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石澤參考人 日本ゴム産業関係者の
立場から、今度の
法案につきまして申し上げたいと思います。一言に申しますと、
ゴム産業業者側の一致せる見解は、
ゴム製品につきましては、その
輸出製品たると
國内消費製品たるとを問わず、強制的な
檢査というものをどうしても必要とする次第であります。しかしながら
結論から申し上げますと、その
檢査の
國営として
國家の
官吏が直接に
檢査をされるという
方法に対しましては、反対であるのであります。そういう見地からとにかく
輸出品の
取締りを強化されるという
趣旨に立脚してできました今回の
法案は、まことに結構だと思うのでありまするが、その
法案の
内容をよく檢討してみますると、いろいろの欠点があるのであります。その
理由を要点だけを申し上げまして、御
参考に供したいと思いますと同時に、
ゴム業界の
希望に対しまして、十分御
考慮を煩わしたいと思うのであります。
第一に、
ゴム産業は
終戰後新しい
工場がたくさんできたのでありまして、過去何十年の歴史をもち、十分なる
設備と、すぐれたる
技術家をも
つておりまする地盤のしつかりした
工場以外に、
終戰後時流に乘りまして、たくさんの
新規の
工場ができたのでありますが、
終戰後におきましてすでに二百五十できたのであります。現在におきましては、
新規工場の数だけで七百に及んでいる。こういう実情でございます。これらの
新規の
工場は、何分時流に乘りましてあわててつく
つたものでありますから、
卒直に申し上げまして、その
工場の
設備は不完全であります。それから
製造の
技術もきわめて低いのであります。しかしながらこれが多数できまして、粗惡な
製品がどんどんつくられて、それが市場に氾濫してくるという状況で、粗
惡品と
優良品との
区別がつきがたいという
状態が、非常に顯著にな
つてまい
つたのであります。
ゴム製品は一度これができ上りますと、
優良品と不
良品とを並べてこれを見比べてみましても、
相当の
專門家でもその
優劣を正確に判断することは困難なものでありまして、実際それを
使つてみなければ、
ほんとうの
優良なものと、不良なものとの
区別がつかないような
状態であるのであります。これは
ゴム製品の
性格上そういう特徴をも
つているのであります。
従つてゴム産業界では、
業者が自発的に
檢査設備をつくりまして、多数の
技術官を養成いたしまして、そうして
ゴム整品を
檢査するのでありますが、それの
ゴム製品の一部分を切取
つて、これを機械にかけて
ひつぱつて、そうしてその切れるときの力を機械的に計算してその
優劣を判断するとか、あるいは化学的な処理によ
つてその質の
優劣を判断するとか、きわめて緻密な科学的な
檢査を、でき
上つた製品について行いまするとともに、
工場の方へ技師を派遣しまして、その
工場において、
ゴム製品を
製造しているその
製造の過程を調べまして、まず
原料をねり合わせているところでは、どういう
原料にどういう
材料を加えて
原料としてつく
つておるかというようなところから、それが
製品になるまでの
製造工程を
檢査する。こういう
檢査の
方法を行うことによ
つて、初めて
商品の
優劣を判断することができる。こういう
性格の
商品でありますので、苦心いたしまして、そういうような
檢査を
工場の依頼に基きましてや
つてまい
つて、ようやく
商品の
優劣を明らかにして、そうして
合格品には
合格のしるしをはりつけるというふうな
方法をとることにいたしてまい
つているのであります。こういうような
現状でありまするから、どうしてもある
程度の
強制的性格をも
つた檢査ということを絶対必要といたすわけであります。ところがその
檢査を
嚴重な
意味での
國営ということになると仮定いたしますと、なかなか急に
檢査設備を整備しようとしてもできないのであります。これには多数の
経驗のある
檢査官というものを必要といたしますし、その
檢査官が一々
工場へ出かけて
製造工程を
檢査するというようなことは、
國家の
官吏の仕事といたしましては、出張の
関係、人員の
関係、これに要する経費の
関係、
設備の
関係という点から見まして、なかなかむづかしいのであります。そこでわれわれといたしましては、
強制的檢査を必要とするということと、これが
檢査の
方法については純
國営というのでなく、すでにできておりますところの
相当の
設備をも
つて、すでに
民間で持
つておりますところの
経驗ある
技術者をして
檢査せし
むるという方法にしていただき、そうして
國家はこれに対して
檢査方法を指導監督するというような形にしていただきたいというのが、
希望であるのであります。
さらに本
法案にはいりまして申し上げてみますと、この
法案では、
ゴム製品というものが第三條に定めらるべき
商品の中にはい
つているのでありますが、われわれといたしましては、第四條に定めらるべき
商品の中に入れていただいて、そうして
ゴム製品の
標準の
最低基準というものをきめて、その
最低基準にも及ばざる
程度の
製品は、これは
輸出を許さぬということにしていただきたいのであります。そうでありませんと、
ゴム製品の
海外における
信用というものが、非常に落ちるわけでありまして、今後
ゴム製品の
海外輸出ということに非常に努力しようと思
つておりまする矢先、これが非常な障害になるわけであります。殊に現在
ゴム製品の
原料でありまするところの
生ゴムは、
外國からこれを輸入しておるような次第でありまして、この輸入につきましては、
日本政府及び
連合國側の多大の厚意によ
つて、これの支拂い
方法な
ども、
相当の部分は
救済資金をも
つて支拂われるというような
状態において、これを輸入しておるのでありますから、かくして輸入した貴重な
生ゴムが粗
惡品に形をかえまして、そうして
海外へ
輸出してもいたずらに今後の
ゴム製品の
輸出の
信用を落すというようなことにな
つては、まことに相済まないわけでありますし、また
日本の他の産業に対しまして、
ゴム製品というものは非常に重要な
関係をも
つておるのでありますから、優秀なる
ゴム製品を他の産業に供給することによ
つて他の産業を利する。かくすることによ
つて生産を増強するというこの面から見ましても、
優良品、不
良品の
区別が不明であるために、不
良品が市場に氾濫しまして、それが國内産業の方にも供給されるということにな
つては、國内産業それ自身の向上にも非常に惡い影響を及ぼす次第でありますので、私
どもといたしましては、先ほど申しましたように、
ゴム製品に対する
檢査は強制的な性質をもつものとして、ぜひ必要とするということと、
ゴム製品は本法令の第四條によ
つて定めらるべき
品質の中に入れていただきたいということを、
ゴム製品に対する
檢査方法は、
輸出品であると國内品であるとにかかわらず、
國営ということでなく、有効な
檢査方法を
考慮していただきたい。
國家の指導監督のもとにということにつきましては異議はないのでありまするが、
檢査それ自体を行うべき
檢査方法及び
檢査手段ということにつきましては、ただ單に
製造業者の自由の
檢査ということに任すというのでなくして、個々に
業者の自発的
方法による
一つの
機関ができると仮定しまする場合に、その
機関に十分の
設備と十分の知識
経驗のある技師を備えて、有効な
檢査をさせ得るように仕向けるという
意味において、これを
民間の手で
檢査を行わしめる。そうしてこれを
國家が監督されるというような形にしていただきたいというのが
希望であるのでございます。簡單でございまするけれ
ども、一應の見解をここに述べさせていただいた次第であります。