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1948-10-08 第2回国会 衆議院 司法委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十月八日(金曜日)     午後二時十分開議  出席委員    委員長代理理事 鍛冶 良作君    理事 八並 達雄君       岡井藤志郎君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    山口 好一君       池谷 信一君    石井 繁丸君       猪俣 浩三君    榊原 千代君       中村 俊夫君    大島 多藏君       酒井 俊雄君    佐竹 晴記君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 七月五日  弁護士法に関する件  青年補導法案に関する件  少年犯罪防止対策の件  司法保護團体の全國的調査  その他司法制度改善等に関する件 の閉会審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  閉会審査事件処理等に関する件     —————————————     〔筆記〕
  2. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 これより会議を開きます。  さきに第二回國会最終日にあたり、閉会中審議すべきものとして  一 弁護士法に関する件  二 青年補導法案に関する件  三 少年犯罪防止対策の件  四 司法保護團体の全國的調査  五 その他司法制度改善等に関する件  以上の五件につき閉会中の審査を付託され、本委員会は小委員会を設けて閉会中の審査をお願いいたしたのでありますが、その結果を小委員会より御報告願います。
  3. 八並達雄

    八並委員 まず弁護士法に関しましては第二國会末、委員会において一應の仮案を得ておりましたので、これを成案とするように小委員会において協議いたしました。なお、逐條にわたりまして研究中でありますが、近く所要の手続をとりまして、第三回國会の冒頭に議員提出法律案として上程する予定であります。  次に青年補導法案に関する件につきましては、予算設備等の点につきまして問題がありますので、引続き調査継続中でございます。  第三の少年犯罪防止対策に関する件につきましては、対策のため協議し資料蒐集調査に努めましたが、時間の関係から未だ十分ではありません。從つて総合的対策について結論を得るに至つておりません。今後の資料蒐集調査を取急いで至急に結論を得る運びにいたしたいと存じます。  司法保護團体の全國的調査につきましては、北海道大分、仙台、金沢、京都等各地において調査を行いましたが、全國的調査は完了しておりません。なお、視察を終えた場所の報告は、書面をもつて委員会手許に提出せられておりますが、なお口頭をもつて直接御報告願うことにいたし、詳細は譲ることにいたします。  最後にその他司法制度改善等に関する件につきましては、英米法研究資料を収集いたし、今後提出せられます諸法案審査に備え、目下研究中であります。  以上が閉会審査のための小委員会における調査の結果でございます。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 それでは次に少年院少年保護施設視察の結果を、派遣委員各位より御報告願います。
  5. 中村俊夫

