○田辺説明員 それでは農地設整法の一部を改正する
法律案要綱から説明を申し上げます。
第一がそこに書いてあります
通り、
自作農創設特別措置法の規定により、
政府が賣り渡した未墾地、宅地及び建物について、農地と同様に移動統制を行うということが第四條に規定しておりますが、これは從來は即墾農地につきましては、こういうような移動の統制をや
つてお
つたのでありまするが、今度法律の改正によりまして、未墾地、建物、宅地等につきましても、やはり同様にこれは農地改革法によ
つてこれを賣り渡したことになりますから、その跡始末をすることに、しかもこれを合理的にや
つていくために、農地と同様に移動の統制をしたのであります。それでこれを貸したり、あるいはいろいろの権利を設定したりする場合におきましては、やはり
地方長官の許可を得なければならぬというようにしたのが第一であります。
それから第二が、
農地調整法第九條による農地の賃借権の保護規定を永小作権にも及ぼしたのであります。これは從來永小作権の規定は民法に規定されてお
つたのでありますが、それは非常に長い期間でありますると同時に、二年間の小作料を滯納しなければ消滅できないというように保護せられておりましたけれども、一方賃借権の権利が非常に強くな
つてまいりましたので、それに比べますると、永小作権の方が非常に弱いようなことになつたまい
つたのであります。特に永小作権の消滅、更新、拒絶、それから一方においての解除、改約、というようなものにつきましては、永小作権の方が弱くて、從來の賃借権の方が強くなつたというような
関係にな
つておりますので、これはどうも不都合だというので、永小作権にも同様の保護を與えることにしたのであります。でありますから、その上に永小作権は期間が非常に長い、その他いろいろの物件としての権利があるのでありますが、そういうふうに平仄を合わしたわけであります。
その三が市
町村農地
委員会の選挙の手続を、できる限り市
町村会議員の選挙と同様にすることであります。それから市
町村農地
委員会の從來の選挙は、大体從來の市制
町村制に準じた規定によりまして選挙管理
委員会が手続をや
つてお
つたのでありますが、今度はその間におきまして、非常に手続上におきましても不便なところがありますので、これを今度はかえまして、今度は衆議院議員選挙法及び
地方自治法に準じた選挙手続によりましての管理
委員会がやることに便宜にかえたわけであります。
それからその次に都道府縣農地
委員会の
委員の選挙は間接選挙とし、選挙権は市
町村農地
委員会の
委員のみ有するものとし、被選挙資格は市
町村農地
委員会の
委員の被選挙資格と同様にすること、これは十五條の十一でありますが、この都道府縣農地
委員会の選挙につきましては、この前の議会に御提案をいたしまして、御賛成を得たのでありますが、そのときにはこれは直接選挙にしてお
つたのであります。それゆえに日本全國、縣下一般にやらなければならぬというので、事実は非常に複雜であり、費用その他いろいろの点からいたしましても不便がたくさんありましたので、今度は市
町村農地
委員会の
委員にのみ選挙権を與えることにいたしまして、被選挙権者は市
町村農地
委員会の被選挙権を有する資格のものであるように、間接選挙に改めて運用を便宜にしたのであります。
第五は、市
町村農地
委員会の
委員は本年十二月、都道府縣農地
委員会の
委員は明年二月に任期終了するが、
委員の任期を明度三月三十一日まで延期すること。これに伴い現行の選挙人名簿の効力を明年三月三十一日まで延長すること。これは本度ただちにこれをやりますと、農地改革の
関係上非常に複雜いたしますので、こういうような手続にしたようなわけであります。
それから第六が、都道府縣知事は特に必要ある場合は、市
町村農地
委員会の権限を都道府縣農地
委員会に代行させることができる。これは、都道府縣知事は、特に必要がありました場合におきましては、市
町村の農地
委員会の権限を都道府縣の農地
委員会に代行させることができるといたしましたのは、所によりますと、なかなか複雜な問題が起りまして、市
町村農地
委員会ではなかなか処理のできないような場合もありますので、これを都道府縣農地
委員会に代行さすという一つの便宜な規定を設けたわけであります。
第七が、農地の賃貸借の解除解約または更新の拒絶は、市
町村農地
委員会の承認にかえて、本度の十二月二十三日までは、都道府縣知事の許可制とな
つているが、これを明度四月三十日まで延期することとしたのであります。これは御
承知の
通り、市
町村農地
委員会で今まで原則といたしましてはこれを承認をするということにな
つておるのでありますが、現在の農地
委員会ができました経過から申しましても、なお農地改革法その他の法律が十分に徹底していない。あるいはまたその中にいろいろの
関係がありまして、この法律の趣旨に副うて適正な運用ができないような場合もあるのでありますから、やはりこれを來年の四月までもう一度延期をいたしまして、農地の返遷その他についてむりのないようにしようというのであります。
第八が、
昭和二十度十一月二十三日以後に不当に行われた土地の取上げに対して、市
町村農地
委員会が賃借権の
回復を行おうとする場合に、その農地が第三者の小作地とな
つている場合には、賃借権の
回復ができないことにな
