○
内田政府委員 西田政務次官の御
答弁を補足いたしまして、若干
数字を申し上げまして御
参考に供したいと思います。御説のように
水害の
復旧につきましては、夏の
出水期殊に
農業災害等につきましては、
植付までに水の取入れとか、畑がつくれる
始末をしなければ、
あとにな
つて金を注
ぎこんでもまつたく水泡に帰する場合もあるのでありますから、一年の初めの方に
災害復旧の
予算を見つけたいということで、われわれあせ
つております。しかしながら、はなはだ不幸にいたしまして、二十三
年度は四月からすでに四、五と一月
予算でまい
つております。六月もまた一月
予算が提出されておるというようなことに相な
つておりますために
——これは一年全体の
予算がかりにきま
つておりますならば一年の上期、なかんずく四月から七月の第一・四半期に主力が注げるのでありますが、悲しいかな一月
ごとの
予算でありますために、四月の
予算に一年一中の
重点をおく、五月の
予算に一年中の
重点をおくということができないのでまい
つております。
しかしながらこの一月
ごとの
予算の中におきましても
政府として
水害復旧をいかに重視しておるかという
数字を申し上げますと、四月に成立いたしました
暫定予算は
公共事業費総額で十八億二千六百
萬円であります。その十八億二千六百
萬円の中には、
政府が昨年約束をして履行しなかつたところの六・三制の
追加経費六億四千
萬円ばかりを四月の第二次
暫定予算として
国会の御協賛を得ましたものも含んでおりますから、この六・三制の昨
年度の
追加分六億円余を引きますと、四月の
暫定予算は十一億何がしでございます。その中において
水害対策費として四億六千九百
萬円、約五億くらいのものを組んだのであります。従いまして、その
公共事業費の
暫定予算における
水害対策費の
割合は、約四割から四割五分くらいであつたのでありまして、はなはだ多いようにも思われません。しかし四月には御
承知のように六・三制におきまして六億四千
萬円の
追加予算を出しましたが、
水害の方におきましては、いろいろな
事情でどうしても、
暫定予算の
追加ができなかつた。その代りに、昨二十二
年度の
公共事業費の中でほかにまわす都合の
経費があるのを、ほかの方を無理に削
つて、二億円を昨
年度の
予算の中から
水害にまわすということで、別に二億円をまわしましたから、四月に実際に
水害に出ました金は六億六千九百
萬円でありまして、六・三制を除く
事業費予算の六割くらいを
水害に出しておる、こういう
数字か出ております。
次に五月の
暫定予算でありますが、五月の
暫定予算は、
関係方面とも折衝いたしまして、一年中で一番
工事を進めなければならない時期であるから、とても四月
程度のこまかい
暫定予算では過せないということで、思い切
つて総額の措置を
とつたのでありますが、これも
諸般の
事情がありまして、結局
合計は二十二億という五月の
公共事業費の
暫定予算が成立したのであります。その中におきまして、ほかの方はかりに眠らせて
水害だけはぜひよけいな
金額を盛りたいということでありまして、五月すなわち本月の
暫定予算におきましては、二十二億円中十三億三百
萬円を
水害対策費に割くことにいたしまして、これはすでに
国会の御承認を経ております。従いまして、二十二億のうちの十三億でありますから、約六〇%というものはほかの
事業費よりも優先させて
水害にや
つておる、こういうことであります。
六月の
暫定予算は、これもまたむずかしい経緯をと
つておりますが、
総額で五月よりも二億ほど減りまして、
総額二十億円の
暫定予算案を
国会に提出いたしたはずでございます。
総額が二億円減りましたから、
水害の方もその
割合で減らなければならないのかもしれませんが、われわれといたしましては、たとえ
総額が
減つても
水害だけは減らしたくないという熱情のもとに、やはり五月と同じように
水害対策費十三億三百
萬円をこの二十億円の中に盛りこんでおります。これは全対の
予算に対して約七〇%を
水害にかけておる、こういうことをいたしております。この四月、五月、六月の
水害対策費の
合計はさん十億七千六百
萬円、こういうことにも
つてきておるのであります。この間における四、五、六の
暫定予算の
総計は五十三億
余萬円でありますが、そのうちただいま申しますように三十億七銭六百萬を
水害費に今日までのところも
つてきておる次第でございます。そのほかに先ほど申しましたように、昨
