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坪井委員 農林委員会は四日、五日、六日にわたりまして、四日の日には
茨城縣、五日には
栃木縣、六日には
群馬縣、この三日間にわた
つて、三縣の雹害最も甚大なる町村を視察いたしました。
その第一日の
茨城縣でありますが、水戸を中心とし、なおまた内原を中心といたしました
茨城縣におきましては、東茨城郡あるいは西茨城郡、このほかに那河郡、久慈郡、この四つの郡が相当被害を多くこうむ
つております。特に東茨城郡におきましては、下中妻村等は内原駅を中心としておりまして、最も被害激甚であります。ほとんど収穫皆無でありまして、麦の穂などは一粒もついておらない、しかも卵大、またはもつと大きな湯呑型以上の雹が降
つたために、結局麦稈をたたかれまして、ほとんど疊を敷いたことくにな
つておるのでありまして、ま
つたく悲惨な現状を呈しておるのであります。おそらくこの下中妻村のびときは、全村ほとんど被害をこうむ
つております。特に麦ばかりではありません。タバコとかあるいはそのほか馬鈴薯あるいは
一般蔬菜というようなものが被害をこうむり、その他果樹等も相当の被害をこうむ
つておるのであります。かような被害状況でありまして、私どもはま
つたく雹害のいかに甚大であるかということが——水害と違いまして、水害は大体川の流域でありますが、雹害はほとんどその全地域に及ぼしておるというのが、特に違
つておるのでありまして、しかも水害ならばある程度の収量は得られるというのでありますが、ほとんどこれは収穫皆無の状態であるというような現況であります。村へまいりまして、村長さん及び
食糧委員、あるいは話係各方面のいろいろな地方事務所長、その他各位から、いろいろ調査の実情を伺いましたが、また数字的には細部にわた
つて今調査中でありますから、追
つてなお明細なる
報告をするという現状にな
つておらます。いろいろ困
つた問題がありますが、特に要望されておるような点につきましては、とに
かく被害農家に特配を願いたいというような現況にな
つております。どうしても今後農家が大いにここで働くという上において、特配をもらわなければや
つていけない。ほとんど麦を当てにしてお
つたものが、その麦が全滅でありますので、非常に
食糧に困
つておるという現状であります。なおまた営農資金といいますか、ほとんどあと作の
甘藷のつるを買
つて植えるという金さえも、現状では被害農家の
手もとにない。何とか金を協同組合なり、その他から借りなくては
甘藷のつるも買えないというような現状にな
つておることも、るる
陳情されたのであります。そのほかいろいろ要望する事項はたくさんありますが、いずれまたあと書面で委細を
報告いたしたいと思います。特に私どもが久慈郡の山田村に参りましたが、この村は昨年水害でもひどい災害を受けまして。また本年こうした雹害を受けまして、本年はもう自村だけでは立ち上るだけの力がないというようなことさえ、村長から申されてお
つたのであります。この村は五部落ありますが、そのうちの二部落半は麦作その他タバコ一切の農作物の全滅の状態であるという悲惨なる状態を見受けました。この雹害、なおまた併せて水害等をこうむりまして、ま
つたく被害農家としても困
つて、何とかして立ち上りたいが、もう今後自力だけでは立ち上れないから、ひとつ
政府のできる限りの援助を仰ぎたいというような要望が、村長を通し、地方事務所長を通じてあ
つたのであります。そのほか世喜村等においては、降雹と同時に相当の降雨量があ
つたそうでありまして、学校の子供が帰りぎわに二人が流され、そうしてそのうち一人はそのために死んだというような大水害があ
つた。
從つて田畑その他が流失または埋沒した箇所がありました。山田村等におきましても、私どもの見た部落においては、十数町歩が荒れ、また河川も荒れてお
つたのでございます。昨年被害を受けて、また本年こうした被害を受けているという現状は、ま
