○
坪井委員 大臣に
質問いたしたいのです。今回
農地開発営團の行う
農地開発事業を
政府において引継いだ場合の
措置に関する
法律案第三條を改正するということにな
つておるようでありますが、この内容については、もちろん
政府としては、過去において
営團が行い、また縣あるいは
縣農業会あるいは
地元の
開拓組合等をして代行せしめておつたが、こうしたばらばらではいかぬという方針によ
つて、全部
國費をも
つて行うという趣意にほかならないと存じますが、この
耕地改良あるいはまた
開墾、
開拓という
事業は、何と申しましても
労力費というものが一番多いものだと思う。そういう点からみると、いたずらにこれを
國営にして、
官吏を
増員して莫大な
経費をこれに投じましても、その
実績があが
つておらない、またあがらないというように私は
考えます。この点について今度
國営になりましても、なお
補助開墾あるいはまた
將來農業協同組合とか、
連合会とか、
地元における
開墾開拓組合というようなものに、これを依嘱をして
事業を行わせるかどうかというような点をはつきりいたしたい、かように
考えておりまして、
國営と
なつたから、これを
政府の手みずからにおいて全部をやろうということになると、これは手もまわらず、結局その
効果が少いと思います。これは私の
考えとしては、
全額を
國庫において支弁し、今までは
補助開墾としては縣知事に依嘱してあつたようでありますが、これをもつと
最下部の、現地に接近しておるその
市町村長に依嘱するということにいくならば、よく
実情等がはつきりいたしまして、しかも
労力等はある
程度奉仕によ
つてもこれはいくではないか。なお現在の
補助制度というものが、國において四分の二、縣において四分の一、
地元において四分の一というようにな
つておると思いますが、ほとんどこれは
全額にいたしまして、
地元市町村にこれを行わしめるということになりますれば、結局一面において、
市町村において
開墾開拓を行う上においては、農閑期を地用してやれば、これによ
つて相当の
恩惠に浴することが多かろうと思います。いろいろそこにある
資材は有効適切に調達される。そうしてないものだけを國において心配するということにいくことが最もよいのじやないか。過去における弊害というものは、おそらく縣においても國においてもそうでありますが、
お互いに縱の
連絡はありましても、横の
連絡がない。結局
農林省の
開拓課は、ただ何でもかんでも伐採して
開拓さえすればよい。また
林野局の方では、結局は一旦伐採すれば
あと四十年もかかる、
あとの植林になかなかたいへんだから、伐採は困るというような点があ
つて、
お互いにそこになわ張、
勢力爭いをしておる。なおまた縣においてもその
通りでありまして、縣の
開拓課及び
山林課というようなものが、
お互いになわ
張爭いをしておるというようなことであ
つて、しかもまたこれに
農地委員会がはい
つて、今は上から
割当でも
つて、何
町歩の
開墾をしろということでいきますから、何でもかんでもただおこしさえすればいい、
あとはどうな
つても、こうな
つてもかまわない。なおまた
増反でいこうと、あるいは
入植開墾でいこうと、どちらにしてもただ
入植者を追込みさえすればそれでいい、やるときに三軒やれば、それは必ず一年か二年には二軒は出るから、一町ずつや
つても一人の
面績が三年先には三
町歩になるのだ、拔けた
つてちようどいいのだというような古い
開拓あるいは
入植行政が、今まで行われておつたことは事実であります。私も昨年茨城あるいは東北一帶、その他北海道における各地を、水害調査のかたわらいろいろ視察いたしましたが、
開墾、
開拓に対しては常に漁業権というものが
関係をも
つておりまして、非常に反対が強いということで、やろうとしてもおそらくできない。
政府が緊急
開拓を実施するようになりまして、五箇年に百五十五万
町歩ですか、
開墾開拓をしようといつたのが、わずかに三十万
町歩しかできない。もうすでに三年も経
つていることは、結局なわ