    中村(俊)委員 まず京都市及び京都府下視察結果より報告いたします。京都少年審判所長宇田川潤四郎氏に面会の上、詳細に少年院保護施設に関して次の報告を聽取いたしました。  (一) 附設機関鑑別部職業補導部  (二) 收容機関宇治少年院  (三) 少年保護團体   (1) 和敬学園 女子のみ收容 一四名   (2) 大照学園 男子のみ收容 二五名   (3) 京都六華園 男子 一一名   (4) 京都少年保養院 男女 二八名   (5) 青葉学園 男子 四名   (6) 安上寮 男女 十四名  (四) 協力機関   (1) 少年保護相談所   (2) 少年保護協会   (3) 京都少年保護婦人協会   (4) 京都少年保護学生連盟加盟校一七 学生二二〇名)   (5) 京都少年保護連絡協議会  特に京都少年審判所長の熱意による京都少年保護学生連盟活動は特筆に値すべきもので、学生が休暇を利用して少年保護事業に献身し、その結果は見るべきものがあるようです。保護團体中和敬学園京都市上京区烏丸通りにあり、國立園長樋口琢五氏といい臨済宗に属していられる。大正十三年十月創立收容者は現在女子のみでスリが大部分ですが、十四名、設備は大体良好で環境も良好です。両親がほとんど面会に來ないとのことで考えさせられることであります。大照学園京都市下京区本覚寺内にあり淨土宗に属しています。國立園長細井照道師及び弘禪師照道氏の息)、大正十五年創立男子二十四名を収容しているスリ窃盗、空巣、恐喝等の者であります。作業は種袋張りで、設備劣惡環境も市の眞中にあり良好とはいいがたい。ただし、弘禪師の熱心なる指導により特に野球チームをつくり、スポーツを通じて少年の改過に努力しているため、成績はきわめて良好でほとんど脱走者を見ていない。  宇治少年院京都東宇治町五ヶ庄にあり、院長は松岡氏で二十四名の職員が勤務しています。國立開院昭和二十二年十月收容者男子のみで九十三名、設備環境とも佳良で、土地六二二二坪建坪一九五坪九棟あります。  次に奈良縣について申し上げます。奈良少年刑務所所長塚孝氏、收容人員男子のみ一五七六名で、その内訳は成年一四七名、準少年十八名、少年一二五六名となつております。その教育方針としては考査期間約一ヶ月、修練工場約一週間を経て各工場へ行き、解放準備教職として経済生活を教えることになつています。元來本所は成年刑務所であつたものを、昭和二十一年八月より少年刑務所として使用したものでありまして、目下少年教育用建物数棟を増築中で、面積は一五、〇〇〇坪、建物四十八棟、外に郊外農地約二〇、〇〇〇坪を予定しております。所長赤塚氏の話によりますと、本所に收容中の少年達虞犯少年よりは質素が良好であるとの事です。虞犯少年犯罪が軽微であるために反覆する可能性が多く、ただ一度罪を犯してただちに刑務所収容された少年の方が、むしろ優れているということは言い得るでありませう。  次に大阪府の浪速少年院について申し上げます。本院は大阪府茨木市郡山にあり。院長辻三省氏、その他職員六十八名、國立少年院として大正十二年開院せられたもの、收容人員男子のみ三五〇名であります。教育方針は各寮に担任教官を二名乃至三名配置し、その教官が全責任を負う仕組みになつており、作業教育日常生活退院等、万事を指導することになつています。また宿直勤務を除く日は、独身教官は必ず寮生と起居を共にするのであります。院長各科課長は各寮担任教官を通じて、少年達の長をのばし短を補うように力めております。但し毎月約七十名の少年大阪神戸審判所より送致されるので、未だ教化不十分の少年を退院せしめねばならぬ実情にあり、この取扱いに困難を感じているとのことであります。設備大正十二年の開院のままで、古くなつているのと、狹くて不便のため、至急改修増築の必要があるが、環境としては町とかけ離れた小丘の上にあつて良好であります。なお、また近く開設予定女子収容所候補地たる大阪府北河田郡交野の旧女学校建物をも視察いたしましたが、これは環境設備共に良好であると思います。  次に滋賀縣安土寮、これは滋賀縣蒲生安土村、淨教院内にありまして、これが視察には、大津地方檢察廳米原檢事正が同道されました。寮長福井忠次郎並びに同氏夫人昭和十九年開寮したものであります。収容人員は十四名、内一名は女子でありました。主として農業及び葦簀作りを教えております。建坪一五〇坪、純農村の相当余裕ある寺院内のことであるから、設備環境きわめて良好、かつ寮長夫妻の熱心な指導により、成績は非常に優秀であるとのことであります。  