つたく私どもはお氣の毒にたえない。何とかしてこれは私ども帰りまして、
農林委員会はただちに緊急にこうした対策について、特に
委員会を開きまして、これら被害地に対する諸般の遺憾のない、要望にこたえるような努力をいたさなければならぬということを、痛切に感じてまい
つたのであります。
一昨日は
栃木縣へまいりました。
栃木縣の下都賀郡水代村、藤和村、桑村、生井村というように順次参りました。いろいろ被害状況を調査いたしましたが、
栃木縣の方は
茨城縣から比べますと、比較的その被害の度が少いのではないかと思いますが、しかし赤かび病の病害の被害が特に
栃木縣は多いのであります。ほとんど全縣に及んでいるという現状でありまして、被害については目下それぞれ調査中でありまして、そのうちにはこの調査のまとま
つたものが出るのではないかと思いますが、これは降雹と同時に、なおまたこうした赤かび病が特に全縣にまたが
つている。これは本年の氣候が降雨が多く、そうして低温であり、日照の日数が少く、非常に軟弱にできておる。そこに赤かびが蔓延いたしまして、ここ四、五日あるいは十日前ごろから、少しその徴候があ
つたが、どうすることもできなくて、一挙にこれが発生したというわけで、藥剤撤布等もや
つたそうですが、一回程度で、その効果がなか
つた。これで非常に減收にな
つたということで、いろいろ要望等がありまして、
食糧不足の農家には飯米の特配を願いたい、あるいはまた
供出割当の変更を願いたい。あるいはまた営農資金を何とかしてもらいたいとか、いろいろな要望がありましたが、とに
かく栃木縣といたしましてはをむしろ雹害よりも、全縣を通ずればそうした病害の方が多いという現状のように見受けてまいたつのであります。
次に昨日は
群馬縣へ参りました。最初に荒砥村、この村も被害が非常に甚大でありました。差にここにおいては養蚕等もやられておりますので、もう二日か三日で上簇するという養脅も、一、二割を除いて他はほとんどすべて捨ててしま
つたというような現況であります。ここの村においても、いろいろこまかい説明等を承隣ましたが、昨年水害等の被害をこうむり、本年またこうした雹害をこうむ
つたということで、これまた村として立ち上れない。被害農家についてはぜひひとつ特配をしてもらいたい。あるいはその他
肥料等の特配を願いたい。あるいは営農資金の問題、いろいろたくさんな要望等もありましたが、私どもは帰
つてから、できるだけ御期待に副うべく努力をいたしたいということを申し上げてまい
つたのであります。この村などは被害が非常に激甚であ
つたのでありまして、この村の村長さん等からもいろいろと進言がありましたが、やはり農家の被害のところにいろいろお見舞に行くと、婦人の方々はほとんど泣いてお
つて、ものが言えないというような現状にあるということを申されておりましたが、ま
つたく
食糧を失い、收入の道を失
つた被害農家については、私どもも心から同情申し上げた次第であります。
次に勢多郡の上川淵村、下川淵村、佐波郡の上陽村、勢多郡の木瀬村、かような順序で昨日は被害甚大なるところを四箇村まわりましたが、
群馬縣におきましてもこの地帶、この四箇村等はほとんど全滅の状態でありまして、木瀬村のごときはほとんど千町歩以上にも及ぶという現状で、ま
つたく被害激甚でありまして、村といたしましてはどうすることもできないということを、村長さんからも
報告を受けております。これら各村をすみずみまで実は調査いたしたいと思いましたが、車もはいらないのででき得なか
つたのでありますが、大体見受けたところ、全村ほとんど一本の麦も立
つておらない。ほとんどたたかれており、しかも実は落ちております。しかし農家はも
つたいないとい
つて、これを今拾い集めておるようでありますが、集めたものは全部しいなばかりで、鷄のえさにもならぬという現状でありまして、ま
つたくこうした村の今後の
食糧ということについて、私どもは、どうしてもただちに特配等をしてあげなくちやいかぬと