張爭いからいろいろ支障があ
つてうまくできない。結局上から命令をも
つてやるわけにいかない、何としてもやはり
お互い両者が寄
つて妥協する。結局上の方ではあせ
つても、下の方は妥協できないから、つい手間をと
つてできない、こういうことにな
つている。私はこれはその
地元へ移管いたしまして、
地元のお互の話合いずくで、
市町村にや
つてもらうということにすれば、円滑にいくじやないか、しかもまた今まではできぬようなことばかり勤めておつたわけで、
國営開墾及び
開拓は五十
町歩以下ではいかぬというようなことを言われておりますが、これな
ども五十
町歩以上というようなところはなかなか少い、御料林でも拂下げれば格別、そうでないとなかなかできない。だから、この面積をずつと引下げてしま
つて、一
町歩でも二
町歩でも、とにかく
開墾ができさえすればいい、
開墾可能地あるいはまた
開拓可能地として
いくらならば、結構だと思う。こういう点について、どんなお
考えをも
つて將來実施にあたるかという点をお伺いいたしたい。
なおまた過去における
開墾事業が不成績であつたことは、先ほ
ども局長の言われたように、今度引揚者を
開拓地に
入植させるというようなことを言われたのでありますが、私はこれは絶対反対だ。もちろんその中にもいい人もありますが、ヘボヘボしてから行
つて、
開拓しようというような勇氣ももたず、裸、はだしで行
つても決してできるものではない。今までの方針は失敗したのだが、裸、はだしで何らの應援がなくして行つた。
資金はわずかに一万円ばかり貸した
つて、ほとんどリヤカー一台も買えない、こういう現状である。眞にこの
目的を完遂させるには、受入れる方では受入態勢を十二分に確立させる、なおまた送出す方は十二分に支度金を貸してやる。それに縣なり國が営農できるだけの、十二分な
資金なり物を與えてやるという方法と、眞にからだが健康であ
つて、精神の強い、忍耐力の強い素質のいい者を
開拓地にも
つていくということになれば、その
目的は達し得ると思います。それが今まで逆にい
つておつた。これを今後は次男、三男あるいはその他どこまでも農業経営をや
つてみようという者を、
市町村から選拔して、質のいい者をやるという方向にいかなければ失敗に終ると
考えます。ただいたずらに反別のみをたくさん
計画を立てて、
開墾々々と言われておりまするが、まず現状においては、量よりも質という点において考慮をする必要があると思うが、この点はどうかということをまず
お尋ねいたしたいと思います。
次に前委員が先ほ
ども言われましたが、一箇年に五十億近い
開墾開拓費を使
つておるが、今までの既墾地に対する
土地改良あるいは農業水利という
方面にどのくらいの金を使
つておるか。私
どもの記憶しておる範囲においては、明治、大正、
昭和を通じて、戰前までに約十七、八億の金を
土地改良に使
つておるように承
つております。戰爭中に目がさめて
食糧が足らぬというので、わずか二年のうちにやはり十七、八億を使
つておるように承
つております。最近については相当額は殖えましたけれ
ども、しかしこれではとうてい満足できません。むしろこうした
開墾開拓にたくさんな金を注ぎこむということよりも、既墾地の
土地改良、耕地
整理、あるいは交換分合、あるいは農業水利という
方面に國家の費用の大半を傾けても、この
土地改良をやらなければならぬということは、こうした
食糧が公益性のある國家國民の
食糧である。これなくしてはわれわれは
生活の安定はできない。この点からみれば、何としても他の義務費に國が追われるけれ
ども、國はどうしても
土地改良に注ぎ込む費用だけは、私は優先的にしなくてはならぬと
考えますが、義務費に追われてこの方がいつも額が非常に少いということは、どうもその衝に当る
農林大臣等の力が少し弱いのではないかどうも安本、大藏
大臣に押されぎみであ
つて、あるいはまた教育費等その他やむをえざる義務費に追われて、どうも國家の
食糧をどうする、國民
生活の安定をどうするという重点からみて、私はどうも常に押されぎみであるということを遺憾に思