以上視察状況を簡単に御報告した次第でありますが、なお詳細は小職において各視察収容所よりの報告書を保管しておりますから、必要に應じて提出いたします。  視察後の感想といたしましては、今後犯罪少年教育については幾多の考慮すべき点を発見いたしたのでありますが、特に民間保護團体収容所改修増築と、職員の数において相当考慮すべきものがあると思われます。民間團体においてはその指導者が熱心であるところは、むしろその人の人格影響が相当大きいため、少年に與える感化の結果もまた深いものがありますが、設備の不良、職員不足給與不十分等のために、國立に比し遜色のあることは否定できません。これに反し國立のものは設備職員等は満足すべき状態にあるとはいえ指導者の轉任等により、腰をおちつけて教化に專念し得ぬ事情にありますので、人格の反映の徹底化を欠く点があり、脱走等の不祥事がむしろ多いように思われるのであります。今後は民間保護團体の欠点を補い、國立と相俟つて一般教化に努力する必要のあることを痛感いたした次第であります。
  6. 八並達雄

    八並委員 私は專門員小木貞一君と同道いたしまして、北海道地方視察して参りましたのでその結果について報告申しあげます。北海道には少年審判所二、少年院一、保護團体六が設けられているが、時間と地理関系より、札幌旭川審判所北海少年院砂川紫明寮視察することにいたしました。  まず第一札幌旭川審判所についてみますに、配置職員は    審判 保護 書    官  司  記 雇  計 定員  札幌 一  二 五 五 一三 一七  旭川 一  二 三 三  九 一二 となつています。  事件の受理並びに処理調の表を参照していただきたいと思います。  事件処理に対する観寮意見を申し上げますと、事件処理の速度は職員配置の状況からみれば概ね良好であり、その処分の結果も妥当である。しかし処理した事件の爾後の取扱い方、殊に統計類の作成は不十分と認められます。すなわち他の審判所においては通常左記事項について図表その他の表に明示せられ、備え付けられているが、両審判所においてはこれらの分析集計が整備されていない。  (1) 犯罪の径路 不良行為乃至非行から罪を犯すに至つた過程地方的色彩が明瞭に現われる)  (2) 不良少年の家庭について綿密な調査   A 環境 イ戰災の有無、ロ引揚ハ復員者等   B 家庭の職業経済状態   C 出生順位(長か次か末か)兄弟の数   D 家庭での処遇  (3) 交友関係(異性との関系を含む)  (4) 生活歴体質歴、性格、嗜好  たとえば二三の少年審判所等についてみると  (イ) 京都少年審判所では、別添のように予算もなく官制があるわけでもないが、「鑑別部」を設け、心理学精神医学社会学教育学の專門家の協力を得て、前述の諸事項の調査分析集計に努めている。  (ロ) 佐賀少年刑務所では、別添のような綿密な「少年受刑者身上調査表」を作成している。  (ハ) 福岡中央兒童相談所は別添のような詳細明瞭な図表を展示し参観者をして事務処理の内容結果を一目瞭然たらしめている。  (二) 福岡少年審判所は別添のような保護統計を作成している。  このように処理した事件分析集計し、臨床的経験を基礎として考察を加えていくと、管下保護施設團体に対する矯正方策指導も積極化され、また対外的にも警察、駅、学校、職場、P・T・A、学生連盟、文化諸團体等関系機関に対する協会要望事項も具体化され、その働きかけも活発となるのであるが、両審判所ではこれら(イ)(ロ)の活動が緩慢であるように見受けられる。  なお、参考までに札幌少年審判所取扱つた事件について若干の犯罪径路調査したものを併せて述べたいと思います。  (一) 組夫制度(昔のタコ部屋)による生活環境の支配を受け、飲酒喫煙の常習並びに性に対するゆがめられたる認識及び組夫制度廃止による無為徒食増加等により、不良性の進展となり、賭博、窃盗、傷害、恐喝、猥褻等事件を犯す結果となる。  (二) ガンガン部隊と称する闇商人の影響、少年自身または闇商人手先等となり、少年の氣分が自然に荒んでゆき、末には闇物質、たとえば米穀等を運搬途中警察に取られたと嘘言を用い金員をすくねとるようになる。  (三) 青函連絡船による本州方面より流れ來る不良者との接触からくる影響大である。  (四) 本道は廣漠たる面積を容し、一つの派出所が数ヶ町村にわたる廣大な管轄区を有し、また人家散在するため十分なる監視取締ができないという嫌いあり、また寒村僻地には何らの娯樂機関なきところより賭博の風習多く、猥褻行為等について、ある地にては日常茶飯事出來事のように思われているという、道徳的観念欠如等による影響大である。  (五) 屋外放置による石炭を盗むということについて、さほど重要視しないという道義心の廃頽による結果大である。  次に北海少年院及び紫明寮視察の結果について申しあげます。  北海少年院職員院長以下三十六名、敷地一〇〇、〇〇〇坪(畑地大半)、建物二〇棟一、一七〇坪、現在收容人員一二五名、これを年令別に見ますと十四歳未満一一、十五歳三一、十六歳二九、十七歳三二、十八歳二一、十九歳一となつており内本籍を北海道とする者九九で大多数を占めています。犯罪別に見ますと窃盗一〇二、虞犯六、恐喝三、強盗二、その他となつています。  紫明寮三井鉱業所附設)は職員六名、現在收容者一八名であります。  通じて感じられますことは、内地の少年院保護團体收容されている少年少女よりも一般に血色がよく、おおむね明朗な顔立ちが多く、被服の状態もきわめて良好であることがまず目についた。施設環境も惠まれており北海少年院においては廣い畑地を耕作し、牛馬豚の飼育も計画実施中で矯正教育上効果的であると思われ、紫明寮の寮生は三井炭坑の準坑員として一定時間沈粉コークス類積込作業に從事するを日課とし、労賃による貯蓄も三千円を超えるものなぞがあるような状況である。しかし收容期間は二三ヶ月から多くて半年であるが、近時は二三ヶ月で退職する者が多くなつた。われわれはこの事実を見逃すことはできない。この事実はひとり北海道限つた現象ではなく全國的なものである。試みに青少年犯罪者激増ぶり年次別に比較すると  (一) 少年、準少年被疑者累年比較調            実  数  指数   昭和十一年  四六、五五〇 一〇〇   昭和十五年  五三、〇四八 一一四   昭和十八年  六一、三六六 一三一   昭和二十一年 二一、七九〇 二四〇    備考 指数は昭和十一年を百として計算本表は二十歳未滿のものにつき調査  (二) 少年少年犯罪者累年比較調   昭和二十一年    一四八、六一八   昭和二十二年    二二四、四一〇   昭和二十三年      一月一三月   六九、三六五      (年間推定)  七七、四六〇 の集計が得られる。すなわち(一)の表によつて明らかなように、昭和十一年の指数を一〇〇とすれば昭和二十一年には二四〇、すなわち二倍半となつている。しかるにその保護矯正施設は、予算の関係上旧態依然たる状態である。從つて收容期間が漸次短期化されてゆくのは、矯化教育が早く実を結んで少年が家庭や社会に帰つていく正常な姿を現わすものではなく、むしろ收容できないトコロテン押しに短期で退所させ、不徹底を受けてやむを得ず押し出されている現実を物語るものと言わなければならない。  さて以上の視察の結果より総合的意見ともいうべきものを申し上げてみたいと思います。昭和二十一年度の青少年犯罪数は二十万件を超えている。同年度の國勢調査によれば、滿八歳から二十五歳までの青少年の数は三百万余でありますから、百五十人の子供や若い者が集まると、必ず一人は警察署や險察廳の御厄介になる者がいることになる。殊に終戰後は(一)成人犯罪よりも青少年犯罪上昇率の方が著実な(各犯罪とも上つたり下がつたりしない)上昇線を示している。また(二)前科者犯罪よりも初犯者犯罪が激増の方向をとつている。同一人が犯罪を繰返すという從來方向と異つて、すなわち犯罪が縱に拡がつていくというよりも、今まで罪を犯したことのない青少年婦女子が罪を犯す方向に進んでおり、犯罪は普遍的に拡がつて、今日のよい兒童等が明日は不良となり、日を遂うて大量的に不良化しつつある現状にある。