考えてまい
つたのであります。そのほか縣廳等においては、長官並びに農務課長さん、
食糧課長さん、あるいは各郡の地方事務所長さんからるる要望がありましたが、今までの農業災害の補償でありますが、昨年の共済金が一年経
つてきた、こういうようなことでは困るから、本年はこのきま
つた共済事業の補償金だけは、大体を見込んで先渡しをしてもらいたいというような要望が強くあ
つたのであります。ま
つたく私ども同感でありまして、何とかこれらの手を打つということも痛切に
考えてまい
つたわけであります。十月一ぱいまでの
食糧のないものには、どうしても今後の農家の
食糧増産に対しては相当量の保有米を必要とするという要望もありました。なおまた
資金難でありますので、とりあえずどういう手を打ちましてもこの資金融通の途をひとつ講じてもらいたい。なおまた
群馬縣などは農業会長の臼田
一郎さんから要望がありましたが、何としても即効性の
肥料を早く特配してもらいたい。あるいは家畜、家禽等の飼料を何とか特配してもらいたい。あるいは資金も、さきに申しましたように、被害農家一軒に五万円程度は最小限度で、五箇年無利子ぐらいで貸してもらいたい。こういう要望もあ
つたのであります。なおまた
供出割当の
補正を願いたい。また税金の減免を願いたい。この税金の減免等についてはいろいろ御
意見もあ
つたようですが、特に強く要望されてお
つたのであります。そのほか、種子とかあと作についても、地元でいろいろやりましてできないものは、ぜひともこれらの種子とか種苗に対する斡旋、あるいは助成金等の
交付を願いたい。
主食の特配は特にお願いいたしたいというような、いろいろ強い要望等もありましたが、私どもが見てまいりました点におきましては、何としても
群馬縣が全縣的にわたりまして、ま
つたく被害が劇甚であ
つたのに驚いたのであります。数字的に申い上げることは省きまして、いずれまた書面をも
つて後から詳しい数字は提出いたしますが、各縣よりこれらの動かぬ数字が出ましたならば、それぞれ各方面と連絡をとりまして、そうしてこれらの要望に私ども
委員会としてこたえたい、かように
考えておりますので、どうか
委員長におかけましては、速急に特にこれらの雹害等についての対策の緊急
委員会をお開き願いまして、しかもこれには
安本及び大藏省、あるいはまた厚生省というような、各
関係省の閣僚並びに
関係官に御出席を求めて、そうして過去のいろいろな対策というものはあまりにも手ぬるか
つたということが、いろいろ要望等の中にもありまして、過去の視察等はまことにきき目がない、と言
つては失礼だが、どうも調査はされたけれども、比較的効果が少く、ま
つたく期待はずれが多か
つた。今度の視察だけはそういうことのないようにしてい
つてもらいたいという要望もたくさん各所からありました。私どもは、ごもつともだ、しかしながらまた要望される皆さん方も、一遍でなく、どうか根強く所期の目的を達するまで
陳情あるいはまた要望されるようにお願いをいたしたいということを私ども申し上げておきますから、どうかひとつこの
委員会におきましても愼重審議をしまして、今回の害雹がいかに激甚であ
つたかということは、われわれ視察した者といたしましてはほんとうに心から同情せずにおられません。どうかひとつこの
委員会はこの被害農家が安んじて農業再生産のでき得るような方途を講ずるように、特にお願いいたしたいと
考えます。時間がありませんので以上あらまし雹害あるいは病害等が関連いたしまして、被害が激甚であ
つたということを
一般委員にも御了承願うと同時に、どうかこれらの緊急または恆久的処置について十二分にひとつ角度を違えまして、何とか速急にこれらの方々の安心のできるような方途を講ずるように、
委員会としてお取計らい願いたい。
以上簡單でありますが三日間にわたる雹害及び病害の視察をいたしました
経過について、その大要をかいつまんで御
報告申し上げる次第であります。