つておる。今後こうした英断を行う場合においてならばなおさらのこと、相当な
経費が要るだろうと思う。実があがるものならば私は相当の
経費を計上してもいいと思う。これらについてどういう方法をも
つて、今後必要
経費を新
予算に計上していくかという点についても、
大臣の御所見を伺いたいと思う。私
どもは今後の
食糧問題を
考えるときに、実にわが國の
食糧問題について不安にたえないものがあります。
昭和十二年の戰爭前のことを
考えましても、わが國においては、今日七千万のときでも約七千万石、そのほか一千万石は酒その他で、八千万石の米を使
つておつた。当時六千二百万石の平年收量からみると一千八百万石も足らなかつた。朝鮮から一千万石、台湾から五百万石、その他南方から三百万石も入れて賄
つてお
つて。その後戰爭において年々耕地がつぶされて、六百万
町歩が四百八十万
町歩に減
つてきた。そうして收量も六千五百万石が四千三、四百万石に減
つてきた。だんだん回復してはまいりましたけれ
ども、今後人口が百万以上殖え、現在のような消費者がだんだん殖えて、農業者というものが減
つてきつつあるような現状では、
日本の
食糧問題については実に憂慮にたえない。何としても既墾地に重点をおいて
経費を注ぎ込むことは、もちろん第一重点であるが、第二にはまず
計画した百五十五万
町歩の
緊急開拓事業をいかにして完遂するかということについても、
大臣としてはどういう方法でこの所期の
目的を達成するかということについて、所信を承りたいと思う。私の調査あるいは大体
考えた点を申し上げますと、少くとも北海道といたしましては、大体総面積をみても本州の四分の一くらいの面積がある、また
開墾可能地としても、私
どもの目で見れば、まだ少くとも百万
町歩以上あると思う。緊急
開拓では本州、九州、四國等において八十万
町歩、北海道が七十万
町歩とみておりますが、私はもう本州には大した余地はないと思う。何と言
つても北海道には百万
町歩の
開拓地がある。これによ
つて百万戸くらいは向うに
入植するということにな
つて、五、六百万人は向うに
入植者ができてくるということになれば、
食糧問題はおのずから解決できるのではないか。こういう点を
考えたときに、何としても北海道以外に
開拓地に適したところはないと
考えておるが、それをいたずらに各縣に
割当てて、結局静岡縣で言つたならば富士山麓とか、やはり冷害、旱害等によ
つてつくれぬところに
割当てるということは、これはも
つてのほかのことであるし、なおまた
開拓費のごときも一反歩三万円も四万円もかかるところがあります。そうしたところへ無益な金を使
つてやるよりも、一度トラクターを使えばただちにつくれるという未
開墾地が
いくらでもあると思う。北海道のごときは、戰爭中九十万
町歩開墾地のあつたものが二十万
町歩荒れてしまつた。これらもやるとすればたいへんなことでありますが、まだやれば
いくらでもある所をすつぽかして、各
府縣に
割当てて強制的にやるから、そこに
農地問題が発生して議論百出、その仕事がうまくいかないという結果にな
つておりますから、これらについては北海道をどこまでも活かす、そうして早く受入態勢、あるいはまた送り出す方も準備し、なおまた國が十二分に助成をしてやらなければいかぬと
考えるが、
農林大臣はこれらについて、今後の
日本の
食糧問題をどう
考えておるかということについてお伺いいたしたいと存じます。結論といたしましては、この第三條によ
つて、結局今度改正して、
農地開発営團が行
つておつた
事業を國が引継いでやる、この
趣旨はよかろうけれ
ども、結果においてややもすると私は逆
効果を現わすということをおそるるものでありますので、これらについては今後必ずうまくいくという自信があるかどうか。なおまた
経費については
開墾、
開拓というものにはなるべく控え目にいたしまして、まず既墾地に重点を置くという必要を私としては
考えておりますが、これについて
大臣の御所見を承りたいと存じます。大体私から
大臣に
質問いたすことは以上であります。