○野原委員 今回の
陳情はただいま
委員長から申されました十件でありますが、この内容を調査いたしますと、まずこれを四つにわけることができると思う。第一は林野の整備に関する問題であります。第二は森林
経営の計画化、
合理化に関する問題、第三が造林対策に関する問題、第四が治山治水、保安林の
強化等の問題、大きくわけますと四つの問題にわかれてくるのでありますが、これは四つにしてまた同時に
一つの問題であります。一括してこれらの
陳情書に対する考え方を申し上げてみたいと思います。
一体こういう
陳情が大量に出てまいつたことはどこに起因するか、これ畢竟するにわが國の森林政策が十分に確立していないことを現わすものでありまして、この点はなはだ遺憾でありますが、特に戰時中の長い間の過伐濫伐の結果、昨年東北及び関東を襲いました再度の大水害をこうむりまして、これが戰時中における過伐、濫伐の結果であり、またわれわれが山林の資源を單に略奪するのみで、森林の補植造成に関してはほとんど放任しておつたというところに、國民太多数の人々の関心が高まりつつあるのでありまして、こういつたような
請願とな
つて現われたと思うのであります。
第一の林野整備の問題についてでありまするが、この十件の
陳情は符節を合せたことく森林の整備に関してのいろいろな
陳情を國会にや
つておるのであります。その大きな問題としましては、御
承知の
通り森林
経営が非常に不安である。つまり最近
開拓問題によ
つて森林の解放がいろいろと論議されており、また強要されておりますが、ややもすると
開拓の美名に隠れて、山林をわがものにしようとするような、いろいろなこうした主張も伺われるし、あるいはまたせつかく造林をしたが、未だ伐期に到達しない幼林が無惨にも伐採されるというようないろいろなことに関連いたしまして、いわゆる
開拓の行き過ぎということが造林者のいろいろな不安とな
つて現われておる。そういう
開拓に関する問題や、あるいはまた巷間傳えられるような第三次
農地解放の問題に関連して、山林も近く解放されるだろう、あるいはまた五
町歩を限度として細分化されるのではないかといつたような、さまざまなわが國森林政策上の不安がいまだ山林所有者の脳裡からぬぐい去られない。そういういろいろと林野整備に対する不安から造林が行われてないというふうな問題にな
つているわけであります。なおこまかな問題としましては、たとえば造林をするための苗闡の
敷地が農
耕地にな
つておる。
從つてそういつた農
耕地が苗木を養成しようと思
つても、なかなか思うようには確保できないというような具体的な問題も含んでおりますが、こうした問題は、要するに一言にして言えば林野整備の問題なのでありまして、今後の
日本の國土をして林野あるいは
耕地、放牧地、採草地といつたような、いろいろな
土地利用区分が確立いたしまして、いわゆる國土計画的な
見地からこうした
土地の廃置分合、あるいは適正な管理が行われるという点をお考えにならなければ、森林の復興という問題は十分
目的を達するわけにいかないということが第一であります。今日の林野解放の現状は、たとえば農
耕地の開墾にしますと、その
地方々々の
農地委員会が一方的に山林の解放を主張する。それに対して林業の所有者がなんら関知することができないというようなぐあいでありますので、はなはだ残念でございまするが、その林野の整備に関しましては、十分に林業者の
意見が尊重されるという形でなければならぬし、同時にまた解放されるという
土地は、それが的確に農
耕地として利用し得るものでなければならない。ややもすれば農耕に適さないような非常な急傾斜地であるとか、農耕不適地さえもが農
耕地として解放される場合に、弁乘的に解放を見るというがごときことがありますると非常な問題なのであります。こうしたことは少くも林野整備の根本問題をきめて、そうして林業政策は確立するというこでなければならぬと私ども考えるものであります。こうしたことに関しましては特に林野整備に関する特別の
委員会というふうなものを設けて、そうして林野整備の特別な
措置を講ずるような立法的な
措置も講ずる必要があろうと思うのであります。
次は森林
経営の計画化、
合理化の問題でありまするが、たとえば三重縣の森林組合から出した
造林計画樹立促進に関する
陳情、この施業案の編成に対しまして補助金の
増額等を訴えてまいつたわけでありまするが、御
承知の
通り、わが國の國土三千六百万
町歩のうち森林の占める面積が約二千五百万
町歩でありまして、今日の森林資源蓄積から申しまして、今日わが國が年々伐採しておる用材あるいは
薪炭原料というふうなものの現状をも
つてまいりますと、用材林においては今後三十年程度は続くようでありまするが、
薪炭林のごときは今後十五年足らずでなくな
つてしまうということが盛んに言われておるのであります。こういうような植えてから五十年、百年経たなければ十分な用材として利用できないという特殊な
國家の源泉的な産業であり、あらゆる産業の基盤であるところの林業が、今そうした危險な
状態におかれておるような現状なのでありまして、この際伐採は伐採として、最小限度必要なものはあくまでもこれを伐採利用するということは必要でありますので、これもわれわれとしては当然必要なだけの木伐を伐採することは必要でありますけれども、同時にまたこれに対する造林も行わなければならぬ。それは的確な計画化と
合理化によ
つて行わなければいけないのでありまして、そのためには國有林はもちろんのこと、民有林、公有林、すべてがこうした施業案の編成によりまして、森林の施業が計画的に行われるというこがどうしても必要なのであります。