○前田(正)
委員 実は私は昔こういう診断をやつた経驗をも
つておるのでありますが、実際問題といたしまして、これを申請に基きというようなことでは、なかなかほんとうの要求は出ない。それは自由経済のときに、あるいは
経営の合理化によりまして、資金、
資材等がどんどんとはい
つてくる可能性があるというときには、なるほど申請も非常に出てくるかもしれません。あるいはまた輸出がどんどん振興できるというときには、そういう
企業意欲に燃えてやるかもしれませんが、現在のようにある
程度実績主義というものが資金、
資材に織りなされており、最近大分やかましく皆さまのお考で
能率主義、能力主義の業態の中を変えていこうとしておられますけれ
ども、未だに資金、
資材等の配給におきましても実績主義は
相当重んぜられておる。こういうときには、
企業者自身が自分自身の旺盛なる
企業意欲に燃えてそれを申請して、その
経営の中を変えていこうというような氣持はまず出てこないのが多いのじやないか。実際問題として経驗をもてばそういうことは当然わか
つてくると思います。
それからその次の問題でありますが、
中小企業者を拘束しないということは、これまた今の
お話のような、強制しないというお
考えであるようでありますがゐしかしながらこれからのいろいろな問題をこの戰後の
日本の再建のためにや
つていかなければならぬというときには、今申しましたような
企業自身においても
企業整備をさせていかなければならね。こういうような
日本自身の整理過程にあるときに、これを拘束しないというようなことでありましたならば、これはてんでむだに終ります。私
ども自分でやりました経驗から見ましても、いくらよい
意見を述べても、その幹部あるいはその
從業員においてやる意思がないということであつたならば、それは何ら意味がない。ここに欠点があるとわか
つてお
つてもどうにもできない。
日本の生産のためにこの
企業をよくしてやらなければならぬ、輸出の振興のためにこの会社を何とか助けてやらなければならぬと思
つてお
つても、これを拘束しない、向うもやる意思がない、そういうことで置いておかれたら、これは何ら意味がないことでありまして、
中小企業廳がありましても、拘束しないならが何ら意味がないということにな
つてきます。こういう診断ということをもし取上げてやる以上は、ある
程度拘束するというものにしなければならぬ。それくらいの
権限をもたないでや
つてみたところで、何ら意味がないと思います。殊にこの問題は
業者自身に対して拘束するためでなしに、そのやりましたこと自身が
政府各省に対しまして拘束する、あるいはそれに対してぜひとも強制的に
協力する。たとえば輸送が足りなければ、鉄道省は必ずその診断の結果に対しては全面的に
協力して、輸送をまわしていく。あるいは資金、
資材の配給
方法がいわゆる実績主義で、
能率主義でない。せつかく
能率を改善したものが、資金、
資材の配給がその
能率について伴
つてこない。あるいはまたいろいろな隘路があるというようなことは、殊にこれは
政府側の欠点も多分にある。
相当むだな書類を出すとか、あるいはむだな手続をするとか、いろいろな欠点があると思いますが、そういうものが
政府自身においてある
程度強制的に行われない。こういうものであ
つては、
業者に対してさえ拘束しないで、
政府自身に対してそれが権利がないというものであるならば、この診断というものはただペーパー・プランであります。私はそういうふうなあいまいな診断はほんとうの診断ではないと思います。これは先ほど石炭について北海道あるいは九州において行われましたことについて、その成績は
相当よく上
つて増産に
なつたというふうに私たちは聞いて、はなはだ喜んでおる次第であります。しかしそれは
相当の力があり、また
各省の権威の方が行かれ、またさらに
関係筋がこの
協力を願つたというふうに聞いております。そのくらいの力のあるものでなければ、
中小企業の診断をして
指導していくという値打はないと思
つておりますが、その根本問題についていかがお
考えになりますか、御
説明願いたいと思います。