つているが、これを当該第三者が適法かつ正当に耕作権を取得した場合に限定すること。これは、從來の規定によりますと、引上者と第三者が脱法的な行為に出ることが考えられまして、この規定の精神が失われるおそれがありますので、今回その範囲を制限しまして、第三者が適法かつ正当に耕作している場合に限
つたのであります。
第九が、小作調停制度を次のように改善すること。一、裁判所が小作調停を受理した場合は、原則として事件を市
町村農地
委員会の勧解に付することを要するものとすること。二、裁判所が調停をする場合には、小作官または小作主事の
意見を聽かなければならないこと。三、
地方裁判所長が
選任する調停
委員となるべき者は、これを都道府縣農地
委員会において推薦する者及びその他適当な者について
選任することとすること。この小作調停の改善につきましては、いろいろ
委員会におきましても御議論がありましたし、これは全然廃止した方がよかろうというような
意見もあ
つたのでありますが、この小作調停法は、一方におきまして非常に弊害がありますと同樣に、一方におきましては
相当長所もあるわけでありますから、われわれはこの弊害のある点を今度はためて、そうして長所のある点を伸ばすというような考えからいたしまして、こういうように改善することにいたしたのであります。その要点は、ここに書いてあります
通り、裁判所が全部独善的にやるのではなくして、今度は市
町村農地
委員会がこれに加わるというようなことにしたのであります。それで、裁判所が小作調停の受理をいたしますと、これをただちに市
町村農地
委員会の勧解にかけなければならない、市
町村農地
委員会の勧解にかけなければ一方において調停ができないというように、まず第一に市
町村農地
委員会が事実上の調停をなすことに改めたのであります。それから、從來は小作官、小作主事——小作官は役人であります。小作主事は
地方自治法による縣における主事であります。從來は小作官の
意見を聽くことを得と調停法に規定されてお
つたのでありますが、これはどうも、裁判所の方で聽くことを得ですから、聽いても聽かぬでもよろしいということで、一方的にきめられるおそれがあ
つたのでありますが、小作調停は十分に
農村の
実情を知
つて調停をやらなければいけませんから、今度は小作官の
意見をどうしても聽かなければならぬ、こういうように規定を改めたのであります。それから、
地方裁判所調停
委員でありますが、小作調停は、御
承知の
通り、裁判所の調停と、それから一方小作調停
委員会の調停があるわけでありまして、小作調停
委員の調停の方がむしろ原則にな
つておるわけであります。それで、小作調停
委員を
選任するということは、この調停がいかに運用されるかということときわめて重要なる
関係をも
つておるわけでありまして、これにつきましては、從來裁判所が調停
委員を各部門別に
選任いたしまして、そうしていよいよ調停をいたしますときには、その中から適当な者を指定をいたしまして、これで調停
委員会を組織いたしまして、そうして担任の判事が会長にな
つて調停をすることにな
つてお
つたのであります。それゆえに、調停
委員会に新しい空氣を吹きこむということが調停を円満に運行するゆえんでありますので、民主的に選ばれたところの各縣農地
委員会の
委員の方、その他適当なる者をこの中に入れていくということが必要でありますから、そこで、都道府縣農地
委員会において推薦した者を、この調停
委員にしてもらうということにしまして、この調停を民主的に運用していこうというのがこの調停制度の改正の趣旨であるのであります。大体調整法の改正の趣旨は以上の
通りであります。
次は
自作農創設特別措置法の一部を改正する法律要綱案であります。
第一は、民法施行法第四十七條に規定されている永小作権、すなわち民法施行前に永久存続すべきものとして設定された永小作権及び存続期間が五十年を超える永小作権は、同法の規定による本年七月十五日において効力を失うことにな
つているが、農地改革の趣旨に照らして、その処理を行うため、かかる永小作権の存する農地及び牧野は、
政府において買收することができることとした。この永小作権は、皆樣も御
承知の
通りに非常に古い沿革をも
つておるのでありまして、從來これにつきましていろいろ
調査をしてまいりましたけれども、大体今までの
調査によりますと、三万
町歩ばかりもあるというような
関係にな
つてお
つたのでありますが、自作農創設その他によりましてだんだんこれを自作農にするというような
対策を講じてまいりましたし、その他いろいろの変更をいたしまして、最近におきましてはこの永小作権は非常に減少しておりまして、農地改革以前における
町歩は大体一万
町歩余しかないことになつたお
つたのであります。その永小作権の中には、御
承知の
通り、設定永小作權、これはすなわち、民法ができまして、民法の規定によ
つて新しく設定された永小作権と、それから徳川時代からずつと続いておりますところの旧慣永代小作というのがあります。これは永久に存続すべきものとして認定せられたものでありまして、この中には、いろいろの負担のために永久に存続するものもありますれば、あるいは土地制度の
関係から永久に存続するものとな
つておるもの、その他いろいろの
関係のものがありますが、要するに、永久に存続するという分割所有権的の性質をも
つておる永小作権でありますが、この二つの
面積は、大体約一万
町歩余のうちで、旧慣永代小作の永久に続くというものが、大体六千
