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大塚公述人 私はただいま御指名になりました
大塚であります。
日本特殊綱管株式会社の社長をいたしております。わずかに十五分でございまするから、あまりこまかいことに触れる時間もございません。從いまして大きな点二、三につきまして、私の
意見を申し述べます。
通信料金の
値上げはその絶対額が小さいというようなこと、從いまして
個人としての
生計費、またわれわれ
企業の
立場から申しますれば、
生産原價に及ぼす
影響が割合に目立たないというようなことからしまして、四倍というような大幅な
値上げがございましても、
鉄道あたりほどにやかましく言われないというような
模樣でございまして、さればと
言つて、それではこの
通信料金の
値上げが、さほどに小さい問題かと申しますると、われわれの
立場では非常に大きな
関心をもたざるを得ないのであります。
第一に私が申し述べたいことは、確かに現在の
通信料金すべてのものが、その絶対額におきましてはもちろん、その相対的な
関係から申しましても、一
般物價に比較いたしまして非常に安いということは、これは事実だと思うのであります。從いましてこれがただちに
通信特別会計の大きな
赤字となり、ひいてはこれが健全な
財政の堅持という建前から言えば、大きな
影響を及ぼし、さらに
インフレの刺戟にな
つているということは事実でございまして、その
意味におきまして私はある程度の
通信料金の
値上げというものは、やむを得ない面があるし、從いまして
國民としてこれを頭から否定するということは、できないのではなかろうかと思うのでありまするが、さりとてそれではこれを全面的に無
條件でうのみにするというわけにもまいらぬと思うのであります。
第一に申し述べたいことは、
通信と申しますれば、これは
一般個人、
企業、あらゆるものに
影響のある
仕事でございます。從いましてそのねらうところが完全なる
サービスでなければならぬと思うのでありまするが、このたびの四倍という非常に大幅な
値上げが、やかましく論議せられておるにもかかわりませず、当壁においてこの
サービスの
改善に関する具体的な問題を、大きく取上げておられるというような印象は、
國民にはほんど與えていないと思うのであります。大体われわれ今日
通信関係の
現状を見まする時分に、非常に目につきますことは、たとえば拔取りの問題のごとき、これは沙汰の限りでございまするが、それ以外におきましても、
一般郵便物の遅配、あるいは紛失というような事実が、
日常茶飯事とな
つておるのでございまして、この点
終戰以來幾多の
改善が加えられたにいたしましても、今日なおかつわれわれはこれを通常のことと考えざるを得ないような
現状なのでございまして、これでは私
生活の不利不便は申しませんとしても、われわれ
企業の
立場から申しますると、
一般経済の
運用を阻害するのみならず、
企業運営の
進歩をどれだけ阻害し、その能率を妨げているかということは、非常に大きな問題であると思うのであります。たとえばわれわれは
企業の
立場におきまして、全國的に大きな地域をその
運用の範囲にいたしておりまするようなものは、ただいまでは
郵便というものは
あまりあてにならないから、
從つて自分自身で
飛脚便をつく
つて、辛くもその
運用をいたしておるというような
実情であります。これでは國の
責任においてやる
通信業務というものが、はたしてその責を果しておるかどうか、はなはだ疑わしいのであります、卒直に申せば、
通信事業に関する限り、極端に申しますれば、すでに
明治時代にもど
つておると
言つても、
過言ではないような
現状だと思うのであります。これでは
通信事業の本來の使命は、達成していないと思うのであります。これが今日われわれの
生産の面にいかに大きな惡
影響を及ぼしいいるかということは、目に見えないだけにはかり知れないものがあるのであります。それがたまたま今日のような
封鎖経済である間は、まだしもその
弊害が目につきませんが、近く
為替レートがきまり、
國際関係にわれわれが参加するということに相なりました場合、かような
通信業務の
実情ではたしてや
つていけるかどうか、
疑いなきを得ないのであります。戰前われわれの
産業が
世界の
競爭に伍してまいりました最大の点は、何と申しましても
チーフ・レーバーにあ
つたことは申すまでもございませぬが、しかしながら
逓信業務の非常な
進歩によりまして、その
確実性というようなことが、われわれの
産業の
運営、從いまして
世界との
競爭にいかに大きな陰の働きをしたかといふことは一目に見えないだけに非常に大きいものがあ
つたと思うのでありまするが、今日のような
状況では、ただいのま
チーフ・レーバーはもとより頼むに足りない今日ではございまするが、その上にさらにこういう
通信業務の
りつぱな業績というものを失いましたときには、
世界の
産業界における
競爭力というものは、非常に減殺されるということに相なりまして、事決して小ではないと考えるのでございます。この問題は一方
資材の面におきまして非常に大きな制約を受けておりまするから、従いましてこの
サービスの点におきまして十分を期しがたいということは、これまたわれわれ想像にかたくはないのでございまするが、さりとて
サービスの面は
資材のみでは断じてないのでありまして、これに從事する
人たちの誠実な、着実な、まじめな
考え方、またその勤き方、これが非常に大きな要素であることは申すまでもないのであります。この点に関する
当局の十分なる
注意改善を要求してやまないのであります。
第二に申し上げたいことは、
逓信当局はややもすると、この
値上げに関連しまして、どうも
一般の物價に対して
通信料金は低きに過ぎてお
つた。追つつかないから上げるのだという御説明がしばしばあるのであります。私どもの
立場から申しますると、これははなはだ腑におちない点なのであります。御
承知の
通り逓信事業、
通信事業が
國営として
運営されておりまする大きな
理由は、
國家の
治安維持、その他の
