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門司委員 私は先ほどからたびたび要求しておりますように、この
本案を採決する以前に、両
委員会というか、
司法委員会との合同の審査
委員会を開かれんことをあくまでも要求いたします。この点を一應先ほどから申し上げておりますように、
委員長からお諮りを願いたいと
考えておるのであります。この
法案は、先ほどからの御
意見にもありましたように、きわめて
人権に及ぼす影響が甚大であると
考えられまするので、法の万全を期するということと、さらに
法案の
内容に対しましては、私はもしこのままの姿で通すということになりますならば、非常に
危險性をも
つておりますので、ただ單なる速記に留めるというようなことでなくして、これには相当な修正を加えなければならない部分があると
考えておるのであります。なるほど法を草案し、さらにそれを決定いたしますときに、それが速記録に留めてあるということは、どうも私
ども議会人といたしましていろいろな観点から十分そういうことが
考えられるのでありますが、末端の
警察官等の
職務を執行いたします場合に、衆議院における
委員会の速記録がどうであ
つたか、こうであ
つたかというようなことが、おそらくはつきり認識されるものでないとわれわれは
考えざるを得ないのであります。殊にこの
法案の中にあります
武器の使用の点等のごときにおきましては、相当考慮を要するのであります。こういうことがなくてさえ、すでに大阪の
事件のごとく、
警察官の不法と思われるような発砲
事件が往々にしてあるのであります。なおかつこれが一
警察官の
認定によ
つて発砲することができるというような場合におきましては、きわめて大きな
危險性をも
つておる。それからもう
一つはこの
法案がなければただちに
警察官の
職務の執行ができないかというと、そうではありませんので、さいわいにいたしまして「軽
犯罪法が一應成立いたしておりまして、この
法案の中に載
つております問題の中で、かなり軽
犯罪法によ
つて行われる
権限がたくさんあるのであります。
從つてこの
法案が今緊急を要すると申されますが、そう一日、二日のうちにこれを通さなければならないほどの私は
緊急性をも
つていないと思うのであります。一切をここで否決するという
意見を申し上げておるわけではありません。私はこれの愼重を期することのために、合同の
委員会を開いてもらいたいというのみでありまして、何もこれを今否決する
意見をここで申し上げておるのではありません。おそらく私はこの
警察官等の
職務執行に関する
法律案と軽
犯罪法との
関係でありますが、軽
犯罪法の中にも「正当な
理由がなくて刄物、鉄棒その他人の
生命を害し、又は人の
身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帶していた者」そういうような者は当然取調べることができる。さらに留置することができる。あるいは科料に処することができるという法令があるということ、さらに「正当な
理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに、使用されるような器具を隠して携帶していた」ような者も、これができるということ、しかもこの場合において
警察官の
職務執行は当然それらに対しましては
尋問をする必要がある。さらにこれに停止を命じて取調べることができるとある。隠してあるものを調べるということは、おそらくその人に停止を命じなければ調べることができないと思う。こういうことを
考えてみますると、何もこの
法案が今なければ日本の
治安に非常に大きな支障を來すとは私は
考えられない。さらにその次には、「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く
意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついた者」、これらに対しましては当然
警察官は軽
犯罪法によ
つて処罰することのでき分
規定が設けられておるのであります。そのほか「入ることを禁じた
場所又は他人の田畑に正当な
理由がなくて入
つた者」、あるいは「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者」というような
條文に対しましては、これを取締ることができる。しかも檢束し、さらに科料に処するということが軽
犯罪法にはつきり書いてあるのであります。
從つてこの
法案が今なければ、
警察官の
職務が執行できないというほどのことは私は
考えない。ただこれはそれ以外のいろいろな事情に対しまして、こういう
法案があ
つた方が
警察官の
職務の執行の上に便利であるというようなことが
考えられるならば別でありますが、この
法案はおそらく私は
行政執行法が
廃止されまして、さらにその次にこの
法案と似たようなものが出てくるということが、第一
國会、さらにその前の九十三議会でありましたかにも、おそらくこういう兆しがあ
つたのでございまするが、出てこなか
つた。それが今回しかも会期の末に突如して現われまして、そして当然
審議権をも
つている議員全員に——
委員会のみが
審議権を持
つているのではありません。議員全体が
審議権をも
つている。その議員全体に議案が
配付されていないというような
手続の不十分なものに対しまして、われわれはただちにこれに賛成するわけにはまいりません。この点は
委員長といたしましてどういうふうにお
考えになるか。さらに
当局はこれに対してどういうふうに
責任を感じておるが、私はもしこの
法案が議員全体に
配付されていないということにな
つてまいりましたならば、議員の
審議権を無視したものであると
考える。議員の
審議権を無視してまでわれわれはこれを可決しなければならないということである。われわれはこの点に対して非常に遺憾に
考えております。これはこの
法案だけではありません。將來の議員の
審議権は一体どうなるか。私はこの
法案を見て知
つておりますから
審議いたしておりまするが、議員の大部分はこれを知らない。議員の知らない間に
法案を通過さしてよいか惡いかということである。私はそういう
意味から申し上げましても、当然これは
司法委員会との合同審査会を開き、さらに
当局におきましてはそういう万全の
処置を講じてもら
つて、その上でこれを処理すべきものである。
委員会をもし通過いたしまして、本会議にこれがかけられるということにな
つてまいります前に、全議員の諸君がこれを見ていなか
つたというような不見識なことで、かくのごとき
人権に非常に重大な影響を及ぼすような
法案を通過させるということになりますならば、議員全体が
責任を負わなければならぬと私は思う。この
國会の
責任は一体だれが背負うか。私
どもは少くともそういう案に対しまして
責任を負うわけにはまいらぬのであります。私はこういう
意味から申し上げましても、
本案をただちにここで採決して、
委員会がこれを可決したというようなことにな
つてまいりましたならば、そのそしりだけでも受けなければならないし、また
委員がその
責任を負わなければならぬと思うのであります。私は議員の職責の上から、
責任の上から
考えまして、この案をただちに即決されけことは反対をいたしたいと思います。