たとえば警視廳管下の例(昭和二十一年)についてみると恐喝のごときは成人の数(三九七件)をはるかに越え一一六四件であり、強盗のごときも成人四八二件に対し、青少年六一六件という数字を示している。これは同時に「年令低下」の悪現象となつてだんだん年はのゆかない、本來純真なるべき兒童がどしどし罪を犯すという傾向をとつてきている。(三)犯罪の性格も悪質化集團化の傾向を特質としているようである。財産犯の中でも窃盗が断然多く、しかもスリという悪質の型が激増の傾向にある。また短刀、ピストルのような兇器をもつて強盗をする者が増えてきており、しかも数人集團をなして罪を犯す場合が多くなつてきつつある。そこでまず第一に青少年犯罪の諸傾向について、詳細綿密な科学的調査分析とその集計を徹底化する(そのためにも「鑑別部」を拡大強化しなければならぬと思う。)さうして、國民の前にこの現象を赤裸々にさらけ出し、その認識を深めてもらわなければならない。  つぎに、このデータに基いて青少年不良化防止、進んでは純化の一大國民運動(たとえばアメリカのBigbrothers and sister movement 大兄姉運動乃至は関係各種團体各機関に対する協力要望活動)を急速に展開する必要があると思われます。病魔の傳染力の質と速度に應じてその対策は講じられなければならない。  なお、これは附加的になるのでありますが、北海道國鉄職員職場離脱者檢挙状況を、九月十六日札幌高等檢察廳口頭報告に基いて申し上げますと、八月一日公布せられた公務員の労働運動に関する政令をめぐつて國鉄全逓を中心に全官労組は各地で闘争を展開していたが、北海道地区では六日國鉄労組旭川支部得分会員六十余名が職場放棄を決行し、新得機関班大会において三割減車スト続行を決定し、附近機関区に対し同情ストを促がしていた。六日最高檢察廳及び國警本部政令違反取締を声明した。九日、旭川支部富良野分会機関班大会を開き、全員百八十名が職場放棄を決定しました。十三日現在全道における國鉄離脱者二百八十五名、百二名に逮捕状を発し、内四十七名を逮捕した。その後も全道十機関区に波及し二十日には離脱者一千名を突破した。同日、運輸大臣復帰命令を出し、同時に違反者嚴重処分の声明を発表した。これがため二十一日中に三百六十名が復帰するに至つた。その後の離脱は低調となつたようであるが、九月十六日現在で  離脱者数     約一二〇〇名  逮捕状         七一八  逮捕者         三八四    (復帰した者は逮捕しない)  未逮捕者        二三九  勾 留         三二二  起 訴         一五三 であつた。離脱者はおおむね十七・八歳から二十三歳位のものが大半を占め、独身者八〇%である。檢察局の語るところによれば離脱行為が活発となつたのは、思想的背景からの煽動によるものと考えられるが、(たとえば離脱者鬪争戰術要領の配布を受け、警察檢察当局の質問に対しては、氏名年令すらも黙秘することになつているとのことである)いわゆる非日活動者調査をなす組織がない現状においては、この種悪質ストも徹底的に防止することは至難であるとのことである。札幌高檢は今回の檢挙にあたつて東京高檢から檢察官等の應援を得たため檢察の機動性をよく発揮し、迅速適宜な処理をなしている。しんし、多数の事件裁判所に起訴されているが、裁判所現行制度上他の高裁から應援を求めることができないので、機に應じた裁判は期待できないであろう。この点については関係法規を改正する必要があると思う。  以上をもつて私の報告を終ります。
  7. 大島多藏

