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澁谷委員 どうもその点が私には
はつきりと認識されないのですが、たとえてみますれば、
独占禁止法におきまして
規定された部分におきましても、あるいは
経済力集中排除において
規定されておりますいろいろな
條文でも、現在におきまして実際にそれが発動されているかどうかわかりませんが、
一つの例をも
つて考えてみますと、たとえば一人の人が
会社の
重役を、ある
重役の数がなければ
兼任することができ得ない。あるいは、
同一の
業種——これも
解釈が非常に不完全でありますが、
同一の
業種の
重役、社長を兼ねることができ得ないというようなこと、その他いろいろな問題がありますが、
一つの例を取上げましても、これらの問題が決定されたとき、すでに一般の
業者は非常に迷
つておる。それまで
資本金がある
程度の
制限を受けておるならば、大
資本の
経営者が
二つ、
三つの
事業を兼ねることはややともするといわゆる
独占の
禁止になり、あるいはまた
経済力の
集中の
状態になるかもしれませんけれども、小
企業——ほとんど
個人企業と同樣なものまでも極端に
制限するというようなことは、むしろ私は法の
建前は
独占禁止法でありますが、実際においてはある
程度まで
日本の
経済力を打ち壞すのではないか、阻害するのではないかというふうにも
解釈ができると思う。これはもちろん現在の輿論がそういうような傾向が非常に多いものでありますから、いずれはこれは私は考えていただける余地があるのではないかと思います。非常に小さい
資本まで、そこまで何もことさらにむつかしい
法令で縛らなければならぬという
理由は、私にはどう考えても理解ができ得ない。そういうことのためにたくさんの
企業者が、たとえば
関連産業——これは大
企業によ
つての
関連産業は場合によ
つては
経済力集中排除の
理由によ
つて除去しなければならぬ場合があるかもしれません。あるいは
独占禁止法によ
つて除去しなければならぬ場合があるかもしれませんが、
中小の
企業においてそういう場合がたくさんある。またそういうことにしなければ
中小の
企業が円満に
発達をなし遂げることができ得ない。ややともするとそういう
一つ系統の
経営者がそれを経営することができ得ないというような
状態におかれておることは、これは反面においては
日本の
産業を非常に大きく阻害するものだと思うのであります。こういう問題と今度の
事業者團体法とがややもすれば絡み合
つてくるような氣がわれわれにはいたすのであります。その
一つの例といたしまして、これは
独占禁止法なり
経済力の
集中排除という
建前からいえば、私の今申し上げることは
根本的に誤
つておるのでありますが、
一つの例をあげてみますと、あの裝飾用に使います
小さん電球のようなものが戰爭前に非常に
海外に出たことがございます。これは御
承知の
通りだと思います。ところがそれがやがて猛烈な
競爭を起しまして、品質が粗惡にな
つて、結局やがては
海外においてそれが今度は非常な非難の的に
なつた。私は
ゴムの
産業に関係しておりますので、
ゴムの
製品の
海外におきまするこうした
実情をよく
承知しておりますが、たとえば
布ぐつのごとき、あるいは総
ゴムぐつのごとき一時は
相当に
海外において要求が多か
つたのでありますが、結局
業者が無謀な
競爭をし、叩き合いをしたために、
業者自身も非常に迷惑をするし、せつかく
海外において
相当歓迎されてお
つたものが賣れなく
なつたという例をたくさん私は聞いておるのであります。これは内地の品物においても同樣でありますけれども、殊に
輸出品のごときものにおいては、そういう例がたくさんあるのであります。これは
從來官僚なりあるいは官吏の方からいえば、それは
檢査の
取締りを嚴重にすれば要は足りるのではないかというふうに簡單に考えて言いのけるのであります。しかし実際において
製品の完全な
檢査というものはでき得ないのであります。やはりそこに
業者お互いが相助け相戒めて、そういうものを
海外に出さないような
方向に向
つていかなければ、
日本の
対外貿易、殊に家内工業的のもの、しかもたくさんに出るところの
日本の
雜貨工業などというものの
海外輸出は容易にでき得ないと思います。それならばその
取締りはある点まで
政府がやることも実際においてはでき得ない。
事者の
團体の力によ
つてこれをや
つていこうとすれば、一方においては
独占禁止法なり、あるいは今度出ますところのいろいろな
法令によ
つてひつかか
つてくるから、そういうことができ得ないことになるのであります。なるほど今後において
日本のすべての
産業は
自由取引であり、自由な
企業であ
つて、自由な
活動ができるという
建前からいえば、私の申し上げることは愚論に近いのでありますけれども、現実の姿から見て、何とかして今のような萎靡沈滯しておりますところの
日本の
産業を、ある
程度の
水準にまでも
つていこうとする現在の段階において考えたときには、今申し上げたようなことは
相当の考慮を拂うべき必要があるのではなかろうか、ところがややともすると、
政府は
先進國のいろいろな法例に模倣して、そして弱体化しておりまするところの
日本の
経済力に対して、極端な取締をするというような
方向にな
つていやしないかというふうに考えまして、この問題を一体
根本的に
政府はどこまで
日本の
中小企業を維持育成していこうとするのか。それに対してどこまで
政府はこれらの
業者の現在のように非常に不況に立
つておりますのを救済して、立て直しをしようと考えているのか、この問題が私はどうも十分に合点がいかないのであります。この点をもう一遍よく御
説明を願いたいと思います。