○田中(源)
政府委員 列車の内部におきましての
治安の問題に対しましては、いわゆる終戰当時は非常に列車の秩序が紊れておりまして。のみならず運轉キロ数もまことに縮小されておりましたので、自然に旅客が殺到してまいりまして、各列車とも満員の
状況になりました。その場合におきまして一部の人たちが、あるいは窓から乗り、あるいは非常に多数の乗客の中には、むりやりに殺到いたしまして、結局旅客の荷物を整理いたすと称して、その間に旅客の荷物が紛失いたすとか、あるいは暴行傷害等も起
つてまい
つたのであります。
これらのことにつきましては、帰するところは列車の回数を増加し、営業キロ数を増しまして、とれによ
つて旅客の緩和を図りまするとともに、できるだけ鉄道自体も、列車内部及び駅等の秩序を保ちますために公安員の
制度を考慮いたしまして、列車は昨年未にかけては、大体において漸次秩序も正常の
状況にな
つてまい
つたのでありますが、石炭の生産減に伴いまして、割当の減額が自然営業キロ数を減少いさなければならぬ事態に立至
つてまいりまして、一部路線におきましては、これがためにまたまた非笹に旅客の殺到をみまして、これに対して一部には乗車制限を行いまするとともに、努めて正常乗車を行いまする等考慮いたすとともに、明るい鉄道の施策をもちまして、できる限り秩序の維持と旅客のサービスの改善に努めてきたのてございまするが、ただいま申しましたように、一部
地方におきましては営業キロ数を減じなければならぬといつたような事態に立至りましてなかんずく東北におきましては、一月二十七日より二月二十八日に至る間におきまして行
つたのであります。それで上野発青森行の八一〇七列車、これは普通列車でございまするが、これに集團的な列車強奪
事件が発生しましたことは、まことに乗客に対しで御迷惑をかけて申し訳ない次第であります。この列車内に起りました集團強奪
事件は、三十一日現在におきましては、まだ
犯罪人を逮捕するに至
つておりませんが、その國籍は不明でありまして、被害の程度は約二十件程度にな
つておりますが、主としてリュックあるいはボストンバツク、ハンドバツクその他の中から、手回品を強簿されてるようなわけでございます。これらの
事件は、あるいは計画的であつたか計画的でなかつたか、その点はまだ不明なのでありますが、少くとも多数の者が乗込みまして、そしてこれらの事故を起しましたことは、結局その
犯罪の動機は、あるいは多少計画的なものがあ
つたのではあるまいかというふうにも疑われるのであります、
終戰後におきまして、列車の秩序を保ちます上におきまして、先ほど申し上げました通りに、警乗警官の乗車を願いますのみならず、公安
制度をも
つて、漸次秩序が改善されてきてお
つたのでありまするが、その後
警察制度の改正に伴いまして、その警乗警官の乗車が一部廃止にな
つてお
つたのであります。それらの警備
状況の手薄をにらんで、これらの
事件が発生したのではあるまいかとも
考えておるのであります。ただいま申しました八一〇七列車の一月二十七日の
事件のごときは、その列車の前部三輌に、上野、赤羽、大宮から乗車した百五十名の集團が、荷物整理と称して網棚や腰掛の下の手回品をリレー式にデッキに送りまして、そして福島駅でとり降したように見せかけて後尾の車輌に移動したが、被害者は暴行を恐れて申告をしなかつた。そこで仙台駅で手回品を強奪されました旅客が、犯人の下車するのを改札口で見張つたが、ついに判明することができなかつたようなわけで、駅前の交番に申告いたしまして、その旅客と
警察官とが車内を捜査したが、発見することができなかつた。盛岡駅の駐在公安係は、一ノ関の駅から旅客に対しまして、
警察官とともに被害者の実情を調査いたした次第であります。しかしそれらの犯人の一味は小牛田、田尻、瀬峰の各駅で下車した
あとで、逮捕するに至らなか
つたのでございますが、被害者が大体二十数名に達していることがわか
つたのであります。盛岡駅の駐在公安係で大体調べましたところを総合いたしてみますると、被害者はほとんどリュックサック、ボストンバツクなどから衣類その他高價品をねら
つておつたようなわけであります。
なお、本
事件は
終戰後か
つてない大規模のものでございまするが、犯人が堂々と車中で犯行をいたしまして、しかも一名もまだ檢挙することができなかつたということは、まことに私どもも申訳のないことでありまして、遺憾に存じて、極力犯人捜査に努めておるわけでありまするが、これらの
事件が生じました結果、その後の善後処置といたしまして、その
事件発生の翌日から今日まで、管理部の公安官を十名ずつ、仙台、一ノ関間の一〇三列車、一〇六列車、八一〇七列車につきまして、特別檢札をいたしておるようなわけであります。一月二十九日から当分の間、
警察官百名をトラック四十台をもちまして、犯人が下車したとおぼしき先ほど申し上げました田尻、瀬峰、新田等の各駅一帯において犯人の帰りを待
つておるが、まだ檢挙するに至