年度の
予算の余りの中から二億円は四月に出しておる。言いかうえますならば、三十二億七千六百
萬円というものを今日まで
無理算段をして出しておるのであります。
しかるにどれだけの金を出しましても、とうていこの
水害対策は満足にできるとは、私
ども安定本部といたしましても思
つておりません、その
数字を御
参考までに申し上げますと、昨年の六、七、八、九月にわたります
東北、
関東、
北海道等の
災害によりまして、その
災害だけの
復旧所要費が今度の新しい
単価の
改訂の要素を入れませんで、昔の
賃金物価体系のもとにおいて二百五十五億の
復旧費を要するのであります。その二百五十五億は、
利根川のように全部国費でやりますものと、各都道府県で国から
補助金をもら
つて、一部は
地方費を加えて
復旧する分とがあるのでありますが、国が出す見込みのある金はこの二百五十五億の
総計ではありませんで、一応計算してみますと、百七十八億円を国が出さなければ、
地方の金を集めても昨年の
災害は
復旧できない、こういう勘定になるのであります。ところが昨
昭和二十二年にあれだけの
災害をこうむりまして、大騒ぎをして
追加予算等計算たしたのであります。昨年中における
災害復旧費というものは、
ちようど五十一億円出したのでありますが、その中でで
カザリン台風の六、七、八、九月の
水害に対して出しました分は約二十五億円ばかりでございます。
従つてその五十一億の中から二十五円ばかりを引いた
残りは、昨年の
災害以前の、たとえば
昭和二年とか
昭和十八年とか、はなはだしきは
昭和十六年に起つた
災害の
跡始末のついていないものの方にまわ
つているわけでありますから、昨年の新しい
災害にまわした分は二十二
年度中においては二十四五億の金しか出ておらぬ。そこで、私が今申しました国が出さなければならぬ
経費の百七十億からこれを引きますと、
あと旧
単価で百五十億出さなければ、去年の
災害だけでも
復旧しないという
状況であります。しかも今度新
物価等の
改訂がありますと、この百五十何億という金はそれだけふくらませておそらく二百何十億、あるいは二百億という
金額にふくらむだろうと思います。そうして昨年の
災害でありますが、先ほ
どもちよつと触れましたように、二十二
年度の
災害以外の
災害で、今まで
跡始末のついていない
災害が何十億かあるのでありまして、昨年の
災害の
跡始末と、それ以前の年の
災害、つまり
過年度災害の
跡始末を合わせると、国から出さなければなら金は旧
単価で二百五十億円以上にも相なるだろうと思います。かような金とそれに伴う
資材を出さなければ、この
災害は
復旧できないのでありますから、
建設院を初め農林省その他の
関係各省は、この際が
復旧費の獲得に非常に熱心でありまして、ただいま
政府で策案いたしております二十三
年度の本
予算につきましては、旧
単価で二百十億円の
災害復旧費の
要求を
経済安定本部に出しております。もしこの二百十億円を
安定本部が認めますならば、これが私の申しました
数字と合うのでありまして、昨年の
災害はもとより、
過年度の
災害についても大体の
跡始末はとれるだろうと思いますが、しかし
各省が
安定本部に
要求されておりますものは、二百十億円の
災害復旧費だけではないのでありまして、そのほかに約八百億円くらいの
公共事業費の
要求がございます。これにはむろん住宅の
建設であるとかあるいは六・三制の学校の設備であるとか、あるいは港湾の
改修であるとか、また
災害に直接
関係あるところの
河川そのものの
改修、あるいは
砂防の施設、あるいは開墾、
開拓等の
農業土木、これらの
要求もあるのでありまして、
災害復旧費と
一般の
事業費の八百何億かを合わせました
各省の
安定本部に対する
要求、それの
合計は一千七十五億という
数字が旧
単価で現われておるのであります。言いかえますならば、この一千何十億がそのまま
政府の
財政の中にはいるならば、
災害復旧費も二百十億がはいるだろう。また
水害対策費の方の二百十億円たけは活かして、ほかの方の
事業をうんと削
つて、五百億か六百億の範囲でこの
予算がまとめ得るならば、
水害復旧の方もかなりの
程度にはいけると思うのでありますが、悲しいかな旧
単価におきましても、さような千億はもとより、何百億というような
歳出予算は、
財政の現状においてはとうてい組めないし、特に今度
価格、
賃金等の
改訂がありまして一切の
単価が上