    大島委員 私の視察いたしました大分縣福岡縣下少年保護施設について御報告いたします。  私の視察いたしましたのは大分縣貞志寮でありますが、ここは人里離れた風光明媚な地にありまして、保護施設といたしましては申し分のない所でありますが、やや不便の感じがいたします。この貞志寮は戰時中、附近にあつた神戸青製銅所少年不良工の鍛錬道場であつたものを、終戰後少年保護施設として使用する事となつたものであります。建物昭和十八年に建てられたもので、從つて未だ新しく、堅固な建物であります。建坪数も百坪くらいあり、現在の収容人員が十数名に足りないのは、惜しいと感じます。経営に当つております職員は、不良少年指導に三十年從事してきたという主事安部清氏、それに寮母一名、農業助手一名でありまして、現在収容中の少年は十一名、年令別にいたしますと十九歳が二名、十八歳が一名、十五歳が二名、十七歳が六名であります。数日前に二名の逃亡があつたそうでありますが、そうしたことはきわめて普通なことであると申しております。  職員に対する手当主事が月千円、その他の職員が五百円であつて食事つきだそうですが、それにしても非常に薄給の感がいたします。  少年教育主事安部氏が元教員をしていた関係上、学科の指導をしております。しかしそれは読み書き算盤のようなもので、非常に程度の低いものであります。音樂教育のためにオルガンが非常に欲しいということを聞きました。  衞生状況はきわめてよく、昨年は病氣にかかつたものが一名もなかつたとの事です、しかしこれは設備がよいためではないようです。  大体以上でありますが、最後安部主事より、現在貞志寮の経費は大分縣聯合保護会から出して貰つているのであるが、その金額はきわめて僅かであるので、法務廳よりの少年補給費として現在支給されている日額十六円四十銭を、すくなくとも倍額に増額してもらいたいとの事でした。これはもつともな主張であると存じます。一番困るのは衣料不足であつて、夏は裸体でも何とか凌げるとしても、冬になると非常に困るそうです。学用品不足も、現在のようでは満足な教育を與える事はできない。先ほども申し上げましたオルガンのようなものもぜひ備えてもらいたいとの事です。それから職員手当でありますが、これも先ほどお示ししたように、現今の経済事情でははなはだ薄給である。ぜひ増額するようにお願する。この三点について希望されました。  以上が私の視察しました保護施設の概要であります。
  8. 岡井藤志郎

    岡井委員 命に依り十月八日香川縣仲多度郡美通寺町の四國少年院視察いたしました。次にその御報告を申し上げます。  本院において現在収容しておりますのは五十数名であります。——数学的のことはすでに主務官廳報告してあることと存じますので、ここでは省略いたします。  私はここの全收容兒を集めまして、一場の説話を試みたのでありますが、その瞳光顔容から見て、大部分が正常の少年ではないと感じました。委員長手許に提出しました表に示されておりますように、その八割までは先天的精神発育異常者であります。從つてこれは少年院以前の問題でありまして、胎兒たる以前に遡らなければならないのであります。從來かかる方面に思いをいたし、そこに経世的識見のなかつたことは嘆かわしいことであります。少年院自身の問題としてはまず終日太陽の当らない舎屋南向に移轉させる必要があります。凡百の保護施設も、また訓戒も陽光の恩惠には遠く及ばないのでございます。しかし自然の惠沢は無償なのであります。為政者はまずかかる平易な認識から出発することが大切であります。勇断をもつて機械力舎屋方向轉換をすることを私は提唱いたします。蒲團、着衣の色彩等を見ますと、刑務所のものと同じでありまするし、頑丈な格子もありまして、普通の刑務所と何らかわかりません。こうしたことは、陰惨、悲観、自棄の念を生ぜしむるのみでありまして、何らの利益もないことと存じます。次に当局の希望として保護施設医療施設を完全にして欲しい。また職業教育技術教育を施すことが少年の將來のために最も必要であると思うが、経費等の関係から理想と余りに遠いのは遺憾である。という二点を傳えして私の報告を終ります。
  9. 八並達雄

    八並委員 仙台、金沢の少年審判所についても御報告が出ていますが、あまり詳しくなるので、ここに述べることは省略します。
  10. 鍛冶良作

    鍛冶委員長代理 以上の小委員長並びに派遣委員各位の御報告につき、何か御質問なり御意見なりございませんか。それでは右の報告に基いて、閉会審査事件に関する御報告書作成は委員長において行いたいと存じます。  これにて散会いたします。     午後三時五十分散会