることができるだろうかというような考えをもちまして、対策に苦心をしておる次店であります。
  85. 北二郎

    ○北委員 それからただいま申された町村農場、あすこは六十町歩の経営でありますが、牛が大体百前後ですが、これをどういうわけで四十町歩にしなくちやならぬか、その御意見を伺いたと思います。
  86. 山添利作

    ○山添政府委員 これはいろいろ苦心をいたし、たびたび折衝をいたしました結果がさようなことになつたのであります。御了承を得たいと思います。
  87. 北二郎

    ○北委員 そうしますと、農林当局の省としては、どういうような腹でおるか。その点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  88. 山添利作

    ○山添政府委員 畜産の発展ということを考慮いたしまして、農地開放の結果がすべてプラスになるような、あらゆる手だてをなる得る限りにおいて考えたいというわけであります。
  89. 井上良次

    井上委員長 大体以上で質疑の通告は終りました。從つて質疑は大体これにて終了するようにいたしたいと委員長は思います。そこで、大体明日各党でそれぞれお諮りを願いまして、修正あるいは原案賛成等、それぞれ御檢討を願つて、態度をおきめ願いまして、明日の午後の委員会で正式に討論をいたしたいと思います。     〔「どの法案ですか。農地関係だけですか。」と呼ぶ者あり〕
  90. 井上良次

    井上委員長 そうです。そこで、大体これにて質疑を終了することに御異議ありませんか。     〔「まだ一つあり」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  91. 井上良次

    井上委員長 異議ありましたら、明日午前中質疑を続行いたします。それではこれにて一應散会とし、なお引続いてこの問題について懇談いたしたいと思いますから、委員の方お残りを願います。  これにて散会いたします。     午後三時十二分散会