つてきました場合、ただいま
新聞等で傳わ
つておりますように、国の総
予算が
終戦処理費とか
価格差補償金、あるいは
復金への払込みというような大口のものを含めまして三千九百億という場合には、とてもこの
公共事業費全体の
金額を新
単価でふくらました何百億、あるいは千億以上というような
予算はなかなかはいりにくい。
従つて本年度においてもまた
国会各位の御激励やら、おしかりやらを受けながら、何とか曲りなりにも、
水害の
跡始末をや
つていく
程度にしか及ばないのではなかろうか。かような全体の見透しのもとに、われわれは苦心いたしております。決して二十三
年度においては
水害復旧だけは優先的に楽々できるという見透しでは、残念ながらないのでありまして、できるだけ今
暫定予算に現われましたように、多くを組みこむ
努力をいたしましても、ほかの
事業をやめるわけにもまいらないのでございまして、なかなかその辺がむつかとところでございます。
この例を今問題になりました
利根川等を含む
河川についてみますと、実は
河川が非常に荒れるので、
始末をしなければならぬのでありますが、
災害復旧だけに追われておりまして、毎年新しい
災害を繰返すのでありますから、
建設院としては
災害復旧だけは、ぜひや
つてくれという強い
希望がありますけれれ
ども、われわれが全体の
予算なり、
資材なわを組みます場合には、
災害の
復旧をやると同時に、川が荒れないだけのもとを直す。いわゆる
治山治水の方にもできるだけ同時に手をまわしていかなければならないのでありまして、たとえば
砂防であるとか、
河川の
改修であるとか、あるいは
河水統制と申しまして、
上流にダムをつくる
工事等、これらを併せてやると申しますか、ある場合にはそれらを優先してやらなければ、いくら
堤防を継ぎ足しても、すぐまたやられる。こういう
状態にあるのでありまして
河川改修、つまり治水が先か、
災害復旧が先かという、そこの間に
予算、
資材のにらみ合いの問題が起ります。しかるに二十三
年度の
予算にわれわれが一応想定いたしておりますものは、これはまだ
政府が審議中でありまして、この通りになるわけではありませんが、お許しを得まして、かりに旧
単価で申し上げますと、
河川関係の
災害復旧費に四十二億
余萬円を計上する予定にな
つております。これに対しまして
河川の
改修、つまりもとを正す方には二十二億円というような
数字を載せる。
合計川に対しまして六十数億円の金を投ずるのでありますが、
災害復旧の方にその中の
ちようど七〇%を割かれて、
あとの治水費の方には三〇%しかまわらない。こういうような
予算のかつこうに相な
つております。これも
災害復旧に七〇彩まわすのがよいのか、あるいは治水の方をもつとしつかりやるのがよいのか、要するに両方をやらなければならない問題でありますが、かような苦心のありますことをざつくばらんに申し上げる次第であります。
なお別の
数字を申し上げさしていただきますと、日本の田地田畑が御
承知の通り五百九十
萬町歩あるのでございますが、そのうちで川とか湖水とかの附近にありまして洪水の影響危険を受けます面積が約百七十八
萬町歩あるのだそうであります。これは
建設院のお調べであります。その五百九十
萬町歩のうち、およそ二百九十
萬町歩ぐらいがおそらく水田だろうと思いますが、その水田二百九七
萬町歩のうち百七十八言内町歩が
水害の危険を受ける地域にあるということは、ざつと考えましても当つた
数字であろうと思います。その百七十八
萬町歩の危険田畑のうちで、今日まで
河川の
改修によ
つて、一応安全なりということに達しておる田畑は七十四
萬町歩あるそうでありまして、結局差引まだ百四
萬町歩というものが、雨さえある
程度、三百ミリですか四百ミリですか降れば、たちまち危険をこうむる。こういう
状況にあるのでありまして、何とかしてこの
残りの百四
萬町歩の土地を安全にするためには、やはり治山、治水、
砂防、
河川改修という
工事をや
つていかなければ、
災害でだめに
なつた所を追駈けまわしても、いつまでもこの方には手が届かない、毎年々々の日本の例によりまして、
災害は累積しております。過去の
災害復旧ができ上らないうちに、新しい
災害が起るということにな
つてまいりますので、この辺雨方をにらんで意を用いたいと思
つて、苦心をいたしております。大対お尋ねの今後の
予算の見透しなり、今までの
状況をごく正直に申し上げますと、かような次第に相な
つております。