関係からの
理由は別問題といたしまして、われわれ
産業の面から申しますると、一にかか
つてその低廉な
サービスを提供することによ
つて産業の繁栄を助長する、これを大いに刺戟するという点にあると思うのであります。從いましてその
國営事業としてのよさは、あくまでも低廉なる
サービスということになるのだと思うのであります。從いましてかりに
逓信関係の
料金が非常に安くて、一
般物價よりもはるから劣
つており、その値上りが非常に遅れているということならば、むしろ
國営事業としては成功だと
言つても
過言ではないのであります。遅れているということは決して
値上げの
理由にはならない
性格のものだと私は考えるのであります。一
般物價が
上つたから、
從つて通信料金も上げるのだというような、きわめて單純な
考え方でありましては、これを非常な間違いでありまして、根本的にこの点はお
考え直しを願わなければならぬ。そもそも
官営事業、
國営事業というものが非常に非能率的であり、いかに官僚的な
弊害を伴うものであるかということは周知の事実なのでありまして、これが
一つの
会社化の形式として、樣式として今日
一般に言われておりまするのも、この点に関する問題が十分に論議されぬからなのであります。そういう観点から申しますと、
國営事業のよさというものを発揮せずして、その存在の價値はない、一
隈物價と並行的にどこまでも上げていくということであれば、こういう
事業を
民営としてどこが
惡いかということになるのであります。
國営事業にする根本的な
理由をこの際特に考えていただいて、
一般の
逓信事業の
運営に根本的な
改善を加えていただきたい、その
考え方を改めていただきたい、今後安易な氣持で
通信料金の
値上げを企図するがごさきは断じてとられないように私は希望してやまないのであります。
第三は、やはり
サービスの問題に関連して、今日の
逓信関係の
労働状況について私は
当局に要望したいと思うのであります。今日のようにあらゆる面で不足がち、足りないがちのときに、労働問題が切実化してくるということはある程度までやむを得ないことであり、從いましてこれを一
逓信事業のみにやめてもらいたいとか、あるいは特にどうとかいうことは望めないと考えるのでありまするが、最近の傾向は、ここに
土橋さんがおられますけれども、どうも特に
逓信関係の
労働関係は、われわれの目から見ると、
官公労関係、さらに
一般産業の面、これの中でも特に今回は強力に
運用されておるように思うのであります。そのねらいがどきにありましようとも、結果において今日
産業の
運営に
至大の
影響を及ぼしておるということは、これまたまごう方なき事実であります。要するに私が考えまする今日の労働問題は、すべて物の点のみで
解決はできないと思うのでありまして、一面精神的な面が相当にある。この点を度外視してはならぬと思うのであります。物的な面におきましては、施設におきましても、あるいは
生活の面におきましても、足りない点は多々あるのでございまして、これを完璧にしなければ労働問題の
解決ができないということでは話にならないと思うのであります。足りないづくしの中で、なおかつ何とかまとめていくというためには、そこに精神的なものがなければならない。そもそも
國営事業の
社会化というような点は、被搾取的な意識がないということが根本的なとりえなのでありまして、それが今日の
官営事業において、殊に
逓信方面において、なおかつ
民間の
資本主義的な
考え方を基盤にした
事業運営と同樣の
運用がなされてお
つて、
從業員諸君の
考え方が未だに
資本家を相手にすると同樣の動きが顯著であるということは、われわれ実は
國営事業の
社会化という面から考えますとはなはだ
疑いなきを得ない。どういう
理由に基くのか、この点は私は
労働組合の
諸君にもお考え願わなければならないが、同時にこれをお預りにな
つておる
逓信当局のお
考え方も十分な御反省を願わなければならぬと思うのであります。要するにやむを得ない
意見の衝突はある程度までは避けがたいと思いまするが、できるならば紛爭は少くしていただいて、そうしてわれわれ
國民生活に直接
至大の
関係のある
逓信業務の円滑なる
運営を考えていただくように切に希望するのであります。
なお最後にやや小さい問題になりまするが、あるいはまたこの
委員会で申し述べることが適当かどうか存じませんが、
通信料金の
値上げというような問題を一
般物價の問題だけでなく、も
つて行政の面と全面的に総合的にお考え願いたいと思う点があるのであります。最近われわれ
民間で仄聞するところによりますと、たとえば
企業の株主に対して支拂いまする
配当金を全部
企業の
責任においてその
手もとに届けるというような御
意見があるやに伺
つております。これがあるいは法律的な措置にいついかなる
方法によ
つて具現化されるか存じませんが、そういううわさをわれわれは聞くのでありまするが、かりにごくわずかな、つまり
企業の
配当金というようなものを
会社の
責任においてすべてお
手もとまで届けるということになりますと、この
通信料金の
値上げは非常に大きな
負担にならざるを得ないのであります。
配当の方は、これは
利益処分でありますから、從いましてその金額はごくわずかであります。にもかかわらず一方
通信料金が他の物價その他に関連して非常に大幅に上るというようなことに相なりますると、これをお届けする
費用は莫大なものになりまして、下手するとあるいは
配当金の何倍かの経費をかけなければならぬような事態にならないとも限らない、かようなことに相なりました場合に、はたして
企業の
運営をいかにするや、今後以資の導入、その他重大問題を控えておりまして、
資本の尊重、
資本の蓄積ということがやかましく論議せられております今日、かような問題が起りますと、一面非常に大きな障害になろうかと考えます。こういうような問題は
通信料金の
値上げと併せて十分総合的に御研究くださるように、
当局に対し私は要望してやまないのであります。
時間がございませんので
簡單でございまするが私の所見を述べた次第でございます。