町歩ばかりあるわけであります。
ところが、これにつきましては、これは民法によりまして、ずつと五十年以上続くものは五十年で打切るということにな
つておりますが、施行規則によりまして、これが五十年期間が過ぎますと、その期間の過ぎた後一年内において、地主の方が
相当價格で買取るなり、地主が買取らなければ、その次の一箇度において小作人において買取ることを要すということが規定してありまして、買取権は地主に優先をせられておるのであります。それで五十年の期間がちようど本度の七月十五日に切れることにな
つておるのでありますから、放
つておけば、これは地主の方が優先権があ
つて、
相当の價格で買取
つてしまえば、小作人は買取ることができない。こういう結果になるのであります。それゆえにここにおいて何とかしてこれを整理しなければならぬということに逢着したのであります。それでこの
対策につきましては、存続した方がいい、あるいは解消した方がいいという
意見が種々ありましたが、これはもうわずかでありますから、この際一應原則として整理をするという方針をと
つたのであります。
そこでその整理の
方法はどうかと申しますると、これは現在の保有地は、日本全國平均一
町歩ということにな
つておりますが、たとえばその一
町歩以内にはいりましても、旧慣小作権がその中に含まれておるといたしますと、それは農地
委員会が買うことを
相当と認めた場合においては、認定買收によ
つて今度は買取る。そしてこれを小作人に賣ることができるというように、農地改革法の一環といたしましてこれを処理することにしたのであります。これが第一であります。
その次が、自作農が、全然農業に從事せず、しかもその自作地、自作牧野のある市
町村及びその隣接市
町村の区域内に住所を有しない場合における、その自作地を買收することができることとすること。これは從來自作地というものは、全然買收しないというのが大体の原則であ
つたのであります。しかしながら隣りの村、そのまた隣りの村というように、遠方に農地をも
つておりまして、しかもそれが実際に自分で耕作していない、人頼みをしておるものがありますと、これはどうも自作と申しながらまことに適切でないということで、このような自作地、牧野については、買取ることに今度したのであります。
それから農地の遡及買收を円滑に行うため從來の規定を更に明確にすること。報償金算定の基準となる農地の
面積は、一世帶につき平均北海道十二
町歩、内地三
町歩であるが、從來省令で規定されていた事項を法律に明文化すること。これはもう御説明申し上げるまでもないのでありまして、從來は
面積は北海道十二
町歩内地三
町歩というのでありますが、これを各
地方において、また小さく各縣によ
つてわけまして、中央
委員会が定めた
地方、おのおの廣いところと狹いところと平均三
町歩になるのでありますが、それによ
つて報償金を定めることにしておりましたのは非常にめんどうであり、手続を要しますので、この場合法律に基きまして北海道は十二
町歩、内地は三
町歩というようにきめたのであります。しかしこれは從來は省令で仕方なくきめてお
つたのでありますが、これは重要なる事項でありますから、省令からのけまして、この法律の中に内容といたしまして規定をしたような次第であります。
それから次が、入会の牧野、個人有の牧野で共同利用の
目的に供されているものを
政府において買收しうることにすること、これは入会の牧野、個人有の牧野で共同の利用の
目的に從來供せられておつたものは大体対象にな
つていなか
つたのでありますが、これも一方解放という立場から必要であれば買收をし得るようにこれを定めたのであります。
それから第三には未墾地の買收であります。未墾地の買收に関し、
昭和二十度十一月二十三日以後に旧軍用地で、國費が開発された農地は、未墾地として買收することができることとすること。これは從來未墾地の買收に関しまして、旧軍用地については、いろいろの人がはいりまして、そうしてこれを乱雜に開墾やいろいろなことをしておつたということで、現状を見ますと非常に適正でないような分割の仕方、しかも利用
方法においても非常に不完全な利用をしておりまして、これを整理しなければどうにもならないというような場合が多々ありますので、これらの点を考慮いたしまして、今度未墾地として買收ができる、買收したものを
政府の計画によ
つてうまくや
つて、ほんとうの立ち行くような
農家を入れて、これを再配分することができるという規定にいたしたわけであります。
第四は、都道府縣においても、未墾地の買收又は使用予定地域の指定をなし得るとするとともに、その指定の必要がなくなつた場合、これを取り消すべき旨の規定を設けること。これはこの
通りであります。
それから
政府が買收した未墾地又は牧野について、立木、竹建物等を所有する者又は家畜の放牧若くは採草をしてした者に対して、買收後定められた時期まで從前と同一の使用收益をさせるため当該土地を使用させるようにすること。これは書いてある
通りでありまして、その牧野未墾地等についてこれを荒したり壞したりすることは困りますから、当分の間從來
通り使用させるようにしたというだけのことであります。
要するに今度の自作農特別
措置法の改正は大したことはありませんが、大体
農地調整法の一部を改正する方に重点がおかれておるようなわけであります。どうかよろしくお願いいたします。