つてないのであります。二月の三日から九日まで、公安官より成る十二名の一般の非常の警乗員が一ノ関、仙台間、八一〇七列車、一三〇列車、二〇一列車、二〇二列車、一二三列車、二〇八列車、それから一二五列車、一〇六列車に乗込み警備をいたしておるようなわけであります。一月二十九日から一週間の間公安官正名の者をも
つて先ほど申しました注意を要すべき田尻、瀬峰、新田その他の各駅を特別巡察警備をいたしておるのでございます。なお鉄道局報並びに部報あるいはラジオ等によりまして、被害旅客よりの申告を督促し、かつ一般旅客にも不法行為防止につき極力協力方をお願いいたしておるわけであります。と同時に、他面一月三十日仙台の檢事正を中心に
関係者の打合せを行いまして、でき得る限り
犯罪檢挙に努めまするとともに、内事局の方へ連絡いたしまして、全國的なる列車内の秩序及び
犯罪の檢挙につきまりて、御協力方をお願いいたしておるようなわけでございます。これらの対策といたしましては、帰するところ列車の秩序を保つことは、列車回数をます第一に殖やして、旅客を混乱せしめ、ないようにすることが必要でございますので、まずとりあえず上野、青森間に島行列車を一本増発いたしたのであります。なお石炭の見透しかつきさえいたしまするならば、漸次列車の回数を殖やして、この列車の混乱を防いでいきたい、こういうふうに
考えておるわけであります。
次に鉄道公安官の問題につきましては、先般当
委員会においてその構想を申しました通りに、大体八千九百三十人の予定人員をも
つていたしておるのでありますが、現在約八百人余りは
教養を終えまして、その職についておりますが、近く五百人ばかりの者が出ますので、合計千三百人くらいは、まずその
教養を終えました者が配備につくということにな
つております。予算の
関係がつき次第に、できるだけこの鉄道公安官を充足いたしまして、全國的な鉄道の
治安維持に努めたいと
考えておるのであります。さらに
地方的には、
地方の
警察または
國家警察等によりまして、でき得るだけ
警察官の警乗をお願いいたしていきたいのであります。これらの予算
関係につきまして、今各賞廳と連絡をいたしておるようなわけであります。
かようなわけでありまして、できるだけ鉄道通信を利用いたしまして、檢察廳の捜査に協力して、かような突発
事件につきまして捜査を続けていく。同時に、公安官と申しましても武器をも
つておらぬのであります。元來はいわゆる犯人の逮捕、秩序維持等につきましては
警察官にお願いをいたしまして、ただ鉄道の公安を維持するためのものでありますために、何らの武器をも
つておりません。終戰当時におきましても、
食糧の一般の買出團体の中には、青年のごときでも、あいくちをふところに持
つておる。まことに最近の世相の上からみまして嘆かわしいことでございますが、これらの暴行を加える不良な者は、武器をも
つておるというようなことも見受けられるのであります。現に私どもも列車内においてそれを目撃いたしたこともあります。これらの暴行いたすような仲間においてさえ、爭いをいたして多数の旅客に迷惑をかけるのみならず、列車の硝子戸を破壊いたすとか、実に乱暴をきわめるのであります。どうしても公安官に一定の武器を持たして、これらに対抗をいたさなければならぬのであります。かような問題につきましてその筋の了解を得て、これらの処置をとりたいと
考えておるのであります。
同時に、一般の旅客の方々が、かような推定をもたれ、あるいは列車秩序がまことに危險であるというようなお感じをもたれます場合はは、遠慮なくもよりの駅にすぐ連絡をとられますとか、あるいは車内の車掌に通じていただきますとか、被害があります場合は、ただちにその被害を的確にお示しくださるようにお願いをいたしたい。
すなわち協力的の措置をお願いいたしたいわけであります。最近の東北の
列車事故は、要するに警乗警官の手薄と集團の暴行でございまして、これは今まで東海道列車におきましても、たとえば、南風崎行とか、あの列車等におきましてはしばしば
終戰後において浜松、鶴橋、名古屋間、こういうような
方面においてはすいぶん乱暴があつた。これらは主として集團買出人の暴行でありまして、それらも網棚の上に荷物を整理するを称して、いつの間にか荷物がなくなる。同時に網棚の上に寝そべ
つて、旅客の肩や頭の上を越えていくというような事態が、
終戰後において長くあ
つたのでありますが、これらのものも大体においてその後の秩序の回復によ
つてなくな
つたのであります。今度の
事件のごときも、やはり警乗警官の手薄及び列車の非常な削減による混雑に便乗して、一部の者たちが計画的に行つたものではなかろうかというような想像をも
つているわけでありまして、まことに國民に対し申しわけのない次第でございますが、ただいま申したような対策をと
つて極力犯人の檢挙に努めるとともに、今後においてかような事態の発生しないように、全國の各局に指令を出すとともに、各
府縣廳の当局にも御協力を願
つて、犯人の檢挙及び今後の秩序の維持に努めたいと存ずる次第でございます。
以上大体の概略を申し上げまして御報告に代えたいと
考えます。